説明

液体検知素子、液体検知センサ、液体検知システム、液体検知方法

【課題】本発明の目的は、液体検知システムでの、センサの小型化、リアルタイム性の確保、センサの再利用性の確保、センサの独立性の確保、配線の容易性の確保である。
【解決手段】本発明の液体検知システムを構成する液体検知素子は、フレネル反射によって、伝搬してきた光を逆向きに伝搬させる先端を有する光ファイバを備えている。
その液体検知素子を複数個用いた液体検知センサは、測定器と接続するための接続部と、1段もしくは複数段に配置された光カプラと、接続部から各前記液体検知素子の先端までの距離が異なるように調整するための接続用光ファイバを備えている。また、前記接続用光ファイバの余長を収納する余長収納部を備えてもよい。
前記液体検知センサを用いた液体検知システムは、前記接続部に接続された、光ファイバ内の反射量もしくは反射減衰量の分布を測定できる測定器を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の有無を検出する光ファイバを用いた液体検知素子、液体検知センサ、液体検知システム、液体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を検知するシステムとしては、図1に示すような透過型のセンサを利用したものがある(特許文献1)。図1(A)は液体がない状態、(B)は液体がある状態を示している。この水検知システムは、光ファイバ901、水検知センサ902、曲げ損失測定装置903から構成される。水検知センサは、ケース921、凸部9221を有する曲げ治具922、液体を吸収して膨張する膨張体923、保持治具924から構成される。曲げ損失測定装置903は、損失測定器、パルス試験器(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)などである。水検知センサ902は、光ファイバ901をはさんだ状態で設置される。そして、水検知センサ902を設置した場所に液体が侵入すると、膨張体923が膨らみ、光ファイバ901が曲げられる。曲げによって光ファイバに曲げ損失が発生し、損失の変化を曲げ損失測定装置903で観測することによって、液体の浸入が検知される。しかし、膨張体923を用いていたため、小型化が困難であった。また、液体が浸入し、膨張体923が膨張するためには、膨張体923が膨張するために十分な量の水と時間が必要である。そのため、液体の浸入から検知できるまでに数分〜数10分を要していた。そして、一度膨張体923が膨張してしまうと、液体がなくなったとしても収縮しないため、水検知センサ902自体を取り替える必要があった。さらには、膨張体923が吸収(反応)できる液体でなければ、検知できない点も問題であった。
【0003】
水検知センサ902は、透過型(光ファイバがセンサ内を通り抜けるタイプ)であるから、図2に示すように、水検知センサ902を1本の光ファイバに縦列に取り付けることが可能である。しかし、1つの水検知センサ902が動作すると、光ファイバの損失が大きくなり、その水検知センサ902よりも遠い位置に設置された水検知センサ902の状態が測定できないこともあった。
また、どの水検知センサ902の損失が増加したのかを識別するためには、水検知センサ902の間隔を、曲げ損失測定装置903の測定精度(距離分解能)よりも十分に広くする必要がある。たとえば、OTDRで、10nsecのパルス幅のパルスを用いて測定した場合、距離分解能は1mである。したがって、2つの水検知センサ902を設置する場所が近かったとしても、水検知センサ902間の距離を5m程度確保できるように余長911を設ける必要がある。図3に従来の水検知センサを用いた場合の配線の様子を示す。このシステムは、光ファイバ901−i(i=1〜3)、水検知センサ902−j(j=1〜6)、曲げ損失測定装置903、余長911−k(k=1〜5)で構成されている。水検知センサ902−1、902−2、902−3は互いに近い場所に設置され、水検知センサ902−4、902−5、902−6は互いに近い場所に設置されるとする。配線時には、まず水検知センサ902−jを置きたい場所(液体の浸入を確認したい場所)に設置し、その後光ファイバ901−iや余長911−kを取り回し、固定(箱などに収納)する。しかし、余長911−kを固定する場所を、水検知センサ902−jの近くで確保し、光ファイバを慎重に取り扱わなければならないので、配線作業が煩雑であった。
【特許文献1】特開2004−45220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、液体検知システムでの、液体検知素子の小型化、わずかな量の液体でも感知できること、液体の浸入から検知できる状態になるまでの時間の短縮(リアルタイム性の確保)、液体がなくなった場合にセンサを再利用できるようにすること(再利用性の確保)、液体の種類に依存しない検知を可能にすること、1つの液体検知素子が動作しても他の液体検知素子の測定に影響を与えないシステムとすること(液体検知素子の独立性の確保)、配線の容易性の確保である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体検知システムを構成する液体検知素子は、フレネル反射によって、伝搬してきた光を逆向きに伝搬させる先端を有する光ファイバを備えている。また、前記光ファイバおよび前記光ファイバの先端は、側圧が加わった場合にも、ある程度以上の曲げ損失が生じないように補強している。
その液体検知素子を複数個用いた液体検知センサは、測定器と接続するための接続部と、1段もしくは複数段に配置された光カプラと、接続部から各前記液体検知素子の先端までの距離が異なるように調整するための接続用光ファイバを備えている。また、前記接続用光ファイバの余長を収納する余長収納部を備えてもよい。
【0006】
前記液体検知センサを用いた液体検知システムは、前記接続部に接続された、光ファイバ内の反射量もしくは反射減衰量の分布を測定できる測定器を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体検知素子では、膨張体を用いないので、センサの小型化が図れる。構造が単純なため、補強が容易である。先端部に接している媒体の屈折率が変化した瞬間に反射量(または反射減衰量)が変化するので、わずかな量の液体にも反応すると共に、高いリアルタイム性を有する。液体がなくなった場合には先端部に接している媒体の屈折率が元に戻る(空気になる)ので再利用が可能である。どんな液体でも屈折率は空気よりも高いので、検知できる。さらに、各センサまで伝搬し、反射されて測定器に戻ってくる光は、他のセンサを通過しない。したがって、1つのセンサが動作しても、他のセンサの測定には影響を与えないので、独立性が確保できる。また、センサ間の距離を確保するための光ファイバの余長を、光カプラ周辺に集中できる。したがって、センサ近傍で、光ファイバの余長の処理をする必要がなく、配線が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を説明する。なお、説明の重複を避けるため、同じ機能を有する構成部には同一の番号を付与し、説明を省略する。
[第1実施形態]
図4に本発明の液体検知システムの最も単純なシステム構成例を示す。この液体検知システムは、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’、光ファイバ120、液体検知素子130から構成される。このシステムの測定器としては、反射量測定器110でも反射減衰量測定器110’でも良い。これは、測定の対象が液体検知素子130でのフレネル反射の強さは、反射量を測定しても、反射減衰量を測定しても判断できるからである。測定器の代表例は、パルス試験器(OTDR)であるが、これに限る必要はない。液体検知素子130が1つだけ使われている場合は、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’は、単純に反射の強さが分かればよい。また、液体検知素子130が2つ以上接続されている場合は、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’は、反射の強さが分かることおよび各液体検知素子を判別できることを満足すればよい。
【0009】
図4の散乱光強度の分布は、OTDRで測定した光ファイバ120の後方散乱光と液体検知素子130のフレネル反射光の様子を示している。垂直入射の場合のフレネル反射の反射率rは、r=(n−n)/(n+n)である。ただし、nは光ファイバ120の実効屈折率(約1.5)、nは光ファイバ120の先端に接している媒体(空気や液体)の屈折率である。液体がない状態(空気の状態)では、n=1.0であり、r≒0.2となる。また、例えば水が浸入した場合には、n≒1.3であり、r≒0.07となる。このように液体が浸入すると、液体検知部133での反射率rが減少する。したがって、液体がない状態のフレネル反射光(図4(A))と、液体がある状態でのフレネル反射光(図4(B))とに大きな違いが現れる。この違いを反射量測定器110または反射減衰量測定器110’で測定することで、液体の有無が判断できる。
【0010】
液体検知素子130の構成例を図5に示す。光ファイバ120内を伝搬してきた光は、光ファイバ120の先端である液体検知部133でフレネル反射され、逆向きに伝播する。液体検知部133(光ファイバ120の先端)は、反射光が逆向きに伝搬するように、光ファイバの先端の切断面の法線と光の伝搬方向とが、ほぼ一致するように切断もしくは研磨されている。また、この例では、液体検知素子130内の光ファイバ120および液体検知部133は、防護用金属外筒131とフェルール132によって補強されている。また、液体検知素子130外の光ファイバ120は、コード化によって補強されている。補強の程度は、この液体検知素子130を設置する環境によって決まる。特に、光ファイバコード121や液体検知素子130に側圧がかかるような場合、光ファイバ120が曲がり、損失が発生する恐れがある。このような損失が生じると、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’で測定されるフレネル反射光の強度が小さくなり、あたかも液体が浸入したようになる。そこで、光ファイバコード121や液体検知素子130の補強の設計では、あらかじめ加わる恐れのある側圧を定め、その側圧の下で、液体浸入と間違うほどの曲げ損失が発生しないようにする必要がある。一方、ほとんど外力が加わらない環境の場合には、光ファイバ120を補強する必要はなく、光ファイバ120のままでもよい。このような構成なので、液体検知素子を小型化できる。また、先端部に接している媒体の屈折率が変化した瞬間に反射量(または反射減衰量)が変化するので、わずかな量の液体にも反応すると共に、高いリアルタイム性を有する。さらに、液体がなくなった場合には先端部に接している媒体の屈折率が元に戻る(空気になる)ので、そのまま利用が可能である。また、液体によって先端が汚れた場合には洗浄は必要であるが、液体検知素子を取り替える必要はないので、再利用は可能である。そして、どんな液体でも屈折率は空気よりも高いので、検知できる。
【0011】
[第2実施形態]
図6に、複数の液体検知素子を取り付けた場合のシステム構成例を示す。このシステムの液体検知センサは、光ファイバ120、124−a(a=1〜4)、光ファイバの余長121−b(b=1〜4)、液体検知素子130−c(c=1〜4)、光カプラ140−d(d=1〜4)、および接続部160から構成される。光カプラ140−dは、各液体検知素子130に測定用の光を配分するための構成部である。例えば、光カプラ140−1を、液体検知素子130−1側に2%の光を配分し、次の光カプラ140−2側に98%の光を配分する光カプラとすればよい。このような光カプラを使用すれば、数10個の液体検知素子130−cを、1本の光ファイバに取り付けることも可能である。光の配分比は、使用する液体検知素子130−cの数を考慮して変更することも可能である。接続部160は、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’と液体検知センサとを接続するための構成部であり、SCコネクタなどの光コネクタである。
【0012】
反射量測定器110または反射減衰量測定器110’が測定用に発生させた光は、光カプラ140−1で分配され、一方は光ファイバ124−1を介して液体検知素子130−1まで伝搬される。他方の光は、光ファイバの余長121−1を介して次の光カプラ140−2に入力される。光カプラ140−2は、また光を分配し、分配された光は液体検知素子130−2と光カプラ140−3に入力される。このように光の分配が繰り返される。
【0013】
液体検知素子130−4に入力された光は、液体検知素子130−4の先端でフレネル反射され、光カプラ140−4まで戻ってくる。光カプラ140−4では、余長121−4側から戻ってきた光と、液体検知素子130−4から戻ってきた光とを足して、光カプラ140−3の方向に伝搬させる。同じように、光カプラ140−3、140−2、140−1によって、液体検知素子130−3、130−2、130−1の先端でフレネル反射された光も足され、接続部160の方向に伝搬させる。このようにして反射量測定器110または反射減衰量測定器110’が発生させた光は、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’に戻ってくる。
【0014】
反射量測定器110または反射減衰量測定器110’として、OTDRを使った場合、OTDRと各液体検知素子130−cとの距離に応じた位置に、各液体検知素子130−cのフレネル反射光が検出される。ここで、前述のように、OTDRで、10nsecのパルス幅のパルスを用いて測定した場合、距離分解能は1mである。したがって、OTDRと各液体検知素子130−c間の光ファイバの長さが少なくとも5m程度異なるように、余長121−bを調整する。もし、光ファイバの長さを同じにしてしまうと、2つの液体検知素子からのフレネル反射光が重なってしまい、どちらの液体検知素子の位置が浸水したのか分からなくなってしまう。
【0015】
図6のようなシステム構成にすれば、液体検知素子130−cに入力される光も液体検知素子130−cで反射された光も、他の液体検知素子130−cを経由しない。したがって、1つの液体検知素子130−cが浸水したとしても、他の液体検知素子130−cでのフレネル反射の測定には何ら影響を与えない。したがって、本システムでは、液体検知素子間の独立性が確保できる。
また、図6より、余長121が液体検知素子130の近傍にないことが分かる。したがって、液体検知素子130−cを設置する場所に光ファイバの余長を固定する必要がなく、配線作業を容易にできる。
【0016】
[変形例1]
図7に、余長を、液体検知素子を接続する光ファイバに持たせた場合の液体検知システムの構成例を示す。図6との違いは、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’と各液体検知素子130−c(c=1〜4)との距離(間の光ファイバの長さ)を調整するための光ファイバの余長123−e(e=1〜4)を、光カプラ140−d(d=1〜4)と液体検知素子130−cの間に持たせたことである。この場合も、余長123−eを光カプラ140−d近傍で固定することができるので、配線作業は容易である。また、その他の効果についても、第2実施形態と同じ効果が得られる。
【0017】
[変形例2]
図8に、余長を、光カプラ間を接続する光ファイバと液体検知素子を接続する光ファイバの両方に持たせた場合の液体検知システムの構成例を示す。図6や図7との違いは、余長を持たせる場所だけである。どの光ファイバに余長を持たせても良いという点で、この構成は、第2実施形態と変形例1を含む一般的な構成例といえる。この場合も、余長121−b(b=1〜4)と余長123−e(e=1〜4)は、光カプラ140−d近傍で固定することができるので、配線作業は容易である。また、その他の効果についても、第2実施形態と同じ効果が得られる。
【0018】
[変形例3]
図9に、光カプラとして3dBカプラを用いた場合の液体検知システムの構成例を示す。3dBカプラ(光カプラ141−f(f=1〜3))は、光を2つの方向に均等に配分する。例えば、光カプラ141−1は、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’からの光の1/2を光カプラ141−2へ配分し、他の1/2を光カプラ141−3へ配分する。また光カプラ141−1は、光カプラ141−2からの戻り光(液体検知素子130−1からの反射光と液体検知素子130−2からの反射光の和)と光カプラ141−3からの戻り光(液体検知素子130−3からの反射光と液体検知素子130−4からの反射光の和)を合成する。また、余長121−bは液体検知素子130−cから離れた場所に確保することができるので、配線作業も容易である。したがって、第2実施形態と同じ効果が得られる。なお、本変形例では、3dBカプラを3つ使って光を4等分した構成を示したが、カプラの分岐率が異なってもよく、カプラの数も自由に変えてよい。
【0019】
[変形例4]
図10に、図8の構成に収納部を付加した液体検知システムの構成例を示す。図10と図8との違いは、収納部150が追加されただけである。図11に、図9の構成に収納部を付加した液体検知システムの構成例を示す。図11と図9との違いも、収納部150が追加されただけである。また、図12に、光カプラごとに収納部を設けた液体検知システムの構成例を示す。図12のような構成は、光カプラを分散させたい場合に利用できる。この例では、光カプラを1つずつ分散させているが、2つずつ分散させてもよい。その場合は、各収納部に2つの光カプラが収納されることとなる。
【0020】
収納部150、150−1、150−2の例としては、ビル内の光ファイバ通信用に一般的に用いられているキャビネットなどが考えられる。このようなキャビネットは、もともと光部品や接続部と光ファイバの余長とを収納するためのものである。したがって、このキャビネットの中に、光カプラと余長とを収納すれば、効率的に配線できる。これは、本発明の液体検知素子の構造やシステム構成によって、余長を光カプラ近傍に配置できるために得られる効果である。
【0021】
[第3実施形態]
図13に、図3の従来の配線と本発明を用いた配線の違いを示す。図3および図13では、液体検知素子130−cまたは水検知センサ902−jが3つずつ近くに設置される場合を図示している。
【0022】
このような配線となる例として、河川の水位検知システムなどが考えられる。例えば、河川内に設置された水深を示す柱など(橋げたや堤防の壁面でもよい)の、注意すべき水深の位置、警戒すべき水深の位置、避難すべき水位の位置にそれぞれ液体検知素子を取り付ける。このように1本の柱などに3個の液体検知素子130−cを配置し、上流から下流までの何本かの柱などで水位を観測することが可能である。従来(図3)の方法では、余長911−kが水検知センサ902−jの近傍にあったため、余長を前記柱などの周辺で取りまとめ、固定しておかなければならない。これは、配線作業が困難なだけでなく、光ファイバの保護(故障防止)の観点からも問題である。しかし、本発明の方法では、液体検知素子130−cの近傍には余長はなく、全て収納部150内に収納されている。この図からも、本発明によって配線作業が容易になることが分かる。また、このような用途に用いる場合、液体検知素子が小型であること、再利用が可能なことは、保守の面から重要である。
【0023】
また、従来の方法では、1つの水検知センサが水につかると、その先の水検知センサを識別できなくなる恐れがあった。したがって、河川の水位検知システムのように複数の水検知センサが水につかることを前提にしたシステムには使用できなかった。本発明の液体検知システムの場合、複数の液体検知素子が液体につかることを前提にシステムを設計することができるため、用途の幅を広げることができる。
【0024】
[実験例]
図14に本発明の液体検知システムの実験例の構成を示す。この実験では、OTDR111を、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’として使用した。OTDRのパルス幅は、10nsec(距離分解能1m)で測定した。OTDR111と各液体検知素子130−c(c=1〜6)との距離(間の光ファイバの長さ)を調整するための余長は、光カプラ140−d(d=1〜4)間に持たせた。そして、液体検知素子同士の距離の差を20mに調整している。また、3つの液体検知素子が近い位置に配置されることを前提に、収納部150−1、150−2にそれぞれ3つの光カプラを収納した。なお、光カプラ140−dの光の配分は、98%と2%とした。
【0025】
図15に、OTDR111での測定波形を示す。(A)は、全ての液体検知素子130−cが液体につかっていない状態での波形である。(B)は、液体検知素子130−4、130−5、130−6が、水につかった状態での波形である。図15の波形の番号は、図14の各構成部の番号に対応している。縦軸は、反射光の強度を示しており、凸部は、接続部160、液体検知素子130−c、接続点161、切断点170でのフレネル反射を示しており、その他の部分は、光ファイバ120の後方散乱光の強さを示している。横軸は距離を示しており、波形の左側ほどOTDR111に近く、右側ほどOTDR111から遠いことを示している。液体検知素子130−1と130−2との間隔が、20mに相当する。切断点170よりも右側は、雑音である。
【0026】
図15(A)と(B)から分かるように、2つの波形の違いは、液体検知素子130−4、130−5、130−6でのフレネル反射の強度だけであり、波形の他の部分は変化していない。つまり、各液体検知素子の測定精度が、他の液体検知素子の状態に依存しないことを示している。
上記のシステムでは、反射量測定器110または反射減衰量測定器110’を図示するにとどめたが、測定器をコンピュータと直接またはネットワークを介して接続し、コンピュータを用いて測定することも可能である。このようにコンピュータを用いれば、定期的な測定、自動測定、リアルタイム測定など、使用目的にあわせた様々な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の水検知センサの構造を示す図。
【図2】従来の水検知システムの構成を示す図。
【図3】従来の水検知センサを用いた場合の配線の様子を示す図。
【図4】本発明の液体検知システムの最も単純なシステム構成例を示す図。
【図5】液体検知素子130の構成例を示す図。
【図6】複数の液体検知素子を取り付けた場合のシステム構成例を示す図。
【図7】余長を、液体検知素子を接続する光ファイバに持たせた場合の液体検知システムの構成例を示す図。
【図8】余長を、光カプラ間を接続する光ファイバと液体検知素子を接続する光ファイバの両方に持たせた場合の液体検知システムの構成例を示す図。
【図9】光カプラとして3dBカプラを用いた場合の液体検知システムの構成例を示す図。
【図10】図8の構成に収納部を付加した液体検知システムの構成例を示す図。
【図11】図9の構成に収納部を付加した液体検知システムの構成例を示す図。
【図12】光カプラごとに収納部を設けた液体検知システムの構成例を示す図。
【図13】図3の従来の配線と本発明を用いた配線の違いを示す図。
【図14】本発明の液体検知システムの実験例の構成を示す図。
【図15】OTDR111での測定波形を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の有無を判別する光ファイバを用いた液体検知素子であって、
前記光ファイバが、当該光ファイバ内を伝搬してきた光を、フレネル反射によって、当該光ファイバ内を逆向きに伝搬させる先端を有する
ことを特徴とする液体検知素子。
【請求項2】
請求項1記載の液体検知素子であって、
前記光ファイバおよび前記光ファイバの先端は、あらかじめ定めた側圧が加わった場合にも、あらかじめ定めた値以上の曲げ損失が生じないように補強された
ことを特徴とする液体検知素子。
【請求項3】
液体の有無を判別する液体検知センサであって、
測定器と接続するための接続部と、
1段もしくは複数段に配置された光カプラと、
伝搬してきた前記光カプラによって分岐された光を、先端のフレネル反射によって、逆向きに伝搬させる光ファイバを有する液体検知素子と、
接続部から各前記液体検知素子の先端までの距離が異なるように調整された、前記接続部と前記光カプラとの間、光カプラ間、光カプラと液体検知素子との間の接続用光ファイバ
を備える液体検知センサ。
【請求項4】
請求項3記載の液体検知センサであって、
前記接続用光ファイバの余長を収納する余長収納部
も備える液体検知センサ。
【請求項5】
液体の有無を判別する液体検知システムであって、
光ファイバ内の反射量もしくは反射減衰量の分布を測定できる測定器と、
伝搬してきた前記光カプラによって分岐された光を、先端のフレネル反射によって、逆向きに伝搬させる光ファイバを有する液体検知素子と、
前記測定器と前記液体検知素子とを接続する光ファイバと
を備える液体検知システム。
【請求項6】
液体の有無を判別する液体検知システムであって、
光ファイバ内の反射量もしくは反射減衰量の分布を測定できる測定器と、
1段もしくは複数段に配置された光カプラと、
伝搬してきた前記光カプラによって分岐された光を、先端のフレネル反射によって、逆向きに伝搬させる光ファイバを有する液体検知素子と、
前記測定器から各前記液体検知素子の先端までの距離が異なるように調整された、前記測定器と前記光カプラとの間、光カプラ間、光カプラと液体検知素子との間の接続用光ファイバと
を備える液体検知システム。
【請求項7】
請求項6記載の液体検知システムであって、
前記接続用光ファイバの余長を収納する余長収納部
も備える液体検知システム。
【請求項8】
液体の有無を判別する液体検知方法であって、
光ファイバ内の反射量もしくは反射減衰量の分布を測定できる測定器に、直接または光ファイバを介して、1段もしくは複数段に光カプラを接続し、
伝搬してきた光を、先端のフレネル反射によって、逆向きに伝搬させる光ファイバを有する液体検知素子を、前記光カプラによって分岐された光が伝搬できるように接続し、
前記測定器から各前記液体検知素子の先端までの距離が異なるように、光カプラ間および光カプラと液体検知素子との間の接続用光ファイバの長さを調整し、
前記測定器によって、各液体検知素子のフレネル反射の反射量または反射減衰量を測定することによって液体の有無を確認する
ことを特徴とする液体検知方法。
【請求項9】
請求項8記載の液体検知方法であって、
前記接続用光ファイバの長さの調整後に、
前記接続用光ファイバの余長を、余長収納部に収納する
ことを特徴とする液体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−278870(P2007−278870A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106119(P2006−106119)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(500140127)エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社 (61)
【出願人】(391049530)株式会社信光社 (14)
【Fターム(参考)】