液体注入方法及び液体収容容器
【課題】使用済みの液体収容容器を安価に再生する。
【解決手段】少なくとも3個以上の液体収容室370,390,430を備え、これらの液体収容室370,390,430相互が降下型接続と上昇型接続とを有するように接続される液体収容容器1に対して、最上流の液体収容室370に連通する注入口601を開けて、液体供給孔50からの真空吸引により内部を減圧して、注入口601から液体収容室370側に向けて液体を充填後、注入口601を封止する。
【解決手段】少なくとも3個以上の液体収容室370,390,430を備え、これらの液体収容室370,390,430相互が降下型接続と上昇型接続とを有するように接続される液体収容容器1に対して、最上流の液体収容室370に連通する注入口601を開けて、液体供給孔50からの真空吸引により内部を減圧して、注入口601から液体収容室370側に向けて液体を充填後、注入口601を封止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に着脱可能に装着され、液体収容室に貯留している液体を前記液体消費装置に供給する液体収容容器に液体を注入する方法及び液体注入により製造される液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液体収容容器及び液体消費装置の例として、例えば、インク液を貯留したインクカートリッジと、該インクカートリッジが交換可能に装着されるインクジェット式記録装置を挙げることができる。
【0003】
上記インクカートリッジは、通常、インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着され、インク(液体)が充填されるインク収容室と、前記インク収容室に貯留されている液体をインクジェット式記録装置に供給するためのインク供給孔と、前記インク収容室とインク供給孔とを連通するインク誘導路と、前記インク収容室内のインクの消費に伴って外部から大気を前記インク収容室内に導入する大気連通路とを備えた構成とされていて、記録装置のカートリッジ装着部に装着された際に前記カートリッジ装着部に装備されたインク供給針が前記インク供給孔に挿入接続されることにより、貯留しているインクがインクジェット式記録装置の記録ヘッドに供給可能になる。
【0004】
インクジェット式記録装置における記録ヘッドは、熱や振動を利用してインク滴の噴射を制御するもので、インクカートリッジがインク切れになり、インクが供給されない状態でインク吐出動作を行う空打ちが発生すると、故障してしまう。そこで、インクジェット式記録装置では、記録ヘッドが空打ちをしないように、インクカートリッジにおけるインク液の残量を監視する必要が生じる。
【0005】
このような背景から、インクカートリッジに貯留されたインクを完全に最後まで使い切ってしまって、記録装置の記録ヘッドに空打ちを招くことがないように、インク収容室に貯留したインクの残量が予め設定した閾値まで消費された時に、所定の電気信号を出力する液体残量センサを備えるインクカートリッジが開発されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−146030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インクカートリッジは、多数の部品から構成される高精度に形成された容器であるため、インクを消尽した時に、そのまま廃棄することは、有用な資源の廃棄となり、経済的に大きな損失となってしまう。
そこで、使用済みのインクカートリッジにインクを再充填して再生することが望まれている。
【0008】
ところが、従来のインクカートリッジは、その組み立て工程の途中に、インクの充填工程を組み込んでいて、インクカートリッジの組み立て完了後は、同様のインク充填方法が利用できない場合が多い。
そこで、新品のインクカートリッジを組み立てる際のインク充填方法は使わずに、インクの充填を実現する再生方法の開発が必要となる。
【0009】
しかし、最近のインクカートリッジは、インク収容室とインク供給孔とを連通するインク誘導路に、インク供給孔へ供給するインク圧を調整すると共にインク供給孔側からの逆流を防止する逆止弁としても機能する差圧弁が設けられていたり、あるいはインクの残量を検出するための液体残量センサが備えられて、高性能化されている。更には、貯留しているインクの品質を長期に渡って維持するために、インク収容室や大気連通路の構造も複雑化している。
そのため、インクの注入のために、不用意にインクカートリッジを加工すると、インクを注入した際に、インク収容室以外の部分にインクが漏れたり、インク充填時に混入する気泡のために当初の機能が損なわれて、再生不良を招く虞がある。
また、インク注入のためにインクカートリッジに施す加工が複雑で、加工コストの高額化のために、再生コストが新規のインクカートリッジの製造コストを上回るようでは、再生の意義が薄れてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、液体収容容器に液体を注入する際に、液体収容容器への加工が少なくて済み、しかも、その液体収容容器の諸機能を損なうことなく液体を注入することができ、液体収容容器を安価に製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含むことを特徴とする液体注入方法により達成される。
【0012】
上記構成によれば、液体注入のために液体収容容器に実施する加工は、液体を注入するための注入口を開口させることと、液体の注入後に前記注入口を封止する加工で、いずれも簡単な加工となる。従って加工コストが安価で済み、また、手間もかからない。
注入口を設ける位置を、最上流の液体収容室にした場合は、液体収容容器に装備した複数個の全ての液体収容室と、液体収容室相互を連絡する液体誘導路に、円滑に液体を注入することができる。従って、液体を注入した液体収容容器では、液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下にジグザグに屈曲した流路構造が復元され、もし、上流の液体収容室で気泡が発生しても、降下型の液体誘導路に残存する液体が気泡の進行を止める防護壁となる。そのため、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。
また、液体収容室相互を連絡するジグザグに屈曲した流路に加えて、下流の各液体収容室の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能して、気泡が下流に移動することを阻止する。
【0013】
更に、本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器により達成される。
【0014】
上記構成によれば、液体収容室から液体供給部が連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室に使用可能な液体残量がある間は、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。そこで、気泡の進入に起因した液体収容容器の諸機能の低下を招くことなく液体を注入することができる。
また、再生に要するコストが安価で、液体収容容器を安価に提供できるため、液体消費装置の運用コストの低下にも貢献する。
【0015】
また、本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含む液体注入方法により達成される。
【0016】
上記構成によれば、液体注入のために液体収容容器に実施する加工は、液体を注入するための注入口を開口させることと、液体の注入後に前記注入口を封止する加工で、いずれも簡単な加工となる。従って加工コストが安価で済み、また、手間もかからない。
注入口を設ける位置を、最上流の液体収容室にした場合は、液体収容容器に装備した複数個の全ての液体収容室と、液体収容室相互を連絡する液体誘導路に、円滑に液体を注入することができる。従って、液体を注入した液体収容容器では、液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下に屈曲した流路構造が復元され、もし、上流の液体収容室で気泡が発生しても、降下型の液体誘導路に残存する液体が気泡の進行を止める防護壁となる。そのため、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。
また、液体収容室相互を連絡する屈曲した流路に加えて、下流の各液体収容室の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能して、気泡が下流に移動することを阻止する。
【0017】
尚、上記構成の液体注入方法において、前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることが望ましい。
このような構成の液体注入方法によれば、複数組の液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下にジグザグに屈曲した流路構造が復元され、液体誘導路に進入した気泡が下流に更に進み難くなる。
【0018】
また、上記構成の液体注入方法において、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることが望ましい。
【0019】
このような構成の液体注入方法によれば、液体収容室から液体残量センサが連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室により、液体誘導路に進入した気泡が液体残量センサによる検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因した液体残量センサの誤検出によって使い切れずに廃棄される液体量が増えるという問題を回避できる。
【0020】
また、本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器により達成される。
【0021】
上記構成によれば、液体収容室から液体供給部が連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室に使用可能な液体残量がある間は、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。そこで、気泡の進入に起因した液体収容容器の諸機能の低下を招くことなく液体を注入することができる。
また、再生に要するコストが安価で、液体収容容器を安価に提供できるため、液体消費装置の運用コストの低下にも貢献する。
【0022】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、複数組の液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下にジグザグに屈曲した流路構造が復元され、液体誘導路に進入した気泡が下流に更に進み難くなる。
【0023】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることが望ましい。
【0024】
このような構成の液体収容容器によれば、液体収容室に貯留した液体の残量が予め設定した閾値まで消費された時に、所定の信号を出力することができる。また、液体収容室から液体残量センサが連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室により、液体誘導路に進入した気泡が液体残量センサによる検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因した液体残量センサの誤検出によって使い切れずに廃棄される液体量が増えるという問題を回避できる。
【0025】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記大気連通路には、前記液体収容室からの液漏れ防止する空気室が設けられることが望ましい
このような構成の液体収容容器によれば、熱膨張等により液体が液体収容室から大気側へ流出した場合であっても、空気室で確実にトラップし、液体漏れが発生することを抑制することができる。また、空気室でトラップした液体は、液体の消費に伴って液体収容室側に流れ込むように構成されているので、内部に収容された液体を無駄なく利用することができる。
【0026】
また、上記構成の液体収容容器において、前記大気連通路の少なくとも一部は、前記液体容器の重力方向で最も上となる部分を通過することが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、液体が逆流した場合であっても最も重力方向で上となる部分を超えて容器本体の大気開放孔までたどり着きづらい。したがって液体漏れを抑制することが可能となる。
【0027】
また、上記構成の液体収容容器において、前記大気連通路には、気体を通過させるとともに、液体を通過不可能に遮断する気液分離フィルタが設けられることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、大気連通路に液体が流れ出した場合であっても、大気連通路には気液分離フィルタが設けられているので、液体はこの気液分離フィルタを超えて大気開放孔側に漏れ出さない。したがって、大気開放孔からのインク漏れをより抑制することができる。
【0028】
また、上記構成の液体収容容器は、内部の気圧が大気圧以下となるように減圧封止した減圧パックの中に梱包されていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、使用前には液体収容容器内部の気圧が減圧パックの負圧吸引力により規定値以下に保たれ、溶存空気の少ない液体を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る液体注入方法と、液体収容容器の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
以下の実施形態では、液体収容容器の一例として、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置(プリンタ)に装着されるインクカートリッジを挙げて説明する。
【0030】
図1は本発明に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視図であり、図2は図1のインクカートリッジを図1とは逆の角度からみた外観斜視図である。図3は図1のインクカートリッジの分解斜視図、図4は図3のインクカートリッジを図3とは逆の角度からみた分解斜視図である。図5は図1のインクカートリッジをインクジェット式記録装置のキャリッジに取り付けた状態を示す図であり、図6はキャリッジへの取付直前の状態を示す断面図、図7はキャリッジへの取付直後の状態を示す断面図である。
【0031】
本発明によるインクカートリッジ1は、図1及び図2に示すように、略直方体形状を有し、内部に設けられたインク収容室にインクを貯留・収納する液体収容容器である。インクカートリッジ1は、液体消費装置の一例としてのインクジェット式記録装置のキャリッジ200に装着され、当該インクジェット式記録装置にインクを供給する(図5参照)。
【0032】
インクカートリッジ1の外観的特徴について説明すると、図1及び図2に示すように、インクカートリッジ1は、フラットな上面1aを有し、上面1aに対向する底面1bにインクジェット式記録装置に接続されてインクを供給するインク供給孔50が設けられている。また、底面1bには、インクカートリッジ1内部に大気を導入する大気開放孔100が開口している。すなわち、インクカートリッジ1は、大気開放孔100から空気を導入しつつインク供給孔50からインクを供給する大気開放型のインクカートリッジである。
【0033】
インクカートリッジ1の大気開放孔100は、図6に示すように、底面1bに底面側から上面側に向けて開口した略円筒形状の凹部101と、凹部101の内周面に開口した小孔102とを有している。小穴102は、後述の大気連通路に連通しており、この小穴102を介して大気が後述の最上流のインク収容室370に導入される。
【0034】
大気開放孔100の凹部101は、キャリッジ200に形成された突起230を受け入れるような深さに構成されている。この突起230は、大気開放孔100を気密に閉塞する閉塞手段としての封止フィルム90の剥がし忘れを防止するための剥離忘れ防止突起である。すなわち、封止フィルム90が貼り付けられた状態では、大気開放孔100内に突起230が挿入されないため、インクカートリッジ1がキャリッジ200に取り付けられない。これによりユーザが、大気開放孔100上に封止フィルム90が貼り付けたままキャリッジ200にインクカートリッジ1を取り付けようとしても取り付けられないようにすることにより、インクカートリッジ1の装着時には確実に封止フィルム90を剥がすように促すことができる。
【0035】
また、図1に示すように、インクカートリッジ1の上面1aの一つの短辺側に隣り合う狭側面1cには、インクカートリッジ1が誤った位置に装着されることを防ぐための誤挿入防止突起22が形成されている。受け手となるキャリッジ200側には、図5に示すように、誤挿入防止突起22と対応する凹凸220が形成されており、インクカートリッジ1は誤挿入防止突起22と凹凸220とが干渉しない場合のみキャリッジ200に装着される。誤挿入防止突起22は、インクIの種類毎に異なる形状を有し、受け手となるキャリッジ200側の凹凸220も対応するインクIの種類に応じた形状を有している。したがって、図5に示すように、キャリッジ200が複数のインクカートリッジを装着可能な場合でも、誤った位置にインクカートリッジを装着することがない。
【0036】
また、図2に示すように、インクカートリッジ1の狭側面1cと対向する狭側面1dには、係合レバー11が設けられている。この係合レバー11は、キャリッジ200への装着時にキャリッジ200に形成された凹部210と係合する突起11aが形成されており、係合レバー11が撓みつつ突起11aと凹部210が係合することによりキャリッジ200に対してインクカートリッジ1が位置固定される。
【0037】
また、係合レバー11の下方には、回路基板34が設けられている。この回路基板34上には、複数の電極端子34aが形成されており、これら電極端子34aがキャリッジ200に設けられた電極部材(不図示)と接触することにより、インクカートリッジ1が電気的にインクジェット式記録装置と接続される。回路基板34には、データ書換可能な不揮発性メモリが設けられており、インクカートリッジ1に関する各種情報やインクジェット式記録装置のインク使用情報等が記憶される。また、回路基板34の裏側には、インクカートリッジ1内のインク残量に応じて異なる信号を出力するインク残量センサ(液体残量センサ)31(図3または図4参照のこと)が設けられている。以下の説明では、インク残量センサ31と回路基板34とを合わせてインクエンドセンサ30と呼称することとする。
【0038】
また、インクカートリッジ1の上面1aには、図1に示すように、インクカートリッジの中身を示すラベル60aが貼り付けられている。このラベル60aは、広側面1fを覆う外表面フィルム60の端部が上面1aにまでまたがって貼り付けられることによって形成されている。
【0039】
また、図1及び図2に示すように、インクカートリッジ1の上面1aの2つの長辺側に隣り合う広側面1e,1fは、フラットな面形状とされている。以下の説明では、便宜上、広側面1eの側を正面側、広側面1fの側を背面側、狭側面1cの側を右側面側、そして狭側面1dの側を左側面側として説明する。
【0040】
次に、図3及び図4を参照しながら、インクカートリッジ1を構成する各部について説明する。
【0041】
インクカートリッジ1は、容器本体であるカートリッジ本体10と、カートリッジ本体10の正面側を覆う蓋部材20とを有している。
【0042】
カートリッジ本体10は、その正面側には様々な形状を有するリブ10aが形成されており、これらのリブ10aが仕切を為して、インクIが充填される複数のインク収容室(液体収容室)、インクは充填されない未充填室、後述の大気連通路150の途中に位置する空気室などを、内部に区画形成する。
カートリッジ本体10と蓋部材20との間には、カートリッジ本体10の正面側を覆うフィルム80が設けられており、このフィルム80によってリブ、凹部、溝の上面が塞がれて複数の流路やインク収容室、未充填室、空気室が形成される。
【0043】
またカートリッジ本体10の背面側には、差圧弁40を収容する凹部としての差圧弁収容室40aと気液分離フィルタ70を構成する凹部としての気液分離室70aとが形成されている。
【0044】
差圧弁収容室40aには、バルブ部材41とバネ42とバネ座43とが収納されて差圧弁40を構成している。差圧弁40は、下流側のインク供給孔50と上流側のインク収容室との間に配置されて、インク収容室側からインク供給孔50側へのインクの流れを遮断する閉弁状態に付勢されている。インク供給孔50からプリンタ側へのインク供給に伴い差圧弁40のインク供給孔50側とインク収容室側の差圧が一定以上となることで、差圧弁40が閉弁状態から開弁状態に移行し、インク供給孔50にインクIが供給されるように構成されており、インク供給孔50から供給されるインクIに負圧を作用させる。
【0045】
気液分離室70aの上面には、気液分離室70aの中央部近傍に設けられた外周を囲む土手70bに沿って気液分離膜71が貼着されている。この気液分離膜71は、気体を通過させるとともに液体を通過不可能に遮断する素材であり、全体で気液分離フィルタ70を構成している。気液分離フィルタ70は、大気開放孔100とインク収容室とを結ぶ大気連通路150内に設けられており、インク収容室のインクIが大気連通路150を経て大気開放孔100から流出しないようにするためのものである。
【0046】
カートリッジ本体10の背面側には、差圧弁収容室40aと気液分離室70a以外にも複数の溝10bが刻まれている。これらの溝10bは、差圧弁40と気液分離フィルタ70が構成された状態で外表面を外表面フィルム60が覆うことにより各溝10bの開口部が塞がれ、大気連通路150やインク誘導路が形成される。
【0047】
カートリッジ本体10の右側面側には、図4に示すように、インクエンドセンサ30を構成する各部材を収納する凹部としてセンサ室30aが形成されている。このセンサ室30aには、インク残量センサ31と、インク残量センサ31をセンサ室30aの内壁面に押しつけて固定する圧縮バネ32とが収納される。また、センサ室30aの開口部はカバー部材33によって覆われ、このカバー部材33の外表面33a上に回路基板34が固定される。インク残量センサ31のセンシング部材は回路基板34と接続されている。
【0048】
インク残量センサ31は、インク収容室からインク供給孔50との間のインク誘導路の一部を形成するキャビティと、このキャビティの壁面の一部を形成する振動板と、この振動板上に振動を印加させる圧電素子(圧電アクチュエータ)とを備えて、前記振動板に振動を印加した際の残留振動を信号としてインクジェット式記録装置に出力する。インクジェット式記録装置の液体残量検出部は、このインク残量センサ31から出力された信号から、インクIと気体(インクに混入した気泡B)との間での残留振動の振幅、周波数等の違いを検出して、カートリッジ本体10内におけるインクIの有無を検出する。
具体的には、インクジェット式記録装置の液体残量検出部は、カートリッジ本体10内のインク収容室のインクIが消尽または所定量まで減少して、インク収容室内に導入された大気がインク誘導路を伝って、インク残量センサ31のキャビティ内に進入すると、インク残量センサ31からの信号に基づいて、その時の残留振動の振幅や周波数の変化から、カートリッジ本体10内のインク収容室のインクIが消尽または所定量まで減少したことを検知し、インクエンドまたはインクニアエンドを示す電気信号を出力する。
【0049】
カートリッジ本体10の底面側には、先ほど説明したインク供給孔50と大気開放孔100以外に、図4に示すように、インク注入時に真空引き手段を介してインクカートリッジ1内部から空気を吸い出して減圧に用いられる減圧孔110と、インク収容室からインク供給孔50に至るインク誘導路を構成する凹部95aと、インクエンドセンサ30の下方に設けられたバッファ室30bとが形成されている。
【0050】
インク供給孔50、大気開放孔100、減圧孔110、凹部95a、及びバッファ室30bは、インクカートリッジ製造直後には、全てそれぞれ封止フィルム54,90,98,95,35によってそれぞれの開口部が封止された状態となっている。このうち、大気開放孔100を封止する封止フィルム90は、インクカートリッジをインクジェット式記録装置に装着して使用状態とする前にユーザによって剥離される。これにより、大気開放孔100が外部に露出し、インクカートリッジ1内部のインク収容室が大気連通路150を介して外気と連通する。
【0051】
また、インク供給孔50の外表面に貼り付けられた封止フィルム35は、図6及び図7に示すように、インクジェット式記録装置への装着時にインクジェット式記録装置側のインク供給針240によって破られるように構成されている。
【0052】
インク供給孔50の内部には、図6及び図7に示すように、装着時にインク供給針の240の外表面に押しつけられる環状のシール部材51と、プリンタに装着されていない場合はシール部材51と当接してインク供給孔50を閉塞するバネ座52と、バネ座52をシール部材51の当接方向に付勢する圧縮バネ53とを備えている。
【0053】
図6及び図7に示すように、インク供給針240がインク供給孔50内に挿入されると、シール部材51の内周とインク供給針240の外周がシールされ、インク供給孔50とインク供給針240との間の隙間が液密に封止される。また、インク供給針51の先端がバネ座52と当接し、バネ座52を上に押し上げ、バネ座52とシール部材51のシールが解除されることにより、インク供給孔50からインク供給針240にインクIが供給可能となる。
【0054】
次に、図8〜図12を参照しながら、上記のインクカートリッジ1の内部構造について説明する。
【0055】
図8はインクカートリッジ1のカートリッジ本体10を正面側から見た図であり、図9はインクカートリッジ1のカートリッジ本体10を背面側から見た図であり、図10の(a)は図8の簡略模式図であり、図10の(b)は図9の簡略模式図であり、図11は図8のA−A断面図である。また、図12は図8に示した流路の一部拡大斜視図である。
【0056】
上記のインクカートリッジ1では、インクIが充填される主なインク収容室として、上下2つに分断された上部インク収容室370及び下部インク収容室390と、これらの上下のインク収容室に挟まれるように位置するバッファ室430との3つのインク収容室が、カートリッジ本体10の正面側に形成されている。
また、カートリッジ本体10の背面側には、インクIの消費量に応じて、大気を最上流のインク収容室である上部インク収容室370に導入する大気連通路150が形成されている。
【0057】
インク収容室370,390及びバッファ室430は、リブ10aにより区分されている。そして、これらの各インク収容室は、水平方向に延在して収容室の底壁となるリブ10aの一部に、下方に窪ませた形状の窪み374,394,434が形成されている。
窪み374は、上部インク収容室370のリブ10aによる底壁375の一部を下方に窪ませたものである。窪み394は、下部インク収容室390のリブ10aによる底壁395と壁面の膨出部によりカートリッジ厚さ方向に膨らませたものである。窪み434は、バッファ室430の10aによる底壁435の一部を下方に窪ませたものである。
【0058】
そして、各窪み374,394,434の底部又はその付近には、インク誘導路380,上流側インクエンドセンサ液体誘導路400及びインク誘導路440に連通するインク排出口371,311,432が設けられている。
インク排出口371,432は、各インク収容室の壁面をカートリッジ本体10の厚さ方向に貫通した貫通孔である。また、インク排出口312は、インク残量センサ31内のキャビティ(流路)の出口である。
【0059】
インク誘導路380は、一端が上部インク収容室370のインク排出口371に連通すると共に、他端が下部インク収容室390に設けられたインク流入口391に連通しており、上部インク収容室370のインクを下部インク収容室390に誘導する液体誘導路となっている。このインク誘導路380は、上部インク収容室370のインク排出口371から鉛直下方に延びた形態で設けられており、液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となる降下型接続で一対のインク収容室370,390相互を接続している。
【0060】
インク誘導路420は、一端がインク残量センサ31内のキャビティのインク排出口312に連通すると共に、他端がバッファ室430に設けられたインク流入口431に連通しており、上流側インクエンドセンサ液体誘導路400を介して下部インク収容室390のインクをバッファ室430に誘導する。このインク誘導路420は、液体流量センサ31内のキャビティのインク排出口312から斜め上方に延びた形態で設けられており、液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となる上昇型接続で一対のインク収容室390,430相互を接続している。
【0061】
即ち、上記図示例のカートリッジ本体10では、3個のインク収容室370,390,430相互は、降下型接続と、上昇型接続とを有するように接続されている。
【0062】
インク誘導路440は、バッファ室430のインク排出口432から差圧弁40にインクを誘導するインク流路である。
【0063】
また、上記の各インク収容室のインク流入口372,391,431は、いずれも、各インク収容室において、各インク収容室の底壁375,395,435の近傍に設けられている。
【0064】
以下、まず主たるインク収容室である上部インク収容室370からインク供給孔50に至るまでのインク誘導路を図8〜図12を参照しながら説明する。
【0065】
上部インク収容室370は、カートリッジ本体10内の最上流(最上位)のインク収容室で、図8に示すように、カートリッジ本体10の正面側に形成されている。この上部インク収容室370は、インク収容室の約半分を占めるインク収容領域であり、カートリッジ本体10の略半分から上の部分に形成されている。上部インク収容室370の底壁の窪み374には、インク誘導路380と連通するインク排出口371が開口している。このインク排出口371は、上部インク収容室370の底壁となっているリブ10aのよりも下がった位置にあり、上部インク収容室370内のインク液面が底壁まで下がっても、その時の液面よりも下方に位置して、安定したインクIの導出を継続する。
【0066】
インク誘導路380は、図9に示すように、カートリッジ本体10の背面側に形成され上方からインクを下方の下部インク収容室390に導く。
【0067】
下部インク収容室390は、上部インク収容室370に貯留されているインクIが導入されるインク収容室で、図8に示すように、カートリッジ本体10の正面側に形成されるインク収容室の約半分を占めるインク収容領域であり、カートリッジ本体10の略半分から下の部分に形成されている。この下部インク収容室390の底壁となっているリブ10aの近傍に、インク誘導路380と連通するインク流入口391は、下部インク収容室390の底壁395の下方に配置された連通流路に開口しており、該連通流路を介して上部インク収容室370からのインクIが流入する。
【0068】
下部インク収容室390は、底壁395を貫通したインク排出口311により上流側インクエンドセンサ液体誘導路400に連通している。上流側インクエンドセンサ液体誘導路400には、三次元的に形成された迷路流路が形成されており、この迷路流路にてインクエンド前に流入した気泡等を捕捉して下流側に流れないように構成されている。
【0069】
上流側インクエンドセンサ液体誘導路400は、図示せぬ貫通孔を介して下流側インクエンドセンサ液体誘導路410に連通しており、下流側インクエンドセンサ液体誘導路410を介してインクIがインク残量センサ31に導かれる。
【0070】
インク残量センサ31に導かれたインクは、インク残量センサ31内のキャビティ(流路)を通って、キャビティの出口であるインク排出口312からカートリッジ本体10の背面側に形成されたインク誘導路420に導かれる。インク誘導路420は、インク残量センサ31から斜め上方にインクを導くように形成されており、バッファ室430と連通するインク流入口431に接続されている。これにより、インク残量センサ31を出たインクは、インク誘導路420を経てバッファ室430に導かれる。
【0071】
バッファ室430は、上部インク収容室370と下部インク収容室390との間にリブ10aにより区画形成された小部屋であり、差圧弁40の直前のインク貯留空間として形成されている。バッファ室430は、差圧弁40の裏側に対向するように形成されており、バッファ室430の窪み434に形成されたインク排出口432が連通したインク誘導路440を介して差圧弁40にインクIが流入する。
【0072】
差圧弁40に流入したインクは、差圧弁40によって下流側に導かれ、貫通孔451を介して出口流路450に導かれる。出口流路450は、インク供給孔50に連通しており、インク供給孔50に差し込まれたインク供給針240を介してインクIがインクジェット式記録装置側に供給される。
【0073】
次に、大気開放孔100から上部インク収容室370に至るまでの大気連通路150を図8〜図12を参照しながら説明する。
【0074】
インクカートリッジ1内のインクIが消費されてインクカートリッジ1内部の圧力が低下すると、貯留しているインクIの減少分だけ大気開放孔100から大気(空気)が上部インク収容室370に流入する。
【0075】
大気開放孔100の内部に設けられた小穴102は、カートリッジ本体10の背面側に形成された蛇道310の一端に連通している。蛇道310は、大気開放孔100から上部インク収容室370までの距離を長くしインク中の水分の蒸発を抑制するように細長く形成された蛇行路である。蛇道310の他端は、気液分離フィルタ70に接続されている。
【0076】
気液分離フィルタ70を構成する気液分離室70aの底面には、貫通孔322が形成されており、貫通孔322を介してカートリッジ本体10の正面側に形成された空間320に連通している。気液分離フィルタ70においては、貫通孔322と蛇道310の他端との間に気液分離膜71が配置される。気液分離膜71は撥水性および撥油性の高い繊維材料をメッシュ状に編みこんだもので形成される。
【0077】
空間320は、カートリッジ本体10の正面側からみて上部インク室の右上方に形成されている。空間320には、貫通孔322の上部に貫通孔321が開口している。空間320は、この貫通孔321を介して背面側に形成された上部連結流路330に連通している。
【0078】
上部連結流路330は、インクカートリッジ1の最も上面側、すなわちインクカートリッジ1が取り付けられた状態における重力方向で最も上となる部分を通過するように、背面側から見て貫通孔321から長辺に沿って右方向に延びる流路部分333と、短辺近傍の折り返し部335で折り返して流路部分333よりもインクカートリッジ1の上面側を通って貫通孔321の近傍に形成された貫通孔341まで延びる流路部分337とを有している。なお、貫通孔341は、正面側に形成されたインクトラップ室340に連通している。
【0079】
ここで、背面側からこの上部連結流路330を見ると、折り返し部335から貫通孔341までの延びる流路部分337には、貫通孔341が形成された位置336と、位置336よりカートリッジ厚さ方向位置が深く掘り下げられた凹部332が設けられており、この凹部332を区切るようにリブ331が複数形成されている。また、貫通孔321から折り返し部335まで延びる流路部分333は、折り返し部335から貫通孔341までの延びる流路部分337よりも深さが浅く形成されている。
【0080】
また、上記インクカートリッジ1では、上部連結流路330を重力方向で最も上となる部分に形成しているので、基本的にはインクIが上部連結流路330を通過して大気開放孔100側に移動しないように構成されている。また、上部連結流路330は、毛細管現象等によりインクIの逆流が発生しない程度に幅広の太さを有するとともに、流路部分337には凹部332が形成されているので逆流してきたインクを捕捉しやすく構成されている。
【0081】
インクトラップ室340は、正面側から見てカートリッジ本体10の右上方の隅の位置に形成された直方体形状の空間である。貫通孔341は、図12に示すように、正面側から見てインクトラップ室340の左上方奥側隅部近傍に開口している。また、インクトラップ室340の右下方手前側隅部には、仕切となるリブ10aの一部が切り欠かれた切り欠き部342が形成されており、この切り欠き部342を介して連絡バッファ室350に連通している。ここで、インクトラップ室340および連絡バッファ室350は、大気連通路150の途中の容積を拡張した形態の空気室で、何らかの理由により上部インク収容室370からインクIが逆流した場合でもこのインクトラップ室340および連絡バッファ室350にインクを留め、これ以上大気開放孔100側へなるべく流れ込まないように構成されたものである。具体的なインクトラップ室340および連絡バッファ室350の役割については後述する。
【0082】
連絡バッファ室350は、インクトラップ室340の下方に形成された空間である。連結バッファ室350の底面352にはインク注入時に空気抜きを行うための減圧孔110が設けられている。また、底面352近傍であってインクジェット式記録装置への装着時最も重力方向下方の部位には厚さ方向側に貫通孔351が開口しており、この貫通孔351を介して背面側に形成された液体誘導路360に連通している。
【0083】
液体誘導路360は、背面側から見て中央上方側に延びており、上部インク収容室370の底面近傍に開口した貫通孔372を介して上部インク収容室370と連通している。すなわち、大気開放孔100から液体誘導路360までが上記インクカートリッジ1の大気連通路150を構成している。液体誘導路360は、メニスカスを形成し、インクIの逆流が発生しない程度の細さに形成されている。
【0084】
更に、上記インクカートリッジ1の場合、図8にも示したように、カートリッジ本体10の正面側には、前述のインク収容室(上部インク収容室370,390、バッファ室430)や、空気室(インクトラップ室340、連絡バッファ室350)や、インク誘導路(上流側インクエンドセンサ液体誘導路400、下流側インクエンドセンサ液体誘導路410)の他に、インクIが充填されない未充填室501が画成されている。
【0085】
未充填室501は、カートリッジ本体10の正面側で、左側面寄りのハッチングを施した領域で、上部インク収容室370と下部インク収容室390とに挟まれるように画成されている。
そして、この未充填室501は、その内部領域の左上隅に、背面側に貫通した大気開放孔502が設けられ、該大気開放孔502により外気に連通している。
この未充填室501は、インクカートリッジ1を減圧パック包装した時に、脱気用負圧を蓄圧した脱気室となる。
【0086】
以上に説明したインクカートリッジ1でも、例えば、使用途中でキャリッジ200から取り外されたインクカートリッジ1が倒れたり、あるいはキャリッジ200に装着された状態でも外部振動の影響等で各インク収容室370,390,430内のインク液面が揺れたとき、インク残量が少ないインク収容室では、その収容室内のインク排出口へ空気層が接触し、インク排出口に連通するインク誘導路に気泡Bが進入することがある。
【0087】
しかし、上述したインクカートリッジ1の構成によれば、3個のインク収容室370,390,430が、降下型接続と上昇型接続とを有するようにそれぞれ接続されているため、インク供給孔50までの液体誘導路が上下に屈曲した流路となっており、降下型の液体誘導路に残存するインクIが気泡の進行を止める防護壁となる。そのため、インク誘導路に進入した気泡Bが下流に進み難い。
また、上昇型接続となるインク誘導路は、キャリッジ200から取り外されたインクカートリッジ1が天地逆になったような場合には、降下型接続として機能して、気泡の下流側への移動を阻止する。即ち、インクカートリッジ1が天地逆にされても、降下型接続によって気泡の下流側への移動を阻止する作用が得られる。
【0088】
更に、2段目以降に接続される上部インク収容室390,430は、上流の上部インク収容室370から流入してくる気泡を捕捉するトラップ空間として機能し、例えば、インクカートリッジ1が横倒し状態になって、上下方向に延在していた流路が水平方向に延在する形態になると、インク収容室相互の降下型接続が気泡の移動阻止に十分な効力を発揮できなくなる。しかし、そのような場合でも、各インク収容室390,430の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能し、そのインク収容室390,430に残存するインクIが気泡の下流への移動を阻止する防護壁として機能して、気泡の下流への移動を確実に阻止する。
【0089】
また、上位のインク収容室370からインク誘導路380に気泡Bが進入しても、インク収容室相互を連絡する下に屈曲したインク誘導路380やインク収容室390に使用可能なインク残量がある間は、インク誘導路に進入した気泡Bがインク残量センサ31による検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因したインク残量センサ31の誤検出によって使い切れずに廃棄されるインク量が増えるという問題を回避できる。
【0090】
なお、上述のインクカートリッジ1では、一つのカートリッジ本体内に3個のインク収容室を区画形成されていたが、カートリッジ本体内に装備するインク収容室の数量は、3個以上の任意数のものが考えられ、インク収容室の装備数が増えるほど、気泡トラップが多重化されて、気泡の下流への移動を阻止する性能が向上する。特に、液体残量センサより上流におけるインク収容室や降下型接続及び上昇型接続の装備数が増えるほど、気泡が液体残量センサによる検出位置に到達することを確実に抑止することができる。
【0091】
次に、以上に説明したインクカートリッジ1内のインクIが消尽された場合、または所定量まで減少した場合に、その使用済みのインクカートリッジ1にインクを注入する方法の一実施の形態を、図13〜図14に基づいて説明する。
【0092】
まず、本実施の形態の再生方法で使用するインク再注入装置の構成について説明する。
インク再注入装置600は、図13に示すように、カートリッジ本体10に穿孔加工により開けた注入口601に接続されるインク注入手段610と、カートリッジ本体10のインク供給孔50に接続される真空吸引手段620とから構成されている。
【0093】
インク注入手段610は、充填するインクを貯留したインクタンク611と、このインクタンク611内のインクを前記注入口601に接続された流路612に圧送するポンプ613と、このポンプ613と注入口601との間で流路612を開閉するバルブ614とを備えている。
【0094】
真空吸引手段620は、真空吸引に必要な負圧を発生する真空ポンプ621と、この真空ポンプ621の発生する負圧をインク供給孔50に作用させる液体誘導路622と、液体誘導路622の途中に装備されて真空吸引によりカートリッジ本体10側から液体誘導路622に流入してきたインクを捕捉・回収して、インクミスト等から真空ポンプ621を保護するインクトラップ623と、このインクトラップ623とインク供給孔50との間で液体誘導路622を開閉するバルブ624とを備えている。
【0095】
本実施形態では、インクカートリッジ1の構造や機能を配慮し、上部インク収容室370に連通する注入口601を大気連通路150に形成する位置が、大気連通路150の一部を構成している液体誘導路360の下流端に位置する貫通孔372と対向する位置付近とされる。
【0096】
そして、貫通孔372と対向する注入口601は、貫通孔372に一致するように、カートリッジ本体10の背面側を覆っている外表面フィルム60に孔を開けることで形成する。なお、該注入口601に挿入される流路612の先端部は、例えば、貫通孔372に押し当てると、貫通孔372の周囲の容器壁面に気密に密着して、流路612と貫通孔372とを気密な接続状態とするシールリング等が設けられている。
【0097】
なお、カートリッジ本体10上の注入口601は、最上位の上部インク収容室370に直接連通する形態であれば良く、注入口601の装備位置は、特に貫通孔372の対向位置に限定する必要はない。例えば、カートリッジ本体10の背面側から注入口601を形成する場合は、図14に示すように、上部インク収容室370の領域に対応し、背面側に装備されている蛇道310やインク誘導路380と干渉しない適宜位置P2を注入口601の装備位置に設定することができる。
【0098】
本実施の形態における注入法は、まず、上部インク収容室370に連通するように、注入口601をカートリッジ本体10に開口させる注入口形成工程と、インク供給孔50から内部に残留するインク及び残留気体を真空吸引手段620により吸引除去する真空吸引工程と、注入口601からインク注入手段610により所定量のインクを注入する液体充填工程と、液体充填工程の終了後に注入口601を封止する封止工程と、を順に実施することで、使用済みのインクカートリッジ1を、再び使用可能な再生インクカートリッジ(再生液体収容容器)として復活させる。
【0099】
封止工程は、具体的には、注入口601を、封止フィルムまたはテープ等を接着又は溶着し,または栓等で気密に塞ぐ処理工程である。
【0100】
以上に説明した本実施の形態のインクカートリッジ1の再生方法では、インクIの注入のためにインクカートリッジ1に実施する加工は、最上流の上部インク収容室370に連通するように、インクを注入するための注入口601を開口させることと、インクIの充填後に、注入口601を封止する加工で、いずれも簡単な加工となる。従って加工コストが安価で済み、また、手間もかからない。
【0101】
そして、本実施の形態の再生方法では、インク供給孔50から内部に残留するインク及び残留気体を吸引除去する真空吸引工程を備えているため、注入口601から所定量のインクを注入する液体充填工程は、カートリッジ本体10の各インク誘導路380,420,440や各インク収容室を減圧環境に管理して、注入したインクを、インク収容室370,390,430だけでなく、インク供給孔50に至るすべてのインク誘導路の隅々まで、効率よく充填できる。
【0102】
また、インクIの充填時に混入する気泡も、真空吸引によりインク供給孔50から外部に排除したり、あるいは真空吸引により形成する容器内の減圧環境により、流入した気泡を液中に溶解・消滅させることができる。
従って、インクIの注入時に混入する気泡Bが、インク収容室やインク誘導路に浮遊したり、あるいは流路壁面に付着して残存することがなく、例えば、液体残量センサの検出部付近に気泡Bが残存することにより液体残量センサが正常に作動しなくなるといった不都合も生じない。
【0103】
また、注入口601を設ける位置が、最上流の上部インク収容室370であることから、カートリッジ本体10に装備した複数個の全てのインク収容室と、インク収容室相互を連絡する液体誘導路に、円滑にインクを注入することができる。
従って、インクを注入した再生インクカートリッジ1では、インク収容室相互を降下型接続する液体誘導路であるインク誘導路380と上昇型接続する液体誘導路であるインク誘導路420とで、上下に屈曲した流路構造が復元され、もし、上流のインク収容室370で気泡Bが発生しても、降下型の液体誘導路に残存するインクIが気泡の下流への移動を止める防護壁となる。そのため、インク誘導路380に進入した気泡Bが下流に進み難くなる。
また、インク収容室相互を連絡する上下に屈曲した流路に加えて、下流の各インク収容室390,430の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能して、気泡Bが下流に移動することを阻止する。
【0104】
即ち、インク収容室相互の液体誘導路380,420における気泡トラップ機能や、下流のインク収容室390,430による気泡トラップ機能が、インクカートリッジ1の新規製造時と同様に復活する。
従って、新規に製造されたインクカートリッジ1の場合と同様に、インク収容室からインク誘導路に進入した気泡Bがインク残量センサ31による検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因した液体残量センサの誤検出によって使い切れずに廃棄されるインク量が増えるという問題を回避できる。
【0105】
即ち、本実施の形態におけるインクカートリッジ1の再生方法によれば、使用済みのインクカートリッジ1にインクを注入する際に、インクカートリッジ1への加工が少なくて済み、しかも、そのインクカートリッジ1の諸機能を損なうことなくインクを注入することができ、再生インクカートリッジ1を安価に製造することができる。
【0106】
そして、このような再生方法により再生した再生インクカートリッジを提供すれば、インクカートリッジの容器としての製品寿命が延びるため、資源の節約、環境汚染の防止に貢献することができる。また、再生に要するコストが低く、安価に提供できるため、インクジェット式記録装置の運用コストの低下にも貢献する。
【0107】
なお、上記実施形態のインクカートリッジ1においては、一対のインク収容室相互を上昇型接続で接続するインク誘導路420が、上流側インクエンドセンサ液体誘導路400及び下流側インクエンドセンサ液体誘導路410を介して下部インク収容室390とバッファ室430とを接続しており、下部インク収容室390とバッファ室430とは、インク誘導路420によって直接接続されていない。勿論、本発明の液体収容容器はこの様な構成に限定されるものではなく、一対の液体収容室相互が、降下型接続と上昇型接続とを交互に繰り返す直列状に接続されても良いことは云うまでもない。
【0108】
また、上記実施形態のインクカートリッジ1においては、降下型接続のインク誘導路380の後にインク誘導路420で上昇型接続とされた後、上昇型接続のインク誘導路440の後に出口流路450で降下型接続とされており、降下型接続と上昇型接続とを有する組合せ(降下と上昇の順番は問わない)が、複数組設けられた構成である。ここで、本発明の液体収容容器が4個以上の液体収容室を備える際には、これらの液体収容室相互が、降下型接続と上昇型接続とを少なくとも一つずつ有していれば良く、残りの液体収容室相互の接続は、降下型接続又は上昇型接続、或いは液体の流れ方向が水平流となる水平型接続等の他の接続形態を適宜採り得ることは勿論である。
【0109】
更に、本発明により製造する液体収容容器は、上記実施形態に示したインクカートリッジに限らない。また、本発明により製造した液体収容容器が装着される容器装着部を備えた液体消費装置も、上記実施形態に示したインクジェット式記録装置に限らない。
液体消費装置としては、液体収容容器が着脱可能に装着される容器装着部を備え、前記液体収容容器に貯留されている液体が装置に供給される各種の装置が該当し、具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る液体収容容器の再生方法により再生される液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視図である。
【図2】図1のインクカートリッジを図1とは逆の角度からみた外観斜視図である。
【図3】図1のインクカートリッジの分解斜視図である。
【図4】図3のインクカートリッジを図3とは逆の角度からみた分解斜視図である。
【図5】図1のインクカートリッジをインクジェット式記録装置のキャリッジに取り付けた状態を示す図である。
【図6】図1のインクカートリッジのキャリッジへの取付直前の状態を示す断面図である。
【図7】図1のインクカートリッジのキャリッジへの取付直後の状態を示す断面図である。
【図8】図1のインクカートリッジのカートリッジ本体を正面側から見た図である。
【図9】図1のインクカートリッジのカートリッジ本体を背面側から見た図である。
【図10】(a)は図8の簡略模式図、(b)は図9の簡略模式図である。
【図11】図8のA−A断面図である。
【図12】図8に示したカートリッジ本体内の流路構造の一部の拡大斜視図である。
【図13】本発明に係る液体収容容器の注入方法を実施するインク再注入装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図10(b)に示したインクカートリッジの構造において、本発明に係る液体注入方法でインクを注入可能な箇所の説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1:インクカートリッジ(液体収容容器)、10:カートリッジ本体(容器本体)、11:係合レバー、20:蓋部材、30:インクエンドセンサ、31:インク残量センサ(液体残量センサ)、40:差圧弁、50:インク供給孔(液体供給孔)、70:気液分離フィルタ、80:フィルム、90:封止フィルム(閉塞手段)、100:大気開放孔、150:大気連通路、220:キャリッジ、330:上部連結流路、340:インクトラップ室(空気室)、350:連結バッファ室(空気室)、370:上部インク収容室(液体収容室)、371,432:インク排出口(液体排出口)、374,394,434:窪み、375,395,435:液体収容室の底壁、380:インク誘導路(液体誘導路)、390:下部インク収容室(液体収容室)、391,431:インク流入口(液体流入口)、400:上流側インクエンドセンサ液体誘導路(液体誘導路)、410:下流側インクエンドセンサ液体誘導路(液体誘導路)、420:インク誘導路(液体誘導路)、430:バッファ室(液体収容室)、501,511,512,521:未充填室(脱気室)、600:インク再注入装置、601:注入口、610:インク注入手段、620:真空吸引手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に着脱可能に装着され、液体収容室に貯留している液体を前記液体消費装置に供給する液体収容容器に液体を注入する方法及び液体注入により製造される液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液体収容容器及び液体消費装置の例として、例えば、インク液を貯留したインクカートリッジと、該インクカートリッジが交換可能に装着されるインクジェット式記録装置を挙げることができる。
【0003】
上記インクカートリッジは、通常、インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着され、インク(液体)が充填されるインク収容室と、前記インク収容室に貯留されている液体をインクジェット式記録装置に供給するためのインク供給孔と、前記インク収容室とインク供給孔とを連通するインク誘導路と、前記インク収容室内のインクの消費に伴って外部から大気を前記インク収容室内に導入する大気連通路とを備えた構成とされていて、記録装置のカートリッジ装着部に装着された際に前記カートリッジ装着部に装備されたインク供給針が前記インク供給孔に挿入接続されることにより、貯留しているインクがインクジェット式記録装置の記録ヘッドに供給可能になる。
【0004】
インクジェット式記録装置における記録ヘッドは、熱や振動を利用してインク滴の噴射を制御するもので、インクカートリッジがインク切れになり、インクが供給されない状態でインク吐出動作を行う空打ちが発生すると、故障してしまう。そこで、インクジェット式記録装置では、記録ヘッドが空打ちをしないように、インクカートリッジにおけるインク液の残量を監視する必要が生じる。
【0005】
このような背景から、インクカートリッジに貯留されたインクを完全に最後まで使い切ってしまって、記録装置の記録ヘッドに空打ちを招くことがないように、インク収容室に貯留したインクの残量が予め設定した閾値まで消費された時に、所定の電気信号を出力する液体残量センサを備えるインクカートリッジが開発されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−146030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インクカートリッジは、多数の部品から構成される高精度に形成された容器であるため、インクを消尽した時に、そのまま廃棄することは、有用な資源の廃棄となり、経済的に大きな損失となってしまう。
そこで、使用済みのインクカートリッジにインクを再充填して再生することが望まれている。
【0008】
ところが、従来のインクカートリッジは、その組み立て工程の途中に、インクの充填工程を組み込んでいて、インクカートリッジの組み立て完了後は、同様のインク充填方法が利用できない場合が多い。
そこで、新品のインクカートリッジを組み立てる際のインク充填方法は使わずに、インクの充填を実現する再生方法の開発が必要となる。
【0009】
しかし、最近のインクカートリッジは、インク収容室とインク供給孔とを連通するインク誘導路に、インク供給孔へ供給するインク圧を調整すると共にインク供給孔側からの逆流を防止する逆止弁としても機能する差圧弁が設けられていたり、あるいはインクの残量を検出するための液体残量センサが備えられて、高性能化されている。更には、貯留しているインクの品質を長期に渡って維持するために、インク収容室や大気連通路の構造も複雑化している。
そのため、インクの注入のために、不用意にインクカートリッジを加工すると、インクを注入した際に、インク収容室以外の部分にインクが漏れたり、インク充填時に混入する気泡のために当初の機能が損なわれて、再生不良を招く虞がある。
また、インク注入のためにインクカートリッジに施す加工が複雑で、加工コストの高額化のために、再生コストが新規のインクカートリッジの製造コストを上回るようでは、再生の意義が薄れてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、液体収容容器に液体を注入する際に、液体収容容器への加工が少なくて済み、しかも、その液体収容容器の諸機能を損なうことなく液体を注入することができ、液体収容容器を安価に製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含むことを特徴とする液体注入方法により達成される。
【0012】
上記構成によれば、液体注入のために液体収容容器に実施する加工は、液体を注入するための注入口を開口させることと、液体の注入後に前記注入口を封止する加工で、いずれも簡単な加工となる。従って加工コストが安価で済み、また、手間もかからない。
注入口を設ける位置を、最上流の液体収容室にした場合は、液体収容容器に装備した複数個の全ての液体収容室と、液体収容室相互を連絡する液体誘導路に、円滑に液体を注入することができる。従って、液体を注入した液体収容容器では、液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下にジグザグに屈曲した流路構造が復元され、もし、上流の液体収容室で気泡が発生しても、降下型の液体誘導路に残存する液体が気泡の進行を止める防護壁となる。そのため、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。
また、液体収容室相互を連絡するジグザグに屈曲した流路に加えて、下流の各液体収容室の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能して、気泡が下流に移動することを阻止する。
【0013】
更に、本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器により達成される。
【0014】
上記構成によれば、液体収容室から液体供給部が連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室に使用可能な液体残量がある間は、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。そこで、気泡の進入に起因した液体収容容器の諸機能の低下を招くことなく液体を注入することができる。
また、再生に要するコストが安価で、液体収容容器を安価に提供できるため、液体消費装置の運用コストの低下にも貢献する。
【0015】
また、本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含む液体注入方法により達成される。
【0016】
上記構成によれば、液体注入のために液体収容容器に実施する加工は、液体を注入するための注入口を開口させることと、液体の注入後に前記注入口を封止する加工で、いずれも簡単な加工となる。従って加工コストが安価で済み、また、手間もかからない。
注入口を設ける位置を、最上流の液体収容室にした場合は、液体収容容器に装備した複数個の全ての液体収容室と、液体収容室相互を連絡する液体誘導路に、円滑に液体を注入することができる。従って、液体を注入した液体収容容器では、液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下に屈曲した流路構造が復元され、もし、上流の液体収容室で気泡が発生しても、降下型の液体誘導路に残存する液体が気泡の進行を止める防護壁となる。そのため、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。
また、液体収容室相互を連絡する屈曲した流路に加えて、下流の各液体収容室の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能して、気泡が下流に移動することを阻止する。
【0017】
尚、上記構成の液体注入方法において、前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることが望ましい。
このような構成の液体注入方法によれば、複数組の液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下にジグザグに屈曲した流路構造が復元され、液体誘導路に進入した気泡が下流に更に進み難くなる。
【0018】
また、上記構成の液体注入方法において、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることが望ましい。
【0019】
このような構成の液体注入方法によれば、液体収容室から液体残量センサが連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室により、液体誘導路に進入した気泡が液体残量センサによる検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因した液体残量センサの誤検出によって使い切れずに廃棄される液体量が増えるという問題を回避できる。
【0020】
また、本発明の上記課題の解決は、液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器により達成される。
【0021】
上記構成によれば、液体収容室から液体供給部が連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室に使用可能な液体残量がある間は、液体誘導路に進入した気泡が下流に進み難くなる。そこで、気泡の進入に起因した液体収容容器の諸機能の低下を招くことなく液体を注入することができる。
また、再生に要するコストが安価で、液体収容容器を安価に提供できるため、液体消費装置の運用コストの低下にも貢献する。
【0022】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、複数組の液体収容室相互を降下型接続する液体誘導路と上昇型接続する液体誘導路とで、上下にジグザグに屈曲した流路構造が復元され、液体誘導路に進入した気泡が下流に更に進み難くなる。
【0023】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることが望ましい。
【0024】
このような構成の液体収容容器によれば、液体収容室に貯留した液体の残量が予め設定した閾値まで消費された時に、所定の信号を出力することができる。また、液体収容室から液体残量センサが連通している液体誘導路に気泡が進入しても、液体収容室相互を連絡するジグザグ状の液体誘導路や液体収容室により、液体誘導路に進入した気泡が液体残量センサによる検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因した液体残量センサの誤検出によって使い切れずに廃棄される液体量が増えるという問題を回避できる。
【0025】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記大気連通路には、前記液体収容室からの液漏れ防止する空気室が設けられることが望ましい
このような構成の液体収容容器によれば、熱膨張等により液体が液体収容室から大気側へ流出した場合であっても、空気室で確実にトラップし、液体漏れが発生することを抑制することができる。また、空気室でトラップした液体は、液体の消費に伴って液体収容室側に流れ込むように構成されているので、内部に収容された液体を無駄なく利用することができる。
【0026】
また、上記構成の液体収容容器において、前記大気連通路の少なくとも一部は、前記液体容器の重力方向で最も上となる部分を通過することが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、液体が逆流した場合であっても最も重力方向で上となる部分を超えて容器本体の大気開放孔までたどり着きづらい。したがって液体漏れを抑制することが可能となる。
【0027】
また、上記構成の液体収容容器において、前記大気連通路には、気体を通過させるとともに、液体を通過不可能に遮断する気液分離フィルタが設けられることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、大気連通路に液体が流れ出した場合であっても、大気連通路には気液分離フィルタが設けられているので、液体はこの気液分離フィルタを超えて大気開放孔側に漏れ出さない。したがって、大気開放孔からのインク漏れをより抑制することができる。
【0028】
また、上記構成の液体収容容器は、内部の気圧が大気圧以下となるように減圧封止した減圧パックの中に梱包されていることが望ましい。
このような構成の液体収容容器によれば、使用前には液体収容容器内部の気圧が減圧パックの負圧吸引力により規定値以下に保たれ、溶存空気の少ない液体を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る液体注入方法と、液体収容容器の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
以下の実施形態では、液体収容容器の一例として、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置(プリンタ)に装着されるインクカートリッジを挙げて説明する。
【0030】
図1は本発明に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視図であり、図2は図1のインクカートリッジを図1とは逆の角度からみた外観斜視図である。図3は図1のインクカートリッジの分解斜視図、図4は図3のインクカートリッジを図3とは逆の角度からみた分解斜視図である。図5は図1のインクカートリッジをインクジェット式記録装置のキャリッジに取り付けた状態を示す図であり、図6はキャリッジへの取付直前の状態を示す断面図、図7はキャリッジへの取付直後の状態を示す断面図である。
【0031】
本発明によるインクカートリッジ1は、図1及び図2に示すように、略直方体形状を有し、内部に設けられたインク収容室にインクを貯留・収納する液体収容容器である。インクカートリッジ1は、液体消費装置の一例としてのインクジェット式記録装置のキャリッジ200に装着され、当該インクジェット式記録装置にインクを供給する(図5参照)。
【0032】
インクカートリッジ1の外観的特徴について説明すると、図1及び図2に示すように、インクカートリッジ1は、フラットな上面1aを有し、上面1aに対向する底面1bにインクジェット式記録装置に接続されてインクを供給するインク供給孔50が設けられている。また、底面1bには、インクカートリッジ1内部に大気を導入する大気開放孔100が開口している。すなわち、インクカートリッジ1は、大気開放孔100から空気を導入しつつインク供給孔50からインクを供給する大気開放型のインクカートリッジである。
【0033】
インクカートリッジ1の大気開放孔100は、図6に示すように、底面1bに底面側から上面側に向けて開口した略円筒形状の凹部101と、凹部101の内周面に開口した小孔102とを有している。小穴102は、後述の大気連通路に連通しており、この小穴102を介して大気が後述の最上流のインク収容室370に導入される。
【0034】
大気開放孔100の凹部101は、キャリッジ200に形成された突起230を受け入れるような深さに構成されている。この突起230は、大気開放孔100を気密に閉塞する閉塞手段としての封止フィルム90の剥がし忘れを防止するための剥離忘れ防止突起である。すなわち、封止フィルム90が貼り付けられた状態では、大気開放孔100内に突起230が挿入されないため、インクカートリッジ1がキャリッジ200に取り付けられない。これによりユーザが、大気開放孔100上に封止フィルム90が貼り付けたままキャリッジ200にインクカートリッジ1を取り付けようとしても取り付けられないようにすることにより、インクカートリッジ1の装着時には確実に封止フィルム90を剥がすように促すことができる。
【0035】
また、図1に示すように、インクカートリッジ1の上面1aの一つの短辺側に隣り合う狭側面1cには、インクカートリッジ1が誤った位置に装着されることを防ぐための誤挿入防止突起22が形成されている。受け手となるキャリッジ200側には、図5に示すように、誤挿入防止突起22と対応する凹凸220が形成されており、インクカートリッジ1は誤挿入防止突起22と凹凸220とが干渉しない場合のみキャリッジ200に装着される。誤挿入防止突起22は、インクIの種類毎に異なる形状を有し、受け手となるキャリッジ200側の凹凸220も対応するインクIの種類に応じた形状を有している。したがって、図5に示すように、キャリッジ200が複数のインクカートリッジを装着可能な場合でも、誤った位置にインクカートリッジを装着することがない。
【0036】
また、図2に示すように、インクカートリッジ1の狭側面1cと対向する狭側面1dには、係合レバー11が設けられている。この係合レバー11は、キャリッジ200への装着時にキャリッジ200に形成された凹部210と係合する突起11aが形成されており、係合レバー11が撓みつつ突起11aと凹部210が係合することによりキャリッジ200に対してインクカートリッジ1が位置固定される。
【0037】
また、係合レバー11の下方には、回路基板34が設けられている。この回路基板34上には、複数の電極端子34aが形成されており、これら電極端子34aがキャリッジ200に設けられた電極部材(不図示)と接触することにより、インクカートリッジ1が電気的にインクジェット式記録装置と接続される。回路基板34には、データ書換可能な不揮発性メモリが設けられており、インクカートリッジ1に関する各種情報やインクジェット式記録装置のインク使用情報等が記憶される。また、回路基板34の裏側には、インクカートリッジ1内のインク残量に応じて異なる信号を出力するインク残量センサ(液体残量センサ)31(図3または図4参照のこと)が設けられている。以下の説明では、インク残量センサ31と回路基板34とを合わせてインクエンドセンサ30と呼称することとする。
【0038】
また、インクカートリッジ1の上面1aには、図1に示すように、インクカートリッジの中身を示すラベル60aが貼り付けられている。このラベル60aは、広側面1fを覆う外表面フィルム60の端部が上面1aにまでまたがって貼り付けられることによって形成されている。
【0039】
また、図1及び図2に示すように、インクカートリッジ1の上面1aの2つの長辺側に隣り合う広側面1e,1fは、フラットな面形状とされている。以下の説明では、便宜上、広側面1eの側を正面側、広側面1fの側を背面側、狭側面1cの側を右側面側、そして狭側面1dの側を左側面側として説明する。
【0040】
次に、図3及び図4を参照しながら、インクカートリッジ1を構成する各部について説明する。
【0041】
インクカートリッジ1は、容器本体であるカートリッジ本体10と、カートリッジ本体10の正面側を覆う蓋部材20とを有している。
【0042】
カートリッジ本体10は、その正面側には様々な形状を有するリブ10aが形成されており、これらのリブ10aが仕切を為して、インクIが充填される複数のインク収容室(液体収容室)、インクは充填されない未充填室、後述の大気連通路150の途中に位置する空気室などを、内部に区画形成する。
カートリッジ本体10と蓋部材20との間には、カートリッジ本体10の正面側を覆うフィルム80が設けられており、このフィルム80によってリブ、凹部、溝の上面が塞がれて複数の流路やインク収容室、未充填室、空気室が形成される。
【0043】
またカートリッジ本体10の背面側には、差圧弁40を収容する凹部としての差圧弁収容室40aと気液分離フィルタ70を構成する凹部としての気液分離室70aとが形成されている。
【0044】
差圧弁収容室40aには、バルブ部材41とバネ42とバネ座43とが収納されて差圧弁40を構成している。差圧弁40は、下流側のインク供給孔50と上流側のインク収容室との間に配置されて、インク収容室側からインク供給孔50側へのインクの流れを遮断する閉弁状態に付勢されている。インク供給孔50からプリンタ側へのインク供給に伴い差圧弁40のインク供給孔50側とインク収容室側の差圧が一定以上となることで、差圧弁40が閉弁状態から開弁状態に移行し、インク供給孔50にインクIが供給されるように構成されており、インク供給孔50から供給されるインクIに負圧を作用させる。
【0045】
気液分離室70aの上面には、気液分離室70aの中央部近傍に設けられた外周を囲む土手70bに沿って気液分離膜71が貼着されている。この気液分離膜71は、気体を通過させるとともに液体を通過不可能に遮断する素材であり、全体で気液分離フィルタ70を構成している。気液分離フィルタ70は、大気開放孔100とインク収容室とを結ぶ大気連通路150内に設けられており、インク収容室のインクIが大気連通路150を経て大気開放孔100から流出しないようにするためのものである。
【0046】
カートリッジ本体10の背面側には、差圧弁収容室40aと気液分離室70a以外にも複数の溝10bが刻まれている。これらの溝10bは、差圧弁40と気液分離フィルタ70が構成された状態で外表面を外表面フィルム60が覆うことにより各溝10bの開口部が塞がれ、大気連通路150やインク誘導路が形成される。
【0047】
カートリッジ本体10の右側面側には、図4に示すように、インクエンドセンサ30を構成する各部材を収納する凹部としてセンサ室30aが形成されている。このセンサ室30aには、インク残量センサ31と、インク残量センサ31をセンサ室30aの内壁面に押しつけて固定する圧縮バネ32とが収納される。また、センサ室30aの開口部はカバー部材33によって覆われ、このカバー部材33の外表面33a上に回路基板34が固定される。インク残量センサ31のセンシング部材は回路基板34と接続されている。
【0048】
インク残量センサ31は、インク収容室からインク供給孔50との間のインク誘導路の一部を形成するキャビティと、このキャビティの壁面の一部を形成する振動板と、この振動板上に振動を印加させる圧電素子(圧電アクチュエータ)とを備えて、前記振動板に振動を印加した際の残留振動を信号としてインクジェット式記録装置に出力する。インクジェット式記録装置の液体残量検出部は、このインク残量センサ31から出力された信号から、インクIと気体(インクに混入した気泡B)との間での残留振動の振幅、周波数等の違いを検出して、カートリッジ本体10内におけるインクIの有無を検出する。
具体的には、インクジェット式記録装置の液体残量検出部は、カートリッジ本体10内のインク収容室のインクIが消尽または所定量まで減少して、インク収容室内に導入された大気がインク誘導路を伝って、インク残量センサ31のキャビティ内に進入すると、インク残量センサ31からの信号に基づいて、その時の残留振動の振幅や周波数の変化から、カートリッジ本体10内のインク収容室のインクIが消尽または所定量まで減少したことを検知し、インクエンドまたはインクニアエンドを示す電気信号を出力する。
【0049】
カートリッジ本体10の底面側には、先ほど説明したインク供給孔50と大気開放孔100以外に、図4に示すように、インク注入時に真空引き手段を介してインクカートリッジ1内部から空気を吸い出して減圧に用いられる減圧孔110と、インク収容室からインク供給孔50に至るインク誘導路を構成する凹部95aと、インクエンドセンサ30の下方に設けられたバッファ室30bとが形成されている。
【0050】
インク供給孔50、大気開放孔100、減圧孔110、凹部95a、及びバッファ室30bは、インクカートリッジ製造直後には、全てそれぞれ封止フィルム54,90,98,95,35によってそれぞれの開口部が封止された状態となっている。このうち、大気開放孔100を封止する封止フィルム90は、インクカートリッジをインクジェット式記録装置に装着して使用状態とする前にユーザによって剥離される。これにより、大気開放孔100が外部に露出し、インクカートリッジ1内部のインク収容室が大気連通路150を介して外気と連通する。
【0051】
また、インク供給孔50の外表面に貼り付けられた封止フィルム35は、図6及び図7に示すように、インクジェット式記録装置への装着時にインクジェット式記録装置側のインク供給針240によって破られるように構成されている。
【0052】
インク供給孔50の内部には、図6及び図7に示すように、装着時にインク供給針の240の外表面に押しつけられる環状のシール部材51と、プリンタに装着されていない場合はシール部材51と当接してインク供給孔50を閉塞するバネ座52と、バネ座52をシール部材51の当接方向に付勢する圧縮バネ53とを備えている。
【0053】
図6及び図7に示すように、インク供給針240がインク供給孔50内に挿入されると、シール部材51の内周とインク供給針240の外周がシールされ、インク供給孔50とインク供給針240との間の隙間が液密に封止される。また、インク供給針51の先端がバネ座52と当接し、バネ座52を上に押し上げ、バネ座52とシール部材51のシールが解除されることにより、インク供給孔50からインク供給針240にインクIが供給可能となる。
【0054】
次に、図8〜図12を参照しながら、上記のインクカートリッジ1の内部構造について説明する。
【0055】
図8はインクカートリッジ1のカートリッジ本体10を正面側から見た図であり、図9はインクカートリッジ1のカートリッジ本体10を背面側から見た図であり、図10の(a)は図8の簡略模式図であり、図10の(b)は図9の簡略模式図であり、図11は図8のA−A断面図である。また、図12は図8に示した流路の一部拡大斜視図である。
【0056】
上記のインクカートリッジ1では、インクIが充填される主なインク収容室として、上下2つに分断された上部インク収容室370及び下部インク収容室390と、これらの上下のインク収容室に挟まれるように位置するバッファ室430との3つのインク収容室が、カートリッジ本体10の正面側に形成されている。
また、カートリッジ本体10の背面側には、インクIの消費量に応じて、大気を最上流のインク収容室である上部インク収容室370に導入する大気連通路150が形成されている。
【0057】
インク収容室370,390及びバッファ室430は、リブ10aにより区分されている。そして、これらの各インク収容室は、水平方向に延在して収容室の底壁となるリブ10aの一部に、下方に窪ませた形状の窪み374,394,434が形成されている。
窪み374は、上部インク収容室370のリブ10aによる底壁375の一部を下方に窪ませたものである。窪み394は、下部インク収容室390のリブ10aによる底壁395と壁面の膨出部によりカートリッジ厚さ方向に膨らませたものである。窪み434は、バッファ室430の10aによる底壁435の一部を下方に窪ませたものである。
【0058】
そして、各窪み374,394,434の底部又はその付近には、インク誘導路380,上流側インクエンドセンサ液体誘導路400及びインク誘導路440に連通するインク排出口371,311,432が設けられている。
インク排出口371,432は、各インク収容室の壁面をカートリッジ本体10の厚さ方向に貫通した貫通孔である。また、インク排出口312は、インク残量センサ31内のキャビティ(流路)の出口である。
【0059】
インク誘導路380は、一端が上部インク収容室370のインク排出口371に連通すると共に、他端が下部インク収容室390に設けられたインク流入口391に連通しており、上部インク収容室370のインクを下部インク収容室390に誘導する液体誘導路となっている。このインク誘導路380は、上部インク収容室370のインク排出口371から鉛直下方に延びた形態で設けられており、液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となる降下型接続で一対のインク収容室370,390相互を接続している。
【0060】
インク誘導路420は、一端がインク残量センサ31内のキャビティのインク排出口312に連通すると共に、他端がバッファ室430に設けられたインク流入口431に連通しており、上流側インクエンドセンサ液体誘導路400を介して下部インク収容室390のインクをバッファ室430に誘導する。このインク誘導路420は、液体流量センサ31内のキャビティのインク排出口312から斜め上方に延びた形態で設けられており、液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となる上昇型接続で一対のインク収容室390,430相互を接続している。
【0061】
即ち、上記図示例のカートリッジ本体10では、3個のインク収容室370,390,430相互は、降下型接続と、上昇型接続とを有するように接続されている。
【0062】
インク誘導路440は、バッファ室430のインク排出口432から差圧弁40にインクを誘導するインク流路である。
【0063】
また、上記の各インク収容室のインク流入口372,391,431は、いずれも、各インク収容室において、各インク収容室の底壁375,395,435の近傍に設けられている。
【0064】
以下、まず主たるインク収容室である上部インク収容室370からインク供給孔50に至るまでのインク誘導路を図8〜図12を参照しながら説明する。
【0065】
上部インク収容室370は、カートリッジ本体10内の最上流(最上位)のインク収容室で、図8に示すように、カートリッジ本体10の正面側に形成されている。この上部インク収容室370は、インク収容室の約半分を占めるインク収容領域であり、カートリッジ本体10の略半分から上の部分に形成されている。上部インク収容室370の底壁の窪み374には、インク誘導路380と連通するインク排出口371が開口している。このインク排出口371は、上部インク収容室370の底壁となっているリブ10aのよりも下がった位置にあり、上部インク収容室370内のインク液面が底壁まで下がっても、その時の液面よりも下方に位置して、安定したインクIの導出を継続する。
【0066】
インク誘導路380は、図9に示すように、カートリッジ本体10の背面側に形成され上方からインクを下方の下部インク収容室390に導く。
【0067】
下部インク収容室390は、上部インク収容室370に貯留されているインクIが導入されるインク収容室で、図8に示すように、カートリッジ本体10の正面側に形成されるインク収容室の約半分を占めるインク収容領域であり、カートリッジ本体10の略半分から下の部分に形成されている。この下部インク収容室390の底壁となっているリブ10aの近傍に、インク誘導路380と連通するインク流入口391は、下部インク収容室390の底壁395の下方に配置された連通流路に開口しており、該連通流路を介して上部インク収容室370からのインクIが流入する。
【0068】
下部インク収容室390は、底壁395を貫通したインク排出口311により上流側インクエンドセンサ液体誘導路400に連通している。上流側インクエンドセンサ液体誘導路400には、三次元的に形成された迷路流路が形成されており、この迷路流路にてインクエンド前に流入した気泡等を捕捉して下流側に流れないように構成されている。
【0069】
上流側インクエンドセンサ液体誘導路400は、図示せぬ貫通孔を介して下流側インクエンドセンサ液体誘導路410に連通しており、下流側インクエンドセンサ液体誘導路410を介してインクIがインク残量センサ31に導かれる。
【0070】
インク残量センサ31に導かれたインクは、インク残量センサ31内のキャビティ(流路)を通って、キャビティの出口であるインク排出口312からカートリッジ本体10の背面側に形成されたインク誘導路420に導かれる。インク誘導路420は、インク残量センサ31から斜め上方にインクを導くように形成されており、バッファ室430と連通するインク流入口431に接続されている。これにより、インク残量センサ31を出たインクは、インク誘導路420を経てバッファ室430に導かれる。
【0071】
バッファ室430は、上部インク収容室370と下部インク収容室390との間にリブ10aにより区画形成された小部屋であり、差圧弁40の直前のインク貯留空間として形成されている。バッファ室430は、差圧弁40の裏側に対向するように形成されており、バッファ室430の窪み434に形成されたインク排出口432が連通したインク誘導路440を介して差圧弁40にインクIが流入する。
【0072】
差圧弁40に流入したインクは、差圧弁40によって下流側に導かれ、貫通孔451を介して出口流路450に導かれる。出口流路450は、インク供給孔50に連通しており、インク供給孔50に差し込まれたインク供給針240を介してインクIがインクジェット式記録装置側に供給される。
【0073】
次に、大気開放孔100から上部インク収容室370に至るまでの大気連通路150を図8〜図12を参照しながら説明する。
【0074】
インクカートリッジ1内のインクIが消費されてインクカートリッジ1内部の圧力が低下すると、貯留しているインクIの減少分だけ大気開放孔100から大気(空気)が上部インク収容室370に流入する。
【0075】
大気開放孔100の内部に設けられた小穴102は、カートリッジ本体10の背面側に形成された蛇道310の一端に連通している。蛇道310は、大気開放孔100から上部インク収容室370までの距離を長くしインク中の水分の蒸発を抑制するように細長く形成された蛇行路である。蛇道310の他端は、気液分離フィルタ70に接続されている。
【0076】
気液分離フィルタ70を構成する気液分離室70aの底面には、貫通孔322が形成されており、貫通孔322を介してカートリッジ本体10の正面側に形成された空間320に連通している。気液分離フィルタ70においては、貫通孔322と蛇道310の他端との間に気液分離膜71が配置される。気液分離膜71は撥水性および撥油性の高い繊維材料をメッシュ状に編みこんだもので形成される。
【0077】
空間320は、カートリッジ本体10の正面側からみて上部インク室の右上方に形成されている。空間320には、貫通孔322の上部に貫通孔321が開口している。空間320は、この貫通孔321を介して背面側に形成された上部連結流路330に連通している。
【0078】
上部連結流路330は、インクカートリッジ1の最も上面側、すなわちインクカートリッジ1が取り付けられた状態における重力方向で最も上となる部分を通過するように、背面側から見て貫通孔321から長辺に沿って右方向に延びる流路部分333と、短辺近傍の折り返し部335で折り返して流路部分333よりもインクカートリッジ1の上面側を通って貫通孔321の近傍に形成された貫通孔341まで延びる流路部分337とを有している。なお、貫通孔341は、正面側に形成されたインクトラップ室340に連通している。
【0079】
ここで、背面側からこの上部連結流路330を見ると、折り返し部335から貫通孔341までの延びる流路部分337には、貫通孔341が形成された位置336と、位置336よりカートリッジ厚さ方向位置が深く掘り下げられた凹部332が設けられており、この凹部332を区切るようにリブ331が複数形成されている。また、貫通孔321から折り返し部335まで延びる流路部分333は、折り返し部335から貫通孔341までの延びる流路部分337よりも深さが浅く形成されている。
【0080】
また、上記インクカートリッジ1では、上部連結流路330を重力方向で最も上となる部分に形成しているので、基本的にはインクIが上部連結流路330を通過して大気開放孔100側に移動しないように構成されている。また、上部連結流路330は、毛細管現象等によりインクIの逆流が発生しない程度に幅広の太さを有するとともに、流路部分337には凹部332が形成されているので逆流してきたインクを捕捉しやすく構成されている。
【0081】
インクトラップ室340は、正面側から見てカートリッジ本体10の右上方の隅の位置に形成された直方体形状の空間である。貫通孔341は、図12に示すように、正面側から見てインクトラップ室340の左上方奥側隅部近傍に開口している。また、インクトラップ室340の右下方手前側隅部には、仕切となるリブ10aの一部が切り欠かれた切り欠き部342が形成されており、この切り欠き部342を介して連絡バッファ室350に連通している。ここで、インクトラップ室340および連絡バッファ室350は、大気連通路150の途中の容積を拡張した形態の空気室で、何らかの理由により上部インク収容室370からインクIが逆流した場合でもこのインクトラップ室340および連絡バッファ室350にインクを留め、これ以上大気開放孔100側へなるべく流れ込まないように構成されたものである。具体的なインクトラップ室340および連絡バッファ室350の役割については後述する。
【0082】
連絡バッファ室350は、インクトラップ室340の下方に形成された空間である。連結バッファ室350の底面352にはインク注入時に空気抜きを行うための減圧孔110が設けられている。また、底面352近傍であってインクジェット式記録装置への装着時最も重力方向下方の部位には厚さ方向側に貫通孔351が開口しており、この貫通孔351を介して背面側に形成された液体誘導路360に連通している。
【0083】
液体誘導路360は、背面側から見て中央上方側に延びており、上部インク収容室370の底面近傍に開口した貫通孔372を介して上部インク収容室370と連通している。すなわち、大気開放孔100から液体誘導路360までが上記インクカートリッジ1の大気連通路150を構成している。液体誘導路360は、メニスカスを形成し、インクIの逆流が発生しない程度の細さに形成されている。
【0084】
更に、上記インクカートリッジ1の場合、図8にも示したように、カートリッジ本体10の正面側には、前述のインク収容室(上部インク収容室370,390、バッファ室430)や、空気室(インクトラップ室340、連絡バッファ室350)や、インク誘導路(上流側インクエンドセンサ液体誘導路400、下流側インクエンドセンサ液体誘導路410)の他に、インクIが充填されない未充填室501が画成されている。
【0085】
未充填室501は、カートリッジ本体10の正面側で、左側面寄りのハッチングを施した領域で、上部インク収容室370と下部インク収容室390とに挟まれるように画成されている。
そして、この未充填室501は、その内部領域の左上隅に、背面側に貫通した大気開放孔502が設けられ、該大気開放孔502により外気に連通している。
この未充填室501は、インクカートリッジ1を減圧パック包装した時に、脱気用負圧を蓄圧した脱気室となる。
【0086】
以上に説明したインクカートリッジ1でも、例えば、使用途中でキャリッジ200から取り外されたインクカートリッジ1が倒れたり、あるいはキャリッジ200に装着された状態でも外部振動の影響等で各インク収容室370,390,430内のインク液面が揺れたとき、インク残量が少ないインク収容室では、その収容室内のインク排出口へ空気層が接触し、インク排出口に連通するインク誘導路に気泡Bが進入することがある。
【0087】
しかし、上述したインクカートリッジ1の構成によれば、3個のインク収容室370,390,430が、降下型接続と上昇型接続とを有するようにそれぞれ接続されているため、インク供給孔50までの液体誘導路が上下に屈曲した流路となっており、降下型の液体誘導路に残存するインクIが気泡の進行を止める防護壁となる。そのため、インク誘導路に進入した気泡Bが下流に進み難い。
また、上昇型接続となるインク誘導路は、キャリッジ200から取り外されたインクカートリッジ1が天地逆になったような場合には、降下型接続として機能して、気泡の下流側への移動を阻止する。即ち、インクカートリッジ1が天地逆にされても、降下型接続によって気泡の下流側への移動を阻止する作用が得られる。
【0088】
更に、2段目以降に接続される上部インク収容室390,430は、上流の上部インク収容室370から流入してくる気泡を捕捉するトラップ空間として機能し、例えば、インクカートリッジ1が横倒し状態になって、上下方向に延在していた流路が水平方向に延在する形態になると、インク収容室相互の降下型接続が気泡の移動阻止に十分な効力を発揮できなくなる。しかし、そのような場合でも、各インク収容室390,430の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能し、そのインク収容室390,430に残存するインクIが気泡の下流への移動を阻止する防護壁として機能して、気泡の下流への移動を確実に阻止する。
【0089】
また、上位のインク収容室370からインク誘導路380に気泡Bが進入しても、インク収容室相互を連絡する下に屈曲したインク誘導路380やインク収容室390に使用可能なインク残量がある間は、インク誘導路に進入した気泡Bがインク残量センサ31による検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因したインク残量センサ31の誤検出によって使い切れずに廃棄されるインク量が増えるという問題を回避できる。
【0090】
なお、上述のインクカートリッジ1では、一つのカートリッジ本体内に3個のインク収容室を区画形成されていたが、カートリッジ本体内に装備するインク収容室の数量は、3個以上の任意数のものが考えられ、インク収容室の装備数が増えるほど、気泡トラップが多重化されて、気泡の下流への移動を阻止する性能が向上する。特に、液体残量センサより上流におけるインク収容室や降下型接続及び上昇型接続の装備数が増えるほど、気泡が液体残量センサによる検出位置に到達することを確実に抑止することができる。
【0091】
次に、以上に説明したインクカートリッジ1内のインクIが消尽された場合、または所定量まで減少した場合に、その使用済みのインクカートリッジ1にインクを注入する方法の一実施の形態を、図13〜図14に基づいて説明する。
【0092】
まず、本実施の形態の再生方法で使用するインク再注入装置の構成について説明する。
インク再注入装置600は、図13に示すように、カートリッジ本体10に穿孔加工により開けた注入口601に接続されるインク注入手段610と、カートリッジ本体10のインク供給孔50に接続される真空吸引手段620とから構成されている。
【0093】
インク注入手段610は、充填するインクを貯留したインクタンク611と、このインクタンク611内のインクを前記注入口601に接続された流路612に圧送するポンプ613と、このポンプ613と注入口601との間で流路612を開閉するバルブ614とを備えている。
【0094】
真空吸引手段620は、真空吸引に必要な負圧を発生する真空ポンプ621と、この真空ポンプ621の発生する負圧をインク供給孔50に作用させる液体誘導路622と、液体誘導路622の途中に装備されて真空吸引によりカートリッジ本体10側から液体誘導路622に流入してきたインクを捕捉・回収して、インクミスト等から真空ポンプ621を保護するインクトラップ623と、このインクトラップ623とインク供給孔50との間で液体誘導路622を開閉するバルブ624とを備えている。
【0095】
本実施形態では、インクカートリッジ1の構造や機能を配慮し、上部インク収容室370に連通する注入口601を大気連通路150に形成する位置が、大気連通路150の一部を構成している液体誘導路360の下流端に位置する貫通孔372と対向する位置付近とされる。
【0096】
そして、貫通孔372と対向する注入口601は、貫通孔372に一致するように、カートリッジ本体10の背面側を覆っている外表面フィルム60に孔を開けることで形成する。なお、該注入口601に挿入される流路612の先端部は、例えば、貫通孔372に押し当てると、貫通孔372の周囲の容器壁面に気密に密着して、流路612と貫通孔372とを気密な接続状態とするシールリング等が設けられている。
【0097】
なお、カートリッジ本体10上の注入口601は、最上位の上部インク収容室370に直接連通する形態であれば良く、注入口601の装備位置は、特に貫通孔372の対向位置に限定する必要はない。例えば、カートリッジ本体10の背面側から注入口601を形成する場合は、図14に示すように、上部インク収容室370の領域に対応し、背面側に装備されている蛇道310やインク誘導路380と干渉しない適宜位置P2を注入口601の装備位置に設定することができる。
【0098】
本実施の形態における注入法は、まず、上部インク収容室370に連通するように、注入口601をカートリッジ本体10に開口させる注入口形成工程と、インク供給孔50から内部に残留するインク及び残留気体を真空吸引手段620により吸引除去する真空吸引工程と、注入口601からインク注入手段610により所定量のインクを注入する液体充填工程と、液体充填工程の終了後に注入口601を封止する封止工程と、を順に実施することで、使用済みのインクカートリッジ1を、再び使用可能な再生インクカートリッジ(再生液体収容容器)として復活させる。
【0099】
封止工程は、具体的には、注入口601を、封止フィルムまたはテープ等を接着又は溶着し,または栓等で気密に塞ぐ処理工程である。
【0100】
以上に説明した本実施の形態のインクカートリッジ1の再生方法では、インクIの注入のためにインクカートリッジ1に実施する加工は、最上流の上部インク収容室370に連通するように、インクを注入するための注入口601を開口させることと、インクIの充填後に、注入口601を封止する加工で、いずれも簡単な加工となる。従って加工コストが安価で済み、また、手間もかからない。
【0101】
そして、本実施の形態の再生方法では、インク供給孔50から内部に残留するインク及び残留気体を吸引除去する真空吸引工程を備えているため、注入口601から所定量のインクを注入する液体充填工程は、カートリッジ本体10の各インク誘導路380,420,440や各インク収容室を減圧環境に管理して、注入したインクを、インク収容室370,390,430だけでなく、インク供給孔50に至るすべてのインク誘導路の隅々まで、効率よく充填できる。
【0102】
また、インクIの充填時に混入する気泡も、真空吸引によりインク供給孔50から外部に排除したり、あるいは真空吸引により形成する容器内の減圧環境により、流入した気泡を液中に溶解・消滅させることができる。
従って、インクIの注入時に混入する気泡Bが、インク収容室やインク誘導路に浮遊したり、あるいは流路壁面に付着して残存することがなく、例えば、液体残量センサの検出部付近に気泡Bが残存することにより液体残量センサが正常に作動しなくなるといった不都合も生じない。
【0103】
また、注入口601を設ける位置が、最上流の上部インク収容室370であることから、カートリッジ本体10に装備した複数個の全てのインク収容室と、インク収容室相互を連絡する液体誘導路に、円滑にインクを注入することができる。
従って、インクを注入した再生インクカートリッジ1では、インク収容室相互を降下型接続する液体誘導路であるインク誘導路380と上昇型接続する液体誘導路であるインク誘導路420とで、上下に屈曲した流路構造が復元され、もし、上流のインク収容室370で気泡Bが発生しても、降下型の液体誘導路に残存するインクIが気泡の下流への移動を止める防護壁となる。そのため、インク誘導路380に進入した気泡Bが下流に進み難くなる。
また、インク収容室相互を連絡する上下に屈曲した流路に加えて、下流の各インク収容室390,430の上部空間が流入してきた気泡のトラップ空間として有効に機能して、気泡Bが下流に移動することを阻止する。
【0104】
即ち、インク収容室相互の液体誘導路380,420における気泡トラップ機能や、下流のインク収容室390,430による気泡トラップ機能が、インクカートリッジ1の新規製造時と同様に復活する。
従って、新規に製造されたインクカートリッジ1の場合と同様に、インク収容室からインク誘導路に進入した気泡Bがインク残量センサ31による検出位置に到達することを抑止することができ、気泡の進入に起因した液体残量センサの誤検出によって使い切れずに廃棄されるインク量が増えるという問題を回避できる。
【0105】
即ち、本実施の形態におけるインクカートリッジ1の再生方法によれば、使用済みのインクカートリッジ1にインクを注入する際に、インクカートリッジ1への加工が少なくて済み、しかも、そのインクカートリッジ1の諸機能を損なうことなくインクを注入することができ、再生インクカートリッジ1を安価に製造することができる。
【0106】
そして、このような再生方法により再生した再生インクカートリッジを提供すれば、インクカートリッジの容器としての製品寿命が延びるため、資源の節約、環境汚染の防止に貢献することができる。また、再生に要するコストが低く、安価に提供できるため、インクジェット式記録装置の運用コストの低下にも貢献する。
【0107】
なお、上記実施形態のインクカートリッジ1においては、一対のインク収容室相互を上昇型接続で接続するインク誘導路420が、上流側インクエンドセンサ液体誘導路400及び下流側インクエンドセンサ液体誘導路410を介して下部インク収容室390とバッファ室430とを接続しており、下部インク収容室390とバッファ室430とは、インク誘導路420によって直接接続されていない。勿論、本発明の液体収容容器はこの様な構成に限定されるものではなく、一対の液体収容室相互が、降下型接続と上昇型接続とを交互に繰り返す直列状に接続されても良いことは云うまでもない。
【0108】
また、上記実施形態のインクカートリッジ1においては、降下型接続のインク誘導路380の後にインク誘導路420で上昇型接続とされた後、上昇型接続のインク誘導路440の後に出口流路450で降下型接続とされており、降下型接続と上昇型接続とを有する組合せ(降下と上昇の順番は問わない)が、複数組設けられた構成である。ここで、本発明の液体収容容器が4個以上の液体収容室を備える際には、これらの液体収容室相互が、降下型接続と上昇型接続とを少なくとも一つずつ有していれば良く、残りの液体収容室相互の接続は、降下型接続又は上昇型接続、或いは液体の流れ方向が水平流となる水平型接続等の他の接続形態を適宜採り得ることは勿論である。
【0109】
更に、本発明により製造する液体収容容器は、上記実施形態に示したインクカートリッジに限らない。また、本発明により製造した液体収容容器が装着される容器装着部を備えた液体消費装置も、上記実施形態に示したインクジェット式記録装置に限らない。
液体消費装置としては、液体収容容器が着脱可能に装着される容器装着部を備え、前記液体収容容器に貯留されている液体が装置に供給される各種の装置が該当し、具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る液体収容容器の再生方法により再生される液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視図である。
【図2】図1のインクカートリッジを図1とは逆の角度からみた外観斜視図である。
【図3】図1のインクカートリッジの分解斜視図である。
【図4】図3のインクカートリッジを図3とは逆の角度からみた分解斜視図である。
【図5】図1のインクカートリッジをインクジェット式記録装置のキャリッジに取り付けた状態を示す図である。
【図6】図1のインクカートリッジのキャリッジへの取付直前の状態を示す断面図である。
【図7】図1のインクカートリッジのキャリッジへの取付直後の状態を示す断面図である。
【図8】図1のインクカートリッジのカートリッジ本体を正面側から見た図である。
【図9】図1のインクカートリッジのカートリッジ本体を背面側から見た図である。
【図10】(a)は図8の簡略模式図、(b)は図9の簡略模式図である。
【図11】図8のA−A断面図である。
【図12】図8に示したカートリッジ本体内の流路構造の一部の拡大斜視図である。
【図13】本発明に係る液体収容容器の注入方法を実施するインク再注入装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図10(b)に示したインクカートリッジの構造において、本発明に係る液体注入方法でインクを注入可能な箇所の説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1:インクカートリッジ(液体収容容器)、10:カートリッジ本体(容器本体)、11:係合レバー、20:蓋部材、30:インクエンドセンサ、31:インク残量センサ(液体残量センサ)、40:差圧弁、50:インク供給孔(液体供給孔)、70:気液分離フィルタ、80:フィルム、90:封止フィルム(閉塞手段)、100:大気開放孔、150:大気連通路、220:キャリッジ、330:上部連結流路、340:インクトラップ室(空気室)、350:連結バッファ室(空気室)、370:上部インク収容室(液体収容室)、371,432:インク排出口(液体排出口)、374,394,434:窪み、375,395,435:液体収容室の底壁、380:インク誘導路(液体誘導路)、390:下部インク収容室(液体収容室)、391,431:インク流入口(液体流入口)、400:上流側インクエンドセンサ液体誘導路(液体誘導路)、410:下流側インクエンドセンサ液体誘導路(液体誘導路)、420:インク誘導路(液体誘導路)、430:バッファ室(液体収容室)、501,511,512,521:未充填室(脱気室)、600:インク再注入装置、601:注入口、610:インク注入手段、620:真空吸引手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含む液体注入方法。
【請求項2】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器。
【請求項3】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含む液体注入方法。
【請求項4】
前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることを特徴とする請求項3に記載の液体注入方法。
【請求項5】
前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体注入方法。
【請求項6】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器。
【請求項7】
前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることを特徴とする請求項6に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることを特徴とする請求項6又は7に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記大気連通路には、前記液体収容室からの液漏れ防止する空気室が設けられることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項10】
前記大気連通路の少なくとも一部は、前記液体容器の重力方向で最も上となる部分を通過することを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項11】
前記大気連通路には、気体を通過させるとともに、液体を通過不可能に遮断する気液分離フィルタが設けられることを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項12】
内部の気圧が大気圧以下となるように減圧封止した減圧パックの中に梱包されていることを特徴とする請求項6乃至11の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項1】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含む液体注入方法。
【請求項2】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
前記液体誘導路の途中に設けられ、前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサと、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを交互に繰り返すように、直列状に接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器。
【請求項3】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に液体を注入する方法であって、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成する工程と、
前記注入口から所定量の液体を注入する工程と、
液体注入後に前記注入口を封止する工程とを含む液体注入方法。
【請求項4】
前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることを特徴とする請求項3に記載の液体注入方法。
【請求項5】
前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体注入方法。
【請求項6】
液体を収容する液体収容室と、
液体消費装置に接続可能な液体供給孔と、
前記液体収容室に貯留されている液体を前記液体供給孔に誘導する液体誘導路と、
前記液体収容室を大気に連通させる大気連通路と、
を備え、
かつ、少なくとも3個以上の前記液体収容室を備えると共に、
これらの液体収容室相互は、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が上から下への降下流となるように一対の液体収容室相互を接続した降下型接続と、前記液体誘導路内での液体の流れ方向が下から上への上昇流となるように一対の液体収容室相互を接続した上昇型接続とを有するように接続され、前記液体消費装置に着脱可能な液体収容容器に対して、
前記液体収容室に連通する注入口を前記大気連通路に形成し、前記注入口から所定量の液体を注入し、液体注入後に前記注入口を封止して成る液体収容容器。
【請求項7】
前記降下型接続と前記上昇型接続とを有する組合せが、複数組設けられることを特徴とする請求項6に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記液体収容室の液体残量に応じて異なる信号を出力する液体残量センサが、前記液体誘導路における前記降下型接続及び前記上昇型接続より下流に設けられることを特徴とする請求項6又は7に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記大気連通路には、前記液体収容室からの液漏れ防止する空気室が設けられることを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項10】
前記大気連通路の少なくとも一部は、前記液体容器の重力方向で最も上となる部分を通過することを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項11】
前記大気連通路には、気体を通過させるとともに、液体を通過不可能に遮断する気液分離フィルタが設けられることを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項12】
内部の気圧が大気圧以下となるように減圧封止した減圧パックの中に梱包されていることを特徴とする請求項6乃至11の何れか1項に記載の液体収容容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−68614(P2008−68614A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186992(P2007−186992)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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