説明

液体洗浄剤組成物

【課題】低温安定性が良好で、泡立ち、泡質、泡持続性にも優れる液体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(A)エチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率が55%以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、(B)2級アルカンスルホン酸塩と、(C)アミンオキシドと、(D)炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の高級アルコール、または、脂肪酸のうちの少なくとも1種とを含有し、25℃におけるブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となる液体洗浄剤組成物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に台所等の食器類、調理器具やシンク周り等の硬表面に好適な液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
台所等の食器類、調理器具、シンク周りなどを洗浄するための液体洗浄剤組成物には、低温環境下で輸送されたり保管されたりした場合でも、相分離したり凍結したりしない低温安定性を備えていることが求められている。このような事情から本出願人は、例えば、特定の組成を有し、低温安定性の良好な液体洗浄剤組成物について検討してきた(例えば特許文献1参照。)。
一方、液体洗浄剤組成物には、泡立ち、泡質、泡持続性が優れることも求められ、泡質としては、きめが細かく粘性のあるクリーミーなものが良好とされている。
【特許文献1】特開2004−091522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低温安定性が良好で、泡立ち、泡質、泡持続性にも優れる液体洗浄剤組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の2種のアニオン界面活性剤と、半極性界面活性剤とを配合し、さらに、特定の油性成分を配合してラメラ液晶を形成させたチキソトロピー性の液体洗浄剤組成物は、低温安定性が良好で、泡立ち、泡質、泡持続性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)下記一般式(I)で表され、下記式(II)で定義されるエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率が55%以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、(B)2級アルカンスルホン酸塩と、(C)下記一般式(III)で示される半極性界面活性剤と、(D)炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の高級アルコール、または、脂肪酸のうちの少なくとも1種とを含有し、25℃におけるブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となることを特徴とする。
【化1】

【数1】

【化2】

液体洗浄剤組成物は、さらに、(E)分子内に複数の水酸基を有する化合物を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、低温安定性が良好で、泡立ち、泡質、泡持続性にも優れる液体洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物(以下、組成物という。)は、(A)特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、(B)2級アルカンスルホン酸塩と、(C)特定の半極性界面活性剤と、(D)炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の高級アルコール、または、脂肪酸のうちの少なくとも1種とを含有し、ラメラ液晶を備えたものである。また、本発明の組成物は、このようなラメラ液晶を備えていてチキソトロピー性を有し、25℃におけるブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となる粘度特性を備えたものである。なお、この組成物は、溶媒(残部水)として、通常、水(精製水、イオン交換水、純水、超純水、常水、上水等)を含有する。
【0007】
(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、下記一般式(I)で示されるものであって、組成物の低温安定性に関与する成分と考えられる。
一般式(I)においてRは、炭素数6〜24の直鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり、炭素数が10〜18であるものが好ましい。炭素数が6未満の場合は疎水性が不足するため、十分な洗浄力が得られないことがある。また、炭素数が24を超えると、その溶解度が減少して水に対して溶解し難くなったり、保存時に析出が生じたりしやすい。具体的に好ましいアルキル基またはアルケニル基を例示すると、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、アラキル基、ベヘニル基等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、Rは、これらアルキル基、アルケニル基のうちの1種でも、これらが混在したものでもよい。より具体的には、椰子油高級アルコール等の天然アルコールに由来するRが好適である。
【0008】
【化3】

【0009】
Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン、アンモニウムから選ばれる1種以上であり、これらは混在していてもよい。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウムなどが例示でき、これらの中ではナトリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノ、ジ及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。
また、エチレンオキサイド基の平均付加モル数nは、1〜6の範囲である。
【0010】
(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、下記式(II)で定義されるエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率が55%以上であって、エチレンオキサイド付加モル数の分布が狭いものである。ナロー率が55%未満では、組成物の低温安定性が確保できない。より好ましいナロー率は70%以上で、さらに好ましくは75%以上である。
【0011】
【数2】

【0012】
このようなナロー率のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の製造方法としては、例えば、高級アルコールとエチレンオキサイドから常法により合成した反応生成物から、蒸留等により所望の分子量範囲、すなわち、所望のエチレンオキサイド付加モル数のポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルコールエトキシレート)を分取し、ついで、これを硫酸化反応し、中和することにより得られる。また、特開平1−164437号公報や特開2000−61304号公報に記載の方法、すなわち、特定の触媒を使用した方法により、ナロー率55%以上の狭いエチレンオキサイド付加モル数の分布をもったポリオキシエチレンアルキルエーテルを得ることができるので、これを硫酸化反応し、中和することによっても得られる。
【0013】
(A)成分は、組成物中、3〜40質量%(以下、単に「%」という場合は、「質量%」を意味するものとする。)含まれることが好ましく、より好ましくは5〜35%である。(A)成分が3%未満であると、低温安定性、洗浄性能、起泡力に劣ることがあり、40%を超えても低温安定性が劣ることがある。
【0014】
(B)成分である2級アルカンスルホン酸塩(以下、単にSASという場合もある。)は、アニオン性界面活性剤に属するものであるが、他のアニオン性界面活性剤に較べ、洗浄性、泡の特性、手肌マイルド性、耐硬水性の点で優れ、特に洗浄性、泡の特性(泡立ち、泡質、泡持続性)の点で本発明の組成物に含まれることが必要である。ただし、この(B)成分を(A)成分と併用せずに使用すると、組成物の低温安定性が低下する。すなわち、(A)成分と(B)成分とを併用することにより、低温安定性と泡立ちなどとがバランス良く優れる。
SASは、パラフィンスルホン酸塩とも呼ばれ、1分子当たり10〜21個の炭素原子を有する二級アルキルスルホン酸塩の混合物であり、少量の1級アルキルスルホン酸塩、ジスルホン酸塩、ポリスルホン酸塩を含有する。より好ましいSASは、少なくともその80%、さらに好ましくはその少なくとも90%が、1分子当たり13〜18個の炭素原子をもつ2級アルキルスルホン酸塩の混合物である。塩の種類としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、及びモノ、ジ及びトリエタノールアミン塩などが挙げられる。また、これらは混在していてもよい。
【0015】
(B)成分は、組成物中、1〜15%含まれることが好ましく、好ましくは2〜8%、さらに好ましくは3〜6%である。(B)成分の含有量が1%未満であると、泡持続性及び泡質が低下する傾向にある。一方、15%を超えると組成物が高粘度化してしまい、流動性がなくなる傾向にある。
【0016】
(C)成分の半極性界面活性剤としては、下記一般式(III)を満足するものを1種以上使用できる。
【化4】

【0017】
上記式(III)中のRは、単独のアルキル基またはアルケニル基でもよく、異なるアルキル基またはアルケニル基を有する混合アルキル基またはアルケニル基でもよい。さらに、その構造は直鎖または分岐、もしくはそれらの混合でもよい。その炭素数は、洗浄力の点から、好ましくは8〜16、さらに好ましくは10〜14である。また、さらなる洗浄力の点から、アルキルジメチルアミンオキシドまたはアルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシドのうちの少なくとも1種が好ましく、特に好ましくは、炭素数が10〜14であるアルキルジメチルアミンオキシドである。
【0018】
(C)成分である半極性界面活性剤の含有量は、組成物中、1〜10%が好ましく、より好ましくは1〜8%、さらに好ましくは2〜6%である。(C)成分の含有量が1%未満であると、ラメラ液晶が形成できず洗浄力が低下する傾向にある。一方、10%を越えると高粘度化してしまい、流動性がなくなる傾向にある。また、半極性界面活性剤(C)は、pHによって電荷変化をおこし、(A)成分との相互作用が変化する場合があることから、本発明の組成物ではpHを調整することが好ましく、組成物の好ましいpHは5.5〜7.5で、さらに好ましくは6.0〜7.0である。pHが5.5未満の場合は、(A)成分と(C)成分の相互作用が強すぎ、ゲル化または固化を起こしやすくなる傾向があり、7.5より大きい場合には、逆に相互作用が弱くなりすぎ、安定なラメラ液晶を形成できない場合がある。
【0019】
(D)成分は、組成物に安定なラメラ液晶を付与すると共に、さらなる洗浄力を発揮させるために含有されるものであり、炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の高級アルコール、または、炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の脂肪酸のうちの少なくとも1種を使用できる。
具体的には、市販されているサフォール23(サソール社製、C12/C13=50%/50%、直鎖率:50%(直鎖率とは、原料アルコール中の直鎖アルキルアルコールの占める割合))、ダイアドール13(三菱化学社製、C13:100%、直鎖率50%)、ネオドール23(シェル社製、C12/C13=40%/60%、直鎖率80%)等の分岐及び直鎖状の混合型1級アルコール、イソフォール12(サソール社製、C12:100%)、イソフォール14T(サソール社製、C14:100%)、トリデカノール(協和発酵社製、C13:100%)等の分岐型1級アルコール、1−デカノールや椰子油高級アルコールなどの直鎖型アルコール、さらには、2−デカノール等の分岐/直鎖状の2級アルコール、また脂肪酸としては飽和/不飽和アルキル鎖を有するラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
これらの中では、組成物の粘度特性を特に良好にできる点、すなわち、粘度比を保ちつつ、高せん断粘度を低くできる(流動性をさらに良好とする)点から、分岐状または2級型の高級アルコールの少なくとも1種を使用することが好ましい。特には、洗浄力の点から、炭素数が10〜16であれば分岐状の高級アルコールが好ましい。炭素数が8未満の場合は洗浄力の向上効果が乏しい上、臭気も悪くなる傾向にあり、また、炭素数が24を超えると、洗浄力の向上効果が乏しい上、融点が高くなるため、組成物中に均一に相溶しない場合がある。
好ましい具体的としては、サフォール23、ダイアドール13、ネオドール23等の分岐及び直鎖状の混合型1級アルコール、2−デカノール等の2級アルコール、イソフォール12、イソフォール14T、トリデカノール等の分岐型1級アルコールであり、特に好ましくはイソフォール12、イソフォール14T、トリデカノール等の分岐型1級アルコールである。
【0021】
(D)成分の含有量は、組成物中、0.1〜10%が好ましく、より好ましくは0.5〜5%、さらに好ましくは1〜3%である。
(D)成分の含有量が0.1%未満であると、組成物は安定なラメラ液晶を形成できなくなる傾向があり、一方、10%を超えると、固化または乳化を起こしやすくなる傾向がある。
【0022】
本発明の組成物は、25℃におけるブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比(25℃)が5以上となることが必要であり、上述した各成分をそれぞれ好ましくは上述の範囲で含有することにより、このような粘度特性が発現する。組成物としてさらなる流動性を確保するためには、60rpmの粘度が1000〜4500mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは1000〜4000mPa・sである。
【0023】
ここで「6rpm/60rpm粘度比」とは、6rpmの低せん断力と60rpmの高せん断力による粘度を比率化したものである。この数値が大きいほど、せん断速度の変化による粘度差が大きく、つまり低せん断力で高粘度、高せん断力で低粘度となるような組成物となる。低せん断力、つまり静止に近い状態では高粘度であるため、外観上濃厚なイメージや高級感を付与することができる。また、粒子状成分を配合した場合には、粒子の沈降を抑制することもできる。しかしながら、使用時にボトルなどから出そうとした場合において、組成物がそのまま高粘度であると非常に排出しづらいため、高せん断力で低粘度化できる粘度特性、つまりチキソトロピー性を付与することが非常に重要である。
より好ましいチキソトロピー性を持つには、6rpm/60rpm粘度比が5.2以上であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以上7.0以下である。粘度比が5未満であると、チキソトロピー性の低下だけではなく、常温において相分離をおこし、さらには−5℃の低温条件下にて凍結することがある。
【0024】
このように60rpmの粘度と、6rpm/60rpmの粘度比を上記範囲とするためには、組成物において、分離を起こさない安定なラメラ液晶を形成させることが重要である。
このラメラ液晶をより安定に形成させるには、初めに、上記(A)成分と(B)成分と(C)成分によるラメラ液晶を形成させることが好ましい。そのときの(A)成分と(B)成分と(C)成分の質量比率(以後、a+b/cと記述)は、好ましくはa+b/c=1〜6、特に好ましくはa+b/c=2〜5とする。しかしながら(A)成分と(B)成分と(C)成分のみのラメラ液晶は、常温において相分離(離水)を起こし、かつ、−5℃にて凍結を起こす。そこで、このラメラ液晶に対して(D)成分を添加することで、安定で、かつ、チキソトロピー性を持ったラメラ液晶を形成できる。
この現象は、(A)成分および(B)成分と(C)成分との強固な相互作用によって密に配向したラメラ液晶に対して、(D)成分がくさび型となって配向に柔軟性を与え、ラメラ相間に水が保持できる構造に変化していることによると考えられる。このラメラ液晶の変化は偏光顕微鏡にて観察でき、(A)成分と(B)成分と(C)成分のみでは、規則性のない輝像が確認できるが、(D)成分を添加することによって、典型的な十字ニコル像へと変化する。チキソトロピー性及び高低温安定性を同時に満たすには、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分との質量比率〔以後、(a+b)/c/d(=(a+b)÷c÷d)と記述〕を好ましくは(a+b)/c/d=1〜4とし、特に好ましくは1〜3とする。
【0025】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲、特に上述のラメラ液晶や粘度特性を損なわない範囲で、上記(A)〜(D)成分以外の成分(任意成分)を含有させることができるが、特に、(E)成分として、分子内に複数の水酸基を有する化合物を配合すると低温安定性の点で好ましい。
(E)成分としては、分子内に複数の水酸基を有する化合物であれば特に制限はなく、具体的には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、グルコース、スクロース、トレハロース、ヒアルロン酸等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、チキソトロピー性の低下防止の観点からは、グリセリン、分子量50〜2000のポリエチレングリコール、トレハロースから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(E)成分を配合する場合、その上限は20%とすることが好ましい。このような範囲とすると、組成物のチキソトロピー性を低下させることなく、低温安定性をより高めることができる。
【0026】
その他には、任意成分として、有機カルボン酸、両性界面活性剤、無機塩などが挙げられる。
これらは、組成物の粘度特性を発揮する上で、補助的な効果を持つ場合があり、目的の粘度特性を損なわない程度に配合できる。
【0027】
有機カルボン酸としては、例えば、グリコール酸、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、グルタミン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、MGDA、EDTAや、これらの塩等が挙げられ、1種以上を使用できる。これらの中では、カルボキシル基を2つ以上含む多価カルボン酸やその塩が好ましく、さらにはクエン酸、MGDA、EDTAやこれらの塩が好ましい。有機カルボン酸の含有量は、組成物中、好ましくは0.5〜8%で、さらに好ましくは1〜5%である。
【0028】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、イミダゾリウムベタイン、N−アルキルアミノ酸などが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できるが、特にアルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドプロピルベタインが上述の補助効果が高い点で好ましい。
無機塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛等の遷移金属の硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できるが、特に、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩が上述の補助効果が高い点で好ましい。
両性界面活性剤及び無機塩の合計含有量は、組成物中、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0029】
また、任意成分として、目的に応じて無機系研磨剤や膨潤性粘土鉱物を添加してもよい。
無機系研磨剤としては、粒子状のゼオライト類、方解石類、ドロマイト類、長石、シリカ類、ケイ酸塩類、他の炭酸塩類、アルミナ類、炭酸水素塩類、ホウ酸塩類、硫酸塩類等が挙げられ、これらを目的に応じて1種以上使用できる。
具体的には、炭酸カルシウム(方解石)、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの混合物(ドロマイト)、炭酸水素ナトリウム、硫酸カリウム、ゼオライト、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナ等の無水アルミナ、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、ノルストランダイト、ダイアスポア、トーダイト、アルミナゲル等のアルミナ水和物(水酸化アルミニウム)、タルク、及びシリカ(二酸化珪素)、無水アルミニウム酸化物、含水アルミニウム酸化物等が挙げられる。これらのなかでは、研磨力及びコストの面から、炭酸カルシウム(方解石)、シリカ(二酸化珪素)、ゼオライト、長石及びドロマイト、無水アルミナ、アルミナ水和物並びにそれらの混合物が好ましく、特に好ましくは炭酸カルシウム(方解石)、シリカ(二酸化珪素)、これらの混合物である。
膨潤性粘土鉱物としては、特に種類は限定されないが、天然または合成スメクタイト類が好ましい。スメクタイト類の例としては、ベントナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、モンモリロナイトなどが挙げられ、膨潤性の雲母なども使用できる。
【0030】
また、任意成分として、非イオン界面活性剤やハイドロトロープ剤も例示できる。これらは、組成物に対してさらなる洗浄力を付与し、低温安定性をより向上させる点で必要に応じて添加されるものであるが、これらの含有量が多いと、分子会合体を可溶化し、上述のラメラ液晶や粘度特性を消失させてしまうことがある。よって、これらを配合する場合には、組成物中、10%以下とすることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸グリコシドエステル、脂肪酸メチルグリコシドエステル、アルキルメチルグルカミド等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を使用できる。
ハイドロトロープ剤としては、例えば、芳香族スルホン酸、芳香族カルボン酸や、これらの塩、炭素数10〜16の炭化水素、炭素数1〜5の一価アルコール、炭素数4〜12の多価アルコール、分子量が200〜2000までのポリアルキレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を使用できる。
【0031】
さらにその他の任意成分としては、カプセルなどの水不溶性粒子や、ポリリジン、グルタルアルデヒド、塩化ベンザルコニウム、ゲラニオール等の殺菌剤、パール化剤、植物抽出液、pH調整剤、色素、酸化防止剤、酵素、香料、香料可溶化剤などが挙げられ、組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でこれらを適宜含有できる。また、例えば酵素や香料等のカプセル等の機能性粒子、あるいは、上述の無機系研磨剤や膨潤性粘土鉱物が任意成分として添加される場合、これらは、優れた粘度特性を有する本組成物中に安定に分散することとなる。
【0032】
本発明の組成物の製造方法には特に制限はなく、必須成分である上記(A)〜(D)成分を含有させ、上述の特定の粘度及び粘度比に設定できるものであればよい。具体的には、例えば、攪拌羽根を設けた攪拌槽を用いて回分式で混合する方法、インラインで混合、希釈を行うラインミキサーを使用した混合攪拌装置などによる方法が挙げられる。ただし、(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と(C)成分である半極性界面活性剤とを直接混合するとゲル化を起こすことがある。このような場合、一般的には、エタノール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール等のハイドロトロープ剤により可溶化するが、このような方法では、上述のラメラ液晶や粘度特性が十分に発現しない場合がある。よって、(A)成分と(C)成分とを混合する際には、その混合後のpHが5.5〜7.5となるように、これらの混合時にpH調整剤を添加し、ゲル化を回避することが好適である。例えば、(A)成分に予めpH調整剤を添加しておく方法や、予め(A)成分に残部水(溶媒として使用される水)を添加し希釈しておくなどの方法も、ゲル化を防ぐ上で効果的である。
好ましい具体的製造方法としては、まず、(A)成分と(B)とpH調整剤とを混合し、ついでこれに(C)成分と必要に応じて(E)成分とを混合し、その後(D)成分を配合する方法が挙げられる。任意成分を配合する場合には、(C)成分や(E)成分とともに配合することが好ましい。
【0033】
以上説明したように、本発明の組成物は、(A)ナロー率が55%以上である特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、(B)2級アルカンスルホン酸塩と、(C)特定の半極性界面活性剤と、(D)炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の高級アルコール、または、脂肪酸のうちの少なくとも1種とを含有し、25℃におけるブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となるものである。よって、ラメラ液晶によるチキソトロピー性を有し、低温安定性が良好で、泡立ち、泡質、泡持続性にも優れ、洗浄力も良好である。
本発明の組成物は、台所等の食器類、調理器具、シンク周りなどの硬表面の洗浄に好適である。
【実施例】
【0034】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
〔(A)成分の製造例1(S−1)〕
4Lのオートクレーブ中に、C12、14アルコール(70%/30%)400gと、Al/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒0.4gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキサイド181gを導入し、エチレンオキサイドの平均付加モル数2の反応物を得た。また、そのエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率は80%であった。
次に、このようにして得られたアルコールエトキシレート282gを攪拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)78gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得て、ついで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和した。こうして得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(S−1)のエチレンオキサイド付加モル数の分布等は表1に示した通りであった。
【0035】
〔(A)成分の製造例2(S−2)〕
エチレンオキサイドの導入量を453gとした以外は上記製造例1と同様にして、エチレンオキサイドの平均付加モル数5の反応物を得た。また、そのエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率は86%であった。
そして、製造例1と同様の方法で反応物414gに対して硫酸化反応と中和を行った。得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(S−2)のエチレンオキサイド付加モル数の分布等は表1に示した通りであった。
【0036】
〔製造例3(S−3)〕
4Lのオートクレーブ中に、C12、14アルコール(70%/30%)400gと、水酸化カリウム触媒0.8gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキサイド181gを導入し、エチレンオキサイドの平均付加モル数2の反応物を得た。また、そのエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率は43%であった。
次に、このようにして得たアルコールエトキシレート282gを攪拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)78gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得て、ついで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和した。こうして得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(S−3)のエチレンオキサイド付加モル数の分布等は表1に示した通りであった。
【0037】
〔製造例4(S−4)〕
エチレンオキサイドの導入量を453gとした以外は上記製造例3と同様にして、エチレンオキサイドの平均付加モル数5の反応物を得た。また、そのエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率は44%であった。
そして、製造例1と同様の方法で反応物414gに対して硫酸化反応と中和を行った。得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(S−4)のエチレンオキサイド付加モル数の分布等は表1に示した通りであった。
【0038】
【表1】

【0039】
〔実施例1〜8及び比較例1〜4〕
次に示す製造方法により、表1に記載の含有量(質量%)で各成分を含有する組成物を調整した。なお、溶媒として精製水を使用し、表1に記載の各成分と精製水とを合わせて100%となるようにした。
(製造方法)
攪拌槽(2Lのガラスビーカーに、直径6cm、幅1cmの45°傾斜パドル翼付き攪拌機を設置)に、精製水(溶媒)と(A)成分と(B)を投入し、溶解するまで攪拌した。これにpH調整剤として濃硫酸(純正試薬)を加え攪拌後、(C)成分と必要に応じて(E)成分とその他の成分(任意成分)を加えて、全体が均一になるまで攪拌した。次いで、(D)成分を添加して、全体が均一、かつ、一定粘度になるまで攪拌し、組成物を得た。
なお、温度は25℃、攪拌機の回転数は、溶液の物性や量に応じて、400〜700rpmの範囲で変化させた。また、pH調整剤の使用量は、最終的に得られる組成物のpHが6.7となる量とした。
得られた各組成物について、下記の試験方法等により、60rpmの粘度及び6rpm/60rpmの粘度比、泡立ち、泡持続性、泡質、低温安定性について評価した。これらの結果を表2に示す。
【0040】
<60rpm粘度及び6rpm/60rpm粘度比の測定方法>
得られた各組成物をPS11瓶に90g充填し、恒温槽にて25℃に調整した。ブルックフィールド型粘度計を用い、No.4ローターを設置し、恒温にした試料液をセットした。はじめにローターの回転数を60rpmに設定し、30秒後の粘度を測定した。
次に、回転数を6rpmに設定し、300秒後の粘度を測定した。これらから得られた数値から6rpm/60rpmの粘度比を算出した。
【0041】
<泡立ちの評価方法>
11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに38gの水道水と2gの洗浄剤組成物をとり、10回手で揉んだ後の泡立ちの量を目視で下記の評価基準に基づき評価した。
評価基準
◎:非常に良く泡立つ
○:良く泡立つ
△:少し泡立つ
×:ほとんど泡立たない
【0042】
<泡持続性の評価方法>
11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに38gの水道水と2gの洗浄剤組成物をとり、10回手で揉んだ後、バター0.5gを塗布した直径21cmの陶器皿を通常家庭で行われるのと同様にして洗浄し、泡が全く確認できなくなるまでの枚数を下記の評価基準に基づき評価した。
評価基準
◎:12枚以上
○:9〜11枚
△:6〜8枚
×:5枚以下
【0043】
<泡質の評価方法>
11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに38gの水道水と2gの洗浄剤組成物をとり、10回手で揉んだ後の泡の質感を下記の評価基準に基づき評価した。
評価基準
◎:きめが非常に細かく、粘性のあるクリーミーな泡で、スポンジからたれ落ちにくい。
○:きめが細かく、クリーミーな泡で、スポンジからたれ落ちにくい。
△:きめは細かいが、クリーミー感は欠ける泡で、スポンジからややたれ落ちやすい。
×:きめは荒く、水っぽい泡で、スポンジからこぼれ落ちる。
【0044】
<低温安定性の評価方法>
組成物を100mlのガラス瓶(PS11)に90g充填し、−20℃と0℃のリサイクル恒温槽に30日保存したときの状態を下記評価基準に従って評価した。
評価基準
◎:全体が均一
○:ほんのわずかな分離相が見られるが、ほぼ均一
△:一部凍結または一部分離透明相(3mm以内)あり
×:凍結及び分離あり
【0045】
【表2】

【0046】
上記表1中の各成分は下記のとおりである。
S−1:C12−14ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔平均EO鎖長2モル(ナロー率80%)、原料アルコール:CO1270(P&G社製、C12/C14=70%/30%、直鎖率100%)〕
S−2:C12−14ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔平均EO鎖長5モル(ナロー率86%)、原料アルコール:CO1270(P&G社製、C12/C14=70%/30%、直鎖率100%)〕
S−3:C12−14ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔平均EO鎖長2モル(ナロー率52%)、原料アルコール:CO1270(P&G社製、C12/C14=70%/30%、直鎖率100%)〕
S−4:C12−14ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔平均EO鎖長5モル(ナロー率44%)、原料アルコール:CO1270(P&G社製、C12/C14=70%/30%、直鎖率100%)〕
SAS:2級アルカンスルホン酸ナトリウム(クラリアント製)
DDAO:ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ(株) アロモックスDM12D−W(c))
Isofol12:分岐型C12アルコール(サソール社製)
Isofol14T:分岐型C12、14、16アルコール(サソール社製)
グリセリン:ライオンケミカル(株)製
ZnSO:硫酸亜鉛七水和物(純正化学(株)製 試薬特級)
MgSO:硫酸マグネシウム七水和物(純正化学(株)製 試薬特級)
クエン酸:扶桑化学工業(株)製 精製クエン酸(無水)
エタノール:純正化学(株)製 試薬特級
安息香酸Na:(株)伏見製薬所製
シリカ:SORBOSIL BFG10(イネオス社)、モース硬度4.5〜5、平均粒径100μm
モンモリロナイト:クニピアF(クニミネ工業社製)
香料:LSYL−F2TP(高砂香料工業(株)製)
色素:黄色203号
【0047】
表1の結果から明らかなように、(A)〜(D)成分を含有し、ブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度及び6rpm/60rpmの粘度比が本発明の範囲となる各実施例の組成物は、各比較例に較べて、泡立ち、泡持続性、泡質、低温安定性に優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表され、下記式(II)で定義されるエチレンオキサイド付加モル数分布のナロー率が55%以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、
(B)2級アルカンスルホン酸塩と、
(C)下記一般式(III)で示される半極性界面活性剤と、
(D)炭素数が8〜24の直鎖および/または分岐状の高級アルコール、または、脂肪酸のうちの少なくとも1種とを含有し、
25℃におけるブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【化1】

【数1】

【化2】

【請求項2】
(E)分子内に複数の水酸基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の液体洗浄剤組成物。


【公開番号】特開2007−332305(P2007−332305A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167314(P2006−167314)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】