説明

液体洗浄剤組成物

【課題】高い蛍光増白効果および柔軟効果を示す液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】分子中に蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い蛍光増白効果および柔軟効果を示す液体洗浄剤組成物に関する
【背景技術】
【0002】
液体洗浄剤に蛍光増白剤を使用することは知られている。しかしながら、蛍光増白剤を配合した液体洗浄剤を用い衣料を洗浄すると蛍光増白剤のむら付きが起こるという問題がある。特許文献1にはスルホン酸基又はその塩を有する蛍光増白剤および25℃における臨界ミセル濃度が1.5×10−3〜50×10−3(mol/L)の4級アンモニウム塩及び特定比率の非イオン界面活性剤を液体洗浄剤に応用することにより、蛍光増白剤製造のむら付きを抑制する技術が開示されているが、未だ満足できるものではない。
【0003】
また、皮脂汚れ等の油汚れは非イオン界面活性剤を使用することにより高い洗浄効果を得られることは知られているが、このような非イオン界面活性剤を含有する液体洗浄剤に蛍光増白剤を配合すると蛍光増白剤が非イオン界面活性剤ミセルに可溶化するため衣料への吸着が抑制される。このため満足できる蛍光増白剤の効果を得るためには多量の蛍光増白剤を使用しなければならなかった。
【0004】
一方、特許文献2に開示されているように、液体洗浄剤組成物には繊維に柔軟性を付与するために水不溶性又は水難溶性の4級アンモニウム塩が用いられるが、このような組成物に蛍光増白剤を添加しても蛍光増白剤の衣料への吸着性や塗布洗浄時のむら付きを改善することはできない。
【0005】
従来、衣類などの繊維製品を洗濯する際に、仕上がり時に良好な柔軟性を付与するために、カチオン性界面活性剤の使用が有効であることが知られており、また、カチオン性界面活性剤のみでは非洗布が黄変しやすいことから、アニオン性界面活性剤の併用が提案されている。(例えば特許文献3)。
【0006】
しかしながら、これらのアニオン性界面活性剤を併用した柔軟性付与洗浄剤は、被洗布の黄変防止効果にはある程度の効果を発揮するものの、カチオン性界面活性剤が本来具えている柔軟性付与効果の低下を伴うという欠点を有している。
【0007】
一方、衣料の柔軟性等の風合いを向上させることを目的とした衣料用液体洗浄剤組成物としては様々のものが提案されている。例えば、衣料に対して柔軟性を付与する液体洗浄剤組成物として、特許文献4には、特定のノニオン界面活性剤、特定の曇点を有する水溶性ポリエーテル型変性シリコーンを含有する組成物が開示されている。同様に、特許文献5には、非イオン性界面活性剤、特定の陽イオン性界面活性剤及び特定のアミノ変性シリコーン誘導体を含有する組成物が開示されている。
【0008】
さらに、シルクやウール製品などの衣類に対して形態保持機能を有し、優れた風合いを維持する液体洗浄剤組成物として、特許文献6には、特定の非イオン性界面活性剤、特定のジアルキル型陽イオン性界面活性剤、水溶性シリコーン誘導体を含有する組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2001−254100号公報
【特許文献2】特開昭61−81495号公報
【特許文献3】特許第2519953号公報
【特許文献4】特開平11−293297号公報
【特許文献5】特開2000−144199号公報
【特許文献6】特開平7−242897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来提案されている技術では、むら付きを生じることなく高い蛍光増白効果を示し、優れた柔軟効果を示す液体洗浄剤組成物は提供されていない。
【0010】
従って本発明の目的は、液体洗浄剤に配合しても高い蛍光増白効果を有し、且つ蛍光増白剤のむら付きがなく、さらに柔軟効果を有する液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンに、特定の蛍光増白作用を示す発色基と特定の反応性基とを有する化合物を反応させることにより得られるポリオルガノシロキサンを配合することにより、優れた性能を有する液体洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
分子中に、一般式:
R1aSi(QZ)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;QはQ1NHまたはQ1NHQ2NHで表される2価の基もしくはQOまたはQSであらわされる1価の基を表し、Q1は炭素数3〜22の2価の炭化水素基を表し、Q2は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、該QはQ1の炭素原子を介してケイ素原子に結合しており;Zはたがいに同一でも異なっていてもよく、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、ジスチリル−ビフェニル系蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれる構造を含む1価の基および水素原子から選ばれ、分子中少なくとも1個は該構造を含む基であり;R2はたがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、aは0〜2の整数、bは1または2、cは0〜2の整数であって、a+b+cが1〜3の整数である)で示される、少なくとも1個の蛍光増白作用を示す発色基含有シロキサン単位を有し、残余のシロキサン単位が、一般式:
R1dSi(OR2)eO{4-(d+e)}/2
(式中、R1およびR2はそれぞれ前述のとおりであり;dおよびeはそれぞれ0〜3の整数であって、d+eが0〜3の整数である)で示され;1分子中のケイ素原子数が2〜3,000である蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを含有する液体洗浄剤組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明に用いる蛍光発色基を有するポリオルガノシロキサンを説明する。本発明に用いる蛍光発色基を有するポリオルガノシロキサンのシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状、環状および網目状のいずれであってもよく、そのケイ素原子数は、2〜3,000、好ましくは10〜1,000である。繊維に柔軟性を与える効果はケイ素原子数が多いほど優れているが、ケイ素原子数が3,000を越えるものは、合成および取扱いが困難である。
【0014】
なお、本明細書において、複数種のシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンの分子構造式は、単にシロキサン単位の数を示すものであって、必ずしもブロック共重合体を意味するものではなく、これらのポリオルガノシロキサンは、ランダム共重合体であってもよい。
【0015】
このような蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとしては、一般式:
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1、QおよびZはそれぞれ前述のとおりであり;A1はたがいに同一でも異なっていてもよく、一般式:
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R1は前述のとおりであり;R3はたがいに同一でも異なっていてもよく、前述のR2であるか、−SiR13で示されるトリオルガノシリル基であり;rは0または正の整数である)で示される1価の基を示し;A2はたがいに同一でも異なっていてもよく、R1、OR2またはA1を表し;pは正の整数、qは0または正の整数であって、p、q、rはともに、前述の1分子中のケイ素原子数を満足させる数である)で示される、直鎖状または分岐状のシロキサン骨格を有するものが示される。このような蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンは、合成が容易で、繊維に優れた柔軟性を与えることから好ましい。
【0020】
また、他のタイプの蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとしては、一般式:
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R1、QおよびZはそれぞれ前述のとおり)で示される1官能性の蛍光発色基またはアミノ基含有シロキサン単位、ただし、分子中少なくとも1個は蛍光発色基含有シロキサン単位が、相互に結合したジシロキサン;および該−QZを含有するシロキサン単位が、
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R2、dおよびeはそれぞれ前述のとおりであり、ただしd+eは0〜2の整数であり;R4はたがいに同一でも異なっていてもよく、前述のR1であるか、−QZである)で示される、蛍光発色基を含み、または蛍光発色基を含まない1個または2個以上のシロキサン単位を介して、ポリオルガノシロキサンの末端基の少なくとも一部として存在する直鎖状または分岐状のシロキサン骨格を有するものが示される。
【0025】
さらに、蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとしては、一般式:
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R1、A2、QおよびXはそれぞれ前述のとおりであり;mは正の整数、nは0または正の整数であって、m+nが3〜6になる数である)で示される、環状シロキサン骨格を有するものが示される。
【0028】
前述のように、本発明に用いるポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合する、一般式:−QZで示され、Zが蛍光発色基を含む蛍光発色基含有基を、分子中に少なくとも1個有する。ここで、QはQ1NHまたはQ1NHQ2NHを表し、Q1の炭素原子を介してケイ素原子に結合している。Q1は炭素数3〜6の2価の炭化水素基であり、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンのような直鎖状アルキレン基が挙げられるほか;2−メチルトリメチレンのような分岐状アルキレン基;ならびにシクロヘキサン−1,4−ジイル、1,4−フェニレンのような環状炭化水素基であってもよく、合成が容易で、化学的に安定なことから、トリメチレン基が好ましい。Q2は炭素数2〜4のアルキレン基であり、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンが挙げられ、合成が容易なことから、エチレン基が好ましい。すなわち、Qとしては、Q1NHであってQ1がトリメチレン基のもの、およびQ1NHQ2NHであって、Q1がトリメチレン基、Q2がエチレン基のものが好ましい。
【0029】
Zは、前述のように、蛍光発色基を含む基および水素原子から選ばれ、分子中少なくとも1個は蛍光発色基を含む基である。該蛍光発色基含有基は、Qを介してケイ素原子に結合する有機基でありナフタル酸無水物系、クマリン系、スチルベン系、ジスチリル−ビフェニル系蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれた1種または2種以上の発色基を含む。蛍光発色基を有する発色基としては、式:
【0030】
【化6】

【0031】
で示されるようなスチルベン系の蛍光発色基;式:
【0032】
【化7】

【0033】
で示されるようなクマリン系の蛍光発色基;式:
【0034】
【化8】

【0035】
で示されるようなナフタル酸無水物系の蛍光発色基;および式:
【0036】
【化9】

【0037】
で示されるようなナフタル酸イミド系の蛍光発色基が例示される。これらの発色基は、後述の反応性基の残基、メチレン、エチレンのような2価の炭化水素基;2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイルのような2価の置換炭化水素基;イミノ基およびアミド基などの1種または2種以上の基を介してQの窒素原子と結合する。このような発色基含有基は、発色基にさらに、他の反応性基が結合していてもよい。
【0038】
ケイ素原子に結合した有機基R1としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;シクロヘキシルのようなシクロアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニルのようなアルケニル基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基;フェニル、トリル、キシリルのようなアリール基;および3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルのような置換炭化水素基が例示され、合成および取扱いが容易で、ポリオルガノシロキサンの特徴である、繊維に柔軟性を付与する性質を最も優れて発揮することから、メチル基が最も好ましい。
【0039】
2としては、隣接する酸素原子とともにケイ素官能性のヒドロキシ基を構成する水素原子;同様にアルコキシ基を構成するメチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基;ならびに置換アルコキシ基を構成する2−メトキシエチル、2−エトキシエチルのような置換アルキル基が例示され、比較的安定に合成し、取扱うことのできるメチル基およびエチル基が好ましい。
【0040】
これらのR1、QZおよびOR2を有する蛍光発色基含有シロキサン単位およびアミノ基含有シロキサン単位において、bは1または2であるが、合成が容易なことから、bは1が好ましい。aおよびcはそれぞれ0〜2の整数であり、該シロキサン単位は、上記のbが1の場合、a+cが2のとき分子末端に、a+cが0のときシロキサン骨格の分岐点に、a+cが1のときその他の中間位置に存在する。
【0041】
また、直鎖状または分岐状ポリオルガノシロキサンにおいて、分子鎖末端に存在するR3は、上述のR2のようなケイ素官能基を構成する基のほか、安定な1官能性シロキサン単位を構成するトリメチルシリル、ジメチル(tert−ブチル)シリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチルビニルシリルのようなトリオルガノシリル基が例示され、上記のメチル基およびエチル基のほか、トリメチルシリル基が好ましい。
【0042】
1は、rが0のとき、前述のR3である。またrが正の整数のとき、ケイ素原子にR1およびOR3が結合したシリル基または(ポリ)シロキサニル基である。またA2は、前述のR1、OR2またはA1である。これらのA1およびA2において、R1およびR3は前述と同様なものが例示され、同様にR1としてはメチル基;OR2としてはメトキシ基およびエトキシ基;OR3としてはメトキシ基、エトキシ基およびトリメチルシロキシ基が好ましい。
【0043】
本発明に用いる蛍光作用を示す発色基含有ポリオルガノシロキサンは、たとえば次のようにして得ることができる。すなわち、まず、合成しようとする該ポリオルガノシロキサンに対応する、(A)分子中に、一般式:
R1aSi(QH)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1、R2、Q、a、bおよびcはそれぞれ前述のとおり)で示される、第一級アミノ基を有するアミノ基含有シロキサン単位を少なくとも1個有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを用意する。ただし、ここでR1には、(B)である反応性染料と反応する−QH基は含まないものとして示す。分子中の該アミノ基含有シロキサン単位以外のシロキサン単位が存在する場合、該単位は、本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンにおける残余のシロキサン単位と同様である。
【0044】
このような(A)は、たとえば次のような方法で合成されるが、製法はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(1)3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルのようなアミノ基置換炭化水素基がケイ素原子に結合したアミノ基含有アルコキシシランの存在下に、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状ジオルガノシロキサンオリゴマーを開環重合させて、分子末端にアルコキシ基を有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを合成する。
【0046】
(2)上記(1)で得られたアミノ基含有ポリオルガノシロキサンに、ヘキサメチルジシラザンのようなシリル化剤を反応させて、分子末端にトリオルガノシロキサン単位を有するアミノ基含有ポリオルガノシロキサンを合成する。
【0047】
(3)ポリメチルハイドロジェンシロキサンのようなヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンを、塩化アリルのようなハロ置換アルケンとヒドロシリル化反応させることによって、クロロプロピルのようなハロアルキル基を導入した後、アンモニアまたはエチレンジアミンのようなアミノ化合物で処理して、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを合成する。
【0048】
この(A)に存在する第一級および/または第二級アミノ基に、(B)である反応性を有する蛍光染料を反応させる。(B)中の蛍光発色基は、目的物である本発明の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンと同様の、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、ジスチリル−ビフェニル系蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれた1種または2種以上を含み、同様のものが例示される。
【0049】
(B)中に存在する、(A)と反応する反応性基としては、式:
【0050】
【化10】

【0051】
で示されるような置換ピリミジニル基;式:
【0052】
【化11】

【0053】
で示されるような置換ピラジニル基;式:
【0054】
【化12】

【0055】
で示されるような置換トリアジニル基;式:
【0056】
【化13】

【0057】
で示されるようなハロ置換アセトアミド残基;式:
【0058】
【化14】

【0059】
で示されるような非置換または置換アクリルアミド残基およびその前駆体;式:
【0060】
【化15】

【0061】
で示されるようなビニルスルホン基およびその前駆体;および式:
【0062】
【化16】

【0063】
で示されるグリシジル基が例示される。
【0064】
(B)において、前述の発色基は、上述の反応性基と直接結合していてもよく、メチレン、エチレンのような2価の炭化水素基;2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイルのような2価の置換炭化水素基;イミノ基およびアミド基などの1種または2種以上のような基を介して結合していてもよい。
【0065】
このような(B)としては、繊維用の蛍光増白剤や蛍光増白染料として、HAKKOL染料(昭和化学工業(株)製)など、アミノ基に対して反応性を示す反応性基を有するものが用いられる。
【0066】
上記製造方法において、(B)の使用量は特に限定されないが、ポリオルガノシロキサンに満足な蛍光増白性を与えるには、(A)100重量部に対する(B)の量は、通常10重量部以下で十分であり、未反応のアミノ基含有ポリオルガノシロキサンが残存していても差し支えない。なお、(B)が分子中に2個以上の反応性基を有する場合は、(B)の量が10重量部を越えると、(B)が(A)の架橋剤として働き、そのために著しい粘度上昇や、ゲル状物の形成を生じることがある。
【0067】
上記製造方法において、(A)と(B)との反応は、約80℃以上で進行し、反応温度は高い方が有利である。
【0068】
上記製造方法において、特に有機溶剤を使用する必要はない。(B)の反応性を有する蛍光染料であり、室温で固体である場合には、あらかじめ(B)を水中に溶解して使用することが好ましい。
【0069】
反応生成物の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンまたは該ポリオルガノシロキサンを含む組成物を精製する必要がある場合には、減圧下において水などの低沸点成分を留去した後、ろ過によって未反応の反応性染料を除去できる。
【0070】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンを含むことを特徴とする。特に優れた柔軟性を付与するためには、該蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとともに、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンとアミノ基含有ポリオルガノシロキサンの混合比には、特に制限はない。アミノ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、次のいずれを用いてもよい。
【0071】
(1)本発明に用いる蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンを合成する際に、(B)に対して(A)を過剰に用い、(A)が残存した系をそのまま液体洗浄剤組成物ないしその成分として用いる。
【0072】
(2)合成して得られた蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサンに、アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを添加する。添加されるアミノ基含有ポリシロキサンは、(A)として合成に用いたものと同一のものでもよく、異なるものでもよい。
【0073】
特に好ましいアミノ基含有ポリオルガノシロキサンは、次式(a)および(b):で示されるアミノ基含有シリコーンオイルである。
(a)RabSiO(4-a-b)/2
(b)RcSiO(4-c)/2
[式中、Rは炭素数1〜6個の1価の炭化水素基または置換炭化水素基;Qは3-アミノプロピル基またはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基;a、bはそれぞれ0<a≦2、1≦b≦3、およびa+b≦3を満たす数;cは1〜3の範囲の数を示す]で表される構成単位を含み([I]:[II]=1:2〜1:65(モル比)、1分子中のRおよびQは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)。
【0074】
このアミノ基含有シリコーンオイルの粘度は、25℃において20000000cP未満である。20000000cPを超えると、取り扱いが困難となり、また該アミノ基と反応性の基を有する蛍光染料が吸着し難くなる。取り扱いや、蛍光染料の吸着を考慮すると好ましくは、100000cP以下であり、さらに好ましくは、10000cP以下である。
【0075】
また、このシリコーンオイルに含まれるアミノ基量は、窒素原子として0.01〜3重量%である。0.01重量%未満であると蛍光染料の吸着量が少なく、蛍光効果が乏しく、3重量%を超えると触感を低下させる傾向があり好ましくない。好ましくは、0.02〜2重量%、さらに好ましくは0.02〜1.5重量%である。
【0076】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記の蛍光発色基含有ポリオルガノシロキサン、または好ましくは該ポリオルガノシロキサンとアミノ基含有ポリオルガノシロキサンとの混合物を、その使用態様に応じて、そのまま用いてもよく、溶液、エマルジョンなどの形態で用いてもよい。溶液として用いる場合、溶媒としては、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類などを用いることができる。また、エマルジョンとして用いるときは、適当なノニオン系、アニオン系またはカチオン系界面活性剤の存在下に、水によって乳化できる。
【0077】
本発明の液体洗浄剤組成物は、液体洗浄剤に配合しても高い蛍光増白効果を有し、且つ蛍光増白剤のむら付きがない、さらに柔軟効果を有する
本発明の液体洗浄剤組成物において、良好な増白効果および柔軟効果を得るために分子中に蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサン成分の好ましい含有量は組成物中に0.001〜10重量%、特に0.01〜3.0重量%である。
【0078】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、上記成分と水とを含有する。水は、微量に存在するイオン成分を除去したイオン交換水又は蒸留水を使用することが貯蔵安定性の点から望ましい。また、組成物のpHは8〜11、特に9〜11が効果の点から望ましい。
(その他の成分)
本発明では洗浄効果を高めるために非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤を配合することが好ましい。非イオン界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、下記式で表わされるポリオキシアルキレン型非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0079】
R3−Y−(EO)s(PO)t−R4
但し、上記式中、R3は炭素数8〜22、好ましくは、10〜16の疎水基である。疎水基として好ましくは、アルキル基又は、アルケニル基を挙げることができ、これらは、鎖であっても分岐鎖であっても良い。その疎水基の導入に用いられる原料としては、例えば、1級もしくは2級の高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。R4は、水素原子又は炭素数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖又は分岐したアルキル基もしくはアルケニル基であり、中でも水素原子がより好ましい。
【0080】
−Y−は連結基であって、−O−、−COO−、−CONH−が好ましく、−O−がより好ましい。
【0081】
EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドである。s及びtは平均付加モル数を表わす。sは3〜20、好ましくは5〜18であり、より好ましくは5〜15の整数である。tは0〜6、好ましくは0〜3である。
【0082】
EO又はPOの付加モル数分布は、非イオン性界面活性剤製造時の反応方法によって変動し、特に限定されない。
【0083】
陰イオン界面活性剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸又はその塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸又はその塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル類を使用することができ、特に炭素数が10〜20、好ましくは10〜15のアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、飽和脂肪酸又はその塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩を使用する場合には、エチレンオキシド平均付加モル数は1〜6、特に1.5〜4が好ましい。
【0084】
本発明の液体洗浄剤組成物は、このような陰イオン界面活性剤を0.1〜20重量%、特に0.5〜10重量%含有することが洗浄効果の点で望ましい。
【0085】
本発明では貯蔵安定性の点から液体洗浄剤に有機又は無機塩を配合することが好ましく、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の塩化物、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム等の硫酸化物、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸化物等の無機塩を添加することが望ましい。又はハイドロトロープ剤としてp−トルエンスルホン酸塩,メタキシレンスルホン酸塩,クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩等を添加することも望ましい。これらの化合物の配合量は、組成物中に好ましくは0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜8重量%である。
【0086】
本発明では洗浄効果を更に高める目的でカルシウムイオン封鎖剤を配合することが好ましい。このような化合物としては、(1)フィチン酸等のリン酸系化合物又はそれらの塩、(2)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸又はそれらの塩、(3)2-ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1-ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸又はそれらの塩、(4)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸又はその塩、(5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はそれらの塩、(6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸等の有機酸又はそれらの塩、(7)ゼオライトA等のアルミノケイ酸塩、(8)アミノポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそれらの塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)もしくはそれらの塩、(9)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸等のモノマーから誘導される平均分子量4千〜10万のホモポリマーあるいはコポリマー等が挙げられる。
【0087】
これらの中で、上記(2)、(5)、(6)、(7)及び(9)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、(6)及び(9)からなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0088】
このようなカルシウムイオン封鎖剤の配合量は、本発明の組成物中に、0〜8重量%、更に0.05〜5重量%、特に0.5〜3重量%が望ましい。
【0089】
本発明では更にアルカリ剤を配合することが洗浄効果の点から好ましい。アルカリ剤としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のエタノールアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を使用することができ、特にモノエタノールアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる1種以上が好ましい。
【0090】
本発明の液体洗浄剤組成物には、本発明の効果性能を損なわない程度に各種洗浄剤成分を配合できる。例えば前記以外の界面活性剤として、アミンオキシド、スルホベタイン、カルボベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。可溶化剤としてはグリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類等が挙げられる。香料、色素、防腐・防黴剤、増粘剤等を所望により添加しても良い。
【実施例】
【0091】
次の実施例は本発明を例証することを意図したものであり、その範囲を限定するものではない。以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部はすべて重量部を表す。
製造例1
分子中に蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを合成した。アミノ変性シリコーンオイル100部を300mlのフラスコ中に入れる。そこに下記式で示される蛍光増白染料1.0部を蒸留水50部に分散させ徐々に加える。反応系の温度を80〜90℃に調整し、3時間維持する。次に減圧下において水を留去した。未反応の蛍光増白染料を濾別した後、淡黄色透明な液体が得られた。
【0092】
反応のチェックは、反応終了後、反応混合物(シリコーンと蛍光増白染料)が透明となるかで行った。シリコーンと蛍光増白染料は、相溶しないため、透明になれば完全に反応したと考えられる。
【0093】
【化17】

【0094】
実施例1〜3、比較例1〜4
製造例1で得た蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサン及び下記成分を用いて表1の液体洗浄剤組成物を調製した。下記の評価を行った。結果を表1に示す。
・a−1:製造例1で得た分子中に蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサン
・a−2:チノパールAMS−GX;蛍光染料、ビス−(トリアジニルアミノ)−スチルベン−ジスルホン酸系化合物(チバスペシャルティケミカルス社製)
・b−1:ジデシルジメチルアンモニウムクロリド
・b−2:炭素数12〜20のモノ直鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩クロリド
・b−3:曇点26℃のポリエーテル変性シリコーン
・c−1:C1225−O−(EO)7−H
・d−1:炭素数12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
・e−1:C817OCH2CH(OH)CH2OH
・e−2:トリエチレングリコールモノフェニルエーテル
・f−1:亜硫酸ナトリウム
・g−1:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量10000)
・h−1:ジエタノールアミン
・h−2:水酸化ナトリウム。
<洗浄条件>
8cm×8cmの蛍光増白剤未染着木綿布(金巾#2023)を5枚用意し、それぞれの布に表1の洗浄剤組成物を0.3gずつ塗布し、ターゴトメータにて洗浄を行った(水1L、硬度71.2mgCaCO3、水温20℃、100r/min、10分)。その後水道水で5分間流水すすぎを行い、脱水後室内で自然乾燥させた。
<洗濯衣料の色合い変化の評価方法>
表1の蛍光増白剤未配合の洗浄剤を用いて上記洗浄条件で5回処理後の衣料(A)と、上記洗浄条件で5回処理後の衣料(B)の色合いを下記の評価点に従って、10人のパネラーにより評価した(30代男性5人、20代女性5人)。なお、評価は北側のみに採光窓(高さ1.5m、幅0.9m、床からの高さ1m)のある部屋で、晴天の日に行った。それらの平均点をとり、平均点が1点を超えて2点以下を◎、0.5点を超えて1点以下を○、0点を超えて0.5以下を△、0点以下を×として判定し、表1に示した。
(色合い)
(B)の方が(A)より明らかに白い …2点
(B)の方が(A)よりやや白い …1点
(A)と(B)の白さは同じ …0点
(A)の方が(B)よりやや白い …−1点
(A)の方が(B)より明らかに白い …−2点
また、上述の衣料(B)について、暗室のブラックライト下(東芝社製、FL20S−BLB)でむら付きの評価を下記の基準で10人のパネラー(30代男性5人、20代女性5人)により行った。それらの平均点をとり、平均点が2点以上3点以下を○、1.5点以上2点未満を△、1.5未満を×として判定し、表1に示した。
(むら付き)
むら付きがない …3点
むら付きがやや見られる…2点
むら付きが多く見られる…1点
また、上述の衣料(B)について、柔軟性の評価を下記の基準で10人のパネラーにより行った。それらの平均点をとり、平均点が2点以上3点以下を○、1.5点以上2点未満を△、1.5未満を×として判定し、表1に示した。
著しく柔らかい…3点
明確に柔らかい…2点
若干柔らかい …1点
柔らかくない …0点
【0095】
【表1】

【0096】
*pHの調整はN/10硫酸水溶液、又はN/10水酸化ナトリウムで行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に、一般式:
R1aSi(QZ)b(OR2)cO{4-(a+b+c)}/2
(式中、R1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、置換または非置換の1価の炭化水素基を表し;QはQ1NHまたはQ1NHQ2NHで表される2価の基もしくはQOまたはQSであらわされる1価の基を表し、Q1は炭素数3〜22の2価の炭化水素基を表し、Q2は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、該QはQ1の炭素原子を介してケイ素原子に結合しており;Zはたがいに同一でも異なっていてもよく、ナフタル酸無水物系、ナフタル酸イミド系、クマリン系、スチルベン系、ジスチリル−ビフェニル系蛍光染料の単独物又は混合物に属する蛍光染料からなる群より選ばれる構造を含む1価の基および水素原子から選ばれ、分子中少なくとも1個は該構造を含む基であり;R2はたがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、aは0〜2の整数、bは1または2、cは0〜2の整数であって、a+b+cが1〜3の整数である)で示される、少なくとも1個の蛍光増白作用を示す発色基含有シロキサン単位を有し、残余のシロキサン単位が、一般式:
R1dSi(OR2)eO{4-(d+e)}/2
(式中、R1およびR2はそれぞれ前述のとおりであり;dおよびeはそれぞれ0〜3の整数であって、d+eが0〜3の整数である)で示され;1分子中のケイ素原子数が2〜3,000である蛍光増白作用を示す発色基を有するポリオルガノシロキサンを含有する液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−138070(P2008−138070A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325424(P2006−325424)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】