説明

液体洗浄剤組成物

【課題】 洗浄性、低温保存安定性の良い液体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)一般式(1)の化合物:R−O−(CHCH(OH)CHO)−H (1)〔式中、Rは炭素数5〜12のアルキル基、rは平均付加モル数で1〜4の数。〕0.1〜10質量%、
(b)一般式(2)の非イオン界面活性剤:R2a−(OR2bG (2)〔式中、R2aは炭素数8〜16の直鎖アルキル基、R2bは炭素数2〜4のアルキレン基、Gはグリコシド基、nは平均付加モル数で0〜5の数、mは平均縮合度で1〜3の数。〕15〜35質量%、
(c)一般式(3)の非イオン界面活性剤:R−O(CHCHO)H (3)〔式中、Rは炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、pは平均付加モル数で15〜25の数。〕0.1〜10質量%を含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物、特に台所まわりの硬質表面、中でも食器や調理器具などの洗浄に適した液体洗浄剤組成物及び液体洗浄剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
食器用洗浄剤は、食材本来からの汚れの他に、調理に用いる油及び調味料、調理によって生じる変性蛋白、焦げ付き、糊化した炭水化物などが、食器、フライパン、鍋、魚焼きグリル、その他調理器具に付着し、水だけでは除去することが困難な汚れを形成する。特に油による汚れは、指先やふき取り具合から、その残留の程度が容易に感じられるため、使用者は汚れ落ちに対して神経質になり易い。油汚れによる洗浄性を高めるために、近年の手洗い向け食器用洗浄剤は、界面活性剤の含有量を増やすことで対応している。しかしながら、高められた油汚れ除去能は、手肌の油分にも影響を与える可能性がある。肌質は個人によって様々であるが、メーカーは手肌への影響を最小限にするため、鋭意努力してきた。例えば、手肌に対して温和なアルキルグリコシド型界面活性剤を主界面活性剤として用いた洗浄剤が挙げられる。
【0003】
アルキルグリコシドを液体洗浄剤に用いる技術としては、例えば特許文献1〜5などが挙げられる。また、アルキルグリセリルエーテルを液体洗浄剤に用いる技術として、例えば特許文献6〜8などが挙げられる。また、アルキルグリコシドとアルキルグリセリルエーテルを併用した洗浄剤組成物が特許文献9〜13に開示されており、特に特許文献10には食器洗い用液体洗浄剤に関する技術が開示されている。
【0004】
一方、食器用洗浄剤の泡は、その性状によって使用者に洗浄力を連想させる一方で、手肌に対して温和な印象を与える。液体洗浄剤を使用時に、泡形成装置を介して泡にした上で使用するという考え方は、既に一般化している。例えば特許文献11〜12にはポンプフォーマー容器に充填した液体洗浄剤の技術が開示されており、特に特許文献12には食器洗い用液体洗浄剤を充填した物品の技術が開示されており、特許文献13にはアルキルグリコシド、アルキルポリグリセリルエーテル及びエチレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤を配合する起泡力に優れ及び洗浄液の感触が良く、油再付着性の少ない液体洗浄剤が記載されている。
【特許文献1】特開平10−25498号公報
【特許文献2】特表平8−502540号公報
【特許文献3】特表平8−501817号公報
【特許文献4】特開平5−148494号公報
【特許文献5】特開2000−26889号公報
【特許文献6】特開2001−19993号公報
【特許文献7】特開2001−49291号公報
【特許文献8】特開平11−310792号公報
【特許文献9】特開平4−292697号公報
【特許文献10】特開2005−325167号公報
【特許文献11】特表2006−513312号公報
【特許文献12】特開2005−193972号公報
【特許文献13】特開平3−174496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアルキルグリコシドを主基剤として含む液体洗浄剤は、手肌に対して温和な洗浄剤であるが、低温安定性、特に凍結回復性の点で改善の余地がある。
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、アルキルグリコシドを主界面活性剤とする洗浄剤であって、手肌に対する温和性を損なうことなく、優れた洗浄力を示し、低温安定性、特に凍結回復性が優れている液体洗浄剤組成物及びこれを用いた液体洗浄剤物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)下記一般式(1)の化合物0.1〜10質量%、(b)下記一般式(2)の非イオン界面活性剤15〜35質量%、(c)下記一般式(3)の非イオン界面活性剤0.1〜10質量%を含有する液体洗浄剤組成物に関する。
−O−(CHCH(OH)CHO)−H (1)
〔式中、Rは炭素数5〜12のアルキル基を示し、rは平均付加モル数で1〜4の数を示す。〕
2a−(OR2b (2)
〔式中、R2aは炭素数8〜16の直鎖アルキル基を示し、R2bは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。Gはグリコシド基を示す。nは平均付加モル数で0〜5の数を示し、mは平均縮合度で1〜3の数を示す。〕
−O(CHCHO)H (3)
〔式中、Rは炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、pは平均付加モル数で15〜25の数を示す〕。
【0008】
また本発明は、請求項1記載の液体洗浄剤組成物を、泡吐出機構を備えた容器に充填してなる液体洗浄剤物品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体洗浄剤組成物は、手肌に対して温和であり、洗浄力が優れており、低温安定性、特に凍結回復性が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は一般式(1)の化合物であり、特定の分岐型アルキル基有するアルキルグリセリルエーテル化合物である。
−O−(CHCH(OH)CHO)−H (1)
〔式中、Rは炭素数5〜12のアルキル基を示し、rは平均付加モル数で1〜4の数を示す〕。
【0011】
一般式(1)において、Rは炭素数5〜12、好ましくは炭素数5〜10のアルキル基から選ばれる基であり、2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2−エチルヘキシル基又はイソデシル基が更に好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。一般式(1)において、rは1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、r=1の化合物が最も好ましい。特に好ましい化合物は、Rが2−エチルヘキシル基で、かつ、r=1の化合物である。
【0012】
一般式(1)の化合物を得るには、例えば炭素数5〜12アルコールとして2−エチルヘキサノール、イソノナノール又はイソデカノールから選ばれる分岐型アルキルアルコールを用い、これらの分岐型アルコールとエピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物とを、BFなどの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。
例えば、分岐型アルコールとして2−エチルヘキサノールを用いた場合、得られる2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物であり、具体的には、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとして、エポキシ化合物の1位に2−エチルヘキサノールが付加した化合物(3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、以下(a1)という)やエポキシ化合物の2位に付加した化合物(2−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,3−プロパンジオール、以下(a2)という)、副生成物として、(a1)又は(a2)に更にエポキシ化合物が付加した多付加化合物(以下(a3)という)をも含み得る混合物である。本発明の(a)成分である2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを含む該混合物は、そのまま用いてもよく、更に精製して用いてもよい。
【0013】
本発明では、(a)成分である(a1)以外の化合物を多く含有すると本発明の効果を損なう場合があるため注意が必要であり、特に多付加化合物(a3)の含有量を(a3)/(a1)の質量比で1/99以下、好ましくは0.5/99.5以下、特に好ましくは0.1/99.9以下が好適である。
【0014】
(a3)成分を低減化させる方法としては、特開2001−49291号公報に記載の方法を例示することができる他、蒸留精製により(a3)成分を除去する方法を採用することができる。
【0015】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は一般式(2)のアルキルグリコシド型界面活性剤である。
2a−(OR2b) (2)
〔式中、R2aは炭素数8〜16の直鎖アルキル基であり、R2bは炭素数2〜4のアルキレン基である。Gは還元糖に由来する基を示す。nは平均付加モル数で0〜5の数を示し、mは平均縮合度で1〜3の数を示す〕。
【0016】
一般式(2)において、R2aは炭素数10〜14の直鎖アルキル基が好適である。また、nは、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2である。R2bはエチレン基が好ましい。
【0017】
一般式(2)において、Gは還元糖に由来する基であり、より具体的にはグリコシド基が挙げられる。原料の還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数が3〜6個のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフラクトースを挙げることができる。本発明ではこれらの中でも特に炭素数5又は6のアルドペントースあるいはアルドヘキソースが好ましく、中でもグルコースが最も好ましい。
【0018】
一般式(2)中、mは糖の平均縮合度を示し、好ましくは1〜2の数、特に1〜1.5の数が良好である。
【0019】
一般式(2)の化合物は、上記糖とR2a−(OR2b)−OHとを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。また、アセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0020】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、一般式(3)の非イオン界面活性剤である。
−O(CHCHO)H (3)
〔式中、Rは炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、pは平均付加モル数で15〜25の数を示す〕。
【0021】
一般式(3)において、Rは炭素数10〜20、好ましくは10〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Rは2級アルコール由来のアルキル基でも良い。
【0022】
一般式(3)において、pは15〜25であり、好ましくは16〜23である。(c)成分のエチレンオキシドの付加モル数は、本効果の上で重要な条件であり、この範囲において洗浄効果及び起泡性を損なうことなく、低温安定性に寄与することができる。エチレンオキシドの付加モル数が低い場合、或いは(c)成分を配合しない場合は、低温安定性が低下して、低温時に液相が2相に分かれてしまう。また付加モル数が多すぎる場合も同様に低温安定性が低下する。なお(c)成分は、本組成物中で洗浄剤の粘度を下げる性質があるため、泡吐出機構を通じて泡状にして塗布する場合に非常に有効な成分でもある。
【0023】
本発明には、更に洗浄力及び安定性の点から以下に示す(d)〜(j)成分を配合することが好ましい。
【0024】
<(d)成分>
本発明の組成物は、(d)成分として炭素数10〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩を含有することが洗浄性の点から好ましい。アルキル基の炭素数は12〜14が好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられ、特に粘度の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0025】
<(e)成分>
本発明の組成物は、(e)成分として塩又はイオンとして存在するマグネシウムを含有することができる。(e)成分は、(d)成分やその他陰イオン界面活性剤の対イオンとして配合してもよい。本発明でいうマグネシウムとは、組成物中でマグネシウムイオン及び該イオンと乖離平衡の状態にある塩を構成しているマグネシウムを指す。
【0026】
<(f)成分>
本発明の組成物は、洗浄効果を更に高めるため、(f)成分としてポリプロピレングリコールを含有することができる。ポリプロピレングリコールは、重量平均分子量が600〜5000、更には800〜2000のものが好ましく、重量平均分子量は光散乱法を用いて決定することができ、ダイナミック光散乱光度計(DLS−8000シリーズ、大塚電子株式会社製など)により測定することができる。
【0027】
<(g)成分>
本発明の組成物は、(g)成分として炭素数8〜18の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤、炭素数8〜18の炭化水素基を有する両性界面活性剤、及び炭素数8〜18の炭化水素基を有するアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤を含有することができる。なお、アルカノールアミド型界面活性剤の前記炭化水素基の炭素数には、カルボニル基の炭素原子も含むものとする。また炭化水素基は置換基を有していても良いアルキル基又はアルケニル基が好ましい。(g)成分としては、具体的には下記一般式(4)〜一般式(6)の化合物を挙げることができる。
【0028】
【化1】

【0029】
〔式中、R4aは炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R4bは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Dは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基である。kは0又は1の数であり、R4c、R4dは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0030】
【化2】

【0031】
〔式中、R5aは炭素数9〜17のアルキル基又はアルケニル基であり、R5bは炭素数1〜6のアルキレン基である。Eは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、jは0又は1の数である。R5c、R5dは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R5eはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Tは−SO、−OSO、−COOから選ばれる基である。〕
【0032】
【化3】

【0033】
〔式中、R6aは炭素数7〜17の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、R6bはメチル基、エチル基又は−(CO)−Hである。また、R6cは−(CO)−Hである。h、iはそれぞれ0〜5の数であり、h+iは1〜6である〕。
【0034】
一般式(4)において、R4aは、好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくはラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)である。Dは、好ましくは−COO−又は−CONH−であり、最も好ましくは−CONH−である。R4bの炭素数は、好ましくは2又は3であり、R4c、R4dは、好ましくはメチル基である。
【0035】
本発明ではR4aは単独のアルキル(又はアルケニル)鎖長でもよく、異なるアルキル(又はアルケニル)鎖長を有する混合アルキル基(又はアルケニル基)であってもよい。後者の場合には、ヤシ油、パーム核油から選ばれる植物油から誘導される混合アルキル(又はアルケニル)鎖長を有するものが好適である。具体的にはラウリル基(又はラウリン酸残基)/ミリスチル基(又はミリスチン酸残基)のモル比が95/5〜20/80、好ましくは90/10〜30/70であることが洗浄効果、及び泡立ち性の点から好ましい。
【0036】
一般式(5)において、R5aは、好ましくは炭素数9〜15、特に9〜13のアルキル基であり、R5bは、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基である。Eは−CONH−が好ましく、gは0又は1が好適である。R5c、R5dはメチル基、又はヒドロキシエチル基が好ましい。Tは−SO、又は−COOが好ましく、Tが−SOの場合にはR5eは−CHCH(OH)CH−が好ましく、Tが−COOの場合にはR5eはメチレン基が好ましい。
【0037】
一般式(6)の化合物において、R6aは炭素数7〜17の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R6aCO−の好ましい具体例としてはオクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸、リノール酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸から誘導されるアシル基が挙げられ、特に好ましくは、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸から誘導されるアシル基である。
【0038】
一般式(6)の化合物においてR6bはメチル基、エチル基又は−(CO)−Hであり、洗浄効果の持続性の点から好ましくはメチル基又は水素原子(h=0)である。また、R6cは−(CO)i−Hであり、iは洗浄効果の持続性の点から好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3の数である。
【0039】
一般式(6)の化合物の好ましい具体例としては一般式(6−1)及び一般式(6−2)の化合物を挙げることができる。
【0040】
【化4】

【0041】
<(h)成分>
本発明では、洗浄力及び起泡力を向上させる目的から、(h)成分として(d)成分以外の陰イオン界面活性剤を含有することができるが、手肌への影響を考慮してその配合量は制限される。
【0042】
本発明において、(d)成分以外の陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18の炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤であり、具体例としては炭素数10〜16のモノアルキル硫酸エステル塩、炭素数10〜16のアルキル基を有し炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均1.0〜4.0モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜16のα−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(炭素数8〜16)低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩を挙げることができる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられ、特に粘度の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩を挙げることができる。
【0043】
<(i)成分>
本発明の組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的でハイドロトロープ剤〔以下、(i)成分という〕を含有することが好ましい。ハイドロトロープ剤としてはトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸及びこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸が良好である。
【0044】
<(j)成分>
本発明では貯蔵安定性の改善剤、又は粘度調節剤として溶剤〔以下、(j)成分という〕を含有することができる。溶剤の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。
【0045】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の組成物は、洗浄効果の点から、(a)成分を0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%含有し、(b)成分を15〜35質量%、好ましくは20〜30質量%、より好ましくは23〜28質量%含有する。
【0046】
本発明の組成物は、低温安定性を高めるため、(c)成分を0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%含有する。
【0047】
本発明の組成物に(d)成分を含有させるときは、(d)成分を酸形態で、すなわち塩であるものは、対の陽イオンを水素原子と見なした上で、0.1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%含有することが洗浄性能を高める上で好ましい。なお、(d)成分が関与する量比(質量比、モル比)では、(d)成分の量は、全て酸形態での量に基づくものとする。
【0048】
(e)成分のマグネシウムは、イオン又は塩として存在し、界面活性剤やハイドロトロープ剤の対イオン、すなわち塩として配合してもよく、また塩化マグネシウム(例えば6水和物)や硫酸マグネシウム(例えば7水和物)などの塩として別途添加して配合してもよい。但し(e)成分はマグネシウムとして、(d)成分のアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩に対して、マグネシウム/(d)のモル比が、0.7〜2.0、好ましくは0.8〜1.7、より好ましくは1.0〜1.5の割合で配合される。マグネシウムは、組成物中で塩やイオンとして存在している全マグネシウムの濃度であり、(d)成分と塩を成しているものも、その濃度に加えられる。本発明では、系中のマグネシウムイオン又はマグネシウムイオンと平衡状態にあるマグネシウム塩を(d)成分の対イオンに相当する量よりも過剰に存在させること、すなわち下限値以上のモル比率にすることで、優れた洗浄力を得ることができる。なお、低温における液安定性、特に凍結状態からの回復性の理由から上限値以下である。
【0049】
(f)成分の好ましい含有量は、組成物中、0.1〜10質量%、更に0.5〜5質量%、特に1〜5質量%が好適である。
【0050】
(g)成分の好ましい含有量は、組成物中、0.1〜10質量%、更に0.5〜3質量%、特に1〜2.5質量%が好ましい。
【0051】
(h)成分は、洗浄効果の増強、及び起泡性向上の点から含有することが好ましいが、多量配合は(b)成分の本来有する手肌に対する温和性や感触改善などの効果を減じるおそれがあるため、配合する場合は、組成物中に10質量%以下、更に5質量%以下であり、0.1質量%以上である。なお、本発明の組成物において、手肌への影響がなく、洗浄力及び起泡性の上で(d)成分が最も有効な陰イオン界面活性剤である。従って(h)成分を配合する場合は、組成物の温度変化によって生じる相分離や濁りなどを抑制する目的や、貯蔵安定性を高める目的で配合する。
【0052】
更に本発明では(i)成分、(j)成分を貯蔵安定性、及び好ましい粘度に調整し、特に液体洗浄剤物品にしたときの泡の吐出性を良好にする目的から用いることが好ましいが、本発明の組成物では(c)成分を含有することにより組成物の粘度を低下させることができるため、(i)成分、(j)成分、特に(j)成分の含有量を減少させることができる。組成物中に(i)成分、(j)成分を含有させる場合の量は、それぞれ7質量%以下で良いが、本発明では特に(i)及び(j)の合計が10質量%以下となるような、低濃度であっても、泡吐出機構にて起泡させるのに十分低い粘度の洗浄剤を得ることができる。
【0053】
本発明の組成物は、上記成分を水に溶解又は分散させた液状の形態であり、水の含有量は貯蔵安定性の点から好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜60質量%、特に好ましくは45〜55質量%である。
【0054】
また、該組成物の20℃におけるpHを6〜8、好ましくは6.5〜7.5にすることが貯蔵安定性や皮膚への安全性の点から好ましい。pH調整剤としては塩酸や硫酸など無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸などの有機酸などの酸剤や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩など、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いることが好ましく、特に塩酸、硫酸、クエン酸から選ばれる酸と水酸化ナトリウムや水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましい。いずれの化合物も、粘度特性に対し大きな影響のない範囲で配合される。
【0055】
本発明の組成物の20℃における粘度は、使い勝手の点から、好ましくは10〜1000mPa・s、より好ましくは30〜700mPa・s、特に好ましくは40〜300mPa・sである。このような粘度には、例えば上記の(i)成分、(j)成分などを用いて調整する。なお後述する泡吐出機構により、本発明の液体洗浄剤を泡状にして使用する場合は、粘度は低めに設定することが好ましいが、スポンジや食器に直接塗布するような場合は、濃厚なイメージを与える目的で、粘度は高めに設定してもよい。本発明では、実施例に示したように界面活性剤濃度が30質量%を超えるような場合でも、100mPa・s未満、特には90mPa・s以下の粘度を達成することができる。このように低い粘度は、手動式の泡吐出機構を備えた容器に充填して用いる場合に、吐出のために要する力を最小限にするだけでなく、泡形成の上でも重要な要素となる。
【0056】
本発明でいう粘度は以下のようにして測定する。まずTOKIMEC.INC製B型粘度計モデルBMに、ローター番号No.2のローターを備え付けたものを準備する。試料をトールビーカーに充填し20℃の恒温槽内にて20℃に調整する。恒温に調整された試料を粘度計にセットする。ローターの回転数を60r/mに設定し、回転を始めてから60秒後の粘度を本発明の粘度とする。
【0057】
その他の成分としては、粘度特性に影響のない限り、通常液体洗浄剤に配合されている成分を配合することができる。例えば、香料成分、除菌成分、防腐剤、濁り剤、着色剤が挙げられる。
【0058】
<液体洗浄剤物品>
本発明の液体洗浄剤物品は、本発明の液体洗浄剤組成物が泡吐出機構を備えた容器に充填されたものである。本発明の液体洗浄剤組成物は、起泡性に優れ、特に泡吐出機構を備えた容器に充填して吐出すると、ボリュームがあり、泡持ちがよく、きめの細かいといった審美的に好ましい泡を得ることができる。
【0059】
泡吐出機構による泡吐出方法としては、一般的に握力により汲み上げられた容器内の液体を特定吐出口から容器外に吐出させ、その際に空気と混合することによって起泡する手動式、弾性チューブ等の中に高圧で液体を封入し弾性により液体を押し出し、その際に空気と混合して起泡させる加圧封入式、又は液化ガスを用いたいわゆるエアゾール式を挙げることができる。本発明では、前記の手動式による泡吐出方法が好ましい。
【0060】
泡吐出機構としては、多孔質膜体、好ましくはメッシュサイズ100〜300/インチの多孔質膜体を1又は2枚有するポンプフォーマーを具備する容器が好ましい。
【0061】
図面により、本発明で用いる泡吐出機構を備えた容器(ポンプフォーマー容器)の一実施形態を説明する。図1は、ポンプフォーマー容器の縦断面図である。
【0062】
ポンプフォーマー容器10では、容器本体11の口首部12に、収容液(液体洗浄剤組成物)を空気と混合することにより、泡状にして吐出口26から吐出できる泡吐出器13が装着されている。吐出口26は、上向きに傾斜していることが好ましく、水平面との間でなす角度αが1〜10°であることが好ましい。更に、容器本体11の外表面と吐出口26との間隔βが3〜20mmであることが好ましい。
【0063】
泡吐出器13は、容器本体11の口首部12に装着されるベースキャップ部14に、収容液の吸引、加圧、排出をする筒状ピストン部材15と、空気の吸引、加圧、排出をするエアピストン部材16が、それぞれ同心に直列配置されて組み入れられた単一のシリンダ部17からなるポンプ18を有している。
【0064】
ベースキャップ部14の上方に突出しているポンプヘッド部19内の高さ方向流路21内には、発泡部材20が配置されている。発泡部材20は独立した筒状リングに、メッシュサイズ100〜300/インチの多孔質膜体を、筒状リングの少なくとも一端を覆うようにして固定された構造からなる。筒状リングの両端面が液の通過方向に対して垂直になるようにして、高さ方向流路21内に配置されている。円柱状の発泡部材20は、前記多孔質膜体の1枚を用いて成形されたものでもよいし、メッシュサイズが同一又は異なる2枚を用いて成形されたもの(二重構造のもの)でもよい。
【0065】
シリンダ部17は、大径空気室24と、この大径空気室24から直列下方に連続して下端部が吸引管27と連結された小径液導入室28からなっている。小径液導入室28の内部には、軸方向に圧縮変形可能なスプリング部材29が配置されている。スプリング部材29は、筒状ピストン部材15を介して、ポンプヘッド部19を付勢している。
【0066】
筒状ピストン部材15は、内部に液室30、弁体31a、31bを備えている。エアピストン部材16は、筒状ピストン部材15から径方向外側に張り出して設けられており、周縁部が大径空気室24の内周面と摺動可能に密着して大径空気室24を上下に仕切っている。
【0067】
次に、図1により、本発明の液体洗浄剤物品の使用方法を説明する。人の手によって、ポンプヘッド部19をスプリング部材29の付勢力に抗して押し込むことにより、ポンプ18の筒状ピストン部材15とエアピストン部材16が同時に押し下げられ、弁体31aが開放される。そして、弁体31aの開放により、液室30内に流入した収容液(液体洗浄剤組成物)は、加圧されて、高さ方向流路21に向かって排出される。それと並行して、中空パイプ22と筒状ピストン部材15の嵌合部分に沿って形成された空気流路(図示せず)が開放されると、大径空気室24から高さ方向流路21に向かって空気が加圧排出される。
【0068】
このようにして、収容液と空気が高さ方向流路21に向かって排出される途中の合流空間23で合流し、加圧混合された後、中高さ方向流路21内に配置された発泡部材20を通過して泡状に変化される。泡状になった収容液は、高さ方向流路21を通って、吐出口26から洗浄対象物(食器、調理器具などの硬質表面)や洗浄具であるスポンジなどに対して吐出される。なお、発泡部材20以外にも吐出口26付近に前記メッシュを設けることで、泡質が更に改善される。
【0069】
本発明の液体洗浄剤物品は、本発明の液体洗浄剤組成物と特定の泡吐出機構を有する容器を組み合わせることにより、ボリュームがあり、泡持続性の優れた審美的に好ましい泡(例えば、きめ細かな泡)を形成することができる。
【0070】
本発明の液体洗浄剤物品は、公知の硬質表面用の洗浄剤として適用することができ、特に台所用洗浄剤として適している。
【実施例】
【0071】
表1に示す成分を用いて液体洗浄剤組成物を調製した。これら組成物の洗浄性能及び低温安定性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。また、表2に本発明の好ましい配合例を示す。
【0072】
<洗浄性能>
牛脂(Lot.U5649、シグマ・アルドリッチジャパン社製)と菜種油(山桂産業株式会社製)とを質量比1対1で混合し、0.1質量%のスダンIII(Lot.W8NTF、東京化成工業株式会社製)を均一に混ぜ込んだものをモデル油とし、モデル油1gを直径23cmの白色陶器皿(商品名:玉渕9吋リムミート皿、φ23.3cm、業務用食器カタログ「器蔵 2006〜2008 No.4」627頁記載)に均一に塗り広げたものをモデル汚染食器とした。
【0073】
市販の新品スポンジ(115mm×75mm×35mm、商品名:キクロン、販売元:キクロン株式会社)を水道水でもみ洗いし、水道水の含有量が10gになるまで絞った後、表1の組成物1gと水道水20mlを染み込ませた。モデル汚染食器上で上記スポンジを2〜3回手でもみ泡立たせた後、モデル汚染食器を連続して擦り洗いし、洗浄(食器に付着した色が消えることにより確認)できた皿の枚数を求めた。
【0074】
<低温保存安定性(凍結回復性)>
組成物をポリエチレンテレフタレート製容器(商品名:PEM−100、竹本容器(株)製)に80g封入し、温度可変プログラム(5℃→−15℃に10hrかけて降温→−15℃で8hr保持→−15℃→5℃に10hrかけて昇温→5℃で20hr保持)を設定した恒温槽(エスペック社製,型番PU-3KP)にてインキュベートした。20日後における5℃での外観を肉眼で確認し、均一な1層であるものを○、2層に分離したものを×とした。
【0075】
【表1】

実施例1〜6の液体洗浄剤組成物は、従来、低温安定性向上剤として汎用されている(i)成分のハイドロトロープ剤や(j)成分の溶剤の量を減少させた場合でも、高い低温安定性を示した。
【0076】
なお、実施例1〜6の液体洗浄剤組成物200mlを図1に示す泡吐出機構を備えた容器(ポンプフォーマー付き容器)に入れ、皿上に吐出させたところ、ボリュームがあり、泡持続性の優れたきめ細かな泡を生じさせることができた。比較例6及び7の液体洗浄剤組成物を用いて同様に吐出させたところ、十分な泡を形成させることができなかった。
【0077】
【表2】

【0078】
(注)表中の記号は以下のものを表す。
(a)成分
GE−C5:n−ペンチルモノグリセリルエーテル(モノグリセリルエーテル98質量%、異性体及び多量体の合計8質量%)
GE−2EH:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル(モノグリセリルエーテル99質量%以上)
(b)成分
AG:アルキル基がカプリル基/ラウリル基/ミリスチル基=6/3/1(質量比)からなるアルキルグリコシド、グルコースの平均縮合度は1.3
(c)成分
ノニオン-1:エマルゲン116(商品名:花王(株)製)炭素数12の直鎖アルコール(C12直鎖アルキル基)にエチレンオキシドを平均16モル(p=16)付加させたもの[C12直鎖アルキル基、p=16]
ノニオン-2:エマルゲン121(商品名:花王(株)製)C12直鎖アルキル基、p=21
比較ノニオン-1:エマルゲン108(商品名:花王(株)製)C12直鎖アルキル基、p=6
比較ノニオン-2:エマルゲン120(商品名:花王(株)製)C12直鎖アルキル基、p=12
比較ノニオン-3:C12直鎖アルキル基、p=30
(d)成分
LAS−Na:アルキル基が炭素数10〜15の混合体であるアルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩(表中の数値は酸形態での配合量を示す)
(e)成分
Mg−I:塩化マグネシウム・6水和物
(f)成分
PPG−I:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量が1000の化合物、ポリグリコールP−1000TB、ダウ・ケミカル日本(株)製)
(g)成分
AO−I:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド
SB−I:N,N,N−ドデシルジメチル−N−2−ヒドロキシ−3−スルホプロピルアンモニウムベタイン
(h)成分
ES−I:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔原料アルコールは、1−ドデセン及び1−トリデセン40/60(質量比)を原料にヒドロホルミル化して得られたアルコールである。このアルコールにEOを平均2モル付加させた後、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した。全ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム中の全ポリオキシエチレン分岐鎖アルキルエーテル硫酸ナトリウムの割合は25質量%であった。〕
(i)成分
p−TS:パラトルエンスルホン酸
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に用いられる泡吐出機構を備えた容器(ポンプフォーマー容器)の一例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0080】
10 ポンプフォーマー容器
11 容器本体
13 泡吐出器
14 ベースキャップ部
15 筒状ピストン部材
16 エアピストン部材
17 シリンダ部
18 ポンプ
20 発泡部材
21 高さ方向流路
22 中空パイプ
23 合流空間
26 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)の化合物0.1〜10質量%、(b)下記一般式(2)の非イオン界面活性剤15〜35質量%、(c)下記一般式(3)の非イオン界面活性剤0.1〜10質量%を含有する液体洗浄剤組成物。
−O−(CHCH(OH)CHO)−H (1)
〔式中、Rは炭素数5〜12のアルキル基を示し、rは平均付加モル数で1〜4の数を示す。〕
2a−(OR2b (2)
〔式中、R2aは炭素数8〜16の直鎖アルキル基を示し、R2bは炭素数2〜4のアルキレン基を示す。Gはグリコシド基を示す。nは平均付加モル数で0〜5の数を示し、mは平均縮合度で1〜3の数を示す。〕
−O(CHCHO)H (3)
〔式中、Rは炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、pは平均付加モル数で15〜25の数を示す。〕
【請求項2】
請求項1記載の洗浄剤組成物を、泡吐出機構を備えた容器に充填してなる液体洗浄剤物品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−144023(P2009−144023A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321499(P2007−321499)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】