説明

液体洗浄剤組成物

【課題】再生産可能な資源である天然油脂系界面活性剤を主基材として、貯蔵安定性と洗浄効果の両方に優れた液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)過酸化水素、(b)界面活性剤、(c)特定のホウ素含有化合物、(d)隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物、(e)一般式(I)で表される特定の溶剤、(f)粘度平均分子量3万〜50万のポリエチレングリコール、及び(e)水を、それぞれ特定比率で含有し、(b)成分中の天然油脂系界面活性剤の割合、(e)成分/(f)成分の質量比、(a)成分/〔(e)成分と(f)成分の合計〕の質量比が、それぞれ特定範囲にあり、且つ20℃におけるpHが2.5〜7.0である、液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
より環境負荷の少ない商品を、より環境負荷の少ない方法で作ることが社会の持続的発展のために求められており、洗浄剤組成物もその例外ではない。自然環境・社会環境を含めて環境に調和し負荷の少ない産業活動、生活活動の達成は今後の最重要課題となっている。洗浄剤組成物に用いられる界面活性剤も環境負荷への配慮をし過ぎるということはない。従来界面活性剤は主に環境汚染を問題にすることが多かったが、環境負荷を考えた場合、製造から使用を経て廃棄に至るすべての影響を考慮することが大切である。界面活性剤の原料としては天然油脂系と石油系があり、天然油脂系は再生産可能な資源であり、石油系はいずれ枯渇する再生産不能の資源である。再生産可能な資源という観点から天然油脂系原料が注目される。
【0003】
また、環境負荷の観点から少量で高機能(高洗浄力)の商品が求められている。これは包装材料の低減、輸送負荷の低減という点でも環境負荷低減につながる。
【0004】
少量で洗浄力の高い洗浄剤を得るための1つの方法として、界面活性剤濃度を高めることが考えられるが、一般に、界面活性剤の高濃度溶液は温度によって影響を受けやすく、温度差や濃度によって粘性が変化したり、常温では安定であっても低温では結晶が析出したり、凍結する事がある。このため、液安定性を保持するために、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩等のそれ自体はそれほど洗浄力を示さないハイドロトロープ剤を多量に配合する必要が生じるため、液体洗浄剤組成物の少量使用(コンパクト化)商品の開発を困難にしていた。
【0005】
一方、過酸化水素を配合し、使用時に水で希釈することでpHを上昇させる技術(pHジャンプ技術)により、過酸化水素の安定性と洗浄性能を両立させた組成物が知られている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2006−169515号公報
【特許文献2】特開2007−308592号公報
【特許文献3】特開2007−177145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、再生産可能な資源である天然油脂系界面活性剤を主基材として、貯蔵安定性と洗浄効果の両方に優れた液体洗浄剤組成物を提供することにある。より好適には少量使用で高洗浄力が得られる液体洗浄剤組成物を提供することにある。特許文献1〜3は、再生産可能な資源である天然油脂系界面活性剤を主基材とする場合の貯蔵安定性と洗浄効果の両立については言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分0.1〜10質量%、(b)成分20〜80質量%、(c)成分をホウ素原子として0.05〜2質量%、(d)成分3〜35質量%、(e)成分0.001〜10質量%、(f)成分0.001〜5質量%、及び(g)成分10〜60質量%を含有し、
(b)成分中、天然油脂系界面活性剤の割合が60質量%以上であり、
(e)成分/(f)成分の質量比が1/60〜30/1であり、
(a)成分/〔(e)成分と(f)成分の合計〕の質量比が1/10〜80/1であり、且つ
20℃におけるpHが2.5〜7.0である、
液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:界面活性剤
(c)成分:ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物
(d)成分:隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物
(e)成分:下記一般式(I)で表される溶剤
1−O−(R2O)n−H (I)
〔式中、R1は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2は直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜3のアルキレン基を示し、n個のR2は同一でも異なっていてもよく、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す3〜50の数である。〕
(f)成分:粘度平均分子量3万〜50万のポリエチレングリコール
(g)成分:水
【0008】
また、本発明は、上記本発明の液体洗浄剤組成物を繊維製品に塗布し、次いで水系洗浄する工程を有する、繊維製品の洗濯方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再生産可能な資源である天然油脂系界面活性剤を主基材として、貯蔵安定性と洗浄効果の両方に優れた液体洗浄剤組成物が得られる。また、少量使用で高洗浄力が得られる液体洗浄剤組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は(a)成分として過酸化水素を含有する。
【0011】
<(b)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は(b)成分として界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0012】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド等が挙げられる。
【0013】
陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸塩等を挙げることができる。これらの中でもアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が好ましく、脂肪族α−スルホメチルエステル、アルキル硫酸塩がより好ましい。
【0014】
両性界面活性剤としては、、モノ又はジアルキルアミン及びそのポリオキシエチレン付加物、モノ又はジ長鎖アルキル第4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、カルボベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0015】
本発明では、(b)成分中、天然油脂系界面活性剤の割合が60質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。ここで、「天然油脂系界面活性剤」とは、天然油脂由来の原料を用いて得られた界面活性剤をいい、天然油脂由来のアルキル基を有する界面活性剤が包含される。
【0016】
液体洗浄剤組成物の安定性、洗浄性能、ハイドロトロープ剤の低配合化等、コンパクト化の観点で、(b)成分として、非イオン界面活性剤〔(b1)成分〕を含有することが好ましく、(b)成分中の(b1)成分の割合は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。
【0017】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、(c)成分としてホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、4ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0018】
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、(d)成分として隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有する。(d)成分としては、下記(1)〜(4)の化合物が好適であり、これらの化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。
(1)グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、アルキル(炭素数1〜10)グリセリルエーテル、アルキル(炭素数1〜10)ジグリセリルエーテル、アルキル(炭素数1〜10)トリグリセリルエーテル、エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコールからなる群より選ばれるグリセロール類又はグリコール類
(2)ソルビトール、マンニトール、マルチトース、イノシトール及びフィチン酸からなる群より選ばれる糖アルコール類
(3)グルコース、アピオース、アラビノース、ガラクトース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロース及びフルクトースからなる群より選ばれる還元糖類
(4)デンプン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、カードラン、プルラン、アミロース及びセルロースからなる群より選ばれる多糖類。
【0019】
本発明では、前記(2)の糖アルコールが好適であり、単独又は複数で用いることができる。特にソルビトールが安定性、漂白効果及び洗浄効果の点から好適である。なお、(3)の還元糖については、還元性のあるアルデヒド基が分子中に存在するため、過酸化水素の安定性に影響することがあるので、使用する場合には注意を要する。
【0020】
<(e)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(e)成分として、下記一般式(I)で表される溶剤を含有する。
1−O−(R2O)n−H (I)
〔式中、R1は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2は直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜3のアルキレン基を示し、n個のR2は同一でも異なっていてもよく、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す3〜50の数である。〕
【0021】
一般式(I)において、R1はメチル、エチル、が好ましく、中でも、メチルが好ましい、R2はエチル、プロピル、イソプロピルが好ましく、中でも、エチルが好ましい、nは3〜20が好ましい。
【0022】
<(f)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(f)成分として、粘度平均分子量3万〜50万のポリエチレングリコールを含有する。(f)成分の粘度平均分子量は好ましくは、4万〜40万、更に5万〜30万が好ましい。(f)成分は保存後の安定性の観点から上記範囲の粘度平均分子量のものが用いられる。尚、(f)成分の粘度平均分子量は、「ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマーサイエンス・ボリューム1・イシューナンバー1・ページ56−62(1959)サム・プロパティーズ・オブ・ポリエチレンオキサイド・イン・アクオス・ソリューション・エフ・イー・ベイリー・ジュニア・アンド・アール・ダブリュー・キャラード」(Journal of Applied Polymer Science vol.1 IssueNo.1 p56-62(1959)"Some Properties of Poly(ethylene oxide) in Aqueous Solution " F.E.Bailey,Jr., and R.W.Callard)に記載の方法で求めることができる。
【0023】
<(g)成分>
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、(g)成分として水を含有する。
【0024】
<(h)成分>
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、要すれば洗浄性能の観点より(h)成分として漂白活性化剤を含有する。漂白活性化剤としては、アルカノイルオキシベンゼン型漂白活性化剤が好ましく、特に炭素数8〜14、好ましくは8〜13のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、もしくは炭素数8〜14、好ましくは8〜13のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸又はこれらの塩が好ましい。より具体的に好ましい例としては、オクタノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、オクタノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ノナノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、デカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。これらの中でも特にノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩が漂白効果の点から好ましい。
【0025】
<(i)成分>
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、要すれば安定性の観点より(i)成分としてホスホン酸系金属捕捉剤を含有する。ホスホン酸系金属捕捉剤としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、ヒドロキシエタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリ(メチレンホスホン酸)、2−ヒドロキシエチルイミノジ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸誘導体やその塩を挙げることができる。これらの中でも1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やその塩が好ましい。
【0026】
<(j)成分>
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、要すれば安定性の観点より(j)成分としてフェノール系ラジカルトラップ剤を含有する。フェノール系ラジカルトラップ剤としては、フェノール性水酸基を有する化合物、フェノール性水酸基を有する化合物のエステル誘導体、フェノール性水酸基を有する化合物のエーテル誘導体等が挙げられる。このような化合物として、より具体的には、クレゾール、チモール、クロロフェノール、ブロモフェノール、メトキシフェノール、ニトロフェノール、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエン、ナフトール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノキシエタノール、フェノールなどが挙げられる。これらの中でも4−メトキシフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノン、カテコールがより好ましく、更にラジカルトラップ剤の安定性を考慮すれば、これらの中でも4−メトキシフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸が更に好ましく、4−メトキシフェノールが特に好ましい。
【0027】
<液体洗浄剤剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分、(f)成分、及び(g)成分を含有する。また、要すれば更に(h)成分、(i)成分、(j)成分、及びその他成分を含有する。
【0028】
本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、洗浄性能、安定性の観点から0.1〜10質量%であり、0.5〜6質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。(b)成分の含有量は、洗浄性能、安定性の観点から20〜80質量%であり、25〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。(c)成分の含有量はホウ素原子として、洗浄性能、安定性、pH調整の観点から0.05〜2質量%であり、0.1〜1.5質量%が好ましく、0.15〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.5質量%が更に好ましい。(d)成分の含有量は、洗浄性能、安定性、pH調整の観点から3〜35質量%であり、5〜30質量%が好ましく、8〜25質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。また、(e)成分の含有量は、保存時の安定性ならびに洗浄性能の観点から0.001〜10質量%であり、0.005〜8質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。また、(f)成分の含有量は、製品の外観ならびに洗浄力の観点から0.001〜5質量%であり、0.01〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。また、(g)成分の含有量は、洗浄性能、粘度物性、溶解性の観点から10〜60質量%であり、15〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の液体洗浄剤剤組成物は、更に洗浄性能の観点より(h)成分として漂白活性化剤を含有することが好ましい。本発明の組成物中の(h)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.5〜3質量%が更に好ましい。
【0030】
本発明の液体洗浄剤組成物は、更に安定性、液体物性の観点から(i)成分としてホスホン酸系金属捕捉剤を含有することが好ましい。本発明の組成物中の(i)成分の含有量は、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1.5質量%がより好ましく、0.1〜1質量%が更に好ましい。
【0031】
本発明の液体洗浄剤組成物は、更に安定性、液体物性の観点から(j)成分として、フェノール系ラジカルトラップ剤を含有することが好ましい。本発明の組成物中の(j)成分の含有量は、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0032】
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性、洗浄性能の観点から(a)成分/(b1)成分の質量比45/55〜1/99が好ましく、30/70〜3/97がより好ましく、15/85〜5/95が更に好ましい。
【0033】
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性の観点から、組成物原液の20℃におけるJIS K3362:1998記載の測定によるpHは、中性〜酸性が好ましく、具体的には2.5〜7.0であり、3〜6.5が好ましく、3.5〜6がより好ましい。このようなpHに調整するためのpH調整剤としては、塩酸、硫酸等の無機酸及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基並びにクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸が好ましい。中でも、塩酸、硫酸等の無機酸及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が好ましい。
【0034】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(c)成分及び(d)成分により、液体洗浄剤組成物を水で希釈することでpHを上昇させるpHジャンプ効果を発現する。これにより洗浄性能が向上する。
【0035】
本発明では、液体洗浄剤組成物に対して2000容積倍の水により希釈した液体洗浄剤組成物の希釈液の20℃におけるpHが7〜10.5になることが漂白/洗浄効果を得る目的から好ましい。更に本発明では、液体洗浄剤組成物に対して100容積倍の水により希釈した希釈液の20℃におけるpHが7〜9.5になることが漂白/洗浄効果を得る目的から好ましい。このようなpHジャンプ効果を得るために(c)成分及び(d)成分は、特定範囲のモル比、及び特定範囲の含有量となるように調整して用いる。
【0036】
ここで、(c)成分と(d)成分(α,β−ジヒドロキシ化合物)との間には下記のような平衡反応が存在する。
【0037】
【化1】

【0038】
本発明においては、上記ジ体がpHジャンプ系の主要成分であることが、上記2000容積倍希釈後の希釈液のpHを7〜10.5にし、そして上記100容積倍希釈後の希釈液のpHを7〜9.5にするのに好適である。液体洗浄剤組成物中に存在する全ホウ素化合物に対して、ジ体の含有量が70〜100モル%であり、モノ体の含有量が0〜5モル%であり、単独で存在するホウ酸、ホウ砂及び/又はホウ酸塩の含有量が0〜25モル%であることが好ましい。モノ体、ジ体、並びに単独で存在するホウ酸、ホウ砂及び/又はホウ酸塩がこのような範囲を超える場合には、pHジャンプ効果が不充分となるので、従って優れた洗浄効果が得られにくくなり、また、(d)成分が(c)成分に対して過剰に存在すると過酸化水素の安定性を損なうおそれがある。このため上記のように(c)成分と(d)成分との比率を調整するには注意が必要である。
【0039】
従って、本発明では(d)成分/(c)成分のモル比(ただし、ホウ砂及び四ホウ酸ナトリウムの場合はホウ素原子を4個含むため、4等量と考える)が1.6〜4.0が好ましく、1.8〜3.5がより好ましく、2.0〜2.8が更に好ましい。このように極限られたモル比で(d)成分/(c)成分を液体洗浄剤組成物中に混合することで、本発明の優れたpHジャンプ効果による洗浄効果及び過酸化水素の安定性の両方を満足させることができる。
【0040】
なお、本発明では、(c)成分及び(d)成分を液体洗浄剤組成物に配合する場合には、液体洗浄剤組成物中では、上記モノ体及びジ体の化合物に変換されている。本明細書において(c)成分の含有量とは、単独、モノ体及びジ体として存在する(c)成分の全含有量を意味する。(d)成分の含有量とは、単独、モノ体及びジ体として存在する(d)成分の全含有量を意味する。
【0041】
本発明に係わる液体洗浄剤組成物は、洗浄性能を高める目的から分散剤を含有することが好ましく、組成物中の分散剤の含有量は組成物中0.05〜14質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましい。分散剤としては、特に、粘度平均分子量5千〜4万、好ましくは5千〜1万のポリアクリル酸もしくはその塩又はポリメタクリル酸もしくはその塩、粘度平均分子量1万〜10万、好ましくは3万〜7万のアクリル酸とマレイン酸とのコポリマーもしくはその塩から選ばれるカルボン酸系ポリマー、及び/又は粘度平均分子量4千〜2万、好ましくは5千〜1万のポリエチレングリコールから選ばれる非イオン性ポリマーが好ましい。
【0042】
本発明に係わる液体洗浄剤組成物は、洗浄性能を増すために蛍光増白剤として、チノパールCBS(チバ・ガイギー社製)、チノパールSWN(チバ・ガイギー社製)や、カラー・インデックス蛍光増白剤28、40、61、71等のような蛍光増白剤や、酵素(セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ)を含有することができる。また染料や顔料のような着色剤、香料、シリコーン類、殺菌剤、紫外線吸収剤等の種々の微量添加物を適量配合してもよい。
【0043】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、洗浄性能、液体物性の観点から、好ましくは30〜400mPa・s、より好ましくは40〜300mPa・s、更に好ましくは50〜200mPa・s、特に好ましくは60〜100mPa・sである。
【0044】
本発明に係わる液体洗浄剤組成物は、色柄物の衣類等の繊維製品に使用でき、且つ汚れに直接塗布でき、そのまま洗濯できる。
【0045】
<繊維製品の洗濯方法>
本発明の液体洗浄剤組成物を用いて衣類等の繊維製品を洗濯する場合、本発明の液体洗浄剤組成物を予め水で希釈した後に被洗浄物に接触させても良いが、被洗浄物に直接塗布した後、水で希釈して洗濯した方が洗浄性能が優れる。すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物を繊維製品に塗布し、次いで水系洗浄する工程を有する繊維製品の洗濯方法が好適である。塗布部位としては、襟、袖口、染み汚れ等、汚れの集中した部位が好ましい。
【0046】
本発明の液体洗浄剤組成物の使用濃度は、予め水で希釈して用いる場合であっても、塗布して用いる場合であっても、水系洗浄する場合の洗濯浴中での濃度は、洗浄性能の観点から1000倍希釈(30g/30L)〜3000倍希釈(10g/30L)が好ましく、1200倍希釈〜2800倍希釈がより好ましく、1500倍希釈〜2500倍希釈が更に好ましく、1800倍希釈〜2200倍希釈が特に好ましい。
【0047】
本発明に係わる液体洗浄剤組成物を用いて衣類等の繊維製品を洗濯する場合、本発明の液体洗浄剤組成物以外の洗浄剤の追加添加は特に必要としない。しかし、本発明の効果を阻害しない範囲で本発明の液体洗浄剤組成物以外の洗浄剤や洗浄剤成分を使用することができる。
【実施例】
【0048】
<液体洗浄剤組成物>
表1に示す組成で液体洗浄剤組成物を得た。なお、(e)成分は、以下の方法で合成されたものを用いた。
【0049】
<(e)成分(e−1)の合成例>
2Lの耐圧反応槽を窒素置換し、CH3−EO2−Hを416g、25%ソディウムメチラート/メタノール溶液を200g仕込み、135℃に昇温後、攪拌しながら0.1〜0.5MPaの圧力範囲となるようにエチレンオキサイド1408gを滴下し反応させる。滴下終了後、130〜140℃で1時間熟成した後、常圧、60℃以下まで冷却し、pHが6となるよう酢酸にて中和し、e−1の化合物を約1750g得た。また、同様に所定付加量のエチレンオキサイドで反応させ、e−2、e−3の化合物を得た。各化合物の構造は以下の通りである。
【0050】
e−1:一般式(I)中のR1がメチル基、R2がエチレン基を示し、nが平均で10の化合物
e−2:一般式(I)中のR1がメチル基、R2がエチレン基を示し、nが平均で3の化合物
e−3:一般式(I)中のR1がメチル基、R2がエチレン基を示し、nが平均で20の化合物
【0051】
<洗浄試験>
・ぶどう汚染布の調製
ぶどう(巨峰)を、フードミキサーを用いてすりつぶし、それを布で濾過して固形分を除去し、ぶどう抽出液を得た。10cm×10cmに裁断した木綿の白布(金巾2003布)を浸漬してぶどう汚れを付着させた後、日陰にて自然乾燥させ、ぶどう汚れ汚染布を調製した。
・ミートソース汚染布の調製
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース(2007年5月27日賞味期限、ロット番号:D5527JF)/内容量259gの缶詰)の固形分をメッシュ(目の開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に10cm×10cmの木綿金布#2003を浸し、15分間煮沸した。そのまま火からおろし2時間程度放置し30℃まで放置した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させ、ミートソース汚染布を調製した。
【0052】
上記汚染布のそれぞれ2枚1組とし、これに表1の液体洗浄剤組成物を均一塗布(0.5g/枚)したのち10分間放置した。更に、硬度5°(Ca/Mg=7/3)の水1Lに35℃で2時間浸漬を行った後、20℃水道水にて5分間流水すすぎを行った。この操作を、ぶどう汚染布、ミートソース汚染布のそれぞれについて別々に行った。
【0053】
<洗浄力評価>
洗浄力は、汚染前の原布及び洗浄前後の汚染布の470nmにおける反射率を自記色彩計(島津製作所製)を用いて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)={(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(原布の反射率−洗浄前の反射率)}×100
【0054】
<安定性評価>
表1に示す液体洗浄剤組成物を37.8℃の恒温室に360日保管後液の外観を目視で観察し、以下の基準で判定を行った。なお、各組成物は、保管開始時においては、均一透明な外観を呈していた。
判定基準
○:変化が無く良好な状態であった
×:変化があった
【0055】
【表1】

【0056】
表中の成分は以下のものである。
・b−1:炭素数14(天然由来)の直鎖一級アルコールに、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)を平均で10モル付加した非イオン界面活性剤
・b−2:アルキル基組成(天然由来)が炭素数12、14である直鎖一級アルコールに、EOを平均で12モル付加した非イオン界面活性剤
・b−3:ヤシ油由来の直鎖一級アルコールに、EO平均で10モル付加した非イオン界面活性剤
・b−4:アルキル(炭素数12,14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム
・b−5:ポリオキシエチレン(EO平均付加モル数3)アルキル(炭素数12)エーテル硫酸エステルナトリウム
・b−6::C12(2級アルコール)、EOp=3mol 日本触媒(株)製、ソフタノール33
・b−7:アルキル基組成(天然由来)が炭素数12、14である直鎖一級アルコールに、EOを平均で20モル付加した非イオン界面活性剤
・ホスホン酸系金属捕捉剤:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
・フェノールカルボン酸:4−ヒドロキシ安息香酸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分0.1〜10質量%、(b)成分20〜80質量%、(c)成分をホウ素原子として0.05〜2質量%、(d)成分3〜35質量%、(e)成分0.001〜10質量%、(f)成分0.001〜5質量%、及び(g)成分10〜60質量%を含有し、
(b)成分中、天然油脂系界面活性剤の割合が60質量%以上であり、
(e)成分/(f)成分の質量比が1/60〜30/1であり、
(a)成分/〔(e)成分と(f)成分の合計〕の質量比が1/10〜80/1であり、且つ
20℃におけるpHが2.5〜7.0である、
液体洗浄剤組成物。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:界面活性剤
(c)成分:ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物
(d)成分:隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物
(e)成分:下記一般式(I)で表される溶剤
1−O−(R2O)n−H (I)
〔式中、R1は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2は直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜3のアルキレン基を示し、n個のR2は同一でも異なっていてもよく、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す3〜50の数である。〕
(f)成分:粘度平均分子量3万〜50万のポリエチレングリコール
(g)成分:水
【請求項2】
更に、(h)成分として漂白活性化剤を0.1〜10質量%含有する請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、(i)成分としてホスホン酸系金属捕捉剤を0.01〜2質量%含有する請求項1又は2何れか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、(j)成分としてフェノール系ラジカルトラップ剤を0.05〜5質量%含有する請求項1〜3何れか記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物を繊維製品に塗布し、次いで水系洗浄する工程を有する、繊維製品の洗濯方法。

【公開番号】特開2009−263466(P2009−263466A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113393(P2008−113393)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】