説明

液体洗浄剤組成物

【課題】高濃度の界面活性剤を含有し、洗浄力、繊維の柔軟性及び保存安定性に優れ、水で希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18の炭化水素基)に、エチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドとを特定条件で付加させて得られる非イオン界面活性剤、(b)陰イオン界面活性剤、(c)陽イオン界面活性剤、(d)水混和性有機溶剤を、それぞれ特定比率で含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物に関し、特に衣料等の繊維製品用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
しかしながら、通常の液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させる(例えば、40質量%以上)と増粘やゲル化が起こり、著しく使用性を損ねてしまうという課題があった。これは、界面活性剤濃度の上昇により、組成物中に液晶や結晶といった粘度が著しく高い相を形成してしまうためである。またこのような界面活性剤高濃度系において、高粘度を抑制するために溶剤を多量に配合し低粘度組成物を得る方法があるが、組成物に引火点が生じることによる危険性の増加や、容器や洗濯機などの素材を損傷するという課題が生じる。また、溶剤は洗浄成分として寄与しないため、配合のコスト面からも多量に配合することは望ましくない。また界面活性剤濃度が高まってくると、低温保管時に組成物が固化し易くなるなど、溶解性や安定性に課題があった。一方、洗浄剤に陽イオン界面活性剤を配合することで柔軟性を付与した液体洗浄剤が知られている。しかしながら前記、溶解性と安定性の課題は組成物中に陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤とを併用する場合により厳しいものだった。
【0004】
特許文献1〜3には、特定の非イオン界面活性剤を配合した濃縮タイプの液体洗剤組成物が記載されている。
【0005】
特許文献4及び5には、4級アンモニウム塩を含む柔軟液体洗浄剤の記載がある。
【0006】
特許文献6には、高級アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加した非イオン界面活性剤と特定の溶剤を配合した濃縮タイプの液体洗浄剤組成物が記載されている。本文及び実施例において好ましい非イオン界面活性剤として、エチレンオキシドを付加した後、プロピレンオキシドを付加した、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックタイプの非イオン界面活性剤が記載されている。
【0007】
特許文献7及び8には、高級アルコールにプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドが付加したノニオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含有する濯ぎ性、柔軟性に優れる液体洗浄剤が記載されている。
【0008】
特許文献9には、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、ポリエチレンオキシ基−ポリプロピレンオキシ基−ポリエチレンオキシ基の順番に付加した非イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩及び特定の陽イオン界面活性剤を含有する洗浄力及び柔軟性に優れる液体洗剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−7705号公報
【特許文献2】特開2008−7706号公報
【特許文献3】特開2008−7707号公報
【特許文献4】特開平11−217585号公報
【特許文献5】特開平1−132691号公報
【特許文献6】特開平8−157867号公報
【特許文献7】特開平9−255989号公報
【特許文献8】特開平11−241094号公報
【特許文献9】特開平11−315299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3では、低温における安定性や冷水に対する溶解性に課題があった。特許文献4及び5も、低温安定性や溶解性の課題は解決しておらず、且つ洗浄力が著しく低下するという課題がある。特許文献6及び7が開示するタイプのノニオンは、通常のタイプの非イオン界面活性剤より液晶、結晶抑制効果が高いもののその効果は不十分であり、低温における安定性や冷水に対する溶解性を完全に解決するものではなかった。また、特許文献8及び9の液体洗浄剤組成物は、高濃度界面活性剤系で、冷水に対して十分な溶解性を示すものではなかった。また4級アンモニウム塩は、繊維に対して効率的に付着していないことから、柔軟性の更なる改良が望まれている。
【0011】
本発明は、高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物において、洗浄力、衣料等の繊維製品の柔軟性及び保存安定性に優れ、水で組成物を希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない液体洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分と(c)成分の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10であり、(a)成分と(b)成分の合計と(c)成分との質量比が〔(a)+(b)〕/(c)=95/5〜70/30である、液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18の炭化水素基)に、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、p1が3〜30の数であり、q1が1〜5の数であり、p1+p2=14〜50である非イオン界面活性剤 15〜75質量%
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:陽イオン界面活性剤
(d)水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【0013】
また、本発明は、上記本発明の液体洗浄剤組成物を用いて繊維製品、特には衣料を洗濯する方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、洗浄成分である界面活性剤を高濃度配合し、更に陰イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤を配合しているにもかかわらず、安定性、特に低温での保存安定性に優れ、溶解性、特に冷水に対する溶解性に優れ、更には衣料等の繊維製品の柔軟性と洗浄性能にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18の炭化水素基)1モルに対し、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であり、Rは、安定性及び洗浄性の点から炭素数8〜18であり、好ましくは8〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。洗浄性の点からRに結合する酸素原子は、Rの第1炭素原子又は第2炭素原子に結合していることが好ましい。すなわちR−OHは1級アルコール又は2級アルコールであることが好ましい。更にはRはアルキル基が好ましく、直鎖であることが好ましい。そのようなRを有する化合物を得るための原料として1級アルコールとして天然油脂由来のアルコールを、2級アルコールとしては合成アルコールを用いることが好ましい。天然油脂由来のアルコールを用いる場合、通常、Rは炭素数8〜18の偶数の炭素数で構成されており、天然系脂肪酸のアルキル分布で構成されていてもよいが、本発明は特には炭素数10のアルキル基、炭素数12のアルキル基及び炭素数14のアルキル基から選ばれる1種以上の直鎖アルキル基を含むことが好ましい。以下、p1、p2、q1はR−OHで表される化合物1モルあたりの付加モル数であることから、以下、これらを平均付加モル数として説明する場合もある。
【0016】
本発明の(a)成分は、下記一般式(a1)で表される非イオン界面活性剤として示すことができる。
RO(EO)p1(AO)q1(EO)p2H (a1)
〔式中、Rは炭素数8〜18の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を表し、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基を表し、p1、p2はそれぞれEOの平均付加モル数であり、p1は3〜30の数、q1はAOの平均付加モル数であり、1〜5の数である。また、p1+p2=14〜50である。〕
【0017】
(a)成分は、オキシエチレン基(以下、EO基という場合がある)の平均付加モル数の合計p1が3〜30であり、好ましくは7〜30、より好ましくは8〜20である。また、EO基の平均付加モル数p2は、このような範囲のp1に対して、p1+p2が14〜50となる数であるが、好ましくは3〜30、より好ましくは7〜30、更に好ましくは8〜20である。なお、p1が14以上の場合、p2モル付加させるのであるから、p2は当然p2は0ではない。
【0018】
(a)成分は、EO基の平均付加モル数の合計p1+p2が14〜50であり、好ましくは16〜30、より好ましくは17〜25、最も好ましくは18〜25である。p1+p2が上限値以上であると、低温での液晶形成が抑制され、溶解性が良好となる。これは、界面活性剤の親水基部分のサイズが疎水基部分のサイズと比較し相対的に十分大きくなり、界面活性剤の整列が抑制されるためと考えられる。また、p1+p2が下限値以下であると、洗浄性能及び低温での安定性が良好となる。また(a)成分のp1+p2が上記範囲において、(b)及び(c)成分の組合せにより、洗浄力及び柔軟性が向上する。このことは一般的には(a)成分のような親水性の高い界面活性剤は、通常単独では十分な洗浄力を示さないにも関わらず、(b)成分及び(c)成分と併用することにより、優れた洗浄力と(c)成分の繊維製品への付着性を向上させることを示している。
【0019】
また、式(a1)のAOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基(以下、AO基という場合がある)であり、平均付加モル数q1が1〜5であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3である。
【0020】
液晶、結晶形成を抑制し、溶解性、低温での安定性を得るために、AO基の平均付加モル数q1が上記の下限値以上であり、上限値以下にすることで優れた洗浄性能が得られる。AO基は、炭素数3〜5のアルキレンオキシドを付加させることによって得られる。AO基は、分岐したアルキル基を有する点で共通しているだけでなく、EO基がブロック化することで親水性部位を形成することが知られている一方で、AO基は親油性を示すことが知られている。AO基のうち、炭素数3のオキシアルキレン基、すなわちオキシプロピレン基(以下、PO基という場合がある。)が汎用性の点のみならず、後に続くエチレンオキシドの付加反応の反応しやすさから好ましい。すなわち、AO基は、オキシプロピレン基であることが好ましく、PO基及びEO基の合計モル数に対してPO基は7〜20モル%であることが好ましい。よって、R−OHで表される化合物に、まずエチレンオキシドを付加させ、その後に付加させる炭素数3〜5のアルキレンオキシドはプロピレンオキシドであることが好ましく、プロピレンオキシドの割合は、プロピレンオキシド及びその前後に付加するエチレンオキシドの全合計量に対して、7〜20モル%であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の(a)成分は、エチレンオキシドの平均付加モル数p1、p2の比は、p1/(p1+p2)=0.2〜0.8であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.7である。p1/(p1+p2)が0.2以上であると、液晶、結晶形成抑制能がより向上するため、溶解性、低温での安定性により優れるようになる。また、p1/(p1+p2)が0.8以下であると、結晶形成抑制能がより向上するため、低温での安定性により優れるようになる。
【0022】
(a)成分は、一般式(a1)に示されるように、R−O−にエチレンオキシドが付加した構造を有する。その際、平均付加モル数p1が3以上であることから、RO−に結合する基がEO基である化合物の割合が多くなる。一方、一般式(a1)に示されるように、末端に−EO−Hの構造を有する。その際、平均付加モル数p2はp1+p2が14〜50となることから、末端が−EO−Hである化合物の割合が多くなる。本発明では、R−O−にEO基が結合している化合物〔以下、(a−i)成分という場合がある〕の割合が、一般式(a1)を構成している非イオン界面活性剤を基準として75モル%以上、更に80モル%以上であることが好ましく、また、Rからみた末端の構造が−EO−Hである化合物〔以下、(a−ii)成分という場合がある〕の割合が、一般式(a1)を構成している非イオン界面活性剤を基準として70モル%以上、更に80モル%以上であることが好ましい。(a−i)成分のこの割合が75モル%以上であると、液晶、結晶形成抑制能が向上するため、溶解性、低温での安定性に優れるようになる。また、(a−ii)成分のこの割合が70モル%以上であると、結晶形成抑制能が向上するため、低温での安定性に優れるようになる。本発明において、前記(a−i)成分及び(a−ii)成分の割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0023】
本発明の特徴は、高濃度の界面活性剤を含む液体洗浄剤組成物、すなわち界面活性剤濃度が40質量%以上、特には50質量%以上である液体洗浄剤組成物において、(a)成分を後述する(b)成分の陰イオン界面活性剤と特定比率で併用し、更に(c)成分の陽イオン界面活性剤を(a)成分及び(b)成分と特定比率で併用し、(d)成分の水混和性有機溶剤を配合することにより、優れた柔軟性と洗浄力のみならず、低温保存下でも組成物は安定であり、更に水での溶解時のゲル化による溶解性阻害を抑制することに成功したことである。これは(a)成分に拠るところが大きく、(a)成分により、水−界面活性剤−溶剤の3成分相図での液晶相の領域を低減させることが可能になることを見出した点にある。本発明に用いられる(a)成分は、EO基、AO基の平均付加モル数が特定されており、これは、一般的に家庭の衣料用洗浄剤用いられるエチレンオキシド付加型の非イオン界面活性剤と比較してエチレンオキシドの全付加モル数の多さ及びエチレンオキシドのモル数の対称性の点で特徴的であることがわかる。一般に非イオン界面活性剤を主基剤とする液体洗浄剤を調製する場合、よく知られている非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、洗浄力の点からエチレンオキシドの平均付加モル数が14以下のものがよく使用される。通常、衣料用洗浄剤の場合、洗浄性に好ましい平均エチレンオキシド付加モル数(以下、平均EO付加モル数という場合もある)は3〜12程度である。しかしながら、従来の非イオン界面活性剤では、高濃度界面活性剤系で用いた場合、水による希釈の際のゲル化抑制の点から、界面活性剤濃度は制限されることが多い。本発明では14以上の平均EO付加モル数を有し、更に疎水性のオキシアルキレン基、すなわち炭素数3〜5のオキシアルキレン基、好ましくはオキシプロピレン基がEO基(ポリオキシエチレン基も含む)の間に存在する化合物の比率を特定し、更に後述の(b)成分を(a)成分と質量比で(a)/(b)=25/75〜90/10、(c)成分を(a)成分と(b)成分の合計との質量比で〔(a)+(b)〕/(c)=95/5〜70/30の割合で添加することで、低温安定性、柔軟性及び冷水での溶解時におけるゲル化の問題を解決することに成功した。更に、R−OHにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシドをこの順序で且つ特定の平均付加モル数で付加させることは、前記したように、(a)成分中の(a−i)成分の割合や(a−ii)成分の割合を増加させると考えられるが、これもまた、結晶相や液晶相の領域を制限する等により本発明の効果を向上させることに寄与しているものと推察される。
【0024】
(a)成分の製造に関して、R−OHのアルコキシル化に用いられる触媒は塩基触媒、酸触媒が挙げられる。このうち特に、コストの面から塩基触媒を使用することが好ましく、塩基として水酸化カリウムを使用することがより好ましい。
【0025】
水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数8〜18の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件で炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でエチレンオキシドを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各エチレンオキシド及び炭素数3〜5のアルキレンオキシドAOの使用量は、組成物中のp1、p2、q1の平均値の条件を満たすように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。
【0026】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(a)成分の配合量は、洗浄性能の観点から15〜75質量%であり、25〜60質量%が好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
【0027】
<(b)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物には、(b)陰イオン界面活性剤が配合される。(b)成分の含有量は、(a)成分との関係から後述する比率を満たす必要がある。(b)成分は、洗浄成分としての効果とともに、特定の比率で(a)成分と用いることにより、安定性、溶解性を向上させる。この理由として、(a)成分の分子間に(b)成分の分子が混合されることで、(b)成分の陰イオン基の電気的反発から界面活性剤分子の整列が抑制され、結果として液晶、結晶形成が抑制されることが考えられる。
【0028】
(b)成分は、洗浄力向上の観点から、(b−1)カルボキシレート型陰イオン界面活性剤〔以下、(b−1)成分という〕、及び(b−2)スルホン酸型又は硫酸エステル型陰イオン界面活性剤〔以下、(b−2)成分という〕から選ばれる陰イオン界面活性剤であることが好ましい。
【0029】
(b−1)成分と(b−2)成分は、低温での安定性の観点から、質量比で(b−1)/(b−2)=5/95〜40/60であることが好ましく、より好ましくは(b−1)/(b−2)=10/90〜30/70である。
【0030】
(b−1)成分としては、例えば下記の(b−1−1)、(b−1−1)が挙げられる。また、(b−2)成分としては、例えば下記の(b−2−1)、(b−2−2)、(b−2−3)が挙げられる。洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(b−1−1)、(b−2−1)、(b−2−2)が好ましく、更に(b−2−1)を含有することがより好ましい。また(b−1−1)を泡調整剤、泥分散剤等の理由で含有する場合は、低温安定性の点から(b)成分中、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0031】
(b−1−1)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩。
(b−1−2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシエチレン基の1つ又は2つがオキシプロピレン基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0032】
(b−2−1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(b−2−2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシエチレン基の1つ又は2つがオキシプロピレン基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(b−2−3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
【0033】
(b−1−1)の平均炭素数は8〜20であり、10〜16であることが好ましい。
【0034】
また、(b−2−1)、(b−2−2)のアルキル基の平均炭素数は10〜20であり、10〜16であることが好ましい。
【0035】
(b)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体洗浄剤中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(b)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(f)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、(a)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性があるが、少ないことが好ましく、実質的には5質量%以下、更には3質量%以下、特には1質量%以下であることが好ましい。アルカノールアミンはモノエタノールアミンが好ましい。
【0036】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物には、(c)成分として、繊維に柔軟性効果を付与するために陽イオン性界面活性剤が配合される。
【0037】
(c)成分の陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム型界面活性剤及び/又は3級アミン型界面活性剤が好ましく、更にはエーテル結合、(ポリ)オキシアルキレン基、エステル基、又はアミド基で分断されていてもよい炭素数が6〜22炭化水素基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤及び/又は3級アミン型界面活性剤が好ましい。具体的には、下記一般式(c−1)で表される第4級アンモニウム塩〔以下、(c−1)成分という〕が好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
(式中、R1は炭素数6〜22の炭化水素基、好ましくは直鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R1中に−(AO)s−を含んでも良い。AOは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、sはAOの平均付加モル数を表し0.1〜10であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立にメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xはハロゲン原子、CH3SO4又はCH3CH2SO4である。)
【0040】
(c)成分である陽イオン界面活性剤を(b)成分である陰イオン界面活性剤と併用すると、(b)成分による洗浄効果の向上や(c)成分の繊維に対する柔軟性効果を阻害してしまう可能性があることに加え、(a)成分と(b)成分との併用による液晶、結晶形成を抑制する効果に影響することが懸念された。しかしながら、本発明では(c)成分を特定の比率で用いることにより、洗浄媒体で希釈されたときに、各々の特異的な効果を発揮することができる。例えば、他界面活性剤を主とする洗浄力や、(c)成分による効率的な柔軟性の発現である。従来(c)成分は、非イオン界面活性剤や陰イオン界面活性剤と併用される場合、(c)成分単独の場合よりも柔軟効果が低下する。これは陰イオン界面活性剤とのコンプレックス形成の問題のみならず、(c)成分が他の界面活性剤のミセル内に取り込まれている状態で水に分散してしまい、繊維への吸着性が低下するためである。本発明はこれら課題を改善する。
【0041】
(c−1)成分の陽イオン界面活性剤としては、例えば下記(c−1−1)〜(c−1−4)が使用できるが、(c−1−1)、(c−1−3)から選ばれる化合物を含有することがより好ましい。(c−1−1)を含有する場合(c−1)成分中の50質量%以上、特には60質量%を占めることがさらにより好ましい。一般式(c−1)の第4級アンモニウム塩は、R1の平均炭素数は8〜20が好ましく、10〜18がより好ましく、10〜16がさらにより好ましい。
【0042】
(c−1−1)R1の炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R2〜R4がそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
(c−1−2)R1の炭素数が6〜22の分岐鎖アルキル基であり、R2〜R4がそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
(c−1−3)R1の炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R2がベンジル基であり、R3及びR4が炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
(c−1−4)R1の炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R1中に−(AO)s−を含み、sが1〜5であり、R2〜R4がそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基であるアンモニウム塩。
【0043】
本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄力の観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、45〜80質量%が好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。また(c)成分の陽イオン界面活性剤も同様に塩の分子量によって、その質量が異なるため、対陰イオンを除いた質量を(c)成分の質量とする。
【0044】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から(a)/(b)は質量比として25/75〜90/10であり、50/50〜90/10が好ましく、60/40〜90/10が更に好ましい。洗浄力の点から(a)成分の割合が下限値以上であり溶解性及び安定性の観点から上限値以下である。(a)成分は(b)成分を併用することで、組成物の液晶形成を抑制することで溶解性を高めることが可能となる。また、柔軟性能と洗浄率を両立する観点から、(a)成分と(b)成分の合計と(c)成分との質量比が〔(a)+(b)〕/(c)=95/5〜70/30であり、好ましくは94/6〜75/25、より好ましくは93/7〜80/20であり、特には92/8〜75/25が好ましく、90/10〜80/20が更に好ましい。また、繊維の柔軟性の観点から、(b)成分と(c)成分の質量比は、(b)/(c)=20/80〜80/20が好ましく、下限値は40/60以上がより好ましく、上限値は70/30以下がより好ましい。(c−1)成分を用いる場合、前記のより好ましい範囲の許容範囲がR1の鎖長によって変動し、R1の炭素数が8〜12である場合、許容できる上限値が広がり、より好ましい(b)/(c)質量比の上限値が80/20となり、また、R1の炭素数が14〜18の場合、許容できる下限値が広がり、より好ましい(b)/(c)質量比の下限値が20/80となる。
【0045】
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(d)水混和性有機溶剤を5〜40質量%含有する。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0046】
(d)成分の含有量は、組成物中、5〜40質量%であり、10〜35質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。また、安定性、溶解性の観点から、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の合計と(d)成分との質量比〔(a)+(b)+(c)〕/(d)は90/10〜65/35が好ましく、90/10〜70/30がより好ましく、85/15〜70/30が更に好ましい。
【0047】
(d)成分としては、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0048】
水混和性有機溶剤としては、(d−1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(d−2)プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、(d−3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのポリグリコール類、(d−4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキルエーテル類、(d−5)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類が挙げられる。なお芳香族エーテル類において、モノ、ジ又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、フェノールにエチレンオキシドを1〜3モル付加させたオキシエチレン基の付加モル数の異なる混合物として配合してもよく、その場合は未反応のフェノールは除去する。
【0049】
(d)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(d−1)アルカノール類、(d−2)グリコール類、(d−4)アルキルエーテル類、(d−5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくは(d−2)グリコール類、(d−4)アルキルエーテル類、(d−5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上を含有することで、より効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できる。具体的な好ましい成分としては、エタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−フェノキシエタノール(エチレングリコールモノフェニルエーテルとも言う)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上である。
【0050】
<(e)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(e)成分として、水を5〜40質量%、更に10〜30質量%含有することが好ましい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0051】
<その他の成分>
〔(f)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分以外の界面活性剤〔以下、(f)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。(f)成分としては、下記の(f−1)〜(f−3)が挙げられる。
(f−1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(f−1−1)及び(f−1−2)が挙げられる。
(f−1−1)次の一般式で表されるアルキル多糖界面活性剤。
1f−(OR2fxy
〔式中、R1fは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R2fは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(f−1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(f−3)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0052】
(f)成分の含有量は、本発明の液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。なお、(f)成分のうち非イオン界面活性剤(f−1)は、前記(a)成分と合わせて、〔(a)+(f−1)〕/(b)として、前記(a)/(b)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。
【0053】
〔(g)アルカリ剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(g)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的なアルカノールの炭素数が2〜4の1〜3つのアルカノール基を有するアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノールはヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、メチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましく、モノエタノールアミンが最も好ましい。
【0054】
(g)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(b)成分の対塩として配合してもよい。
【0055】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(g)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なかでも、(g)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。
【0056】
以下、更に本発明に使用できるその他の成分を示す
〔(h)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(h)成分という〕を含有することができる。(h)成分のキレート剤は、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属又は低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤によって中和した塩であってもよい。
【0057】
(h)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0058】
更に本発明の液体洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製
)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、特には重量平均分子量が600〜5000、さらには1000〜4000のポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコール。なお重量平均分子量は光散乱法を用いて決定することができ、ダイナミック光散乱光度計(DLS−8000シリーズ、大塚電子株式会社製等)により測定することができる。
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0059】
以下に本発明の液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(xi)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xii)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0060】
なお、上記任意成分のうち(ix)、(x)、(xi)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合及び配合濃度には注意を要する。
【0061】
本発明の組成物のpH(JIS Z 8802の7.2)は洗浄性能、安定性の点から5〜11、特には6〜10(25℃)が好ましい。
【0062】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、80〜300mPa・sが更に好ましく、100〜300mPa・sが最も好ましい。(d)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0063】
また本発明の液体洗浄剤組成物は、水による希釈時に、ゲル化や高粘度化が起こらない組成物である。従って、具体的には液体洗浄剤組成物は、組成物の温度が5〜40℃において、5℃の水で0倍を超え100倍の範囲で希釈する工程において、ゲル化しないことが好ましく、特にはこの希釈工程にて得られる希釈液の粘度が5℃において1500mPa・s以下である液体洗浄剤組成物が好ましい。
【0064】
実質的には、20倍以下の希釈率で測定すればよく、液体洗浄剤組成物をイオン交換水で0を超え20倍の範囲で希釈値を違えた複数のサンプルの液状性から判断することができる。具体的には、5℃の液体洗浄剤組成物と5℃のイオン交換水とを、下記式で示される濃度範囲となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプル全ての粘度が5℃において1500mPa・s以下であることが好ましい。
〔(衣料用液体洗浄剤組成物の質量)/(衣料用液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%
【0065】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物又は希釈液の粘度とする。
【0066】
本発明の液体洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。特に衣料用の液体洗浄剤組成物として好ましい。
【0067】
本発明では、当該液体洗浄剤組成物を用いて繊維製品を洗濯する方法も、また開示することができる。洗濯方法としては、手洗いによる方法、市販の洗濯機を用いる方法があり、いずれの方法においても、濯ぎ工程の回数を低減する効果、或いは少ない濯ぎ水でも優れた濯ぎ性を得ることができる。本発明の洗濯方法に用いる洗濯機としては、攪拌羽根に注水口と排水口とを有するだけの簡易洗濯機、脱水槽が分離したいわゆる二槽式洗濯機、全自動式洗濯機(ドラム式洗濯機を含む)を挙げることができる。
【0068】
本発明の液体洗浄剤組成物から調製した水性洗浄液(以下、洗濯液という場合もある。)を用いた洗濯方法では、浴比は好ましくは3〜40である。ここで浴比とは、水性洗浄液の質量を衣類の質量で割った値を意味する。本発明ではドラム式洗濯機のように、低浴比の洗濯機に対しても優れた効果が得られる。具体的には浴比が3〜12、特には3〜8であってもよい。
【0069】
本発明の液体洗浄剤組成物は、低温の水でゲル化することなく希釈することができ、低温から高温にいたる間で洗浄性及び柔軟性能に優れるものである。この理由として特徴的な非イオン界面活性剤を含む界面活性剤系に拠るところが大きい。従って前記水性洗浄液の温度は3℃〜90℃、更には5℃〜80℃、特には5℃〜60℃であってもよく、本発明では特にエネルギー低減の観点から、通常の水道水を用いることができ、洗濯液は、例えば冬場の5℃〜15℃の低温でも優れた洗浄性と柔軟性を得ることができる。当然夏場の25℃〜35℃での洗浄においても好適な結果が得られる。また本発明によると、温水を用いずに洗浄剤を溶解させることができるため、冷水で液体洗浄剤組成物を溶かして洗濯液である水性洗浄液を調製してから、洗濯機内のヒーターにより洗濯液の温度を高める洗浄方法も可能である。
【実施例】
【0070】
表1〜4に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の組成物を得た。得られた各組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0071】
(1)洗浄力評価
JIS K3362:1998 記載の襟あか布を調製する。JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じ、表1〜4の液体洗浄剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。表1〜4の液体洗浄剤組成物の使用濃度を0.33g/Lとした。洗浄力の判定は、指標洗剤より勝る場合を「◎」、指標洗剤と同等の場合を「○」、指標洗剤より劣る場合を「×」とした。
【0072】
(2)保存安定性評価
50mLのサンプルビン(No.6広口規格ビン、ガラス製、直径40mm、高さ80mmの円筒形)に、液体洗浄剤組成物を40mL充填し、蓋をした後、5℃の恒温室で20日間静置した。組成物の安定性は、目視で外観を観察し、下記の基準で判定した。
○;液晶、結晶を形成していない均一液体相であり、液安定性に優れる。
×;液晶形成、又は結晶形成、又は分離、又は析出が認められる。
【0073】
(3)溶解性のモデル評価
液体洗浄剤組成物とイオン交換水を、〔(液体洗浄剤組成物の質量)/(液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを準備し、5℃の恒温室で1日間静置した後、このサンプルの5℃における粘度を以下の条件で測定し、以下の基準で判定した。これは5℃の水に対する溶解性モデル試験である。
測定機器 東京計器(株)製 デジタルB型粘度計(型番; DV M−B)
測定条件 60r/min 60秒
○;すべてのサンプルの粘度が1500mPa・s未満である。これは、冷水による希釈時に液晶形成や結晶形成等により増粘しないことを意味し、溶解性に優れると判断できる。
×;サンプルの中に粘度が1500mPa・s以上のものがある。これは冷水による希釈時に液晶形成、又は結晶形成等により増粘する場合があることを意味し、溶解性が劣ると判断される。
××;上記×のサンプルの中に粘度が2000mPa・s以上のものがある、又は上記×のサンプルの粘度が測定できない。
【0074】
(4)繊維柔軟性の評価
一般的な洗浄成分である非イオン界面活性剤(エマルゲン108[ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル];花王(株))4.5gをイオン交換水50mLに予備溶解して洗剤溶液を作製し、さらに本洗剤溶液を1000倍希釈することで市販の木綿タオル(木綿100%)を洗濯した(ナショナル製全自動洗濯機NA−F60E、水量45L、浴比20、水温20℃、洗濯コースは標準コース)。この操作を計3回繰り返した後、20℃、45%RHの条件で乾燥させ、評価用タオルとした。
【0075】
前述の方法で調製した評価用タオルを用いて、表1〜4の液体洗浄剤組成物によって洗濯を行い(ナショナル製全自動洗濯機NA−F60E、標準コース、水量設定45L、浴比20、水温20℃、水の硬度4゜ DH、洗剤使用量0.5g;洗濯機の投入口を利用)、基準組成物(アタックバイオジェル;花王(株)、2009年1月製造品)で処理した木綿タオルの柔らかさを基準として、表1〜4記載の洗浄剤組成物で処理した木綿タオルの柔らかさを10人のパネラー(20代〜40代女性10人)により下記の基準で判定し平均点を求めた。平均点が0.7以上を◎、0.3以上〜0.7未満を○、−0.3以上〜0.3未満を△、−0.3未満を×として判定し表1〜4に示した。
基準と比較して柔らかい・・・・・1点
基準と同等の柔らかさ・・・・・0点
基準と比較してかたい・・・・・−1点
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
(注)表中の成分は以下のものである。なお、表中では、(f−1)〜(f−3)も(a)成分とみなして構造や量比を示した。なお、(g)のモノエタノールアミンは(b−2−2)成分由来のアルカノールアミンを含む量として記載している。また下記成分の説明において、エチレンオキシドをEO、プロピレンキシドをPOと略する。また(a−1)〜(a−5)の界面活性剤は直鎖1級飽和アルコール由来であってもよく、(a−6)の界面活性剤は直鎖2級飽和アルコール由来であってもよい。
【0081】
(a)成分
(a−1):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均9モル、POを平均2モル、EOを平均9モルの順にブロック付加させたもの
(a−2):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均7モル、POを平均2モル、EOを平均7モルの順にブロック付加させたもの
(a−3):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均25モル、POを平均2モル、EOを平均25モルの順にブロック付加させたもの
(a−4):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均4モル、POを平均2モル、EOを平均14モルの順にブロック付加させたもの
(a−5):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均14モル、POを平均2モル、EOを平均4モルの順にブロック付加させたもの
(a−6):炭素数12〜14の2級アルコールにEOを平均9モル、POを平均2モル、EOを平均9モルの順にブロック付加させたもの
【0082】
(b)成分
(b−1−1):ルナックMY−98(商品名;平均炭素数14.0)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
(b−2−1):炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(平均炭素数11.7)
(b−2−2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、PO平均付加モル数1、EO平均付加モル数3、モノエタノールアミン塩、平均炭素数12.3)
【0083】
(c−1−1−1);直鎖アルキル(炭素数12)トリメチルアンモニウムクロライド
(c−1−1−2);直鎖アルキル(炭素数16)トリメチルアンモニウムクロライド
(c−1−1−3);直鎖アルキル(炭素数12)トリメチルアンモニウムエチルサルフェート
(c−1−1−4);直鎖アルキル(炭素数12)トリメチルアンモニウムメチルサルフェート
(c−1−3−1);サニゾールC(商品名)(直鎖アルキル(炭素数12〜16の混合物)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド;花王株式会社製)
【0084】
(d)成分
(d−1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(d−2):プロピレングリコール
(d−3):エチレングリコールモノフェニルエーテル
(d−4):エタノール
【0085】
(f)成分
(f−1):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均30モル、POを平均2モル、EOを平均30モルの順にブロック付加させたもの
(f−2):エマルゲン105〔商品名、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王(株))〕
【0086】
(その他)
ポリマー(1):特開平10−60476号公報の4頁段落0020の合成例1の方法で合成した高分子化合物
蛍光染料:チノパールCBS−X(商品名)(チバスペシャリティケミカルズ製)
酵素:エバラーゼ16.0L−EX(商品名)(プロテアーゼ、ノボザイム社製)
色素(1):緑色202号
色素(2):黄色203号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分と(c)成分の含有量の合計が(a)+(b)+(c)=40〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10であり、(a)成分と(b)成分の合計と(c)成分との質量比が〔(a)+(b)〕/(c)=95/5〜70/30である、液体洗浄剤組成物。
(a)成分:R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18の炭化水素基)に、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、p1が3〜30の数であり、q1が1〜5の数であり、p1+p2=14〜50である非イオン界面活性剤 15〜75質量%
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:陽イオン界面活性剤
(d)水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【請求項2】
前記炭素数3〜5のアルキレンオキシドがプロピレンオキシドである、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、(b−1)カルボキシレート型陰イオン界面活性剤、及び(b−2)スルホン酸型又は硫酸エステル型陰イオン界面活性剤である請求項1又は2に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(c)成分が、下記一般式(c−1)で表される第4級アンモニウム塩である請求項1〜3の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【化1】


(式中、R1は炭素数6〜22の炭化水素基であり、R1中に−(AO)s−を含んでも良い。AOは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、sはAOの平均付加モル数を表し0.1〜10であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立にメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xはハロゲン原子、CH3SO4又はCH3CH2SO4である。)
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物を用いて繊維製品を洗濯する方法。

【公開番号】特開2010−265445(P2010−265445A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90415(P2010−90415)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】