説明

液体洗浄剤組成物

【課題】洗浄力の向上が図られた液体洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)と、アミンオキシド型界面活性剤(B)と、一般式(C−1)[式中、Rは水素原子又はメチル基であり;Rは水素原子、炭素数1〜11のアルキル基又はフェニル基であり;Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は−CH−CH(NH)COOHである。]で表される化合物(C)とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に台所用として好適な液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば台所用の液体洗浄剤組成物には、洗浄成分としてアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤、ノニオン界面活性剤等から選ばれる複数種の界面活性剤が用いられている。そして、これら界面活性剤同士の相互作用を利用することによって、油汚れ等に対する洗浄力や泡立ち等の向上が図られている。
従来、台所まわりや食器や調理器具等の洗浄に適したものとして、
(a)特定の分岐型アルキル基及び特定の親水基を有する化合物、
(b)抗菌性を有する化合物、
(c)特定のアニオン界面活性剤、
(d)特定のアミンオキシド型界面活性剤、両性界面活性剤、及びアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤、並びに水を含有する液体洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−187491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
台所用の液体洗浄剤組成物の使用方法は、たとえば水を含んだスポンジに、液体洗浄剤組成物を直接塗布し、泡立たせて食器等を洗浄する方法が一般的に挙げられる。その際、液体洗浄剤組成物は、スポンジに含まれる水によって希釈されている。
特許文献1の配合例に記載されているようなアニオン界面活性剤と、アミンオキシド型界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とが併用された液体洗浄剤組成物は、前記希釈の影響により、界面活性剤同士の相互作用が弱まるため、洗浄時に充分な洗浄力が発揮されていない問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、洗浄力の向上が図られた液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)と、アミンオキシド型界面活性剤(B)と、下記一般式(C−1)で表される化合物(C)とを含有することを特徴とする。
【0005】
【化1】

[式(C−1)中、Rは水素原子又はメチル基であり;Rは水素原子、炭素数1〜11のアルキル基又はフェニル基であり;Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は−CH−CH(NH)COOHである。]
【0006】
本発明の液体洗浄剤組成物においては、前記化合物(C)が、イミダゾール、ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール及び2−フェニルイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の液体洗浄剤組成物においては、アルカンスルホン酸塩(D)をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の液体洗浄剤組成物においては、25℃でのpHが5.5〜7.5であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体洗浄剤組成物によれば、従来よりも高い洗浄力が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)と、アミンオキシド型界面活性剤(B)と、前記一般式(C−1)で表される化合物(C)とを含有する。
【0009】
[ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)]
本発明において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)(以下「(A)成分」という。)は、通常、洗浄剤分野で使用されているものが挙げられ、なかでも下記一般式(A−1)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0010】
【化2】

[式(A−1)中、Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、nはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1〜6である。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミン又はアンモニウムである。]
【0011】
前記一般式(A−1)中、Rは、炭素数8〜18のアルキル基又は炭素数8〜18のアルケニル基であり、炭素数8〜18のアルキル基が好ましい。該アルキル基又は該アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
において、炭素数は8〜18であり、10〜16が好ましく、12〜13がより好ましい。Rの炭素数が8以上であると、疎水性が高まるため、特に油汚れに対する洗浄力が向上する。一方、Rの炭素数が18以下であれば、(A)成分自体の溶解性がより良好となるため、保存時における析出などが抑制される。
【0012】
式(A−1)におけるRは、(A)成分の原料である高級アルコールに由来する。そのため、該高級アルコールは、工業的に入手が容易な下記(a)〜(e)から選択されることが好ましい。なお、下記において「分岐率」とは、全高級アルコールに対する、分岐鎖をもつ高級アルコールの割合(質量%)を示す。
(a)シェルケミカルズ社製、商品名「ネオドール23」(分岐率:20質量%)。これは、n−オレフィンから改良オキソ法により生成し、精留されたものである。
(b)ブテンの3量体からオキソ法により得られる炭素数13のアルコール(分岐率:100質量%)。
(c)中鎖アルコールからガーベット反応により得られる高級アルコール(分岐率:100質量%)。
(d)Sasol社製、商品名「Safol23」(分岐率:50質量%)。これは、石炭のガス化によって得られるオレフィンからオキソ法によりアルコールを得て、さらに水素化されたものである。
(e)天然油脂から合成された天然系高級アルコール(分岐率:0質量%)。
【0013】
前記一般式(A−1)中、nは、エチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1〜6である。なかでも、油性汚れに対する洗浄力が向上することから、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0014】
前記一般式(2)中、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アルカノールアミン又はアンモニウムである。
Mとして具体的には、水素原子;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;アンモニウム等が挙げられ、これらが混在していてもよい。なかでも、Mは、アルカリ金属原子が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0015】
(A)成分は、たとえば以下のようにして製造できる。
前記(a)〜(e)から選択される高級アルコールに、エチレンオキシドを付加させてポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルコールエトキシレート)を得る。
得られたアルコールエトキシレートを、サルファンでスルホン化あるいは硫酸化することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルが製造でき、これを、さらに中和することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が製造できる。
【0016】
(A)成分においては、エチレンオキシドの「平均」付加モル数が1〜6である。
かかるエチレンオキシドの付加モル数分布は、たとえば、高級アルコールとエチレンオキシドとを付加反応する際の触媒によって変化する。
一般的な触媒である水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いた場合では、エチレンオキシドの付加モル数分布は広くなる。
一方、特許第3312883号公報に記載の方法、すなわち、Al/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒を用いると、エチレンオキシドの付加モル数分布の狭いポリオキシエチレンアルキルエーテルが得られる。
本発明においては、原料のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてエチレンオキシドの付加モル数分布の狭いものを用いた方が、液体洗浄剤組成物の安定性、洗浄力がさらに向上することから好ましい。
【0017】
エチレンオキシドの付加モル数分布の広さは、たとえば下記の数式(S)で示される「ナロー率」で表すことができる。
【0018】
【数1】

[式中、nmaxは全体のアルキレンオキシド付加体中に最も多く存在するアルキレンオキシド付加体のアルキレンオキシドの付加モル数を示す。iはアルキレンオキシドの付加モル数を示す。Yiは全体のアルキレンオキシド付加体中に存在するアルキレンオキシドの付加モル数がiであるアルキレンオキシド付加体の割合(質量%)を示す。]
【0019】
なかでも、(A)成分としては、油汚れに対する洗浄力又は泡の持続性が向上することから、当該ナロー率が55質量%以上のものが好ましく、65質量%以上のものがより好ましい。
【0020】
(A)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
液体洗浄剤組成物における(A)成分の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
(A)成分の含有量が下限値以上であると、洗浄力がより向上する。また、洗浄力に加えて、低温安定性又は起泡力も向上する。(A)成分の含有量が上限値以下であれば、充分な洗浄力が得られる。
【0021】
[アミンオキシド型界面活性剤(B)]
本発明において、アミンオキシド型界面活性剤(B)(以下「(B)成分」という。)は、たとえばアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジエチルアミンオキシド、アルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド等の半極性界面活性剤が挙げられる。
なかでも、下記一般式(B−1)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0022】
【化3】

[式(B−1)中、Rは炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基であり;R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり;Rは炭素数1〜4のアルキル基である。Qは−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−又は−O−であり;mは0又は1の数である。]
【0023】
前記式(B−1)中、Rは、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基であり、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
のアルキル基、アルケニル基において、炭素数は8〜18であり、洗浄力がより向上することから、8〜16であることが好ましく、10〜14であることがより好ましい。
、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましく、R及びRがいずれもメチル基であることがさらに好ましい。
は、炭素数1〜4のアルキル基である。
Qは−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−又は−O−であり、−CONH−が好ましい。
mは、0又は1の数であり、0が好ましい。
【0024】
(B)成分として具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシドなどのアルキルジメチルアミンオキシド;ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシドなどのアルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド等が好適なものとして挙げられる。
【0025】
(B)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
液体洗浄剤組成物における(B)成分の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜6質量%であることがさらに好ましい。
(B)成分の含有量が下限値以上であると、洗浄力がより向上する。これは、(A)成分との相互作用が強まることによる相乗効果であると考えられる。(B)成分の含有量が上限値以下であると、液体洗浄剤組成物の高粘度化が抑制され、流動性がより良好となる。
【0026】
[一般式(C−1)で表される化合物(C)]
本発明において、化合物(C)(以下「(C)成分」という。)は、下記一般式(C−1)で表されるイミダゾール又はその誘導体である。
なお、イミダゾール基は、実際には二重結合の位置と水素原子が移動した互変異性体が平衡状態にあると考えられる。本発明における(C)成分は、それら互変異性体を全て包含するものとする。
【0027】
【化4】

[式(C−1)中、Rは水素原子又はメチル基であり;Rは水素原子、炭素数1〜11のアルキル基又はフェニル基であり;Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は−CH−CH(NH)COOHである。]
【0028】
(C)成分としては、その分子量が300以下であることが好ましく、68〜250であることがより好ましい。分子量が上限値以下であると、液体洗浄剤組成物の洗浄力がより向上する。また、(C)成分自体の溶解性がより良好となり、液体洗浄剤組成物の低温安定性も向上する。
【0029】
(C)成分として具体的には、イミダゾール、ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾールが挙げられる。
上記のなかでも、液体洗浄剤組成物の洗浄力が特に向上すること、及び溶解性と低温安定性がより良好であることから、イミダゾール、ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール及び2−フェニルイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イミダゾール、ヒスチジンが特に好ましい。
【0030】
(C)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
液体洗浄剤組成物における(C)成分の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
(C)成分の含有量が下限値以上であると、洗浄力がより向上する。また、液体洗浄剤組成物の低温安定性が向上する。(C)成分の含有量が上限値以下であれば、充分な洗浄力が得られる。また、液体洗浄剤組成物の低温安定性が向上する。
【0031】
[その他の成分]
本発明の液体洗浄剤組成物においては、洗浄力がさらに向上することから、アルカンスルホン酸塩(D)(以下「(D)成分」という。)をさらに含有することが好ましい。
(D)成分は「パラフィンスルホン酸塩」とも呼ばれる界面活性剤であって、通常、1分子当たり炭素数10〜21の二級アルキルスルホン酸塩の混合物の形態で提供される。
そのなかでも、(D)成分としては、前記混合物中に1分子当たり炭素数13〜18の二級アルキルスルホン酸塩を80質量%以上含有するものが好ましく、90質量%以上含有するものがより好ましい。なお、前記混合物には、少量の一級アルキルスルホン酸塩、ジスルホン酸塩、ポリスルホン酸塩が含まれていてもよい。
塩の種類は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩等が挙げられ、これらが混在していてもよい。なかでも、塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0032】
(D)成分として好適に使用できる市販品としては、たとえば、HOSTAPUR SAS 30A(商品名、クラリアントジャパン(株)製;炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上)、HOSTAPUR SAS 60(商品名、クラリアントジャパン(株)製;炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上)、MERSOL80(商品名、Bayer社製;平均炭素数15(炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が80質量%以上))、MARLONシリーズ(SASOL社製;PS65、PS60、PS60W(以上、商品名)、炭素数10〜18(炭素数13〜17の二級アルキルスルホン酸ナトリウムの含有量が90質量%以上))が挙げられる。
【0033】
(D)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
液体洗浄剤組成物における(D)成分の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
(D)成分の含有量が下限値以上であると、洗浄力がさらに向上する。(D)成分の含有量が上限値以下であれば、充分な洗浄力が得られる。また、キメの細かな泡が得られやすくなる。
【0034】
本発明の液体洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した(A)〜(C)及び(D)成分以外に、その他の成分として通常、硬質表面用又は衣料用等の液体洗浄剤組成物に用いられている成分を、必要に応じて適宜、配合することができる。
【0035】
その他の成分として配合可能な界面活性剤は、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルカノールグルカミド、アルキルポリグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤が挙げられる。本発明の液体洗浄剤組成物における当該ノニオン界面活性剤の配合量は、0〜20質量%であることが好ましい。
また、配合可能な界面活性剤としては、アルキル酢酸ベタイン、アルカノールアミドプロピル酢酸ベタイン、アルキルイミダゾリン、アルキルアラニン等の双性又は両性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等のカチオン界面活性剤も挙げられる。
【0036】
また、その他の成分としては、ハイドロトロープとして芳香族スルホン酸塩、安息香酸塩等の芳香族カルボン酸;エタノール、種々の香料変性エタノール、イソプロパノール、ブチルカルビトール等の水溶性溶剤;グリコール酸、乳酸、りんご酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸等の多価カルボン酸;エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸;ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸とポリマレイン酸との共重合体等の高分子型カルボン酸型キレート剤;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の無機ビルダー;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、短鎖アルキルベンゼンスルホン酸等のpH調整剤;粘度調整剤、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、除菌剤、消炎剤、薬効成分、香料、天然抽出物等のような通常用いられる成分が挙げられる。
なお、前記短鎖アルキルベンゼンスルホン酸における「短鎖アルキル」は、炭素数1〜5のアルキル基を包含するものとする。
【0037】
本発明の液体洗浄剤組成物においては、25℃での当該液体洗浄剤組成物(原液)のpHが5.5〜7.5であることが好ましく、pH6〜7であることがより好ましい。
当該液体洗浄剤組成物(原液)のpHが5.5以上であると、(A)成分と(B)成分との相互作用が強すぎずに適度に抑えられ、液体洗浄剤組成物のゲル化又は固化がより起きにくくなる。また、低温安定性がより向上する。当該液体洗浄剤組成物(原液)のpHが7.5以下であると、(A)成分と(B)成分との相互作用が弱くなりすぎず、より良好な洗浄力が得られやすくなる。
かかるpHの調整は、25℃での液体洗浄剤組成物(原液)のpHが上記好適な範囲となるように、所定量の(C)成分を配合した上で、上記pH調整剤を添加することにより行うことができる。
本明細書及び本特許請求の範囲において、pHは、液体洗浄剤組成物(原液)又はその希釈液を25℃に調整し、pHメーター等を用いて測定される値を示す。
【0038】
以上説明した、本発明の液体洗浄剤組成物によれば、従来よりも高い洗浄力が得られる、という効果が得られる。かかる効果が得られる理由は以下のように推測される。
アニオン界面活性剤と、アミンオキシド型界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とが併用された従来の液体洗浄剤組成物においては、上述したように、スポンジに含まれる水などによって希釈されると、界面活性剤同士の相互作用が弱まるため、充分な洗浄力が発揮されていない問題がある。これは、前記希釈の影響により、希釈後の液体洗浄剤組成物のpHが、希釈前の液体洗浄剤組成物(原液)のpHに比べて高くなる。従来の場合、たとえば、希釈前の液体洗浄剤組成物(原液)のpH6.6であったものが、希釈後の液体洗浄剤組成物のpHが7.4〜7.8に上昇する。アニオン界面活性剤と、アミンオキシド型界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とが併用された界面活性剤の混合系では、このpHの上昇によって、アミンオキシド型界面活性剤又は両性界面活性剤のカチオン強度が低下することにより、アニオン界面活性剤との相互作用が弱まるため、洗浄力が低下すると考えられる。
本発明においては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)及びアミンオキシド型界面活性剤(B)に加えて、一般式(C−1)で表される化合物(C)を含有する。当該化合物(C)を含有することにより、(A)成分と(B)成分との界面活性剤の混合系であっても、前記希釈前後のpH変化が抑えられる。これによって、界面活性剤同士の相互作用が弱まることなく維持されるため、本発明の液体洗浄剤組成物は、従来よりも高い洗浄力が得られる、と推測される。
このように、特に、本発明の液体洗浄剤組成物は、pH=7付近にpH緩衝能を有し、かつ、(A)成分と(B)成分との界面活性剤の混合系に適した成分である化合物(C)を含有することを特徴とする。
【0039】
本発明においては、希釈前の液体洗浄剤組成物(原液)のpHと、洗浄時に希釈された液体洗浄剤組成物のpHとの差が、たとえば洗浄時の液体洗浄剤組成物濃度が5質量%水溶液の場合、原液のpHと、5質量%水溶液のpHとの差が0.6以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。かかるpHの差が上限値以下であると、洗浄力がより向上する。かかるpHの差となるように調整する方法としては、液体洗浄剤組成物(原液)のpH、(C)成分の配合量若しくはその種類、又は(A)〜(B)成分の配合量等を適宜、調整又は選択する方法が挙げられる。
【0040】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、たとえば−5℃で1ヶ月間の保存条件等の低温安定性も良好である。
本発明の液体洗浄剤組成物は、新規なものであり、台所用、浴室用等の洗浄剤として利用でき、なかでも、特に台所用として好適なものである。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
≪液体洗浄剤組成物の製造≫
(実施例1〜14、比較例1〜2)
表1、2に示す配合組成に従って各成分を混合して、各例の液体洗浄剤組成物をそれぞれ調製した。表1、2中の配合量の単位は質量%であり、いずれの成分も純分換算量を示す。各例の液体洗浄剤組成物は、表に記載の各成分の合計が100質量%となるように水でバランスして調製した。なお、比較例2の液体洗浄剤組成物は、(C’)成分の2−ヘプタデシルイミダゾールが可溶化されず、分散状態で白濁していた。比較例2については、白濁の液体洗浄剤組成物に対して下記評価を実施した。
pHの調整は、25℃での液体洗浄剤組成物(原液)のpHが表中に示すpHとなるように、pH調整剤(48質量%水酸化ナトリウム水溶液又は70質量%p−トルエンスルホン酸水溶液)を添加することにより行った。表中、水酸化ナトリウムとp−トルエンスルホン酸の配合量は、いずれも純分換算量を示し、p−トルエンスルホン酸の配合量は、後述の共通成分として配合される1質量%以外にさらに添加される量を示す。
pHの測定は、液体洗浄剤組成物を25℃に調整し、ガラス電極式pHメーター(製品名:ホリバF−22、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定方法は、JIS K3362−1998に準拠して行った。
以下に、表中に示した成分について説明する。
【0043】
<表中に示した成分の説明>。
・(A)成分
AES−1:以下に示す合成方法により得られた、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム。
[AES−1の合成方法]
原料アルコ−ルとして、P&G社製のCO1270アルコール(商品名、炭素数12のアルコール/炭素数14のアルコール=70質量%/30質量%の混合物)を用いた。
4Lのオートクレーブ中に、前記原料アルコ−ル400gと、Al/Mg/Mnで構成される複合金属酸化物ルイス酸焼結固体触媒0.4gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド181gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2の反応物を得た。また、そのエチレンオキシド付加モル数分布は、HPLCにより下記測定条件*1で測定した結果、ナロー率で77質量%を示した。
次に、このようにして得たアルコールエトキシレート282gを、撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換した後、液体無水硫酸(サルファン)78gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルを得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES−1)を得た。
【0044】
AES−2:以下に示す合成方法により得られた、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム。
[AES−2の合成方法]
原料アルコ−ルとして、シェルケミカルズ社製のNeodol23アルコール(商品名、炭素数12のアルコール/炭素数13のアルコール=50質量%/50質量%の混合物、分岐率20質量%)を用いた。
4Lのオートクレーブ中に、前記原料アルコ−ル400gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド184gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2の反応物を得た。また、そのエチレンオキシド付加モル数分布は、HPLCにより下記測定条件*1で測定した結果、ナロー率で33質量%を示した。
次に、このようにして得たアルコールエトキシレート280gを、撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換した後、液体無水硫酸(サルファン)78gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルを得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES−2)を得た。
【0045】
[ナロー率の測定方法]
(A)成分について、下記測定条件により、エチレンオキシドの付加モル数が異なるエチレンオキシド付加体の分布を測定した。そして、ナロー率(質量%)を上記数式(S)に基づいて算出した。
*1 HPLCによるエチレンオキシド付加モル数分布の測定条件
装置 :LC−6A((株)島津製作所製)
検出器 :SPD−10A
測定波長:220nm
カラム :Zorbax C8(Du Pont(株)製)
移動相 :アセトニトリル/水=60/40(体積比)
流速 :1mL/min
温度 :20℃
【0046】
・(B)成分
アミンオキシド:ラウリルジメチルアミンオキシド、ライオンアクゾ社製、商品名「アロモックスDM12D−W(C)」。
【0047】
・(C)成分
イミダゾール:日本合成化学工業(株)製、商品名「イミダゾール」。
ヒスチジン:東京化成工業(株)製の試薬、商品名「L−ヒスチジン塩酸塩一水和物」。
1−メチルイミダゾール:日本合成化学工業(株)製、商品名「1−メチルイミダゾール」。
2−メチルイミダゾール:日本合成化学工業(株)製、商品名「2−メチルイミダゾール」。
2−フェニルイミダゾール:日本合成化学工業(株)製、商品名「2−フェニルイミダゾール」。
【0048】
・(C)成分の比較成分[以下「(C’)成分」と表す。]
2−ヘプタデシルイミダゾール:四国化成工業(株)製、商品名「キュアゾールC17Z」。
クエン酸:純正化学(株)製、試薬特級。
【0049】
・(D)成分
SAS:第2級アルカンスルホン酸ナトリウム、クラリアントジャパン(株)製、商品名「HOSTAPUR SAS 30A」。
【0050】
・任意成分
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(15EO):エチレンオキシドの平均付加モル数15のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ライオン(株)製、商品名「レオックスLC−150」。
p−トルエンスルホン酸:テイカ(株)製、商品名「テイカトックス300」。
エタノール:純正化学(株)製、試薬特級。
PEG1000:ポリエチレングリコール(分子量1000)、ライオン(株)製、商品名「PEG#1000」。
水酸化ナトリウム:鶴見曹達(株)製。
水。
【0051】
共通成分(X)の配合組成:
液体洗浄剤組成物の共通成分(X)における各成分の含有量(配合量)を示す。配合量の単位は質量%であり、いずれの成分も純分換算量を示す。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(15EO):2質量%
p−トルエンスルホン酸 :1質量%
エタノール :6質量%
PEG1000 :1質量%
【0052】
≪液体洗浄剤組成物の評価≫
各例の液体洗浄剤組成物について、以下に示す評価方法により洗浄力の評価を行った。
【0053】
[5質量%水溶液のpHの測定]
各例の液体洗浄剤組成物を水で希釈して5質量%水溶液を調製し、上述した液体洗浄剤組成物(原液)のpHの測定方法と同様にして当該5質量%水溶液のpH(25℃)を測定した。その結果を表1と表2に併記した。
【0054】
[洗浄力の評価]
牛脂(商品名:牛脂、和光純薬社製)1gを、縦10cm×横15cm×高さ5cmのタッパ容器内側の全面に均一になるように塗布し、激しく汚れた疎水性表面汚垢モデルとした。
次いで、縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジに、水道水38gと各例の液体洗浄剤組成物2gをそれぞれとり、数回手で揉んだ後、牛脂が塗布された上記タッパ容器を、25℃の水道水を用いて、通常家庭で行われる方法と同様にして洗浄した。洗浄した後、水道水でよくすすぎ、タッパ容器内側の牛脂が塗布された部位(汚染部)を手で触ったときの触感について評価した。
かかる評価は、下記の評価基準に基づいて行い、油汚れに対する洗浄力の評価とした。その結果を表1と表2に併記した。
(評価基準:3点以上が合格範囲)
5点:タッパ容器内側にヌルつきはなかった。
4点:タッパ容器内側の隅がヌルついた。
3点:タッパ容器内側の側面がヌルついた。
2点:タッパ容器内側の底面がヌルついた。
1点:タッパ容器内側の全面がヌルついた。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1、2の結果から明らかなように、実施例1〜14の液体洗浄剤組成物は、いずれも、比較例1の液体洗浄剤組成物よりも、高い洗浄力が得られていることが確認できた。
本発明における(C)成分と異なるイミダゾール誘導体を含有する比較例2の液体洗浄剤組成物は、当該イミダゾール誘導体の溶解性が低く白濁し、また、洗浄力も不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(A)と、
アミンオキシド型界面活性剤(B)と、
下記一般式(C−1)で表される化合物(C)とを含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【化1】

[式(C−1)中、Rは水素原子又はメチル基であり;Rは水素原子、炭素数1〜11のアルキル基又はフェニル基であり;Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は−CH−CH(NH)COOHである。]
【請求項2】
前記化合物(C)が、イミダゾール、ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール及び2−フェニルイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
アルカンスルホン酸塩(D)をさらに含有する請求項1又は請求項2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
25℃でのpHが5.5〜7.5である請求項1〜3のいずれかに記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−77190(P2010−77190A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244181(P2008−244181)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】