説明

液体組成物、シリコン基板の製造方法、液体吐出ヘッド用基板の製造方法

【課題】シリコン基板の結晶異方性エッチング時間の短縮出来るエチング組成物、及びエチング方法を提供する。
【解決手段】シリコンの酸化膜4をエッチングマスクとして、シリコン基板1を結晶異方性エッチングするにあたり,アルカリ性有機化合物と、水酸化セシウムと、水と、を含有するエッチング液体組成物を用いる。このとき、アルカリ性有機化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムであり、水酸化テトラメチルアンモニウムを5重量%以上25重量%以下、水酸化セシウムを1重量%以上40重量%以下、の割合で含有するエッチング液体組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、シリコン基板の製造方法、液体吐出ヘッド用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニング技術により、各種シリコンデバイスは液体吐出ヘッド、熱型センサ、圧力センサ、加速度センサなどの各種デバイスに応用されている。このような各種シリコンデバイスは、製造方法のコストダウン、微細化、高機能化などの種々の要望がなされており、このような要望を満たすためにこれらシリコンデバイスの製造に当たってはマイクロマシニング技術である微細加工技術が用いられている。マイクロマシニング技術においては、所望の構造を形成するためにシリコンの湿式の異方性エッチング技術が用いられており、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液であるアルカリ性エッチング液でエッチングする方法などがある。
【0003】
しかしシリコンの湿式の異方性エッチングは、長時間を要するため、製造時間をエッチング時間が律速するので生産性を向上させるためにはシリコンエッチング時間を短縮することが望まれる。特許文献1にはシリコンのエッチング速度を向上させるため、アルカリ性有機化合物と、水酸化ナトリウムと、含珪素化合物、とを含有するエッチング液を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−206335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1上記文献の液体組成物は、シリコンの酸化物とシリコンとのエッチング速度の差が十分ではなく、シリコンの酸化膜をエッチングマスクとするシリコンデバイスの製造方法に適用した場合、所望の形状が得られない懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を鑑みなされたものであって、シリコンの異方性エッチングにおいて、シリコンエッチング速度が速く、シリコンの酸化膜を腐食することなくシリコンを選択的に異方性エッチングするエッチング液体組成物を提供することである。
【0007】
本発明の一例は、シリコンの酸化物の膜からなるエッチングマスクを備えたシリコン基板を、前記酸化膜をマスクとして結晶異方性エッチングするための液体組成物であり、水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、水と、を含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、シリコンのエッチング速度が速く、かつエッチングマスクに使用されるシリコンの酸化膜に対するエッチング性が低いシリコン異方性エッチング液体組成物を提供することが可能になる。本発明のエッチング液体組成物を用いることにより、シリコン微細加工技術を用いる製造プロセスの生産性に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例4に係わるシリコン基板の製造方法の断面図である。
【図2】実施例5に係わる液体吐出ヘッドの製造方法の断面図である。
【図3】実施例4に係わるシリコン基板の一例を示す斜視図である。
【図4】実施例5に係わる液体吐出ヘッドの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るシリコンを結晶異方性エッチングするための液体組成物は、水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、水と、を含む。
【0011】
液体組成物は水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、水と、で構成される水溶液を主体とするが、他の液体成分の混合を排除するものではない。水酸化セシウム、アルカリ性有機化合物、それぞれのエッチング特性を損なわないものであれば液体組成物のさらなる追加の成分として使用可能である。
【0012】
本発明に用いるアルカリ性有機化合物としては、シリコンをエッチングするための所望のアルカリ性を示す化合物であれば使用可能であり、所望のエッチング特性が得られるアルカリ化合物を使用することができる。例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、TEAH(水酸化テトラエチルアンモニウムハイドライド)が挙げられる。水酸化テトラメチルアンモニウムが好ましい例として挙げられる。アルカリ性有機化合物の濃度は液体組成物中の濃度が、液体組成物の前重量に対して4重量%以上25重量%以下となるように用いることが好適である。特に必要なエッチング能を長期間維持するという点で5重量パーセント以上がよく、必要なエッチング速度をとりわけ高くするという点で、25重量%以下が好ましい。
【0013】
また、アルカリ性有機化合物と混合して用いる無機アルカリ化合物として水酸化セシウムを使用する。
【0014】
また、液体組成物の重量の中で水酸化セシウムの重量割合は、1重量%以上60重量%以下の割合となることが好ましい。シリコンのエッチング速度の向上を十分以上に図る意味で1重量%以上がよい。コスト面等を考慮すると40重量%以下が好適である。
【0015】
水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、を有効に機能させるため液体組成物中の水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、水と、の割合については、80パーセント以上が好ましい。さらには95パーセント以上であるとよい。とりわけ98パーセント以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のエッチング用の液体組成物は、シリコンの湿式エッチング工程を含むMEMS分野において、液体吐出ヘッド、圧力センサ、加速度センサなどの各種シリコンデバイスを製造する際のエッチング液として好適に使用できる。
【0017】
以下、図面を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の説明において、同一の機能を有する部位には同一の符号を付与し、その説明を省略する。
【0018】
図3は面方位が{100}の単結晶シリコンの基板1にシリコンの酸化膜4をマスクとして異方性エッチングし、貫通口6を形成した状態の斜視図である。シリコン基板1の裏面から表面に向かって狭まるように貫通口6が形成されている。裏面には、酸化膜4、樹脂層7が設けられている。
【0019】
図1を用いて単結晶シリコンの基板に貫通口を形成する方法を説明する。
【0020】
図1−(A)から(E)は、図3のA−A’を通り、基板1に垂直な断面での各工程での切断面図であり、本発明のエッチング液体組成物を用いて貫通口を形成した、シリコン基板の基本的な製造工程を示す為の断面模式図である。
【0021】
図1−(A)に示されるようにシリコンの母材1を用意する。なお、母材1は主面が{100}面である。
【0022】
次に、図1−(B)に示すように、図1−(A)で示されたシリコンの母材1aの一方の面としての裏面101に、シリコンの酸化膜4を形成する。シリコンの酸化膜4はCVD法によって堆積膜として設けてもよいし、シリコンの母材1aを熱酸化して表層に酸化膜4を形成してもよい。これによって裏面101に酸化膜4が設けられたシリコンの基板1(シリコン基板1とも記載する。)が得られる。熱酸化の場合には表面102上にも酸化膜5が設けられた状態となる。
【0023】
このとき表面シリコン基板1の裏面101側には、貫通口6形成時のマスクとなるシリコンの酸化膜4をエッチングするためのパターン化された樹脂層7を形成しておく。この樹脂層7はポリエーテルアミド等で設けることができる。
【0024】
次に、図1−(C)に示すように、樹脂層7をマスクとしてシリコンの酸化膜4をエッチングして、酸化膜4に開口部11を形成する。
【0025】
次に、図1−(D)に示すように、開口部11から本発明のエッチング用の液体組成物を用いて基板1のシリコンをエッチングする。エッチングは、シリコンの{100}面に対して優先的に進み、基板1の表面102の方向に進行する、表面102上の酸化膜5は、液体組成物にエッチングされる速度が小さく、被エッチング領域が酸化膜5となったらエッチングを終了する。以上により{111}面Sが側面に現れ、基板1を貫通する貫通口6が形成される。
【0026】
次に、図1−(E)に示すように、シリコン基板1の表面のシリコンの酸化膜5を除去し、図3の状態の基板を得る。
【0027】
このあと、樹脂層7、酸化膜4をそれぞれエッチング等で除去してもよい。
【0028】
図4は本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す模式的斜視図であり、一部を切り欠いて内部の様子も示した図である。図4に示されるように、液体吐出ヘッドは、エネルギー発生素子3が所定のピッチで2列並んで形成された液体吐出ヘッド用基板としてのシリコンの基板1を有している。基板1上には、流路12及びエネルギー発生素子3の上方に開口する液体の吐出口10が流路形成部材を成す被覆樹脂層9により形成されており、液体の供給口60から各吐出口10に連通する液体の流路上部を形成している。また、シリコンの異方性エッチングによって形成された液体供給口60が、エネルギー発生素子3の2つの列の間に開口されている。この液体吐出ヘッドは、供給口60を介して流路内に充填された液体に、エネルギー発生素子3がよって生気される圧力を加えることによって、吐出口10から液滴を吐出させる。また、裏面には酸化膜4が形成されている。液体吐出ヘッドは、被記録媒体にインクを付着させることにより記録を行うインクジェット記録ヘッド、カラーフィルター製造用インクジェットヘッド等に応用可能である。
【0029】
図2を用いて、液体吐出ヘッドに使用される液体吐出ヘッド用基板の製造方法を説明する。
【0030】
図2−(A)から(E)は、図4におけるB−B’を通り基板に垂直な断面で、各工程を見た場合の切断面図であり、本発明の液体吐出ヘッドの基本的な製造工程を示す為の断面模式図である。なお、後述する流路、吐出口の形成は必須工程ではないが、本説明では、液体吐出ヘッド用基板の製造に伴って、流路、吐出口を形成する製造方法を例にとり説明を行う。
【0031】
図2−(A)に示される面方位が{100}の単結晶シリコンの基板1の第1の面である表面上には、犠牲層2、発熱抵抗体等の液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子3が複数個配置されている。エネルギー発生素子3とシリコン基板のシリコン部との間には熱酸化膜等の絶縁膜(不図示)が形成されている。また基板1の第2の面である裏面にはインク供給口60を形成するためのマスクとなるシリコンの酸化膜4を形成した。エネルギー発生素子3の配線や、駆動する為の半導体素子は不図示である。犠牲層2、その他の素子や配線を保護膜5で覆う。エネルギー発生素子3を覆うことも可能である。犠牲層2はアルミ、ポリシリコン等、保護膜5は、シリコンの酸化物、シリコンの窒化物、シリコンの炭化物等で形成される。基板1の裏面にはシリコンの酸化膜4をエッチングするための樹脂層7を、パターニングで予め形成しておく。
【0032】
次に、図2−(B)に示すように、図1−(A)で示された基板1上に流路12の型材になるポジレジスト8を塗布し、塗布後に露光、現像を行う。次に、被覆樹脂層9をスピンコート等により塗布、紫外線やDeepUV等による露光、現像を行って吐出口10を形成した。この工程は、必ずしもこの段階で行う必要はない。
【0033】
次に図2−(C)に示すように樹脂層7をマスクとして、ウェットエッチングにより開口部11を形成する。
【0034】
次に図2−(D)に示すように、本発明のエッチング液体組成物を用いて基板1のシリコンをエッチングする。被エッチング領域は、基板表面方向に進行し、犠牲層2に到達する。犠牲層2が本発明の液体組成物に速やかに溶解可能である場合は、そのままエッチングを継続させることができる。以上のようにして基板1を貫通する供給口60を形成する。
【0035】
このあと、樹脂層7を除去するがこれは必要に応じて行えばよい。
【0036】
次に図2−(E)に示すように保護膜5をエッチングした後、型材であるポジレジスト8を除去し、型材の被覆材である被覆樹脂層9を熱硬化させる。
以上の工程によりノズル部が形成されたシリコン基板1を、ダイシングソー等により切断分離、チップ化して液体吐出ヘッドを得る。その後、エネルギー発生素子3を駆動させる為の電気的接合を行った後、インク供給の為の支持部材(タンクケース)を接続する。支持部材に裏面を接続する前に、必要に応じて酸化膜を除去してもかまわない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示し本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0038】
(実施例1)
シリコン異方性エッチング液体組成物として、表1の実施例1から5のエッチング液体組成物を用意し、その特性を調べた。
まず、実施例1では、アルカリ性有機化合物の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下TMAHと略記)5重量%、無機アルカリ化合物として水酸化セシウム(以下CsOHと略記)10重量%を含有する水溶液(シリコン異方性エッチング液体組成物)を調製した。そして、この実施例1のエッチング液体組成物に、エッチング速度測定用のシリコンウエハサンプルを80℃で1時間浸漬した。超純水にてリンス後、乾燥を行い、シリコンの100面方向およびシリコンの111面方向へのエッチング量を測定し、エッチング速度を求めた。また、同一組成のエッチング液体組成物を用いてシリコンの酸化膜を成膜したウエハを使用し、同様にシリコンの酸化膜のエッチング速度を求めた。
【0039】
(実施例2)
実施例2では、エッチング液体組成物として、水溶液中のTMAHの含有濃度が5重量%、CsOHの含有濃度が1重量%である水溶液を調製した。実施例1と同じ条件でシリコンウエハサンプルと、シリコンの酸化膜を成膜したウエハを用いてエッチングを行い、シリコンエッチング速度を調べるとともに、シリコンの酸化膜のエッチング速度を測定した。
【0040】
(実施例3)
実施例3では、エッチング液体組成物として、水溶液中のTMAHの含有濃度が25重量%、CsOHの含有濃度が40重量%である水溶液を調製した。そして、実施例1と同様にして各エッチング速度を測定した。
【0041】
(実施例4)
実施例4では、エッチング液体組成物として、水溶液中のTMAHの含有濃度が5重量%、CsOHの含有濃度が40重量%である水溶液を調製した。そして、そして、実施例1と同様にして各エッチング速度を測定した。
【0042】
(実施例5)
実施例5では、エッチング液体組成物として、TMAHの含有濃度が25重量%、CsOHの含有濃度が1重量%である水溶液を調製した。そして、実施例1と同様にして各エッチング速度を測定した。
【0043】
(実施例6)
実施例6では、エッチング液体組成物として、水溶液中のTMAHの含有濃度が2重量%、CsOHの含有濃度が1重量%である水溶液を調製した。そして、実施例1と同様にして各エッチング速度を測定した。
実施例1〜6のエッチング液体組成物についてエッチング速度を測定した結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
比較のため、表2に示すように、アルカリ性有機化合物に添加する無機アルカリ化合物として、水酸化カリウム(以下KOHと略記する)を用いてシリコン異方性エッチング液体組成物として調製し、その特性を調べた。
エッチング液体組成物として、TMAHの含有濃度が25重量%、KOHの濃度が40重量%であるエッチング液体組成物を調製した。そして、このエッチング液体組成物を用いて、上記実施例1と同じ条件でシリコンウエハサンプルとシリコンの酸化膜を成膜したウエハを用いてエッチングを行い、シリコンエッチング速度と、シリコンの酸化膜のエッチング速度を測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
(比較例2)
比較のため、表2に示すように、アルカリ性有機化合物に添加する無機アルカリ化合物として、水酸化カリウム(以下KOHと略記する)を用いてシリコン異方性エッチング液体組成物として調製し、その特性を調べた。具体的にはエッチング液体組成物として、TMAHの含有濃度が5重量%、KOHの含有濃度が10重量%であるエッチング液体組成物を調製した。そして、このエッチング液体組成物を用いて、上記実施例1と同じ条件でシリコンウエハサンプルとシリコンの酸化膜を成膜したウエハを用いてエッチングを行い、シリコンエッチング速度と、シリコンの酸化膜のエッチング速度を測定した。その結果を表2に示す。
【0046】
表1に示すように、実施例のエッチング液体組成物を用いた場合、シリコンの酸化膜に比べて、シリコンを選択的に、高いエッチング速度でエッチングすることが可能であることが確認された。
【0047】
実施例の組成物は比較例と比較してシリコン酸化膜のエッチング速度が比較例よりも著しく小さい。よって実施例の液体組成物はシリコンを酸化膜に対してより選択的にエッチングすることができる。
【0048】
これは、シリコン酸化膜内での拡散速度が大きいカリウムイオンが含まれる比較例の液体組成物に対して、実施例の液体組成物にはイオン半径が大きくシリコン酸化膜内での拡散速度が小さいセシウムイオンが含まれているからである。
【0049】
上述のように、本発明によれば、シリコンのエッチング速度が速く、かつエッチングマスクに多用されるシリコンの酸化膜をエッチングする能が小さい、シリコン異方性エッチング液体組成物を提供することが可能になる。そして、本発明のエッチング液体組成物を用いることにより、シリコン微細加工の効率を大きく向上させることができる。
【0050】
よって、本発明は、シリコンウエハなどの微細加工を行う技術分野に広く適用することが可能である。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
次に、本発明のエッチング液体組成物を用いてシリコンデバイスの製造方法について、詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0054】
(シリコン基板に貫通口を形成する実施例)
図1を用いて、本発明のエッチング液体組成物を用いてシリコン基板に貫通口を形成する方法について、実施例を詳細に説明する。
【0055】
図1−(A)から(E)は、本発明のエッチング液体組成物を用いて貫通口を形成したシリコン基板の基本的な製造工程を示す為の断面模式図である。
【0056】
図1−(A)に示されるようにシリコンの母材1aを用意する。
【0057】
次に、図1−(B)に示すように、図1−(A)で示されたシリコンの母材1aの表裏に、熱酸化膜形成方法によりシリコンの酸化膜4を形成した。形成条件は、熱処理温度が1000℃、処理時間は60分、H/Oの混合ガスを用いた。その後、シリコン基板1の裏面に、樹脂層7をパターニングで形成した。樹脂層7にはポリエーテルアミドを用いた。
【0058】
次に図1−(C)に示すように樹脂層7をマスクとして、シリコンの基板1の裏面にあるシリコンの酸化膜4をBHFによりエッチングを行い、開口部11を形成した。なお、開口部11は反応性イオンエッチング技術を利用したドライエッチング装置を用いて形成することも可能である。
【0059】
次に図1−(D)に示すように、本発明のエッチング液体組成物を用いてエッチングを行い、貫通口6を形成した。エッチング液体組成物としては、アルカリ性有機化合物のTMAHを5重量%、無機アルカリ化合物としてCsOHを10重量%含有するシリコン異方性エッチング液体組成物を調製した。エッチング液の温度は80℃とし、エッチングを行うが、CsOHを添加したことによりシリコンのエッチング速度は、添加しないTMAH単体のシリコン異方性エッチング液体組成物より、1.4から1.9倍になった。
【0060】
次に、図1−(E)に示すように、シリコン基板1上面のシリコンの酸化膜5を除去して、貫通口6が形成されたシリコン基板が完成する。
【符号の説明】
【0061】
1 シリコン基板
4 シリコンの酸化膜
6 貫通口
7 樹脂層
11 開口部
60 供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの酸化膜からなるエッチングマスクを備えたシリコン基板を、前記酸化膜をマスクとして結晶異方性エッチングするための液体組成物であって、水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、水と、を含有する液体組成物。
【請求項2】
前記アルカリ性有機化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
水酸化セシウムとアルカリ性有機化合物と水との重量に対して水酸化セシウムを1重量%以上40重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体組成物。
【請求項4】
水酸化セシウムと水酸化テトラメチルアンモニウムと水との重量に対して水酸化テトラメチルアンモニウムを5重量%以上25重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項2または3に記載の液体組成物。
【請求項5】
開口を有するシリコンの酸化膜が少なくとも一方の面に設けられたシリコン基板を用意する工程と、
水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、の水とを含む液体組成物をエッチング液として、前記酸化膜をマスクとして使用して、前記開口から前記基板をエッチングすることにより、前記基板を貫通する貫通口を形成する工程と、
を有することを特徴とするシリコン基板の製造方法。
【請求項6】
アルカリ性有機化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項5に記載のシリコン基板の製造方法。
【請求項7】
インクを吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子が第1の面上に設けられたシリコン基板を含み、液体吐出ヘッド用基板を貫通し前記エネルギー発生素子へ液体を供給するための供給口が設けられた前記液体吐出ヘッド用基板の製造方法において、
前記エネルギー発生素子が前記第1の面上に(above)設けられ、開口を有するシリコンの酸化膜が少なくとも前記第1の面の裏面である第2の面に(on)設けられたシリコン基板を用意する工程と、
水酸化セシウムと、アルカリ性有機化合物と、水と、を含む液体組成物をエッチング液として、前記酸化膜をマスクとして使用して、前記開口から前記シリコン基板をエッチングすることにより、前記シリコン基板を貫通する貫通口を形成する工程と、
前記貫通口を利用して前記供給口を形成する工程と、
を有する液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ性有機化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−176298(P2011−176298A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14222(P2011−14222)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】