液体還流型高速遺伝子増幅装置

【課題】正確な温度制御、温度測定と迅速な昇温、降温を行うことができる反応制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、より安定した温度制御を可能にする付加機構、RNA検出を可能にするPCR反応前の逆転写反応プロセスの導入を含めた前処理機構、融解曲線分析機能、液滴保持と光学計測に最適なチップ技術とPCR反応の光学的計測機能、および定量的な赤外光照射吸収制御手法による温度勾配制御機構を備える液体還流型反応制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎生命科学、医学基礎研究ならびに医療現場において、迅速に微量の遺伝子解析の研究や臨床を行うに適する反応容器を用いた遺伝子解析装置に関するものであり、例えば人間をはじめとする動物や植物のゲノムDNA、メッセンジャーRNA等の核酸塩基配列から特定の塩基配列を高速で検出するための反応装置を扱う遺伝子解析に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase chain reaction以下、PCRと略記する。)は、様々な種類の核酸の混合物から特定の塩基配列を増幅する方法である。混合物中にゲノムDNA あるいはメッセンジャーRNAから逆転写した相補的DNA等のDNAテンプレート、2種類以上のプライマーと熱安定性酵素、マグネシウムなどの塩、および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を入れ、核酸を分離させる工程と、前記プライマーを結合させる工程と、熱安定性酵素によってプライマーが結合した核酸を鋳型としてハイブリダイゼーションさせる工程を少なくとも一回繰り返すことによって、特定の核酸配列を増幅させることができる。DNA増幅反応に用いられる反応容器を昇温、降温させることによって、熱サイクルを行っている。温度変化用の機構は色々と挙げられるが、サンプルを含む反応容器の温度をヒーターないしペルチエ素子、温風を用いた熱交換で変化させる機構、反応容器を異なる温度のヒータブロックもしくは液体バスに交互に接触させることにより温度を変化させる機構、異なる温度の領域を有する流路中にサンプルを流して温度を変える方法がある。現状の市販装置として最速なものとして、例えばロッシュ社のライトサイクラー(Light Cycler)では、複数のガラスキャピラリー管の各々に試料とDNAポリメラーゼとプライマーとなるDNA小片および計測用の蛍光標識色素を導入し、このキャピラリー管内の微量液滴の温度を、例えば55℃と95℃の2つの温度など、変化させたい液滴の温度と同じ温度の温風を吹き付けることで変化させ、同時に、このガラスキャピラリー管に蛍光色素の励起光を照射し、得られた蛍光強度を計測する機構を有するものである。これらの方法によりサンプルの温度を繰り返し変化させることが可能である。
【0003】
また、試料含有領域の外壁へ流体ジェットを衝突させることにより、試料温度を制御する流体衝突熱サイクラー装置が報告されている(特表2001―519224(特許文献1))。そこで本発明者らは、現在までにより高速なPCRを行うために、水に特異的に吸収を持つ波長の赤外線を照射して微小水滴の温度を高速で変換する技術、ならびに循環水を利用して循環水との熱交換によって温度サイクリングが超高速に行える超高速PCR装置を開発してきた(特開2008−278791、特開2009−118798、WO2010/113990、WO2011/105507(特許文献2〜5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−519224
【特許文献2】特開2008−278791
【特許文献3】特開2009−118798
【特許文献4】WO2010/113990
【特許文献5】WO2011/105507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の技術では、急激な温度変化を伴って複数の温度の間でのサイクルを繰り返す場合には、1)厳密な温度制御、2)安定した温度維持、3)目標温度への移動時にオーバーシュートが無いことを達成する事は困難である。例えば、ヒーターまたはペルチエ素子での温度の変化速度は、毎秒数℃程度と遅く、また発熱と熱伝導との関係からターゲット温度に達するプロセスでは、高速でターゲット温度にするためにはオーバーシュートなしに温度を変化させることは困難である。また、基本的に固体中の熱伝導を利用すると熱源と表面の間には熱勾配が形成されてしまい、厳密な制御は不可能であった。また、サンプルがヒーターないしペルチエ素子に触れた瞬間に熱が奪われ、表面温度が所定温度に復帰するまでの遅延が発生していた。また異なるヒーターないし液体バスに反応槽を接触させる場合には、移動用の機構が複雑であり、ヒーターないし液体バスの温度制御が困難であった。さらに、異なる温度領域を有する流路中にサンプルを流す方法においては、サンプルの移動に伴って流路自体の表面温度が変化してしまい、温度制御が困難であるといった問題があった。また、温風を吹き付けて温度変化を行う場合には、空気の熱容量が少ないため、多量の空気を吹き付ける必要があり、また、同様に空気の熱容量が少ないため、電熱線等で吹き付ける空気の最終的な吹き出し温度を1℃単位で厳密に制御することは困難であった。
【0006】
本発明者らはこれまでに、連続して一定の熱量を供給するために定常的な赤外光照射あるいは高速還流する温水を利用し、ターゲットに対して常にエネルギーを供給することができ、正確な温度制御、温度測定と迅速な昇温、降温を行うことができる反応制御装置を独自に開発した。さらにこれに蛍光検出系を組み合わせる事で、PCR反応によるDNA増幅に伴い蛍光強度が増加する蛍光色素を用い、その増幅反応をリアルタイムに検出する蛍光検出方法を組み込んだ高速PCR検出装置を開発してきた(特許文献2〜5)。
【0007】
本発明では、これら本発明者らの従前の発明をさらに改善させ、より正確な温度制御、温度測定と迅速な昇温、降温を行うことができる液体還流型反応制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、[1]より安定した温度制御を可能にする付加機構、[2]RNA検出を可能にするPCR反応前の逆転写反応プロセスの導入を含めた前処理機構、[3]融解曲線分析機能、[4]液滴保持と光学計測に最適なチップ技術とPCR反応の光学的計測機能、および[5]定量的な赤外光照射吸収制御手法による温度勾配制御機構を備える液体還流型反応制御装置を提供する。
【0009】
上記[1]の「より安定した温度制御を可能にする付加機構」に関連して、本発明の反応制御装置は、サンプル液の温度を変化させるに当たり、所定の複数の温度について、各温度が維持された熱容量の大きな液体を熱交換の媒体に用いることに加えて、この熱容量の大きな複数の異なる温度の液体を一定温度に保つ機構(例えば、図1、13、および21に示す熱源5、攪拌機構6、ポンプ7、切り替えバルブ8、バイパス流路9、補助温度制御機構10、温度センサー16、補助液体放熱機構17等を参照)、この熱容量の大きな複数の異なる温度の液体を連続で循環させながら高速で置換させる手段(例えば、図1、13、および21に示すポンプ7、切り替えバルブ8、バイパス流路9、補助温度制御機構10を参照)、この熱容量の大きな液体とサンプル液との熱交換が迅速に行われる微小反応槽(例えば、図2、5、8〜12、14、15、20に示す熱交換槽3および微小反応槽1を参照)、および微小反応槽中の反応液の蒸発を防ぐ手段(例えば、図1、13、14、15、21に示す反応槽枠2、図15に示す反応槽チップの構成、図18に示すピラー1301、封入シール1302を参照)を用いることを特徴とする。より具体的には、熱交換に適した構造および材質で構成される微小反応槽1と、微小反応槽1の反応液の蒸発を防ぐための構造(例えば、図1、13、14、15、21に示す反応槽枠2、図15に示す反応槽チップの構成、図18に示す封入シール1302、ピラー1301を参照)と、各反応に適した温度の液体を微小反応槽外部に循環させる熱交換槽(例えば、図2、5、8〜12、14、15、20を参照)と、液体の温度を高精度で維持する機構(例えば、熱源5、攪拌機構6、温度センサー16、補助液体放熱機構17を参照)を備える複数の液体リザーバタンク4と、微小反応槽1の温度を迅速に変化させるために任意の液体リザーバタンク4から熱交換槽3へ液体を導くための切り替えバルブ系と、上記バルブ系の切り替えの際に異なる温度の液体の混合防止機構(例えば、図2、5、8〜12に示す熱交換槽を参照)とから構成されている。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の液体還流型反応制御装置を提供する。
(1)サンプル液を容れるための1または複数のウェルを備えた反応槽と、
前記ウェルに配置したサンプルの液滴の蒸発を防ぐために上記反応槽を密閉して覆い、かつ結露を防ぐために保温部材を備える反応槽枠と、
上記反応槽に熱を伝導しうるように該反応槽に接して設けられ、所定の温度の液体をそれぞれ導入および排出するためのインレットおよびアウトレットを備えた熱交換槽と、
複数の液体リザーバタンクであって、液体をそれぞれ所定の温度に保つための温度制御可能な熱源と、該リザーバタンク内の温度が一定となるように液体を撹拌する液体攪拌機構と、該リザーバタンクの液体の温度を制御するためのフィードバック情報を得るための温度センサーとを備えた、複数の液体リザーバタンクと、
上記複数の液体リザーバタンク間の液面高さをほぼ同じに調整するための上記各液体リザーバタンクを互いに流体接続する細管と、
上記熱交換槽の上記インレットおよび上記アウトレットと上記液体リザーバタンクとの間を接続する管状流路と、
上記管状流路上に設置された、上記熱交換槽と上記液体リザーバタンクとの間で上記液体を毎秒10mL以上で循環させることができるポンプと、
上記管状流路上に設置された、上記循環する上記液体の流れを制御するための切り替えバルブであって、上記複数の液体リザーバタンクからの所定の温度の上記液体の上記熱交換槽への流入を所定の時間間隔で切り替えることによって、上記反応槽の温度を所望の温度に制御する、切り替えバルブと、
上記管状流路上の上記熱交換槽と上記液体リザーバタンクとの間に配置された補助温度制御機構であって、還流する上記液体を一時的に保持し得る所定の容積を有し、上記還流する液体の温度を上記液体リザーバタンク内と同じ温度に調整してから上記液体リザーバタンクに還流させることで上記液体リザーバタンクの温度変化を最小限に抑えるための補助温度制御機構と、
上記サンプル液中に蛍光色素を含有させた場合に、上記切り替えバルブによる上記反応槽の温度切り替えに連動して上記ウェル内の上記蛍光色素が発する蛍光を検出し、蛍光強度の時間変化を測定するための蛍光検出手段と、
上記蛍光強度から上記サンプル液の温度を見積もり、その結果に基づいて上記切り替えバルブの動作を制御することができる制御解析部と、
を備え、
上記サンプルの量が1ウェル当たり数十μL以下であり、循環させる上記液体の総容積が1液体リザーバタンク当たり数十mL以上である、液体還流型反応制御装置。
(2)PCR装置として使用する、上記(1)に記載の液体還流型反応制御装置。
(3)さらに、上記液体リザーバタンク内の液体の温度を下げるように制御するための冷却機構を備える、上記(1)に記載の液体還流型反応制御装置。
(4)上記蛍光検出手段が、上記反応槽の上記ウェルの各々に対応して設けられている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(5)上記反応槽枠が、該反応槽枠内部の温度が75℃以上に保持されるように上記保温部材により保温されている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(6)上記液体リザーバタンクの数が、上記反応槽の設定温度の数と同一である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(7)上記液体リザーバタンクの数が、2温度PCR反応用の2、逆転写反応と2温度PCRあるいは3温度PCR反応用の3、または逆転写反応用と3温度PCR反応用の4である、上記(6)に記載の液体還流型反応制御装置。
(8)上記反応槽の底面および壁面が、厚さ1ミクロンから100ミクロンのアルミ、ニッケル、マグネシウム、チタン、プラチナ、金、銀、銅を含む金属、もしくはシリコンから形成されている、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(9)上記ウェルの底面の形状が、平底状、半球状、三角錐状、または球状である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(10)上記ウェルの各々に、反応に必要な試薬が乾燥した状態で予め内包されており、サンプル溶液との接触により溶出して反応を可能とする、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(11)上記反応槽枠が、該反応槽内の上記サンプルからの光学信号の測定を容易にする孔もしくは光学窓をさらに備え、該光学窓が光学的に透明な発熱体を備える、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(12)上記反応槽および上記反応槽枠が、上記熱交換槽に対して着脱可能に設置されている、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(13)上記反応槽および上記反応総枠の上記熱交換槽への着脱方式が、
(a)上記反応槽の外周に筒状の枠を、上記熱交換槽に筒状の反応槽受け口を設け、上記反応槽の上記枠の外表面と、上記熱交換槽の反応槽受け口の内表面とにねじ山を設けて、該ねじ山に沿った回転運動により上記反応槽を上記熱交換槽に着脱可能に装着する方式、
(b)上記反応槽の外周の上記筒状の枠および上記熱交換槽の上記筒状の反応槽受け口をそれぞれテーパー状にして、上記反応槽受け口に対して上記反応槽を着脱可能に圧着させる方式、
(c)上記反応槽がチップ状の形態を有し、該反応槽チップをスライドガラス状の反応槽枠内に固定し、上記熱交換槽の反応槽受け口にガイドレールを設け、該ガイドレールに沿って上記スライドガラス状の反応槽枠を着脱可能に装着する方式、および
(d)上記スライドガラス状の反応槽枠を、ヒンジを有するスライド受けに挿入し、該ヒンジ機構に基づいた回転動作により、上記スライドガラス状の上記反応槽枠を上記熱交換槽の上記反応槽受け口に対して着脱可能に装着する方式、
のうちのいずれかである、上記(12)に記載の液体還流型反応制御装置。
(14)さらに、上記液体が還流している状態でありながら、上記液体を上記液体還流型反応制御装置の外部に漏らすことなく上記反応槽を上記熱交換槽から着脱することを可能とするために、上記熱交換槽が上記反応槽および上記反応総枠の着脱時に上記熱交換槽内の液体を排出するための空気導入口と液体排出口とを備えている、上記(12)または(13)に記載の液体還流型反応制御装置。
(15)上記液体リザーバタンクの上記熱源が、熱対流を効果的に利用するために該液体リザーバタンクの底面に配置されており、該液体攪拌機構は該液体リザーバタンク内の液体を連続的もしくはデュティーサイクル比10%以上で攪拌することにより、該液体リザーバタンク内の該液体の温度分布を5℃以内に抑制できる、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(16)上記切り替えバルブにより、上記複数の液体リザーバタンクのうち、任意の液体リザーバタンクの液体を上記熱交換槽に導くことができ、上記熱交換槽中の上記液体を元の液体リザーバタンクに戻すことができる、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(17)上記切り替えバルブの制御により上記熱交換槽内の上記液体を置換する際、上記熱交換槽内部の上記液体はその温度に最も近い温度に保持されている液体リザーバタンクに導かれる様に上記切り替えバルブが制御される、上記(15)または(16)に記載の液体還流型反応制御装置。
(18)前記補助温度制御機構が、断熱材、ヒーター、および冷却機構を含み、上記熱交換槽から戻ってきた液体の温度を、還流先の上記液体リザーバタンク内の液体の温度と同じ温度にし、上記切り替えバルブと上記液体リザーバタンクとを結合する上記流路内部の上記液体の温度の変動を抑制する、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(19)さらにバイパス流路を備え、上記切り替えバルブと上記液体リザーバタンクとを結合する上記流路内部の上記液体が、上記バルブの切り替えによって上記熱交換槽に導かれることなく上記バイパス流路を通って上記液体リザーバタンクへ還流し、上記液体リザーバタンクからの液体と連続的に置換されることにより、上記流路内を還流する液体の温度の変動が抑制されている、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(20)上記切り替えバルブが、断面が円もしくは多角形の中空構造中をスライドするピストンから構成されており、該ピストンの位置によって上記反応槽に接する液体の温度を制御する、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(21)上記切り替えバルブにおいて、上記ピストンが、
(a)該ピストンに接続されたピストンロッドに対して機械的に外力を加えることによって、
(b)自体磁性体であるピストンもしくは磁性体が内部に装着されたピストンを使用して、該ピストンと上記切り替えバルブ外部に配置された電磁コイルとを含む磁場発生機構との相互作用によって、または
(c)ピストン両端に上記循環する液体の流れによる圧力差を生じさせることによって、
スライドする、上記(20)に記載の液体還流型反応制御装置。
(22)上記切り替えバルブにおいて、
円柱状、円盤状、円錐状の回転体であって、上記液体リザーバタンクから送られた液体の流路となる複数の溝が外表面に形成され、さらに上記溝のそれぞれに流体連絡可能に接続されたトンネル状の流路が形成された回転体が、上記熱交換槽に回転可能に挿入されており、
上記トンネル状の流路の端がそれぞれ上記切り替えバルブのインレットまたはアウトレットとして機能し、
上記回転体が回転することにより、上記インレットに導入される異なる温度の液体が上記溝部分を流れる際に反応槽外部に接触する、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(23)上記循環させる液体として、熱容量が大きく、かつ粘性が低い液体を用いる、上記(1)〜(22)に記載の液体還流型反応制御装置。
(24)上記循環させる液体として、沸点が水の沸点より高い液体を用いる、上記(1)〜(23)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(25)上記循環させる液体として、凝固点が水の凝固点より低い液体を用いる、上記(1)〜(24)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(26)上記循環させる液体を送液する手段としてシリンジポンプを用いる、上記(1)〜(25)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(27)上記(1)〜(26)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置を用いてPCRを行う方法であって、
インターカレーター型蛍光色素を用い、
上記蛍光検出手段により、PCRの伸長反応終了時で、かつ、熱変性を行う前のタイミングで、かつ特定の反応液の温度で蛍光検出を行うことを含む、方法。
(28)上記(1)〜(26)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置を用いてPCRを行う方法であって、
特定の蛍光波長を有するプローブ蛍光色素を用い、
上記蛍光検出手段により、PCRの伸長反応終了時以降で、次の伸長反応を開始する前のタイミングで、かつ特定の反応液の温度で蛍光検出を行うことを含む、方法。
【0011】
上記[2]の「RNA検出を可能にするPCR反応前の逆転写反応プロセスの導入を含めた前処理機構」、および[3]の「融解曲線分析機能」に関連して、本発明は、以下の液体還流型反応制御装置を提供する。
【0012】
(29)上記反応槽および/または上記熱交換槽がさらに温度センサーを備え、
上記液体リザーバタンクに付加した上記熱源および上記冷却機構を、上記液体リザーバタンクおよび上記反応槽および/または上記熱交換槽に配置した上記温度センサーによってフィードバック制御して、上記液体リザーバタンクの温度を所定の温度に制御する、上記(1)〜(26)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(30)上記反応槽および/または上記熱交換槽がさらに温度センサーを備え、
上記熱交換槽がさらに温度制御装置を備え、
上記切り替えバルブ機構によって上記熱交換槽への液体の流入を停止した場合に、上記反応槽および/または上記熱交換槽に配置した温度センサーおよび上記温度制御装置により上記熱交換槽内に静止した液体の温度を所定の温度に制御する、上記(1)〜(26)のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
(31)上記反応槽チップを搬送するガイドレールの一部に、反応槽チップと接触して反応槽チップの温度を一定温度に保ち、反応槽チップ上の反応液の蒸発を防ぐために反応槽枠内の温度を所定の温度に保つための温度プレートおよび温度センサーを備えた、上記(13)記載の液体還流型反応制御装置。
(32)上記(29)または(30)に記載の液体還流型反応制御装置を用いて融解曲線解析を行う方法であって、
上記各温度センサーで上記各液体の温度をモニターしつつ、上記液体リザーバタンクと上記反応槽との間で液体を還流させて、上記反応槽に保持した蛍光色素を含むサンプル液の温度を所定の温度範囲内で所定の温度変化率で変化させる工程、
上記サンプル液の温度変化に伴う上記蛍光色素の強度変化を光学計測モジュールを用いて計測する工程、および
上記サンプル液の温度と上記蛍光色素の強度との相関関係を解析する工程
を含む、方法。
(33)上記(31)に記載の液体還流型反応制御装置を用いてRT(逆転写)−PCRを行う方法であって、
上記各温度センサーで上記各液体の温度をモニターしつつ、上記液体リザーバタンクと上記反応槽との間で液体を還流させながら、
上記ガイドレールの上記温度プレート上に上記反応槽を配置して、上記反応槽に保持したRNAおよびDNAポリメラーゼを含むサンプル液の温度を逆転写に適した第1の温度で所定の時間保持する工程、
上記工程後、上記ガイドレールに沿って上記反応槽をスライドして上記反応槽と上記還流する液体とが接触する状態にし、第2の温度での所定時間の熱変性プロセス、第3の温度での所定時間のアニーリングプロセス、および第4の温度での所定時間の伸長プロセスからなる増幅サイクルを所定回繰り返す工程、
を含む、方法。
【0013】
上記[4]の「液滴保持と光学計測に最適なチップ技術とPCR反応の光学的計測機能」に関連して、本発明は、以下の液体還流型反応制御装置および方法を提供する。
【0014】
(34)上記反応槽の上記各ウェルのサンプル配置場所に、測定中のサンプルの位置を保持するための支柱(ピラー)が配置されている、上記(1)〜(26)および(29)〜(30)のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
(35)上記反応槽の上記各ウェルのサンプル配置場所に支柱(ピラー)が配置されており、該ピラーに支えられるようにサンプル液蒸発防止用のシール剤が該ウェルに被せられており、該ピラーによって測定中の上記サンプル液が上記蒸発防止用のシール剤に付着することを防がれている、上記(1)〜(26)および(29)〜(30)のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
(36)上記反応槽の各ウェルのサンプル配置場所に、サンプルの測定蛍光波長とは異なる蛍光試料を混ぜた(または結合させた)支柱(ピラー)が配置されており、サンプルの蛍光強度の参考蛍光強度(リファレンス)として利用することができる、上記(1)〜(26)および(29)〜(30)のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
(37)上記反応槽の各ウェルのサンプル配置場所に、サンプルの測定蛍光波長とは異なる蛍光試料を混ぜた(または結合させた)支柱(ピラー)が配置されており、増幅させる試料のDNAがハイブリダイゼーションできるプローブあるいはプライマーを上記ピラー表面に結合させることで、上記ピラー表面近傍で反応中の蛍光を発するようにし、上記ピラーを蛍光増強の誘導管として使用することができる、上記(1)〜(26)および(29)〜(30)のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
(38)上記反応槽が、複数の光学的に透過性の平板状材料を貼り合わせたチップ状反応槽であって、少なくとも1つの上記平板状材料が微細加工されてサンプル液を毛細管現象によって導入し封入できる反応液の微小流路とリザーバが形成されているチップ状反応槽である、上記(1)〜(26)および(29)〜(30)のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
【0015】
(39)サンプル液を保持するための1または複数のウェルを備えたサンプル保持部と、上記サンプル液の水に吸収を有する赤外レーザ光を発するレーザ装置と、該レーザ装置からのレーザ光の強度を連続的に変化させることが可能なグレイスケールNDフィルター円盤と、該円盤の回転速度を制御する回転制御機構と、上記レーザ光を上記グレイスケールNDフィルター円盤を経由して上記ウェルの上記サンプル液に導くための光学系と、上記ウェルの温度を制御するための温度制御機構と、上記ウェル内の上記サンプル液の光学イメージを計測する光学カメラを含む光学測定装置とを備える、液体反応制御装置。
(40)サンプル液を容れるための1または複数のウェルを備えた反応槽と、
上記反応槽に熱を伝導しうるように該反応槽に接して設けられ、所定の温度の液体をそれぞれ導入および排出するためのインレットおよびアウトレットを備えた熱交換槽と、
液体を所定の温度に保つための温度制御可能な熱源および温度センサーを備えた液体リザーバタンクと、
上記熱交換槽の上記インレットおよび上記アウトレットと上記液体リザーバタンクとの間を接続する管状流路と、
上記管状流路上に設置された、上記熱交換槽と上記液体リザーバタンクとの間で上記液体を循環させるためのポンプと、
上記サンプル液の水に吸収を有する赤外レーザ光を発するレーザ装置と、
上記レーザ装置からのレーザ光の強度を連続的に変化させることが可能なグレイスケールNDフィルター円盤と、
上記円盤の回転速度を制御する回転制御機構と、
上記レーザ光を上記グレイスケールNDフィルター円盤を経由して上記ウェルの上記サンプル液に導くための光学系と、
上記ウェル内の上記サンプル液の光学イメージを計測する光学カメラを含む光学測定装置とを備える、液体還流型反応制御装置。
(41)上記(1)〜(26)、(29)〜(31)、および(34)〜(40)のいずれかに記載の反応制御装置を用いてPCRを行う方法。
(42)上記(41)に記載の方法であって、
上記反応槽の複数のウェル上を光学検出器で移動操作することで該光学検出器数以上のサンプル数を測定する、方法。
【発明の効果】
【0016】
還流する液体で反応槽の温度を制御する本発明の利点として、1)厳密な温度制御、2)安定した温度維持、3)目標温度への移動時にオーバーシュートが無いことが挙げられる。温度のオーバーシュート問題を解決することができることについては、常に還流している液体の温度はほぼ一定であることから、反応槽表面の温度と液体の温度はほぼ瞬時に平衡化することができる。本発明において、反応槽およびサンプルの熱容量は、還流している液体と比較して微々たるものであり、また、局所的に液体から熱が奪われたとしても液体は連続して流れてくることから、熱勾配は基本的に発生しない。勿論、反応槽の温度は液体の温度を超えることはない。本発明によれば、異なる温度の液体を熱交換槽に順次に流し込むことにより、0.5秒以内に30℃以上温度を変化させることが可能である。したがって、本発明によれば、温度変更に必要な時間を極めて短くできることから、例えば、PCR反応を遂行するためのトータルタイムを従来の装置よりも格段に短縮することが可能である。
【0017】
本発明に従った反応制御装置においては、熱伝導率に優れた反応槽の外部に一定温度の保持された液体を接触させ、さらに異なる温度の液体で迅速に置換することにより、サンプル温度を高精度で制御すること、および迅速な昇温、降温が可能となる。本発明によれば、高速、高精度、高増幅率のPCR反応を行うことができる。
【0018】
また、本発明は、サンプル溶液が加熱されることによるサンプル液の蒸発を防ぐことができるため、微量のサンプルを使用するPCR反応において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の反応制御装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の反応制御装置に使用される熱交換槽の概略図である。
【図3】本発明の反応制御装置に使用される反応槽の形態と凍結乾燥試薬の溶解方法を示す模式図である。
【図4】本発明の反応制御装置に使用される円柱型反応枠と熱交換槽への取り付け方法を示す模式図である。
【図5】本発明の反応制御装置に使用されるバルブの切り替えシーケンスを示す模式図である。
【図6】本発明の反応制御装置を用いて行った(A)温度変化に関するデータと、(B)PCR反応の結果を示す図である。
【図7】本発明の反応制御装置に使用されるスライドガラス型反応枠と熱交換槽への取り付け方法を示す模式図である。
【図8】本発明の反応制御装置に使用されるスライド型ピストンバルブの駆動機構を示す模式図である。
【図9】本発明の反応制御装置に使用されるスライド型ピストンバルブの駆動機構を示す模式図である。
【図10】本発明の反応制御装置に使用される回転式バルブの駆動機構を示す模式図である。
【図11】本発明の反応制御装置に使用されるメンブレンによる温度変化機構を示す模式図である。
【図12】本発明の反応制御装置に使用される温度設定型バルブの駆動機構を示す模式図である。
【図13】本発明の反応制御装置の構成の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の反応制御装置の反応槽の構成の一例を示す模式図である。
【図15】本発明の反応槽における、反応槽チップの搬送系ならびに逆転写反応を行う装置構成の一例を示す模式図である。
【図16】本発明の反応槽における試料の蛍光検出方法の構成の一例を示す模式図である。
【図17】本発明の反応槽における試料の蛍光検出方法の構成の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の反応槽の構造の一例を示す模式図である。
【図19】本発明の反応槽の構造の一例と検出方法の一例を示す模式図である。
【図20】本発明の反応槽の構造一例を示す模式図である。
【図21】本発明の反応制御装置の構成の一例を示す模式図である。
【図22】本発明の反応制御装置の構成の一例を示す模式図である。
【図23】本発明の反応制御装置の構成の一例でのNDフィルターの透過率の角度依存性を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、これらの実施形態は例示であって、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の反応制御装置の一実施形態の全体構成を示す模式図である。本発明の反応制御装置は、典型的には、反応槽(reaction vessel)1、反応槽枠2、熱交換槽(heat exchange vessel)3、液体リザーバタンク(liquid reservoir tank)4、熱源5、攪拌機構6、ポンプ7、切り替えバルブ8、バイパス流路9、および補助温度制御機構10を備える。好ましくは、さらに蛍光検出器201、および制御信号203を送るための制御解析部202、および光学窓(または孔)204を備える。
【0022】
好ましい実施形態では、複数の液体リザーバタンク4は、液体の高速循環中に各タンク中の液体の高さに違いが発生してこれが水位高さの違いによる圧力差を発生させないように、微量の液体がタンク間を移動できる細い連結チューブ15によって接続されている。また、短時間で熱交換を実現するためには、図1に示されているように、各リザーバタンク4から常時、ポンプ7によって液体を循環させ、熱交換槽3に誘導しない場合も、切り替えバルブ8によってバイパス流路9に液体を誘導して常に循環させる。また、循環する液体は、リザーバタンク4に戻る前に補助温度制御機構10によって、リザーバタンク4の液体の温度と同じ温度となるように微調整をして還流するように配管されている。ここで補助温度制御機構10は、加温機構と冷却機構が組み込まれており、ペルチエ素子等によって加温と冷却の両方を実現する事も、あるいは抵抗加熱機構による加温系と空冷フィン型の冷却機構を用いる事も可能である。また、液温度センサー16が、各リザーバタンク4および各補助温度制御機構10に配置されており、これらのセンサーからの温度情報から液温度を各々希望する温度に制御できるように熱源5および補助温度制御機構10を制御することができる。ここで液温度センサーは、液体に直接接触しても腐食しない素材よりなるサーミスタあるいは防蝕被覆された熱電対などを用いる事が望ましい。
【0023】
また、好ましい実施形態では、各リザーバタンクには、熱源からの熱供給によって発生する水蒸気等の気体によるリザーバタンク内の圧力上昇があった場合に、タンクの破壊を防止し、また、気体の圧力差に原因した連結チューブを通じての液面高さの発生を防ぐために、発生した気体を効果的にタンク外に排出する圧力リーク弁2003を配置している。
【0024】
反応槽1は、典型的には、窪み(ウェル)を複数個有するアルミ、ニッケル、ないし金の薄板などから構成されている。窪み領域における薄板の厚さは、熱伝導性を高めるため周囲に比べて薄く構成されていることが好ましく、典型的には10から30ミクロン程度の厚さであるがこれに限定されない。隣り合った窪みの間の領域は全体的に強度を担保するためにより厚くなっていることが好ましく、典型的には、厚さが100ミクロンから500ミクロンの範囲にあるがこれに限定されない。反応槽1は、典型的には、四角、円形などの形状の反応槽枠2の底面に固定されて一体的に形成される。反応槽1および反応槽枠2は、典型的には、熱交換槽3に対して着脱可能に構成される(図4を参照)。
【0025】
熱交換槽3に導入される液体の温度は、液体リザーバタンク4の内部に配置されている熱源5により制御されている。好ましくは、熱源5の表面から迅速に熱を奪い、液体リザーバタンク4内部の温度を均一にするために、攪拌機構6が備えられている。液体リザーバタンク4中の液体はポンプ7により流路内部に導かれる。切り替えバルブ8によって、液体は熱交換槽3に導かれるか、バイパス流路9に導かれて熱交換槽3を経ずに直接液体リザーバタンク4に戻る。必要に応じて、補助温度制御機構10によって、循環中に変化した液体の温度をタンク4内の設定温度と同じ温度に修正してから排出されるように緻密に制御され、液体リザーバタンク4内部の温度変動を抑制する。
【0026】
熱交換槽3に導入される液体としては、水を用いてもよいがこれに限定されず、熱容量が大きく、かつ、粘性が低い液体(例:液体アンモニア)ならば任意のものを用いることができる。ただし、安全性の観点から非毒性、非可燃性の液体を用いる事が望ましい。また、例えば、水より沸点の高い液体を用いることで、確実に、サンプル液を100℃にしたり、あるいは、水より凝固点の低い液体を用いることで、装置内で循環する液体の凝固を防ぎながら水の凝固点までの温度の変化を確実に行うこともできる。
【0027】
好適には、図1に示すように、反応槽枠2には、反応槽1内のサンプル液の反応によって変化するサンプル液中の蛍光色素の蛍光強度の変化を、1つあるいは複数の反応槽の各々について計測できるように、蛍光色素の励起光ならびに蛍光を透過する光学窓204が配置されている。また、蛍光検出器201が配置されることで、計測された各反応槽1の蛍光強度の時間変化を計測することができる。図1の実施例では、複数の蛍光検出器201各々の内に、励起光照射機構と、蛍光検出機構が具備されており、例えば、PCR反応を行わせる場合には、異なるプライマー、あるいは異なるサンプル液を滴下した複数の反応槽1の各々の異なるPCR増幅情報を独立して計測することができる構成となっている。また、蛍光検出器201で取得された蛍光強度データは、制御解析部202で記録され、PCR反応によって得られたサンプル液内のDNA量、あるいは、mRNA量を見積もる機能を有する。さらに、制御解析部202では、切り替えバルブ8の切り替え情報を取得することで、バルブ切り替え後のサンプル液の温度変化が目的の温度に達したかどうかを、蛍光強度の時間変化から見積もる機能、およびその結果に基づいてバルブ切り替えを制御する機構も有する。これは、蛍光色素が普遍的にもつ水分子の運動に基づいた蛍光消光が液温に依存することを利用して、蛍光強度の単位時間での変化量が小さくなること、あるいは、ゼロとなることから見積もるものであり、特に、DNAを変性させる高温状態の達成の確認に有効である。
【0028】
また、図1に示す実施例では、各反応槽1に1つの検出器を配置する構成を示したが、蛍光励起用光源と冷却CCDカメラなどの蛍光定量検出が可能なカメラを組み合わせて複数の反応槽1の蛍光強度変化を計測してもよい。あるいは、反応槽1の数より少ない検出器を用いる場合には、X−Y面で高速に移動することができる機械式駆動機構を検出器と組み合わせることで、すべての反応槽1の蛍光強度を計測してもよい。
【0029】
また、サンプル液の容量は、1ウェル当たり0.1μL〜100μLの範囲を使用することができるが、これに限定されない。好ましいサンプル液の容量は、1ウェル当たり0.1〜数十(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20、10)μLであるが、必要に応じて、さらに低容量で、例えば、1ウェル当たり0.5μL〜10μL、1ウェル当たり1μL〜5μL、1ウェル当たり1μL〜2μL等での使用も好適である。ウェルにはサンプル液の他に、サンプル液の蒸発を防ぐためのミネラルオイルなどを含有させてもよい。ミネラルオイルの容量としては、数μL(例:3〜4μL)程度が好ましいが、これに限定されず、ウェルの大きさやサンプル量により適宜変更しうることは当業者に明らかである。
【0030】
図2は、本発明の反応制御装置に使用される熱交換槽3の概略図である。熱交換槽3は、基本構成として、異なる温度の液体を導入するインレットA(11)、インレットB(12)を備える。また、熱交換槽3は、熱交換槽3の液体を液体リザーバタンク4に戻すための複数のアウトレット、アウトレットA(13)およびアウトレットB(14)を備える。図2Aは、液体リザーバタンク4からのある温度の液体をインレットA(11)から導入し、アウトレットA(13)から排出する様子を、図2Bは、液体リザーバタンク4からの別の温度の液体をインレットB(12)から導入し、アウトレットB(14)から排出する様子を、それぞれ模式的に示す。インレットの数は2に限定されず、サンプル液の温度を変化させたい複数の温度に一致する数だけ2温度分以上の複数を用意することができる。例えば、3温度系を達成したい場合にはインレットの数は3つとなる。アウトレットの数もインレットの場合と同様、2に限定されない。なお、図2中の矢印は熱交換槽3に導入または熱交換槽3から排出する液体の流れる方向を大まかに示したものである。
【0031】
熱交換槽3と液体リザーバタンク4との間を循環させる液体の総容積は、循環に用いる液体の流速、液体の熱容量や温度の安定性などを考慮して、例えば、反応槽3の温度変化の高速性と温度安定性を実現するために流速毎秒10mL以上とした場合には、通常数十mL以上の総容量であり、好ましくは、100mL以上、より好ましくは、200mL以上、さらに最も好ましくは、300mL以上である。容積の上限は、装置の可搬性等を考慮して適宜設定できる。
【0032】
熱交換槽3の容量は、ウェル当たりのサンプル量の約10倍以上が好ましく、約100倍以上であることがより好ましく、約1000倍以上であれば最も好ましい。典型的には、熱交換槽の容量は、1ウェルに対して約0.01mL〜10mLであり、より好ましくは、約0.05mL〜数mL(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1mL)であり、最も好ましくは、約0.1mL〜2mLである。
【0033】
図3は、本発明の反応制御装置に使用される反応槽の形態と凍結乾燥試薬の溶解方法を示す模式図である。色々な形状の反応槽またはウェルを用いることが可能であり、図3Aは一つの例として、熱交換槽の液体と接する面が、フラットな反応槽A(21)、半球状である反応槽B(22)、三角錐状である反応槽C(23)、球状である反応槽D(24)、球状の凹みの中に円錐状の構築物を持った液滴の安定した位置の保持と接触表面積の拡大を可能とした反応槽C’(231)を、それぞれ示している。熱伝導の効率を考えると、熱交換槽の液体と接する面の面積が大きいほど効率がよいことは当業者ならば容易に理解できる。
【0034】
反応に必要な試薬は凍結乾燥しておくと便利である。図3Bに示すように、反応槽26の底部に凍結乾燥試薬25を調製しておくことは可能である。また、サンプルを分注する際に用いられる分注チップ27内部にプラグ状の凍結乾燥試薬25を形成しておけば、サンプル液28を上下に移動させることにより試薬をサンプル中に溶解することが可能である。または、ナイロン繊維等が束ねられている繊維玉29表面に凍結乾燥試薬25を形成しておき、反応槽26内部のサンプル28中に挿入して攪拌することにより凍結乾燥試薬を溶解することも可能である。
【0035】
図4は、本発明の反応制御装置に使用される円柱型反応槽枠32、およびその熱交換槽37への取り付け方法を示す模式図である。薄膜から構成されている反応槽を直接ハンドリングするのは不便であるので、図4Aに示すように、反応槽31を反応槽枠32に固定すると便利である。反応槽枠32は断熱性材質であるポリスチレン、ポリカーボネート、PEEK,アクリル等で形成することが望ましい。また、反応槽31との結合面積をできるだけ小さく(例:5mm以下)抑えることが、反応槽31の迅速かつ高精度な昇温、降温に望ましい。
【0036】
図4Bは、反応槽31を熱交換槽37に装着する1つの態様として、反応槽枠32の表面にネジ山34を形成しておき、反応槽枠32を熱交換槽37の反応槽受け口33にねじ込む方法を示す。図4Bに示すように、水密性の保持のために、開口部にシール35を装着することが望ましい。図4Cはさらに別の装着方法を示す。図4Cに示すように、テーパー状反応槽枠36を採用し、圧力のみで熱交換槽38に装着することも可能である。
【0037】
図5は、本発明の反応制御装置に使用されるバルブの切り替え機構の具体例を示す。反応槽に液体を導入するためのインレットバルブA(41)、インレットバルブB(43)、外部に導くためのアウトレットバルブA(42)とアウトレットバルブB(44)が示されている。インレットバルブA(41)から導かれる液体はアウトレットバルブA(42)から液体リザーバタンク4に戻り、インレットバルブA(43)から導かれる液体はアウトレットバウルB(44)から別の液体リザーバタンク4に戻る。この二つの状態を交互に繰り替えることにより、反応槽中のサンプルを反応することができる。さらに望ましいバルブ切り替え方法としては、上記の二つの状態以外に、インレットバルブB(43)とアウトレットバルブA(42)、もしくはインレットバルブA(41)とアウトレットバルブB(44)が一瞬の間同時に開放することにより、異なる温度の液体が混合することを抑制でき、それぞれの系の液体リザーバタンクの温度制御が容易になる。
【0038】
液体の循環速度は、特に限定されないが、通常約1mL/秒〜100mL/秒であり、より好ましくは、5mL/秒〜50mL/秒であり、最も好ましくは、7mL/秒〜15mL/秒である。リザーバタンク中の液体の温度を低下させることなく熱交換槽3まで循環させるためには、液体がポンプ7によって常にリザーバタンクから10mL/s以上の高速で循環することが望ましい。
【0039】
図6Aは、上記の機構を用いることによって実現できた温度制御に関するデータから得られたグラフを示す。図6Aに示すように、1.5秒といった短時間で、温度を60℃から92℃に昇温させ、また60℃に戻すことが可能である。図6Bは、リアルタイムPCRによる結果を示すグラフである。PCRを行うときの溶液条件は以下のとおりである。反応バッファー 1.0 μL、2mM dNTP (dATP、dCTP、dGTP、dTTP) 1μL、25 mM 硫酸マグネシウム 1.2 μL、10%牛胎仔血清 0.125μL、SYBR Green I 0.5 μL、プライマー2種類各0.6μL、 滅菌水 3.725μL、KOD plus polymerase 0.25μL、ゲノムDNA1.0 μLの割合で混ぜ合わせた。温度条件としては、まず95℃ 10 sec行い、次に95℃ 1 sec、60℃ 3 secの温度変化を40サイクル行った。液体の循環速度は、約10mL/秒であった。
【0040】
図7は、本発明の反応制御装置に使用される反応槽59および反応槽枠51の熱交換槽への脱着方法に関するバリエーションを示す。反応槽59は、スライドガラス型反応槽枠51に張られて取り付けられている(図7A)。このスライドガラス型反応槽枠51を熱交換槽に装着するにあたって、ガイドレール53に沿って反応槽枠51を横にスライドさせ、シール54に押し付けて固定することができる(図7B)。または、スライドガラス型反応枠51をスライド受け口55に挿入して、ヒンジ56を活用して、シール57に押し付けることも可能である(図7C)。
【0041】
図8は、本発明の反応制御装置に使用されるバルブの切り替え機構のバリエーションを示す模式図であり、図5に示したものとは異なるスライド型ピストンバルブの駆動機構を示す。反応槽66の温度を変えるバルブ機構として左右にスライドできるピストン65を用いる。ピストン65の左側にはインレットA(61)から熱交換槽67に液体が導入され、アウトレットA(62)から外部に導かれる。ピストン65の右側にはインレットB(63)から熱交換槽67に液体が導入され、アウトレットB(64)から外部に導かれる。ピストン65が反応槽66に対して右にスライドすると、反応槽66はインレットA(61)から導入された液体の温度と平衡に達し、逆に左側にスライドするとインレットB(63)から導入される液体の温度と平衡に達する。また、ピストン65が反応槽66の真下に位置する場合には、液体が漏れることなく反応槽66を外すことができる。ピストン65は断熱性に勝れた素材で製作するか、内部が空洞になっており気体で満たされていたり、または真空状態にあることが望ましい。なお、図8中の矢印は、液体の流れる方向を大まかに示す。
【0042】
図9は、本発明の反応制御装置に使用されるピストンバルブのピストンの駆動機構のいくつかのバリエーションを示す。一つの方法としては、ピストン71がピストンロッド72と一体になっており、外部から直接動かす方法である(図9A)。別の方法としては、ピストン73を鉄、ニッケル等の強磁性材料で作製するか、その他の素材で作製されたピストンの内部に磁石74を組み込む。外部に電磁コイル75を設置し、電流を制御することにより、ピストン73を左右にスライドする(図9B)。さらなる方法としては、インレット側の圧力もしくはアウトレットの流体抵抗を制御することにより、ピストン76の両側での圧力差を利用してピストン76を左右にスライドすることも可能である(図9C)。なお、図9中の白抜き矢印はピストンの動く方向を示し、黒塗り矢印は、流体の流れを示し、矢の向きによって流体の流れる方向を、矢の太さによって流量を大まかに示す。
【0043】
図10は、本発明の反応制御装置に使用されるバルブの切り替え機構の別の形態を示す。回転軸としての棒82が結合されている傾いた楕円形の板からなる回転弁81が、断面が円形の熱交換槽83内部に挿入されている。回転弁81は熱交換槽83を左右に分断しており、回転軸82を回すことにより、熱交換槽の右もしくは左から導入される液体を反応槽84に導くことができる。図10における回転弁81の形状としては、傾斜した平板であるが、その他の螺旋ネジ等の形状も可能であり、回転軸を回転させることにより同様な効果を生み出す形状であればよい。なお、図10中の黒塗り矢印は回転軸82の回転方向を示し、白抜き矢印は、液体の流れる様子を大まかに示す。
【0044】
図11は、バルブ以外の構造により液体を置換する構造を示す。熱交換槽98はメンブランA(95)とメンブランB(96)によって仕切られている。インレットA(91)から導入された液体はアウトレットA(92)により外部に導き出される。メンブランが存在するが故、インレットB(93)やアウトレットB(94)から導き出されることはない(図11A)。インレットA(91)から導入される液体の圧力が、インレットB(93)から導入される液体の圧力に勝る場合には、メンブランA(95)とメンブランB(96)を左側に押し出すことによって、インレットA(91)から導入される液体の熱が反応槽97に伝わる(図11B)。インレットA(91)とインレットB(93)から導入される液体の圧力の関係が逆の場合には、反応槽97の温度はインレットB(93)から導入される液体の温度と平衡状態に達する(図11C)。メンブランは耐熱ゴム等、耐熱性に優れた薄い膜から作製することが望ましい。なお、図11中の矢印は、液体の流れる方向を大まかに示す。
【0045】
図12は、本発明の反応制御装置に使用される温度設定型バルブのさらに別の駆動機構を示す模式図である。本発明においては、設定できる温度は二つに限定されるものではない。図12には、反応槽の温度を3つ以上設定できる構造を示す。熱交換槽103には、側面に溝102が形成されたロータリーバルブ101が挿入されている。ロータリーバルブ101の両側にはインレットとアウトレットが設けられており、例えばインレットA(104)から導入された液体は流路108を経て溝102に流れこみ、反応槽109に熱を伝えてからアウトレットA(105)から外に導かれる。それに対して、インレットB(106)から導入された液体は反応槽109に接することなく、アウトレットB(107)から外に導かれる。しかし、ロータリーバルブ101を回転することにより、任意のインレットから導入された液体を反応槽と接することが可能である(図12C)。経過時間111に伴ってロータリーバルブ101を回転することにより、図12Cのグラフに示すように温度110を変化させることが可能である。ロータリーバルブ101は断熱性材料から作製されていることが望ましい。
【0046】
図13は、本発明の反応制御装置の3温度型のシステムの制御系部分の記述を省略した温度制御機構について一実施形態の全体構成を示す模式図である。本発明の高速PCR反応を起こすための反応制御装置部は、典型的には、高速で循環する液体とPCR反応液滴との熱交換を行うための反応槽(reaction vessel)1、反応槽上のPCR反応液滴への外部からのコンタミネーションと液滴の蒸発を防ぐための反応槽枠2、熱交換のための高速循環液体が導入される熱交換槽(heat exchange vessel)3、3つの温度の液体をそれぞれの温度で保持する3つの液体リザーバタンク(liquid reservoir tank)4、ならびに各リザーバタンクに対して熱源5、攪拌機構6、ポンプ7、切り替えバルブ8、バイパス流路9、および補助温度制御機構10を備える。高速PCRを実現するためにそれぞれのリザーバタンクから液体は、液体の流れの方向18の矢印の方向に循環しており、ジョイント90にて各リザーバタンクから各切り替えバルブ8を経て流路が接合され、熱交換槽3への流路へと誘導される構成となっており、また、熱交換槽3から流出する液体も下流側のジョイント90にて各リザーバタンクへの還流流路に分岐しており、熱交換槽3の上流側と下流側の双方の各分岐流路にある各切り替えバルブ8を、同時に連動させて高温、中温、低温の各リザーバタンク4のいずれかの液体の循環のために切り替えることで、瞬時に熱交換槽3へ導入される高速循環液体を高温、中温、低温のいずれかに切り替えることができる。ここで、図13では装置の構成ならびに配管の配置をわかりやすく示すために模式的に示した事から、各パーツ間の配管の長さが実際の長さと同じように示されていないが、ジョイント90と各切り替えバルブ8の間を繋ぐ管の長さは、残留する高速液体の量がほとんど無いようにジョイント90に隣接するかたちで切り替えバルブ8は配置されていることが好ましい。また、各リザーバタンク4から熱交換槽3に供給される高速循環液体の温度降下を最小限とするため、各リザーバタンク4から熱交換槽3への流路長さが最小長さとなるように、各リザーバタンク4と熱交換槽3の間に組み込まれるパーツはポンプ7、切り替えバルブ8の2つのパーツ(機構)が組み込まれているだけの最少数のパーツ組み込みの構成となっていることが好ましい。他方、熱交換槽3から各リザーバタンク4に還流する流路の長さについては若干長くなっても下流補助温度制御機構10によって温度補正をした後にリザーバタンク4に還流するため問題はない。また、ポンプ7の配置位置は、熱交換槽3に確実に流速を維持して高速循環液体を供給し、また、熱交換槽3に供給しないときは切り替えバルブによって瞬時に、かつ、確実に補助温度制御機構10を経て各リザーバタンクに還流させるために、ポンプ7を各リザーバタンク4と熱交換槽4に供給する上流側の切り替えバルブ8の間に配置し、常に高速還流液体をリザーバタンク4から直接「押し出す」構成となるように配置されていることが好ましい。また、各リザーバタンク4から熱交換槽3へ供給される高速循環液体の温度降下を最小限にするため、これらの流路についての流路内径は2mm以上であることが望ましい。
【0047】
図1の例でも説明したが、各リザーバおよび各補助温度制御機構には、液体の温度を計測する液温度センサー16が配置されており、このセンサー16の各情報に基づいて、各リザーバタンク4の熱源5による温度制御、および各補助温度制御機構10を通過する液体の温度をリザーバタンク4の温度と同じ温度に微調整することができる。また、この補助温度制御機構10を導入する事で、リザーバタンク4の温度緩衝機能は最小とすることができるため、リザーバタンク4の容量、すなわち循環する液体量を最小に保つ事が可能となる。また、本実施例では、図1の実施例の二温度PCR反応に対して、変性、アニーリング、伸長の3つの状態それぞれに対応する3温度PCR反応を実現できる構成となっている。ここで、高温、中温、低温の3温度の制御についてであるが、高温については(図13では中央のリザーバタンク4)変性のために95℃以上の高温を保つためリザーバの温度も加温系のみで十分であるが、中温、低温リザーバについては、用いる酵素の種類に応じて、その反応温度すなわちリザーバ温度の微調整を行う必要がある場合がある。ここで、各リザーバタンク4内の液体の温度を上昇させることは熱源からの熱量の供給で容易に実現できるが、温度を下げる場合には、例えば、リザーバタンク4に付加された補助液体放熱機構17によって液温度を下げることができる。この補助液体放熱機構17は、リザーバタンク4内の液体の温度を下げたいときにのみ動作させ、機構内に組み込まれたポンプ系によって高速でリザーバ内の液体を吸入し、空冷式あるいはペルチエ素子等の冷却機構が組み込まれた流路を通過するプロセスで液体の熱を放熱し、最終的にリザーバタンク4内に設置された液温度センサー16によって設定した液温度になることが確認されるまで液体の冷却を行うことができる。
【0048】
そのため、各リザーバタンク4の液体は、図1から図6の説明でも記述したように、熱源5からリザーバタンク4に熱を供給して温度センサー16のフィードバック制御によって各リザーバの温度を高温(熱変性温度)、中温(伸長反応温度)、低温(アニーリング反応温度)に保つ。また、熱源の位置は、室温より高温での温度制御を行う事から、熱対流を効果的に行うために、リザーバタンク4の底面に配置する事が望ましく、また、リザーバタンク4内の液体の温度を熱対流のみならず、より高速に一様にするために攪拌機構6などの液体の温度分布を一様にする機構が動作することで一様になるように構成されている。そして、各リザーバタンク4から常時、例えば、流速10mL/秒でポンプ6によって液体が排出されており、そのポンプの後段に配置された切り替えバルブ8によって、液体を熱交換槽3に誘導しないときは、バイパス流路9を通って補助温度制御機構10に還流されて、液体の温度をリザーバタンク4の設定温度に微調整した後に、リザーバタンク4に還流される。すなわち、リザーバタンク4→ポンプ7→切り替えバルブ8→補助温度制御機構10→リザーバタンク4という循環を行って準備態勢を整えておく。他方、反応槽1の温度を、この液体の温度に変化させたいときには、ポンプ7後段の切り替えバルブ8を熱交換槽3方向に切り替え、かつ、熱交換槽3から排出される液体の流れ方向を制御する切り替えバルブ8も切り替えて、リザーバタンク4→ポンプ7→切り替えバルブ8→熱交換槽3→切り替えバルブ8→補助温度制御機構10→リザーバタンク4という循環として、反応槽1の温度を、所定のリザーバタンク4の液体の温度と同じ温度に変化させる。
【0049】
また、3つのリザーバタンク4において、この切り替えプロセスでの液体の還流に多少の量的なずれが発生するため、3つのリザーバタンクを独立して運用する場合には、反応プロセスを繰り返すうちに液面の高さに差が発生し、タンクからの液体の溢れ出しや、3つのタンクからの送液速度の違いが発生する可能性がある。それに対処するために、補助的に、液面高さを揃える機構として連結チューブ15が配置されていてもよい。この連結チューブ15は、液面高さを揃えることが目的であり、異なる温度の液体を積極的に移動する事を目的としていないため、十分に細いチューブであることが望ましい。また、その配置する位置は、各リザーバ4の底面付近が望ましい。
【0050】
3温度のリザーバタンク4を用いてPCR反応を行う場合について、図6Bの二温度の場合のPCR反応と同様に、典型的な例を用いて本装置システムの動作を説明する。ここでは、三温度PCR反応を以下のようなステップでの反応を行う。最初に初期反応として、反応を行う二本鎖DNAを熱変性させるために94℃以上の温度となるように95℃あるいは96℃に設定された高温リザーバタンク4から高温の液体を10秒以上還流し、反応槽1の温度を10秒以上94℃以上となるようにする。ここで、熱変性を行う場合の温度は、反応槽1全体の温度分布に差が発生する場合であっても最も温度の低い場所の温度が94℃以上となるように、上記高温リザーバタンク4の温度を設定するようにする。これによって一本鎖DNAが作られるとともに酵素類によってはこれによってPCR反応に必要な酵素類が活性化されることとなる。次に、プライマーとDNAを特異的に結合させるアニーリングの工程を反応槽の温度がおよそ60℃となるように液温度を60℃に設定した低温度のリザーバタンク4からの液体の還流によって反応槽1の温度を60℃にする循環を1秒行い、最後に、耐熱性DNAポリメラーゼによる相補DNA鎖の伸長反応をおよそ72℃に反応槽1がなるように、中温度のリザーバタンク4の温度が72℃となるように設定された条件で中温度のリザーバタンク4の液体の循環を3秒行い、伸長が終了したところで、再度、熱変性の工程を高温度リザーバタンク4からの95℃液体の循環1秒で94℃以上の温度に反応槽1温度を進め、次に、同様に、低温度60℃を1秒、中温度72℃を3秒という反応を1サイクルとして、およそ40サイクルほど反応を繰り返すことで、ターゲットとしたDNA配列領域の増幅を行うことができる。ここで、実際にリザーバタンク4の温度から温度の下降が発生しないように熱交換槽3に液を送るためには十分な高速で液体を還流する必要がある。本実施例では、液体の循環速度は、約10mL/秒で温度降下を防ぐかたちで温度変化を行わせる事が可能であった。また、上記実施例では、アニーリング温度は設計するプライマーによって最適なプライマーとの結合温度が異なるため、後で述べる融解曲線解析を用いて最適なアニーリング温度を算出して、その温度に低温度リザーバタンク4の温度を設定する事が望ましい。また、上記実施例では、伸長反応の時間を3秒と設定したが、これに限定されず、DNAポリメラーゼ酵素の伸長速度と標的配列サイズの関係から算出することで設定時間を適宜決定することができる。例えば、代表的なTaqポリメラーゼによるDNA伸長速度は、70℃において約60ヌクレオチド/秒であることから、この酵素の場合であれば、3秒の伸長反応でおよそ150〜180塩基長のターゲット領域を増幅することができる。そのため本発明の装置システムでの高速PCR反応を効果的に実現するためには、ターゲット領域を数百塩基長に絞り込んでプライマー設計を行う事と、目的に応じて最適なDNAポリメラーゼ酵素を選ぶこととなるが、なるべく高速な反応を行うポリメラーゼを用いる事が望ましい。
【0051】
また、上記3温度でのサイクルを行う場合に、エンドポイント型の計測と、実時間(リアルタイム)での増幅計測という少なくとも2つの計測法を組み合わせることができる。図1でも示したが、本発明の高速遺伝子増幅装置には、光学的にターゲット遺伝子産物の増幅をモニターする光学検出系を組み込むことが可能である。一般にインターカレーター型と呼ばれる二本鎖DNAの水素結合領域に取り込まれる事で蛍光強度が大きく変化する蛍光色素を用いた計測では、ターゲットDNA産物が二本鎖となっていることが産物の量を定量的に計測する上では重要である。そのため、エンドポイント型では、反応が終了した後に計測する事から、反応終了後に二本鎖DNAの状態での計測が可能な温度範囲で安定化させたところで計測するか、あるいは最後の増幅サイクルが終了した直後に、蛍光強度を測定し、増幅反応開始前の蛍光強度と比較解析することで二本鎖DNAによる蛍光強度の増幅量を見積もる事が望ましい。ここで重要な注意点として、蛍光色素は溶液中での蛍光強度が溶液温度に依存して変化する熱蛍光消光現象があることから、計測するときの温度は、かならず同じ温度で行う事が重要である。
【0052】
他方、実時間計測では、増幅サイクルごとの増幅量を見積もる事から、各サイクルでの計測が必要である。各サイクルでの計測するタイミングは上記伸長反応が終盤となり、ちょうど熱変性を開始する前に計測することが望ましい。ここでも同様に熱蛍光消光の影響を排除するために、各サイクルでの計測時の溶液温度は同じ温度とすることが望ましい。また、一般にタックマンプローブ法と呼ばれる、5’-3’エキソヌクレアーゼ機能を持ったDNAポリメラーゼと蛍光エネルギー移動に対応するためにドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素を組み込んだプローブDNA断片とを用いた計測の場合にも、5’-3’エキソヌクレアーゼ反応はDNAポリメラーゼの伸長反応時に進むことから、エンドポイント型では、計測開始前のドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素、それぞれの蛍光波長での蛍光強度を測定した後、遺伝子増幅反応を行い、終了した後に、ドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素、それぞれの蛍光波長での蛍光強度を測定して、プローブDNAが実際にどれだけ酵素によって分解されたかを定量的に検出することで、ターゲット塩基配列の有無を解析することができる。ここでも同様に熱蛍光消光の影響を排除するために計測時の溶液温度は同じ温度とすることが望ましい。他方、実時間計測では、プローブDNA断片の分解反応は、ポリメラーゼの伸長反応時に進むことから、各増幅サイクルの伸長反応の終了時、あるいは熱変性時、アニーリング時でのドナー蛍光色素の波長とアクセプター警告色素の波長での蛍光強度計測を行えば良い。ただし、ここで注意すべき点として、ここでも同様に熱蛍光消光の影響を排除するために、各サイクルでの計測時の溶液温度は同じ温度とすることが望ましい。
【0053】
また、本発明の高速PCR反応に使う反応槽1は、使い捨てのチップとすることが可能であるため、交換を行う場合には、熱交換槽3の中を満たしている液体を排出して、液体が無い状態にしてから反応槽枠2を外し、そして反応槽1を外す手順をとる必要がある。そこで、図13に示した実施例においては、空気の流入管2001が弁(切り替えバルブ)8を挟んで熱交換槽3と接続するように配置されており、また、熱交換槽3の液体の排出管2002が同様に弁(切り替えバルブ)8、液体排出ポンプ6を経て、リザーバタンク4のひとつの補助温度制御機構10への循環経路に接続されるように配置されている。実際に、三温度のリザーバタンク4の液体を用いた遺伝子増幅反応等を行うときには管2001、2002に付けられている2つの弁8は閉じられており、3つのリザーバタンク4からの液体の還流に影響を与える事は無い。遺伝子増幅反応が終わった段階で、3つのリザーバタンク4と結合している6つの切り替えバルブ8を切り替えて本熱交換槽3との液体の交換が行われないように切り離し、その後、管2001,2002の各々に接続されたバルブ8を接続し、ポンプ7を用いて熱交換槽3内部の液体を、例えば、低温用のリザーバタンク4の補助温度制御機構10に送液し、熱交換槽3内部は空気で満たすことができる。そうした後に、反応槽1を交換し、新たに別の反応槽1をセットしたところで、管2001、2002に接続された切り替えバルブ8を閉鎖して、リザーバタンク4からの還流系から液体を送液開始すると、熱交換槽3内は液体で満たされて、通常の遺伝子増幅反応を再開することができる。
【0054】
さらに、本発明の装置では液体の温度制御を行う機構を利用することで融解曲線測定を行うことも可能である。融解曲線解析を行う場合には、例えば、連続して65〜95℃までramp rate 0.11℃/secでの温度変化を反応槽1の反応液に与えて、その温度を反応槽1内に設置した液温度センサーにて反応槽1の温度をモニターしながら、その時の反応槽1のPCR反応液のインターカレーター蛍光色素の強度の変化などを図1に示したような光学計測モジュールを用いて計測し、温度と蛍光強度の相関の融解曲線分析の計測をすることが可能である。このとき、例えば、図13の3つのリザーバタンク4のうちの補助液体放熱機構17が組み込まれたリザーバタンクを用いて、最初に、所定の低温側のスタート温度となるところまでリザーバタンク内の液温度を下げる。次に、リザーバタンク内の熱源に少しずつ熱量を加え、ちょうど0.11℃/sec程度の温度上昇となるような熱量供給を温度センサー16で計測を行いながら進め、それと同時に、熱交換槽3にそのリザーバタンクの液体を供給する。熱交換槽3から戻った液体は、補助温度制御機構10にて、リザーバタンクの温度と同じ温度となるように調整されてリザーバタンクに還流するようにする。そして、最後に、最終温度として例えば、95℃に達したら、リザーバタンク内の液温度を下げるため、再び補助液体放熱機構17によって、当初設定していた温度まで液体の温度を下げればよい。
【0055】
図1でも説明したが、反応槽1は、反応槽枠2で密閉状態に保たれている。好ましい実施形態では、反応槽枠2は、温度センサー16によって計測された温度データに基づいて、反応槽枠2に組み込まれたヒーターによって常時75℃以上に保たれるようになっている。このヒーターによって加熱される事で、枠内の水蒸気が枠の内表面で結露することを防ぎ、それによって枠内の水蒸気圧は一定に保たれて、その結果、反応槽の液滴はミネラルオイル等の添加無しのむき出しの状態での液滴状態で配置されていても蒸発をしないで50〜97℃の範囲での温度変化を行うことができる。
【0056】
また、同様に、融解曲線解析のための温度制御の手法を、PCR反応とは異なる温度にて一定の温度を保つために用いる事もできる。それによって逆転写反応を反応槽のPCR反応液について行う事も可能である。例えば、50℃の液体の温度で液体を10分以上還流させる事でRNAからDNAへの転写を行ってから、このリザーバタンクの温度を通常のPCR反応を行う温度に調整し、連続して逆転写反応からPCR反応に進める事もできる。
【0057】
具体的な逆転写反応に引き続き行う遺伝子増幅反応の工程としては、ワンステップ操作(逆転写と増幅が1つのチューブ内で連続的に行われる) またはツーステップ操作(逆転写と増幅が別々のチューブ内で行われる)の 2 つがあるが、ここではワンステップ操作を例に、操作の手順の一例を示す。短いターゲットに対するワン ステップ RT-PCR 用逆転写酵素として、例えば、Tth DNA Polymerase(Roche)を用いた場合、この反応は55〜70℃が最適反応温度となっているため、(1)低温リザーバタンクの温度を通常のアニーリング温度より低い50〜60℃に設定し、この低温リザーバタンク4の液体を熱交換槽3に30分程度還流させて逆転写反応を行い、次に(2)高温リザーバタンク4より熱交換槽3に94℃以上の液体を2分間ほど還流させて初期熱変性を行い、その後は、(3)増幅サイクルとして、高温リザーバタンク4からの94℃以上の液体による1秒以上の熱変性プロセス、引き続きアニーリング用に温度調整を行った低温リザーバタンク4からのプライマー特性に対応した45〜66℃の液体によるアニーリングプロセス、そして、中温リザーバタンク4からの酵素特性に合わせた68〜70℃の液体による伸長反応を3秒というサイクルを行う事でターゲットRNAの増幅反応を行うことができる。この実施例では、3つの異なる温度のリザーバタンク4のひとつの温度を逆転写反応に最適な温度に調整して逆転写反応を行った後に、再度、PCR反応に最適な温度に設定をし直して三温度遺伝子増幅反応を行ったが、逆転写反応に最適な温度となる第4のリザーバタンク4を同様に付加して、上記プロセスを行っても良い。
【0058】
図14は、上記融解曲線解析のための計測機能を反応槽1に持たせるための別の手法の実施例のひとつを説明したものである。この実施例ではペルチエ温度制御機構19が熱交換槽3の底面に配置されており、ここでペルチエ温度制御機構19には、PCR反応のために循環させる液体の流路管20が貫通しているため、上記図13で述べた高速PCR反応のための液体の循環を同様に行うことができるが、さらに融解曲線解析の計測を行うときには液体の流路管20の液の流れ18を停止させ、ペルチエ温度制御機構19と熱交換槽3内の温度センサー16によって熱交換槽3に満たされた静止液体の温度を制御することで融解曲線解析を行うものである。また、この機構は、同様に逆転写反応でも用いることができる。その場合は、逆転写反応に最適な温度と時間をペルチエ温度制御機構19によって提供し、逆転写反応が終わったところで図1に示されたような二温度遺伝子増幅装置の構成、あるいは図13に示されたような三温度遺伝子増幅装置の構成を用いて高速遺伝子増幅を引き続き連続して行うことができる。
【0059】
図15は、本発明における連続した使い捨て反応槽1の利用方法の実施形態の一例、ならびに逆転写反応を行うことができる反応槽1を備えた反応槽部の実施形態の一例を示す模式図である。本発明の反応槽1は、上記図13の説明で述べたように、使い捨てチップとして用いる事ができる。この場合、図15のA?A断面図でも示したように、例えば、高速遺伝子増幅反応を行う反応槽部1015は典型的にはPCRを行うための反応槽1、反応槽1を固定するOリング1010などの断熱性と密閉性が保証されたスペーサーで反応槽1の上下を挟み込む反応槽枠2と熱交換槽3、反応槽を搬送するためのガイドレール1011を備えることで、ガイドレール1011に沿って複数の反応槽1を反応槽部1015に搬送することができる。反応槽1を反応で用いるときには、反応槽枠2と熱交換槽3で挟み込む事でOリング1010によって反応槽1を固定化させ、液体リザーバタンク4からの液体の導入を行うことができる。他方、搬送するときには、反応槽枠2と熱交換槽3を反応槽1から離してOリング1010を緩める事で、反応槽1のチップをガイドレール1011に沿って移動させ、交換することができる。図15のA?A断面図からもわかるように、反応槽枠2は、光学的に反応槽1上に配置した反応液を観察し計測するために光学的に透明な構成を取ることができる。この場合、二枚の薄いガラス板1013の間にITOなどの抵抗による発熱が効果的に起こる透明電極1014が挟み込まれており、光学的観測に支障を与える事無く反応槽枠2の温度を制御することができる。特に温度センサー16を内側のガラス板1013内面に設置し、75℃以上の温度に調整することで反応槽枠2内面での結露を防ぎ、蒸気圧の変化を防ぐ事が出来、その結果によって反応槽1の上に配置した反応液の蒸発を防ぐ事ができる。
【0060】
また、ガイドレール1011上の、反応槽部1015の前段に逆転写反応槽部1016を配置する事で、RNAサンプルをcDNAに逆転写して、後段の反応槽部1015にて高速遺伝子増幅を行うことができる。逆転写反応槽部1016では、図15のB?B断面図からもわかるように、反応槽枠2と同様な構成の枠は、光学的に反応槽1上に配置した反応液を観察し計測するために光学的に透明な構成を取ることができる。この場合、二枚の薄いガラス板1013の間にITOなどの抵抗による発熱が効果的に起こる透明電極1014が挟み込まれており、光学的観測に支障を与える事無く枠内部の温度を制御することができる。特に温度センサー16を内側のガラス板1013内面に設置し、約75℃以上の温度に調整することで反応槽枠2内面での結露を防ぎ、蒸気圧の変化を防ぐ事が出来、その結果によって反応槽1の上に配置した反応液の蒸発を防ぐ事ができる。反応槽1の下面には、逆転写反応用温度プレート1012が配置されており、逆転写に最適な温度として例えば、50℃に設定された状態で、反応槽1に密着させることでPCR溶液が入った反応槽1のプレートの温度を50℃で30分程度反応させて逆転写が完了したところで、その後ガイドレールを反応槽部1015にスライドすることでPCRを始めることができる。
【0061】
図16は本発明の多サンプルの遺伝子増幅反応におけるリアルタイム検出方法の一実施形態の一例を示す模式図である。本発明の反応検出装置は、典型的には、マルチウェル反応槽(reaction vessel)1101、アレイ状に配置された複数の反応ウェル1102、検出装置1201を備える。検出装置1201をPCR反応中に例えば方向1202に走査させ反応ウェル1102上のPCRサンプルの蛍光強度を検出することで反応ウェルの数より少ない数の検出器で全サンプル中の蛍光強度を測定する機能を備える。ここで図13の説明でも記述したように、インターカレーター方式での蛍光検出を行う場合には、PCRの伸長反応終了時に、熱変性を開始する前の二本鎖DNAの状態が維持している時間中に計測する事が望ましい。また、タックマンプローブ法のような蛍光プローブのPCR伸長反応時に量的変化を生じる蛍光プローブ量の蛍光検出の場合には、PCR伸長反応終了後のタイミングから、熱変性、アニーリングの段階のいずれであっても計測することができる。ただし、いずれの場合であっても、蛍光強度を比較計測するためには蛍光色素が含まれる反応液の温度が同じであるようにすることが望ましい。これは、温度依存性のある蛍光消光によって、同じ反応液内の蛍光色素量であっても、温度が違う事で蛍光強度が異なる事を防ぐためである。
【0062】
図17は本発明の多サンプルの遺伝子増幅反応におけるリアルタイム検出方法の実施形態の一例を示す模式図である。本発明の反応検出装置は、典型的には、マルチウェル反応槽1101、アレイ状に配置された複数の反応ウェル1102、検出プローブ1203を備える。1101上にある反応ウェル1102の数と同量の検出プローブ1203のアレイを用意しPCRサンプルの蛍光強度を定点観測することで切れ目の無い連続した時間変化を計測する事で、図16で示したスキャン型と異なり、連続した蛍光強度変化を検出することができる。
【0063】
図18は、反応槽1上の反応液がPCR反応中に乾燥しないための手段として、反応ウェル1102上にのせたサンプルの蒸発を防止するために封入するシール1302を反応槽1101上に貼付ける実施形態の一例を模式的に示したものである。ここでは、シール1302が反応ウェル1102中のサンプル溶液1303と接しないため、かつ反応液滴下時、搬送時、PCR測定中にサンプル反応液のウェル内での移動を抑えるために各反応ウェルの中心に柱(ピラー)1301を構成した構造の一例を模式的に示したものである。この柱1301は、熱伝導性が高いアルミニウム等の金属の打ち出し加工や付加によって作った構造でも良いし、あるいは光学的に透過性を持ったガラスやプラスチックでも良い。
【0064】
これにより5-10μLのPCR溶液がPCR反応中に移動せずかつシール剤と接することを防止することができる。また、ピラーによってより広い表面積に液滴を展開することができ、その結果として、単純に反応液の液滴を反応槽1101の表面に滴下した場合に比べて、より広い表面積で反応液を展開することができ、より効果的に反応液の温度を熱交換槽と交換することができる。また、ピラー1301が光学的に透明なプラスチックやPDMS等の高分子構造素材であった場合にはリアルタイムPCR測定中に検出する波長とは異なる蛍光を発する物質を練り込むことによりPCRの蛍光強度をキャリブレーションするためのリファレンスとして使用することができる。
【0065】
図19は反応ウェル1102内に設置した光学的な伝導性を持つ光ファイバーガラスやプラスチック等の素材でできたピラー1301の表面に、PCR反応中のDNAが近傍にハイブリダイゼーションできるようにDNAプローブ1306またはプライマーを結合させた実施形態の一例を示した模式図である。これにより、PCR反応物の増幅が効果的に行われた場合には、ピラー表面近傍でDNA増幅物が効果的に結合し、その蛍光をピラーの光ファイバー特性を利用して通常より高い検出感度でリアルタイムPCR反応を検出事が可能となる。蛍光を発するための手段としては、図19Aで示したように、DNA二重鎖の時にインターカレートすることで蛍光を発するSYBR Greenなどのインターカレーター1304を用いる手段や、図19Bで示したようにPCR反応物1302がハイブリダイズしたときDNAの立体構造が崩れることによりDNAプローブ末端に結合していた蛍光物質1305が蛍光を発する蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法を利用したプローブ法などを利用することができる。あるいは、柱1301表面あるいは柱1301中に蛍光アクセプター蛍光色素を導入し、インターカレーターをドナー蛍光色素として用いる事で、効果的にターゲットDNAが増幅された場合には、柱表面に結合しているプローブDNAと増幅産物DNAが結合し、インターカレーター蛍光がピラー表面で効果的に発生する事で、アクセプター蛍光を柱の蛍光発光から計測する事も可能である。この利点は、従来のインターカレーターの蛍光強度の変化という指標でのターゲットDNAの観察から、蛍光エネルギー移動によってアクセプター蛍光の発光情報という別のインタオーカレーター蛍光色素とは異なる波長の蛍光を観察することで定量的に計測することができることであり、よりノイズの低い定量性の高い計測が可能となる。
【0066】
図20は、反応液の容量を効果的に制御し、従来の液滴の滴下だけでは実現できない、より広い表面積で熱交換槽と接する事ができる反応液の空間配置を反応槽1101中に実現するために、微細加工技術によって、反応液の導入経路と、反応領域を反応槽中に構成した実施例の一例を模式的に示したものである。本実施例で示したマイクロ流路型反応槽1401は、上記、図1から19で示した実施例で用いてきた熱伝導性に優れたアルミニウム薄板等の反応槽1404上に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の光学的な透過性と弾性を持った素材からなる流路形成用高分子1403を接着したものである。このチップにはサンプル注入口1405と、毛細管現象によってサンプル注入口から反応液が導入されて通過するマイクロ流路1402と、反応液が満たされる反応液リザーバ1407、そして、反応液を回収するときにこれを押す事で空気圧によってサンプル注入口1405から反応液を回収するために用いる空気リザーバ1406が配置されている。この実施例では、反応液を注入口1405に導入した後に、上記図1あるいは図13で示した高速遺伝子増幅装置にて遺伝子増幅を行った後に、サンプル回収用空気リザーバ1406を押して、反応液をサンプル注入口1405から回収することができる。例えば、流し込む反応溶液は5μL以下が妥当であり、注入口1405から反応液リザーバ1407までの容積を5μL以内に抑える方が望ましい。また、上記実施例では、空気リザーバを用いたが、図20A‘?A’断面図のように、空気リザーバの位置をサンプル排出口1408にしても良い。この場合には、反応後の反応液の回収の場合には、サンプル注入口1405から空気を吹き込むことでサンプル排出口1408から回収することができる。また、図20の実施例では、反応液リザーバ1407の高さをマイクロ流路1402より高く設定したが、より効果的に熱交換を行うためには、なるべく反応液リザーバ1407の高さを低くして面積を広げる事で、より効率的なPCR反応を行うことができる。
【0067】
図21は、図13で示した実施例について、温度制御用の液体を送液する手段としてシリンジポンプ1411を用いた場合の形態の実施例の一例を模式的に示したものである。毎秒10mL以上の流速での自動送液および自動吸引が可能なシリンジポンプ1411表面には熱源5が、シリンジポンプ中には温度センサー16が配置されており、温度制御のための液体を熱交換槽3に導入するときは、送液したい温度のシリンジポンプ1411の切り替えバルブ8を切り替えて、各シリンジポンプからジョイント90を経て液体を熱交換槽3に導入する。そして、熱交換槽3から戻ってくる液体は、ジョイント90および切り替えバルブ8を経て補助温度制御機構10に蓄えられて、シリンジポンプ1411内で設定した温度と同じ温度に液体を戻した後にシリンジポンプに還流する機能を有する。そして、シリンジポンプからの送液が終わり、別のシリンジポンプ1411からの別温度の液体の送液が開始されたところで、切り替えバルブ8をシリンジポンプ1411と補助温度制御機構10とを接続するように切り替えて、シリンジポンプ1411内に液体を回収するように構成されている。
【0068】
図22は、反応液の温度制御に反応液の水の吸収が強い赤外線を照射して、その吸収による温度変化を利用した実施例の一例を示したものである。発明者らは、すでにこの集束赤外光の吸収による高速PCR装置技術について特開2008−278791に記載しているが、図22の本実施例では、反応液の温度制御を赤外レーザ1510の強度制御ではなく、円状に連続して段階的に透過率が変化するグラデーションNDフィルター1515と、このNDフィルター1515の角度をシャフト1514を介して緻密に制御するステッピングモーター等のモーター1513を用いて、角度を高速で可変に行う事で光の強度を高速で変化させる構成となっている。これによって急激な温度変化だけでなく、様々な一定回転各速度にする事で、反応液の単位時間当たりの温度勾配を正確に、かつ緻密に行うことができるだけでなく、温度変化を自在にプログラムすることもできる。
【0069】
図22の本実施例の装置構成は、照明用光源(ハロゲンランプなど)1501からの可視光を、コンデンサレンズ1502にて集光し、自動XYステージ1503上の反応ウェルプレート1507の各反応液の状態を光学的に観察できるように、対物レンズ1508経由にて焦点を合わせて、画像観察用カメラ(冷却CCDなど)1522で観察することができる。自動XYステージ1503は、X軸用モーター1504とY軸用モーター1505によって駆動することで任意の座標のウェルを観察することができる。また、ステージヒーター1506によって、例えば、アニーリング温度等のPCR反応での最低温度となる温度に反応ウェルプレート1507の温度を制御することができる。他方、赤外レーザ1510は、ビームエキスパンダー1511、レーザシャッター1512、グラデーションNDフィルター1515を通過して顕微鏡光学系に赤外レーザ用ダイクロイックミラー1509で導入することができる構成となっている。また、グラデーションNDフィルター1515は、その中心のシャフト1514がステッピングモーター等のモーター1513と接続されていることで、グラデーションNDフィルター1515による赤外レーザの透過率を自在に調整することができる。ここでグラデーションNDフィルターの表面のNDのグラデーションのパターンについては、通常は、図23(a)に示したように、その角度θに応じて直線的にND=NDMAX・(θ/θMAX)の関係で変化するものを用いれば良い。あるいは、グラデーションのパターンを角度θに依存してあらかじめ書き込むことで、一定の角速度で回転させながら予定した透過光強度の赤外線を水滴に照射することも可能である。図23(b)は、通常の3温度PCRの反応を行わせるためのプロセスを一回転分で1サイクルとなるようにグラデーションを構成した1例である。まず透過光0%の状態から一気に100%の透過まで上昇させ、95度以上の温度に水滴温度を上げることで核酸の熱変成を行わせ、つぎに透過光を0%に戻すことで、外部の温度を55度から60度程度のあらかじめアニーリング温度としておくことで、水滴はアニーリング温度まで下降し、さらにNDフィルター円盤の回転で透過光を、たとえば30%程度透過させることで、水滴の温度を70度に変化させることができ、PCR伸長反応が進む。このとき、一定角速度で円盤を回転させる場合には、各透過光の照射時間の比は、そのグラデーションパターンの空間配置に反映させることで実現できる。反応ウェル中でのPCR反応を定量的に計測するために蛍光観察をするために、この光学系には、蛍光励起用光源(水銀ランプなど)1517からの励起光を蛍光励起光源用シャッター1518、蛍光励起光用投光レンズ1519を経由して、蛍光励起光用ダイクロイックミラー1516によって励起光を導入することができるようになっており、加熱用赤外レーザの波長の光ならびに励起光が導入されないように調整されたカメラ用ダイクロイックミラー1520、結像レンズ1521を経由して、冷却CCDなどの画像観察用カメラ1522によって定量的に蛍光強度を計測する事が可能な構成となっている。図22に述べられた光学的加熱法に付いては、上記図1から21に述べられた手法と柔軟に組み合わせて用いることができる。
【0070】
たとえば、上記、図1から21の実施例に、本図22の光学的加熱法を付加することで、リザーバタンク4の温度を変更させることなく、簡単に融解曲線解析の機能を組み込むことができる。具体的には、リザーバタンク4からの高速循環液体の流れについて最低温度となる液体を、あらかじめ循環させておくか、あるいは高速循環液体の導入を開始させる前に、ターゲット核酸分子とインターカレーターの機能を持つ蛍光色素を含む水滴に加熱用赤外レーザーを連続して照射するが、このとき減光のグラデーションの程度が一次関数の線形(直線)的に減少するように構成されたグラデーションNDフィルター1515を水滴の温度が十分に安定して追従する程度の一定の角速度で回転させることで、水滴の温度を直線的に上昇あるいは下降させることができる。ここで、上昇については、NDの大きさが減少する方向で回転させたときに、また、下降については、NDの大きさが上昇する方向で回転させたときに実現させることができる。毎秒0.1ラジアン以下のゆっくりとした回転で、その角度情報と蛍光強度の変化を記録することで、以下に述べる角度θからの液滴温度の見積もり法を用いることで液滴温度と蛍光強度の結果を得ることができ融解曲線解析をすることができる。ここで温度の見積もり法は、透過光0%をθ=0ラジアン、透過光100%をθ=2πラジアンとし、透過光100%が照射されたところで水滴の温度が95度以上となるように照射光源の赤外線の強度を調整しておき、この調整された蛍光強度をそのまま維持しながらグラデーションNDフィルターを回転させることから、(θ/2π)・(TMAX-TMIN)という関係式で、角度θの測定から水滴の温度を見積もる手段を用いることができる。ただし、ここでTMAXは、透過光100%での照射時の水滴の温度、TMINは、照射前の透過光0%での水滴の温度である。
【0071】
あるいは、図23(b)示したように、グラデーションNDフィルターの円盤上に、あらかじめ一回転すると一回あるいは数回のPCR反応が終了するように、透過光の割合をθが一定速度で回転することを前提にθ依存的に配置することで、液滴の最低温度を安定化させるための目標とする最低温度の高速液体を還流させる1系統の高速還流系と、本構成を組み合わせれば、簡単に高速PCR反応を光学的な光熱変換によって実現することも可能である。ここでは、高速還流系は1系統のみとなるため、上記図1から21で記載した複雑な切り替えバルブの組み込みやスイッチングプログラムを組み込む必要がなく、また、リザーバタンクも1個で十分となり、構成が大きく簡素化できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、サンプルの温度を厳密に制御することが求められる反応を行うための反応装置として有用である。本発明はまた、サンプルの温度変更を迅速に行うことが求められる反応を行うための反応装置として有用である。
【0073】
本発明は特に、高速、高精度、高増幅率のPCR反応を行うことができるPCR装置として有用である。本発明の装置はまた、小型化が可能なため、ポータブルPCR装置として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 反応槽
2 反応槽枠
3 熱交換槽
4 液体リザーバタンク
5 熱源
6 攪拌機構
7 ポンプ
8 切り替えバルブ
9 バイパス流路
90 ジョイント
10 補助温度制御機構
11 インレットA
12 インレットB
13 アウトレットA
14 アウトレットB
15 連結チューブ
16 温度センサー
17 補助液体放熱機構
18 液体の流れの方向
19 ペルチエ温度制御機構
20 液体の流路管
2001 空気の流入管
2002 熱交換槽の液体の排出管
2003 圧力リーク弁
21,22,23,24,26,231 反応槽
25 凍結乾燥試薬
27 分注チップ
28 サンプル
29 繊維玉
31 反応槽
32 反応槽枠
33 反応槽受け口
34 ネジ山
35 シール
36 テーパー状反応槽枠
37,38 熱交換槽
41 インレットバルブA
42 アウトレットバルブA
43 インレットバルブB
44 アウトレットバルブB
51 スライドガラス型反応槽枠
52,58 熱交換槽の反応槽受け口
53 ガイドレール
54 シール
55 スライド受け口
56 ヒンジ
59 反応槽
61 インレットA
62 アウトレットA
63 インレットB
64 アウトレットB
65 ピストン
66 反応槽
67 熱交換槽
71 ピストン
72 ピストンロッド
73 ピストン
74 磁石
75 電磁コイル
76 ピストン
81 回転弁
82 回転軸
83 熱交換槽
84 反応槽
91 インレットA
92 アウトレットA
93 インレットB
94 アウトレットB
95 メンブランA
96 メンブランB
97 反応槽
98 熱交換槽
101 ロータリーバルブ
102 溝
103 熱交換槽
104 インレットA
105 アウトレットA
106 インレットB
107 アウトレットB
108 流路
109 反応槽
110 温度
111 経過時間
201 蛍光検出器
202 制御解析部
203 制御信号
204 光学窓
1010 Oリング
1011 ガイドレール
1012 逆転写反応用温度プレート
1013 ガラス板
1014 透明電極
1015 反応槽部
1016 逆転写反応槽部
1101 反応槽
1102 反応ウェル
1201 蛍光検出プローブ
1202 蛍光検出プローブの走査方向
1203 アレイ化した蛍光検出プローブ
1301 ピラー
1302 蒸発防止用シール
1303 PCR溶液
1304 インターカレーター
1305 蛍光プローブ
1306 DNAプローブ
1401 マイクロ流路型反応槽
1402 マイクロ流路
1403 流路形成用高分子
1404 反応槽
1405 サンプル注入口
1406 サンプル回収用空気だめ
1407 反応液リザーバ
1408 サンプル排出口
1411 シリンジポンプ
1501…照明用光源(ハロゲンランプなど)
1502…コンデンサレンズ
1503…自動XYステージ
1504…X軸用モーター
1505…Y軸用モーター
1506…ステージヒーター
1507…反応ウェルプレート
1508…対物レンズ
1509…赤外レーザ用ダイクロイックミラー
1510…赤外レーザ
1511…ビームエキスパンダー
1512…レーザシャッター
1513…モーター(ステッピングモーターなど)
1514…シャフト
1515…グラデーションNDフィルター
1516…蛍光励起光用ダイクロイックミラー
1517…蛍光励起用光源(水銀ランプなど)
1518…蛍光励起光源用シャッター
1519…蛍光励起光用投光レンズ
1520…カメラ用ダイクロイックミラー
1521…結像レンズ
1522…画像観察用カメラ(冷却CCDなど)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液を容れるための1または複数のウェルを備えた反応槽と、
前記ウェルに配置したサンプルの液滴の蒸発を防ぐために前記反応槽を密閉して覆い、かつ結露を防ぐために保温部材を備える反応槽枠と、
前記反応槽に熱を伝導しうるように該反応槽に接して設けられ、所定の温度の液体をそれぞれ導入および排出するためのインレットおよびアウトレットを備えた熱交換槽と、
複数の液体リザーバタンクであって、液体をそれぞれ所定の温度に保つための温度制御可能な熱源と、該リザーバタンク内の温度が一定となるように液体を撹拌する液体攪拌機構と、該リザーバタンクの液体の温度を制御するためのフィードバック情報を得るための温度センサーとを備えた、複数の液体リザーバタンクと、
前記複数の液体リザーバタンク間の液面高さをほぼ同じに調整するための前記各液体リザーバタンクを互いに流体接続する細管と、
前記熱交換槽の前記インレットおよび前記アウトレットと前記液体リザーバタンクとの間を接続する管状流路と、
前記管状流路上に設置された、前記熱交換槽と前記液体リザーバタンクとの間で前記液体を毎秒10mL以上で循環させることができるポンプと、
前記管状流路上に設置された、前記循環する前記液体の流れを制御するための切り替えバルブであって、前記複数の液体リザーバタンクからの所定の温度の前記液体の前記熱交換槽への流入を所定の時間間隔で切り替えることによって、前記反応槽の温度を所望の温度に制御する、切り替えバルブと、
前記管状流路上の前記熱交換槽と前記液体リザーバタンクとの間に配置された補助温度制御機構であって、還流する前記液体を一時的に保持し得る所定の容積を有し、上記還流する液体の温度を前記液体リザーバタンク内と同じ温度に調整してから前記液体リザーバタンクに還流させることで前記液体リザーバタンクの温度変化を最小限に抑えるための補助温度制御機構と、
前記サンプル液中に蛍光色素を含有させた場合に、前記切り替えバルブによる前記反応槽の温度切り替えに連動して前記ウェル内の前記蛍光色素が発する蛍光を検出し、蛍光強度の時間変化を測定するための蛍光検出手段と、
前記蛍光強度から前記サンプル液の温度を見積もり、その結果に基づいて前記切り替えバルブの動作を制御することができる制御解析部と、
を備え、
前記サンプルの量が1ウェル当たり数十μL以下であり、循環させる前記液体の総容積が1液体リザーバタンク当たり数十mL以上である、液体還流型反応制御装置。
【請求項2】
PCR装置として使用する、請求項1に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項3】
さらに、前記液体リザーバタンク内の液体の温度を下げるように制御するための冷却機構を備える、請求項1に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項4】
前記蛍光検出手段が、前記反応槽の前記ウェルの各々に対応して設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項5】
前記反応槽枠が、該反応槽枠内部の温度が75℃以上に保持されるように前記保温部材により保温されている、請求項1〜4のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項6】
前記液体リザーバタンクの数が、前記反応槽の設定温度の数と同一である請求項1〜5のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項7】
前記液体リザーバタンクの数が、2温度PCR反応用の2、逆転写反応と2温度PCRあるいは3温度PCR反応用の3、または逆転写反応用と3温度PCR反応用の4である、請求項6に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項8】
前記反応槽の底面および壁面が、厚さ1ミクロンから100ミクロンのアルミ、ニッケル、マグネシウム、チタン、プラチナ、金、銀、銅を含む金属、もしくはシリコンから形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項9】
前記ウェルの底面の形状が、平底状、半球状、三角錐状、または球状である、請求項1〜8のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項10】
前記ウェルの各々に、反応に必要な試薬が乾燥した状態で予め内包されており、サンプル溶液との接触により溶出して反応を可能とする、請求項1〜9のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項11】
前記反応槽枠が、該反応槽内の前記サンプルからの光学信号の測定を容易にする孔もしくは光学窓をさらに備え、該光学窓が光学的に透明な発熱体を備える、請求項1〜10のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項12】
前記反応槽および前記反応槽枠が、前記熱交換槽に対して着脱可能に設置されている、請求項1〜11のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項13】
前記反応槽および前記反応総枠の前記熱交換槽への着脱方式が、
(a)前記反応槽の外周に筒状の枠を、前記熱交換槽に筒状の反応槽受け口を設け、前記反応槽の前記枠の外表面と、前記熱交換槽の反応槽受け口の内表面とにねじ山を設けて、該ねじ山に沿った回転運動により前記反応槽を前記熱交換槽に着脱可能に装着する方式、
(b)前記反応槽の外周の前記筒状の枠および前記熱交換槽の前記筒状の反応槽受け口をそれぞれテーパー状にして、前記反応槽受け口に対して前記反応槽を着脱可能に圧着させる方式、
(c)前記反応槽がチップ状の形態を有し、該反応槽チップをスライドガラス状の反応槽枠内に固定し、前記熱交換槽の反応槽受け口にガイドレールを設け、該ガイドレールに沿って前記スライドガラス状の反応槽枠を着脱可能に装着する方式、および
(d)前記スライドガラス状の反応槽枠を、ヒンジを有するスライド受けに挿入し、該ヒンジ機構に基づいた回転動作により、前記スライドガラス状の前記反応槽枠を前記熱交換槽の前記反応槽受け口に対して着脱可能に装着する方式、
のうちのいずれかである、請求項12に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項14】
さらに、前記液体が還流している状態でありながら、前記液体を前記液体還流型反応制御装置の外部に漏らすことなく前記反応槽を前記熱交換槽から着脱することを可能とするために、前記熱交換槽が前記反応槽および前記反応総枠の着脱時に前記熱交換槽内の液体を排出するための空気導入口と液体排出口とを備えている、請求項12または13に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項15】
前記液体リザーバタンクの前記熱源が、熱対流を効果的に利用するために該液体リザーバタンクの底面に配置されており、該液体攪拌機構は該液体リザーバタンク内の液体を連続的もしくはデュティーサイクル比10%以上で攪拌することにより、該液体リザーバタンク内の該液体の温度分布を5℃以内に抑制できる、請求項1〜14のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項16】
前記切り替えバルブにより、前記複数の液体リザーバタンクのうち、任意の液体リザーバタンクの液体を前記熱交換槽に導くことができ、前記熱交換槽中の前記液体を元の液体リザーバタンクに戻すことができる、請求項1〜15のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項17】
前記切り替えバルブの制御により前記熱交換槽内の前記液体を置換する際、前記熱交換槽内部の前記液体はその温度に最も近い温度に保持されている液体リザーバタンクに導かれる様に前記切り替えバルブが制御される、請求項15または16に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項18】
前記補助温度制御機構が、断熱材、ヒーター、および冷却機構を含み、前記熱交換槽から戻ってきた液体の温度を、還流先の前記液体リザーバタンク内の液体の温度と同じ温度にし、前記切り替えバルブと前記液体リザーバタンクとを結合する前記流路内部の前記液体の温度の変動を抑制する、請求項1〜17のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項19】
さらにバイパス流路を備え、前記切り替えバルブと前記液体リザーバタンクとを結合する前記流路内部の前記液体が、前記バルブの切り替えによって前記熱交換槽に導かれることなく前記バイパス流路を通って前記液体リザーバタンクへ還流し、前記液体リザーバタンクからの液体と連続的に置換されることにより、前記流路内を還流する液体の温度の変動が抑制されている、請求項1〜18のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項20】
前記切り替えバルブが、断面が円もしくは多角形の中空構造中をスライドするピストンから構成されており、該ピストンの位置によって前記反応槽に接する液体の温度を制御する、請求項1〜19のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項21】
前記切り替えバルブにおいて、前記ピストンが、
(a)該ピストンに接続されたピストンロッドに対して機械的に外力を加えることによって、
(b)自体磁性体であるピストンもしくは磁性体が内部に装着されたピストンを使用して、該ピストンと前記切り替えバルブ外部に配置された電磁コイルとを含む磁場発生機構との相互作用によって、または
(c)ピストン両端に前記循環する液体の流れによる圧力差を生じさせることによって、
スライドする、請求項20に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項22】
前記切り替えバルブにおいて、
円柱状、円盤状、円錐状の回転体であって、前記液体リザーバタンクから送られた液体の流路となる複数の溝が外表面に形成され、さらに前記溝のそれぞれに流体連絡可能に接続されたトンネル状の流路が形成された回転体が、前記熱交換槽に回転可能に挿入されており、
前記トンネル状の流路の端がそれぞれ前記切り替えバルブのインレットまたはアウトレットとして機能し、
前記回転体が回転することにより、前記インレットに導入される異なる温度の液体が前記溝部分を流れる際に反応槽外部に接触する、請求項1〜19のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項23】
前記循環させる液体として、熱容量が大きく、かつ粘性が低い液体を用いる、請求項1〜22に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項24】
前記循環させる液体として、沸点が水の沸点より高い液体を用いる、請求項1〜23のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項25】
前記循環させる液体として、凝固点が水の凝固点より低い液体を用いる、請求項1〜24のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項26】
前記循環させる液体を送液する手段としてシリンジポンプを用いる、請求項1〜25のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置を用いてPCRを行う方法であって、
インターカレーター型蛍光色素を用い、
前記蛍光検出手段により、PCRの伸長反応終了時で、かつ、熱変性を行う前のタイミングで、かつ特定の反応液の温度で蛍光検出を行うことを含む、方法。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置を用いてPCRを行う方法であって、
特定の蛍光波長を有するプローブ蛍光色素を用い、
前記蛍光検出手段により、PCRの伸長反応終了時以降で、次の伸長反応を開始する前のタイミングで、かつ特定の反応液の温度で蛍光検出を行うことを含む、方法。
【請求項29】
前記反応槽および/または前記熱交換槽がさらに温度センサーを備え、
前記液体リザーバタンクに付加した前記熱源および前記冷却機構を、前記液体リザーバタンクおよび前記反応槽および/または前記熱交換槽に配置した前記温度センサーによってフィードバック制御して、前記液体リザーバタンクの温度を所定の温度に制御する、請求項1〜26のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項30】
前記反応槽および/または前記熱交換槽がさらに温度センサーを備え、
前記熱交換槽がさらに温度制御装置を備え、
前記切り替えバルブ機構によって前記熱交換槽への液体の流入を停止した場合に、前記反応槽および/または前記熱交換槽に配置した温度センサーおよび前記温度制御装置により前記熱交換槽内に静止した液体の温度を所定の温度に制御する、請求項1〜26のいずれかに記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項31】
前記反応槽チップを搬送するガイドレールの一部に、反応槽チップと接触して反応槽チップの温度を一定温度に保ち、反応槽チップ上の反応液の蒸発を防ぐために反応槽枠内の温度を所定の温度に保つための温度プレートおよび温度センサーを備えた、請求項13に記載の液体還流型反応制御装置。
【請求項32】
請求項29または30に記載の液体還流型反応制御装置を用いて融解曲線解析を行う方法であって、
前記各温度センサーで前記各液体の温度をモニターしつつ、前記液体リザーバタンクと前記反応槽との間で液体を還流させて、前記反応槽に保持した蛍光色素を含むサンプル液の温度を所定の温度範囲内で所定の温度変化率で変化させる工程、
前記サンプル液の温度変化に伴う前記蛍光色素の強度変化を光学計測モジュールを用いて計測する工程、および
前記サンプル液の温度と前記蛍光色素の強度との相関関係を解析する工程
を含む、方法。
【請求項33】
請求項31に記載の液体還流型反応制御装置を用いてRT(逆転写)−PCRを行う方法であって、
前記各温度センサーで前記各液体の温度をモニターしつつ、前記液体リザーバタンクと前記反応槽との間で液体を還流させながら、
前記ガイドレールの前記温度プレート上に前記反応槽を配置して、前記反応槽に保持したRNAおよびDNAポリメラーゼを含むサンプル液の温度を逆転写に適した第1の温度で所定の時間保持する工程、
前記工程後、前記ガイドレールに沿って前記反応槽をスライドして前記反応槽と前記還流する液体とが接触する状態にし、第2の温度での所定時間の熱変性プロセス、第3の温度での所定時間のアニーリングプロセス、および第4の温度での所定時間の伸長プロセスからなる増幅サイクルを所定回繰り返す工程、
を含む、方法。
【請求項34】
前記反応槽の前記各ウェルのサンプル配置場所に、測定中のサンプルの位置を保持するための支柱(ピラー)が配置されている、請求項1〜26および請求項29〜30のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
【請求項35】
前記反応槽の前記各ウェルのサンプル配置場所に支柱(ピラー)が配置されており、該ピラーに支えられるようにサンプル液蒸発防止用のシール剤が該ウェルに被せられており、該ピラーによって測定中の前記サンプル液が前記蒸発防止用のシール剤に付着することを防がれている、請求項1〜26および請求項29〜30のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
【請求項36】
前記反応槽の各ウェルのサンプル配置場所に、サンプルの測定蛍光波長とは異なる蛍光試料を混ぜた(または結合させた)支柱(ピラー)が配置されており、サンプルの蛍光強度の参考蛍光強度(リファレンス)として利用することができる、請求項1〜26および請求項29〜30のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
【請求項37】
前記反応槽の各ウェルのサンプル配置場所に、サンプルの測定蛍光波長とは異なる蛍光試料を混ぜた(または結合させた)支柱(ピラー)が配置されており、増幅させる試料のDNAがハイブリダイゼーションできるプローブあるいはプライマーを前記ピラー表面に結合させることで、前記ピラー表面近傍で反応中の蛍光を発するようにし、前記ピラーを蛍光増強の誘導管として使用することができる、請求項1〜26および請求項29〜30のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
【請求項38】
前記反応槽が、複数の光学的に透過性の平板状材料を貼り合わせたチップ状反応槽であって、少なくとも1つの前記平板状材料が微細加工されてサンプル液を毛細管現象によって導入し封入できる反応液の微小流路とリザーバが形成されているチップ状反応槽である、請求項1〜26および請求項29〜30のいずれかに記載の液体還流反応制御装置。
【請求項39】
サンプル液を保持するための1または複数のウェルを備えたサンプル保持部と、
前記サンプル液の水に吸収を有する赤外レーザ光を発するレーザ装置と、
前記レーザ装置からのレーザ光の強度を連続的に変化させることが可能なグレイスケールNDフィルター円盤と、
前記円盤の回転速度を制御する回転制御機構と、
前記レーザ光を前記グレイスケールNDフィルター円盤を経由して前記ウェルの前記サンプル液に導くための光学系と、
前記ウェルの温度を制御するための温度制御機構と、
前記ウェル内の前記サンプル液の光学イメージを計測する光学カメラを含む光学測定装置とを備える、液体反応制御装置。
【請求項40】
サンプル液を容れるための1または複数のウェルを備えた反応槽と、
前記反応槽に熱を伝導しうるように該反応槽に接して設けられ、所定の温度の液体をそれぞれ導入および排出するためのインレットおよびアウトレットを備えた熱交換槽と、
液体を所定の温度に保つための温度制御可能な熱源および温度センサーを備えた液体リザーバタンクと、
前記熱交換槽の前記インレットおよび前記アウトレットと前記液体リザーバタンクとの間を接続する管状流路と、
前記管状流路上に設置された、前記熱交換槽と前記液体リザーバタンクとの間で前記液体を循環させるためのポンプと、
前記サンプル液の水に吸収を有する赤外レーザ光を発するレーザ装置と、
前記レーザ装置からのレーザ光の強度を連続的に変化させることが可能なグレイスケールNDフィルター円盤と、
前記円盤の回転速度を制御する回転制御機構と、
前記レーザ光を前記グレイスケールNDフィルター円盤を経由して前記ウェルの前記サンプル液に導くための光学系と、
前記ウェル内の前記サンプル液の光学イメージを計測する光学カメラを含む光学測定装置とを備える、液体還流型反応制御装置。
【請求項41】
請求項1〜26、請求項29〜31、および請求項34〜40のいずれかに記載の反応制御装置を用いてPCRを行う方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、
前記反応槽の複数のウェル上を光学検出器で移動操作することで該光学検出器数以上のサンプル数を測定する、方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−110999(P2013−110999A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259210(P2011−259210)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【出願人】(504296024)一般社団法人オンチップ・セロミクス・コンソーシアム (39)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】