説明

液体金属を用いたGeCl4の還元によるGeの製造方法

【課題】液体金属を用いたGeCl4の還元によるGeの製造方法の提供
【解決手段】本発明は、例えば赤外光学素子、放射線検出器及び電子装置の製造のための高純度ゲルマニウムの製造に関する。ガス状GeCl4を、Zn、Na及びMgの1つを
含む液体金属Mと接触させ、それによりGeを含む合金及び蒸発又はすくい取りにより除去される金属M塩化物を得ることにより、GeCl4がGeに転換される。Geを含む合
金はその後、金属Mの沸点以上の温度にて精製される。この方法は、複雑な技術を必要とせず、及び反応物が、非常に高純度で得られ得及び繰り返し再利用され得る金属Mのみであるため、最終的なGe金属中の高純度のGeCl4を保持している。
からなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば赤外光学素子、放射線検出器及び電子装置における使用のための高純度ゲルマニウムの製造に関する。Ge金属は、高純度の等級で一般的に入手できる生成物であるGeCl4の直接還元により得られる。
【背景技術】
【0002】
従来の実施に従うと、GeCl4は、GeO2への加水分解、及びその後の水素還元により、Ge金属に転換される。これはGeCl4の初期の純度の大部分が失われる、費用が
かかり且つ時間を浪費する方法である。
もう1つの既知の方法は、亜鉛蒸気を用いたGeCl4の直接還元である。Gmeli
n’s Handbook der Organischen Chemie,band45,1958,第33頁は、GeCl4を930℃にてZn蒸気と反応させて、ZnC
2及びGe−Zn合金を製造することによるような方法を簡単に記載している。この合
金中のZn含量は、希塩酸を用いて浸出することにより、最初に0.1ないし0.2質量%まで低下される。Znの残留分は真空蒸発により除去されて、5N(99.999質量%)Geが得られる。この方法の欠点は、930℃の温度におけるZn蒸気を用いた還元が技術的に複雑であるということである。
【0003】
特許文献1においては、塩化鉄及び塩化ナトリウムが亜鉛−アルミニウム溶融物に添加され、それにより、アルミニウムが塩化物と反応し、そしてFeが亜鉛溶融物中に収集される。Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Ge、Y、Zr、Mo、Rh、Pd、Ag、Sb、Hf、Pt、Au、Pr、Th、Uの塩化物塩及びそれらの混合物が同様の方法により加工され得ることが言われている。
Si冶金においては、蒸気又は液体相にあるZnによるSiCl4の直接還元が、特許
文献2又は特許文献3より既知である。溶融Znが用いられる場合、ZnCl2蒸気に伴
う極めて微細な粉末状の金属様Siが形成される。しかしながらこの方法は、ZnCl2
からの粉末状Siの分離が問題であるようなので実用的ではない。
特許文献4においては、ガリウム、インジウム又はタリウムを用いてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を還元する方法が開示されている。この方法は、用いられる還元用金属が、高純度Ge中に望ましくない残存不純物を生じるために、Geに対しては実用的ではない。
【特許文献1】米国特許第4,655,825号明細書
【特許文献2】特開平11−092130号公報
【特許文献3】特開平11−011925号公報
【特許文献4】米国特許第4,533,387号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の問題に対する解決法を提供することである。この目的のために、及び本発明に従うと、還元されたGeが液体金属相中に溶解するような温度にて、ガス状GeCl4を、金属M(Mは、Zn、Na及びMgのうちのいずれか1種を表す。
)を含む液体金属相と接触させ、それにより還元されたGe及びM−塩化物を得る段階;Geを含む液体金属相から前記M−塩化物を分離する段階;及び前記Mの沸点以上の温度にて前記Geを含む液体金属相を処理することにより精製する段階からなる、GeCl4
をGe金属に転換することにより、高純度のGe金属が得られる。金属Zn、Na及びMgは、
−塩素に対する親和性がGeのそれよりも高い;
−溶融相中のGeの高い溶解性;及び
−Geの沸点よりも低い沸点
という特性の組み合わせを示すために、選択される。
Geを含む液体金属相からのM−塩化物の分離は、蒸発又はすくい取り(skimming)により有利に行われる。
【0005】
好ましい態様においては、(1)Geを含む液体金属相を液相線以下の温度まで冷却し、それにより、Geが乏しい液体相と、分離されたGeが豊富な固体相とを形成する段階;及び(2)前記Geが豊富な固体相を加熱し、これに対応して豊富にGeを有する液体金属相を得る段階が、精製する段階の前に挿入される。Geが乏しい液体相は有利には、GeCl4転換プロセスに戻される。
【0006】
上記の方法は、M−塩化物を液体として収集し、そして水性又は好ましくは融解塩電解にかけて、それにより金属M及び塩素を回収することにより、MをGeCl4転換プロセ
スに再利用する段階により補足され得る。塩素もまた、特にGeCl4の調製のために再
使用され得る。
【0007】
精製する段階は、Geの融点(937℃)以上の温度にて、好ましくは真空下及び1500℃までの温度にて有利に行われ得る。蒸発するMは凝縮され、そしてGeCl4転換
プロセスに再利用される。
【0008】
Znが金属Mとして選択される場合、好ましくは750ないし850℃の温度にてGeCl4と接触される。
【0009】
本発明に従うと、GeCl4は、比較的低温で、即ちMの沸点以下で、液体金属Mを用
いて還元される。この方法の技術はそれゆえ、ガス状還元プロセスに必要とされるものよりもずっと容易である。例えばGe20ないし60質量%を含むGeを含む合金が得られ得る一方で、塩素化金属Mが分離した液体相を形成する又は蒸発する。金属Mは、例えば融解塩電解により塩素から回収され、そして本方法の第一段階に再利用され得る。Geを含む合金は、高温にて、すなわち金属Mの沸点以上であるが、Geそれ自体の沸点(2800℃)以下にてさらに精製され得る。蒸発された金属Mは回収され得、そして本方法の第一段階に再利用され得る。いずれの他の揮発性元素もまた、この段階で除去される。従って、金属Mについてのループを閉鎖して、それにより新たな添加を通しての系への不純物の混入を防止することが可能である。
【0010】
Zn、Na又はMgの他に、金属Mはまた、Li又はK、又はこれら元素のいずれかの混合物であり得ることに注目するべきである。GeCl4のための還元剤として、Al、
Ga、In、又はTlのような他の金属の選択は、これら金属はあまりに高い沸点を有するため、及び/又は、たとえppm量であっても高純度のGeにおけるそれらの存在が全く受け入れられないために、除外される。
【0011】
本方法に対する可能な向上は、精製する段階の前に、Ge−合金が豊富な段階の挿入することである。Ge又はGeが豊富な相のいずれかを結晶化するためにGeを含む合金を冷却することが、Geの有意義な精製を含み、このことは、続く精製する段階において必要とされるエネルギー及び時間を低減させる。
【0012】
好ましい態様において、ガス状GeCl4は、ZnCl2の沸点(732℃)以上の温度にて、液体Znと接触される。750ないし850℃の範囲が最も好ましい。そのような条件において、転換中に形成されたZnCl2は連続的に蒸発されるが、蒸発によるZn
損失は最小になる。
【0013】
典型的な設定においては、溶融Znは、好ましくは石英又はグラファイトのような他の高純度材料から作られた反応器内に入れられる。室温にて液体であるGeCl4は、浸漬
チューブを介してZn中に注入される。注入は、Zn−含有の反応器の底部において行われる。チューブ内で加熱されたGeCl4は、ガスとして実際に注入される。注入チュー
ブの末端は、多孔質のプラグ又は溶解したガラスのような分散器具が設けられている。高還元率を得るために、Zn中にGeCl4を非常に良好に分散させることが実際に重要で
ある。こうでない場合、GeCl2への部分的な還元が起きてしまうか、又は幾分かのG
eCl4がZnと未反応のままとなってしまう。適切な分散及び溶融槽の高さを用い、1
00%近い転換率が観察される。750ないし850℃の好ましい操作温度において、還元されたGeは、その溶解度の限界である50ないし70質量%まで溶融Zn中にたやすく溶解する。GeCl4のさらなる注入は、蒸発したZnCl2に伴い、そして運び去られる微細なGe粒子の生成を生じる。従って、ZnがGeで飽和される前に、GeCl4
注入を中断することが勧められる。わずか732℃の沸点を有する他の反応生成物であるZnCl2は蒸発し、そして上部を経て容器を出る。蒸気は収集されそして凝縮される。
【0014】
Tl、Cd及びPbのような不可避の僅かな不純物と一緒に、Znは、蒸発によりGeを含む合金から分離される。少なくとも5Nの純度を有するGeがその後得られる。この操作のため、温度はZnの沸点(907℃)以上に、及び好ましくはGeの融点以上に上昇される。減圧又は真空下で、及び1500℃までの温度にて行うことが有益である。Zn及びその揮発性不純物はこれにより、合金から完全に除かれ、溶融Geが残る。Zn中に存在する非揮発性の不純物のみがGe中に残存する。そのような不純物の例は、Fe及びCuである。それらの濃度は、Znを予備蒸留することにより、或いは、ZnをGeCl4転換プロセスに繰り返して再利用することにより、最小化され得る。そのような最適
化された条件において、6N以上のGe純度が達成され得る。
最終的に、溶融Geは冷却されそして金属塊として固化される。それはいずれの適する形態にでもたやすく鋳造され得る。
【実施例】
【0015】
以下の実施例が本発明を例示する。
1700gの熱等級の金属Znを石英製の反応器内で800℃まで加熱した。反応槽の高さはおよそ10cmであった。ミニパルス(Minipuls)(登録商標)蠕動ポンプを使用して、液体GeCl4を浸漬石英チューブを介して反応器内に導入した。チュー
ブの浸漬した先端を、アルミノケイ酸塩から作られた多孔石に密着させた。84℃の沸点を有するGeCl4が浸漬チューブ内で蒸発し、そして液体Zn中でガスとして分散した
。GeCl4流は160ないし200g/時間であり、そして全添加量は900gであっ
た。反応中に形成されたZnCl2が蒸発し、そして絶縁石英チューブにより反応器と連
通された別の容器内で凝縮した。幾分かのZnCl2が連通チューブ内で捕捉されて残留
するので、およそ990gのZnCl2のみが収集された。Zn及びおよそ20質量%の
Geを含む液体金属相を得た。同様の160ないし200g/時間の流速にて、添加するGeCl4の量を上げて、Zn中に溶解されたGeの量を、例えば50質量%まで上げて
も差し支えない。この液体金属相を1050℃まで加熱してZnを蒸発させて、該Znを凝縮し及び回収した。ZnがGeから完全に除かれることを確実にするために、温度を1時間で1500℃までさらに上げた。Geをその後、室温まで冷却した。290gのGe及び1175gのZnを回収した。反応収率はこのため、Geに対しておよそ95%であった。Ge中の主要な不純物は、P(0.6ppm)、Fe(3ppm)及びPb(3.8ppm)であった。純度は、P及びPbのような揮発性の不純物が除去される真空加熱炉内で、Geを1500℃まで加熱することによりさらに高め得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GeCl4をGe金属に転換する方法であって、
−還元されたGeが液体金属相中に溶解するような温度にて、ガス状GeCl4を、金
属M(Mは、Zn、Na及びMgのうちのいずれか1種を表す。)を含む液体金属相と接触させ、それにより還元されたGe及びM−塩化物を得る段階;
−Geを含む液体金属相から前記M−塩化物を分離する段階;及び
−前記Mの沸点以上の温度にて前記Geを含む液体金属相を精製し、それによりMを蒸発させ、及びGe金属を得る段階
からなる方法。
【請求項2】
前記Geを含む液体金属相を精製する段階の前に、以下の段階:
−前記Geを含む液体金属相を液相線以下の温度まで冷却し、それにより、Geが乏しい液体相と、分離されたGeが豊富な固体相とを形成する段階;及び
−前記Geが豊富な固体相を加熱し、これに対応して豊富にGeを有する液体金属相を得る段階
が挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Geを含む液体金属相から前記M−塩化物を分離する段階は、蒸発又はすくい取り(skimming)により行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下の段階:
−除去されたM−塩化物を液体として収集する段階;
−前記M−塩化物を融解塩電解にかけて、それにより金属M及び塩素を回収する段階;及び
−MをGeCl4転換プロセスに再利用する段階
をさらに含む、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
GeCl4の製造のために前記塩素をGe塩化プロセスに再利用する段階をさらに含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記精製する段階は、Geの融点以上の温度にて行われる、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記精製する段階は、1500℃までの温度にて、減圧又は真空下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精製する段階において蒸発されたMが凝縮され、そしてGeCl4転換プロセスに再
利用される、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Mは、ガス状GeCl4が750ないし850℃の温度にて接触させられるZnである、
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の方法。


【公表番号】特表2008−514817(P2008−514817A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533909(P2007−533909)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010155
【国際公開番号】WO2006/034802
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(502270497)
【Fターム(参考)】