説明

液体電荷輸送材料

本発明は、≦180℃の温度で液体である有機電荷輸送材料を有する光電子および/または電気化学デバイスに関係する。特に色素増感太陽電池において、先行技術の固体有機ホール輸送より高い量子効果が報告されている。大量の有機電荷輸送材料の融点は、好適な置換分を選択することによって、所望の値に調整可能である。これにより、液体状態の一般的な利点を、有機電荷輸送材料の特性と関連づけることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体有機電荷輸送材料を有する光電子および/または電気化学デバイス、太陽電池を調製する方法、および光電子および/または電気化学デバイスにおける液体有機電荷輸送材料の使用、に関係する。
【背景技術】
【0002】
光電子および/または電気化学デバイスは、固体状態接合で占められており、これは通常結晶質または非晶質のシリコンから作られ、半導体産業に由来する経験および材料入手性の恩恵を受けており、その相互接続三次元構造のために「バルク」接合と呼ばれるメソスコピック無機または有機半導体に基づいたデバイスの利点を受けられるという意識が高まっている。これらは例えば単結晶無機酸化物、イオン性液体、および有機ホール輸送または電荷輸送ポリマーデバイスから形成され、それらは、高価でエネルギー集約型の高温および高真空プロセスを伴わない非常に低コストでの加工、柔軟な基材への適合性、および、ドメスティックデバイス用と構造または装飾用途の両方で市場参入を促すための多様な提示および外観、についての見通しをもたらす。
【0003】
多くの光電子および/または電気化学デバイスの加工に関して、固体有機半導体の使用は好ましくない。増感太陽電池はそのようなものの一例である:この電池のハイブリッドバージョンは、光吸収増感材でできた単層でコートされ且つ有機半導体で浸潤されたナノ構造酸化物フィルムを含む。ナノ多孔質フィルムの上面に凝縮したホール輸送体の溶液をスピンコーティングするという、現在の最高の解決法(ホール輸送体と色素をコートした表面の間の有益な相互作用を可能とし、溶媒が蒸発する間に浸潤を助ける駆動力として働く)を伴うのは、後半の工程であるが、完全にはほど遠い。このやり方で得た有機半導体フィルム中には多くの「ボイド」が存在し、そして断面イメージングから見られるとおり、数ミクロン超の厚みを通して材料の浸潤を得るのが困難であり、その厚さは概して10ミクロンというこの複合材料の光吸収深さよりかなり少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光電子および/または電気化学デバイスの、それらが有機半導体を有する一般的なそのようなデバイスの、および特にそのようなデバイスにおける、特に増感光電池における、メソスコピック固体半導体と有機半導体との間のインターフェースの、製造の改善および/または最適化である。
【0005】
メソスコピック表面を含む半導体間の接触を改善するために、有機半導体を含む電解質および半導体ポリマー溶液についてのいくつかの研究がされてきた。しかしながら、これらの溶液と電解質は多数の不利益を伴う、なぜならばこれらの電解質に存在する高圧力の有機溶媒カプセル化及びリークがほとんど抑制できず、そしてしたがって多くの電気化学および/または光電子デバイスの商業化に、特に増感太陽電池において、大きな課題となっているからである。電解質では、電荷輸送は材料拡散によって得られる。電子運動によって電荷輸送を提供することが目的である。
【0006】
欧州特許公報EP116088A1は、二つの電荷輸送材料の混合物が導電剤として使用される光電変換デバイスを開示する。40:60の割合で、この混合物は−1.4℃のTを有する。化学的に異なるホール輸送材料でできた混合物は、それらの成分の異なるエネルギーレベルのせいで、一般に有利である。さらに、EP116088A1で開示されたこのデバイスは非常に低い出力変換効率(η)を有し、それは概して0.02%未満である。
【0007】
Haridasらは、Synthetic Materials 121 (2001), 1573-1574において、色素増感太陽電池におけるホール伝導システムとしての低融点を有するポリマーホール伝導材料(HTM)を開示している。このポリマーは>8000の分子量を有し、且つHTMのナノ多孔質層への浸透が低いことが報告されている。著者たちが事実として認めているとおり、彼らのコンセプトは機能しなかった。
【0008】
したがって、光電子および/または電気化学デバイスにおける電解質及び溶液の利点を十分に利用し、一方でその不利益を排除することが、本発明のさらなる目的である。特に、有機半導体の典型的な利点の全てを有し、一方でメソスコピック半導体と有機半導体との間のインターフェースにおける接触を最適化することが目的である。
【0009】
デバイス加工の温度(「プロセス処理温度」)において液体であり、場合によりデバイス操作温度では固体である有機半導体を提供することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は液体有機半導体が機能的光電子デバイスで使用され得ることを際だって示した。電荷輸送特性およびメカニズムは、固体状態の相当品と類似しているとように見える。そのような材料を組みこんでいる色素増感太陽電池は、素晴らしい出力変換効率を伴って、競合的に働く。したがって、本発明は、この有機半導体の「新しい相」に関して多くの用途があることを示す。この驚くべき発見のより全般的に重要なことは、液体有機電荷輸送材料の使用が、一般的な有機電荷輸送材料の利点と組み合わせて本発明の装置における液体状態の全ての利点を予想以上に提供することである。
【0011】
これに応じて、一態様において、本発明は、≦180℃の温度で液体である有機電荷輸送材料を有する光電子および/または電気化学デバイスを提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、電荷輸送組成物を有する光電子および/または電気化学デバイスを提供し、該組成物は特定の化学構造の有機化合物を有し、前記化合物は電荷を輸送することが可能でありそしてそれゆえに有機電荷輸送材料を構成するものであって、前記組成物はあらゆる他の化学的に異なる有機電荷輸送材料を含まず、ここで前記有機電荷輸送材料は≦5000の分子量を有し且つ≦100℃の温度では液体であることを特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は以下の工程を有する太陽電池の調製方法を提供する:
・ 有機電荷輸送組成物を用意し、前記組成物が電荷輸送材料を含み、前記材料が≦180℃の温度で液体であること;
・ 必要に応じて、加熱によって該組成物を液化すること;
・ 前記組成物中に任意の溶媒が存在する場合に、該溶媒を除去すること;および
・ 場合によって増感した、半導体の表面に、該溶媒を含まない液体電荷輸送組成物を適用すること;
・ 場合に応じて、該液体電荷輸送材料を適用する工程に続いて:該液体ホール伝導材料の粘性を、該液体電荷輸送材料をゲル化、架橋および/またはポリマー化することによって増大すること;および
・ 前記半導体の反対の位置に対極を適用すること。
【0014】
さらなる別の態様において、本発明は以下の工程を有する太陽電池の調製法を提供する:
・ 有機電荷輸送組成物を用意し、前記組成物が電荷輸送材料を含み、前記材料が≦180℃の温度で液体であること;
・ 必要に応じて、加熱によって該組成物を液化すること;
・ 随意的に、前記組成物中に存在し得る任意の溶媒を除去すること;および
・ 場合によって増感した、半導体の表面に、該液体電荷輸送組成物を適用すること;
・ 該液体電荷輸送材料を適用する工程に続いて:該液体電荷輸送材料の粘性を、該液体電荷輸送材料をゲル化、架橋および/またはポリマー化することによって増大すること;および
・ 太陽電池を提供するように、前記電荷輸送材料に対極を適用すること。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、液体有機電荷輸送材料を提供する方法を提供し、該方法は、ここで定義され、有機電荷輸送材料に対して共有結合した残余分Raを提供することによって、有機電荷輸送材料を化学的に修飾する工程を含む。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、有機電荷輸送材料の融点を低下するための方法を提供し、該方法は、ここで定義され、有機電荷輸送材料に対して共有結合した残余分Raを提供することによって、該有機電荷輸送材料を化学的に修飾する工程を含む。
【0017】
またさらなる態様において、本発明は、≦100℃の温度で液体であり、且つ光電子および/または電気化学デバイスにおいて≦5000の分子量(M)を有する、単一の、化学的に純粋な電荷輸送材料を含む、有機電荷輸送組成物を使用することを提供する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は電荷輸送組成物を提供し、前記組成物は、電荷輸送液体を提供する特定の化学的構造の有機化合物として定義された有機電荷輸送材料を含み、ここで前記有機電荷輸送組成物はあらゆる他の、化学的に異なる有機電荷輸送材料を含まず、且つここで前記有機電荷輸送材料が≦5000の分子量を有し、且つ≦100℃の温度で液体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、電荷輸送材料を含む有機電荷輸送組成物を含んでいる光電子および/または電気化学デバイスに関係する。用語「含む」または「含んでいる」は、本発明の目的に関して、「他のものもある中で(何かを)包含する」ことを意図している。それは「〜だけからなる」ことを意図しない。
【0020】
例えば「電荷輸送材料」という表現において使用されるような「電荷輸送」は、電子および/またはホールの輸送について言及している。したがって、それは固体および/または液体状態にあるときに電子またはホールが材料を通じて動くことができることを意味する。好ましくは、それはホールの輸送について言及する。好ましくは、それはイオン性分子の輸送について言及しない。
【0021】
「材料」は、本発明の目的に関して、所与の量の化学的に同一の化合物であり、好ましくは有機化合物である。別の言葉では、材料は純粋な化学的化合物である。したがって、本発明のデバイスにおける電荷輸送材料は、電荷を輸送可能な有機化合物の化学構造によって定義される。電荷輸送組成物の電荷輸送特性は、電荷輸送材料に由来する。
【0022】
電荷輸送組成物は唯一の電荷輸送材料を含むこと、すなわち、電荷輸送特性を有する種々の化合物でできた混合物ではないこと、が好ましい。電荷輸送材料、特に有機物でできた組成物を含むもの、種々の化学構造の電荷輸送化合物の混合物は不利である、なぜならば種々の化学構造は種々の電気的特徴および特性を示し、電荷輸送を妨げるからである。電荷輸送材料を提供し、それが化学的に純粋な形態であるときに、十分に低いガラス転移温度(T)および/または室温で液体になる融点を有することは、本発明の驚くべき利点である。
【0023】
これに応じて、「前記有機電荷輸送組成物があらゆる他の、化学的に異なる有機電荷輸送材料を含まないことを特徴とする」という表現は、電荷輸送特性を有する異なる化学的化合物、特にそのような特性を有する有機化合物を<30wt%および/または<20wt%、より好ましくは<10wt%および/または<5wt%、およびもっとも好ましくは<3wt%、<2wt%および<1wt%有する電荷輸送組成物を言う。別の言葉では、この電荷輸送組成物は唯一の電荷輸送材料を含む。
【0024】
同一の成分の組成物であるが異なる化学構造および/または組成物を有する化合物は、異なる化学的化合物として考えられる。これに応じて、構造的な異性体は化学的に異なると考えられる。立体異性体は本発明の目的に関して化学的に同一として包含される。しかしながら、好ましくは、cis−trans異性体は化学的に異なると考えられる。いくつかの光学的異性体は化学的に同一と考えられる。より具体的には、電荷輸送材料は光学異性体および/またはメソ化合物の組成物によって構成されてもよい。しかしながら、好ましくは、電荷輸送材料は化学的に且つ光学的に純粋な電荷輸送有機化合物によって構成される。「純粋」とは、本発明の目的に関して、少なくとも70wt%、80wt%、90wt%、95wt%、97wt%、98wt%、および最も好ましくは99wt%であることを言う。電荷輸送材料は好ましくは≦5000、好ましくは≦4000、より好ましくは≦3000、さらに好ましくは≦1500および/または≦1000、最も好ましくは≦600の分子量を有する。電荷輸送材料が以下に詳述されるようにポリマー化および/または架橋される場合、これらの分子量はモノマーによる。
【0025】
本発明のデバイスで使用される有機電荷輸送材料は、≦180℃の温度で液体である。0.50mLのサンプルをBrookfield DV-II+粘度計で粘性を測った。本発明の目的に関して、液体は、15000cPs(センチポアズ)未満の粘性を有する材料であると定義される。
【0026】
本発明の好ましい実施態様によれば、有機電荷輸送材料は≦150℃の温度で液体である。好ましくは、それは100℃で液体である。より好ましくは、それは≦80℃で、さらに好ましくは≦60℃、≦50℃、≦30℃で、そして最も好ましくは室温(25℃)またはさらに室温未満、例えば≦10℃、≦0℃で、液体である。
【0027】
好ましくは、液体有機電荷輸送材料は液体結晶ではない。好ましくは、それは非晶質形態、例えば非晶質液体の形態で存在する。
【0028】
それが15000cPs超の粘性で存在する、すなわち、それが固体形態である場合、それは好ましくは非晶質固体の形態で存在する。
【0029】
好ましい実施態様によれば、有機電荷輸送材料はプロセス処理(=デバイス製造)において液体であり、且つ操作温度において固体であることができる。太陽電池のような、多くの光電子および/または電気化学デバイスに関して、例えば、操作温度は−10〜80℃、好ましくは0〜60℃の範囲にある。プロセス処理温度は、それらの温度を超えて、且つ一般に60〜250℃の範囲、そして好ましくは80〜150℃の範囲に設定されてもよい。
【0030】
プロセス処理および操作条件における液体および固体特性は、それぞれ、別の方法で得ることができる。一実施態様によれば、有機電荷輸送材料はプロセス処理および操作温度の間にある融点を有する。これに応じて、例えば上記で示された具体的な値では、この融点は180〜60℃の範囲であってもよい。
【0031】
あるいは、有機電荷輸送材料はさらに低い融点、好ましくは≦25℃を有してもよい。操作温度での固体性が望まれる場合、個々の電荷輸送材料の化合物および/または一部をゲル化、架橋および/またはポリマー化することによって得ることができる。好ましくは架橋および/またはポリマー化は電荷輸送化合物に接して存在する好適な残余分(Rp)を介して得られる。デバイス加工の間に、好適な架橋剤またはポリマー化開始材料も有機電荷輸送材料に添加されてもよく、現場で、すなわち既に有機電荷輸送材料を含むデバイスにおいて、架橋および/またはポリマー化が続けられる。ゲル化はゲル化剤を電荷輸送組成物に添加することによって得てもよい。ゲル化剤は、ポリマー、無機シリカナノ粒子および低分子量有機ゲル化剤から選択されてもよい。低分子量有機ゲル化剤は、熱可逆性による利点を有し、ゾルゲル転移温度を超えると、ナノ小孔が効果的に低粘性液体で充てんされることが可能であり、そして冷却すると機械的に安定な疑似固体電解質が得られる。これに応じて、電荷輸送組成物の粘性を高める工程は、電荷輸送組成物の温度をゲル化点未満に、例えば室温(25℃)に低下させることによって実現されてもよい。
【0032】
本発明の実施態様によれば、電荷輸送材料は上記で定義されるとおりプロセス処理および操作温度において液体である。これに応じて、それは好ましくは上記で示されるような≦60℃の融点を有する。
【0033】
好ましい実施態様によれば、液体電荷輸送材料は中性の電荷、すなわち帯電していない。好ましくは、それは塩の形態では存在しない。これに応じて、それは逆に帯電した成分、例えばカチオンと結合したアニオンを有さない。この特性は、好ましくはプロセス処理条件について言及する。操作の間に、電荷が輸送されるとき、電荷輸送材料の帯電した実例がもちろん形成される。しかしながら、液体電荷輸送体は好ましくはドープされて電荷密度を高めている。そのようにする場合、ドープした液体電荷輸送材料において電荷移動性および/または導電性が有利に高められることができる。
【0034】
本発明の一原理は、電荷輸送特性を有することが知られている固体有機材料が化学的に修飾されて液体状態に変えることができるという事実に存在する。
【0035】
これに応じて、好ましい実施態様において、本発明のデバイスに含まれる有機電荷輸送材料は、フェニレンビニレン、フッ素、フェニレン、ナフチレン、アントラセン、ペンタセン、インデノフルオレン、フェナントレニル、ペリレン、フラーレン、チオフェンおよびアクリレートの液体派生物から選択される。
【0036】
例えば、電荷輸送材料に共有結合した選択された残余分を提供することでこの液体特性を得る。これらの残余分は概して以下に詳述される残余分Raから選択されてもよい。
【0037】
好ましい実施態様によれば、本発明の光電子および/または電気化学デバイスは、以下の化学式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)のいずれかの構造を含む有機電荷輸送材料を含み、
【0038】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0039】
ここで、Nが存在する場合は窒素原子であり;
nが適用される場合は1〜20の範囲であり;
Aは、少なくとも一対の共役二重結合(−C=C−C=C−)を有するモノ−、または多環系であって、該環状の系は一以上のヘテロ原子を随意的に有し、且つ随意的に置換され、これにより構造Aをいくつか含む化合物において、それぞれのAは同一構造(II〜V)中に存在する他のAとは独立に選択されてもよく;
〜Aのそれぞれが存在する場合は、上記で定義されたAとは独立に選択されるAであり;
化学式(II)のvは窒素原子へ単結合によって連結した環状の系Aの数であって、1、2または3であり;
(R)wは、1〜30の炭素原子を有する炭化水素残余分から選択される随意的な残余分であって、随意的に置換され且つ随意的に1以上のヘテロ原子を含み、v+wが3を超えないという条件でwは0、1または2であり、および、w=2の場合、対応するRwまたはRwは同一かまたは異なるものであり;
Raは、随意的に同一の構造(I〜V)に存在する別のRaと一緒に、有機化合物の融点を低下することが可能である残余分を表し、且つ線形、分枝状、または環状アルキルまたは一以上の酸素原子を有する残余分から選択され、ここで該アルキルおよび/または該酸素含有残余分は随意的にハロゲン化され;
xは、一つのAに連結した独立に選択された残余分Raの数であり、および0〜個別のAの置換分が取り得る最大の数までで選択され、随意的に存在する別のAに連結した他の残余分Raの数xとは独立であり;
但し、構造(I〜V)につき上記で定義した酸素含有残余分であるRaが少なくとも一つ存在し;および同一の構造(I〜V)にいくつかのRaが存在する場合、それらは同一または異なっており;およびここで二以上のRaが酸素含有環を形成してもよく;
Rpは、モノマーとして使用される構造(I〜V)を有する化合物を伴うポリマー化反応、および/または構造(I〜V)を有する異なる化合物間の架橋を可能とする随意的な残余分を表し;
zは、一つのAに連結した残余分Rpの数であって0、1、および/または2であり、随意的に存在する別のAに連結した他の残余分Rpの数zとは独立であり;
RpはN原子に、(I〜V)の他の構造の置換分Rpおよび/またはAに、連結してもよく、結果として繰り返し、架橋および/またはポリマー化した(I〜V)の一部をもたらし;
(Ra/px/zおよび(R1〜4a/px/zが存在する場合は、上記で定義された独立に選択された残余分RaおよびRpを表す。
【0040】
好ましくは、電荷輸送材料は構造(I)〜(V)を有する化合物を含む。
【0041】
参照記号「(I〜V)」、「(VII〜XVI)」、または「A〜A」のような、いくつかの構造に対する一般的な参照記号は、例えば、それぞれ、(I)、(II)、(III)、(IV)または(V)の中から選ばれたいずれか一つ、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)または(XVI)の中から選ばれたいずれか一つ、またはA、A、AまたはAの中から選ばれたいずれか一つ、に対する参照記号を意味する。また、本発明の電荷輸送材料において、例えば、構造(I〜V)の異なる化合物が結合されてもよく、そして必要に応じて架橋および/またはポリマー化されてもよい。同様に、構造(I〜V)のいずれかにおいて、Aについて異なる構造が独立に、例えば(VII〜XVI)から選択されてもよい。
【0042】
好ましい実施態様によれば、本発明のデバイスの有機電荷輸送材料は、化学式(VI)の構造を含む。
【0043】
【化6】

【0044】
ここで、Ra1、Ra2およびRa3およびx1、x2およびx3が、それぞれ、上述のRaおよびxのように、独立に定義され;
Rp1、Rp2およびRp3およびz1、z2およびz3が、それぞれ、上述のRpおよびzのように、独立に定義される。化学式(VI)はしたがって上述の化学式(II)の見本であり、そこではvが3であり、R(w)が存在しない。
【0045】
好ましくは、Aはモノ−または多環の、随意的に置換した芳香族系であり、随意的に一以上のヘテロ原子を含む。好ましくは、Aはモノ−、二環または三環であり、より好ましくはモノ−、または二環である。好ましくは、一以上のヘテロ原子が存在する場合、それれは、O、S、Pおよび/またはNから、より好ましくはS、Pおよび/またはNから、独立に選択され、もっとも好ましくはN原子である。
【0046】
好ましい実施態様によれば、Aは、ベンゾール、ナフタリン、インデン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタレン、ペリレン、インデン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、フェナレン、アセナフテン、フルオランテン、およびヘテロ環化合物例えばピリジン、ピリミジン、ピリダジン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、インドリジン、インドール、イソインドール、カルバゾール、カルボリン、アクリジン、フェナントリジン、1、10−フェナトロリン、チオフェン、チアントレン、オキサントレン、および随意的に置換されたそれらの派生体から選択される。
【0047】
好ましい実施態様によれば、Aは以下の化学式(VII〜XVI)の構造から選択される:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0048】
ここで、Z、ZおよびZのそれぞれは、同一かまたは異なっており且つO、S、SO、SO、NR、N(R1’)(1”)、C(R)(R)、Si(R2’)(R3’)およびP(O)(OR)からなる群から選択され、ここでR、R1’およびR1”は同一かまたは異なっており且つそれぞれは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、およびアラルキル基からなる群から選択され、それらは少なくとも一つの化学式−N(Rで出来た基で置換され、ここでそれぞれの基Rは同一かまたは異なっており且つ水素原子、アルキル基およびアリール基からなる群から選択され、R、R、R2’およびR3’は同一かまたは異なっており且つそれぞれは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシアルキル基、アリール基、アリールオキシ基およびアラルキル基からなる群から選択されまたは炭素原子が付着したRおよびRはカルボニル基を表し、且つRは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、およびアラルキル基からなる群から選択される。
【0049】
Aに関する構造(XVI)の好ましい実施態様は、以下の構造(XVII)および(XVIII)から選択されてもよい。
【0050】
【化17】

【化18】

【0051】
好ましくは、(I〜V)のあらゆる構造において、全てのAは同一であるが、異なる置換がされる。例えば、全てのAが同一であるが、そのいくつかは置換され、そしてそのいくつかは置換されない。好ましくは、全てのAが同一であり、完全に同じように置換される。
【0052】
好ましい実施態様によれば、電荷輸送材料は以下の(XXVI)、(XXVII)および(XXVIII)の構造から選択される:
【0053】
【化19】

【化20】

【化21】

【0054】
あらゆるAがRaおよび/またはRpの他の置換基で置換されてもよい。他の置換器は当業者の選択によって選択されてもよく、それらについて特別な要求はここでは示されない。したがって他の置換基は、上記で定義された(II)における(R)wに相当してもよい。他の置換基およびR(w)は一般に1〜30の炭素原子を含み、随意的に置換されそして随意的に一以上の例えばヘテロ原子を含む、線形、分枝状または環状炭化水素残余分から選択される。この炭化水素はC−C単結合、二重結合または三重結合を含んでもよい。例えば、それは共役二重結合を含んでもよい。例えば、Aに関する随意的な他の残余分は例えばハロゲン、好ましくは−Fおよび/または−Cl、−CNまたは−NOで置換されてもよい。
【0055】
Aの他の置換基の一以上の炭素原子は、ヘテロ原子および/または-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, SO2-, -S(O)2O-, -N=, -P=, -NR'-, -PR'-, -P(O)(OR')-, -P(0)(0R')0-, -P(0)(NR'R')-, - P(0)(NR'R')0-, P(0)(NR'R')NR'-, -S(O)NR'-,および -S(O)2NR'の群から選択される基のいずれかによって置き換えられても、置き換えられなくてもよく、 ここで R'は H, C1-C6 アルキルであり、随意的に部分的にハロゲン化されている。
【0056】
好ましい実施態様によれば、任意のAは、ニトロ、シアノ、アミノ基から独立に選択された、一以上の置換基、および/または置換された置換基を含む、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキル基から選択された置換基で随意的に置換されてもよい。アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルは以下に定義される。
【0057】
好ましくは、例えば(II)におけるR(w)のような、Aに随的に存在するさらなる残余分は、二以上の共役二重結合を含むC4〜C30アルケンから選択される。
【0058】
Raは有機電荷輸送化合物の融点を低下することができる残余分である。融点を低下することができる能力について、少なくとも一つの残余分Raも有さない同一電荷輸送材料が言及される。具体的には、Raの機能は上述した温度で電荷輸送材料を液体にすることである。上述の温度範囲での所望の液体特性を得るために融点を調整することは、構造(I)〜(V)のいずれかに存在する、単一の残余部Raまたは同一又は異なる残余分Raの組み合わせによってもたらされてもよい。
【0059】
本発明者によれば、一以上の酸素原子を含む、少なくとも一つの線形、分枝状または環状残余分が、この液体特性を得るために好ましい。他の残余分、例えば以下に定義されるアルキル、は融点および/または液体特性の調整を助ける。
【0060】
Raはハロゲン化および/または過ハロゲン化されてもよく、残余分Raの単数、複数または全てのHがハロゲンで置き換えられてもよい。好ましくは、このハロゲンはフッ素である。
【0061】
Raが酸素含有化合物である場合、それは好ましくは1〜15の酸素原子を含む線形、分枝状または環状の飽和C1〜C30炭化水素であり、ただし酸素原子の数は好ましくは炭素の数を超えない。好ましくは、Raは酸素原子の少なくとも1.1〜2倍の炭素を含む。好ましくは、Raは2〜10の酸素原子を含むC2〜C20の飽和炭化水素であり、より好ましくは3〜6の酸素原子を含むC3〜C10の飽和炭化水素である。
【0062】
好ましくは、Raは線形または分枝状である。より好ましくはRaは線形である。
【0063】
好ましくは、Raは以下に定義されるC1〜C30、好ましくはC2〜C15および最も好ましくはC3〜C8のアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルアルコキシ基である。
【0064】
残余分Raの例は独立して以下の構造から選択されてもよい:
【0065】
【化22】

【0066】
Aは上記の化学式(I〜V)における任意のAを示している。
【0067】
存在する任意のRaが、Aに随意に存在するヘテロ原子または炭素原子に連結されてもよい。Raがヘテロ原子に連結される場合、それは好ましくはN原子に連結される。しかしながら、好ましくは、任意のRaが炭素原子に連結される。同一の構造(I〜V)の中で、任意のRaが、同一の構造にまたは同一のAに存在する別のRaのCまたはヘテロ原子に独立に連結されてもよい。
【0068】
好ましくは、全ての構造A、例えばA、A、A、AおよびAが上記の化学式(I〜V)に存在する場合、それは少なくとも一つのRaを含む。例えば、構造(I〜V)の化合物において、少なくとも一つの構造Aは上記で定義された酸素含有残余部Raを含むが、同一の化合物の一以上の他のおよび/または同一のAは、脂肪族化合物残余部Ra、例えば以下に定義されるアルキル基、好ましくはC2〜C20、より好ましくはC3〜C15のアルキル基、好ましくは線形のもの、を含む。
【0069】
本明細書における、全ての言及について、それぞれの残余部について、随意的に他のどこかでなされた好ましい定義に加えて、残余部の以下の定義がなされる。
【0070】
上記のアルコキシアルコキシ基は以下で定義されるアルコキシ基であり、それは以下で定義される一以上のアルコキシ基で置換され、それにより任意の置換しているアルコキシ基が一以上のアルコキシ基で置換されてもよいが、ただし炭素の総数は30を超えない。
【0071】
アルコキシ基は、1〜30、好ましくは2〜20、より好ましくは3〜10の炭素原子を有する線形、分枝状または環状のアルコキシ基である。
【0072】
アルコキシアルキル基は、以下で定義されるアルキル基であって、上記で定義されるアルコキシ基で置換されている。
【0073】
アルキル基は、1〜30、好ましくは2〜20、より好ましくは3〜10、最も好ましくは4〜8の炭素原子を有する線形、分枝状および/または環状である。アルケニル基は線形または分枝状のC2〜C30、好ましくはC2〜C20、より好ましくはC3〜C10アルケニル基である。アルキニル基は線形または分枝状のC2〜C30、好ましくはC2〜C20、より好ましくはC3〜C10線形または分枝状のアルキニル基である。不飽和残余部、アルケニルまたはアルキニルが2つの炭素だけを有する場合、それは分枝状ではない。
【0074】
上記のハロアルキル基は、上記で定義されたアルキル基であって、少なくとも一つのハロゲン原子で置換されている。
【0075】
アルキルアルコキシ基は、上記で定義されたアルコキシ基であって、少なくとも一つの上記で定義されたアルキル基で置換されており、ただし炭素の総数は30を超えない。
【0076】
上記のアリール基およびアラルキル基(それはアルキル部に1〜20の炭素原子を有する)および上記のアルコキシ基のアリール部は、芳香族炭化水素基であり、6〜14の炭素原子を一つ以上の環に持ち、その環は随意的に少なくとも一つの置換基で置換され、その置換基はニトロ基、シアノ基、アミノ基、上記で定義されたアルキル基、上記で定義されたハロアルキル基、上記で定義されたアルコキシアルキル基および上記で定義されたアルコキシ基からなる群から選択される。
【0077】
有機電荷輸送材料は、Aに連結した残余部Rpを含んでもよい。好ましい実施態様によれば、Rpは、構造(I)および/または(II)の中の異なるAに随意的に存在するかまたは連結しているAに随意的に存在する任意の他のRpとは独立に、ビニル、アリル、エチニルから選択される。
【0078】
本発明の装置に含まれる電荷輸送材料は、化学式(I〜V)の構造それ自体に相当する化合物から選択されてもよい。この場合、nが適用されるならば1であり、そして電荷輸送材料は、化学式(I〜V)の個別の化合物、または二以上の異なる化学式(I〜V)の化合物を含む混合物を含む。
【0079】
構造(I〜V)の化合物はまたポリマー化および/または架橋されてもよい。これは、例えば、構造(I〜V)にいずれかに随意的に存在する残余分Rpによって仲介されてもよい。結果として、(I〜V)から選択された所与の化合物または構造(I〜V)から選択された異なる化合物の混合物のオリゴマーおよび/またはポリマーが、得られて、電荷輸送材料を形成してもよい。小さいnは好ましくは2〜10の範囲である。
【0080】
本発明の装置に使用されるまたは含まれる電荷輸送材料の典型的な実施態様は、以下の化学式(XIX)、(XX)、(XXI)、(XXII)、(XXIII)、(XXV)および(XXVI)の化合物である。(XIX)、(XXIII)および(XXIV)は上記のより一般的な化学式(II)および(VI)の実施態様であるが、化合物(XX)および(XXI)はそれぞれ上記のより一般的な化学式(IV)および(V)の実施態様であり、ここでAはベンゾールであり、任意のRpは存在しない。化合物(XXII)はより一般的な化学式(I)の実施態様であり、ここでAは3N原子を含む。また化合物(XIX)〜(XXVI)は互いに結合されて、液体電荷輸送材料を提供してもよい。
【0081】
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【0082】
液体電荷輸送材料はさらなる成分と混合および/または供給されてもよい。一実施態様によれば、電荷輸送組成物は、(a)一以上のドーパント、(b)一以上の溶媒、(c)一以上の他の添加剤例えばイオン性化合物、および(c)前述の成分の組み合わせから選択されるさらなる成分を含む。より好ましくは、この組成物は、上記で定義された電荷輸送材料、一以上のドーパント、随意的な一以上の溶媒、および随意的でもある一以上の他の添加剤例えばイオン性化合物からなる。
【0083】
電荷輸送組成物は、好ましくは70〜100wt%、好ましくは80〜100wt%、および最も好ましくは90〜100wt%の前記有機電荷輸送材料を含む。
【0084】
これに応じて、このさらなる成分は、前記組成物中に、0〜30wt%、0〜20wt%、および0〜10wt%の量で存在する。例えば、それは1〜20wt%の量で存在する。
【0085】
好ましくは、液体電荷輸送材料はその電子および/またはホール輸送能をそれぞれに改善するためにドーピングがされてもよい。一般的に使用されるドーパントは、例えばNOBF、N(PhBr)SbClである。
【0086】
液体電荷輸送体は、有用とみなされれば、さらなる添加剤、例えばイオン性化合物、例えばTBAPF6, Na CF3SO3, Li CF3SO3, LiClO4 および Li[(CF3SO2)2Nを含んでもよい。
【0087】
一実施態様によれば、液体有機電荷輸送材料は、少なくとも一つの室温で溶融した塩および/または少なくとも一つのさらなる電荷輸送材料とさらに結合される。随意的な他の電荷輸送材料は、上記で定義された、液体または固体であってもよい。
【0088】
室温溶融塩は既に報告されている。例えば、EP1180774A2の、第22頁、第10行〜第29頁、第16行までで開示された溶融塩は、引用によりここに明確に組みこまれる。それらは電荷輸送材料全体の体積の0〜49%、好ましくは1〜20%で加えられる。好ましくは、それらは<10%で、より好ましくは<5%、そしてもっとも好ましくは<1vol%で存在する。
【0089】
電荷輸送組成物が本発明のデバイスに適用される前に、有機溶媒の量が低減可能であり、またはさらにすべて省略することすら可能であるということは、本発明の重要且つ予想外の利点である。増感太陽電池において、有機溶媒のカプセル化、蒸発およびリークは、主要な問題をもたらし、そしてこれらのデバイスの商業的な開発を未だ実現不可能としている。したがって、多くの努力を払って、揮発性有機溶媒の交換をしている。
【0090】
本発明の多くの利点は、溶媒の除去工程および他の不利益を避けるためにデバイス加工において概して溶媒を省くことが可能であるという事実に起因するが、例えば、本発明は原理的に溶媒の使用を排除しない。溶媒は、有機電荷輸送材料を「液化」する以外の目的のために、たとえば添加物またはそれに類するものを溶解するために、存在してもよい。溶媒が他の目的で使用されることも予想される。
【0091】
これに応じて、有機電荷輸送材料は、随意的に有機溶媒に添加混合または溶解されてもよい。好ましくは、本発明のデバイスに存在する液体電荷輸送材料は、50vol%未満の有機溶媒と添加混合される。好ましくは、電解質は、40%未満、より好ましくは30%未満、さらにより好ましくは20%未満、そしてさらには10%未満含む。百分率は室温(RT=25℃)での体積に基づいて示され、100%は液体電荷輸送材料と溶媒の合計を言う。
【0092】
有機溶媒は、上述のように好ましく少量で存在する場合、文献、例えばEP 0 986 079 A2, 第8頁, 第34-49行および同じように第9頁,第1-33行、で開示されたものから選択されてもよい。溶媒はEP 1 180 774A2, 第29頁, 第31-40行でも開示されている。しかしながら、好ましい溶媒はEP 1 507 307 Al, 第5頁, 第53-58行, および第 6頁, 第1-16行に開示されたものである。好ましくは、この溶媒はアルコキシアルカンニトリル溶媒である。これに応じて、このアルコキシ基はC1〜C8、好ましくはC1〜C4アルコキシ基であり、およびアルカンはC1〜C10アルカン、好ましくはC2〜C6アルカンである。好ましくは、この溶媒は、存在する場合、C1〜C4アルコキシプロピオンニトリル、例えば3−メトキシプロプリオニトリルである。
【0093】
好ましい実施態様によれば、有機電荷輸送材料は実質的に溶媒を含まない。実質的に含まないとは、本発明の目的に関して、電荷輸送材料が≦5vol%含むおよびもっとも好ましくは溶媒を全く含まないことを意味する。ここで示される溶媒の量は、好ましくは操作条件を言う。
【0094】
随意的な添加剤、室温溶融塩、例えば、随意的なさらなる電荷輸送材料、を含む結果物である電荷輸送組成物は、液体または固体であってもよい。しかしながら、結果物である電荷輸送組成物は好ましくはプロセス処理条件で液体であるが、操作条件下では固体であってもよい。したがってこの添加剤は当業者の裁量で液体電荷輸送材料の融点を調整および/または調節するために使用されてもよい。好ましくは、結果物である電荷輸送組成物は、液体電荷輸送材料それ自体について上記で適宜された集合状態および/または融点に関する特性を有する。
【0095】
液体有機電荷輸送材料は、電荷輸送材料を採用する任意の光電子および/または電気化学デバイスにおいて使用されてもよい。好ましい実施態様によれば、本発明の光電子および/または電気化学デバイスは、発光電気化学電池、発光ダイオード、電界効果トランジスタおよび/または太陽電池の群から選択される。好ましくは、このデバイスは光電子変換デバイス、好ましくはそれは太陽電池、より好ましくは増感太陽電池、例えば色素増感太陽電池である。
【0096】
本発明の太陽電池は、100mWcm−2の強度の模擬太陽光に曝されたときに、少なくとも0.5%の出力変換効率(η)を有する。前記効率(η)は低光強度(10mWcm−2)、中間光強度(50mWcm−2)および/または最大太陽光強度(100mWcm−2)の下で測定されてもよい。好ましくは、この太陽電池は、低、中間または最大太陽光強度のいずれかにおいて、少なくとも0.5%の効率(η)、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも1.5%、さらにより好ましくは少なくとも2%、および最も好ましくは少なくとも2.4%の効率(η)を有する。より好ましくは、上記の効率(η)は、これら全ての強度において得られる。より好ましくは、この太陽電池は、低および中間光強度において、η≧2.8である。
【0097】
本発明のデバイスが太陽電池である場合、それは、半導体層、随意的に架橋および/またはポリマー化された上述の有機電荷輸送組成物、および対極を含む半導体電極を含む。電荷輸送組成物は、好ましくは前記半導体電極と対極の間に配置され、電荷輸送層を形成する。本発明の好ましい実施態様によれば、この半導体はSi, TiO2, SnO2, Fe2O3, WO3, ZnO, Nb2O5, CdS, ZnS, PbS, Bi2S3, CdSe, GaP, InP, GaAs, CdTe, CuInS2, および/または CuInSe2の群から選択される材料をベースとしている。好ましくは、この半導体はメソ多孔質表面を含み、したがって色素によって随意的に被覆された表面を増やし、および有機電荷輸送材料と接触している。好ましくは、この半導体はガラス支持体またはプラスチックまたは金属ホイルの上に存在する。好ましくは、この支持体は導電性である。
【0098】
より好ましくは、このデバイスの電荷輸送材料と半導体の間のインターフェースは、好ましくは、例えば(a)分子増感剤、例えば色素、金属有機錯体、有機増感剤、組み込み表面接着基例えばカルボン酸、またはホスホン酸;(b)ポリマー性増感剤、例えばポリフェニレンビニレン、ポリチオテン、ポリフルオレン、ポリアセチレン、ポリペリレン、およびそれらの派生体;(c)量子ドット、例えばPbSまたはCdSeナノ粒子;(d)半導体の薄層、例えばSi、CuO、CdTeまたはPbSeであってその半導体に一つの電荷キャリアーを注入し且つこの電荷輸送層に反対に帯電したキャリアーを注入することができるもの;および/または(e)上記の全てから選択された二以上のものを含む組み合わせ物、によって増感される。
【0099】
さらに好ましい実施態様において、このデバイスは、色素または量子ドット増感太陽電池である。量子ドット増感太陽電池は、例えばUS 6,861,722に開示されている。色素増感太陽電池において、色素は太陽光を吸収し電気エネルギーに変換するために使用される。色素の例はEP 0 986 079 A2, EP 1 180 774A2, および EP 1 507 307 Alに開示されている。
【0100】
例えば、対極は、Ptまたは炭素またはポリ(3,4―エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)で被覆したガラス上のフッ素ドープしたスズ酸化物またはインジウムドープしたスズ酸化物(それぞれFTO−またはITOガラス)である。
【0101】
本発明は、液体有機電荷輸送材料を提供するための、および有機電荷輸送材料の融点を低下させるための方法を提供し、該方法は、修飾するのに好適な残余分を提供することによって有機電荷輸送材料を化学的に修飾する工程を有し、且つ好ましくは有機電荷輸送材料の融点を低下させる。この能力を有することが示された好ましい残余分は、上述のような残余分Raである。
【0102】
驚くべきことに、Ra型の残余分の数および/または構造を選択することによって、当業者の裁量で所与の温度での融点および/または集合状態を変更することが可能である。液体電荷輸送材料が、溶媒がない場合に、その電荷輸送能を維持することに注目すべきである。本発明では、この「液化した」電荷輸送材料が光電子および/または電気化学デバイスにおいて有効であることが示される。有機電荷輸送材料に融点を変更する残余分を提供するための、化学的反応および/または手順は当業者が利用可能なものである。
【0103】
その融点が変更される有機電荷輸送材料は文献から取ることが可能である。それらは上記の構造(I〜V)の化合物から選択されてもよく、そこではRaは存在せず、または既に存在していた場合は、融点が十分に低下しない。次に、有機電荷輸送材料を化学的に修飾する工程が、上記に定義される残余分Raを含む構造(I〜V)の構造の化合物を得るために十分な数のRaを提供することによって行われる。このようにして電荷輸送材料の融点は所望の温度近くに調整されてもよい。
【0104】
これに応じて、≦180℃の温度で液体である有機電荷輸送材料が提供される。
【0105】
太陽電池を調製する方法において、この液体有機電荷輸送材料は、随意的に増感した、太陽電池の半導体の表面に適用される。液体有機電荷輸送材料は、例えば、液体電解質のように適用され、後者はこれらのデバイスにおいて使用されることがいくらかある。
【0106】
本発明の方法によれば、有機電荷輸送材料は液体の形態で太陽電池の半導体の表面に適用される。液体を適用するための多くの別の方法が使用されてもよい。
【0107】
例えば、太陽電池は既にアノードおよびカソードに適用した半導体を含んでもよく、したがって太陽電池は電荷輸送材料で充てんされる空隙を含んでいる。次に液体電荷輸送材料は、空隙が電荷輸送材料で充てんされるまで、穴を介して空隙へ加えられてもよい。例えば、この液体材料はポンプで空隙に押し込まれてもよく、またはそれは空隙に不厚または真空を作ることによって空隙に引き込まれてもよい。
【0108】
あるいは、液体電荷輸送材料はアノードに適用した半導体に注いでもよく、続いて液体材料にカソードを加え、そして半導体とカソードの間のあらゆる隙間をシールしてもよい。このシールはこのようにして得られた太陽電池からのリークを防止する。
【0109】
随意的に、太陽電池を調製する方法において、液体電荷輸送材料を適用した後で、粘性および/または融点を高めてもよい。例えば、融点は180℃を超える値、好ましくは100℃超に高めてもよい、ただし当初の電荷輸送材料はこれらの温度で液体でなければならない。ひとたび液体電荷輸送材料が適用されると、太陽電池の電子伝導材料の増感表面の間のインターフェースの最適化された被覆がすぐに構築され、そしてそれは有機電荷輸送材料の固体特性を修復するのに有益である。これは、現場での有機電荷輸送材料の個々の成分の架橋および/またはポリマー化によって好ましく得ることができる。この目的を達成するために、液体有機電荷輸送材料が、好ましく残余部Rpを含み、それが架橋および/またはポリマー化を可能にする。粘性を高める他のやり方は、当業者が利用可能であり、例えば有機電荷輸送材料へポリマーを添加して、ゲル化を得ることがある。
【0110】
本発明は以下の例を考慮することによって、さらに理解されるであろう。これらの例は発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0111】
例1:tris-(p−メトキシエトキシフェニル)アミン(TMEPA)の合成
環流冷却器および磁気攪拌機を備えた250mlの丸底フラスコで、ナトリウム(1.38g)をそのまま小片に切断したものを乾燥した2−メトキシエタノールに加えた。完全に溶解した後、モレキュラーシーブで乾燥させたsym−コリジン(125ml)、銅(I)ヨウ化物(1.9g)およびtris−ブロモフェニルアミン(4.96g)を加えた、およびこの混合物を強制的に攪拌しながら18時間加熱して環流した。次にそれをまだ熱いうちに濾過し、およびその溶媒をロータリーエバポレーター(rotavapor)で除去した。これからジエチルエーテルで粘性のある液体を抽出した。抽出物を1M水性HClで洗浄し、および水で3、4回洗浄した。有機相を蒸発させて粗製化合物としてTMEPAの粘性のある液体を得た。それをカラムに通過させてさらに精製した。
【0112】
TMEPAは、動的走査熱量測定による測定で−10℃未満のガラス転移温度を有していた。
【0113】
例2:TMEPAの電荷輸送特性および吸収スペクトル
アセトニトリル溶液中の0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスヘート(TBAPF)におけるTMEPAを元にサイクリックボルタンメトリーを行った。結果を図1Aに示す。
【0114】
酸化ピークは、約0.17VvsFc+/Fcであると観察され、これは真空下での最高被占軌道(HOMO)エネルギーレベルの3.54eVに相当する。これは、光起電プロセスにおいて電荷の生成と分離を促すために、酸化した色素分子(HOMO〜−5.7eV)からのホール輸送を可能にする好ましい低さである。
【0115】
図1Bは、元のTMEPAと、7%モル濃度のニトロソニウムテトラフルオロボレート(NOBF)をドープしたTMEPAの両方の吸収スペクトルを示す。元の材料の吸収開始は約400nmで起こった。励起結合エネルギーが0.4eV14と仮定すると、結果として得られるエネルギーギャップおよび最低空軌道(LUMO)エネルギーレベルは、それぞれ、真空に対して、3.5eVおよび−1.8eVである。NOBFがうまく液体ホール輸送体をドープしたことが、誘導酸化吸収ピークから明らかである。幸運なことに、酸化された種の吸収ピークはこのred(還元物)に対して十分遠くにシフトし、
この材料は色素分子における光の吸収をあまり低下させない。その吸収も図1Bに示している。
【0116】
例3:純粋なTMEPAおよびNOBFをドープしたTMEPAの導電性
ドープしたTMEPAと元のTMEPAの導電性を確証するために、Wang Q et al., J. Phys. Chem. B, 2005, 109, 14945にしたがって、インピーダンス測定を行った。20μmのSurlynスペーサーで分離した二つのフッ素をドープしたSnO(FTO)電極を有するサンドイッチ電池を液体ホール輸送体を伴って閉じ込んだ。
【0117】
結果を図2に示す。図2の挿入図は、異なる温度での7%NOBFをドープしたTMEPAのナイキストプロットを示す。電荷輸送のための活性化エネルギーは、アレニウスプロットから導かれるように、1%超の電気化学ドーパントが材料に加えられるとかなり低下する(純粋な材料に対する0.75eVから、7%ドーパントが加えられると0.56eV)。これは、電荷輸送の第一のメカニズムが電荷「ホッピング」であって物質移動ではないことの強力な証拠である。7%ドーパントに伴う活性化エネルギーは、ポリ(p−フェニレンビニレン)の場合に観察されるエネルギーに匹敵し、これはこの新しい材料クラスにおける電荷輸送メカニズムが従来の固体有機半導体の場合のものに類似していることを示唆している。純粋な材料に比べて1%のドーピングをしたときに僅かに活性化エネルギーが大きくなるのは、ドーパントのアニオンによるキャリアーのトラッピングによるものだろう。これは、やはり従来の固体有機半導体と一致しており、そこでは1%を超えるドーピングレベルが導電性を高めるために必要とされる。
【0118】
例4:太陽電池の加工
二層の、メソポーラスTiO電極を、光アノードを得るための、Kavan, L. & Gratzel, M. Highly efficient semiconducting TiO2 photoelectrodes prepared by aerosol pyrolysis. Electrochim. Acta 40, 643-652 (1995), (Chapter 3)で開示された最適化手順に従って、調製した。これに応じて、TiOナノ粒子(〜20nm直径)でできた2.5μm厚のメソポーラス層を、スプレー熱分解によってコンパクトなTiO2中間層(100nm厚)で予めコーティングしたフッ素ドープSnOガラスシートにスクリーン印刷した。
【0119】
増感のために使用した色素は、K51と称され、そしてその合成は、Snaith, H. J., Zakeeruddin, S. M., Schmidt-Mende, L., Klein, C. & Gratzel, M. Ion-coordinating sensitizer in solid-state hybrid solar cells. Angewandte Chemie-International Edition 44, 6413-6417 (2005)に記載されている。
【0120】
この色素K51は、Ito, S. et al. Control of dark current in photoelectrochemical (TiO2/I--I-3(-)) and dye-sensitized solar cells. Chemical Communications, 4351-4353 (2005)に開示されたN719: Ru 色素に関する手順にしたがって、TiO層電極に吸着される。
【0121】
しかしながら、上記のItoらによって報告されるような、Ptの代わりに、FTOガラス上に蒸着した50μmAuコーティングを本例で適用した。
【0122】
太陽電池で使用するために、TMEPAを電気化学的ドーパントとして0.07MのN(PhBr)SbClでドープし、100μlのTMEPA毎に対する12μlのテトラブチルピリジンおよび0.1MのLi[(CFSON]の添加をした。これらの添加剤は、液体ホール輸送体を伴って混和する前に、アセトニトリル中に予め溶解させた。デバイス加工の前に全ての残余の溶媒を除去するために、調製した「溶液」を一晩10−1mbarにポンプダウンした。
【0123】
次に「空」のセルをカソードにある小さな穴を介してTMEPAで充てんした;20μlの材料を穴の頂部に投薬した。次にこのセルを真空下にポンプし、これで液体ホール輸送体を介してシールされたデバイスから空気の気泡を引き出した。真空除去が結果として外圧によるセルへのTMEPAの押し込みをもたらした。この手順は、Ito, S. et al. Control of dark current in photoelectrochemical (TiO2/I--I-3(-)) and dye-sensitized solar cells. Chemical Communications, 4351-4353 (2005)により詳細に開示されている。
【0124】
例5:太陽電池の特性
例4の太陽電池の光起電特性の特性描写をU. Bach et al. Nature 1998, vol. 395, 583-585で報告されているように行った。
【0125】
これに応じて、電流電圧特性、典型的なデバイスパラメータ(短絡回路光電流密度(Jsc)、充てん比(FF)、開回路光電圧(Voc)、および光起電力変換効率(η)および入射光子対電流変換効率(IPCE)を、U. Bach et al. Nature 1998, vol. 395, 583-585で詳述されるように、測定した。光電流−電圧特性を、Keithley 2400 SourceMeter と400WXe ランプを用いて測定した。エアマス(AM)1.5Gに対するランプのスペクトル分散に近づけるために、Schott KG3フィルターを使用した。光の強度は、ドイツのフライブルグにあるISE−フラウンフォーファー研究所で校正したシリコン太陽電池を使用することによって、所望のエネルギー出力に調整した。スペクトルの不一致のために効率を修正した。充てん比(FF)はFF1/4VoptIopt=IscVocと定義され、ここで、VoptとIoptはそれぞれ最大電力出力に対する電流と電圧であり、そしてIscおよびUocはそれぞれ短絡回路電流および開回路電圧である。
【0126】
図3Aは、暗所においての、および10、53および100mWcm−2での模擬AM1.5太陽条件下の、電流−電圧特性を示す。我々は、このデバイスがかなりうまく作動し、+/−1.0Vで10を超えるという暗所中での素晴らしい整流比を伴い、良好なダイオード特性を示すことを発見した。
【0127】
このデバイスの性能パラメータを表1に示す。
【表1】

【0128】
出力変換効率は、入射照明強度10mWcm−2で3%、および100mWcm−2で2.4%の近くにある。一つの材料2、2’、7、7’−テトラキス(N、N−ジ−メトキシフェニルアミン)−9、9’−スピロビフルオレン(スピロ−MeOTAD)を例外として、これは電荷移送および輸送成分として有機半導体を使用している色素増感太陽電池に関して、報告されている最高の出力変換効率である。さらに、メソ多孔質色素増感太陽電池で使用されたスピロ−MeOTADの最初の報告は、低い光強度において0.7%の効率を示すデバイスを提示している。これが改善された知見および最適化を伴って4%を超えるまで増加しており、そしてこのシステムを伴って同様の改善が得られることが期待される。
【0129】
この電池の動作が従来どおりであること、それは結果として生じるTiOへの電荷移送およびホール輸送体を伴って色素分子で光吸収が生じるということ、を検証するために、入射光子−対−電子補正効率(IPCE)光起電作動スペクトルを図3Bに示した。第一に、これらのセルは従来どおりに動作するように見え、第二にスピロ−MeOTADを類似の色素を用いて得た場合よりかなり高い量子効率を伴って非常に良好である。今までのところ、これは、色素増感太陽電池で使用されたあらゆる有機ホール輸送体に関して報告された最高の量子効率である。
【0130】
例6:10−2−(2−メトキシエトキシ)エチル−10H−フェノキサジン(MEEP)の合成と太陽電池の加工
ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、5ml)を、−78℃のTHF中10H−フェノキサジン(1.00g、5.46mmol)の攪拌溶液に滴状に加えた、そして1時間攪拌を続けた。この混合物に1−ブロモ−2(2−メトキシエトキシ)エタン(1.5ml、11mmol)を滴状に加え、そしてさらに1時間−78℃で攪拌を続けた。この混合物を暖めて室温にし、そして一晩攪拌し、その後結果物のダークオレンジの溶液を水で冷やした。この水相を分離し、そしてジクロロメタンで抽出した。結集した有機相をマグネシウム硫酸塩で乾燥し、そして減圧下で蒸発させた。粗製混合物をクロマトグラフおよびクーゲルロール蒸留で精製して浅黄色のオイルとしての製品をもたらした(1.11g、72%)。アセトニトリル溶液中の0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスヘート(TBAPF)におけるMEEPのサイクリックボルタンメトリーは、0.26VvsFe/Feにおける可逆的な酸化還元対を示す。
【0131】
【化30】

【0132】
太陽電池の加工は、TEMPAをホール輸送材料としてのMEEPに変えて例4のように行った。太陽電池の光起電特性の特性描写を例5で報告されるように行った。このデバイスは100mWcmAM1.5放射照度光強度の下で1.1%の光対電気変換効率をもたらした。中間の光強度(53mWcm−2)の下では、1.5%の効率が得られた。
【0133】
例7:ポリマーゲルホール輸送材料
MEEPとメチルメタクリレートの等モル混合物を調製し、そして窒素ガスで泡立て確実に酸素を含まない雰囲気にした。この溶媒を含まない混合物にさらに2mol%のベンゾイルペルオキシド(BPO)を開始剤として加え(1wt%のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)も使用可能)、結果として、TEMPAを置き換えた例4に記載されるような太陽電池を調製するために使用される混合物をもたらした。太陽電池を80℃に12時間加熱することによって、ラジカルのポリマー化を起こした。この結果物であるポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)はMEEPと良好に適合し、そして機能的太陽電池が得られる。
【0134】
例8:低分子量ゲル化剤での液体ホール輸送材料のゲル化
シクロヘキサンカルボン酸−[4−(3−テトラデシル−ウレイド)−フェニル]−アミドは、液体ホール輸送材料をゲル化するためのゲル化剤として使用した。シクロヘキサンカルボン酸−[4−(3−テトラデシル−ウレイド)−フェニル]−アミド(2wt%)をMEEPと混合し、そして次に固体が観察出来なくなるまで加熱した。太陽電池を直ちに例4に記載されるように調製し、TEMPAを溶解した低分子量ゲル化剤を含む混合物に変えた。続く数時間で、ゲル化剤分子が水素結合の形成によりナノスケールの小繊維を組み上げ、そしてそれにより太陽電池のホール伝導層における三次元ネットワークを形成した。これが、液体混合物のゲル化につながり、そして液体が流動するのを妨げる。室温へ冷却後、均質で動かないゲルが形成された。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】ラジカルカチオンおよびジカチオンの形成を示唆するtris(p−メトキシエトキシフェニル)アミン(TMEPA)の定常状態(上方の曲線)および異なるパルス(下方の曲線)のボルタモグラムを示す。
【図1B】元のTMEPA(実線)、7%モル濃度のNOBFをドープしたTMEPA(点線)およびビピリジンルテニウム複合体増感分子「K51」でコートした1.5μm厚のナノ多孔質TiOフィルムでできた20μm厚の電池の場合、の紫外−可視吸収スペクトル(1−Log(透過率))を示す。
【図2】純粋なTMEPA(○)、電気化学ドーパントとして1%分子濃度のNOBFを加えたもの(□)、および7%分子濃度のNOBFを加えたもの(◇)、の導電性対温度のアレニウスプロット。
【図3A】暗所(下方の線)、およびAM1.5の下での模擬太陽照明10(約0.8mAcm−2の線)、53(約3mAcm−2の線)および100(上方の線)mWcm−2での、7%NOBFドーパントを伴う液体−ホール−輸送体TEMPAを組みこんだ色素増感太陽電池の電流−電圧特性を示す。
【図3B】図3Aで測定したのと同様の装置の場合の入射光子対光起電力作用スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷輸送組成物を含む光電子および/または電気化学デバイスであって、該組成物は特定の化学構造の有機化合物を含み、前記化合物は電荷を輸送することが可能でありそしてそれゆえに有機電荷輸送材料を構成するものであって、前記組成物があらゆる他の化学的に異なる有機電荷輸送材料を含まず、ここで前記有機電荷輸送材料は≦5000の分子量を有し且つ≦100℃の温度では液体であることを特徴とする光電子および/または電気化学デバイス。
【請求項2】
電荷輸送材料が≦60℃の温度では液体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
電荷輸送組成物が70〜100wt%の前記有機電荷輸送材料を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
電荷輸送材料が非晶質液体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
電荷輸送組成物が、(a)一以上のドーパント、(b)一以上の溶媒、(c)イオン化合物のような一以上の他の添加剤、および(c)前述の成分の組み合わせから選択される成分をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
液体電荷輸送組成物が実質的に溶媒を含まず、および/または電荷輸送材料が電荷中性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電荷輸送材料の分子量が≦3000である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
発光電気化学電池、発光ダイオード、電界効果トランジスタ、および/または太陽電池の群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
・ 半導体層を含む半導体電極;
・ 半導体電極の反対の対極;および
・ 前記電荷輸送組成物によって提供される、前記半導体電極と対極との間に配置した電荷輸送層、
を含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
100mWcm−2の強度の模擬太陽光に曝されるときの出力変換効率(η)が少なくとも0.5%の太陽電池である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
液体電荷輸送材料が、以下の化学式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)のいずれかの構造を含み、
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

ここで、Nが存在する場合は窒素原子であり;
nが適用される場合は1〜20の範囲であり;
Aは、少なくとも一対の共役二重結合(−C=C−C=C−)を含むモノ−、または多環系であって、該環状の系は一以上のヘテロ原子を随意的に含み、且つ随意的に置換され、これにより構造Aをいくつか含む化合物において、それぞれのAは同一構造(I〜V)中に存在する他のAとは独立に選択されてもよく;
〜Aのそれぞれが存在する場合は、上記で定義されたAとは独立に選択されるAであり;
化学式(II)のvは窒素原子へ単結合によって連結した環状の系Aの数であって、1、2または3であり;
(R)wは、1〜30の炭素原子を含む炭化水素残余分から選択される随意的な残余分であって、随意的に置換され且つ随意的に1以上のヘテロ原子を含み、v+wが3を超えないという条件でwは0、1または2であり、および、w=2の場合、対応するRwまたはRwは同一かまたは異なるものであり;
Raは、随意的に同一の構造(I〜V)に存在する別のRaと一緒に、有機化合物の融点を低下することが可能である残余分を表し、且つ線形、分枝状、または環状アルキルまたは一以上の酸素原子を含む残余分から選択され、ここで該アルキルおよび/または該酸素含有残余分は随意的にハロゲン化され;
xは、一つのAに連結した独立に選択された残余分Raの数であり、および0〜個別のAの置換分が取り得る最大の数までで選択され、随意的に存在する別のAに連結した他の残余分Raの数xとは独立であり;
但し、構造(I〜V)につき上記で定義した酸素含有残余分であるRaが少なくとも一つ存在し;および同一の構造(I〜V)にいくつかのRaが存在する場合、それらは同一または異なっており;およびここで二以上のRaが酸素含有環を形成してもよく;
Rpは、モノマーとして使用される構造(I〜V)を含む化合物を伴うポリマー化反応、および/または構造(I〜V)を含む異なる化合物間の架橋を可能とする随意的な残余分を表し;
zは、一つのAに連結した残余分Rpの数であって0、1、および/または2であり、随意的に存在する別のAに連結した他の残余分Rpの数zとは独立であり;
RpはN原子に、(I〜V)の他の構造の置換分Rpおよび/またはAに、連結してもよく、結果として繰り返し、架橋および/またはポリマー化した(I〜V)の一部をもたらし;
(Ra/px/zおよび(R1〜4a/px/zが存在する場合は、上記で定義された独立に選択された残余分RaおよびRpを表す、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
液体有機電荷輸送材料が化学式(VI)の構造を含み、
【化6】

Ra1、Ra2およびRa3およびx1、x2およびx3が、請求項16における、それぞれ、Raおよびxのように、独立に定義され;
Rp1、Rp2およびRp3およびz1、z2およびz3が、請求項16における、それぞれ、Rpおよびzのように、独立に定義される、
請求項1〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
Aが以下の化学式(V〜XVI)から選択され、
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

、ZおよびZのそれぞれは、同一かまたは異なっており且つO、S、SO、SO、NR、N(R1’)(1”)、C(R)(R)、Si(R2’)(R3’)およびP(O)(OR)からなる群から選択され、ここでR、R1’およびR1”は同一かまたは異なっており且つそれぞれは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、およびアラルキル基からなる群から選択され、それらは少なくとも一つの化学式−N(Rで出来た基で置換され、ここでそれぞれの基Rは同一かまたは異なっており且つ水素原子、アルキル基およびアリール基からなる群から選択され、R、R、R2’およびR3’は同一かまたは異なっており且つそれぞれは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルコキシアルキル基、アリール基、アリールオキシ基およびアラルキル基からなる群から選択されまたは炭素原子が付着したRおよびRはカルボニル基を表し、且つRは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、およびアラルキル基からなる群から選択される、請求項11または12に記載のデバイス。
【請求項14】
任意のRpが、連結したAに随意的に存在するかまたは構造(I)および/または(II)の中にある異なるAに随意的に存在する、他の任意のRpとは独立に、ビニル、アリル、エチニルから選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
以下の工程:
・ 有機電荷輸送組成物を用意し、前記組成物が電荷輸送材料を含み、前記材料が≦180℃の温度で液体であること;
・ 必要に応じて、加熱によって該組成物を液化すること;
・ 前記組成物中に任意の溶媒が存在する場合に、該溶媒を除去すること;および
・ 場合によって増感した、半導体の表面に、該溶媒を含まない液体電荷輸送組成物を適用すること;
・ 場合に応じて、該液体電荷輸送材料を適用する工程に続いて:該液体ホール伝導材料の粘性を、該液体電荷輸送材料をゲル化、架橋および/またはポリマー化することによって増大すること;および
・ 前記半導体の反対の位置に対極を適用すること、
を含んでなる、太陽電池を調製する方法。
【請求項16】
内部に、空気で占有された空間を含む太陽電池を提供するように、該溶媒を含まない液体電荷輸送組成物を適用する工程の前に、対極が適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
溶媒を含まない、液体電荷輸送組成物が該太陽電池の電極にある穴を通じて適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
以下の工程:
・ 有機電荷輸送組成物を用意し、前記組成物が電荷輸送材料を含み、前記材料が≦180℃の温度で液体であること;
・ 必要に応じて、加熱によって該組成物を液化すること;
・ 随意的に、前記組成物中に存在し得る任意の溶媒を除去すること;および
・ 場合によって増感した、半導体の表面に、該液体電荷輸送組成物を適用すること;
・ 該液体電荷輸送材料を適用する工程に続いて:該液体電荷輸送材料の粘性を、該液体電荷輸送材料をゲル化、架橋および/またはポリマー化することによって増大すること;および
・ 太陽電池を提供するように、前記電荷輸送材料に対極を適用すること。
を含んでなる、太陽電池を調製する方法。
【請求項19】
≦100℃の温度で液体であり、且つ光電子および/または電気化学デバイスにおいて≦5000の分子量(M)を有する、単一の、化学的に純粋な電荷輸送材料を含む、有機電荷輸送組成物の使用。
【請求項20】
電荷輸送組成物であって、前記組成物は、電荷輸送非晶質液体を提供する特定の化学構造の有機化合物として定義された有機電荷輸送材料を含み、ここで前記有機電荷輸送組成物はあらゆる他の、化学的に異なる有機電荷輸送材料を含まず、且つここで前記有機電荷輸送材料が≦5000の分子量を有し、且つ≦100℃の温度で液体である、組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2009−530791(P2009−530791A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501007(P2009−501007)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050992
【国際公開番号】WO2007/107961
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(507029834)
【Fターム(参考)】