説明

液体食品の殺菌装置および液体食品の製造方法

【課題】パルプを含有する液体食品であっても、貯留送出部の目詰まりが発生し難く、長時間の連続運転が可能な液体食品の殺菌装置を提供する。
【解決手段】液体食品11を流通させて殺菌する殺菌装置本体部12と、殺菌前の液体食品を殺菌装置本体部内に供給する液体食品供給部13とを備える液体食品の殺菌装置10であって、殺菌装置本体部内に送出しうる容器状の貯留送出部16とを備え、貯留送出部の底面部17には、殺菌装置本体部内に液体食品を送出する複数の送出孔部18が形成されると共に、液体食品注入管路部15の下端部と対向する位置において、液体食品注入管路部に向かって突出する錐形の突部20が形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の蒸気で満たされた空間に、液体食品を注入することにより、上記液体食品の殺菌を行う、液体食品の殺菌装置であって、特に繊維質(以下パルプと称する)を含有する液体食品の加熱殺菌を行う殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品の製造プラントにおいて、上記液体食品を加熱殺菌する殺菌装置は、液体食品の品質管理上、非常に重要な装置である。
液体食品の加熱殺菌の手段としては、プレート式熱交換器、シェル&チューブタイプの熱交換器に代表されるように、熱媒と液体食品とが直接接触せずに、金属等の熱媒伝導体を介して、熱媒の熱を液体食品に伝導して加熱する、所謂間接加熱式加熱殺菌装置と、高温の蒸気に、殺菌対象の液体食品を直接流し込み、混合することによって、液体食品を加熱殺菌する所謂直接加熱式殺菌装置に大別される。
【0003】
図3は、液体食品の製造プラント(図3には図示せず)に組み込まれた、直接加熱式殺菌装置70の構成を示す軸方向断面図である。
図3に示すように、直接加熱式殺菌装置70は、液体食品71が流通しうる中空円柱形の殺菌装置本体部72と、上記殺菌装置本体部72の上端部内方に配設され、殺菌対象の液体食品71を上記殺菌装置本体部72内に供給する液体食品供給部73とを備えている。
【0004】
上記液体食品供給部73は、上記殺菌装置本体部72の上端部内方に配置され、前工程から送出された殺菌前の液体食品を殺菌装置本体部72に注入する液体食品注入管路部74と、上記液体食品注入管路部74の下方に配置され、上記液体食品注入管路部74から供給される液体食品71を、所定量貯留すると共に、上記殺菌装置本体部72内に送出しうる容器状の貯留送出部75とを備えている。
【0005】
また、上記液体食品注入管路部74は、細円筒形に形成され、上記殺菌装置本体部72の上面部77を貫通して配設されている。
また、上記殺菌装置本体部72の上端部近傍には、上記殺菌装置本体部72の内部の空気を排出する空気排出用スリーブ部86が上記殺菌装置本体部72の径方向外方に突出して配設されている。
【0006】
図4は、図3の液体食品供給部73の拡大図である。
図4に示すように、上記貯留送出部75は、円形の底面部76と、上記底面部76の外周縁部に延設されると共に、上方に向かって次第に拡開して形成された立ち上がり部78とから形成され、上記立ち上がり部78の上端部に形成されたフランジ部79と上記殺菌装置本体部72の内壁上端部に設けられた段部80とが互いに係合することによって、上記殺菌装置本体部72の上端部内方に固定されている。
【0007】
また、図4に示すように、上記貯留送出部75の底面部76には、厚さ方向に貫通する複数の送出孔部81が上記底面部76の周方向に沿って所定間隔寸法毎に設けられ、上記送出孔部81の上端部には、上端に向かって次第に拡開する漏斗状のテーパー部82が形成されている。
【0008】
また、図3に示すように、上記殺菌装置本体部72の下端部近傍には、上記殺菌装置本体部72の内部に高温の蒸気を送入する加熱蒸気送入部83が径方向外方に突出して形成されると共に、上記殺菌装置本体部72の下端部には、殺菌後の液体食品71を次工程に搬送する、殺菌後液体食品送出部84が配設されている。
【0009】
図3に示すように、上記液体食品供給部73において、上記液体食品注入管路部74から供給された液体食品71は、上記貯留送出部75内の空間85に所定量が貯留され、上記液体食品71の自重によって、上記送出孔部81、81..から、上記殺菌装置本体部72内に自由落下により送出される。
【0010】
上記送出孔部81、81..から送出された液体食品71は、予め上記加熱蒸気送入部83から送入した高温の蒸気で満たされた上記殺菌装置本体部72内に落下する過程において、高温蒸気と接触することによって加熱殺菌され、殺菌後の液体食品71は殺菌後液体食品送出部84を介して、冷却、減圧工程等の次工程(図3には図示せず)に搬送される。
【0011】
直接加熱式殺菌装置は、間接加熱式殺菌装置と比較して、液体食品を約1 秒未満という極めて短時間で高温に加熱することができることから、液体食品の風味等を損なうことなく、確実に、且つ短時間で加熱殺菌処理が完了するという利点を有している。
【0012】
しかしながら、図4に示すように上記貯留送出部75の底面部76は平滑に形成されていることから、上記液体食品注入管路部74から供給された液体食品71は上記底面部76に対して垂直に衝突するため、液体食品71の流速が急激に減じられ、上記貯留送出部75の空間85内に貯留された液体食品71には、不均一な対流が発生する。
加えて、上記送出孔部81、81..のテーパー部82、82においては、更に流速が減じられるため、特に、液体食品71がパルプを含有する場合には、十分な対流が起こらず、結果的に上記テーパー部82、82において上記送出孔部81、81..を塞ぐようにパルプが沈殿してしまうことから、上記送出孔部81、81..への液体食品71のスムーズな導入が困難となり、殺菌装置70の稼動時間の経過と共に、上記送出孔部81、81..に目詰まりが発生する。
【0013】
これにより、液体食品71の殺菌装置本体部72への送出が阻害され、上記貯留送出部75内の空間85が上記液体食品71で満たされると、それ以上液体食品71の注入が行えない状態となり、加熱殺菌プラントの運転を停止して清掃作業が必要となる。また、清掃を行わずに放置した場合は、殺菌装置70の故障要因にもなり得る。
以上のように、図3に示す従来の殺菌装置10にあっては、現状連続稼働が可能な時間は10時間以内に留まっており、この時間を越えた場合は、都度分解清掃が必要となるため、液体食品71の加熱殺菌効率が低下すると共に、清掃等に要するメンテナンスコストが増大するという不具合を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の解決する課題は、パルプを含有する液体食品であっても、貯留送出部の目詰まりが発生し難く、長時間の連続運転が可能な液体食品の殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明に係る液体食品の殺菌装置は、液体食品を流通させて殺菌する殺菌装置本体部と、殺菌前の液体食品を上記殺菌装置本体部内に供給する液体食品供給部とを備える液体食品の殺菌装置であって、上記殺菌装置本体部は、上記殺菌装置本体部内に高温の蒸気を送入する加熱蒸気送入部を備えると共に、上記液体食品供給部は、上記殺菌装置本体部の上端部内方に配置され、前工程から送出された殺菌前の液体食品を殺菌装置本体部に注入する液体食品注入管路部と、上記液体食品注入管路部の下方に配置され、上記液体食品注入管路部から供給される液体食品を、所定量貯留すると共に、上記殺菌装置本体部内に送出しうる容器状の貯留送出部とを備え、上記貯留送出部の底面部には、上記殺菌装置本体部内に上記液体食品を送出する複数の送出孔部が形成されると共に、上記液体食品注入管路部の下端部と対向する位置において、上記液体食品注入管路部に向かって突出する錐形の突部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
従って、請求項1の発明にあっては、液体食品供給部の貯留送出部に注入された液体食品は、上記突部の外面に沿って径方向外方に向かって拡がり乍ら滑り落ちることから、上記液体食品注入管路部から注入された液体食品の流速が減じることがない。
更に、上記貯留送出部に所定量が貯留された場合、貯留された液体食品には、常に対流が発生する。
【0017】
また、請求項2に記載した発明に係る液体食品の殺菌装置は、上記液体食品注入管路部は細円筒形に形成され、上記突部は円錐形に形成されると共に、上記突部の頂点は、上記液体食品注入管路部の中心軸の直下に配置されることを特徴とする。
【0018】
従って、上記液体食品は、流速を保持しつつ、上記貯留送出部の底面部に均等に拡がり易くなり、貯留された液体食品に発生する対流の速度も全域で均等になる。
【0019】
また、請求項3に記載した発明に係る液体食品の殺菌装置は、上記送出孔部は、上記突部の基端部の外周に沿って、夫々所定間隔寸法離間して複数配置されていることを特徴とする。
【0020】
従って、夫々の送出孔部にかかる液圧がより均等になる。
【0021】
また、請求項4に記載した発明に係る液体食品の殺菌装置は、上記貯留送出部はフッ素系樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項5に記載した発明に係る液体食品の製造方法は、上記請求項1から4何れか1項の殺菌装置を用いて殺菌を行う加熱殺菌工程を備えることを特徴とする。
また、請求項6に記載した発明に係る液体食品の製造方法は、上記液体食品は、10乃至35の範囲のスラッジボリューム値を有することを特徴とする。
また、請求項7に記載した発明に係る液体食品の製造方法は、上記液体食品は、野菜汁、果実汁、若しくはその混合物を、容量比において50%以上を含むことを特徴とする。
従って、パルプ入りの液体食品であっても、迅速且つ確実に加熱殺菌処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明にあっては、液体食品を流通させて殺菌する殺菌装置本体部と、殺菌前の液体食品を上記殺菌装置本体部内に供給する液体食品供給部とを備える液体食品の殺菌装置であって、上記殺菌装置本体部は、上記殺菌装置本体部内に高温の蒸気を送入する加熱蒸気送入部を備えると共に、上記液体食品供給部は、上記殺菌装置本体部の上端部内方に配置され、前工程から送出された殺菌前の液体食品を殺菌装置本体部に注入する液体食品注入管路部と、上記液体食品注入管路部の下方に配置され、上記液体食品注入管路部から供給される液体食品を、所定量貯留すると共に、上記殺菌装置本体部内に送出しうる容器状の貯留送出部とを備え、上記貯留送出部の底面部には、上記殺菌装置本体部内に上記液体食品を送出する複数の送出孔部が形成されると共に、上記液体食品注入管路部の下端部と対向する位置において、上記液体食品注入管路部に向かって突出する錐形の突部が形成されていることから、貯留送出部に注入された液体食品は、上記突部の外面に沿って径方向外方に向かって拡がり乍ら滑り落ちることから、上記液体食品注入管路部から注入された液体食品の流速が減じることがなく、更に、上記貯留送出部に所定量が貯留された場合、貯留された液体食品には、常に上下方向に回転する対流が発生するため、対流により、液体食品が含有するパルプの繊維が激しく動くことから、パルプが上記貯留送出部の底面部に対流し難くなり、上記送出孔部にスムーズに送り込み易くなる。
従って、パルプを含有する液体食品であっても、貯留送出部の目詰まりが発生し難く、長時間の連続運転が可能な液体食品の殺菌装置を提供することができる。
【0024】
また、請求項2の発明にあっては、上記液体食品注入管路部は細円筒形に形成され、上記突部は円錐形に形成されると共に、上記突部の頂点は、上記液体食品注入管路部の中心軸の直下に配置されることから、上記貯留送出部の底面部おいて、流速を保持しつつ、均等に拡がり易くなり、貯留された液体食品に発生する対流の速度も全域で均等になるため、更に貯留送出部の目詰まりが発生し難くなる。
【0025】
また、請求項3の発明にあっては、上記送出孔部は、上記突部の基端部の外周に沿って、夫々所定間隔寸法離間して複数配置されていることから、夫々の送出孔部にかかる液圧がより均等となり、各送出孔部から均一に液体食品が送出される。
従って、送出孔部の一部に液体食品が偏ることによる目詰まりが発生し難くなる。
【0026】
また、請求項4の発明にあっては、上記貯留送出部がフッ素系樹脂で形成されているため、耐酸性、耐薬品性、及び焦げ付き防止性能に優れ、殺菌装置の耐久性能がより向上する。
【0027】
また、請求項5から7の発明にあっては、液体食品がパルプを含有する場合であっても、迅速且つ確実に加熱殺菌処理が行われ、高品質の液体食品を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る液体食品の殺菌装置の一実施の形態を示し、実施例に形態における殺菌装置全体の軸方向断面図である。
【図2】図1の殺菌装置における液体食品供給部の拡大断面図である。
【図3】従来の液体食品の殺菌装置の全体の軸方向断面図である。
【図4】図3の殺菌装置における液体食品供給部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、添付図面を用いて以下説明する。
図1に示すように、本実施例に係る液体食品の殺菌装置10は、液体食品11を流通させて殺菌する殺菌装置本体部12と、殺菌前の液体食品11を上記殺菌装置本体部12内に供給する液体食品供給部13とを備えている。
上記殺菌装置本体部12は、上記殺菌装置本体部12内に高温の蒸気を送入する加熱蒸気送入部14を備えると共に、上記液体食品供給部13は、上記殺菌装置本体部12の上端部内方に配設され、前工程から送出された殺菌前の液体食品11を上記殺菌装置本体部12に注入する液体食品注入管路部15と、上記液体食品注入管路部15の下方に配置され、細円筒形に形成された上記液体食品注入管路部15から供給される液体食品11を、所定量貯留すると共に、上記殺菌装置本体部12内に送出しうる、フッ素系樹脂からなる容器状の貯留送出部16とを備え、上記貯留送出部16の底面部17には、上記殺菌装置本体部12内に上記液体食品11を送出する複数の送出孔部18、18..が形成されると共に、上記液体食品注入管路部15の下端部19と対向する位置において、上記液体食品注入管路部15に向かって突出する円錐形の突部20が形成されている。
また、上記突部20の頂点は、上記液体食品注入管路部15の中心軸の直下に配置される。
また、上記送出孔部18、18..は、上記突部20の基端部21の外周に沿って、夫々所定間隔寸法離間して7箇所配置されている。
【実施例1】
【0030】
本実施例の構成について、添付図面を用いて説明する。
図1は、本実施例に係る液体食品の殺菌装置全体の軸方向断面図であり、図2は図1の殺菌装置における液体食品供給部の拡大断面図である。
【0031】
図1に示すように、本実施例に係る液体食品の殺菌装置10は、液体食品の加熱殺菌プラント(図1には図示せず)を構成する一機器である。
【0032】
図1に示すように、上記殺菌装置本体部12はステンレス等の金属からなり、細長円筒形に形成されている。
上記殺菌装置本体部12の上面部22は、内部を透視しうる透明な合成樹脂、若しくはガラス等から形成された窓部(図1には図示せず)を備えている。
また、上記殺菌装置本体部12の上端部近傍には、上記殺菌装置本体部12の内部の空気を排出する空気排出用スリーブ部24が上記殺菌装置本体部12の径方向外方に突出して配設されている。
また、上記殺菌装置本体部12の下端部近傍には、殺菌用の高温蒸気を送入する加熱蒸気送入部14が径方向外方に突出して配設されている。
【0033】
また、図2に示すように、液体食品供給部13の液体食品注入管路部15は、細径の円筒管から形成され、上記殺菌装置本体部12の上面部22の中心部を厚さ方向に貫通すると共に、上記液体食品注入管路部15は上記貯留送出部16の空間30内に突出し、下端部19は底面部17に近接して配設されている。
【0034】
また、上記貯留送出部16は、所定の厚みを有する略円形の底面部17と、上記底面部17の周囲から上方に拡開する立ち上がり部25とからなる、全体容器状に形成され、上記立ち上がり部25の上端部に形成されたフランジ部26と上記殺菌装置本体部12の上端部内壁部に設けられた段部27とが互いに係合することによって、上記貯留送出部16は、上記殺菌装置本体部12の上端部内壁に固定されている。
また、上記立ち上がり部25には、上記殺菌装置本体部12内と上記貯留送出部の圧力を一定に保持するための通気口28、28が設けられている。
【0035】
また、上記突部20は上記貯留送出部16の底面部17の中心位置に形成され、上記突部20の頂点と、上記液体食品注入管路部15の下端部19とが略同一の高さ位置となるように配設されている。
【0036】
また、上記加熱蒸気送入部14の上方には、上記殺菌装置本体部12の内部を視認しうる窓部(図1には図示せず)が上記殺菌装置本体部12の径方向に対向して設けられている。
【0037】
以下添付図面を用いて、本実施例の作用について説明する。
図1に示すように、液体食品11は、上記液体食品供給部13の液体食品注入管路部15を介して、貯留送出部16内に供給され、上記貯留送出部16の突部20の側面に沿って流れ落ち、上記貯留送出部16内の空間30に所定量貯留される。
なお、貯留送出部16内の圧力と殺菌装置本体部12内の圧力は、上記貯留送出部16の立ち上がり部25に設けられた通気口28、28を通して均一に調節されているため、貯留された液体食品11には特段の圧力はかからず、自重による自由落下によって、上記送出孔部18、18..から、上記殺菌装置本体部12の内部に流れ落ちる。
【0038】
上記液体食品11が、上記液体食品供給部13の液体食品注入管路部15を介して、貯留送出部16内に供給される際、上記突部20の外周面部に沿って、貯留送出部16内に滑り落ちることから、上記液体食品11の流速が落ちにくい。
従って、上記貯留送出部16内に貯留された液体食品11内には、絶えず上下方向に回転する対流が発生するため、液体食品11にパルプが含有されている場合でも、上記パルプが激しく動くことから、上記送出孔部18、18..からスムーズに送出され易くなる。
その結果、殺菌装置10を長時間に亘って稼動させた場合にも、上記送出孔部18の目詰まりが発生し難くなり、貯留送出部16の空間30が液体食品11により満たされてしまうことがない。従って、より長時間の連続運転が可能となる。
【0039】
また、図1に示すように、上記送出孔部18、18..から流れ落ちた液体食品11は、上記加熱蒸気送入部14から送入された高温の蒸気で満たされた、上記殺菌装置本体部12内を落下する過程において急激に昇温され、加熱殺菌される。
加熱殺菌が終了した液体食品11は、上記殺菌装置本体部12から液体食品送出部31までの間で加熱殺菌処理後送出され、殺菌温度が保持された状態で、冷却工程等(図1、図2には図示せず)の次工程に送られる。
【0040】
なお、突部は錐形であれば、本実施例の円錐形のほか、四角錘、三角錐等の形状を適宜選択することができる。
更に、突部の形状は、全体錐形であれば、突部の表面に、適宜溝部等の形状を形成することもできる。
【0041】
以下、本実施例に係る殺菌装置10、及び図3に示す、従来の殺菌装置70を、液体食品として多量のパルプを含有するトマトジュースを採用した場合を例として、連続稼動した場合における、貯留送出部の送出孔部の目詰まりの発生有無の状況を実験した結果を示す。
【0042】
(1)トマトジュース(液体食品)の条件
トマトジュース(スラッジボリューム値:20、RI値5.0、pH値4.5)は、原料タンク内での初期温度を20℃に設定し、殺菌装置に導入する前に、予め加熱二重管等で予備加熱して80℃±5℃まで昇温する。
また、殺菌装置での加熱後の昇温温度は146.5℃±2℃となるように、あらかじめ殺菌装置本体部に送入する高温蒸気の温度、送入量等を調整する。
【0043】
(2)貯留送出部の形状
貯留送出部の形状は、図1及び図2に示す本実施例に係る貯留送出部16と同様の形状であり、送出孔部18は全7箇所に形成されている。
また、対比例としての従来形状の貯留送出部は、図3及び図4に示す貯留送出部75の形状と同様であり、送出孔部81は全7箇所に形成されている。
なお、貯留送出部の形状以外の構成については、本実施例の構成と従来例の構成との差異はない。
【0044】
(3)測定内容
殺菌装置を連続的に稼働させ、所定時間毎に、貯留送出部の送出孔部に発生する目詰まり状況を殺菌装置上端部に設けられた窓部から目視によって確認した。
確認結果を下表1に示す。
【表1】

なお、表1項目中の「液面の高さ」とは、貯留送出部内の空間が液体食品で全て満たされた場合を100%とする。100%を超えて、液体食品供給部から液体食品供給するとは不可能であるため、100%となった時点において、殺菌装置の稼働を一端停止して清掃等を行う必要がある。
【0045】
(4)実験結果の考察
上記表1の通り、本実施例に係る構成の殺菌装置の場合、20時間連続稼働後においても、目詰まりの発生は前7箇所中2箇所に留まり、液面高さの変化も実験開始から5%以内であり、稼動には何らの支障も発生しなかった。
従って、本実施例の構成によって、従来と比較して少なくとも2倍以上の連続稼働時間が確保できることが確認された。
なお、実施例の20時間稼動後及び比較例の10時間稼動後の状態は共に目詰まり発生の送出孔部の数は一致しているが、液面の高さは、実施例の構成の場合が30%であるのに対し、従来例の場合は75%に達している。
これは、目詰まりが発生していない送出孔部においても、パルプが蓄積した状態となっており、液体食品が流れ難くなっているためと考えられる。
【0046】
実験において使用したトマトジュースの他、パルプを含む液体食品に対して本発明は極めて好適であるが、特にパルプの含有量がSV(スラッジボリューム)値10〜35、特に15〜25の範囲の間である場合が最も好適である。
なお、上記スラッジボリューム値とは、液体10mlを長さ105mmの遠心沈殿管内に封入し、回転半径14.5cm、回転数3000回/分、時間10分の条件で遠心分離した際に、液体全体に対する沈殿物の割合を示す値である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は高温の蒸気で満たされた空間に、液体食品を注入することにより、上記液体食品の殺菌を行う、液体食品の殺菌装置であって、特にパルプを含有する液体食品の加熱殺菌を行う殺菌装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 殺菌装置
11 液体食品
12 殺菌装置本体部
13 液体食品供給部
14 加熱蒸気送入部
15 液体食品注入管路部
16 貯留送出部
17 貯留送出部の底面部
18 送出孔部
19 液体食品注入管路部の下端部
20 突部
21 突部の基端部
22 殺菌装置本体部の上面部
24 空気排出用スリーブ部
25 貯留送出部の立ち上がり部
26 貯留送出部のフランジ部
27 殺菌装置本体部の段部
28 貯留送出部の通気孔
30 貯留送出部の空間
31 液体食品送出部
70 殺菌装置
71 液体食品
72 殺菌装置本体部
73 液体食品供給部
74 液体食品注入管路部
75 貯留送出部
76 貯留送出部の底面部
77 殺菌装置本体部の上面部
78 立ち上がり部
79 フランジ部
80 殺菌装置本体部の段部
81 貯留送出部内の送出孔部
82 送入孔部のテーパー部
83 加熱蒸気送入部
84 液体食品送出部
85 貯留送出部の空間
86 空気排出用スリーブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体食品を流通させて殺菌する殺菌装置本体部と、殺菌前の液体食品を上記殺菌装置本体部内に供給する液体食品供給部とを備える液体食品の殺菌装置であって、
上記殺菌装置本体部は、上記殺菌装置本体部内に高温の蒸気を送入する加熱蒸気送入部を備えると共に、
上記液体食品供給部は、上記殺菌装置本体部の上端部内方に配置され、前工程から送出された殺菌前の液体食品を殺菌装置本体部に注入する液体食品注入管路部と、上記液体食品注入管路部の下方に配置され、上記液体食品注入管路部から供給される液体食品を、所定量貯留すると共に、上記殺菌装置本体部内に送出しうる容器状の貯留送出部とを備え、
上記貯留送出部の底面部には、上記殺菌装置本体部内に上記液体食品を送出する複数の送出孔部が形成されると共に、上記液体食品注入管路部の下端部と対向する位置において、上記液体食品注入管路部に向かって突出する錐形の突部が形成されていることを特徴とする液体食品の殺菌装置。
【請求項2】
上記液体食品注入管路部は細円筒形に形成され、
上記突部は円錐形に形成されると共に、上記突部の頂点は、上記液体食品注入管路部の中心軸の直下に配置されることを特徴とする請求項1記載の液体食品の殺菌装置。
【請求項3】
上記送出孔部は、上記突部の基端部の外周に沿って、夫々所定間隔寸法離間して複数配置されていることを特徴とする請求項1記載の液体食品の殺菌装置。
【請求項4】
上記貯留送出部はフッ素系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載の液体食品の殺菌装置。
【請求項5】
液体食品の製造方法であって、上記請求項1から4何れか1項の殺菌装置を用いて殺菌を行う加熱殺菌工程を備えることを特徴とする液体食品の製造方法。
【請求項6】
上記液体食品は、10〜35の範囲のスラッジボリューム値を有することを特徴とする請求項5の液体食品の製造方法。
【請求項7】
上記液体食品は、野菜汁、果実汁、若しくはその混合物を、容量比において50%以上を含むことを特徴とする請求項5若しくは請求項6に記載の液体食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147686(P2012−147686A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6745(P2011−6745)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000157946)岩井機械工業株式会社 (37)
【出願人】(000104113)カゴメ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】