説明

液化ガスタンク

【課題】本発明は、液化ガスをタンク内で十分に混合できると共に、簡単な構造により低コストで実施できる液化ガスタンクを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、タンク内の上部に設けられ、液化ガスを下方に向けて流入する流入ノズルと、前記流入ノズルの下方に設けられ、同流入ノズルの下方部分から放射状に広がると共に、周縁が低くなるように傾斜したスプラッシュプレートとを備え、前記流入ノズルから前記スプラッシュプレートに落下した液化ガスが、同スプラッシュプレートの上面に沿って流れ、前記周縁からタンク内に落下する液化ガスタンクにおいて、前記スプラッシュプレートが、同スプラッシュプレートの周縁から落下する液化ガスの角度が、同スプラッシュプレートの放射方向によって異なるように、その放射方向によって異なる断面を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを収容する液化ガスタンク、特に異種の液化ガスを同じタンク内に収容するのに好適な液化ガスタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
メタン、エタン、プロパン、ブタン等の液化ガスは、その産地によって組成が異なり、最大で約20%程度の密度差がある。従来は、産地別に別の液化ガスタンクを設けていたが、近年は、液化ガスタンクの運用上、産地が異なる液化ガスを一つのタンクに受け入れる、いわゆる異種混合受け入れの機会が増えており、ロールオーバ現象の原因となる。ロールオーバ現象とは、密度が小さな液化ガスが上部に、密度の大きな液化ガスが下部に分かれて、タンク内が層状化し、上層の液化ガスは軟質成分が揮発して次第に重くなり、下層の液化ガスはタンク底部からの入熱により軽くなり、ある時点で上層と下層の密度が逆転して入れ替わろうとする現象である。その際に多量のガスが急激に発生するため、このロールオーバ現象を避ける必要がある。このため、異なる密度の液化ガスがタンク内に流入された時点で、液化ガスを十分に混合しておくことが要求される。
【0003】
そこで、特許文献1に示される技術は、タンク下部から上方に延びた受入管を設け、同受け入れ管の先端は閉塞されるとともに側面に複数の流入口が設け、混合効果を高めるものである。また特許文献2に示される技術は、液化ガス注入口の前方に邪魔板を設け、液化ガスを同邪魔板に衝突させ、その液化ガスの流れ方向を変えさせ、混合効果を得るものである。
【特許文献1】特開平8−282787号公報
【特許文献2】特公平2−18479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示されるタンクにおいては、タンク内のほぼ全高にわたって延びる受入管を設けなければならす、コスト的に不利である。また特許文献2に示されるタンクにおいては、液化ガスの噴流速度がある程度大きくないと、邪魔板による混合の効果を十分に得られないことが予想され、やはり必要なエネルギーが大きくコスト的に不利となる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、液化ガスをタンク内で十分に混合できると共に、簡単な構造により低コストで実施できる液化ガスタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1の液化ガスタンクは、タンク内の上部に設けられ、液化ガスを下方に向けて流入する流入ノズルと、前記流入ノズルの下方に設けられ、同流入ノズルの下方部分から放射状に広がると共に、周縁が低くなるように傾斜したスプラッシュプレートとを備え、前記流入ノズルから前記スプラッシュプレートに落下した液化ガスが、同スプラッシュプレートの上面に沿って流れ、前記周縁からタンク内に落下する液化ガスタンクにおいて、前記スプラッシュプレートが、同スプラッシュプレートの周縁から落下する液化ガスの角度が、同スプラッシュプレートの放射方向によって異なるように、その放射方向によって異なる断面を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2の液化ガスタンクは、請求項1において、前記スプラッシュプレートが、その放射方向によって傾斜角度が異なるように形成されていることを特徴とする。
請求項3の液化ガスタンクは、請求項1において、前記スプラッシュプレートが、設定された放射方向における同スプラッシュプレートの上面に、同上面を流れる液化ガスに抵抗を与える手段を設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項4の液化ガスタンクは、請求項3において、前記抵抗を与える手段が、前記スプラッシュプレート上に設けられた突起及び凹部のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の液化ガスタンクにおいては、前記スプラッシュプレートの前記周縁からタンク内に落下する液化ガスの角度が、同スプラッシュプレートの放射方向によって異なるので、同タンク内液面における、前記スプラッシュプレートに近い所と遠い所に液化ガスを落下させることができる。すなわち、タンク内液面の広い範囲に液化ガスの液滴を散布することができるので、散布された液化ガスの液滴が、タンク内の液化ガスと十分に混合されるのである。しかも、タンク内の上部に設けた流入ノズルと、同流入ノズルの下方に設けられ、その放射方向によって断面形状を異ならせたスプラッシュプレートとの簡単な構成により実現されると共に、スプラッシュプレート上に液化ガスを落下させるので、液化ガスの流入速度をあまり大きくする必要がなく、全体として低コストで実施することができる。
【0010】
請求項2の液化ガスタンクにおいては、前記スプラッシュプレートが、その放射方向によって傾斜角度が異なるように形成されているので、液化ガスが流れる放射方向における傾斜角度に応じて前記スプラッシュプレートから異なる距離だけ離れた所に液化ガスの液滴を落下させることができる。
請求項3の液化ガスタンクにおいては、前記スプラッシュプレートが、設定された放射方向における同スプラッシュプレートの上面に、同上面を流れる液化ガスに抵抗を与える手段を設けられているので、前記抵抗を与える手段が設けられた放射方向における前記上面を流れる液化ガスの速度が遅くなり、その結果、液化ガスが流れる放射方向における液化ガスの当該速度に応じて前記スプラッシュプレートから異なる距離だけ離れた所に液化ガスの液滴を落下させることができる。
【0011】
請求項4の液化ガスタンクにおいては、前記抵抗を与える手段が、前記スプラッシュプレート上に設けられた突起及び凹部のうちの少なくともいずれか一方により実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。図1は第1の実施形態に係る液化ガスタンクを示す断面図、図2は図1のII−II線に沿う矢視断面図、図3は図2のスプラッシュプレートの斜視図、図4はタンク内の液化ガスの散布状況を示す平面図である。
本液化ガスタンクは、図1に示されるように、液化ガスを貯留するタンク本体2と、タンク本体2内の上部に設けられ、液化ガスを下方に向けて流入するノズル4と、同ノズル4の下方においてタンク本体2に支持されたたスプラッシュプレート6とを備えている。スプラッシュプレート6は、流入ノズル4の下方部分から放射状に広がると共に、周縁が低くなるように傾斜しており、全体として傘状を呈している。そして、流入ノズル4からスプラッシュプレート6に落下した液化ガスが、同スプラッシュプレート6の上面に沿って流れ、その周縁からタンク本体2内に落下するように構成されている。
【0013】
さらにスプラッシュプレート6は、同スプラッシュプレート6の周縁から落下する液化ガスの角度が、同スプラッシュプレート6の放射方向によって異なるように、その放射方向によって異なる断面を有している。詳細には、図2及び図3に示されるように、スプラッシュプレート6は、5つの放射方向において傾斜角が小さく形成され、同5つの放射方向の間の放射方向において傾斜角が大きく形成されている。これにより、スプラッシュプレート6は、放射方向に延びた5つの傾斜角の小さな部分6aと4つの傾斜角の大きな部分6bを有することになる。なお、図中ポイントCは、平面視において流入ノズル4の中心位置に対応する点を示す。
【0014】
上述のように構成された液化ガスタンクによれば、流入ノズル4からスプラッシュプレート6上に落下した液化ガスがその周縁からタンク本体2内に落下する。その際、傾斜角の小さな部分6aの周縁から流れ落ちる液化ガスの液滴は、傾斜角の大きな部分6bの周縁から流れ落ちる液化ガスの液滴よりも、スプラッシュプレート6から遠い所に落下する。これにより、図4に示されるように、タンク本体2内の液面の広い範囲に液化ガスの液滴を散布することができるので、散布された液化ガスの液滴が、タンク本体2内の液化ガスと十分に混合されるのである。なお、図4において、液面上に示される複数の点が、スプラッシュプレート6から落下する液化ガスの液滴の落下点を概念的に示す。
【0015】
しかも、本液化ガスタンクは、タンク本体2内の上部に設けた流入ノズル4と、同流入ノズル4の下方に設けられたスプラッシュプレート6とを備えるだけの簡単な構成で実現されると共に、スプラッシュプレート6上に液化ガスを落下させる構成であるため、流入ノズル4からの液化ガスの噴出速度をあまり大きくする必要がなく、全体として低コストで実施することができる。
【0016】
次に、本発明の第2の実施形態を図5及び図6に従って説明する。図5は第2の実施形態の要部の平面図、図6は図5のスプラッシュプレートの斜視図である。
この第2の実施形態の説明において、前記第1の実施形態と実質的に同じ部分には、前記で用いたものと同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第2の実施形態に係る液化ガスタンクは、第1の実施形態と比べて異なる点は、図に示されるように、スプラッシュプレート10の形状である。このスプラッシュプレート10は、タンク本体2における第1の実施形態におけるスプラッシュプレート6と同じ部位に設けられている。スプラッシュプレート10は、やはり流入ノズル4の下方部分から放射状に広がると共に、周縁が低くなるように傾斜しており、全体として傘状を呈している。そして流入ノズル4からスプラッシュプレート10に落下した液化ガスが、同スプラッシュプレート10の上面に沿って流れ、その周縁からタンク本体2内に落下するように構成されている。
【0017】
さらにスプラッシュプレート10は、4つの放射方向における同スプラッシュプレート10の上面に、同上面を流れる液化ガスに抵抗を与えるように突起10aが設けられている。
上述のように構成された液化ガスタンクによれば、スプラッシュプレート10の上面において、突起10aが設けられた放射方向における該上面を流れる液化ガスの速度が遅くなり、その結果、突起10aが設けられていない放射方向の周縁から流れ落ちる液化ガスの液滴は、突起10aが設けられた放射方向の周縁から流れ落ちる液化の液滴よりも、遠い所に落下する。これにより、前記第1の実施形態の液化ガスタンクと同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
次に、前記第2実施形態の変形例としての液化ガスタンクを図7に従って説明する。図7は要部斜視図である。
この変形例は、前記第2の実施形態のスプラッシュプレート10の突起10aに代えて、凹部10bを設けたものである。この凹部10bは、スプラッシュプレート10の上面を流れる液化ガスに抵抗を与えることができる。
【0019】
したがって、前記第2の実施形態の液化ガスタンクと同様の作用効果を得ることができる。
なお、この発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る液化ガスタンクを示す断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う矢視断面図である。
【図3】図2のスプラッシュプレート6の斜視図である。
【図4】図4はタンク内の液化ガスの散布状況を示す平面図である。
【図5】第2の実施形態に係る液化ガスタンクを示す平面図である。
【図6】図5のスプラッシュプレート10の斜視図である。
【図7】第2の実施形態の変形例を示す斜視図ある。
【符号の説明】
【0021】
2 タンク本体
4 流入ノズル
6,10 スプラッシュプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の上部に設けられ、液化ガスを下方に向けて流入する流入ノズルと、
前記流入ノズルの下方に設けられ、同流入ノズルの下方部分から放射状に広がると共に、周縁が低くなるように傾斜したスプラッシュプレートとを備え、
前記流入ノズルから前記スプラッシュプレートに落下した液化ガスが、同スプラッシュプレートの上面に沿って流れ、前記周縁からタンク内に落下する液化ガスタンクにおいて、
前記スプラッシュプレートが、同スプラッシュプレートの周縁から落下する液化ガスの角度が、同スプラッシュプレートの放射方向によって異なるように、その放射方向によって異なる断面を有することを特徴とする液化ガスタンク。
【請求項2】
前記スプラッシュプレートが、その周縁に沿う断面が波形に形成され、その放射方向によって傾斜角度が異なることを特徴とする請求項1記載の液化ガスタンク。
【請求項3】
前記スプラッシュプレートが、設定された放射方向における同スプラッシュプレートの上面に、同上面を流れる液化ガスに抵抗を与える手段を設けられたことを特徴とする請求項1記載の液化ガスタンク。
【請求項4】
前記抵抗を与える手段が、前記スプラッシュプレート上に設けられた突起及び凹部のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項3記載の液化ガスタンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−144860(P2010−144860A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323770(P2008−323770)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】