説明

液圧システム

本発明は、車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置の、クラッチ及び/又はバリエータを制御するための液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源とトルクフィーラとを備えている液圧システムに関する。本発明は、トルクフィーラの他に別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は、液圧式のエネルギ源と、別の消費器とトルクフィーラとの間に接続されていて、トルクフィーラに液圧媒体が優先的に供給されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置のクラッチ及び/又はバリエータを制御する液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源を備えた液圧システムに関する。有利な構成において、液圧システムはトルクフィーラを有している。また、本発明はトルクフィーラを用いない構成も含んでいる。
【0002】
本発明の課題は、請求項1の上位概念部もしくは請求項8の上位概念部に記載の液圧システムを改良して、液圧式のエネルギ源の比較的高い効率もしくは縮小化を可能にする液圧システムを提供することにある。特に種々異なる消費器への供給を改善したい。
【0003】
上記課題は、車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置の、クラッチ及び/又はバリエータを制御するための液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源と、有利なトルクフィーラとを備えている液圧システムにおいて、トルクフィーラの他に別の消費器に供給する切換え・遮断弁装置が、トルクフィーラに液圧媒体が優先的に供給されるように、液圧式のエネルギ源と別の消費器とトルクフィーラとの間に接続されていることにより解決される。これにより、液圧システムを備えた自動車の運転中の液圧システムの確実性が改善される。有利には、切換え・遮断弁装置は、すべり弁として構成されている。
【0004】
好ましくは、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は、液圧式のエネルギ源と別の消費器との間に接続されている。
【0005】
好ましくは、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は、閉鎖された状態に予負荷をかけられている。
【0006】
好ましくは、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は、トルクフィーラの戻し通路における絞り又は圧力制限弁と協働する。
【0007】
好ましくは、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は、トルクフィーラの戻し通路と接続していて、トルクフィーラの戻し通路に最小液圧媒体流がある場合に初めて、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は開放する。
【0008】
好ましくは、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は開放された位置を有しており、開放された位置において別の消費器は液圧式のエネルギ源に接続されている。
【0009】
好ましくは、別の消費器に供給するために切換え・遮断弁装置は、別の開放された位置を有しており、別の開放された位置において、別の消費器は液圧式のエネルギ源に接続されており、液圧式のエネルギ源の出口は開放された切換え・遮断弁装置を介して液圧式のエネルギ源の入口に接続されている。
【0010】
本発明に係る液圧システムは、車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置の、クラッチ及び/又はバリエータを制御するための液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源を備えた、特に請求項1から7までのいずれか一項記載の液圧システムにおいて、第1の調整室内の調整圧を提供するために働く第1の変換弁装置の出口と、第2の調整室内の調整圧を提供するために働く第2の変換弁装置の出口とは、液圧式のエネルギ源の入口もしくは前記入口に直接接続されている。
【0011】
好ましくは、液圧式のエネルギ源は少なくとも1つの高圧ポンプと、少なくとも1つの低圧ポンプとを有しており、高圧ポンプと低圧ポンプとは互いに接続している。
【0012】
好ましくは、変換弁装置の出口は高圧ポンプの入口に直接接続されている。
【0013】
好ましくは、液圧式のエネルギ源は第1の低圧ポンプと第2の低圧ポンプとを有している。
【0014】
好ましくは、第2の低圧ポンプの出口は圧力制御弁装置を介して高圧ポンプの入口に接続可能であり、前記入口は第1の低圧ポンプの出口に接続されている。
【0015】
好ましくは、圧力制御弁装置は、第2の低圧ポンプの出口がタンクに接続されている切換え位置を有している。
【0016】
好ましくは、圧力制御弁装置は、第2の低圧ポンプの圧送流が第1の低圧ポンプの圧送流と共に案内される別の切換え位置を有している。
【0017】
好ましくは、低圧ポンプの前記出口は個々に又は一緒になって、圧力制御弁装置を介して別の消費器、特に冷却装置に接続されている。
【0018】
好ましくは、低圧領域もしくは低圧循環路において、制御切換え弁装置は別の消費器に供給するために、圧力制御弁装置と前記別の消費器との間に接続されており、バリエータ冷却装置に液圧媒体が優先的に供給される。
【0019】
好ましくは、制御切換え弁装置に絞りが後置されており、前記絞りの背圧は制御弁装置と協働し、規定の最低背圧の超過後に初めてバリエータ冷却装置の他に別の消費器に液圧媒体が供給される。
【0020】
好ましくは、異なる絞りを備えた絞り切換え装置は制御切換え弁装置に後置されており、絞り切換え装置の背圧はそれぞれ制御切換え弁装置と協働して、それぞれ規定された最低背圧を超過した後に初めてバリエータ冷却装置の他に別の消費器に液圧媒体が供給される。
【0021】
好ましくは、圧力制御弁装置は、第2の低圧ポンプの出口が中圧領域又は中圧循環路に接続している別の切換え位置を有している。
【0022】
好ましくは、中圧領域又は中圧循環路は別の消費器を有しており、別の消費器に、中圧で負荷されている液圧媒体が別の弁装置を介して必要に応じて供給される。
【0023】
好ましくは、圧力フィルタは第2の低圧ポンプと圧力制御弁装置との間に接続されている。
【0024】
好ましくは、第2の低圧ポンプに対して配置されている圧力フィルタは圧力制御弁装置に後置されている。
【0025】
好ましくは、前記液圧式のエネルギ源は第1の高圧ポンプと、該第1の高圧ポンプに対して並列に接続されている第2の高圧ポンプとを有している。
【0026】
好ましくは、制御弁装置は第2の高圧ポンプに対して並列に接続されていて、第2の高圧ポンプの圧送流は必要に応じて高圧ポンプの入口に供給される。
【0027】
液圧システムの有利な構成は、切換え・遮断弁装置が別の消費器に供給するために、液圧式のエネルギ源と別の消費器との間に接続されていることを特徴とする。有利には、切換え・遮断弁装置は3ポート3位置制御弁として構成されている。
【0028】
液圧システムの別の有利な構成は、切換え・遮断弁装置が別の消費器に供給するために、閉じた状態に予負荷をかけられていることを特徴とする。閉じた状態では、切換え・遮断弁装置の全接続部は閉鎖されている。閉鎖した状態における予負荷は、例えばばねにより可能になる。
【0029】
液圧システムの更に別の有利な構成は、切換え・遮断弁装置が別の消費器の供給のために、トルクフィーラの戻し通路において絞り又は圧力制限弁と協働することを特徴とする。絞り又は圧力制限弁はトルクフィーラに後置されている。切換え・遮断弁装置から出発する制御管路は、絞り又は圧力制限弁の手前でトルクフィーラの戻し通路に通じている。
【0030】
液圧システムの更に別の構成は、切換え・遮断弁装置が別の消費器の供給のために、トルクフィーラの戻し通路に最低液圧媒体流が存在して初めて切換え・遮断弁装置が別の消費器に供給するために開放するように、トルクフィーラの戻し通路に接続していることを特徴とする。戻し通路における絞り又は圧力制限弁は、最低体積流をトルクフィーラを介して提供する。これによりトルクフィーラの継続的な供給もしくは圧着が維持される。
【0031】
液圧システムの更に別の有利な構成は、切換え・遮断弁装置が別の消費器の供給のために、開放された位置を有しており、開放された位置においては別の消費器は液圧式のエネルギ源に接続されていることを特徴とする。別の消費器は、例えばバリエータの調整室において調整圧を提供するために働く変換弁装置(Uebersetzungsventileinrichtung)である。
【0032】
液圧システムの更に別の有利な構成は、切換え・遮断弁装置が別の消費器の供給のために、別の開放された位置を有しており、別の開放された位置においては別の消費器が液圧式のエネルギ源に接続しており、液圧式のエネルギ源の出口が開放された切換え・遮断弁装置を介して液圧式のエネルギ源の入口に接続していることを特徴とする。このことは余分な液圧媒体が、液圧式のエネルギ源、有利には高圧ポンプに再び供給されるという利点をもたらす。
【0033】
上記課題は、車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置の、クラッチ及び/又はバリエータを制御するための液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源を備えた液圧システムにおいて、第1の調整室における調整圧力を提供するために働く第1の変換弁装置の出口と、第2の調整室における調整圧力を提供するために働く第2の変換弁装置の出口とは、液圧式のエネルギ源の所定の入口もしくは入口に直接接続されていることにより解決される。高圧で負荷されている液圧媒体が僅かにしか必要でない走行状態では、液圧媒体流は、液圧式のエネルギ源、特に高圧ポンプの入口又は流入口の手前に再び直接案内される。単に最小の背圧が発生するだけである。高圧ポンプの供給のために使用される低圧ポンプは戻し案内される液圧媒体により小型化することができる。
【0034】
上記課題は、請求項8の上位概念部記載の液圧システムにおいて、液圧式のエネルギ源は少なくとも1つの高圧ポンプと、少なくとも1つの低圧ポンプとを有していることによっても解決される。高圧ポンプと低圧ポンプとは互いに接続されている。低圧ポンプは高圧ポンプに、低圧で負荷されていて、高圧ポンプにおいて高圧で負荷される高圧媒体を供給する。
【0035】
液圧システムの別の有利な構成は、変換弁装置の出口が高圧ポンプの入口に直接接続されていることを特徴とする。このことはバリエータ調整中に、空にされた調整室から部分的に、高圧ポンプと低圧ポンプとの間の低圧領域又は低圧循環路に液圧媒体を案内することができるという利点をもたらす。これにより低圧ポンプの圧送体積を縮小することができる。
【0036】
液圧システムの更に別の有利な構成は、液圧式のエネルギ源が第1及び第2の低圧ポンプを有していることを特徴とする。有利には、両方の低圧ポンプは並列に接続されている。
【0037】
液圧システムの更に別の有利な構成は、第2の低圧ポンプの出口が圧力制御弁装置を介して高圧ポンプの入口に接続可能であることを特徴とする。高圧ポンプの入口は第1の低圧ポンプの出口に接続している。圧力制御弁装置は、第2の低圧ポンプのための圧力レベルを調節するために働く。
【0038】
液圧システムの更に別の有利な構成は、圧力制御弁装置が、第2の低圧ポンプの出口がタンクに接続している切換え位置を有していることを特徴とする。このことは、第2の低圧ポンプの圧送流を必要に応じてタンクに直接案内することができるという利点をもたらす。これにより最小の背圧/作業圧を達成することができる。更に第2の低圧ポンプの損失は最小限にすることができる。
【0039】
液圧システムの更に別の有利な構成は、圧力制御弁装置が、第2の低圧ポンプの圧送流が第1の圧力ポンプの圧送流と共に案内されることを特徴とする。共に案内された両低圧ポンプの圧送流は、低圧領域又は低圧循環路に供給される。
【0040】
液圧システムの更に別の有利な構成は、低圧ポンプの出口は、個々に又は一緒になって圧力制御弁装置を介して別の消費器、特に冷却装置に接続していることを特徴とする。冷却装置は、例えばクラッチ冷却部とバリエータ冷却部とを有している。
【0041】
液圧システムの更に別の有利な構成は、低圧領域もしくは低圧循環路において、別の消費器の供給のために、圧力制御弁装置と別の消費器との間に制御切換え弁装置が接続されていて、バリエータ冷却装置に液圧媒体を優先的に供給することを特徴とする。別の消費器の前に優先してバリエータ冷却装置に低圧で負荷されている液圧媒体が供給される。
【0042】
液圧システムの更に別の有利な構成は、制御切換え弁装置に絞りが後置されていることを特徴とする。絞りの背圧は制御切換え弁装置と協働し、規定された最低背圧の超過後に初めて、バリエータ冷却装置の他に別の消費器に液圧媒体が供給される。バリエータ冷却装置を通って十分に液圧媒体が流れて初めて、別の消費器も接続される。
【0043】
液圧システムの更に別の有利な構成は、制御切換え弁装置に種々異なる絞りを備えた絞り切換え装置が後置されていることを特徴とする。絞り切換え装置の背圧はそれぞれ制御切換え弁装置と協働して、それぞれ規定されている最小背圧を超過した後に初めて、バリエータ冷却装置の他に別の消費器に液圧媒体が供給される。有利には、絞り切換え装置は、2ポート2位置制御弁として構成されている。
【0044】
液圧システムの更に別の有利な構成は、圧力制御弁装置が第2の低圧ポンプの出口が中圧領域又は中圧循環路に接続している、別の切換え位置を有していることを特徴とする。中圧は、例えば20barであり、例えば3barである低圧よりも大きく、高圧よりも低い。中圧を超過すると、余分な液圧媒体は低圧領域もしくは低圧循環路又はタンク内に排出される。
【0045】
液圧システムの更に別の有利な構成は、中圧領域又は中圧循環路が別の消費器を有していることを特徴とする。別の消費器に別の弁装置を介して必要に応じて液圧媒体が供給される。液圧媒体は中圧によって負荷されている。別の消費器は、例えば自動車のパワートレインのためのクラッチ式のブレーキ装置又は切換えアクチュエータの操作部である。
【0046】
液圧システムの更に別の有利な構成は、第2の低圧ポンプと圧力制御弁装置との間に圧力フィルタが接続されていることを特徴とする。圧力フィルタは圧力フィルタに対して並列に接続されている逆止弁もしくは圧力制限弁を備えたフィルタを有している。
【0047】
液圧システムの更に別の有利な構成は、第2の低圧ポンプに対して配置されている圧力フィルタが、圧力制御弁装置に後置されていることを特徴とする。このことは、圧力制御弁装置においてタンク内に案内される液圧媒体流を圧力フィルタを通って案内する必要はないという利点をもたらす。
【0048】
液圧システムの更に別の有利な構成は、液圧式のエネルギ源は第1の高圧ポンプと、第1の高圧ポンプに対して並列に接続されている第2の高圧ポンプとを有していることを特徴とする。両高圧ポンプは、必要に応じて種々異なる液圧媒体流の提供を可能にする。
【0049】
液圧システムの更に別の有利な構成は、制御弁が第2の高圧ポンプに対して並列に接続されていて、第2の高圧ポンプの圧送流が必要に応じて少なくとも1つの高圧ポンプの入口に供給されることを特徴とする。このことは、発生する背圧はほんの僅かであるという利点をもたらす。1つもしくは複数の低圧ポンプは、戻し案内された液圧媒体に基づき小型化することができる。
【0050】
本発明の更なる利点、特徴、詳細な構成は以下の説明から明らかになる。以下、図面に関連した種々異なる実施の形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る液圧システムの液圧回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1には、液圧回路の形式で水力学において慣用のシンボルを用いた液圧システム1が示されている。液圧回路には、液圧媒体を備えたタンクが種々異なる個所においてシンボル2〜7によって記載されている。タンクに内蔵されている液圧媒体は、有利には液圧油である。液圧油はオイルとも称呼される。複数のフィルタ、圧力制限弁もしくはばね負荷されている逆止弁、及び冷却器が、液圧回路において水力学において慣用のシンボルを用いて記載されている。図面を見やすくするために全シンボルに符号が備え付けられてはいない。
【0053】
液圧システム1は円錐形プーリ式巻掛け伝動装置を制御するために働く。円錐形プーリ式巻掛け伝動装置は自動車のパワートレインに配置されている。この種の円錐形プーリ式巻掛け伝動装置は、CVT変速機(CVT:Continiously Variabel Transmission、連続可変トランスミッション)とも称呼される。CVT変速機は無段階式の車両変速機である。無段階式の車両変速機は変速比のスムーズな変化により高い走行快適性を可能にする。
【0054】
液圧システム1は、第1の低圧ポンプ11と第2の低圧ポンプ12とを備えた液圧式のエネルギ源10を有している。低圧ポンプ11,12の入口はタンク2に接続されている。ばね負荷された逆止弁もしくは圧力制限弁がそれぞれ低圧ポンプ11,12に対して並列に接続されている。低圧ポンプ11,12はプレフィードポンプであり、プレフィードポンプは第1の高圧ポンプ14と第2の高圧ポンプ15とに液圧媒体を供給する。低圧ポンプ11,12にそれぞれ圧力フィルタ装置16,17が後置されている。圧力フィルタ装置16,17は各々、フィルタとばね負荷された逆止弁もしくは圧力制限弁とを有している。
【0055】
低圧ポンプ11,12は分配システムもしくは調整システム18を介して高圧ポンプ14,15に接続されている。分配システムもしくは調整システム18は圧力制御弁装置20を有している。圧力制御弁装置20は3ポート3位置制御弁として構成されている。図1の圧力制御弁装置20の左側に、第2の低圧ポンプ12の出口が接続されている。図1の圧力制御弁装置20の右側は、下方から上方への順で見て、タンク3へのリターンガイド接続部と、分岐部24との接続部と、接続管路41との接続部とを有している。
【0056】
圧力制御弁装置20に後置されている分岐部24において、第1の低圧ポンプ11の出口が低圧領域25に接続されている。低圧領域25は低圧循環路と称呼される。低圧領域25は液圧媒体を含んでいる。液圧媒体は第1の低圧ポンプ11及び/又は第2の低圧ポンプ12によって提供される。低圧領域25における液圧媒体は、約3barの圧力によって負荷されている。圧力は低圧とも称呼される。低圧領域25には切換え弁26が設けられている。切換え弁26はクラッチ冷却部27への供給のために働く。クラッチ冷却部27の他に、低圧領域25は更にバリエータ冷却部28と別の冷却部29,30とを有している。
【0057】
別の冷却部29,30よりもバリエータ冷却部28を優先させるために、制御切換え弁装置35が設けられている。制御切換え弁装置35はばねにより図示の切換え位置へと予負荷をかけられている。3ポート3位置制御弁として構成されている制御切換え接続弁35の図示の位置では、バリエータ冷却部28は絞り切換え装置38を介して低圧領域25に接続している。別の冷却部29,30は制御切換え弁装置35の図示の切換え位置においては、低圧領域25から切り離されている。絞り切換え装置38は2つの絞りを有している。これらの絞りは種々異なる貫流量をバリエータ冷却部28に提供する。低圧領域25における圧力は圧力制限弁39により維持される。
【0058】
分配システムもしくは調整システム18は低圧領域25の他に更に中圧領域40を有している。中圧領域40は中圧循環路とも称呼される。中圧領域40は接続管路41を介して圧力制御弁装置20に接続されている。図1に記載した、圧力制御弁装置20の切換え位置において、矢印で記載したように第2の低圧ポンプ12はタンク3内に圧送する。これと同時に低圧領域25に第1の低圧ポンプ11により、低圧によって負荷されている液圧媒体が供給される。
【0059】
符号44で、第2の低圧ポンプ12に対して配置されている符号17の圧力フィルタ装置の代わりに、中圧領域40に圧力フィルタ装置が配置されていてもよい、ということを示している。圧力制御弁装置20の後方もしくは下流に圧力フィルタ装置44を配置することは、圧力制御弁装置20においてタンク3内に案内される液圧媒体流は、圧力フィルタ装置44を通過せずに案内される、という利点をもたらす。戻し管路42は圧力制御弁装置20から出発している。戻し管路42は圧力制御弁45に接続管路41を介して、低圧で負荷されている液圧媒体を供給する。圧力制御弁装置45は、必要に応じて磁石46によって比例磁石弁を介して、分配もしくは調整システム18における個々の弁装置に切り換えられる予圧を提供するために働く。
【0060】
中圧領域40には切換え弁48が配置されている。切換え弁48は3ポート2位置制御弁として構成されている。中圧によって負荷されている液圧媒体をクラッチ式のブレーキ49と別の冷却部50とに供給するために、切換え弁48は働く。切換え弁48と同様にばね予負荷されている比例磁石弁として構成されている別の切換え弁51は、例えば中圧によって負荷されている液圧媒体を切換えアクチュエータ(図示せず)に供給するために働く。
【0061】
圧力制御弁装置20が中間の位置にある場合、例えば冷却目的のために必要な高められた液圧媒体を提供するために、第2の低圧ポンプ12は接続される。圧力制御弁装置20の上側の第3の切換え位置においては、第2の低圧ポンプ12により必要に応じて約20barの中圧が提供される。中圧によって負荷されている液圧媒体は接続管路41を介して中圧消費器49,50に供給される。約20barの所望の中圧を超過する場合、リターンガイド42を介して余分な液圧媒体の、低圧領域25又はタンク3への排出が可能になる。
【0062】
高圧ポンプ14,15の出口への接続部における液圧システム1の部分は、高圧領域とも称呼され、中圧領域40における中圧よりも明らかに高い圧力によって負荷されている。制御弁55は第2の高圧ポンプ15に対して並列に接続されている。第2の高圧ポンプ15はまた第1の高圧ポンプ14に対して並列に接続されている。制御弁55は2ポート2位置制御弁として構成されていて、第2の高圧ポンプ15によって提供された液圧媒体流を再び、高圧ポンプ14,15の流入口もしくは入口の手前に直接案内するために働く。
【0063】
高圧ポンプ14,15に圧力制御弁56が後置されている。圧力制御弁56は所望のシステム圧を維持するために働く。圧力制御弁56にトルクフィーラ58が後置されている。トルクフィーラ58は絞り63又は圧力制限弁64が配置されている戻し通路62を介してタンク4に接続している。戻し通路62は制御管路61を介して切換え・遮断弁装置60に接続している。切換え・遮断弁装置60は3ポート3位置制御弁として構成されている。3ポート3位置制御弁はばねにより記載の閉鎖された位置に予負荷されている。図示の位置は切換え・遮断弁装置60の通常位置である。図示の位置は、閉鎖位置とも称呼される切換え・遮断弁装置60の通常位置である。図示の閉鎖位置においては、トルクフィーラ58の他に別の消費器への供給は遮断されている。これによりトルクフィーラ58が優先される。
【0064】
圧力制御弁56は、OR接合部(ODER−Verknuepfungen)66,67を含む制御管路を介して、クラッチ70とバリエータの調整室71,72に接続している。クラッチ70には別の弁装置を介して液圧媒体が供給される。調整室71,72には変換弁装置73,74及び非常切換え弁装置75を介して、効果的に液圧媒体が供給される。もちろん調整室71,72は、トルクフィーラ58の戻し通路62において最低液圧流に達した場合に初めて、切換え・遮断弁装置60を介して液圧媒体が供給される。つまり、液圧媒体をトルクフィーラ58に十分に供給することが保証されている。
【0065】
こうして初めて高圧ポンプ14,15によってもたらされた液圧媒体流は、切換え・遮断弁装置60を介して変換弁装置73,74に供給される。切換え・遮断弁装置60の中間位置において、液圧媒体流は変換弁装置73,74に供給される。切換え・遮断弁装置60の図1における左側の切換え位置では、提供された液圧媒体流は変換弁装置73,74に対して付加的に、高圧ポンプ14,15の入口にも供給される。
【0066】
変換弁装置73,74と調整室71,72との間には、非常切換え弁装置75が接続されている。非常切換え弁装置75は予め接続されている弁装置の故障時に、非常運転に切り換わる。同様に構成された非常切換え弁装置78がクラッチ70に前置されている。非常切換え弁装置75,78は非常時に接続されている消費器の、体積流もしくは回転数に応じた運転を可能にする。
【0067】
更に高圧領域では圧力制御弁79が配置されている。圧力制御弁79は中圧領域40における圧力制御弁45に類似して、高圧領域において所望のシステム圧を供給するために磁石80によって維持するために働く。
【符号の説明】
【0068】
1 液圧システム、 2〜7 タンクシンボル、 10 エネルギ源、 11 第1の低圧ポンプ、 12 第2の低圧ポンプ、 14 第1の高圧ポンプ、 15 第2の高圧ポンプ、 16,17 圧力フィルタ装置、 18 分配もしくは調整システム、 20 圧力制御弁装置、 24 分岐部、 25 低圧領域、 26 切換え弁、 27 クラッチ冷却部、 28 バリエータ冷却部、 30 冷却部、 35 制御切換え弁装置、 38 絞り切換え装置、 39 圧力制限弁、 40 中圧領域、 41 接続管路、 42 リターンガイド管路、 44 圧力フィルタ装置、 45 圧力制御弁、 46 磁石、 48 切換え弁、 49 ブレーキ、 50 冷却部、 51 切換え弁、 55 制御弁、 56 圧力制御弁、 58 トルクフィーラ、 60 遮断弁装置、 61 制御管路、 62 戻し通路、 63 絞り、 64 圧力制限弁、 66,67 OR接合部、 70 クラッチ、 71,72 調整室、 73,74 変換弁装置、 75,78 非常切換え弁装置、 79 圧力制御弁、 80 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置の、クラッチ及び/又はバリエータを制御するための液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源(10)とトルクフィーラ(58)とを備えている液圧システムにおいて、
トルクフィーラ(58)の他に別の消費器(71,72)に供給するために、切換え・遮断弁装置(60)は、液圧式のエネルギ源(10)と、別の消費器(71,72)と、トルクフィーラ(58)との間に接続されていて、トルクフィーラ(58)に液圧媒体が優先的に供給されることを特徴とする、液圧システム。
【請求項2】
別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は、液圧式のエネルギ源(10)と別の消費器(71,72)との間に接続されていることを特徴とする、請求項1記載の液圧システム。
【請求項3】
別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は、閉鎖された状態に予負荷をかけられていることを特徴とする、請求項2記載の液圧システム。
【請求項4】
別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は、トルクフィーラ(58)の戻し通路(62)における絞り(63)又は圧力制限弁(64)と協働することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項5】
別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は、トルクフィーラ(58)の戻し通路(62)と接続していて、トルクフィーラ(58)の戻し通路(62)に最小液圧媒体流がある場合に初めて、別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は開放することを特徴とする、請求項4記載の液圧システム。
【請求項6】
別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は開放された位置を有しており、該開放された位置において別の消費器(71,72)は液圧式のエネルギ源(10)に接続されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項7】
別の消費器(71,72)に供給するために切換え・遮断弁装置(60)は、別の開放された位置を有しており、該別の開放された位置において、別の消費器(71,72)は液圧式のエネルギ源(10)に接続されており、液圧式のエネルギ源(10)の出口は開放された切換え・遮断弁装置(60)を介して液圧式のエネルギ源(10)の入口に接続されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項8】
車両、特に商用車の可変に調節可能な変速比を備えた円錐形プーリ式巻掛け伝動装置の、クラッチ(70)及び/又はバリエータを制御するための液圧システムであって、少なくとも1つの液圧式のエネルギ源(10)を備えた、特に請求項1から7までのいずれか一項記載の液圧システムにおいて、
第1の調整室(71)内の調整圧を提供するために働く第1の変換弁装置(73)の出口と、第2の調整室(72)内の調整圧を提供するために働く第2の変換弁装置(74)の出口とは、液圧式のエネルギ源(10)の入口もしくは該入口に直接接続されていることを特徴とする、液圧システム。
【請求項9】
液圧式のエネルギ源(10)は少なくとも1つの高圧ポンプ(14)と、少なくとも1つの低圧ポンプ(11)とを有しており、高圧ポンプ(14)と低圧ポンプ(11)とは互いに接続していることを特徴とする、請求項8の上位概念部に記載、特に請求項1から8までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項10】
変換弁装置(73,74)の出口は高圧ポンプ(14)の入口に直接接続されていることを特徴とする、請求項8又は9記載の液圧システム。
【請求項11】
液圧式のエネルギ源(10)は第1の低圧ポンプ(11)と第2の低圧ポンプ(12)とを有していることを特徴とする、請求項9記載の液圧システム、特に請求項1から10までの少なくともいずれか一項記載の液圧システムとの組合せにおける液圧システム。
【請求項12】
第2の低圧ポンプ(12)の出口は圧力制御弁装置(20)を介して高圧ポンプ(14,15)の入口に接続可能であり、前記入口は第1の低圧ポンプ(11)の出口に接続されていることを特徴とする、請求項11記載の液圧システム。
【請求項13】
圧力制御弁装置(20)は、第2の低圧ポンプ(12)の出口がタンク(3)に接続されている切換え位置を有していることを特徴とする、請求項12記載の液圧システム。
【請求項14】
圧力制御弁装置(20)は、第2の低圧ポンプ(12)の圧送流が第1の低圧ポンプ(11)の圧送流と共に案内される別の切換え位置を有していることを特徴とする、請求項13記載の液圧システム。
【請求項15】
低圧ポンプ(11,12)の前記出口は個々に又は一緒になって、圧力制御弁装置(20)を介して別の消費器、特に冷却装置(27〜30)に接続されていることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項16】
低圧領域(25)もしくは低圧循環路において、制御切換え弁装置(35)は別の消費器(27〜30)に供給するために、圧力制御弁装置(20)と前記別の消費器との間に接続されており、バリエータ冷却装置(28)に液圧媒体が優先的に供給されることを特徴とする、請求項15記載の液圧システム。
【請求項17】
制御切換え弁装置(35)に絞りが後置されており、前記絞りの背圧は制御弁装置(35)と協働し、規定の最低背圧の超過後に初めてバリエータ冷却装置(28)の他に別の消費器(29,30)に液圧媒体が供給されることを特徴とする、請求項16記載の液圧システム。
【請求項18】
異なる絞りを備えた絞り切換え装置(38)は制御切換え弁装置(35)に後置されており、絞り切換え装置(38)の背圧はそれぞれ制御切換え弁装置(35)と協働して、それぞれ規定された最低背圧を超過した後に初めてバリエータ冷却装置(28)の他に別の消費器(29,30)に液圧媒体が供給されることを特徴とする、請求項16又は17記載の液圧システム。
【請求項19】
圧力制御弁装置(20)は、第2の低圧ポンプ(12)の出口が中圧領域(40)又は中圧循環路に接続している別の切換え位置を有していることを特徴とする、請求項13から18までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項20】
中圧領域(40)又は中圧循環路は別の消費器(49,50)を有しており、別の消費器(49,50)に、中圧で負荷されている液圧媒体が別の弁装置(48,51)を介して必要に応じて供給されることを特徴とする、請求項19記載の液圧システム。
【請求項21】
圧力フィルタ(17)は第2の低圧ポンプ(12)と圧力制御弁装置(20)との間に接続されていることを特徴としている、請求項12から20までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項22】
第2の低圧ポンプ(12)に対して配置されている圧力フィルタ(44)は圧力制御弁装置(20)に後置されていることを特徴とする、請求項12から20までのいずれか一項記載の液圧システム。
【請求項23】
前記液圧式のエネルギ源は第1の高圧ポンプ(14)と、該第1の高圧ポンプに対して並列に接続されている第2の高圧ポンプ(15)とを有していることを特徴とする、請求項9記載の液圧システム、特に請求項1から22までの少なくともいずれか一項記載の液圧システムとの組合せにおける液圧システム。
【請求項24】
制御弁装置(55)は第2の高圧ポンプ(15)に対して並列に接続されていて、第2の高圧ポンプ(15)の圧送流は必要に応じて高圧ポンプ(14,15)の入口に供給されることを特徴とする、請求項23記載の液圧システム。

【図1】
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【公表番号】特表2010−519471(P2010−519471A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550201(P2009−550201)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000174
【国際公開番号】WO2008/101458
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】