液晶パネルおよび液晶表示装置
【課題】全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶パネルは、第1の偏光子と;第1の光学補償層と;液晶セルと;第2の光学補償層と;第2の偏光子とを;視認側からこの順に備える。第1の光学補償層は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、該第1の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し、該第2の光学補償層は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)。
【解決手段】本発明の液晶パネルは、第1の偏光子と;第1の光学補償層と;液晶セルと;第2の光学補償層と;第2の偏光子とを;視認側からこの順に備える。第1の光学補償層は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、該第1の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し、該第2の光学補償層は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。より詳細には、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、従来の代表的な液晶表示装置の概略断面図であり、図5(b)は、この液晶表示装置に用いられる液晶セルの概略断面図である。この液晶表示装置900は、液晶セル910と、液晶セル910の外側に配された位相差板920、920’と、位相差板920、920’の外側に配された偏光板930、930’とを備える。代表的には、偏光板930、930’は、その吸収軸が互いに直交するようにして配置されている。液晶セル910は、一対の基板911、911’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層912とを有する。一方の基板911には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板911’には、カラーフィルターを構成するカラー層913R、913G、913Bと遮光層(ブラックマトリックス層)914とが設けられている。基板911、911’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。
【0003】
上記位相差板は、液晶表示装置の光学補償を目的として用いられている。最適な光学補償(例えば、視野角特性の改善、カラーシフトの改善、コントラストの改善)を得るために、位相差板の光学特性の最適化および/または液晶表示装置における配置について、種々の試みがなされている。従来、図5に示すように、位相差板は、液晶セル910と偏光板930、930’との間に1枚ずつ配置される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年の液晶表示装置の高精細化および高機能化に伴い、画面の均一性および表示品位のより一層の向上が求められている。しかし、従来の液晶表示装置においては、全方位において色つきのないニュートラルな表示を発現させることは困難である。さらに、液晶表示装置の小型・携帯化に伴い、薄型化の要求も増大している。
【特許文献1】特開平11−95208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶パネルは、第1の偏光子と;第1の光学補償層と;液晶セルと;第2の光学補償層と;第2の偏光子とを;視認側からこの順に備える。第1の光学補償層は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、該第1の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し、該第2の光学補償層は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層の波長380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は10nm以下である。好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層のNz係数は1.1〜3.0の範囲である。あるいは、上記第1の光学補償層のNz係数は、0.9を超えて1.1未満である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層は、環状オレフィン系樹脂を含有するフィルムである。さらに好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層は、固定端一軸延伸法により作製されたフィルムである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記第2の光学補償層は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドから選択される少なくとも1つの非液晶材料を含有する。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層と上記第1の偏光子とは、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤で貼り合わせられている。
【0011】
さらに好ましい実施形態においては、上記水溶性接着剤は金属化合物コロイドを含有する。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記液晶セルの駆動モードは、VAモードまたはOCBモードである。
【0013】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記の液晶パネルを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することができる。このような効果は、いわゆるフラットな波長分散特性を有し、かつ、非常に小さい光弾性係数およびnx>ny≧nzの屈折率分布を有する第1の光学補償層と、nx=ny>nzの屈折率分布を有し、かつ、波長が大きくなるにしたがい厚み方向位相差が小さくなる波長分散特性を有する第2の光学補償層とを組み合わせて用いることで顕著となる。さらに、本発明によれば、第1の光学補償層が一方の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し得るので、液晶表示装置の薄型化に貢献し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである:
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。また、例えば「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、液晶パネル(最終的には、液晶表示装置)の表示特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。
(2)「面内位相差Δnd(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Δnd(λ)は、波長λnmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Δnd(λ)=(nx−ny)×dによって求められる。なお、単にΔndと記載する場合には、Δndは波長590nmにおける面内位相差を意味する。
(3)厚み方向の位相差Rth(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth(λ)は、波長λnmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求められる。なお、単にRthと記載する場合には、Rthは波長590nmにおける厚み方向の位相差を意味する。
(4)Nz係数は、面内位相差Δndと厚み方向位相差Rthとの比であり、式:Nz=(nx−nz)/(nx−ny)によって求められる。
【0016】
A.液晶パネルの構成とそれを含む液晶表示装置
図1は、本発明の液晶パネルの好ましい一例を説明する概略断面図である。液晶パネル100は、第1の偏光子30と、第1の光学補償層60と、液晶セル40と、第2の光学補償層70と、第2の偏光子50と、を有する。第1の光学補償層60および第2の光学補償層70は、両方が液晶セルの一方の側(すなわち、視認側またはバックライト側)に配置されてもよく、一方が液晶セルのバックライト側に配置され一方が視認側に配置されてもよい。好ましくは、図1に示すように、第1の光学補償層60が視認側に配置され、第2の光学補償層70がバックライト側に配置される。第1の偏光子および第2の偏光子は、それぞれ、その少なくとも一方の側に保護層を有していてもよい(図示せず)。本発明の液晶パネルにおいては、第1の光学補償層60が一方の偏光子(図示例では第1の偏光子30)の液晶セル側の保護層を兼ねるので、当該位置の保護層は省略され得る。上記それぞれの光学補償層、偏光子および液晶セルは、任意の適切な粘着剤層または接着剤層を介して貼り合わせられている。
【0017】
第1の光学補償層60は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、上記のように一方の偏光子の液晶セル側の保護層として機能する。第2の光学補償層70は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)
第1の光学補償層60は、好ましくは、その遅相軸が隣接する偏光子(図示例では第1の偏光子)の吸収軸と実質的に直交するようにして配置されている。なお、第1の光学補償層60および第2の光学補償層70の詳細については後述する。
【0018】
第1の偏光子30の吸収軸と第2の偏光子50の吸収軸とは、好ましくは、実質的に直交している。
【0019】
液晶セル40は、一対のガラス基板41、42と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層43とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)41には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板(カラーフィルター基板)42には、カラーフィルター(図示せず)が設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板41に設けてもよい。基板41および42の間隔(セルギャップ)は、スペーサー44によって制御されている。セルギャップは、好ましくは2μm〜10μmであり、さらに好ましくは3μm〜9μmであり、特に好ましくは4μm〜8μmである。このような範囲内であれば、液晶セルの応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。基板41および42の液晶層43と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0020】
液晶セル40の駆動モードとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な駆動モードが採用され得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モードおよびASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードが挙げられる。VAモードおよびOCBモードが好ましい。カラーシフトの改善が著しいからである。
【0021】
図2は、VAモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。図2(a)に示すように、電圧無印加時には、液晶分子は基板41、42面に垂直に配向する。このような垂直配向は、垂直配向膜(図示せず)を形成した基板間に負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で一方の基板41の面から光を入射させると、第2の偏光子50を通過して液晶層43に入射した直線偏光の光は、垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、第2の偏光子50と直交する吸収軸を有する第1の偏光子30で吸収される。これにより電圧無印加時において暗状態の表示が得られる(ノーマリーブラックモード)。図2(b)に示すように、電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸が基板面に平行に配向する。この状態の液晶層43に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において液晶層を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、第1の偏光子30を透過して明状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により暗状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して第1の偏光子30からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。
【0022】
図3は、OCBモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。OCBモードは、液晶層43をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成する駆動モードである。ベンド配向とは、図3(c)に示すように、ネマチック液晶分子の配向が基板近傍においては、ほぼ平行の角度(配向角)を有し、配向角は液晶層の中心に向かうに従って基板平面に対して垂直な角度を呈し、液晶層の中心から離れるに従って対向する基板表面と配向になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しない配向状態をいう。このようなベンド配向は、以下のようにして形成される。図3(a)に示すように、何ら電界等を付与していない状態(初期状態)では、液晶分子は実質的にホモジニアス配向をとっている。ただし、液晶分子は、プレチルト角を有し、かつ、基板近傍のプレチルト角とそれに対向する基板近傍のプレチルト角とが異なっている。ここに所定のバイアス電圧(代表的には、1.5V〜1.9V)を印加すると(低電圧印加時)、図3(b)に示すようなスプレイ配向を経て、図3(c)に示すようなベンド配向への転移が実現され得る。ベンド配向状態からさらに表示電圧(代表的には、5V〜7V)を印加すると(高電圧印加時)、液晶分子は図3(d)に示すように基板表面に対してほぼ垂直に立ち上がる。ノーマリーホワイトの表示モードにおいては、第2の偏光子50を通過して、高電圧印加時に図3(d)の状態にある液晶層に入射した光は、偏光方位を変えずに進み、第1の偏光子30で吸収される。したがって、暗状態の表示となる。表示電圧を下げると、ラビング処理の配向規制力により、ベンド配向に戻り、明状態の表示に戻すことができる。また、表示電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光子からの透過光強度を変化させることにより、階調表示が可能となる。なお、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、スプレイ配向状態からベンド配向状態への相転移を非常に高速でスイッチングできるため、TNモードやIPSモード等の他駆動モードの液晶表示装置に比べ、動画表示特性に優れるという特徴を有する。
【0023】
上記OCBモードの液晶セルの表示モードは、高電圧印加時に暗状態(黒表示)をとるノーマリーホワイトモード、高電圧印加時に明状態(白表示)をとるノーマリーブラックモードのいずれのモードでも使用することができる。
【0024】
上記OCBモードの液晶セルに使用されるネマチック液晶は、好ましくは、誘電率異方性が正のものが使用される。誘電率異方性が正のネマチック液晶の具体例としては、特開平9−176645号公報に記載のものが挙げられる。また、市販のネマチック液晶をそのまま用いてもよい。市販のネマチック液晶としては、例えば、メルク社製 商品名「ZLI−4535」、および商品名「ZLI−1132」等が挙げられる。上記ネマチック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、すなわち複屈折率(ΔnLC)は、上記液晶の応答速度や透過率等によって適宜に選択されるが、好ましくは0.05〜0.30であり、さらに好ましくは0.10〜0.30であり、さらに好ましくは0.12〜0.30である。また、このようなネマチック液晶のプレチルト角は、好ましくは1°〜10°であり、さらに好ましくは2°〜8°であり、特に好ましくは3°〜6°である。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
【0025】
B.偏光子
第1の偏光子および第2の偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0026】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0027】
C.保護層
保護層は、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。それぞれの保護層は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0029】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル系樹脂として、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0032】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0033】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
【0034】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0035】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系および/またはメタクリル系をいう。
【0036】
上記保護層は、透明で、色付きが無いことが好ましい。保護層の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは−90nm〜+90nm、より好ましくは−80nm〜+80nm、さらに好ましくは−70nm〜+70nmである。
【0037】
上記保護層の厚みは、上記の好ましい厚み方向の位相差Rthが得られ得る限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。保護層の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
【0038】
偏光子の外側に設けられる保護層の偏光子と反対側(液晶パネルの最外側)には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等が施され得る。
【0039】
第1の偏光子と第1の光学補償層との間に設けられる保護層および第2の偏光子と第2の光学補償層との間に設けられる保護層(以下、これらの保護層を内側保護層と称することもある)の厚み方向の位相差(Rth)は、上記好ましい値よりもさらに小さいことが好ましい。上述のように、一般的に保護フィルムとして用いられているセルロース系フィルムは、例えば、トリアセチルセルロースフィルムの場合、厚さ80μmにおいて厚み方向の位相差(Rth)は60nm程度である。そこで、厚み方向の位相差(Rth)の大きいセルロース系フィルムについて、厚み方向の位相差(Rth)を小さくするための適切な処理を施すことにより、好適に内側保護層を得ることができる。
【0040】
厚み方向の位相差(Rth)を小さくするための上記処理としては、任意の適切な処理方法を採用できる。例えば、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗布したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレス等の基材を、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂等をシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を、一般的なセルロース系フィルムに塗布し、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、塗布フィルムを剥離する方法などが挙げられる。
【0041】
上記セルロース系フィルムを構成する材料としては、好ましくは、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等の脂肪酸置換セルロース系ポリマーが挙げられる。一般的に用いられているトリアセチルセルロースでは、酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7、より好ましくはプロピオン酸置換度を0.1〜1に制御することによって、厚み方向の位相差(Rth)を小さく制御することができる。
【0042】
上記脂肪酸置換セルロース系ポリマーに、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、厚み方向の位相差(Rth)を小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸置換セルロース系ポリマー100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0043】
上記厚み方向の位相差(Rth)を小さくするための処理は、適宜組み合わせて用いてもよい。このような処理を施して得られる内側保護層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは−20nm〜+20nm、より好ましくは−10nm〜+10nm、さらに好ましくは−6nm〜+6nm、特に好ましくは−3nm〜+3nmである。内側保護層の面内位相差Re(550)は、好ましくは0nm以上10nm以下、より好ましくは0nm以上6nm以下、さらに好ましくは0nm以上3nm以下である。
【0044】
上記内側保護層の厚みは、上記の好ましい厚み方向の位相差Rthが得られ得る限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。上記内側保護層の厚みは、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは35〜95μmである。
【0045】
D.第1の光学補償層
第1の光学補償層は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、好ましくは0.2×10−12〜35×10−12(m2/N)であり、さらに好ましくは0.2×10−12〜30×10−12(m2/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、表示ムラおよび輝度ムラを効果的に抑制することができる。
【0046】
第1の光学補償層は、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、好ましくは90〜160nmであり、より好ましくは95〜150nmであり、さらに好ましくは95〜145nmである。
【0047】
第1の光学補償層は、下記式(1)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
ここで、例えばΔnd(380)=Δnd(550)とは、Δnd(380)とΔnd(550)とが厳密に等しい場合だけでなく実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、本発明の液晶パネルの表示特性に実用上の影響を与えない範囲で、例えばΔnd(380)とΔnd(550)が異なる場合を包含する趣旨である。より具体的には、第1の光学補償層の波長380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は、好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは8nm以下であり、特に好ましくは6nm以下である。このように、第1の光学補償層がいわゆるフラットな波長分散特性を有することにより、波長が大きくなるにしたがい厚み方向位相差が大きくなるいわゆる正分散の第2の光学補償層と組み合わせて、全方位において色つきのないニュートラルな表示の液晶パネルが得られる。
【0048】
さらに、第1の光学補償層は、下記式(2)の関係を有する:
nx>ny≧nz ・・・(2)
すなわち、第1の光学補償層は、1つの実施形態においてはnx>ny=nzの屈折率分布を有し、別の実施形態においてはnx>ny>nzの屈折率分布を有する。屈折率分布がnx>ny=nzである実施形態においては、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。より具体的には、この実施形態における第1の光学補償層のNz係数は、0.9を超えて1.1未満である。屈折率分布がnx>ny>nzである実施形態においては、第1の光学補償層のNz係数は、好ましくは1.1〜3.0であり、さらに好ましくは1.1〜2.0であり、特に好ましくは1.1〜1.7であり、とりわけ好ましくは1.1〜1.5であり、最も好ましくは1.1〜1.4である。このような屈折率分布(Nz係数)を有する第1の光学補償層と、後述する特定の第2の光学補償層とを組み合わせて液晶パネルに用いることにより、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶パネルを提供することができる。
【0049】
第1の光学補償層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、第1の光学補償層の厚みは、好ましくは20〜110μmであり、さらに好ましくは25〜105μmであり、最も好ましくは30〜100μmである。
【0050】
第1の光学補償層を形成し得る材料としては、上記のような特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。このような材料の代表例としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。より具体的には、第1の光学補償層は、好ましくは環状オレフィン系フィルムである。
【0051】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0052】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0053】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0054】
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000〜200,000、さらに好ましくは30,000〜100,000、最も好ましくは40,000〜80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0055】
上記環状オレフィン系樹脂がノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られるものである場合には、水素添加率は、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは99%以上である。このような範囲であれば、耐熱劣化性および耐光劣化性などに優れる。
【0056】
上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0057】
第1の光学補償層は、上記環状オレフィン系樹脂から形成されたフィルム(環状オレフィン系フィルム)を延伸することにより得られ得る。環状オレフィン系フィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、注型(キャスティング)法等が挙げられる。押出成形法または注型(キャスティング)法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、第1の光学補償層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記環状オレフィン系フィルムは、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0058】
上記延伸方法としては、所望の光学特性(例えば、屈折率分布、Nz係数)に応じて任意の適切な方法が採用され得る。延伸方法の具体例としては、横一軸延伸、自由端一軸延伸、固定端二軸延伸、固定端一軸延伸、逐次二軸延伸が挙げられる。固定端二軸延伸の具体例としては、フィルムを長手方向に走行させながら、短手方向(横方向)に延伸させる方法が挙げられる。この方法は、見かけ上は横一軸延伸であり得る。これらの延伸方法は、単独でまたは二以上を組み合わせて用いられ得る。例えば、自由端一軸延伸を行った後に固定端一軸延伸を行う方法が挙げられる。固定端一軸延伸が好ましい。Nz係数が1.1〜1.6程度でnx>ny>nzの屈折率分布を有するフィルムが得やすくなる。さらに、固定端一軸延伸を行うことによって、フィルムの短手方向(幅方向)に遅相軸を設けることができるので、当該フィルムの遅相軸を偏光子の吸収軸に対して直交するように配置させる場合には、当該フィルムと偏光子との貼り合わせをロールtoロールで連続的に行うことが可能となり、製造効率が高くなる。
【0059】
例えば屈折率分布がnx>ny>nzであるフィルムが所望される場合には、延伸温度は、好ましくは130〜165℃、さらに好ましくは135〜165℃、最も好ましくは137〜165℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る第1の光学補償層が得られ得る。延伸温度が130℃より低い場合には、均一に延伸できないおそれがある。延伸温度が165℃より高い場合には、第1の光学補償層に求められる所望の面内位相差が発現できないおそれがある。延伸倍率は、好ましくは1.2〜4.0倍、さらに好ましくは1.2〜3.8倍、最も好ましくは1.25〜3.6倍である。このような倍率で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る第1の光学補償層が得られ得る。延伸倍率が1.2倍より小さい場合には、第1の光学補償層に求められる所望の面内位相差が発現できないおそれがある。延伸倍率が4.0倍よりも大きい場合には、延伸中にフィルムが切れてしまったり、脆くなってしまったりするおそれがある。
【0060】
例えば屈折率分布がnx>ny=nzであるフィルムが所望される場合には、延伸温度は、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは130〜150℃である。延伸倍率は、好ましくは1.3〜1.7倍、さらに好ましくは1.4〜1.6倍である。
【0061】
第1の光学補償層は、上記のように例えば環状オレフィン系樹脂から形成されるフィルムの単一層であってもよく、所定の光学特性を有する複数のフィルムの積層体であってもよい。例えば、Δnd(380)>Δnd(550)>Δnd(780)の関係を有する(いわゆる正の波長分散特性を有する)光学フィルムとΔnd(380)<Δnd(550)<Δnd(780)の関係を有する(いわゆる逆波長分散特性を有する)光学フィルムとを積層して、フラットな波長分散特性を有する第1の光学補償層を形成してもよい。この場合、その他の光学特性(面内位相差、厚み方向位相差、Nz係数、光弾性係数等)は、用いる光学フィルムの材料、厚み、作成条件等を調整することにより、上記の所望の値に制御され得る。
【0062】
E.第1の光学補償層と隣接する偏光子との貼り合わせ
上記のように、第1の光学補償層は、一方の偏光子(図示例では第1の偏光子)の液晶セル側の保護層として機能し得る。この場合、第1の光学補償層と第1の偏光子とは、好ましくは、粘着剤または接着剤を介して貼り合わせられている。第1の光学補償層における第1の偏光子に貼り合わされる面には、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、樹脂材料を塗工することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。易接着処理されることにより、易接着層が形成される。易接着層の厚みは、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜80nmである。
【0063】
上記粘着剤は粘着剤層を形成し、上記接着剤は接着剤層を形成する。粘着剤または接着剤は、第1の偏光子に塗工してもよく、第1の光学補償層に塗工してもよく、第1の偏光子と第1の光学補償層の両方に塗工してもよい。
【0064】
上記粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜設定され得る。具体的には、粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜100μm、より好ましくは3μm〜50μm、さらに好ましくは5μm〜30μm、特に好ましくは10〜25μmである。
【0065】
上記粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。具体例としては、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤等が挙げられる。アクリル系ポリマーをベースポリマーとする溶剤型粘着剤が好ましく用いられる。第1の偏光子および第1の光学補償層に対して適切な粘着特性(ぬれ性、凝集性および接着性)を示し、かつ、光学透明性、耐候性および耐熱性に優れるからである。
【0066】
上記接着剤層は、例えば、接着剤を所定割合で含有する塗工液を上記第1の光学補償層の表面および/または第1の偏光子の表面に、塗工し乾燥することで形成される。上記塗工液の調製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、市販の溶液または分散液を用いてもよく、市販の溶液または分散液にさらに溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解または分散して用いてもよい。
【0067】
上記接着剤としては、目的に応じて任意の適切な性質、形態および接着機構を有する接着剤が用いられ得る。具体例としては、水溶性接着剤、溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、およびサポーテッドフィルム接着剤;熱可塑型接着剤、熱溶融型接着剤、熱固化接着剤、ホットメルト接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール用接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤、重合型接着剤、溶剤型接着剤、および溶剤活性接着剤等が挙げられる。本発明においては、これらのなかでも、透明性、接着性、作業性、製品の品質および経済性に優れる水溶性接着剤が好ましく用いられる。
【0068】
上記水溶性接着剤は、水に可溶な天然高分子および/または合成高分子を主成分として含有し得る。天然高分子の具体例としては、たんぱく質や澱粉等が挙げられる。合成高分子の具体例としては、レゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、オリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
【0069】
本発明においては、上記水溶性接着剤のなかでも、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするものが好ましく用いられ、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)を主成分とするものがさらに好ましく用いられる。偏光子との接着性にきわめて優れ、かつ、第1の光学補償層との接着性にも優れるからである。上記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、日本合成化学(株)製の商品名「ゴーセノールZシリーズ」、同社の商品名「ゴーセノールNHシリーズ」、同社の商品名「ゴーセファイマーZシリーズ」が挙げられる。
【0070】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルのケン化物、当該ケン化物の誘導体;酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールが挙げられる。前記単量体としては、例えば、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100〜5000程度、さらに好ましくは1000〜4000である。平均ケン化度は、接着性の点から、好ましくは85〜100モル%程度、さらに好ましくは90〜100モル%である。
【0072】
上記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。具体例として、酢酸等の溶媒中にポリビニルアルコール系樹脂を分散させた分散体に、ジケテンを添加する方法;ジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させた溶液に、ジケテンを添加する方法;ポリビニルアルコール系樹脂にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
【0073】
上記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20%、特に好ましくは2〜7モル%である。0.1モル%未満では耐水性が不充分となるおそれがある。40モル%を超えると、耐水性向上効果が小さい。なお、アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0074】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、好ましくは、架橋剤をさらに含有し得る。耐水性をより一層向上させることができるからである。上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。好ましくは、上記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物である。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、または三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらの中でもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好ましく、ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好適である。中でもメチロール基を有する化合物が好ましく、メチロールメラミンが特に好適である。上記アルデヒド化合物の具体例としては、日本合成化学(株)製 商品名「グリオキザール」、OMNOVA製 商品名「セクアレッツ755」等が挙げられる。上記アミン化合物の具体例としては、三菱瓦斯化学(株)製 商品名「メタシキレンジアミン」等が挙げられる。また、上記メチロール化合物の具体例としては、大日本インキ(株)製 商品名「ウォーターゾールシリーズ」等が挙げられる。
【0075】
上記架橋剤の配合量は、上記ポリビニルアルコール(好ましくは、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)100重量部に対して、好ましくは1〜60重量部である。該配合量の上限値は、より好ましくは50重量部であり、さらに好ましくは30重量部であり、さらに好ましくは15重量部であり、特に好ましくは10重量部であり、最も好ましくは7重量部である。該配合量の下限値は、より好ましくは5重量部であり、さらに好ましくは10重量部であり、特に好ましくは20重量部である。上記の範囲とすることによって、透明性、接着性、耐水性に優れた接着剤層を形成することができる。なお、架橋剤の配合量が多い場合、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤がゲル化する傾向がある。その結果、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難になるおそれがある。しかし、後述する金属化合物コロイドを併用する場合には、架橋剤の配合量が多い場合であっても、安定性よく用いることができる。
【0076】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、好ましくは、金属化合物コロイドをさらに含有し得る。上記金属化合物コロイドは、金属化合物微粒子が分散媒中に分散しているものであり得、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものであり得る。金属化合物コロイドを形成する微粒子の平均粒子径は、偏光特性等の光学特性に悪影響を及ぼさない限り、任意の適切な値であり得る。好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nmである。微粒子を接着剤層中に均一に分散させ得、接着性を確保し、かつクニックを抑え得るからである。なお、「クニック」とは、偏光子と保護層の界面で生じる局所的な凹凸欠陥のことをいう。
【0077】
上記金属化合物としては、任意の適切な化合物を採用し得る。例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物;ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物が挙げられる。好ましくはアルミナである。
【0078】
上記金属化合物コロイドは、代表的には、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒としては、例えば、水、アルコール類が挙げられる。コロイド溶液中の固形分濃度は、代表的には1〜50重量%程度である。コロイド溶液は、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有し得る。
【0079】
上記金属化合物コロイド(固形分)配合量は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して200重量部以下であり、より好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは20〜175重量部、最も好ましくは30〜150重量部である。接着性を確保しながら、クニックの発生を抑え得るからである。
【0080】
上記接着剤の調製方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属化合物コロイドを含有する接着剤の場合であれば、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤とを予め混合して適切な濃度に調整したものに、金属化合物コロイドを配合する方法が挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後に、架橋剤を、使用時期等を考慮しながら混合することもできる。なお、樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に調整してもよい。
【0081】
上記接着剤の樹脂濃度は、塗工性や放置安定性等の点から、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
【0082】
上記接着剤のpHは、好ましくは2〜6、より好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、最も好ましくは3.5〜4.5である。通常、金属化合物コロイドの表面電荷は、pHを調整することにより制御し得る。当該表面電荷は、好ましくは正電荷である。正電荷を有することにより、例えば、クニック発生を抑制し得る。
【0083】
上記接着剤の全固形分濃度は、接着剤の溶解性、塗工粘度、ぬれ性、目的とする厚みなどによって変化し得る。全固形分濃度は、溶剤100に対して、好ましくは2〜100(重量比)であり、さらに好ましくは10〜50(重量比)であり、最も好ましくは20〜40(重量比)である。このような範囲であれば、表面均一性の高い接着剤層が得られる。
【0084】
上記接着剤の粘度としては、特に制限はないが、23℃におけるせん断速度1000(1/s)で測定した値が、好ましくは1〜50(mPa・s)であり、さらに好ましくは2〜30(mPa・s)であり、最も好ましくは4〜20(mPa・s)である。上記の範囲であれば、表面均一性に優れた接着剤層を形成することができる。
【0085】
上記接着剤の塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、コータを用いた塗工方式を用いることができる。用いられるコータは、上述したコータの中から適宜選択され得る。
【0086】
上記接着剤のガラス転移温度(Tg)は、特に制限はないが、好ましくは20〜120℃であり、さらに好ましくは40〜100℃であり、最も好ましくは50〜90℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量(DSC)測定によるJISK7121−1987に準じた方法で測定することができる。
【0087】
上記接着剤層の厚みは、特に制限はないが、好ましくは0.01〜0.15μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.12μmであり、最も好ましくは0.03〜0.09μmである。上記の範囲であれば、本発明の偏光板が高温多湿の環境下に曝されても、偏光子のはがれや浮きの生じない耐久性に優れた偏光板を得ることができる。
【0088】
上記接着剤は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を含み得る。
【0089】
F.第2の光学補償層
第2の光学補償層は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)
第2の光学補償層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合には、積層体全体として上記のような光学特性を有する限り、各層を構成する材料および各層の厚みは適宜設定され得る。
【0090】
式(3)で表されるように、第2の光学補償層は、厚み方向位相差がいわゆる正の波長分散特性を有する。このような波長分散特性を有する第2の光学補償層を、いわゆるフラットな波長分散特性を有する第1の光学補償層と組み合わせて用いることにより、液晶セルの波長分散特性をより良好に補償することができ、結果として、全方位において色つきのない表示が得られる液晶パネルを提供することができる。より具体的には、第2の光学補償層のRth(380)/Rth(550)は、好ましくは1.12〜1.25であり、さらに好ましくは1.15〜1.20である。第2の光学補償層のRth(550)/Rth(780)は、好ましくは1.03〜1.10であり、さらに好ましくは1.04〜1.07である。
【0091】
式(4)で表されるように、第2の光学補償層はnx=ny>nzの関係を有し、いわゆるネガティブCプレートとして機能し得る。第2の光学補償層がこのような屈折率分布を有することにより、上記の第1の光学補償層との組み合わせによって本発明の目的が効果的に達成され得る。上記のように、本明細書においては「nx=ny」は、nxとnyとが厳密に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合も包含するので、第2の光学補償層は面内位相差を有し得、また、遅相軸を有し得る。ネガティブCプレートとして実用的に許容可能な面内位相差Δndは、好ましくは0〜20nmであり、より好ましくは0〜10nmであり、さらに好ましくは0〜5nmである。
【0092】
第2の光学補償層の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは30〜350nmであり、より好ましくは60〜300nmであり、さらに好ましくは80〜260nmであり、最も好ましくは100〜240nmである。
【0093】
上記のような厚み方向の位相差が得られ得る第2の光学補償層の厚みは、使用される材料等に応じて変化し得る。例えば、第2の光学補償層の厚みは、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜15μmであり、さらに好ましくは1〜10μmであり、特に好ましくは1〜8μmであり、最も好ましくは1〜5μmである。このような厚みは、二軸延伸によるネガティブCプレートの厚み(例えば、60μm以上)に比べて薄く、液晶表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。さらに、第2の光学補償層を非常に薄く形成することにより、熱ムラが顕著に防止され得る。本発明においては、第1の光学補償層が偏光子の保護層として機能し、かつ、非常に小さい光弾性係数を有するので、第2の光学補償層が非常に薄いこととの相乗的な効果が発揮され、液晶表示装置の薄型化ならびに表示ムラおよび熱ムラの防止にきわめて大きく貢献し得る。
【0094】
第2の光学補償層を構成する材料としては、上記のような光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。好ましくは、第2の光学補償層は、非液晶性材料のコーティング層である。延伸フィルムに比べて厚みを格段に薄くできるので、液晶パネルの薄型化に寄与し得るからである。好ましくは、非液晶性材料は、非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料をコーティング層に用いる場合、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx=ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成し得る。その結果、配向基板のみならず未配向基板も使用され得る。さらに、未配向基板を用いる場合であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
【0095】
上記非液晶性材料としては、例えば、特開2004−46065号公報の段落(0018)〜(0072)に例示のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むからである。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。1つの実施形態においては、上記ポリイミドは、下記一般式(I)に示す構造を有する。
このような構造を有するポリイミドを非液晶材料として用いれば、第2の光学補償層を特に薄くすることができる。なお、式(I)においてXとYの和を100とした場合に、Xは30〜70であり、Yは70〜30である。
【0096】
【化1】
【0097】
上記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0098】
次に、上記のような非液晶性ポリマーを用いてコーティングにより第2の光学補償層を形成する方法を説明する。第2の光学補償層の形成方法としては、上記のような光学特性を有する第2の光学補償層が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。代表的な製造方法は、基材フィルムに上記非液晶性ポリマーの溶液を塗工する工程と、当該溶液中の溶媒を除去して非液晶性ポリマーの層を形成する工程とを含む。非液晶性ポリマーの層は、偏光子(代表的には、偏光子の保護層)に直接塗工して形成してもよく(すなわち、偏光子の保護層が基材フィルムを兼ねてもよく)、任意の適切な基材に形成した後、偏光子(代表的には、偏光子の保護層)に転写してもよい。転写による方法は、基材を剥離することをさらに含み得る。
【0099】
上記基材フィルムとしては、任意の適切なフィルムが採用され得る。代表的な基材フィルムとしては、前述した偏光子の保護層に用いられるプラスチックフィルムが挙げられる。上記のように、偏光子の保護層自体が基材フィルムを兼ねてもよい。
【0100】
上記塗工溶液の溶媒は、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。中でも、メチルイソブチルケトンが好ましい。非液晶材料に対して高い溶解性を示し、かつ、基材フィルムを侵食しないからである。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0101】
上記塗工溶液における上記非液晶性ポリマーの濃度は、上記のような第2の光学補償層が得られ、かつ塗工可能であれば、任意の適切な濃度が採用され得る。例えば、当該溶液は、溶媒100重量部に対して、非液晶性ポリマーを好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部含む。このような濃度範囲の溶液は、塗工容易な粘度を有する。
【0102】
上記塗工溶液は、必要に応じて、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤をさらに含有し得る。
【0103】
上記塗工溶液は、必要に応じて、異なる他の樹脂をさらに含有し得る。このような他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂を併用することにより、目的に応じて適切な機械的強度や耐久性を有する第2の光学補償層を形成することが可能となる。このような樹脂は、上記非液晶性ポリマーに対して、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜30質量%の割合で添加され得る。
【0104】
上記溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用され得る。塗工後、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥(例えば、60〜250℃)により、上記溶液中の溶媒を蒸発除去させ、フィルム状の光学補償層を形成する。
【0105】
G.第2の光学補償層と隣接する偏光子との貼り合わせ
前述の通り、本発明における第2の光学補償層は、好ましくは、基材上のコーティング層として形成され得る。基材が偏光子の保護層を兼ねる場合(例えば、基材がトリアセチルセルロースフィルムなどのセルロース系フィルムの場合)には、好ましくは、基材のコーティング層と反対の側が、一方の偏光子(図示例では、第2の偏光子)と粘着剤または接着剤を介して貼り合わせられる。基材が偏光子の保護層を兼ねない場合には、好ましくは、第2の光学補償層は第2の偏光子(代表的には、第2の偏光子の保護層)に転写され、次いで、基材が剥離される。粘着剤または接着剤についての詳細は、前述した通りである。
【0106】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。
【0107】
〈位相差の測定〉
試料フィルムの屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA−WPR)により計測し、面内位相差Δndおよび厚み方向位相差Rthを算出した。測定温度は23℃、測定波長は590nmであった。波長分散特性に関しては、380、550および780nmで測定した。
【0108】
〈コントラストの測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて測定した。なお、斜め方向のコントラストは、極角を60°方向で方位角を0〜360°に変化させ、方位角45°、135°、225°、315°におけるコントラストを測定して、その平均値を求めた。なお、方位角および極角は図4に示す通りである。
〈カラーシフトの測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、方位角0〜360°に変化させて、極角を60°方向にした液晶表示装置の色調を測定し、xy色度図上にプロットした。
〈黒輝度の測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、極角60°方向で、方位角を−180°〜180°に変化させ、方位角と黒輝度との関係をプロットした。
〈クニック評価〉
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、黒表示をした場合の表示面を目視により観察し、輝点の有無により、クニックの有無を判断した。
A:クニックは観察されなかった。
B:クニックは観察されたが、実用上問題となるレベルではなかった。
C:クニックが観察され、実用上問題となるレベルであった。
【0109】
〔参考例1〕:偏光子(第1の偏光子および/または第2の偏光子と称することもある)の作製
ポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて6倍に一軸延伸して偏光子を作製した。
【0110】
〔参考例2〕:ポリビニルアルコール系接着剤の調製
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(商品名「ゴーセファイマーZ200」、日本合成化学工業(株)製、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を得た。この水溶液100重量部に対し、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm、固形分濃度10%、正電荷)18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤水溶液の粘度は9.6mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4〜4.5であった。
【0111】
〔参考例3〕:ポリビニルアルコール系接着剤の調製
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(商品名「ゴーセファイマーZ200」、日本合成化学工業(株)製、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した接着剤水溶液を得た。接着剤水溶液の粘度は9.6mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4〜4.5であった。
【実施例1】
【0112】
(偏光板一体型位相差フィルム(1A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名:ゼオノア、型番:ZF14−100、厚み:100μm)を、TD方向に150℃で2.6倍に固定端一軸延伸することによって、第1の光学補償層を作製した。この第1の光学補償層の厚みは33μm、Nz=1.41(Rth=170nm、Δnd=120nm)であった。さらに、この第1の光学補償層のΔnd(380)は124nm、Δnd(550)は120nm、Δnd(780)は118nmであり、380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は6nmであった。加えて、この第1の光学補償層の光弾性係数は6×10−12(m2/N)であった。
【0113】
参考例1で得られた第1の偏光子と上記第1の光学補償層とを、第1の偏光子の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸とが直交するようにして貼り合わせた。さらに、第1の偏光子の第1の光学補償層とは反対の側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を貼り合わせた。各層は、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を介して貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(1A)を作製した。
【0114】
(偏光板一体型位相差フィルム(1B)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した溶液(濃度:10重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層(第2の光学補償層)の厚みが約3μmの、基材/第2の光学補償層の積層フィルムを得た。得られた第2の光学補償層の屈折率分布はnx=ny>nzであった。さらに、得られた第2の光学補償層のRth(380)は213nm、Rth(550)は180nm、Rth(780)は170nmであった。参考例1で得られた第2の偏光子と上記積層フィルムとを、積層フィルムの基材側に参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。さらに、第2の偏光子の第2の光学補償層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(1B)を作製した。
【0115】
(液晶パネル(1C)の作製)
液晶パネル(SONY製、BRAVIA、32インチパネル)から液晶セル(VAモード)を取り出し、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)と偏光板一体型位相差フィルム(1B)のそれぞれを、該液晶セルをはさんで上下に貼り合わせた。このとき、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)と偏光板一体型位相差フィルム(1B)のそれぞれに含まれる偏光子の吸収軸が直交するようにした。また、上記偏光板一体型位相差フィルム(1B)がバックライト側、偏光板一体型位相差フィルム(1A)が視認側となるように貼り合わせた。
【0116】
(評価)
得られた液晶パネル(1C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。また、カラーシフトの測定結果(xy色度図)を図6に、黒輝度の測定結果を図7に示す。さらに、コニカミノルタ製CA1500を用いて、画面全体を黒表示した場合の輝度ムラを測定した。結果を図16に示す。
【実施例2】
【0117】
(偏光板一体型位相差フィルム(2B)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、下記式(II)に示す構造を有するポリイミドをメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した溶液(濃度:10重量%)を25μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層(第2の光学補償層)の厚みが約2.5μmの、基材/第2の光学補償層の積層フィルムを得た。得られた第2の光学補償層の屈折率分布はnx=ny>nzであった。さらに、得られた第2の光学補償層のRth(380)は213nm、Rth(550)は180nm、Rth(780)は170nmであった。参考例1で得られた第2の偏光子と上記積層フィルムとを、積層フィルムの基材側に参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。さらに、第2の偏光子の第2の光学補償層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(2B)を作製した。
【0118】
【化2】
【0119】
(液晶パネル(2C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1B)に代えて偏光板一体型位相差フィルム(2B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(2C)を作製した。
【0120】
(評価)
得られた液晶パネル(2C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0121】
上記第1の偏光子と上記第1の光学補償層とを貼り合わせる接着剤を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤に代えて参考例3で得られたポリビニルアルコール系接着剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(3C)を作製した。
【0122】
(評価)
得られた液晶パネル(3C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
〔比較例1〕
(偏光板一体型位相差フィルム(C1A)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した溶液(濃度:10重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層の厚みが約3μmの、基材/光学補償層の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、150℃で1.2倍に横延伸した。延伸後の積層フィルムにおける光学補償層の屈折率分布はnx>ny>nzであり、Nz=4.9であった。また、この光学補償層は、Δnd(380)>Δnd(550)>Δnd(780)の関係を有していた。さらに、この光学補償層の光弾性係数は20×10−12(m2/N)であった。参考例1で得られた偏光子と上記積層フィルムとを、積層フィルムの基材側に参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて、該偏光子の吸収軸と該光学補償層の遅相軸とが直交するようにして貼り合わせた。さらに、偏光子の光学補償層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(C1A)を作製した。
【0124】
(液晶パネル(C1C)の作製)
液晶パネル(SONY製、BRAVIA、32インチパネル)から液晶セル(VAモード)を取り出し、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1A)と日東電工(株)製の偏光板(商品名:SEG1224)のそれぞれを、該液晶セルをはさんで上下に貼り合わせた。このとき、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1A)とSEG1224のそれぞれに含まれる偏光子の吸収軸が直交するようにした。また、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1A)がバックライト側、SEG1224が視認側となるように貼り合わせた。
【0125】
(評価)
得られた液晶パネル(C1C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。結果を上記表1に示す。また、カラーシフトの測定結果(xy色度図)を図8に、黒輝度の測定結果を図9に示す。
【0126】
〔比較例2〕
(液晶パネル(C2C)の作製)
上記偏光板一体型位相差フィルム(1B)が視認側、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)がバックライト側となるように貼り合わせた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(C2C)を作製した。
【0127】
(評価)
得られた液晶パネル(C2C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【実施例4】
【0129】
(偏光板一体型位相差フィルム(2A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルム(JSR社製、商品名:アートン、厚み:130μm)を、TD方向に150℃で3倍に固定端一軸延伸することによって、第1の光学補償層を作製した。この第1の光学補償層の厚みは43μm、Nz=1.34(Rth=161nm、Δnd=120nm)であった。さらに、この第1の光学補償層のΔnd(380)は124nm、Δnd(550)は120nm、Δnd(780)は119nmであり、380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は5nmであった。得られた第1の光学補償層の面内位相差の波長分散特性を図10に示す。なお、図10における波長分散(Y軸)は、Δnd(λ)/Δnd(550)である。加えて、この第1の光学補償層の光弾性係数は6×10−12(m2/N)であった。
【0130】
偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)と上記第1の光学補償層とを、該偏光板の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸とが直交するようにして、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせ、偏光板一体型位相差フィルム(2A)を作製した。
【0131】
(偏光板一体型位相差フィルム(3B)の作製)
PETフィルム(厚み:50μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをシクロヘキサノンに溶解した溶液(濃度:15重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、100℃で10分間乾燥処理することで、PETフィルム上に厚みが約4.5μmのポリイミド層(第2の光学補償層)を得た。得られたポリイミド層(第2の光学補償層)の屈折率分布はnx=ny>nzであった。また、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)をガラス板に粘着剤を介して転写し、ポリイミド層(第2の光学補償層)の位相差を測定したところ、Δnd=0.3nm、Rth=182nmであった。さらに、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)のRth(380)は213nm、Rth(550)は187nm、Rth(780)は170nmであった。得られたポリイミド層(第2の光学補償層)の40°から光を入射した際の厚み方向の位相差の波長分散特性を図11に示す。なお、図11における波長分散(Y軸)は、Rth(λ)/Rth(550)である。
【0132】
PETフィルム上のポリイミド層(第2の光学補償層)をアクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)に転写し、偏光板一体型位相差フィルム(3B)を得た。
【0133】
(液晶パネル(4C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1A)に代えて偏光板一体型位相差フィルム(2A)を用い、偏光板一体型位相差フィルム(1B)に代えて偏光板一体型位相差フィルム(3B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(4C)を作製した。
【0134】
(評価)
得られた液晶パネル(4C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図12に示す。また、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0135】
(偏光板一体型位相差フィルム(3A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルムの延伸倍率を1.8倍とした以外は、実施例4と同様の方法で、ノルボルネン系樹脂フィルム偏光板一体型位相差フィルム(3A)を作製した。得られた第1の光学補償層の厚みは65μm、Nz=1.61(Rth=163nm、Δnd=101nm)であった。さらに、この第1の光学補償層のΔnd(380)は104nm、Δnd(550)は101nm、Δnd(780)は100nmであり、380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は4nmであった。加えて、この第1の光学補償層の光弾性係数は6×10−12(m2/N)であった。ここで得られた第1の光学補償層の面内位相差の波長分散特性は、実施例4で得られた第1の光学補償層の面内位相差の波長分散特性と同等であった。
【0136】
(偏光板一体型位相差フィルム(4B)の作製)
実施例4と同様の方法で、偏光板一体型位相差フィルム(4B)を作製した。このとき、ポリイミド層(第2の光学補償層)の厚みは約4μmであった。また、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)の屈折率分布はnx=ny>nzであった。さらに、得られたポリイミド層をガラス板に粘着剤を介して転写し、ポリイミド層の位相差を測定したところ、Δnd=0.2nm、Rth=169nmであった。加えて、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)のRth(380)は215nm、Rth(550)は174nm、Rth(780)は158nmであった。ここで得られた第2の光学補償層の面内位相差の波長分散特性は、実施例4で得られた第2の光学補償層の面内位相差の波長分散特性と同等であった。
【0137】
(液晶パネル(5C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1A)を偏光板一体型位相差フィルム(3A)に代え、偏光板一体型位相差フィルム(1B)を偏光板一体型位相差フィルム(4B)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(5C)を得た。
【0138】
(評価)
得られた液晶パネル(5C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図13に示す。また、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
〔比較例3〕
(偏光板一体型位相差フィルム(C1B)の作製)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製、商品名:TF−TAC)をアクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて3枚貼り合わせ、積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムは、厚みが280μm、Δnd=2nm、Rth=182nmであった。また、得られた積層フィルムは、負の波長分散特性を示した。得られた積層フィルムの40°から光を入射した際の厚み方向の位相差の波長分散特性を図11に示す。
【0140】
偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)と上記積層フィルムとを、アクリル系粘着剤(厚み
:20μm)を用いて貼り合わせ、偏光板一体型位相差フィルム(C1B)を作製した。
【0141】
(液晶パネル(C3C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1B)に代えて、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1B)を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶パネル(C3C)を作製した。
【0142】
(評価)
得られた液晶パネル(C3C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図14に示す。また、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。
【0143】
〔比較例4〕
(偏光板一体型位相差フィルム(C2A)の作製)
ポリカーボネートフィルム(日東電工社製、商品名:NRF、厚み:60μm)をTD方向に160℃で1.5倍に自由端一軸延伸することによって、位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムはΔnd=142nm、Rth=151nmであり、光弾性係数は72×10−12(m2/N)であった。また、得られた位相差フィルムは、正の波長分散特性を示した。この位相差フィルムの面内位相差の波長分散特性を図10に示す。
【0144】
偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)と上記位相差フィルムとを、該偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが直交するようにして、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて貼り合わせ、偏光板一体型位相差フィルム(C2A)を作製した。
【0145】
(液晶パネル(C4C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1A)に代えて、上記偏光板一体型位相差フィルム(C2A)を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶パネル(C4C)を作製した。
【0146】
(評価)
得られた液晶パネル(C4C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図15に示す。また、コニカミノルタ製CA1500を用いて、画面全体を黒表示した場合の輝度ムラを測定した。結果を図16に示す。さらに、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。
【0147】
実施例1〜5および比較例1〜4のパネルの全体構成を表2にまとめる。なお、表2の上段が視認側、下段がバックライト側である。バックライト側の偏光子の吸収軸を0°としたときの角度も示す。
【表2】
【0148】
表1に示すように、本発明の液晶パネルによれば、斜めコントラスト、正面コントラスト共に高く、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる。一方、斜めコントラストおよび正面コントラストについて、比較例1〜4は、大幅な低下が見られた。さらに、図6〜図9に示すように、実施例1では、比較例1に比べて、xy色度図のx、yのバラツキが小さく、かつ、黒輝度が低い。これは、実施例1が、比較例1に比べて、液晶パネルのコントラストが高く、かつ、カラーシフトが小さいことを意味する。
【0149】
図12から図15に示すように、実施例4および実施例5は、比較例3および比較例4に比べて、コントラスト等高線図の白い部分が多い。これは、実施例4および実施例5が比較例3および比較例4に比べて、全方位でコントラストが高く、視認性が良好であることを意味する。
【0150】
図16に示すように、実施例1は、比較例1に比べて、黒表示の際に光抜けがなく、輝度ムラがない。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の液晶パネルおよびそれを含む液晶表示装置は、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、プロジェクター等に好適に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置がVAモードの液晶セルを採用する場合に、液晶層の液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置がOCBモードの液晶セルを採用する場合に、液晶層の液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
【図4】方位角および極角を説明する模式図である。
【図5】(a)は、従来の代表的な液晶表示装置の概略断面図であり、(b)は、この液晶表示装置に用いられる液晶セルの概略断面図である。
【図6】実施例1において測定したカラーシフトを示すxy色度図である。
【図7】実施例1において測定した黒輝度を示すグラフ図である。
【図8】比較例1において測定したカラーシフトを示すxy色度図である。
【図9】比較例1において測定した黒輝度を示すグラフ図である。
【図10】実施例4における第1の光学補償層および比較例4におけるポリカーボネートフィルムの波長分散特性を示すグラフ図である。
【図11】実施例4における第2の光学補償層および比較例3におけるTAC積層フィルムの波長分散特性を示すグラフ図である。
【図12】実施例4において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図13】実施例5において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図14】比較例3において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図15】比較例4において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図16】実施例1、比較例4において測定した輝度ムラを示す写真図である。
【符号の説明】
【0153】
30 第1の偏光子
40 液晶セル
50 第2の偏光子
60 第1の光学補償層
70 第2の光学補償層
100 液晶パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。より詳細には、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、従来の代表的な液晶表示装置の概略断面図であり、図5(b)は、この液晶表示装置に用いられる液晶セルの概略断面図である。この液晶表示装置900は、液晶セル910と、液晶セル910の外側に配された位相差板920、920’と、位相差板920、920’の外側に配された偏光板930、930’とを備える。代表的には、偏光板930、930’は、その吸収軸が互いに直交するようにして配置されている。液晶セル910は、一対の基板911、911’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層912とを有する。一方の基板911には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板911’には、カラーフィルターを構成するカラー層913R、913G、913Bと遮光層(ブラックマトリックス層)914とが設けられている。基板911、911’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。
【0003】
上記位相差板は、液晶表示装置の光学補償を目的として用いられている。最適な光学補償(例えば、視野角特性の改善、カラーシフトの改善、コントラストの改善)を得るために、位相差板の光学特性の最適化および/または液晶表示装置における配置について、種々の試みがなされている。従来、図5に示すように、位相差板は、液晶セル910と偏光板930、930’との間に1枚ずつ配置される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年の液晶表示装置の高精細化および高機能化に伴い、画面の均一性および表示品位のより一層の向上が求められている。しかし、従来の液晶表示装置においては、全方位において色つきのないニュートラルな表示を発現させることは困難である。さらに、液晶表示装置の小型・携帯化に伴い、薄型化の要求も増大している。
【特許文献1】特開平11−95208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶パネルは、第1の偏光子と;第1の光学補償層と;液晶セルと;第2の光学補償層と;第2の偏光子とを;視認側からこの順に備える。第1の光学補償層は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、該第1の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し、該第2の光学補償層は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層の波長380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は10nm以下である。好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層のNz係数は1.1〜3.0の範囲である。あるいは、上記第1の光学補償層のNz係数は、0.9を超えて1.1未満である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層は、環状オレフィン系樹脂を含有するフィルムである。さらに好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層は、固定端一軸延伸法により作製されたフィルムである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記第2の光学補償層は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドから選択される少なくとも1つの非液晶材料を含有する。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記第1の光学補償層と上記第1の偏光子とは、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤で貼り合わせられている。
【0011】
さらに好ましい実施形態においては、上記水溶性接着剤は金属化合物コロイドを含有する。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記液晶セルの駆動モードは、VAモードまたはOCBモードである。
【0013】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記の液晶パネルを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することができる。このような効果は、いわゆるフラットな波長分散特性を有し、かつ、非常に小さい光弾性係数およびnx>ny≧nzの屈折率分布を有する第1の光学補償層と、nx=ny>nzの屈折率分布を有し、かつ、波長が大きくなるにしたがい厚み方向位相差が小さくなる波長分散特性を有する第2の光学補償層とを組み合わせて用いることで顕著となる。さらに、本発明によれば、第1の光学補償層が一方の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し得るので、液晶表示装置の薄型化に貢献し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである:
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。また、例えば「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、液晶パネル(最終的には、液晶表示装置)の表示特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。
(2)「面内位相差Δnd(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Δnd(λ)は、波長λnmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Δnd(λ)=(nx−ny)×dによって求められる。なお、単にΔndと記載する場合には、Δndは波長590nmにおける面内位相差を意味する。
(3)厚み方向の位相差Rth(λ)は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth(λ)は、波長λnmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求められる。なお、単にRthと記載する場合には、Rthは波長590nmにおける厚み方向の位相差を意味する。
(4)Nz係数は、面内位相差Δndと厚み方向位相差Rthとの比であり、式:Nz=(nx−nz)/(nx−ny)によって求められる。
【0016】
A.液晶パネルの構成とそれを含む液晶表示装置
図1は、本発明の液晶パネルの好ましい一例を説明する概略断面図である。液晶パネル100は、第1の偏光子30と、第1の光学補償層60と、液晶セル40と、第2の光学補償層70と、第2の偏光子50と、を有する。第1の光学補償層60および第2の光学補償層70は、両方が液晶セルの一方の側(すなわち、視認側またはバックライト側)に配置されてもよく、一方が液晶セルのバックライト側に配置され一方が視認側に配置されてもよい。好ましくは、図1に示すように、第1の光学補償層60が視認側に配置され、第2の光学補償層70がバックライト側に配置される。第1の偏光子および第2の偏光子は、それぞれ、その少なくとも一方の側に保護層を有していてもよい(図示せず)。本発明の液晶パネルにおいては、第1の光学補償層60が一方の偏光子(図示例では第1の偏光子30)の液晶セル側の保護層を兼ねるので、当該位置の保護層は省略され得る。上記それぞれの光学補償層、偏光子および液晶セルは、任意の適切な粘着剤層または接着剤層を介して貼り合わせられている。
【0017】
第1の光学補償層60は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、上記のように一方の偏光子の液晶セル側の保護層として機能する。第2の光学補償層70は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)
第1の光学補償層60は、好ましくは、その遅相軸が隣接する偏光子(図示例では第1の偏光子)の吸収軸と実質的に直交するようにして配置されている。なお、第1の光学補償層60および第2の光学補償層70の詳細については後述する。
【0018】
第1の偏光子30の吸収軸と第2の偏光子50の吸収軸とは、好ましくは、実質的に直交している。
【0019】
液晶セル40は、一対のガラス基板41、42と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層43とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)41には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板(カラーフィルター基板)42には、カラーフィルター(図示せず)が設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板41に設けてもよい。基板41および42の間隔(セルギャップ)は、スペーサー44によって制御されている。セルギャップは、好ましくは2μm〜10μmであり、さらに好ましくは3μm〜9μmであり、特に好ましくは4μm〜8μmである。このような範囲内であれば、液晶セルの応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。基板41および42の液晶層43と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0020】
液晶セル40の駆動モードとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な駆動モードが採用され得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モードおよびASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードが挙げられる。VAモードおよびOCBモードが好ましい。カラーシフトの改善が著しいからである。
【0021】
図2は、VAモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。図2(a)に示すように、電圧無印加時には、液晶分子は基板41、42面に垂直に配向する。このような垂直配向は、垂直配向膜(図示せず)を形成した基板間に負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で一方の基板41の面から光を入射させると、第2の偏光子50を通過して液晶層43に入射した直線偏光の光は、垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、第2の偏光子50と直交する吸収軸を有する第1の偏光子30で吸収される。これにより電圧無印加時において暗状態の表示が得られる(ノーマリーブラックモード)。図2(b)に示すように、電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸が基板面に平行に配向する。この状態の液晶層43に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において液晶層を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、第1の偏光子30を透過して明状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により暗状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して第1の偏光子30からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。
【0022】
図3は、OCBモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。OCBモードは、液晶層43をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成する駆動モードである。ベンド配向とは、図3(c)に示すように、ネマチック液晶分子の配向が基板近傍においては、ほぼ平行の角度(配向角)を有し、配向角は液晶層の中心に向かうに従って基板平面に対して垂直な角度を呈し、液晶層の中心から離れるに従って対向する基板表面と配向になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しない配向状態をいう。このようなベンド配向は、以下のようにして形成される。図3(a)に示すように、何ら電界等を付与していない状態(初期状態)では、液晶分子は実質的にホモジニアス配向をとっている。ただし、液晶分子は、プレチルト角を有し、かつ、基板近傍のプレチルト角とそれに対向する基板近傍のプレチルト角とが異なっている。ここに所定のバイアス電圧(代表的には、1.5V〜1.9V)を印加すると(低電圧印加時)、図3(b)に示すようなスプレイ配向を経て、図3(c)に示すようなベンド配向への転移が実現され得る。ベンド配向状態からさらに表示電圧(代表的には、5V〜7V)を印加すると(高電圧印加時)、液晶分子は図3(d)に示すように基板表面に対してほぼ垂直に立ち上がる。ノーマリーホワイトの表示モードにおいては、第2の偏光子50を通過して、高電圧印加時に図3(d)の状態にある液晶層に入射した光は、偏光方位を変えずに進み、第1の偏光子30で吸収される。したがって、暗状態の表示となる。表示電圧を下げると、ラビング処理の配向規制力により、ベンド配向に戻り、明状態の表示に戻すことができる。また、表示電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光子からの透過光強度を変化させることにより、階調表示が可能となる。なお、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、スプレイ配向状態からベンド配向状態への相転移を非常に高速でスイッチングできるため、TNモードやIPSモード等の他駆動モードの液晶表示装置に比べ、動画表示特性に優れるという特徴を有する。
【0023】
上記OCBモードの液晶セルの表示モードは、高電圧印加時に暗状態(黒表示)をとるノーマリーホワイトモード、高電圧印加時に明状態(白表示)をとるノーマリーブラックモードのいずれのモードでも使用することができる。
【0024】
上記OCBモードの液晶セルに使用されるネマチック液晶は、好ましくは、誘電率異方性が正のものが使用される。誘電率異方性が正のネマチック液晶の具体例としては、特開平9−176645号公報に記載のものが挙げられる。また、市販のネマチック液晶をそのまま用いてもよい。市販のネマチック液晶としては、例えば、メルク社製 商品名「ZLI−4535」、および商品名「ZLI−1132」等が挙げられる。上記ネマチック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、すなわち複屈折率(ΔnLC)は、上記液晶の応答速度や透過率等によって適宜に選択されるが、好ましくは0.05〜0.30であり、さらに好ましくは0.10〜0.30であり、さらに好ましくは0.12〜0.30である。また、このようなネマチック液晶のプレチルト角は、好ましくは1°〜10°であり、さらに好ましくは2°〜8°であり、特に好ましくは3°〜6°である。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
【0025】
B.偏光子
第1の偏光子および第2の偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0026】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0027】
C.保護層
保護層は、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。それぞれの保護層は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0029】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル系樹脂として、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0032】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0033】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
【0034】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0035】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系および/またはメタクリル系をいう。
【0036】
上記保護層は、透明で、色付きが無いことが好ましい。保護層の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは−90nm〜+90nm、より好ましくは−80nm〜+80nm、さらに好ましくは−70nm〜+70nmである。
【0037】
上記保護層の厚みは、上記の好ましい厚み方向の位相差Rthが得られ得る限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。保護層の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
【0038】
偏光子の外側に設けられる保護層の偏光子と反対側(液晶パネルの最外側)には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等が施され得る。
【0039】
第1の偏光子と第1の光学補償層との間に設けられる保護層および第2の偏光子と第2の光学補償層との間に設けられる保護層(以下、これらの保護層を内側保護層と称することもある)の厚み方向の位相差(Rth)は、上記好ましい値よりもさらに小さいことが好ましい。上述のように、一般的に保護フィルムとして用いられているセルロース系フィルムは、例えば、トリアセチルセルロースフィルムの場合、厚さ80μmにおいて厚み方向の位相差(Rth)は60nm程度である。そこで、厚み方向の位相差(Rth)の大きいセルロース系フィルムについて、厚み方向の位相差(Rth)を小さくするための適切な処理を施すことにより、好適に内側保護層を得ることができる。
【0040】
厚み方向の位相差(Rth)を小さくするための上記処理としては、任意の適切な処理方法を採用できる。例えば、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗布したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレス等の基材を、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂等をシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を、一般的なセルロース系フィルムに塗布し、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、塗布フィルムを剥離する方法などが挙げられる。
【0041】
上記セルロース系フィルムを構成する材料としては、好ましくは、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等の脂肪酸置換セルロース系ポリマーが挙げられる。一般的に用いられているトリアセチルセルロースでは、酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7、より好ましくはプロピオン酸置換度を0.1〜1に制御することによって、厚み方向の位相差(Rth)を小さく制御することができる。
【0042】
上記脂肪酸置換セルロース系ポリマーに、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、厚み方向の位相差(Rth)を小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸置換セルロース系ポリマー100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0043】
上記厚み方向の位相差(Rth)を小さくするための処理は、適宜組み合わせて用いてもよい。このような処理を施して得られる内側保護層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは−20nm〜+20nm、より好ましくは−10nm〜+10nm、さらに好ましくは−6nm〜+6nm、特に好ましくは−3nm〜+3nmである。内側保護層の面内位相差Re(550)は、好ましくは0nm以上10nm以下、より好ましくは0nm以上6nm以下、さらに好ましくは0nm以上3nm以下である。
【0044】
上記内側保護層の厚みは、上記の好ましい厚み方向の位相差Rthが得られ得る限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。上記内側保護層の厚みは、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは35〜95μmである。
【0045】
D.第1の光学補償層
第1の光学補償層は、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、好ましくは0.2×10−12〜35×10−12(m2/N)であり、さらに好ましくは0.2×10−12〜30×10−12(m2/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、表示ムラおよび輝度ムラを効果的に抑制することができる。
【0046】
第1の光学補償層は、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、好ましくは90〜160nmであり、より好ましくは95〜150nmであり、さらに好ましくは95〜145nmである。
【0047】
第1の光学補償層は、下記式(1)の関係を有する:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
ここで、例えばΔnd(380)=Δnd(550)とは、Δnd(380)とΔnd(550)とが厳密に等しい場合だけでなく実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、本発明の液晶パネルの表示特性に実用上の影響を与えない範囲で、例えばΔnd(380)とΔnd(550)が異なる場合を包含する趣旨である。より具体的には、第1の光学補償層の波長380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は、好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは8nm以下であり、特に好ましくは6nm以下である。このように、第1の光学補償層がいわゆるフラットな波長分散特性を有することにより、波長が大きくなるにしたがい厚み方向位相差が大きくなるいわゆる正分散の第2の光学補償層と組み合わせて、全方位において色つきのないニュートラルな表示の液晶パネルが得られる。
【0048】
さらに、第1の光学補償層は、下記式(2)の関係を有する:
nx>ny≧nz ・・・(2)
すなわち、第1の光学補償層は、1つの実施形態においてはnx>ny=nzの屈折率分布を有し、別の実施形態においてはnx>ny>nzの屈折率分布を有する。屈折率分布がnx>ny=nzである実施形態においては、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。より具体的には、この実施形態における第1の光学補償層のNz係数は、0.9を超えて1.1未満である。屈折率分布がnx>ny>nzである実施形態においては、第1の光学補償層のNz係数は、好ましくは1.1〜3.0であり、さらに好ましくは1.1〜2.0であり、特に好ましくは1.1〜1.7であり、とりわけ好ましくは1.1〜1.5であり、最も好ましくは1.1〜1.4である。このような屈折率分布(Nz係数)を有する第1の光学補償層と、後述する特定の第2の光学補償層とを組み合わせて液晶パネルに用いることにより、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶パネルを提供することができる。
【0049】
第1の光学補償層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、第1の光学補償層の厚みは、好ましくは20〜110μmであり、さらに好ましくは25〜105μmであり、最も好ましくは30〜100μmである。
【0050】
第1の光学補償層を形成し得る材料としては、上記のような特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。このような材料の代表例としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。より具体的には、第1の光学補償層は、好ましくは環状オレフィン系フィルムである。
【0051】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0052】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0053】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0054】
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000〜200,000、さらに好ましくは30,000〜100,000、最も好ましくは40,000〜80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0055】
上記環状オレフィン系樹脂がノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られるものである場合には、水素添加率は、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは99%以上である。このような範囲であれば、耐熱劣化性および耐光劣化性などに優れる。
【0056】
上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0057】
第1の光学補償層は、上記環状オレフィン系樹脂から形成されたフィルム(環状オレフィン系フィルム)を延伸することにより得られ得る。環状オレフィン系フィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、注型(キャスティング)法等が挙げられる。押出成形法または注型(キャスティング)法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、第1の光学補償層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記環状オレフィン系フィルムは、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0058】
上記延伸方法としては、所望の光学特性(例えば、屈折率分布、Nz係数)に応じて任意の適切な方法が採用され得る。延伸方法の具体例としては、横一軸延伸、自由端一軸延伸、固定端二軸延伸、固定端一軸延伸、逐次二軸延伸が挙げられる。固定端二軸延伸の具体例としては、フィルムを長手方向に走行させながら、短手方向(横方向)に延伸させる方法が挙げられる。この方法は、見かけ上は横一軸延伸であり得る。これらの延伸方法は、単独でまたは二以上を組み合わせて用いられ得る。例えば、自由端一軸延伸を行った後に固定端一軸延伸を行う方法が挙げられる。固定端一軸延伸が好ましい。Nz係数が1.1〜1.6程度でnx>ny>nzの屈折率分布を有するフィルムが得やすくなる。さらに、固定端一軸延伸を行うことによって、フィルムの短手方向(幅方向)に遅相軸を設けることができるので、当該フィルムの遅相軸を偏光子の吸収軸に対して直交するように配置させる場合には、当該フィルムと偏光子との貼り合わせをロールtoロールで連続的に行うことが可能となり、製造効率が高くなる。
【0059】
例えば屈折率分布がnx>ny>nzであるフィルムが所望される場合には、延伸温度は、好ましくは130〜165℃、さらに好ましくは135〜165℃、最も好ましくは137〜165℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る第1の光学補償層が得られ得る。延伸温度が130℃より低い場合には、均一に延伸できないおそれがある。延伸温度が165℃より高い場合には、第1の光学補償層に求められる所望の面内位相差が発現できないおそれがある。延伸倍率は、好ましくは1.2〜4.0倍、さらに好ましくは1.2〜3.8倍、最も好ましくは1.25〜3.6倍である。このような倍率で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る第1の光学補償層が得られ得る。延伸倍率が1.2倍より小さい場合には、第1の光学補償層に求められる所望の面内位相差が発現できないおそれがある。延伸倍率が4.0倍よりも大きい場合には、延伸中にフィルムが切れてしまったり、脆くなってしまったりするおそれがある。
【0060】
例えば屈折率分布がnx>ny=nzであるフィルムが所望される場合には、延伸温度は、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは130〜150℃である。延伸倍率は、好ましくは1.3〜1.7倍、さらに好ましくは1.4〜1.6倍である。
【0061】
第1の光学補償層は、上記のように例えば環状オレフィン系樹脂から形成されるフィルムの単一層であってもよく、所定の光学特性を有する複数のフィルムの積層体であってもよい。例えば、Δnd(380)>Δnd(550)>Δnd(780)の関係を有する(いわゆる正の波長分散特性を有する)光学フィルムとΔnd(380)<Δnd(550)<Δnd(780)の関係を有する(いわゆる逆波長分散特性を有する)光学フィルムとを積層して、フラットな波長分散特性を有する第1の光学補償層を形成してもよい。この場合、その他の光学特性(面内位相差、厚み方向位相差、Nz係数、光弾性係数等)は、用いる光学フィルムの材料、厚み、作成条件等を調整することにより、上記の所望の値に制御され得る。
【0062】
E.第1の光学補償層と隣接する偏光子との貼り合わせ
上記のように、第1の光学補償層は、一方の偏光子(図示例では第1の偏光子)の液晶セル側の保護層として機能し得る。この場合、第1の光学補償層と第1の偏光子とは、好ましくは、粘着剤または接着剤を介して貼り合わせられている。第1の光学補償層における第1の偏光子に貼り合わされる面には、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、樹脂材料を塗工することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。易接着処理されることにより、易接着層が形成される。易接着層の厚みは、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜80nmである。
【0063】
上記粘着剤は粘着剤層を形成し、上記接着剤は接着剤層を形成する。粘着剤または接着剤は、第1の偏光子に塗工してもよく、第1の光学補償層に塗工してもよく、第1の偏光子と第1の光学補償層の両方に塗工してもよい。
【0064】
上記粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜設定され得る。具体的には、粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜100μm、より好ましくは3μm〜50μm、さらに好ましくは5μm〜30μm、特に好ましくは10〜25μmである。
【0065】
上記粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。具体例としては、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤等が挙げられる。アクリル系ポリマーをベースポリマーとする溶剤型粘着剤が好ましく用いられる。第1の偏光子および第1の光学補償層に対して適切な粘着特性(ぬれ性、凝集性および接着性)を示し、かつ、光学透明性、耐候性および耐熱性に優れるからである。
【0066】
上記接着剤層は、例えば、接着剤を所定割合で含有する塗工液を上記第1の光学補償層の表面および/または第1の偏光子の表面に、塗工し乾燥することで形成される。上記塗工液の調製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、市販の溶液または分散液を用いてもよく、市販の溶液または分散液にさらに溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解または分散して用いてもよい。
【0067】
上記接着剤としては、目的に応じて任意の適切な性質、形態および接着機構を有する接着剤が用いられ得る。具体例としては、水溶性接着剤、溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、およびサポーテッドフィルム接着剤;熱可塑型接着剤、熱溶融型接着剤、熱固化接着剤、ホットメルト接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール用接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤、重合型接着剤、溶剤型接着剤、および溶剤活性接着剤等が挙げられる。本発明においては、これらのなかでも、透明性、接着性、作業性、製品の品質および経済性に優れる水溶性接着剤が好ましく用いられる。
【0068】
上記水溶性接着剤は、水に可溶な天然高分子および/または合成高分子を主成分として含有し得る。天然高分子の具体例としては、たんぱく質や澱粉等が挙げられる。合成高分子の具体例としては、レゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、オリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
【0069】
本発明においては、上記水溶性接着剤のなかでも、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするものが好ましく用いられ、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)を主成分とするものがさらに好ましく用いられる。偏光子との接着性にきわめて優れ、かつ、第1の光学補償層との接着性にも優れるからである。上記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、日本合成化学(株)製の商品名「ゴーセノールZシリーズ」、同社の商品名「ゴーセノールNHシリーズ」、同社の商品名「ゴーセファイマーZシリーズ」が挙げられる。
【0070】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルのケン化物、当該ケン化物の誘導体;酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールが挙げられる。前記単量体としては、例えば、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらの樹脂は、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100〜5000程度、さらに好ましくは1000〜4000である。平均ケン化度は、接着性の点から、好ましくは85〜100モル%程度、さらに好ましくは90〜100モル%である。
【0072】
上記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。具体例として、酢酸等の溶媒中にポリビニルアルコール系樹脂を分散させた分散体に、ジケテンを添加する方法;ジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させた溶液に、ジケテンを添加する方法;ポリビニルアルコール系樹脂にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
【0073】
上記アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20%、特に好ましくは2〜7モル%である。0.1モル%未満では耐水性が不充分となるおそれがある。40モル%を超えると、耐水性向上効果が小さい。なお、アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0074】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、好ましくは、架橋剤をさらに含有し得る。耐水性をより一層向上させることができるからである。上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。好ましくは、上記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物である。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、または三価金属の塩及びその酸化物が挙げられる。これらの中でもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好ましく、ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好適である。中でもメチロール基を有する化合物が好ましく、メチロールメラミンが特に好適である。上記アルデヒド化合物の具体例としては、日本合成化学(株)製 商品名「グリオキザール」、OMNOVA製 商品名「セクアレッツ755」等が挙げられる。上記アミン化合物の具体例としては、三菱瓦斯化学(株)製 商品名「メタシキレンジアミン」等が挙げられる。また、上記メチロール化合物の具体例としては、大日本インキ(株)製 商品名「ウォーターゾールシリーズ」等が挙げられる。
【0075】
上記架橋剤の配合量は、上記ポリビニルアルコール(好ましくは、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)100重量部に対して、好ましくは1〜60重量部である。該配合量の上限値は、より好ましくは50重量部であり、さらに好ましくは30重量部であり、さらに好ましくは15重量部であり、特に好ましくは10重量部であり、最も好ましくは7重量部である。該配合量の下限値は、より好ましくは5重量部であり、さらに好ましくは10重量部であり、特に好ましくは20重量部である。上記の範囲とすることによって、透明性、接着性、耐水性に優れた接着剤層を形成することができる。なお、架橋剤の配合量が多い場合、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤がゲル化する傾向がある。その結果、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難になるおそれがある。しかし、後述する金属化合物コロイドを併用する場合には、架橋剤の配合量が多い場合であっても、安定性よく用いることができる。
【0076】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤は、好ましくは、金属化合物コロイドをさらに含有し得る。上記金属化合物コロイドは、金属化合物微粒子が分散媒中に分散しているものであり得、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものであり得る。金属化合物コロイドを形成する微粒子の平均粒子径は、偏光特性等の光学特性に悪影響を及ぼさない限り、任意の適切な値であり得る。好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nmである。微粒子を接着剤層中に均一に分散させ得、接着性を確保し、かつクニックを抑え得るからである。なお、「クニック」とは、偏光子と保護層の界面で生じる局所的な凹凸欠陥のことをいう。
【0077】
上記金属化合物としては、任意の適切な化合物を採用し得る。例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物;ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物が挙げられる。好ましくはアルミナである。
【0078】
上記金属化合物コロイドは、代表的には、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒としては、例えば、水、アルコール類が挙げられる。コロイド溶液中の固形分濃度は、代表的には1〜50重量%程度である。コロイド溶液は、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有し得る。
【0079】
上記金属化合物コロイド(固形分)配合量は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して200重量部以下であり、より好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは20〜175重量部、最も好ましくは30〜150重量部である。接着性を確保しながら、クニックの発生を抑え得るからである。
【0080】
上記接着剤の調製方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属化合物コロイドを含有する接着剤の場合であれば、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤とを予め混合して適切な濃度に調整したものに、金属化合物コロイドを配合する方法が挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後に、架橋剤を、使用時期等を考慮しながら混合することもできる。なお、樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に調整してもよい。
【0081】
上記接着剤の樹脂濃度は、塗工性や放置安定性等の点から、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
【0082】
上記接着剤のpHは、好ましくは2〜6、より好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、最も好ましくは3.5〜4.5である。通常、金属化合物コロイドの表面電荷は、pHを調整することにより制御し得る。当該表面電荷は、好ましくは正電荷である。正電荷を有することにより、例えば、クニック発生を抑制し得る。
【0083】
上記接着剤の全固形分濃度は、接着剤の溶解性、塗工粘度、ぬれ性、目的とする厚みなどによって変化し得る。全固形分濃度は、溶剤100に対して、好ましくは2〜100(重量比)であり、さらに好ましくは10〜50(重量比)であり、最も好ましくは20〜40(重量比)である。このような範囲であれば、表面均一性の高い接着剤層が得られる。
【0084】
上記接着剤の粘度としては、特に制限はないが、23℃におけるせん断速度1000(1/s)で測定した値が、好ましくは1〜50(mPa・s)であり、さらに好ましくは2〜30(mPa・s)であり、最も好ましくは4〜20(mPa・s)である。上記の範囲であれば、表面均一性に優れた接着剤層を形成することができる。
【0085】
上記接着剤の塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、コータを用いた塗工方式を用いることができる。用いられるコータは、上述したコータの中から適宜選択され得る。
【0086】
上記接着剤のガラス転移温度(Tg)は、特に制限はないが、好ましくは20〜120℃であり、さらに好ましくは40〜100℃であり、最も好ましくは50〜90℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量(DSC)測定によるJISK7121−1987に準じた方法で測定することができる。
【0087】
上記接着剤層の厚みは、特に制限はないが、好ましくは0.01〜0.15μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.12μmであり、最も好ましくは0.03〜0.09μmである。上記の範囲であれば、本発明の偏光板が高温多湿の環境下に曝されても、偏光子のはがれや浮きの生じない耐久性に優れた偏光板を得ることができる。
【0088】
上記接着剤は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を含み得る。
【0089】
F.第2の光学補償層
第2の光学補償層は、下記式(3)および(4)の関係を有する:
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)
第2の光学補償層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合には、積層体全体として上記のような光学特性を有する限り、各層を構成する材料および各層の厚みは適宜設定され得る。
【0090】
式(3)で表されるように、第2の光学補償層は、厚み方向位相差がいわゆる正の波長分散特性を有する。このような波長分散特性を有する第2の光学補償層を、いわゆるフラットな波長分散特性を有する第1の光学補償層と組み合わせて用いることにより、液晶セルの波長分散特性をより良好に補償することができ、結果として、全方位において色つきのない表示が得られる液晶パネルを提供することができる。より具体的には、第2の光学補償層のRth(380)/Rth(550)は、好ましくは1.12〜1.25であり、さらに好ましくは1.15〜1.20である。第2の光学補償層のRth(550)/Rth(780)は、好ましくは1.03〜1.10であり、さらに好ましくは1.04〜1.07である。
【0091】
式(4)で表されるように、第2の光学補償層はnx=ny>nzの関係を有し、いわゆるネガティブCプレートとして機能し得る。第2の光学補償層がこのような屈折率分布を有することにより、上記の第1の光学補償層との組み合わせによって本発明の目的が効果的に達成され得る。上記のように、本明細書においては「nx=ny」は、nxとnyとが厳密に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合も包含するので、第2の光学補償層は面内位相差を有し得、また、遅相軸を有し得る。ネガティブCプレートとして実用的に許容可能な面内位相差Δndは、好ましくは0〜20nmであり、より好ましくは0〜10nmであり、さらに好ましくは0〜5nmである。
【0092】
第2の光学補償層の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは30〜350nmであり、より好ましくは60〜300nmであり、さらに好ましくは80〜260nmであり、最も好ましくは100〜240nmである。
【0093】
上記のような厚み方向の位相差が得られ得る第2の光学補償層の厚みは、使用される材料等に応じて変化し得る。例えば、第2の光学補償層の厚みは、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜15μmであり、さらに好ましくは1〜10μmであり、特に好ましくは1〜8μmであり、最も好ましくは1〜5μmである。このような厚みは、二軸延伸によるネガティブCプレートの厚み(例えば、60μm以上)に比べて薄く、液晶表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。さらに、第2の光学補償層を非常に薄く形成することにより、熱ムラが顕著に防止され得る。本発明においては、第1の光学補償層が偏光子の保護層として機能し、かつ、非常に小さい光弾性係数を有するので、第2の光学補償層が非常に薄いこととの相乗的な効果が発揮され、液晶表示装置の薄型化ならびに表示ムラおよび熱ムラの防止にきわめて大きく貢献し得る。
【0094】
第2の光学補償層を構成する材料としては、上記のような光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。好ましくは、第2の光学補償層は、非液晶性材料のコーティング層である。延伸フィルムに比べて厚みを格段に薄くできるので、液晶パネルの薄型化に寄与し得るからである。好ましくは、非液晶性材料は、非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料をコーティング層に用いる場合、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx=ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成し得る。その結果、配向基板のみならず未配向基板も使用され得る。さらに、未配向基板を用いる場合であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
【0095】
上記非液晶性材料としては、例えば、特開2004−46065号公報の段落(0018)〜(0072)に例示のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むからである。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。1つの実施形態においては、上記ポリイミドは、下記一般式(I)に示す構造を有する。
このような構造を有するポリイミドを非液晶材料として用いれば、第2の光学補償層を特に薄くすることができる。なお、式(I)においてXとYの和を100とした場合に、Xは30〜70であり、Yは70〜30である。
【0096】
【化1】
【0097】
上記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0098】
次に、上記のような非液晶性ポリマーを用いてコーティングにより第2の光学補償層を形成する方法を説明する。第2の光学補償層の形成方法としては、上記のような光学特性を有する第2の光学補償層が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。代表的な製造方法は、基材フィルムに上記非液晶性ポリマーの溶液を塗工する工程と、当該溶液中の溶媒を除去して非液晶性ポリマーの層を形成する工程とを含む。非液晶性ポリマーの層は、偏光子(代表的には、偏光子の保護層)に直接塗工して形成してもよく(すなわち、偏光子の保護層が基材フィルムを兼ねてもよく)、任意の適切な基材に形成した後、偏光子(代表的には、偏光子の保護層)に転写してもよい。転写による方法は、基材を剥離することをさらに含み得る。
【0099】
上記基材フィルムとしては、任意の適切なフィルムが採用され得る。代表的な基材フィルムとしては、前述した偏光子の保護層に用いられるプラスチックフィルムが挙げられる。上記のように、偏光子の保護層自体が基材フィルムを兼ねてもよい。
【0100】
上記塗工溶液の溶媒は、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。中でも、メチルイソブチルケトンが好ましい。非液晶材料に対して高い溶解性を示し、かつ、基材フィルムを侵食しないからである。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0101】
上記塗工溶液における上記非液晶性ポリマーの濃度は、上記のような第2の光学補償層が得られ、かつ塗工可能であれば、任意の適切な濃度が採用され得る。例えば、当該溶液は、溶媒100重量部に対して、非液晶性ポリマーを好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部含む。このような濃度範囲の溶液は、塗工容易な粘度を有する。
【0102】
上記塗工溶液は、必要に応じて、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤をさらに含有し得る。
【0103】
上記塗工溶液は、必要に応じて、異なる他の樹脂をさらに含有し得る。このような他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂を併用することにより、目的に応じて適切な機械的強度や耐久性を有する第2の光学補償層を形成することが可能となる。このような樹脂は、上記非液晶性ポリマーに対して、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜30質量%の割合で添加され得る。
【0104】
上記溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用され得る。塗工後、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥(例えば、60〜250℃)により、上記溶液中の溶媒を蒸発除去させ、フィルム状の光学補償層を形成する。
【0105】
G.第2の光学補償層と隣接する偏光子との貼り合わせ
前述の通り、本発明における第2の光学補償層は、好ましくは、基材上のコーティング層として形成され得る。基材が偏光子の保護層を兼ねる場合(例えば、基材がトリアセチルセルロースフィルムなどのセルロース系フィルムの場合)には、好ましくは、基材のコーティング層と反対の側が、一方の偏光子(図示例では、第2の偏光子)と粘着剤または接着剤を介して貼り合わせられる。基材が偏光子の保護層を兼ねない場合には、好ましくは、第2の光学補償層は第2の偏光子(代表的には、第2の偏光子の保護層)に転写され、次いで、基材が剥離される。粘着剤または接着剤についての詳細は、前述した通りである。
【0106】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。
【0107】
〈位相差の測定〉
試料フィルムの屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA−WPR)により計測し、面内位相差Δndおよび厚み方向位相差Rthを算出した。測定温度は23℃、測定波長は590nmであった。波長分散特性に関しては、380、550および780nmで測定した。
【0108】
〈コントラストの測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて測定した。なお、斜め方向のコントラストは、極角を60°方向で方位角を0〜360°に変化させ、方位角45°、135°、225°、315°におけるコントラストを測定して、その平均値を求めた。なお、方位角および極角は図4に示す通りである。
〈カラーシフトの測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、方位角0〜360°に変化させて、極角を60°方向にした液晶表示装置の色調を測定し、xy色度図上にプロットした。
〈黒輝度の測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、極角60°方向で、方位角を−180°〜180°に変化させ、方位角と黒輝度との関係をプロットした。
〈クニック評価〉
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、黒表示をした場合の表示面を目視により観察し、輝点の有無により、クニックの有無を判断した。
A:クニックは観察されなかった。
B:クニックは観察されたが、実用上問題となるレベルではなかった。
C:クニックが観察され、実用上問題となるレベルであった。
【0109】
〔参考例1〕:偏光子(第1の偏光子および/または第2の偏光子と称することもある)の作製
ポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて6倍に一軸延伸して偏光子を作製した。
【0110】
〔参考例2〕:ポリビニルアルコール系接着剤の調製
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(商品名「ゴーセファイマーZ200」、日本合成化学工業(株)製、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を得た。この水溶液100重量部に対し、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm、固形分濃度10%、正電荷)18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤水溶液の粘度は9.6mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4〜4.5であった。
【0111】
〔参考例3〕:ポリビニルアルコール系接着剤の調製
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(商品名「ゴーセファイマーZ200」、日本合成化学工業(株)製、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した接着剤水溶液を得た。接着剤水溶液の粘度は9.6mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4〜4.5であった。
【実施例1】
【0112】
(偏光板一体型位相差フィルム(1A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名:ゼオノア、型番:ZF14−100、厚み:100μm)を、TD方向に150℃で2.6倍に固定端一軸延伸することによって、第1の光学補償層を作製した。この第1の光学補償層の厚みは33μm、Nz=1.41(Rth=170nm、Δnd=120nm)であった。さらに、この第1の光学補償層のΔnd(380)は124nm、Δnd(550)は120nm、Δnd(780)は118nmであり、380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は6nmであった。加えて、この第1の光学補償層の光弾性係数は6×10−12(m2/N)であった。
【0113】
参考例1で得られた第1の偏光子と上記第1の光学補償層とを、第1の偏光子の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸とが直交するようにして貼り合わせた。さらに、第1の偏光子の第1の光学補償層とは反対の側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を貼り合わせた。各層は、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を介して貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(1A)を作製した。
【0114】
(偏光板一体型位相差フィルム(1B)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した溶液(濃度:10重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層(第2の光学補償層)の厚みが約3μmの、基材/第2の光学補償層の積層フィルムを得た。得られた第2の光学補償層の屈折率分布はnx=ny>nzであった。さらに、得られた第2の光学補償層のRth(380)は213nm、Rth(550)は180nm、Rth(780)は170nmであった。参考例1で得られた第2の偏光子と上記積層フィルムとを、積層フィルムの基材側に参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。さらに、第2の偏光子の第2の光学補償層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(1B)を作製した。
【0115】
(液晶パネル(1C)の作製)
液晶パネル(SONY製、BRAVIA、32インチパネル)から液晶セル(VAモード)を取り出し、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)と偏光板一体型位相差フィルム(1B)のそれぞれを、該液晶セルをはさんで上下に貼り合わせた。このとき、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)と偏光板一体型位相差フィルム(1B)のそれぞれに含まれる偏光子の吸収軸が直交するようにした。また、上記偏光板一体型位相差フィルム(1B)がバックライト側、偏光板一体型位相差フィルム(1A)が視認側となるように貼り合わせた。
【0116】
(評価)
得られた液晶パネル(1C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。また、カラーシフトの測定結果(xy色度図)を図6に、黒輝度の測定結果を図7に示す。さらに、コニカミノルタ製CA1500を用いて、画面全体を黒表示した場合の輝度ムラを測定した。結果を図16に示す。
【実施例2】
【0117】
(偏光板一体型位相差フィルム(2B)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、下記式(II)に示す構造を有するポリイミドをメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した溶液(濃度:10重量%)を25μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層(第2の光学補償層)の厚みが約2.5μmの、基材/第2の光学補償層の積層フィルムを得た。得られた第2の光学補償層の屈折率分布はnx=ny>nzであった。さらに、得られた第2の光学補償層のRth(380)は213nm、Rth(550)は180nm、Rth(780)は170nmであった。参考例1で得られた第2の偏光子と上記積層フィルムとを、積層フィルムの基材側に参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。さらに、第2の偏光子の第2の光学補償層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(2B)を作製した。
【0118】
【化2】
【0119】
(液晶パネル(2C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1B)に代えて偏光板一体型位相差フィルム(2B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(2C)を作製した。
【0120】
(評価)
得られた液晶パネル(2C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0121】
上記第1の偏光子と上記第1の光学補償層とを貼り合わせる接着剤を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤に代えて参考例3で得られたポリビニルアルコール系接着剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(3C)を作製した。
【0122】
(評価)
得られた液晶パネル(3C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
〔比較例1〕
(偏光板一体型位相差フィルム(C1A)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した溶液(濃度:10重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層の厚みが約3μmの、基材/光学補償層の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、150℃で1.2倍に横延伸した。延伸後の積層フィルムにおける光学補償層の屈折率分布はnx>ny>nzであり、Nz=4.9であった。また、この光学補償層は、Δnd(380)>Δnd(550)>Δnd(780)の関係を有していた。さらに、この光学補償層の光弾性係数は20×10−12(m2/N)であった。参考例1で得られた偏光子と上記積層フィルムとを、積層フィルムの基材側に参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて、該偏光子の吸収軸と該光学補償層の遅相軸とが直交するようにして貼り合わせた。さらに、偏光子の光学補償層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。このようにして、偏光板一体型位相差フィルム(C1A)を作製した。
【0124】
(液晶パネル(C1C)の作製)
液晶パネル(SONY製、BRAVIA、32インチパネル)から液晶セル(VAモード)を取り出し、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1A)と日東電工(株)製の偏光板(商品名:SEG1224)のそれぞれを、該液晶セルをはさんで上下に貼り合わせた。このとき、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1A)とSEG1224のそれぞれに含まれる偏光子の吸収軸が直交するようにした。また、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1A)がバックライト側、SEG1224が視認側となるように貼り合わせた。
【0125】
(評価)
得られた液晶パネル(C1C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。結果を上記表1に示す。また、カラーシフトの測定結果(xy色度図)を図8に、黒輝度の測定結果を図9に示す。
【0126】
〔比較例2〕
(液晶パネル(C2C)の作製)
上記偏光板一体型位相差フィルム(1B)が視認側、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)がバックライト側となるように貼り合わせた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(C2C)を作製した。
【0127】
(評価)
得られた液晶パネル(C2C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【実施例4】
【0129】
(偏光板一体型位相差フィルム(2A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルム(JSR社製、商品名:アートン、厚み:130μm)を、TD方向に150℃で3倍に固定端一軸延伸することによって、第1の光学補償層を作製した。この第1の光学補償層の厚みは43μm、Nz=1.34(Rth=161nm、Δnd=120nm)であった。さらに、この第1の光学補償層のΔnd(380)は124nm、Δnd(550)は120nm、Δnd(780)は119nmであり、380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は5nmであった。得られた第1の光学補償層の面内位相差の波長分散特性を図10に示す。なお、図10における波長分散(Y軸)は、Δnd(λ)/Δnd(550)である。加えて、この第1の光学補償層の光弾性係数は6×10−12(m2/N)であった。
【0130】
偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)と上記第1の光学補償層とを、該偏光板の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸とが直交するようにして、参考例2で得られたポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせ、偏光板一体型位相差フィルム(2A)を作製した。
【0131】
(偏光板一体型位相差フィルム(3B)の作製)
PETフィルム(厚み:50μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドをシクロヘキサノンに溶解した溶液(濃度:15重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、100℃で10分間乾燥処理することで、PETフィルム上に厚みが約4.5μmのポリイミド層(第2の光学補償層)を得た。得られたポリイミド層(第2の光学補償層)の屈折率分布はnx=ny>nzであった。また、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)をガラス板に粘着剤を介して転写し、ポリイミド層(第2の光学補償層)の位相差を測定したところ、Δnd=0.3nm、Rth=182nmであった。さらに、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)のRth(380)は213nm、Rth(550)は187nm、Rth(780)は170nmであった。得られたポリイミド層(第2の光学補償層)の40°から光を入射した際の厚み方向の位相差の波長分散特性を図11に示す。なお、図11における波長分散(Y軸)は、Rth(λ)/Rth(550)である。
【0132】
PETフィルム上のポリイミド層(第2の光学補償層)をアクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)に転写し、偏光板一体型位相差フィルム(3B)を得た。
【0133】
(液晶パネル(4C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1A)に代えて偏光板一体型位相差フィルム(2A)を用い、偏光板一体型位相差フィルム(1B)に代えて偏光板一体型位相差フィルム(3B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(4C)を作製した。
【0134】
(評価)
得られた液晶パネル(4C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図12に示す。また、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0135】
(偏光板一体型位相差フィルム(3A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルムの延伸倍率を1.8倍とした以外は、実施例4と同様の方法で、ノルボルネン系樹脂フィルム偏光板一体型位相差フィルム(3A)を作製した。得られた第1の光学補償層の厚みは65μm、Nz=1.61(Rth=163nm、Δnd=101nm)であった。さらに、この第1の光学補償層のΔnd(380)は104nm、Δnd(550)は101nm、Δnd(780)は100nmであり、380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差は4nmであった。加えて、この第1の光学補償層の光弾性係数は6×10−12(m2/N)であった。ここで得られた第1の光学補償層の面内位相差の波長分散特性は、実施例4で得られた第1の光学補償層の面内位相差の波長分散特性と同等であった。
【0136】
(偏光板一体型位相差フィルム(4B)の作製)
実施例4と同様の方法で、偏光板一体型位相差フィルム(4B)を作製した。このとき、ポリイミド層(第2の光学補償層)の厚みは約4μmであった。また、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)の屈折率分布はnx=ny>nzであった。さらに、得られたポリイミド層をガラス板に粘着剤を介して転写し、ポリイミド層の位相差を測定したところ、Δnd=0.2nm、Rth=169nmであった。加えて、得られたポリイミド層(第2の光学補償層)のRth(380)は215nm、Rth(550)は174nm、Rth(780)は158nmであった。ここで得られた第2の光学補償層の面内位相差の波長分散特性は、実施例4で得られた第2の光学補償層の面内位相差の波長分散特性と同等であった。
【0137】
(液晶パネル(5C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1A)を偏光板一体型位相差フィルム(3A)に代え、偏光板一体型位相差フィルム(1B)を偏光板一体型位相差フィルム(4B)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で液晶パネル(5C)を得た。
【0138】
(評価)
得られた液晶パネル(5C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図13に示す。また、上記の評価方法に従ってコントラストを求め、またクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
〔比較例3〕
(偏光板一体型位相差フィルム(C1B)の作製)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム社製、商品名:TF−TAC)をアクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて3枚貼り合わせ、積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムは、厚みが280μm、Δnd=2nm、Rth=182nmであった。また、得られた積層フィルムは、負の波長分散特性を示した。得られた積層フィルムの40°から光を入射した際の厚み方向の位相差の波長分散特性を図11に示す。
【0140】
偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)と上記積層フィルムとを、アクリル系粘着剤(厚み
:20μm)を用いて貼り合わせ、偏光板一体型位相差フィルム(C1B)を作製した。
【0141】
(液晶パネル(C3C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1B)に代えて、上記偏光板一体型位相差フィルム(C1B)を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶パネル(C3C)を作製した。
【0142】
(評価)
得られた液晶パネル(C3C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図14に示す。また、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。
【0143】
〔比較例4〕
(偏光板一体型位相差フィルム(C2A)の作製)
ポリカーボネートフィルム(日東電工社製、商品名:NRF、厚み:60μm)をTD方向に160℃で1.5倍に自由端一軸延伸することによって、位相差フィルムを作製した。得られた位相差フィルムはΔnd=142nm、Rth=151nmであり、光弾性係数は72×10−12(m2/N)であった。また、得られた位相差フィルムは、正の波長分散特性を示した。この位相差フィルムの面内位相差の波長分散特性を図10に示す。
【0144】
偏光板(日東電工社製、商品名:SIG1432)と上記位相差フィルムとを、該偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが直交するようにして、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて貼り合わせ、偏光板一体型位相差フィルム(C2A)を作製した。
【0145】
(液晶パネル(C4C)の作製)
偏光板一体型位相差フィルム(1A)に代えて、上記偏光板一体型位相差フィルム(C2A)を用いた以外は、実施例1と同様にして液晶パネル(C4C)を作製した。
【0146】
(評価)
得られた液晶パネル(C4C)について、ELDIM社製 EZ Contrastを用いて、視野角特性を測定した。結果を図15に示す。また、コニカミノルタ製CA1500を用いて、画面全体を黒表示した場合の輝度ムラを測定した。結果を図16に示す。さらに、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。
【0147】
実施例1〜5および比較例1〜4のパネルの全体構成を表2にまとめる。なお、表2の上段が視認側、下段がバックライト側である。バックライト側の偏光子の吸収軸を0°としたときの角度も示す。
【表2】
【0148】
表1に示すように、本発明の液晶パネルによれば、斜めコントラスト、正面コントラスト共に高く、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる。一方、斜めコントラストおよび正面コントラストについて、比較例1〜4は、大幅な低下が見られた。さらに、図6〜図9に示すように、実施例1では、比較例1に比べて、xy色度図のx、yのバラツキが小さく、かつ、黒輝度が低い。これは、実施例1が、比較例1に比べて、液晶パネルのコントラストが高く、かつ、カラーシフトが小さいことを意味する。
【0149】
図12から図15に示すように、実施例4および実施例5は、比較例3および比較例4に比べて、コントラスト等高線図の白い部分が多い。これは、実施例4および実施例5が比較例3および比較例4に比べて、全方位でコントラストが高く、視認性が良好であることを意味する。
【0150】
図16に示すように、実施例1は、比較例1に比べて、黒表示の際に光抜けがなく、輝度ムラがない。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の液晶パネルおよびそれを含む液晶表示装置は、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、プロジェクター等に好適に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置がVAモードの液晶セルを採用する場合に、液晶層の液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置がOCBモードの液晶セルを採用する場合に、液晶層の液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
【図4】方位角および極角を説明する模式図である。
【図5】(a)は、従来の代表的な液晶表示装置の概略断面図であり、(b)は、この液晶表示装置に用いられる液晶セルの概略断面図である。
【図6】実施例1において測定したカラーシフトを示すxy色度図である。
【図7】実施例1において測定した黒輝度を示すグラフ図である。
【図8】比較例1において測定したカラーシフトを示すxy色度図である。
【図9】比較例1において測定した黒輝度を示すグラフ図である。
【図10】実施例4における第1の光学補償層および比較例4におけるポリカーボネートフィルムの波長分散特性を示すグラフ図である。
【図11】実施例4における第2の光学補償層および比較例3におけるTAC積層フィルムの波長分散特性を示すグラフ図である。
【図12】実施例4において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図13】実施例5において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図14】比較例3において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図15】比較例4において測定した視野角特性を示すコントラスト等高線図である。
【図16】実施例1、比較例4において測定した輝度ムラを示す写真図である。
【符号の説明】
【0153】
30 第1の偏光子
40 液晶セル
50 第2の偏光子
60 第1の光学補償層
70 第2の光学補償層
100 液晶パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光子と;第1の光学補償層と;液晶セルと;第2の光学補償層と;第2の偏光子とを;視認側からこの順に備え、
該第1の光学補償層が、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、該第1の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し、
該第2の光学補償層が、下記式(3)および(4)の関係を有する、液晶パネル:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)。
【請求項2】
前記第1の光学補償層の波長380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差が10nm以下である、請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記第1の光学補償層のNz係数が1.1〜3.0の範囲である、請求項1または2に記載の液晶パネル。
【請求項4】
前記第1の光学補償層のNz係数が0.9を超えて1.1未満である、請求項1または2に記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記第1の光学補償層が、環状オレフィン系樹脂を含有するフィルムである、請求項1から4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記第1の光学補償層が、固定端一軸延伸法により作製されたフィルムである、請求項5に記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記第2の光学補償層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドから選択される少なくとも1つの非液晶材料を含有する、請求項1から6のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記第1の光学補償層と前記第1の偏光子とが、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤で貼り合わせられている、請求項1から7のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項9】
前記水溶性接着剤が金属化合物コロイドを含有する、請求項8に記載の液晶パネル。
【請求項10】
前記液晶セルの駆動モードが、VAモードまたはOCBモードである、請求項1から9のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の液晶パネルを含む、液晶表示装置。
【請求項1】
第1の偏光子と;第1の光学補償層と;液晶セルと;第2の光学補償層と;第2の偏光子とを;視認側からこの順に備え、
該第1の光学補償層が、その光弾性係数の絶対値が40×10−12(m2/N)以下であり、その面内位相差Δndが90nm〜200nmであり、下記式(1)および(2)の関係を有し、ならびに、該第1の偏光子の液晶セル側の保護層として機能し、
該第2の光学補償層が、下記式(3)および(4)の関係を有する、液晶パネル:
Δnd(380)=Δnd(550)=Δnd(780)・・・(1)
nx>ny≧nz ・・・(2)
Rth(380)>Rth(550)>Rth(780)・・・(3)
nx=ny>nz ・・・(4)。
【請求項2】
前記第1の光学補償層の波長380nm〜780nmにおけるΔndの最大値と最小値との差が10nm以下である、請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記第1の光学補償層のNz係数が1.1〜3.0の範囲である、請求項1または2に記載の液晶パネル。
【請求項4】
前記第1の光学補償層のNz係数が0.9を超えて1.1未満である、請求項1または2に記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記第1の光学補償層が、環状オレフィン系樹脂を含有するフィルムである、請求項1から4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記第1の光学補償層が、固定端一軸延伸法により作製されたフィルムである、請求項5に記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記第2の光学補償層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドから選択される少なくとも1つの非液晶材料を含有する、請求項1から6のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記第1の光学補償層と前記第1の偏光子とが、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤で貼り合わせられている、請求項1から7のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項9】
前記水溶性接着剤が金属化合物コロイドを含有する、請求項8に記載の液晶パネル。
【請求項10】
前記液晶セルの駆動モードが、VAモードまたはOCBモードである、請求項1から9のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の液晶パネルを含む、液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−15283(P2009−15283A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298072(P2007−298072)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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