説明

液晶パネル

【課題】 従来よりも広視野角の液晶パネルを実現する、特にモバイル機器用途のVAモード液晶パネルにおいて広視野角を実現する。
【解決手段】 本発明の液晶パネル10は全ての光学補償層(第一の複屈折層14と第二の複屈折層19)の厚み方向位相差の合計ΣRth1〜nと、液晶セル11の厚み方向の位相差Rthとの差(ΣRth1〜n−Rth)が、好ましくは−120nmを超えて70nm未満であり、さらに好ましくは−70nm以上35nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶パネル、特に広視野角のVAモード液晶パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話でテレビ放送が視聴できるようになったようにモバイル機器の使用形態が多様化してきたため、モバイル機器に使用される液晶パネルにおいても従来よりも広視野角のものが求められるようになった。実用化されている液晶パネルの動作モードにはTNモード、VAモード、IPSモードなどがあるが、特にVAモードは電圧を印加しないとき液晶分子が垂直に配置されるため、コントラストの高い黒表示ができる長所があり広く使われている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−109405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は従来よりも広視野角の液晶パネルを実現することであり、特にモバイル機器用途のVAモード液晶パネルにおいて広視野角を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の液晶パネルは全ての光学補償層の厚み方向位相差の合計ΣRth1〜nと、液晶セルの厚み方向の位相差Rthとの差(ΣRth1〜n−Rth)が、好ましくは−120nmを超えて70nm未満であり、さらに好ましくは−70nm以上35nm以下であることを特徴とする。
【0005】
本発明の要旨は次の通りである。
(1)本発明の液晶パネルは、二つの主面を有する液晶セルと、
前記液晶セルの一方の主面の側に配置された第一の偏光子と、
前記液晶セルと前記第一の偏光子の間に配置された第一の複屈折層と、
前記液晶セルの他の主面の側に配置された第二の偏光子と、
前記液晶セルと前記第二の偏光子との間に配置された第二の複屈折層とを含み、
前記第一の複屈折層の、Nz=(n−n)/(n−n)で定義されるNz係数が1≦Nz≦1.6の関係を有し、
前記第二の複屈折層がn=n>nの屈折率分布を有し、
Rth={(n+n)/2−n}・dで定義される厚み方向位相差に関して、
前記第一の複屈折層と前記第二の複屈折層を含む全ての光学補償層の厚み方向位相差の合計ΣRth1〜nと、液晶セルの厚み方向の位相差Rthとの差が次式
−120nm<(ΣRth1〜n−Rth)<70nm
を満たすことを特徴とする。液晶セルや偏光子の複屈折によって直線偏光が位相差を生じ楕円偏光になると斜め方向から見たときコントラストが低下し色相が変化する。光学補償層はそれらの位相差を補償しコントラストの低下や色相の変化を防止するもので位相差フィルムとも言われる。
(2)本発明の液晶パネルは前記第一の偏光子と前記第一の複屈折層とが、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒子径1nm〜100nmの金属コロイドを含む接着剤から形成された接着層を介して接着されていることを特徴とする。
(3)本発明の液晶パネルは前記第二の偏光子と前記第二の複屈折層とが、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒子径1nm〜100nmの金属コロイドを含む接着剤から形成された接着層を介して直接または間接的に接着されていることを特徴とする。直接とは第二の偏光子と第二の複屈折層との間に接着層だけが介在することを、間接的とは第二の偏光子と第二の複屈折層との間に接着層だけでなく、例えば第二の複屈折層を支持する保護フィルムのような他のものが介在することを意味する。
(4)本発明の液晶パネルは前記第二の複屈折層がコレステリック配向固化層からなることを特徴とする。
(5)本発明の液晶パネルは前記第一の複屈折層の遅相軸が前記第一の偏光子の吸収軸と実質的に直交していることを特徴とする。
(6)本発明の液晶パネルは前記液晶セルがVAモードの液晶セルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により従来よりも広視野角の液晶パネルを実現し、特にモバイル機器用途のVAモード液晶パネルにおいて広視野角を実現することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[液晶パネルおよび液晶セル]
図1に本発明の実施形態の一例の液晶パネル10の断面模式図を示す。液晶パネル10の液晶セル11の一方の主面側に上部光学層12、他方の主面側に下部光学層13が配置されている。液晶セル11は任意の動作モードのもの、例えばTNモード、VAモード、IPSモードなどが用いられるが、好ましくはVAモードのものである。特にVAモードの液晶セルは本発明に用いられる光学補償層と組み合わせることによりコントラストと視野角特性のバランスに優れた液晶パネルが得られる。液晶セル11の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは300nm〜440nm、より好ましくは330nm〜410nm、さらに好ましくは350nm〜390nmである。液晶セルの厚み方向の位相差をこの範囲とすると本発明に用いられる光学補償層と組み合わせることによりコントラストと視野角特性のバランスに優れた液晶パネルが得られる。
【0008】
上部光学層12は液晶セル11に近い側から順に第一の複屈折層14、第一の接着層15、第一の偏光子16、第二の接着層17、第一の保護フィルム18が積層されてなる。面内の屈折率をn、n、厚み方向の屈折率をnとし、n、nのうち屈折率の大きい方をnとする。第一の複屈折層14は好ましくはノルボルネン系樹脂フィルムで屈折率がn>n≧nの関係にある一軸または二軸位相差フィルムであり、Nz=(n−n)/(n−n)で定義されるNz係数が1≦Nz≦1.6、好ましくは1≦Nz≦1.35の関係にある。第一の接着層15は好ましくは平均粒子径1nm〜100nmのアルミナコロイドと架橋剤を含むポリビニルアルコール系樹脂接着剤から形成されたポリビニルアルコール系樹脂接着層である。第一の偏光子16は好ましくは二色性色素を含むポリビニルアルコール系樹脂の延伸フィルムである。第二の接着層17は好ましくはポリビニルアルコール系樹脂接着層である。第一の保護フィルム18は好ましくはトリアセチルセルロース系樹脂フィルムである。
【0009】
下部光学層13は液晶セル11に近い側から順に第二の複屈折層19、第二の複屈折層を支持する保護フィルム20、第三の接着層21、第二の偏光子22、第四の接着層23、第二の保護フィルム24が積層されてなる。第二の複屈折層19は好ましくはコレステリック相の液晶を固定してなるコレステリック配向固化層で、n=n>nの屈折率分布を有するネガティブCプレートである。第二の複屈折層を支持する保護フィルム20はネガティブCプレートを構成するコレステリック配向固化層を支持するための保護フィルムで好ましくはポリメタクリル酸メチル樹脂フィルムである。第三の接着層21は好ましくは平均粒子径1nm〜100nmのアルミナコロイドと架橋剤を含むポリビニルアルコール系樹脂接着剤から形成されたポリビニルアルコール系樹脂接着層で第一の接着層15と同じ材質である。第二の偏光子22は好ましくは二色性色素を含むポリビニルアルコール系樹脂の延伸フィルムで第一の偏光子16と同じ材質であるが吸収軸の方向は異なり、第二の偏光子22の吸収軸は第一の偏光子16の吸収軸と直交している。第四の接着層23は好ましくはポリビニルアルコール系樹脂接着層で第二の接着層17と同じ材質である。第二の保護フィルム24は好ましくはトリアセチルセルロース系樹脂フィルムで第一の保護フィルム18と同じ材質である。
【0010】
d(nm)を層またはフィルムの厚みとし、厚み方向位相差Rth(nm)をRth={(n+n)/2−n}・dで定義する。本発明の液晶パネル10においては、全ての光学補償層すなわち第一の複屈折層14と第二の複屈折層19の各々の厚み方向位相差RthとRthの和と、液晶セル11の厚み方向の位相差Rthとの差{Rth+Rth−Rth}は−120nmを超えて70nm未満で、さらに好ましくは−70nm以上35nm以下である。第一の複屈折層14の遅相軸は第一の偏光子16の吸収軸と実質的に直交している。なお実質的に直交とは真の直交を基準にして±2°以内の誤差であることを意味する。
【0011】
以上の構成、特に第一の複屈折層14のNz係数が1≦Nz≦1.6であって、全ての光学補償層すなわち第一の複屈折層14と第二の複屈折層19の各々の厚み方向位相差RthとRthの和と、液晶セル11の厚み方向の位相差Rthとの差{Rth+Rth−Rth}が−120nmを超えて70nm未満であることにより本発明の液晶パネル10は広い視野角にわたって正面方向と差の少ない高いコントラストと良好な色相が得られる。さらに第一の複屈折層14のNz係数が1≦Nz≦1.35かつ{Rth+Rth−Rth}が−70nm以上35nm以下とすることにより高いコントラストと良好な色相の得られる視野角が極めて広くなる。本発明の液晶パネル10には上記の各構成部材の間に図示しない任意の接着層、粘着剤層や光学部材(好ましくは光学的に等方性のもの)が配置されてもよい。
【0012】
[第一の複屈折層]
第一の複屈折層14は屈折率がn>n≧nの関係にある一軸または二軸位相差フィルムであり、Nz=(n−n)/(n−n)で定義されるNz係数が1≦Nz≦1.6、好ましくは1≦Nz≦1.35の関係にある。第一の複屈折層の面内位相差Reは、好ましくは100nm〜180nm、より好ましくは110nm〜160nm、更に好ましくは120nm〜140nmである。
【0013】
第一の複屈折層14は屈折率が上記の関係を満たす樹脂として例えばノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂からなるが、中でも好ましくはノルボルネン系樹脂フィルムからなる。ノルボルネン系樹脂は出発原料(モノマー)にノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体である。ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量は好ましくは20,000〜500,000である。ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度は好ましくは120℃〜170℃である。市販のノルボルネン系樹脂の二軸位相差フィルムとしてはJSR社製「アートン」、日本ゼオン社製「ゼオノア」などが挙げられる。第一の複屈折層14はさらに任意の適切な添加剤、例えば可塑剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤などを含んでもよい。前記の添加剤の含有量は好ましくは10重量%以下である。
【0014】
[第二の複屈折層]
第二の複屈折層19は好ましくはコレステリック相の液晶を固定してなるコレステリック配向固化層で、n=n>nの屈折率分布を有するネガティブCプレートである。なおn=nはnとnが厳密に等しい場合に限らず実用的に等しい場合も含む。実用的に等しいとは面内位相差Reの絶対値が20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下を意味する。第二の複屈折層19の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは150nm〜350nm、より好ましくは170nm〜330nm、さらに好ましくは200nm〜300nmである。第二の複屈折層を支持する保護フィルム20はネガティブCプレートを構成するコレステリック配向固化層を支持するためのものであり、好ましくはポリメタクリル酸メチル樹脂フィルムである。コレステリック配向固化層は層の構成分子がらせん構造で、らせん軸が主面にほぼ垂直に配向し、その配向状態が固定されているものである。そのためコレステリック配向固化層には液晶化合物がコレステリック液晶相を呈しているもののみならず、非液晶化合物がコレステリック液晶相に類似の構造を呈しているものも含まれる。コレステリック配向固化層の具体例は例えば特開2003−287623号公報に記載されている。第二の複屈折層の厚みは所望の光学特性が得られる限り任意の値に設定される。第二の複屈折層がコレステリック配向固化層である場合、厚みは好ましくは1μm〜10μm、より好ましくは1μm〜5μm、さらに好ましくは1μm〜3μmである。第二の複屈折層19がコレステリック配向固化層の場合はそれを支持する第二の複屈折層を支持する保護フィルム20が必要であり、第二の偏光子22と第二の複屈折層19との間には第三の接着層21だけでなく第二の複屈折層を支持する保護フィルム20も在るため、第二の偏光子22と第二の複屈折層19とは間接的な接着となる。
【0015】
第二の複屈折層19は非液晶性化合物でもよい。第二の複屈折層19を形成する非液晶性化合物としては、耐熱性、耐薬品性、透明性、剛性に優れたポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドなどのポリマーが挙げられる。これらの材料は単独でも混合物としても使用できる。この中でも透明性、配向性、延伸性に優れたポリイミドが好ましい。ポリイミドを使用した具体例は例えば特開2004−46065号公報に記載されている。ポリイミドのような非液晶化合物を用いた場合、第二の複屈折層19の厚みは好ましくは1μm〜20μm、より好ましくは1μm〜10μm、さらに好ましくは1μm〜5μmである。
【0016】
[偏光子]
第一の偏光子16、第二の偏光子22としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性色素などを吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などを用いることができる。特にポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素または二色性色素を吸着させ一軸延伸してなる偏光子が二色比が高いので好ましい。この種の偏光子はポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することにより染色し、元長の3倍〜7倍程度に延伸することで作製される。偏光子は必要に応じてホウ酸、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含有していてもよい。第一の偏光子16、第二の偏光子22の厚みに特に制限はないが、通常1μm〜80μm程度である。第一の偏光子16、第二の偏光子22の厚みは同一でもよいし異なっていてもよい。
【0017】
[接着層]
第一の接着層15、第二の接着層17、第三の接着層21、第四の接着層23を形成するための接着剤として目的に応じて任意の接着剤が用いられるが、好ましくは透明性、接着性、作業性、品質、経済性に優れた水溶性接着剤が用いられる。水溶性接着剤としては例えば尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられるが、特にポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤が好ましい。さらにアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤が耐環境性に優れており好ましい。
【0018】
前記のポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は接着性の観点から、好ましくは1,000〜5,000、より好ましくは1,000〜4,000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は接着性の観点から、好ましくは85モル%〜100モル%、より好ましくは90モル%〜100モル%である。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤はさらに架橋剤を含有していることが好ましい。架橋剤により耐水性を向上させることができる。架橋剤としてはアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物、特にメチロールメラミンが好ましい。ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好ましい。
【0020】
架橋剤の適切な配合量はポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部〜60重量部、好ましくは5重量部〜30重量部、より好ましくは5重量部〜15重量部、さらに好ましくは5重量部〜7重量部である。
【0021】
少なくとも第一の接着層15と第三の接着層21を形成するためのポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤はさらに金属微粒子から形成された金属化合物コロイドを含有していることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤に金属化合物コロイドを含有させることによりクニックの発生を防止できる。クニックとは偏光子と偏光子保護フィルムの界面に発生する局所的な凹凸欠陥であり、折り目のように見える不具合を生じる。液晶セルを全面黒色としたときにクニックの部分はバックライトの光を通し黒色とならないので欠陥となる。コロイドを形成する金属化合物としてはアルミナ、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、燐酸カルシウムなどの金属塩、セライト、タルク、カオリンなどの鉱物が挙げられるが、特にアルミナが好ましい。金属化合物微粒子の平均粒径は、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは1nm〜50nmである。なお平均粒径は日機装社製、粒度分布計:ナノトラックUPA150により動的光散乱法で測定したものである。金属化合物コロイドは金属化合物の微粒子が分散媒に分散したコロイド溶液の状態で存在している。分散媒としては例えば水、アルコール類が挙げられる。コロイド溶液中の固形分濃度は例えば1重量%〜50重量%である。コロイド溶液は安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有していてもよい。金属化合物コロイド(固形分)の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して好ましくは10重量部〜200重量部、より好ましくは20重量部〜175重量部、さらに好ましくは30重量部〜150重量部である。接着剤のpHは好ましくは2〜6、より好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、特に好ましくは3.5〜4.5である。金属化合物コロイドの表面電荷は接着剤のpHにより制御できる。金属化合物コロイドの表面電荷は好ましくは正電荷である。表面電荷が正電荷の方がクニック防止効果が高い。
【0022】
接着剤の粘度は1mPa・s〜50mPa・sの範囲が好適である。接着剤はさらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などを含んでいてもよい。接着層の厚みは特に制限されないが、好ましくは0.01μm〜0.15μm、より好ましくは0.02μm〜0.12μm、さらに好ましくは0.03μm〜0.09μmである。
【0023】
接着剤の塗布方法は任意の適当な方法が用いられるが、例えばロールコート法、フローコート法、バーコート法などが挙げられる。
【0024】
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は0.1モル%以上であればよい。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不足する。アセトアセチル基変性度は好ましくは0.1モル%〜40モル%、更に好ましくは1モル%〜20モル%、特に好ましくは2モル%〜7モル%である。アセトアセチル基変性度はNMR(核磁気共鳴)装置で測定される。
【0025】
[保護フィルム]
第一の保護フィルム18、第二の保護フィルム24は第一の偏光子16、第二の偏光子22が収縮ないし膨張することを防止したり、紫外線劣化することを防止したりするために用いられる。第一の保護フィルム18、第二の保護フィルム24の材質、厚みは同一でもよいし異なっていてもよい。第一の保護フィルム18、第二の保護フィルム24を形成する材料は好ましくはセルロース系樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルムであり、特にトリアセチルセルロース系樹脂フィルムが好ましい。第一の保護フィルム18、第二の保護フィルム24の厚みは好ましくは20μm〜100μmである。第一の保護フィルム18、第二の保護フィルム24はそれぞれ第一の偏光子16、第二の偏光子22の反対側(液晶パネル10の外側に露出する側)に表面処理層(図示しない)を有していてもよい。表面処理層としては例えばハードコート処理層、帯電防止処理層、反射防止処理層、アンチグレア処理層などが挙げられる。これらの処理層は複数のものが積層されてもよい。
【0026】
[液晶パネルの用途]
本発明の液晶パネルは任意の用途に用いられる。特にパソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジなどの家庭用機器、バックモニター、カーナビゲーション、カーオーディオなどの車載用機器、店舗用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの医療機器の液晶表示装置に用いられる。特に携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末、携帯ゲーム機などの携帯機器に好適に用いられる。
【実施例】
【0027】
[第一および第二の偏光子]
平均重合度2,700、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを速比の異なるロール間で染色しながら延伸搬送した。まず30℃の水浴中に1分間浸漬させてポリビニルアルコールフィルムを膨潤させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、30℃のヨウ化カリウム濃度0.03%、ヨウ素濃度0.3%の水溶液(浴液)中に1分間浸漬することで染色しながら、全く延伸していないフィルムを基準として搬送方向に3倍に延伸した。次に60℃のホウ酸濃度4%、ヨウ化カリウム濃度5%の水溶液(浴液)中に30秒間浸漬しながら、全く延伸していないフィルムを基準として搬送方向に6倍に延伸した。次に得られた延伸フィルムを70℃で2分間乾燥することで第一および第二の偏光子16、22を得た。第一および第二の偏光子16、22の厚みは30μm、水分率14.3%であった。
【0028】
[第一および第二の保護フィルム]
トリアセチルセルロースフィルム(コニカ社製、KC4UWY、厚さ40μm、光弾性係数1.5×10[−11]m/N)を用いて第一および第二の保護フィルム18、24を作製した。第一および第二の保護フィルム18、24の面内位相差、厚み方向位相差は実質上無かった。面内位相差、厚み方向位相差が実質上無いとはそれぞれの絶対値が10nm未満であることを意味する。また第一および第二の保護フィルム18、24の透湿度は400g/m・24hであった。
【0029】
[第一の複屈折層]
ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノアZF14−100」、厚み100μ)をテンター延伸機を用いて固定軸横一軸延伸法により、150℃の空気循環式恒温槽内で2.7倍に延伸して第一の複屈折層14を得た。第一の複屈折層14は面内位相差Reが120nm、Nz係数が1.35で、屈折率がn>n>nの関係を示した。
【0030】
[第二の複屈折層]
下記式(I)に示されるネマチック液晶性化合物90重量部、下記式(II)に示されるカイラル剤10重量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカル社製 商品名「イルガキュア907」)5重量部、メチルエチルケトン300重量部を均一に混合して液晶塗布液を調整した。得られた液晶塗布液を図2(a)に示すように二軸延伸PETフィルム25上にコーティングし、80℃で3分間熱処理し、次いで紫外線を照射して重合処理することにより、二軸延伸PETフィルム25上に第二の複屈折層19となるコレステリック配向固化層を形成した。このコレステリック配向固化層の厚みは1.7μm、面内位相差Reは0nm、厚み方向の位相差Rthは200nm、屈折率はn=n>nの分布であった(上記の第二の複屈折層19は実施例1の液晶パネルに使用)。さらに以下に述べるように実施例2、3の液晶パネル用として厚み方向の位相差Rthの異なる2種類の第二の複屈折層を作製した。
【化1】

【0031】
実施例2の液晶パネルに使用する第二の複屈折層を、コレステリック配向固化層の厚みを2.2μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。実施例2用の第二の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは250nmであった。
【0032】
実施例3の液晶パネルに使用する第二の複屈折層を、コレステリック配向固化層の厚みを2.7μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。実施例3用の第二の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは300nmであった。
【0033】
[第二の複屈折層を支持する保護フィルム]
ポリメタクリル酸メチル樹脂からなる、第二の複屈折層19を支持する保護フィルム20を作製した。ポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レーヨン社製、アクリペットVH、光弾性係数5×10[−12]m/N)90重量部と、位相差を消失させる作用を有するアクリロニトリル−スチレン共重合体(旭化成社製、スタイラックAS)10重量部とを溶解してTダイより押し出し、キャストロール上でフィルム状に形成した後、ゾーン延伸法により縦方向の延伸倍率を1.8倍として、縦延伸された分子が一軸配向されたポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。そしてテンター延伸法により横方向の延伸倍率を2.2倍として逐次二軸延伸にて分子が二軸配向された厚さ40μmのポリメタクリル酸メチルフィルムを得て第二の複屈折層を支持する保護フィルム20とした。このフィルムの面内位相差、厚み方向位相差は実質上無かった。位相差が実質上無いとは、位相差の絶対値が10nm未満であることを意味する。またこのフィルムの透湿度は90g/m・24hであった。フィルムの透湿度はJIS Z 0208に規定された透湿度試験法(カップ法)により測定した。
【0034】
上記のようにして得た第二の複屈折層を支持する保護フィルム20を第二の複屈折層19と図示しないイソシアネート系接着剤(厚み5μm)で図2(b)のように接着し、次いで図2(c)のように二軸延伸PETフィルム25を除去して第二の複屈折層を支持する保護フィルム20に第二の複屈折層19(コレステリック配向固化層)が転写された積層体を得た。
【0035】
[接着剤]
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1,200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル化度5モル%)100部に対し、メチロールメラミン50部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を調製した。上記のアルミナコロイドを含まない接着剤は第二の接着層17、第四の接着層23を形成するのに用いた。次にこの水溶液100部に対してアルミナコロイド水溶液(平均粒径15nm、固形分濃度10%、正電荷)18部を加えて接着剤を調製した。接着剤のpHは4〜4.5の範囲、アルミナコロイドの配合量はポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して74重量部であった。なおアルミナコロイド水溶液におけるコロイドの平均粒径は日機装社製、粒度分布計:ナノトラックUAP150を用いて動的光散乱法(光相関法)で測定した。上記のアルミナコロイドを含む接着剤は第一の接着層15、第三の接着層21を形成するのに用いた。
【0036】
[上部光学層]
第一の保護フィルム18の一つの主面に上記のアルミナコロイドを含まない接着剤を、乾燥後の第二の接着層17の厚みが80nmとなるように塗布した。第一の複屈折層14の一つの主面に上記のアルミナコロイドを含む接着剤を、乾燥後の第一の接着層15の厚みが80nmとなるように塗布した。第一の偏光子16の一つの主面に第二の接着層17の塗布された第一の保護フィルム18を、他の主面に第一の接着層15の塗布された第一の複屈折層14をそれぞれロール機を用いて貼り合わせ55℃で6分間乾燥させて上部光学層12を作製した。上部光学層12内の光学補償層は第一の複屈折層14である。
【0037】
[下部光学層]
第二の保護フィルム24の一つの主面に上記のアルミナコロイドを含まない接着剤を、乾燥後の第四の接着層23の厚みが80nmとなるように塗布した。第二の複屈折層19を支持する保護フィルム20の一つの主面に上記のアルミナコロイドを含む接着剤を、乾燥後の第三の接着層21の厚みが80nmとなるように塗布した。第二の偏光子22の一つの主面に第四の接着層23の塗布された第二の保護フィルム24を、他の主面に第三の接着層21の塗布された第二の複屈折層を支持する保護フィルム20をそれぞれロール機を用いて貼り合わせ55℃で6分間乾燥させて下部光学層13を作製した。下部光学層13内の光学補償層は第二の複屈折層19である。
【0038】
[液晶パネル]
VAモードの液晶セル11の視認側に上記の上部光学層12を、バックライト側に上記の下部光学層13をそれぞれ厚み20μmの図示しないアクリル系粘着剤で貼り付け、液晶パネル10を作製した。このとき第一の偏光子16の吸収軸と第二の偏光子22の吸収軸が実質的に直交するようにした。また第一の複屈折層14の遅相軸が第一の偏光子16の吸収軸と実質的に直交するようにした。液晶パネル10の光学補償層は第一の複屈折層14と第二の複屈折層19を有している。液晶セル11の厚み方向の位相差Rthは370nmであった。
【0039】
[比較例]
実施例と同じ材料、同じ製法で比較例1〜4の液晶パネルのための第二の複屈折層19を作製した。ただし厚み方向の位相差は以下に述べるように比較例1〜4でそれぞれ異なり、また実施例とも異なるようにした。比較例1〜4の液晶セル、接着層、偏光子、保護フィルム、第一の複屈折層など第二の複屈折層19以外のものは実施例と同じとした。
【0040】
比較例1の液晶パネルに使用する第二の複屈折層を、コレステリック配向固化層の厚みを0.9μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。比較例1用の第二の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは100nmであった。
【0041】
比較例2の液晶パネルに使用する第二の複屈折層を、コレステリック配向固化層の厚みを1.4μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。比較例2用の第二の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは150nmであった。
【0042】
比較例3の液晶パネルに使用する第二の複屈折層を、コレステリック配向固化層の厚みを3.0μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。比較例3用の第二の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは350nmであった。
【0043】
比較例4の液晶パネルに使用する第二の複屈折層を、コレステリック配向固化層の厚みを3.4μmとした以外は実施例1と同様にして作製した。比較例4用の第二の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは400nmであった。
【0044】
[評価]
図3に実施例1〜3、比較例1〜4の液晶パネルの位相差{Rth+Rth−Rth}とコントラストの視野角依存性を示す。図3に示されている位相差の数値は液晶パネルの位相差{Rth+Rth−Rth}である。図3に示すように実施例2が最も視野角が広く、ついで実施例1、実施例3の順で視野角が広い。比較例2は実施例3よりもやや視野角が狭く、比較例3、1、4はかなり狭い。図3から明らかなように、液晶パネルの位相差{Rth+Rth−Rth}は−120nmを超えて70nm未満の範囲が好ましく、−70nm以上35nm以下の範囲がより好ましい。
【0045】
[測定方法]
[位相差、Nz係数、屈折率の測定方法]
位相差、Nz係数は王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA21−ADH」を用いて23℃で測定した。また屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ株式会社製、製品名「DR−M4」)を用いて測定した。
【0046】
[厚みの測定方法]
厚みが10μm未満の場合は薄膜用分光光度計(大塚電子株式会社製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」)を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合はマイクロメーター(アンリツ株式会社製 製品名「デジタルマイクロメーター KC−351C型」)を用いて測定した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態の一例の液晶パネルの断面模式図
【図2】第二の複屈折層と第二の複屈折層を支持する保護フィルムの積層体の製造方法を示す断面模式図
【図3】実施例および比較例の液晶パネルのコントラストの視野角依存性を示すコントラスト等高線図
【符号の説明】
【0048】
10 液晶パネル
11 液晶セル
12 上部光学層
13 下部光学層
14 第一の複屈折層
15 第一の接着層
16 第一の偏光子
17 第二の接着層
18 第一の保護フィルム
19 第二の複屈折層
20 第二の複屈折層を支持する保護フィルム
21 第三の接着層
22 第二の偏光子
23 第四の接着層
24 第二の保護フィルム
25 二軸延伸PETフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの主面を有する液晶セルと、
前記液晶セルの一方の主面の側に配置された第一の偏光子と、
前記液晶セルと前記第一の偏光子の間に配置された第一の複屈折層と、
前記液晶セルの他の主面の側に配置された第二の偏光子と、
前記液晶セルと前記第二の偏光子との間に配置された第二の複屈折層とを含み、
前記第一の複屈折層の、Nz=(n−n)/(n−n)で定義されるNz係数が1≦Nz≦1.6の関係を有し、
前記第二の複屈折層がn=n>nの屈折率分布を有し、
Rth={(n+n)/2−n}・dで定義される厚み方向位相差に関して、
前記第一の複屈折層と前記第二の複屈折層を含む全ての光学補償層の厚み方向位相差の合計ΣRth1〜nと、液晶セルの厚み方向の位相差Rthとの差が次式
−120nm<(ΣRth1〜n−Rth)<70nm
を満たすことを特徴とする液晶パネル。
【請求項2】
前記第一の偏光子と前記第一の複屈折層とが、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒子径1nm〜100nmの金属コロイドを含む接着剤から形成された接着層を介して接着されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記第二の偏光子と前記第二の複屈折層とが、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒子径1nm〜100nmの金属コロイドを含む接着剤から形成された接着層を介して直接または間接的に接着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶パネル。
【請求項4】
前記第二の複屈折層がコレステリック配向固化層からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記第一の複屈折層の遅相軸が前記第一の偏光子の吸収軸と実質的に直交していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記液晶セルがVAモードの液晶セルであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の液晶パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−139626(P2009−139626A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315709(P2007−315709)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】