説明

液晶表示用基板および製造方法

【課題】パターン加工した透明電極と下地との表面の段差に起因するラビングムラを抑制し、表示ムラのない液晶表示装置を実現するカラーフィルタ基板を提供する。
【解決手段】透明基板1上のブラックマトリックス2の開口部に赤、緑、青の各画素が形成され、各画素上に透明導電膜5と絶縁膜6が形成された液晶表示装置用カラーフィルタ基板において、透明導電膜はパターン形成され、該透明導電膜が除去された部分には絶縁膜が形成されており、かつ透明導電膜と絶縁膜における表面の段差が50nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置を構成する液晶表示装置用カラーフィルター基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力といった利点を有しており、さまざまな分野で用いられている。近年、液晶表示装置に対する視野角特性や高応答速度などの表示品位の向上が強く要求されており、これを実現する手段として、IPS(In−Plane Switching)モードやFFS(Fringe Field Switching)モードの液晶表示装置が知られている。この液晶表示装置は、画素電極と共通電極に駆動電圧を印加して、液晶層内で基板に平行な電気力線(横電界)を生じさせ、この横電界によって、液晶分子を駆動し、配向方向を変化させることで、光量を調整する装置である。
【0003】
そのため、共通電極となる透明導電膜は、横電界を生じさせるためにスリットなどのパターンが形成されている。さらに、電圧を加えていない状態の液晶分子の配向方向を規制するため、基板表面に配向膜を塗布し、表面のラビングを行う。このとき、透明電極膜のスリット形成によりできた保護層と透明導電膜との段差に起因して、ラビングの乱れが生じ、スリットパターンに沿って、ラビングのムラが発生する。このラビングムラにより、液晶の配向状態が乱れ、光漏れなどの表示不良が発生するといった問題がある。
【0004】
このような透明導電膜の段差に起因する表示不良を解消するため、保護層に感光性材料を使用し、フォトリソ法を用いて、凹部を形成し、その段差部分に透明導電膜を形成する方法が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、上記方法では、保護層の凹部加工と透明導電膜の凹部へのパターン加工の2回のフォトリソ加工が必要となるため、生産リードタイムが長くなり、また製造コストが高くなる。さらに、保護層の凹部と透明電極膜のパターンの位置あわせにずれが発生し、段差が完全に解消されないといった問題がある。(図2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−175561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パターン加工した透明電極と下地との段差に起因するラビングムラを抑制し、表示ムラのない液晶表示装置を実現する液晶表示用カラーフィルタ基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。
1.透明基板上のブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素が形成され、ブラックマトリックスおよび各画素上に保護層が形成され、該保護層上に透明導電膜と絶縁膜とが形成された液晶表示装置用カラーフィルタ基板において、透明導電膜はパターン形成され、該透明導電膜が除去された部分には絶縁膜が形成されており、かつ透明導電膜と絶縁膜における該透明基板と反対側の表面の段差が50nm以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ基板。
2.前記絶縁膜はケイ素を含んだ無機膜であることを特徴とする第1項に記載の液晶表示装置用カラーフィルタ基板。
3.第1項または第2項に記載の液晶表示装置用カラーフィルタ基板を製造する方法であって、以下の工程を順次行うことを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ基板の製造方法。
(1)透明基板上に開口部を有するブラックマトリックスを形成する工程
(2)ブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素を形成する工程
(3)透明基板上のブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素が形成された基板上に保護層を形成する工程
(4)保護層上に透明導電膜を形成する工程
(5)透明導電膜上にフォトレジスト膜を形成し、フォトリソ法によりレジスト膜パターンを形成する工程
(6)レジスト膜パターンが除去された部分の透明導電膜をエッチングで除去することにより導電膜パターンを形成する工程
(7)透明導電膜パターンおよびレジスト膜パターンが積層された基板上に絶縁膜を形成する工程
(8)レジスト膜パターン上の絶縁膜をレジスト膜パターンとともに除去する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フォトリソ法によるエッチングにてパターン形成された透明電極とエッチングにて透明電極を除去した部分に形成された絶縁膜を有し、透明電極と絶縁膜の表面の段差が50nm以下である液晶表示装置用カラーフィルタ基板を安価に製造できる。また、本発明によって得られた液晶表示装置用カラーフィルタ基板は、パターン加工した透明電極と下地との段差に起因するラビングムラを抑制し、表示ムラのない液晶表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施の形態の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る比較例を示す図である。
【図3】本発明に係る比較例を示す図である。
【図4】本発明に係る比較例を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の一例を示す加工フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、透明基板上のブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素が形成され、ブラックマトリックスおよび各画素上に保護層が形成され、該保護層上に透明導電膜と絶縁膜とが形成された液晶表示装置用カラーフィルタ基板において、透明導電膜はパターン形成され、該透明導電膜が除去された部分には絶縁膜が形成されており、かつ透明導電膜と絶縁膜における該透明基板と反対側の表面の段差が50nm以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ基板である。
【0011】
本発明の実施の形態の一例を図1に示す。
【0012】
本発明は、透明基板上のブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素を形成し、ブラックマトリックスおよび各画素上に保護層を形成し、該保護層上に透明導電膜を形成し、透明導電膜上にフォトレジスト膜を形成し、フォトリソ法により所定のパターンを形成した後、エッチングにより透明導電膜を除去する。その後、フォトレジスト膜を剥離除去せずに、絶縁膜を形成した後、フォトレジスト膜を絶縁膜とともに剥離除去する。
【0013】
本発明で使用する基板は、特に限定されず、光線透過率が高く、機械的強度、寸法安定性が優れたガラスが最適であるが、他にポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などのプラスチック板も使用できる。また、基板上に着色層、保護層、液晶ギャップ調整層などの有機膜を形成する場合には、有機膜材料として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂が好適に使用される。
【0014】
本発明のブラックマトリックスおよび着色層で使用される樹脂としては、特に限定されず、180℃以上のアニール処理でも軟化、分解、着色を生じない材料が用いることができ、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。これらの中でも耐熱性、密着性にすぐれているポリイミド樹脂、アクリル樹脂もしくはエポキシ樹脂が好ましい。また、本発明で使用する樹脂層としては、感光性、非感光性のいずれでもよく、特に感光性材料が好適に用いられる。
【0015】
本発明で使用するブラックマトリックスとしては特に限定されないが、クロムやクロムと酸化クロムや窒化クロム、ニッケル合金、チタン合金の多層膜などからなる無機系や、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などに黒色顔料を分散した有機系の材料が用いられる。無機系、有機系とも本発明において好適に用いられるが、成膜に複雑な真空系を要する無機系に比べ製造コストの面で有利であり、地球環境への影響も少ない有機系を用いるのが望ましい。ブラックマトリックス層の厚みは無機系で0.1〜0.3μm、有機系で0.5〜2μmのものが多く用いられる。ブラックマトリックス層は通常フォトリソグラフィ法やインクジェット法、印刷法により所定のパターンを形成する。
【0016】
着色層としては特に限定はされないが、色素を樹脂中に分散したものを用いることができる。顔料は3原色を表すために適当なものを組み合わせて使用することができる。使用できる色素としては赤、橙、黄、緑、青、紫などの顔料や染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
ブラックマトリックスや着色層を形成する方法としては特に限定はされないが、例えば画素を形成する場合、着色ペーストを基板上に塗布・乾燥した後にパターニングを行う方法などがある。着色ペーストを得る方法としては、溶媒中に樹脂と着色剤を混合させた後、三本ロール、サンドグラインダー、ボールミルなどの分散機中で分散させる方法などが用いられる。着色ペーストを塗布する方法としては、特に限定されずディップ法、ロールコータ法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバー法などの方法が好適に用いられ、この後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥(セミキュア)を行う。セミキュアの条件は使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により最適な値が選ばれるが、通常60〜200℃で1〜60分加熱することが好ましい。
【0018】
このようにして得られた着色ペースト被膜は、樹脂が非感光性の場合はその上にフォトレジストの被膜を形成した後に、また樹脂が感光性の場合はそのままかあるいはポリビニルアルコールなどの酸素遮断膜を形成した後に、露光・現像を行う。その後必要に応じて、フォトレジストまたは酸素遮断膜を除去し、再度加熱乾燥(本キュア)を実施する。本キュア条件は、樹脂により異なるが、前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、通常200〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。以上のプロセスにより基板上にパターニングされた着色層、すなわち画素が形成される。
【0019】
本発明のカラーフィルタは平坦性を向上するために画素上に保護膜を形成することが好ましい。保護膜としては特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、オルガノシランを縮重合して得られるシリコーン樹脂、オルガノシランとイミド基を有する化合物とを縮重合して得られるイミド変形シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゼラチンなどが用いられる。中でも、後工程の液晶表示装置製造工程での加熱や、有機溶剤への耐性を有する樹脂を用いることが好ましく、この点から感光性もしくは非感光性のポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましく用いられる。保護膜を形成する方法としては特に限定されず、遮光層、着色層と同様、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーによる方法などが好適に用いられる。オーバーコート層の膜厚としては特に限定されないが、0.05〜3.0μmが好ましい。画素内段差を小さくする点からは厚いほうが好ましいが、均一塗布が難しくなる。もちろんブラックマトリックスと画素の膜厚の組み合わせにより、保護膜の厚みは好適に決定できる。
【0020】
保護膜上には透明導電膜が形成される。本発明の透明導電膜は、可視光領域の透過率が高く、抵抗値が低い材質が用いられ、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムと酸化スズの混合物(以下、ITOと称する)、などが好適に用いられ、厚みは10〜300nmのものが好適に使用される。
【0021】
透明導電膜の成膜方法は、特に限定はされず、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの物理的・化学的な各種成膜方法が使用できる。成膜温度は、特に限定されず、20〜300℃であることが好ましく、100〜230℃の範囲がより好ましい。より好ましくは、100〜150℃の範囲であり、導電膜を非晶質状態で形成し、エッチングを残渣なく容易にすることができる。非晶質状態で成膜した場合や、より安定して透過率や抵抗値の特性を得るためにアニール処理が好適に用いられる。アニール温度は、200〜300℃であることが好ましく、220〜250℃の範囲がより好ましい。アニールは、成膜後の任意のタイミングで実施すればよく、好適に成膜直後もしくは最終工程で実施される。
【0022】
透明導電膜をパターン形成するために、透明導電膜上にフォトレジストが塗布され、フォトリソ法によりパターン形成される。本発明のフォトレジストは、熱可塑性樹脂のノボラック系レジストや化学増幅型レジスト、アジド化合物系レジストなどが好んで使用される。特にノボラック系レジストは、安価で加工安定性が良好なため、好適に使用される。
【0023】
フォトレジストを塗布する方法としては、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーによる方法などが好適に用いられる。その後、必要に応じて、真空下で乾燥を行い、オーブンやホットプレートを用いて、加熱乾燥(プリベーク)を行う。プリベーク条件は、使用する樹脂や溶剤、塗布量により異なるが、通常50℃〜150℃で、1分〜30分加熱することが好ましい。その後、露光機により、所望のパターンを転写し、現像によって、不要部分を溶解除去して、パターンを形成する。現像する方法としては、ディップ方式やシャワー方式などが好適に用いられ、現像液としては、アルカリ現像液を使用し、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機系や、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの有機系などが好適に用いられる。現像条件は、通常はpH11〜14、現像温度15℃〜30℃、現像時間30秒〜300秒の範囲が好ましい。
【0024】
レジスト膜パターンが形成された基板をエッチングすることにより、透明導電膜がパターン形成される。本発明に使用されるエッチング液は、塩化鉄水溶液や王水、蓚酸などが使用される。特に、弱酸である蓚酸は、フォトレジストや有機膜に与えるダメージが少ないため、好適に使用される。
【0025】
本発明のレジスト膜パターンは、エッチングにおけるレジスト膜と使用し、その後、剥離せずに、絶縁膜形成用のマスクとして使用する。
【0026】
透明導電膜が除去された部分には、絶縁膜が形成される。本発明の絶縁膜は、SiOやSiON、SiOCなどのケイ素を含んだ化合物やAlやTiOなどの金属酸化膜、TiNなどの金属窒化膜などが好適に用いられる。厚みは10〜300nmのものが好適に使用され、透明導電膜の膜厚と同等の膜厚を形成する。
【0027】
無機絶縁膜の成膜方法は、特に限定はされず、CVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法などの物理的・化学的な各種成膜方法が使用できる。
【0028】
絶縁膜は、レジスト膜とともに剥離を行う。レジスト膜を剥離する方法としては、始めに、紫外線を照射し、その後、アルカリ液にて、剥離を行う。紫外線の照射量は、レジストの種類や膜厚により異なるが、通常i線で50mJ/cm〜500mJ/cm照射することが好ましい。剥離に用いるアルカリ液としては、無機系および有機系のいずれのアルカリ水溶液でも好適に用いられる。薄利条件は、通常はpH11〜14,温度15℃〜30℃、薄利時間30秒〜600秒の範囲が好ましい。
【0029】
本発明における透明導電膜と絶縁膜の表面の段差とは、透明導電膜と絶縁膜の境界部分の透明基板と反対側の表面段差である。本発明において、該段差は、50nm以下であることが好ましく、より好ましくは25nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
【0030】
基板表面の段差は、ラビングロールの乱れを生じさせる原因となり、段差が大きいほど、乱れが大きくなり、ラビングのムラとなる。段差が50nm以上ある場合、ラビングムラが光漏れとなり、液晶表示装置のコントラストを低下させ、表示品位を悪くする。
【0031】
段差の測定方法は、触針式段差測定装置を用いて、段差を測定したい一方の表面から、もう一方の表面へと触針で表面をなぞり、表面の段差形状を測定し、一方の表面からもう一方の表面の高さ差を計測する。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
実施例1、2、および比較例1
本発明の液晶表示装置用基板の一例としてカラーフィルタ基板について説明する。
基板に無アルカリガラスを用いて、長さ620mm、幅750mm、厚さ0.5mmの透明基板に、カーボンブラックからなる黒色顔料、ポリアミック酸、溶剤を攪拌混合して得られた非感光性黒色ペーストをスピンコートした。
その後、110℃で15分間加熱し仮硬化し、膜厚1.5μmのポリイミド前駆体膜を得た。この膜上にノボラック樹脂系レジストをスピンコートし、80℃で20分加熱乾燥して膜厚1.0μmのレジスト膜を得た。次いで、フォトマスクを介して紫外線露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.4重量%の水溶液からなる現像液を用いて不要部分のフォトレジストおよびポリイミド前駆体膜をエッチング除去した後、残ったフォトレジストをメチルセルソロブアセテートにより除去した。これを300℃で30分加熱し、本硬化して、所定形状の遮光層を形成した。
次にポリアミック酸、赤顔料、溶剤からなる非感光性赤色ペーストをスピンコートの後、110℃で15分間加熱し仮硬化し、膜厚1.5μmのポリイミド前駆体膜を得て、この膜上にポジ型フォトレジストをスピンコートし、80℃で20分加熱乾燥した膜厚1.0μmのレジスト膜を得た。次いで、フォトマスクを介して紫外線露光をした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.4重量%の水溶液からなる現像液を用いて不要部分のフォトレジストおよびポリイミド前駆体膜をエッチング除去した後、残ったフォトレジストをメチルセルソロブアセテートにより除去した。これを300℃で30分加熱し、本硬化して、所定形状の赤色の着色層を得た。同様にして緑色着色層、青色着色層のそれぞれを形成した。
【0034】
さらにアクリル製の透明保護材料をスピンコートの後、240℃で30分加熱し、本硬化して、膜厚2.0μmの保護層を得た。
【0035】
その後、DCマグネトロンスパッタリングにより、透明電極であるITO膜を基板全面に成膜し、膜厚100nmの電極層を形成した。成膜温度は120℃とし、得られたITO膜は非晶質状態であった。
【0036】
次に、ポジ型ノボラック樹脂系レジストをスピンコートし、80℃で20分加熱乾燥して膜厚1.6μmのレジスト膜を得た。次いで、透明電極のパターンが描画されたフォトマスクを介して、紫外線露光をした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.4重量%の水溶液からなる現像液を用いて不要部分のレジストを除去した。さらに、蓚酸5%の水溶液からなるエッチャントを用いて不要部分のITO膜を除去した。
【0037】
次に、RFスパッタリングにより、無機絶縁膜であるSiO膜を基板全面に成膜し、表1に示す膜厚の絶縁膜を形成した。絶縁膜の膜厚は、成膜時間を変更することにより、所望の膜厚になるよう調整した。
【0038】
その後、基板全面に紫外線照射をした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド5.0重量%の水溶液からなる剥離液を用いてレジストおよび絶縁膜を除去した。ITO膜とSiO膜の重なりは見られず、かつ、隙間は見られなかった。
ついで、240℃で30分加熱し、ITO膜をアニールして、所望の特性を得ることができた。
このようにして得られた基板の透明導電膜であるITO膜と絶縁膜であるSiO膜の表面の段差を株式会社小坂研究所製の高精度・全自動微細形状測定器 ET−5000にて測定したところ、基板内9箇所の測定において、表1に示す段差の測定結果が得られた。
【0039】
次に、基板にポリイミド系配向膜を印刷し、180℃で一時間焼成し、膜厚50nmの配向膜を得た。その後、配向膜表面をラビング処理した。こうして完成したカラーフィルタ基板を用いて、横電界にて液晶分子を駆動する液晶表示装置を作成し、表示品位を確認した。表1に結果をまとめる。実施例1は、段差部のラビングムラに起因した光漏れが見られず、コントラスト比400:1のかなり良好は表示装置が得られた。実施例2では、段差部にわずかに光漏れが見られたが、コントラスト比350:1の良好な表示装置が得られた。比較例1では、段差部に沿った光漏れが多く見られ、コントラスト比200:1と大幅に悪化した。
【0040】
【表1】

【0041】
比較例2
基板に所定形状の遮光層、着色層および保護層を形成し、その後、DCマグネトロンスパッタリングにより、透明電極であるITO膜を基板全面に成膜し、膜厚100nmの電極層を形成した。成膜温度は120℃とし、得られたITO膜は非晶質状態であった。
【0042】
次に、ポジ型ノボラック樹脂系レジストにより所定のパターンを形成し、蓚酸5%の水溶液からなるエッチャントを用いて不要部分のITO膜を除去した。(図3)
このようにして得られた基板の透明導電膜であるITO膜と保護層の表面の段差を同様にET−5000にて測定した結果を表1に示す。
【0043】
次に、基板にポリイミド系配向膜を印刷し、焼成、ラビング処理し、この基板を用いて、横電界にて液晶分子を駆動する液晶表示装置を作成して、表示品位を確認し、表示品位を確認した。段差部に沿った光漏れが多く見られ、コントラスト比100:1と大幅に悪化した。(表1)
比較例3
基板に所定形状の遮光層、着色層および保護層を形成し、その後、DCマグネトロンスパッタリングにより、透明電極であるITO膜を基板全面に成膜し、膜厚100nmの電極層を形成した。成膜温度は120℃とし、得られたITO膜は非晶質状態であった。
【0044】
次に、ポジ型ノボラック樹脂系レジストにより所定のパターンを形成し、蓚酸5%の水溶液からなるエッチャントを用いて不要部分のITO膜を除去した。その後、剥離液にて、フォトレジスト膜を剥離した。
【0045】
ついで、感光性のアクリル透明材料をスピンコートし、90℃で20分加熱乾燥し、フォトリソ法にて、ITO膜を除去した部分を覆う様パターン加工し、240℃で30分加熱硬化し、膜厚100nmの絶縁膜を得た。
このようにして得られた基板は、透明導電膜であるITO膜と絶縁膜であるアクリル層が重なっている箇所や隙間が見られる箇所があった。重なっている箇所では、重なったアクリル層が突起となっており、段差は100nmであった。隙間がある箇所では、下地の保護層との段差が100nmであった。(図4)
次に、基板にポリイミド系配向膜を印刷し、焼成、ラビング処理し、この基板を用いて、横電界にて液晶分子を駆動する液晶表示装置を作成して、表示品位を確認した結果、段差部に沿った光漏れが多く見られ、コントラスト比は100:1と低かった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の液晶表示用カラーフィルタ基板は、種々の分野の液晶表示装置に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1:基板
2:ブラックマトリックス
3:着色層
4:保護層
5:透明電極膜
6:絶縁膜
7:フォトレジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上のブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素が形成され、ブラックマトリックスおよび各画素上に保護層が形成され、該保護層上に透明導電膜と絶縁膜とが形成された液晶表示装置用カラーフィルタ基板において、透明導電膜はパターン形成され、該透明導電膜が除去された部分には絶縁膜が形成されており、かつ透明導電膜と絶縁膜における該透明基板と反対側の表面の段差が50nm以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ基板。
【請求項2】
前記絶縁膜はケイ素を含んだ無機膜であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置用カラーフィルタ基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶表示装置用カラーフィルタ基板を製造する方法であって、以下の工程を順次行うことを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ基板の製造方法。
(1)透明基板上に開口部を有するブラックマトリックスを形成する工程
(2)ブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素を形成する工程
(3)透明基板上のブラックマトリックスの開口部に赤、緑、青の各画素が形成された基板上に保護層を形成する工程
(4)保護層上に透明導電膜を形成する工程
(5)透明導電膜上にフォトレジスト膜を形成し、フォトリソ法によりレジスト膜パターンを形成する工程
(6)レジスト膜パターンが除去された部分の透明導電膜をエッチングで除去することにより導電膜パターンを形成する工程
(7)透明導電膜パターンおよびレジスト膜パターンが積層された基板上に絶縁膜を形成する工程
(8)レジスト膜パターン上の絶縁膜をレジスト膜パターンとともに除去する工程

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−118425(P2012−118425A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269957(P2010−269957)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】