説明

液晶表示素子及び配向剤

【課題】電圧保持率、耐光性等の一般的要求特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短いポジ型液晶を用いた垂直配向液晶素子の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、対向配置される一対の基板と、上記両基板間に配設される液晶層と、上記液晶層の両面に配設される一対の液晶配向膜と、上記一対の基板の少なくとも一方に横電界発生用の電極とを備え、上記液晶層がポジ型液晶を含有し、かつ上記液晶配向膜が、[A]下記式(A1)で表される基有する重合体を含有する液晶配向剤から形成される液晶表示素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子及び配向剤に関する。詳細には、ポジ型液晶を用いた液晶表示素子(LCD)及びこの液晶表示素子の液晶配向膜を形成するための材料として好適な配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高視野角に対応できる液晶表示素子としてポジ型液晶を用いた垂直配向液晶表示素子が知られている(特許文献1〜3参照)。かかる液晶表示素子は携帯電話や液晶テレビ等の動画表示用装置として期待されていることから、動画を滑らかに表示しつつ残像を極力抑えるべく、電気光学効果の応答時間のさらなる高速化が求められている。しかし、ポジ型液晶を用いた垂直配向液晶表示素子は電圧印加時の液晶応答速度が遅いという課題がある(非特許文献1参照)。
この課題に対して、液晶配向膜に用いるポリマー側鎖に誘電異方性を与える構造を付与することで改善を図る技術が報告されている(特許文献4及び5参照)。しかし、本特許文献は従来から存在するポジ型液晶を用いた水平配向素子又はネガ型液晶を用いた垂直配向素子に関するものであり、本発明のポジ型液晶を用いた垂直配向素子に関して検討されたものではない。
このような状況から、液晶表示素子として一般に要求される電圧保持率、耐光性等の特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短いポジ型液晶を用いた垂直配向液晶表示素子の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−333171号公報
【特許文献2】特開平10−161145号公報
【特許文献3】特開2009−25834号公報
【特許文献4】特表2007−521361号公報
【特許文献5】特表2007−521506号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T.Sakurai et.al.,SID 2010 DIGEST p.721−724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧保持率、耐光性等の一般的要求特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短いポジ型液晶を用いた垂直配向液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
対向配置される一対の基板と、
上記両基板間に配設される液晶層と、
上記液晶層の両面に配設される一対の液晶配向膜と、
上記一対の基板の少なくとも一方に配設される横電界発生用の電極と
を備え、
上記液晶層がポジ型液晶を含有し、かつ
上記液晶配向膜が、
[A]下記式(A1)で表される基を有する重合体(以下、「[A]重合体」と称することがある)
を含有する液晶配向剤(以下、「液晶配向剤(A)」と称することがある)から形成される液晶表示素子である。
【化1】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【0007】
本発明の液晶表示素子は、液晶層がポジ型液晶を含有し、かつ液晶配向膜が上記特定構造の基を有する重合体を含有する液晶配向剤から形成されることから、電圧保持率、耐光性等の一般的要求特性を満足しつつ、短い電気光学応答時間を発揮することができる。
【0008】
上記液晶配向膜は垂直液晶配向膜であることが好ましい。
当該液晶表示素子は、用いる液晶配向膜として垂直液晶配向膜を用いることで、横電界方式の液晶層を容易かつ確実に形成でき、上述の特性を効果的に発揮することができる。
【0009】
上記式(A1)におけるRは、下記式(A2)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
当該液晶表示素子によれば、用いる液晶配向剤が含有する[A]重合体におけるRが上記特定構造を有することで、上述の効果をさらに向上させることができる。
【0011】
[A]重合体は、ポリオルガノシロキサン構造を有することが好ましい。
当該液晶表示素子は、[A]重合体がポリオルガノシロキサン構造を有することで、耐光性を向上させることができる。
【0012】
上記液晶配向剤は、[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、「[B]重合体」と称することがある)をさらに含有することが好ましい。
当該液晶表示素子は、用いる液晶配向剤が[B]重合体をさらに含有することで得られる液晶配向剤の溶液特性及び得られる液晶表示素子の電気特性を改善することができる。
【0013】
[B]重合体は、コレスタニル基含有ジアミン、コレステニル基含有ジアミン又は下記式(A−1)で表されるジアミンを用いて得られることが好ましい。
【化3】

(式(A−1)中、X及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。Rはメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基である。αは0又は1である。βは0〜2の整数である。但しα及びβが同時に0になる場合はない。γは1〜20の整数である。)
【0014】
当該液晶表示素子は、[B]重合体として上記特定のジアミンを用いて得られる重合体を用いることで、垂直配向性を向上させることができる。
【0015】
本発明の配向剤は、
横電界方式液晶表示素子のポジ型液晶用配向剤であって、
[A]下記式(A1)で表される基を有する重合体
を含有することを特徴とする。
【化4】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【0016】
当該配向剤は、上記特定構造を有する重合体を含有するので、横電解方式液晶表示素子のポジ型液晶用配向剤として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液晶表示素子は、電圧保持率、耐光性等の一般的要求特性を満たし、かつ液晶応答速度を向上することができる。また、本発明の配向剤は、横電界方式液晶表示素子のポジ型液晶用配向剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、
対向配置される一対の基板と、
上記両基板間に配設される液晶層と、
上記液晶層の両面に配設される一対の液晶配向膜と、
上記一対の基板の少なくとも一方に配設される横電界発生用の電極と
を備え、
上記液晶層がポジ型液晶を含有し、かつ
上記液晶配向膜が、
[A]下記式(A1)で表される基を有する重合体
を含有する液晶配向剤から形成される液晶表示素子である。
【0019】
本発明の液晶表示素子は、例えば以下の(1)及び(2)の工程により製造することができる。
[(1)工程]
先ず基板上に液晶配向剤(A)を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。この液晶配向剤(A)については後述する。少なくとも一方の基板に横電界発生用の電極を備えた基板2枚を一対として、その基板上、電極を有する場合は電極形成面上に、液晶配向剤(A)を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここで、本発明の液晶表示素子は印刷性に優れているので、塗布方法としてオフセット印刷法又はインクジェット印刷法を採用することが、本発明の優れた効果を最大限に発揮するとの観点から好ましい。
【0020】
ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等を用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等によることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物等を予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
横電解発生用の電極としては、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が好適に用いられる。
【0021】
液晶配向剤(A)塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30℃〜200℃であり、より好ましくは40℃〜150℃であり、特に好ましくは40℃〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25分〜10分であり、より好ましくは0.5分〜5分である。その後、溶媒を完全に除去し、必要に応じて重合体に含まれるアミック酸単位を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80℃〜300℃であり、より好ましくは120℃〜250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5分〜200分であり、より好ましくは10分〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
上記のようにして形成された塗膜は、これをそのまま液晶配向膜として使用することができるが、所望に応じてラビング処理を行った後に使用に供してもよい。
【0022】
[(2)工程]
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。ここで、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
【0023】
基板間に液晶を配置するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部を、シール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法であり、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶注入時の流動配向を除去することが望ましい。
【0024】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
上記ポジ型液晶としては、ネマチック型液晶及びスメクチック型液晶を挙げることができ、その中でもネマチック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶、正の誘電異方性を有するフッ素系液晶及びシアノ系液晶の少なくとも一方を含むブレンド液晶等を用いることができる。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0025】
<液晶配向剤(A)>
本発明の液晶表示素子の液晶配向膜の形成に用いられる液晶配向剤(A)は、
[A]上記式(A1)で表される基を有する重合体
を含有する。
また、液晶配向剤(A)は、後述する[B]重合体等の「他の重合体」を含有できる。さらに、液晶配向剤(A)は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。この液晶配向剤(A)は垂直配向性を発現させるものである。以下、各成分について詳述する。
【0026】
<[A]重合体>
[A]重合体は、上記式(A1)で表される基を有する。
【0027】
[上記式(A1)で表される基]
上記式(A1)のRはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい
【0028】
上記Rで表される炭素数2〜30のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、及びトリアコンチレン基等が挙げられる。これらのうち、液晶配向を安定に発現させるためにはオクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等の炭素数が8以上20以下のアルキレン基が好ましい。
【0029】
は、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rとしては、例えば、エテンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。なお、Rは上記結合のいずれかを含んでいればよいが、各結合を組み合わせて含んでいてもよい。また、Rがフェニレン基又はシクロヘキシレン基である場合は、形成される配向膜の配向性や溶媒への溶解性の観点から、Rは炭素数が1〜30のアルキレン基を含んでいることが好ましい。なお、aは0又は1である。
【0030】
は少なくとも2つの単環構造を有する基であり、好ましくは、正又は負の誘電異方性を示す基である。単環構造とは、一の環構造が他の環構造から独立して存在しており、一の環構造の結合が他の環構造と共有されている、いわゆる縮合環構造を有しない構造である。また、単環構造としては、脂環式構造、芳香環式構造、複素環式構造のいずれでもよく、これらを組み合わせて有していてもよい。
【0031】
は少なくとも2つ以上の単環構造を有する基である限り特に限定されないが、Rは下記式(A2)で表される基が好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
上記式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0034】
上記液晶配向剤に含有される[A]重合体の側鎖に、上記式(A2)で表される基を導入することにより、得られる液晶表示素子の電気光学応答性をさらに高速化させることができる。式(A2)中、Rは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。2価の複素環基としては、例えばピリジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基等が挙げられる。
【0035】
上記式(A2)において、Rは、置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む、RとRとを連結する連結基であり、[A]重合体に必要とされる配向性や誘導異方性に応じて適宜選択することができる。Rとしては、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、エテンジイル基、エチンジイル基、エーテル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、エタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、エタンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基が好ましい。なお、bは0又は1であるので、側鎖構造の設計においてRは含まれていても含まれていなくてもよい。
【0036】
上記式(A2)において、Rは、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。cは1〜9の整数である。Rとしては、例えばcが1の場合、上記Rとして例示した2価の基と同じ基等が挙げられる。
【0037】
上記式(A2)中、Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられ、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等の炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0038】
上記式(A2)において、Rが複数の置換基(R)を有する場合は、それぞれ異なるものを組み合わせて用いても良い。Rが複数の置換基を有する場合の組み合わせとしては、所望の誘電異方性を安定して発現させるために、フッ素原子とシアノ基との組み合わせ、フッ素原子とアルキル基との組み合わせ、シアノ基とアルキル基との組み合わせが好ましい。なお、cは1〜9の整数である。
【0039】
[A]重合体は、上記式(A1)で表される構造を有する基を有しているならば、公知の重合体主鎖を適宜選択できるが、ポリオルガノシロキサン、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン誘導体、ポリアミック酸エステルを主鎖構造とすることが、電気特性の面から好ましく、耐光性の面からポリオルガノシロキサン(以下、「[a]ポリオルガノシロキサン化合物」と称することがある)とすることが好ましい。
【0040】
上記液晶配向剤が含有する[A]重合体がポリオルガノシロキサン構造を有する場合、
[a]ポリオルガノシロキサン化合物を含有し、
この[a]ポリオルガノシロキサン化合物が、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、
下記式(A1−C)で表されるカルボキシル基を有する化合物(以下、「特定カルボン酸」と称することがある)に由来する部分と
を有することが好ましい。
【0041】
【化6】

【0042】
上記式(A1−C)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。
【0043】
上記液晶配向剤に含有される[a]ポリオルガノシロキサンが上記特定の化合物に由来する構造を有することで、側鎖に誘電異方性を有する構造が導入され、この液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、さらに電気特性及び残像特性が向上し、より応答時間が短縮される。また、エポキシ基とカルボキシル基との間の反応性を利用することで、主鎖としてのポリオルガノシロキサンに側鎖としての上記式(A1−C)で表される誘電異方性を有する構造を容易に導入できる。
【0044】
<[a]ポリオルガノシロキサン化合物>
[a]ポリオルガノシロキサン化合物はエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、上記式(A1−C)で表される特定カルボン酸に由来する部分とを有する。液晶配向剤(A)に含有される[A]重合体がこのような特定の構造単位を有することで、側鎖に誘電異方性を有する構造が導入され、この液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、さらに電気特性及び残像特性が向上し、より応答時間が短縮される。また、エポキシ基とカルボキシル基との間の反応性を利用することで、主鎖としてのポリオルガノシロキサンに側鎖としての上記式(1)で表される誘電異方性を有する構造を容易に導入できる。
【0045】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物は、主としてポリオルガノシロキサンのエポキシ基と特定カルボン酸のカルボキシル基との反応物として得られることになると考えられるが、以降の説明を容易にするために、便宜的にエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(とその誘導体)に由来する部分と、特定カルボン酸に由来する部分とに分けて液晶配向剤(A)に含有される[a]ポリオルガノシロキサン化合物を説明する。
【0046】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分]
この部分は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物の構造のうち、ポリマー主鎖としてのポリオルガノシロキサン骨格と、このポリオルガノシロキサン主鎖から延びている側鎖としてのエポキシ基含有骨格とを含む概念である。上述のように[a]ポリオルガノシロキサン化合物では、大部分のエポキシ基は特定カルボン酸と反応してその初期の構造を有していないと考えられるが、特定カルボン酸がエポキシ基以外の部分と結合している場合もあり得る。そこで、本発明では両者の態様を含めて「エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分」ということとする。
【0047】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物が、グリシジル基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基を含む基等のエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分を含むことで液晶配向剤(A)は配向性や電圧保持率等の電気特性がより向上する。
【0048】
エポキシ基としては下記式(X−1−1)又は式(X−2−1)で表される基であることが好ましい。上記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンに上記式(X−1−1)又は(X−2−1)で表される基を含ませることにより、液晶配向剤(A)のポリオルガノシロキサン化合物に、上記式(1)で表される特定構造を有する化合物に由来する側鎖基を導入しやすくなる。
【0049】
【化7】

【0050】
上記式(X−1−1)及び(X−2−1)中、*は結合手を示す。
【0051】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましく、1,000〜20,000が特に好ましい。
【0052】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成方法]
このようなエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくはエポキシ基を有するシラン化合物、又はエポキシ基を有するシラン化合物と、他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0053】
上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0054】
上記他のシラン化合物としては、例えば、
1個のケイ素原子を有する化合物で、
4つの加水分解性基を有するものとして、
テトラクロロシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランなど、
3つの加水分解性基を有するものとして、
トリクロロシラン等のトリハロシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン;フルオロトリクロロシラン;フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン等のフルオロトリアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン等のアルキルトリクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン等のフッ素化アルキルトリクロロシラン;2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン等のフッ素化アルキルトリアルコキシシラン;ヒドロキシメチルトリクロロシラン等のヒドロキシアルキルトリクロロシラン;ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のヒドロキシアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリクロロシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;メルカプトメチルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン等のメルカプトアルキルトリクロロシラン;メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン等のアルケニルトリクロロシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン;フェニルトリクロロシラン等のアリールトリクロロシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシランなど、
2つの加水分解性基を有するものとして、
メチルジクロロシラン等のアルキルジクロロシラン;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等のアルキルジアルコキシシラン;ジメチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン等のジフッ素化アルキルジクロロシラン;(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン等のジフッ素化アルキルジアルコキシシラン;(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン等のアルキル・メルカプトアルキルジクロロシラン;(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン等のアルキル・メルカプトアルキルジアルコキシシラン;(メチル)(ビニル)ジクロロシラン等のアルキルアルケニルジクロロシラン;ジビニルジクロロシラン等のジアルケニルジクロロシラン;ジビニルジメトキシシラン等の時アルケニルジアルコキシシラン;ジフェニルジクロロシラン等のジアリールジクロロシラン;ジフェニルジメトキシシラン等のジアリールジアルコキシシラン;
1つの加水分解性基を有するものとして、
クロロジメチルシラン等のジアルキルクロロシラン;メトキシジメチルシラン等のジアルキルアルコキシシラン;クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン等のトリアルキルハロシラン;メトキシトリメチルシラン等のトリアルキルアルコキシシラン;(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン等のジアルキルアルケニルクロロシラン;、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン等のジアルキルアルケニルアルコキシシラン;(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン等のジアリールアルキルクロロシラン;(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のジアリールアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。
【0055】
市販品としては、例えば
KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業製);
グラスレジン(昭和電工製);
SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング製);
FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー製);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ製);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学製);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート製);
GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工製)等の部分縮合物が挙げられる。
【0056】
これらの他のシラン化合物のうち、得られる液晶表示素子の配向性及び保存安定性の観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0057】
本発明に好ましく用いられるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは誘電異方性を有する側鎖を充分な量で導入するため、そのエポキシ当量が100〜10,000g/モルであることが好ましく、150〜1,000g/モルであることがより好ましく、150〜300g/モルであることが特に好ましい。従って、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの前駆体を合成するに際し、シラン化合物と他のシラン化合物との使用割合を、得られるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の範囲となるように調製して設定することが好ましい。本発明で用いられるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するに際しては、シラン化合物のみを用い、他のシラン化合物を使用しないことがより好ましい。
【0058】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物、エーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
【0059】
上記炭化水素化合物としては、例えばトルエン、キシレン等;上記ケトン化合物としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等;上記エステル化合物としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等;上記エーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;上記アルコール化合物としては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等が挙げられる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0060】
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物100質量部に対して、好ましくは10質量部〜10,000質量部、より好ましくは50質量部〜1,000質量部である。エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5倍モル〜100倍モルであり、より好ましくは1倍モル〜30倍モルである。
【0061】
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を用いることができる。
【0062】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
【0063】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等を、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、反応が穏やかに進行する点を考慮して、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミンが好ましい。
【0064】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物又は有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物又は有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環等の副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。また、触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸との反応物を含有する液晶配向剤(A)は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、Chemical Reviews、95巻、p.1409(1995年)に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造又はかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに、液晶配向剤(A)が後述の他の重合体を含有するものである場合には、シラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
【0065】
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば、全シラン化合物に対して好ましくは0.01倍モル〜3倍モルであり、より好ましくは0.05倍モル〜1倍モルである。
【0066】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の加水分解又は加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基及び水と混合して、例えば油浴等により加熱することにより実施することが好ましい。
【0067】
加水分解・縮合反応時には、油浴の加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40℃〜100℃として、好ましくは0.5時間〜12時間、より好ましくは1時間〜8時間加熱するのが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
【0068】
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2質量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0069】
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01,DMS−E12、DMS−E21,EMS−32(以上、チッソ製)等が挙げられる。
【0070】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンそのものが加水分解されて生じる加水分解物に由来する部分や、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン同士が加水分解縮合した加水分解縮合物に由来する部分を含んでいてもよい。この部分の構成材料であるこれらの加水分解物や加水分解縮合物もエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの加水分解、縮合条件と同様に合成することができる。
【0071】
[特定カルボン酸に由来する部分]
上記式(A1)で表されるこの部分は、液晶配向剤(A)に含有される[A]重合体のポリオルガノシロキサン化合物の構造のうち、主としてポリオルガノシロキサン主鎖から延びているエポキシ基に由来する構造と結合しているカルボシキル基に由来する構造を始点とする側鎖構造に相当する。但し、本発明では、特定カルボン酸がエポキシ基以外の部分と結合している場合も含めて「特定カルボン酸に由来する部分」ということとする。
【0072】
上記式(A1)のR〜R及びこのRとして好ましい上記式(A2)で表される基のR〜Rについての説明は、上述の通りである。
【0073】
上記式(A1−C)で表されるカルボキシル基を有する化合物としては例えば、下記式(D−1)〜(D−25)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化8】

【0075】
上記式(D−1)〜(D−25)中、Rは上記式(A1)と同義である。mは1〜30の整数である。
【0076】
上記式(A2)で表される基としては、例えば下記式(E−1)〜(E−123)で表される基が挙げられる。
【0077】
【化9】

【0078】
【化10】

【0079】
【化11】

【0080】
【化12】

【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

【0083】
【化15】

【0084】
上記式(E−1)〜(E−123)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。Xはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である。
【0085】
上記Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。上記Rで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0086】
[特定カルボン酸の合成方法]
特定カルボン酸の合成手順は特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。代表的な合成手順としては、例えば(1)フェノール骨格を有する化合物と、高級脂肪酸エステルのアルキル鎖部分をハロゲンで置換した化合物とを塩基性条件下で反応させ、フェノール骨格の水酸基とハロゲンで置換された炭素との結合を形成し、その後エステルを還元して特定カルボン酸とする方法、(2)フェノール骨格を有する化合物とエチレンカーボネートとを反応させて末端アルコール化合物を生成させ、その水酸基とハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリドとを反応させて活性化し、その後活性化部分に水酸基を含む安息香酸メチルを反応させて、スルホニル部分の脱離とともに末端アルコール化合物の水酸基と置換基として水酸基を含む安息香酸メチルの水酸基との結合を生成させ、次いでエステルを還元して特定カルボン酸とする方法等が例示される。但し、特定カルボン酸の合成手順はこれらに限定されるものではない。
【0087】
<[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法>
[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法としては、特に限定されず一般的な公知の方法で合成するこができる。エポキシ基を有する[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸とを、好ましくは触媒の存在下に反応させることにより合成することができる。
【0088】
ここで特定カルボン酸は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001モル〜10モル、より好ましくは0.01モル〜5モル、さらに好ましくは0.05モル〜2モル使用される。
【0089】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で特定カルボン酸の一部を下記式(4)で表される化合物で置き換えて使用してもよい。この場合、[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸及び下記式(4)で表される化合物の混合物とを反応させることにより行われる。
【0090】
【化16】

【0091】
上記式(4)中、
は炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。但し、上記アルキル基及びアルコキシ基の水素原子の一部又は全部がシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基等の置換基で置換されていてもよい。
は単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。
は単結合、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、シクロへキシレン基、ビシクロへキシレン基又は下記式(L−1)若しくは(L−2)で表される基である。
Zは[a]ポリオルガノシロキサン化合物中のエポキシ基と反応して結合基を形成しうる1価の有機基である。
但し、Lが単結合であるときにはLは単結合である。
【0092】
【化17】

【0093】
上記式(L−1)及び(L−2)において、*を付した結合手がそれぞれZと結合する。
【0094】
Zはカルボキシル基であることが好ましい。
【0095】
上記式(4)においてAが示す炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、4,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、6−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノナニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基等が挙げられる。
【0096】
炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノナニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0097】
ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基としては、例えば下記式(H−1)〜(H−3)で表される基が挙げられる。
【0098】
【化18】

【0099】
上記式(4)におけるAとしては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基及び上記式(H−1)又は(H−3)から選ばれる基が好ましい。
【0100】
上記式(4)で表される化合物としては、下記式(4−1)〜(4〜6)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【化19】

【0102】
上記式(4−1)〜(4−6)中、uは1〜5の整数である。vは1〜18の整数である。wは1〜20の整数である。kは1〜5の整数である。pは0又は1である。qは0〜18の整数である。rは0〜18の整数である。s及びtはそれぞれ独立して0〜2の整数である。
【0103】
これらの化合物の中でも、下記式(5−1)〜(5−8)で表される化合物がより好ましい。
【0104】
【化20】

【0105】
上記式(4)で表される化合物は、特定カルボン酸とともにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと反応し、得られる液晶配向膜にプレチルト角発現性を付与する部位となる化合物である。本明細書においては上記式(4)で表される化合物を、以下、「他のプレチルト角発現性化合物」と称することがある。
【0106】
本発明において、特定カルボン酸とともに他のプレチルト角発現性化合物を使用する場合、特定カルボン酸及び他のプレチルト角発現性化合物の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001モル〜1.5モル、より好ましくは0.01モル〜1モル、さらに好ましくは0.05モル〜0.9モルである。この場合、他のプレチルト角発現性化合物は、特定カルボン酸との合計に対して好ましくは75モル%以下、より好ましくは50モル%以下の範囲で使用される。他のプレチルト角発現性化合物の使用割合が75モル%を超えると、液晶の高速応答性に悪影響が出る場合がある。
【0107】
ポリオルガノシロキサン中のエポキシ基と上記式(4)及び他のプレチルト角発現性化合物で表されるカルボン酸基含有化合物の反応に使用される触媒としては、有機塩基、又はエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進する、いわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
【0108】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0109】
上記硬化促進剤としては、例えば
ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール化合物;
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
上記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0110】
これらの触媒の中でも、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が好ましい。
【0111】
触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100質量部に対して好ましくは100質量部以下、より好ましくは0.01質量部〜100質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜20質量部の量で使用される。
【0112】
反応温度は、好ましくは0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1時間〜50時間、より好ましくは0.5時間〜20時間である。
【0113】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成反応は、必要に応じて有機溶媒の存在下に行うことができる。かかる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料及び生成物の溶解性並びに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の質量が溶液の全質量に占める割合)が、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下となる量で使用される。
【0114】
こうして得られた[a]ポリオルガノシロキサン化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるスチレン換算での重量平均分子量は特に限定されないが、1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜20,000であることがより好ましい。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
【0115】
本発明の[a]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに、特定カルボン酸のカルボキシレート部分のエポキシ基への開環付加により特定カルボン酸に由来する構造を導入している。この製造方法は簡便であり、しかも特定カルボン酸に由来する構造の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
【0116】
<他の成分>
上記液晶配向剤は、上記[a]ポリオルガノシロキサン化合物等の[A]重合体の他に、本発明の効果を損なわない限り、例えば[A]重合体以外の重合体(以下、「他の重合体」と称することがある)、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と称することがある)、官能性シラン化合物、界面活性剤等のその他の任意成分を含有してもよい。
【0117】
[他の重合体]
他の重合体は、液晶配向剤(A)の溶液特性及び得られる液晶表示素子の電気特性をより改善するために使用できる。他の重合体としては、例えば
ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体([B]重合体);
下記式(5)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「他のポリオルガノシロキサン」と称することがある);
ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0118】
【化21】

【0119】
上記式(a1)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0120】
<[B]重合体>
[B]重合体はポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。以下、ポリアミック酸、ポリイミドについて詳述する。
【0121】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0122】
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられ、
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
また、上記テトラカルボン酸二無水物としては、特開2010−97188号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることもできる。
【0123】
上記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、さらに、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
上記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなるものであることが、最も好ましい。
【0124】
<ジアミン>
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等を挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられ、
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン及び下記式(A−1)で表されるジアミン等が挙げられる。
【0125】
【化22】

【0126】
上記式(A−1)中、X及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。Rはメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基である。αは0又は1である。βは0〜2の整数である。但しα及びβが同時に0になる場合はない。cは1〜20の整数である。
【0127】
上記式(A−1)におけるX−R−XII−で表される2価の基としてはメチレン基、炭素数2若しくは3のアルキレン基、−O−、*−COO−又は*−O−CHCH−O−(但し、*を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。Cγ2γ+1−基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等を挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0128】
上記式(A−1)で表される化合物としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−6)で表される化合物等が挙げられる。
【0129】
【化23】

【0130】
上記式(A−1)において、α及びβは同時に0にはならないことが好ましい。
【0131】
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等の他、特開2010−97188公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0132】
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンは、十分な垂直配向性を発現させるために、コレスタニル基含有ジアミン、コレステニル基含有ジアミン、又は上記式(A−1)で表されるジアミンが好ましい。また、これらのジアミンの使用量としては、全ジアミンに対して、5モル%以上含むものであることが好ましく、10モル%〜90モル%含むものであることがより好ましく、特に21モル%〜80モル%含むものであることが好ましい。
【0133】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3当量〜1.2当量となる割合である。
【0134】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0℃〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.5時間〜24時間、より好ましくは2時間〜10時間行われる。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%となるような量である。
【0135】
なお、上記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素類等を、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用できる。かかる貧溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、プロピレンカーボネート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの貧溶媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0136】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、若しくは、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、若しくは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回又は数回行う方法により、ポリアミック酸を精製することができる。
【0137】
[ポリイミド]
上記ポリイミドは、上述のようにして得られたポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環することにより製造することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、又はアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。
【0138】
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、又は(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
【0139】
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50℃〜200℃であり、より好ましくは60℃〜170℃である。反応温度を50℃以上とすることで脱水閉環反応を十分に進行させることができ、反応温度を200℃以下とすることで、得られるイミド化重合体の分子量の低下を抑制することができる。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5時間〜48時間であり、より好ましくは2時間〜20時間である。
【0140】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸構造単位の1モルに対して0.01モル〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルとするのが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒が挙げられる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0℃〜180℃、より好ましくは10℃〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5時間〜20時間であり、より好ましくは1時間〜8時間である。
【0141】
方法(ii)においては、上記のようにして、ポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換等の方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0142】
[他のポリオルガノシロキサン]
液晶配向剤(A)は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物以外の他のポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。他のポリオルガノシロキサンは、上記式(a1)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、液晶配向剤(A)が他のポリオルガノシロキサンを含む場合、他のポリオルガノシロキサンの大部分は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物とは独立して存在しているもの、その一部は[a]ポリオルガノシロキサン化合物との縮合物として存在していても良い。
【0143】
上記式(a1)中のX及びYにおいて、
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等が挙げられ、
炭素数1〜16のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられ、
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基等が挙げられる。
【0144】
他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」と称することがある)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0145】
ここで使用できる原料シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランが好ましい。
【0146】
他のポリオルガノシロキサンを合成する際に、任意的に使用することのできる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物若しくはエステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0147】
アルコール化合物としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等が挙げられる。これらのアルコール化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0148】
ケトン化合物としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョン等のモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン化合物等が挙げられる。これらのケトン化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0149】
上記アミド化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。これらアミド化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0150】
エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。これらエステル化合物は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0151】
その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテル、又はエステル化合物が特に好ましい。
【0152】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシ基及びハロゲン原子の総量の1モルに対して、好ましくは0.01〜100モルであり、より好ましくは0.1〜30モルであり、さらに1〜1.5モルであることが好ましい。
【0153】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アンモニア、アルカリ金属化合物等が挙げられる。
【0154】
上記金属キレート化合物としては、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン;テトラキス(アセチルアセトナート)チタン;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン;テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等の2種以上のキレート配位子を含むチタン化合物などのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリル(アセチルアセトナート)ジルコニウム;テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等の2種以上のキレート配位子を含むジルコニウム化合物などのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0155】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪族飽和カルボン酸;マロン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和カルボン酸;サリチル酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;モノクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン含有カルボン酸;クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0156】
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。
【0157】
上記有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0158】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら触媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0159】
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましい。金属キレート化合物としては、チタンキレート化合物がより好ましい。
【0160】
触媒の使用量は、原料シラン化合物100質量部に対して好ましくは0.001質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.001質量部〜1質量部である。
【0161】
触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、又は添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
【0162】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的又は連続的に添加することができる。
【0163】
他のポリオルガノシロキサンの合成の際の反応温度としては、好ましくは0℃〜100℃であり、より好ましくは15℃〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5時間〜24時間であり、より好ましくは1時間〜8時間である。
【0164】
液晶配向剤(A)が、[A]重合体とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して10,000質量部以下であることが好ましい。他の重合体のより好ましい含有量は、他の重合体の種類により異なる。
【0165】
液晶配向剤(A)が、[A]重合体及び[B]重合体を含有する場合における両者の好ましい使用割合としては、[A]重合体100質量部に対して[B]重合体の合計量として100質量部〜5,000質量部が好ましく、200質量部〜3,000質量部がより好ましい。
【0166】
一方、液晶配向剤(A)が、[a]ポリオルガノシロキサン化合物及び他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における両者の好ましい使用割合は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対する他のポリオルガノシロキサンの量として100質量部〜2,000質量部である。
【0167】
液晶配向剤(A)が、[A]重合体とともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体としては、[B]重合体、又は他のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0168】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物の架橋反応をより強固にする目的で上記液晶配向剤に含ませることができる。硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で液晶配向剤(A)に含ませることができる。
【0169】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物、又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸が挙げられる。
【0170】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0171】
シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(6)で表される化合物、ポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物の他、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0172】
【化24】

【0173】
上記式(6)中、xは1〜20の整数である。
【0174】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等を用いることができる。これらの触媒は、加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
【0175】
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;4級リン化合物;4級アミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0176】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から、液晶配向剤(A)に含ませることができる。
【0177】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0178】
液晶配向剤(A)がエポキシ化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の[A]重合体と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜40質量部、より好ましくは0.1質量部〜30質量部である。
【0179】
なお、液晶配向剤(A)がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
【0180】
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、さらに特開昭63−291922号公報に記載されているテトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。
【0181】
液晶配向剤(A)が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の[a]ポリオルガノシロキサン化合物と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0182】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0183】
液晶配向剤(A)が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤(A)の全体100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0184】
<液晶配向剤の調製方法>
液晶配向剤(A)は、上述の通り、[A]重合体を必須成分として含有し、必要に応じて他の成分を含有できるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0185】
液晶配向剤(A)を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、[A]重合体及び任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。液晶配向剤(A)に好ましく使用することのできる有機溶媒は、任意的に添加される他の重合体の種類により異なる。
【0186】
液晶配向剤(A)が、[A]重合体及び[B]重合体を含有する場合における好ましい有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒が挙げられる。このとき、本発明のポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。これら有機溶媒は単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0187】
一方、液晶配向剤(A)が、重合体として[a]ポリオルガノシロキサン化合物のみを含有する場合、又は[a]ポリオルガノシロキサン化合物及び他のポリオルガノシロキサンを含有する場合における好ましい有機溶媒としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。これらのうち、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチルが好ましい。
【0188】
液晶配向剤(A)の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無及びその種類に従って、上記した有機溶媒の1種以上を組み合わせて得ることができる。このような溶媒は、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤(A)に含有される各成分が析出せず、かつ液晶配向剤(A)の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
【0189】
液晶配向剤(A)の固形分濃度、すなわち液晶配向剤(A)中の溶媒以外の全成分の質量が液晶配向剤(A)の全質量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1質量%〜10質量%の範囲である。液晶配向剤(A)は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1質量%以上である場合には、この塗膜の膜厚が過小となりにくくなって良好な液晶配向膜を得ることができる。一方、固形分濃度が10質量%以下の場合には、塗膜の膜厚が過大となることを抑制して良好な液晶配向膜を得ることができ、また、液晶配向剤(A)の粘性が増大することを防止して塗布特性を良好なものとすることができる。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤(A)を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5質量%〜4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3質量%〜9質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12mPa・s〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1質量%〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3mPa・s〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。液晶配向剤(A)を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは0℃〜40℃である。
【実施例】
【0190】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0191】
以下の実施例において得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び[E]ポリオルガノシロキサン化合物の重量平均分子量(Mw)は、下記仕様のGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー製、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
なお、以下の実施例において用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの原料化合物及び重合体の合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。
製造した液晶表示素子について以下の評価を行った。なお、評価結果については表1にまとめて記載する。
【0192】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成>
[合成例1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。合成例1で得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)はMw=2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
【0193】
<特定カルボン酸の合成>
[特定カルボン酸1の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸1を合成した。
【0194】
【化25】

【0195】
[合成例2]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル6.3g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物1を11g得た。
【0196】
[合成例3]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物1を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸1を8g得た。
【0197】
[特定カルボン酸2の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸2を合成した。
【0198】
【化26】

【0199】
[合成例4]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル15g、エチレンカーボネート13.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.5g、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、150℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を酢酸エチル300mL、1N−水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液で分液洗浄した。有機層を抽出した後、更に1N−水酸化ナトリウム水溶液100mL、水100mLの順で分液洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を留去した。得られた固体を真空乾燥後、エタノール100mL/ヘキサン250mLで再結晶することにより、化合物2を13.1g得た。
【0200】
[合成例5]
冷却管、滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに化合物2を12g、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド12.7g、脱水塩化メチレン60mLを加え混合した。氷浴で反応溶液を冷却した状態で、トリエチルアミン6.6gの脱水塩化メチレン10mL溶液を10分かけて滴下した。氷浴状態のまま、30分撹拌し、室温に戻して更に6時間撹拌した。反応溶液にクロロホルム150mLを加え、水100mLで4回分液洗浄を行った。抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を留去した。得られた固体をエタノールで洗浄することで化合物3を16.1g得た。
【0201】
[合成例6]
冷却管を備えた300mLの三口フラスコに化合物3を15g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル11g、炭酸カリウム12.5g、N,N−ジメチルホルムアミド180mLを加え、80℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、エタノールで更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物4を10g得た。
【0202】
[合成例7]
冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、化合物4を9.5g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、テトラヒドロフラン15mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸2を9g得た。
【0203】
[特定カルボン酸3の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸3を合成した。
【0204】
【化27】

【0205】
[合成例8]
合成例2において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを10.7g用いることで化合物5を13.7g得た。
【0206】
[合成例9]
合成例3において、化合物1の代わりに化合物5を13.5g用いることで、特定カルボン酸3を11.2g得た。
【0207】
[特定カルボン酸4の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸4を合成した。
【0208】
【化28】

【0209】
[合成例10]
合成例4において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを25.5g用いることで、化合物6を23.1g得た。
【0210】
[合成例11]
合成例5において化合物2の代わりに化合物6を18.9g用いることで、化合物7を24.1g得た。
【0211】
[合成例12]
合成例6において化合物3の代わりに化合物7を20g用いることで、化合物8を15.4g得た。
【0212】
[合成例13]
合成例7において化合物4の代わりに化合物8を13g用いることで、特定カルボン酸4を11.4g得た。
【0213】
[特定カルボン酸5の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸5を合成した。
【0214】
【化29】

【0215】
[合成例14]
特定カルボン酸1の合成と同様にしてメチレン基の数を10から5へ変更した特定カルボン酸5を15g合成した。
【0216】
[特定カルボン酸6の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸6を合成した。
【0217】
【化30】

【0218】
[合成例15]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル10.1g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物9を10.8g得た。
【0219】
[合成例16]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物9を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸6を6g得た。
【0220】
[特定カルボン酸7の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸7を合成した。
【0221】
【化31】

【0222】
[合成例17]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピル−シクロヘキシル)フェノール)9.1gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸7を5.9g得た。
【0223】
[特定カルボン酸8の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸8を合成した。
【0224】
【化32】

【0225】
[合成例18]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4−プロピル−4”−ヒドロキシターフェニル)12.9gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸8を7.1g得た。
【0226】
[特定カルボン酸9の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸9を合成した。
【0227】
【化33】

【0228】
[合成例19]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルシクロヘキシルメトキシ)フェノール)10.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸9を6.5g得た。
【0229】
[特定カルボン酸10の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸10を合成した。
【0230】
【化34】

【0231】
[合成例20]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4’−(4−プロピルフェニルエチル)ビフェニル)12.6gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸10を7.2g得た。
【0232】
[特定カルボン酸11の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸11を合成した。
【0233】
【化35】

【0234】
[合成例21]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物14.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸11を7.6g得た。
【0235】
[特定カルボン酸12の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸12を合成した。
【0236】
【化36】

【0237】
[合成例22]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、4−[ジフルオロ(4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ]−2,3−ジフルオロフェノール12.5g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水でさらに洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物10を14.8g得た。
【0238】
[合成例23]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物10を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸12を6g得た。
【0239】
<[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成>
[合成例24]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例3で得た特定カルボン酸1を5.0g、上記式(5)で表される化合物として例示した式(5−5)で表される4−オクチルオキシ安息香酸3.3g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−1を白色粉末として14.5g得た。[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−1のMwは6,500であった。
【0240】
[合成例25]
特定カルボン酸1の代わりに合成例7で得た特定カルボン酸2を4g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−2の白色粉末を12.8g得た。A−2のMwは、6,000であった。
【0241】
[合成例26]
特定カルボン酸1の代わりに合成例9で得た特定カルボン酸3を6.8g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−3の白色粉末を14.7g得た。A−3のMwは8,100であった。
【0242】
[合成例27]
特定カルボン酸1の代わりに合成例13で得た特定カルボン酸4を5.6g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−4の白色粉末を15.0g得た。A−4のMwは7,500であった。
【0243】
[合成例28]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例3で得た特定カルボン酸1を10g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−5を白色粉末として16.0g得た。A−5のMwは8,500であった。
【0244】
[合成例29]
特定カルボン酸1の代わりに合成例14で得た特定カルボン酸5を4.1g、4−オクチルオキシ安息香酸の代わりに上記式(5−8)で表される4’−ペンチル−1,1’−ビ(シクロヘキシル)−4−カルボン酸を3.7g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−6の白色粉末を12.4g得た。A−6のMwは6,200であった。
【0245】
[合成例30]
4−オクチルオキシ安息香酸の代わりに上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸を3.6g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−7の白色粉末を13.4g得た。A−7のMwは7,900であった。
【0246】
[合成例31]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例3で得た特定カルボン酸1を8.0g、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸1.4g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−8を白色粉末として13.9g得た。A−8のMwは8,900であった。
【0247】
[合成例32]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例3で得た特定カルボン酸1を2.0g、上記式(5−7)で表される4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸5.8g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−9を白色粉末として13.4g得た。A−9のMwは7,600であった。
【0248】
[合成例33]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例3で得た特定カルボン酸1を8.0g、上記式(5−6)で表されるカルボン酸誘導体2.6g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−10を白色粉末として15.5g得た。A−10のMwは9,200であった。
【0249】
[合成例34]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例16で得た特定カルボン酸6を6.1g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−11の白色粉末を18.4g得た。A−11のMwは7,300であった。
【0250】
[合成例35]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例17で得た特定カルボン酸7を5.7g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−12の白色粉末を17.5g得た。A−12のMwは7,600であった。
【0251】
[合成例36]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例18で得た特定カルボン酸8を7.2g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−13の白色粉末を19.1g得た。A−13のMwは7,000であった。
【0252】
[合成例37]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例19で得た特定カルボン酸9を6.2g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−14の白色粉末を18.1g得た。A−14のMwは6,900であった。
【0253】
[合成例38]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例20で得た特定カルボン酸10を7.0g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−15の白色粉末を19.4g得た。A−15のMwは7,500であった。
【0254】
[合成例39]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例21で得た特定カルボン酸11を8.4g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−16の白色粉末を20.1g得た。A−16のMwは7,300であった。
【0255】
[合成例40]
特定カルボン酸1の代わりに、合成例23で得た特定カルボン酸12を7.2g用いたこと以外は合成例24と同様に操作して[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−17の白色粉末を19.5g得た。A−17のMwは7,300であった。
【0256】
[比較合成例1]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、4−オクチルオキシ安息香酸3.3g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物CA−1を白色粉末として9.6g得た。CA−1のMwは6,000であった。
【0257】
<[B]重合体の合成>
[合成例41]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物 38.32g及びピロメリット酸二無水物12.43g、並びにジアミン化合物としてのp−フェニレンジアミン18.86g及び下記式(G−4)で表されるジアミン30.40gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、4,100mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−1を75.1g得た。
【0258】
【化37】

【0259】
[合成例42]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物23.06g、並びにジアミン化合物としての3,5−ジアミノ安息香酸11.01g、上記式(G−4)で表されるジアミン10.81g及び下記式(G−5)で表されるジアミン5.12gをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,300mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン450gに再溶解させ、ピリジン8.14g及び無水酢酸10.50gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率55%のポリイミドPI−1を30.5g得た。
【0260】
【化38】

【0261】
[合成例43]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物33.92g、並びにジアミン化合物としての3,5−ジアミノ安息香酸4.61g及び下記式(G−6)で表されるジアミン61.46gをN−メチル−2−ピロリドン185gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、50mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−2を63.9g得た。
【0262】
【化39】

【0263】
[合成例44]
テトラカルボン酸二無水物としての1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物37.05g、並びにジアミン化合物としての3,5−ジアミノ安息香酸21.78g、上記式(G−5)で表されるジアミン9.44g及び1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペリジン−4−カルボン酸6.73gをN−メチル−2−ピロリドン425gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、180mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−3を51.5g得た。
【0264】
[合成例45]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物40.68g及びピロメリット酸二無水物4.40g、並びにジアミン化合物としてのp−フェニレンジアミン11.05g、上記式(G−4)で表されるジアミン32.05g及び4,4’−ジアミノ−N−(4−メチルフェニル)ジフェニルアミン11.82gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,450mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−4を71.9g得た。
【0265】
[合成例46]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.47g及びピロメリット酸二無水物2.10g、並びにジアミン化合物としての3,5−ジアミノ安息香酸7.44g、上記式(G−4)で表されるジアミン15.33g及び4,4’−ジアミノ−N−(4−メチルフェニル)ジフェニルアミン5.66gをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,100mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン450gに再溶解させ、ピリジン7.63g及び無水酢酸9.85gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率51%のポリイミドPI−2を34.0g得た。
【0266】
[合成例47]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物28.58g及びピロメリット酸二無水物3.09g、並びにジアミン化合物としての上記式(G−4)で表されるジアミン60.03g及び4,4’−ジアミノ−N−(4−メチルフェニル)ジフェニルアミン8.31gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、900mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−5を68.3g得た。
【0267】
[合成例48]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物48.99g及びピロメリット酸二無水物5.30g、並びにジアミン化合物としての上記式(G−4)で表されるジアミン12.86g、4,4’−ジアミノ−N−(4−メチルフェニル)ジフェニルアミン14.24g及びp−フェニレンジアミン18.62gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,350mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−6を66.0g得た。
【0268】
[合成例49]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物41.34g及びピロメリット酸二無水物2.12g、並びにジアミン化合物としての3,5−ジアミノ安息香酸14.79g、上記式(G−4)で表されるジアミン30.50g及び4,4’−ジアミノ−N−(4−メチルフェニル)ジフェニルアミン11.25gをN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,820mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸PA−7を62.8g得た。
【0269】
[合成例50]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物18.85g、並びにジアミン化合物としての上記式(G−4)で表されるジアミン8.84g及びp−フェニレンアミン7.31gをN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、2,150mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン465gに再溶解させ、ピリジン6.65g及び無水酢酸8.59gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率50%のポリイミドPI−3を23.1g得た。
【0270】
[合成例51]
テトラカルボン酸二無水物としての2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物24.94g、並びにジアミン化合物としての上記式(G−5)で表されるジアミン11.24g及び3,5−ジアミノ安息香酸13.82gをN−メチル−2−ピロリドン200gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、1,400mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てN−メチル−2−ピロリドン450gに再溶解させ、ピリジン13.20g及び無水酢酸17.04gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率69%のポリイミドPI−4を27.8g得た。
【0271】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
[B]重合体として、上記合成例41で得たポリアミック酸PA−1を含有する溶液を、これに含有されるポリアミック酸PA−1に換算して100質量部に相当する量をとり、ここに上記合成例24で得た[a]ポリオルガノシロキサン化合物A−1を10質量部加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン及びブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤S−1を調製した。
【0272】
<電圧保持率(VHR)及び耐光性評価用の液晶表示素子の製造>
VHR及び耐光性評価には下記のようにして作製した液晶セルを評価に用いた。
上記調製した液晶配向剤S−1を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、ホットプレートで80℃1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、もう一対の基板の液晶配向膜面を、対向させて重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙にポジ型液晶(メルク製、ZLI−5081)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
さらに、作成した液晶セル基板の外側両面に、偏光板を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を製造した。
【0273】
<垂直配向性及び液晶応答速度評価用の液晶表示素子の製造>
垂直配向性及び液晶応答速度は下記のようにして作製した液晶セルを評価に用いた。
ITO電極が櫛歯状にパターニングされたガラス基板のITO電極側の一面と、電極が設けられていない対向ガラス基板の一面とのそれぞれの面に、上記調製した液晶配向剤S−1をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレートで80℃1分間プレベークを行った後、装置内を窒素置換したオーブン中で200℃で1時間加熱(ポストベーク)して膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。
上記基板のうちITO電極が設けられていない対向ガラス基板の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、ITO電極が櫛歯状にパターニングされたガラス基板の液晶配向膜面を対向させて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、メルク製ポジ型液晶(ZLI−5081)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱してから室温まで徐冷した。次に作成した液晶セル基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0274】
[実施例2〜26及び比較例1〜4]
[B]重合体及び[a]ポリオルガノシロキサン化合物の組み合わせを表1に記載の配合比に変更した以外は実施例1と同様にして種々の液晶配向剤S−2〜S−26及びCS−1〜CS−4を調製した。表1中の「−」は該当する成分を用いなかったことを示す。また、調製したそれぞれの液晶配向剤を用い、実施例1と同様にして実施例2〜26及び比較例1〜4の液晶表示素子を製造した。
【0275】
<評価>
上記製造した液晶表示素子について以下の評価を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0276】
[垂直配向性]
上記製造した液晶表示素子を、光学顕微鏡を用いて観察した。このとき、光漏れがないものを垂直配向性が「○」と、光漏れが認められるものを垂直配向性が「×」として評価した。
【0277】
[電圧保持率(VHR(%))]
上記製造した液晶表示素子に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
【0278】
[応答速度(立ち上がり時の電気光学応答性)]
偏光顕微鏡、光検出器、及びパルス発生機を含む装置で液晶応答の立ち上がりの時間を測定した。ここで液晶応答速度は、製造した液晶表示素子に電圧無印加状態から4Vの電圧を最大1秒間印加した際に、透過率10%から透過率90%に変化するのに要した時間(単位:ミリ秒(msec.))と定義して評価を行った。
【0279】
[耐光性]
カーボンアークを光源とするウェザーメーターで3,000時間照射後のVHRを上記同様にして測定し(5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定。測定装置は東陽テクニカ製VHR−1を使用)、照射前の測定値と比べてVHR変化量が1%以下のものを「○」と、1%を超え3%未満のものを「△」と、3%以上のものを「×」として評価した。
【0280】
【表1】

【0281】
表1の結果から明らかなように、実施例の液晶表示素子は、電圧保持率、耐光性等の一般的要求特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短いポジ型液晶を用いた垂直配向液晶表示素子とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0282】
本発明によれば、電圧保持率、耐光性等の一般的要求特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短いポジ型液晶を用いた垂直配向液晶素子が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される一対の基板と、
上記両基板間に配設される液晶層と、
上記液晶層の両面に配設される一対の液晶配向膜と、
上記一対の基板の少なくとも一方に配設される横電界発生用の電極と
を備え、
上記液晶層がポジ型液晶を含有し、かつ
上記液晶配向膜が、
[A]下記式(A1)で表される基を有する重合体
を含有する液晶配向剤から形成される液晶表示素子。
【化1】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【請求項2】
上記液晶配向膜が垂直液晶配向膜である請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
上記式(A1)におけるRが、下記式(A2)で表される請求項1又は請求項2に記載の液晶表示素子。
【化2】

(式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
[A]重合体が、ポリオルガノシロキサン構造を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
上記液晶配向剤が、[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
[B]重合体が、コレスタニル基含有ジアミン、コレステニル基含有ジアミン又は下記式(A−1)で表されるジアミンを用いて得られる請求項5に記載の液晶表示素子。
【化3】

(式(A−1)中、X及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。Rはメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基である。αは0又は1である。βは0〜2の整数である。但しα及びβが同時に0になる場合はない。γは1〜20の整数である。)
【請求項7】
横電界方式液晶表示素子のポジ型液晶用配向剤であって、
[A]下記式(A1)で表される基を有する重合体
を含有することを特徴とする配向剤。
【化4】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)

【公開番号】特開2012−159827(P2012−159827A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254443(P2011−254443)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】