説明

液晶表示素子

【課題】表示性能が良好で低電圧駆動が可能、高速応答性を有しかつ簡便に作製できる液晶表示素子を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の二色性色素と少なくとも1種のホスト液晶とを含有する液晶層、及び電界の作用により表面の親疎水性が変化する基板の少なくとも1つを有し、基板が、その表面に、電極層及び該電極層上に形成された少なくとも1種の単分子膜を有し、単分子膜が、末端にイオン性基を有する少なくとも1種の分子から形成された単分子膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子(液晶表示素子)については多くの方式が提案されており、中でもゲストホスト方式の液晶素子は、明るい表示が可能であって、反射型に適した液晶素子として期待されている。ゲストホスト方式の液晶素子では、ネマチック液晶中に2色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封入し、これに電場を与え、電場による液晶の動きに合わせて、2色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることによって表示する方式である。このゲストホスト方式の液晶素子では、従来の液晶表示方式と比較して、偏光板を用いない駆動方式が可能であるため、より明るい表示が期待されている。
【0003】
ゲストホスト方式の駆動方式は、通常、一対の電極の間に二色性色素とホスト液晶を含む液晶層をはさんだ構造において、電極間に電圧を印加させることで、そのホスト液晶の配向を制御して、透明状態と着色状態とを可逆的に変化させる方式が一般的である。ホスト液晶の配向状態としては、電極基板に対して水平状態か垂直状態かという2つが挙げられる。この2状態を安定的に作り出すために、電極表面上に液晶の配向状態を制御する機能を有する膜(配向膜)を付設する。配向膜としてポリイミド膜が用いられている。
【0004】
しかしながら、配向膜を用いた液晶の配列制御方法では、たとえば、水平配向膜を用いて電圧無印加でホスト液晶を水平状態に、電圧印加時にホスト液晶を垂直状態に変える方式では、電圧印加時においても水平配向膜近傍のホスト液晶は完全に垂直に配向しない。このため、二色性色素を組み合わせたゲストホスト方式では、水平配向膜近傍の不完全な配向状態の二色性色素が表示性能を悪化させるという課題がある。
【0005】
電界の作用により基板表面の親疎水生が可逆的に変化させる技術が報告されている(非特許文献1)。この報告では、イオン性基が末端に連結した単分子膜が金電極上に形成された基板が開示されている。
【非特許文献1】Science、第299巻、第371頁、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、良好な表示性能(視認性、表示コントラスト)を有するとともに、高速応答能を有し、簡便に作製可能であり、さらに低電圧駆動が可能な液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意努力したところ、液晶の配向を制御する材料として、電界の存在により表面の親疎水性が可逆的に変化する基板を用いることにより、ホスト液晶の基板表面における配向状態を制御可能であるとの知見を得、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0009】
(1) 少なくとも1種の二色性色素と少なくとも1種のホスト液晶とを含有する液晶層、及び電界の作用により表面の親疎水性が変化する基板の少なくとも1つを有する液晶表示素子。
(2) 前記基板が、その表面に、電極層及び該電極層上に形成された少なくとも1種の単分子膜を有する(1)の液晶表示素子。
(3) 前記単分子膜が、末端にイオン性基を有する少なくとも1種の分子から形成された単分子膜である請求項2に記載の液晶表示素子。
(4) 前記電極層が金電極層であり、かつ前記単分子膜が、末端にチオール基を有する少なくとも1種の分子から形成された単分子膜である(2)又は(3)の液晶表示素子。
(5) 前記二色性色素が、下記一般式(1)で表される置換基を有することを特徴とする(1)〜(4)いずれかの液晶表示素子。
一般式(1)
−(Het)j−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1
(式中、Hetは酸素原子または硫黄原子であり、B1およびB2は各々2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基またはアシルオキシ基を表し、jは0または1を表し、p、q、rは各々0〜5の数を表し、nは1〜3の数を表し、B1およびB2の個数の和が3以上10以下の数であり、p、qおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2は各々同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1p−(Q1q−(B2r}は同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
(6) 前記二色性色素が、下記一般式(2)で表される化合物である(1)〜(5)いずれかの液晶表示素子。
【0011】
【化1】

1は−S−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基である。ここで、Sは硫黄原子であり、B1、B2、Q1、p、q、r、nは、上記(5)の一般式(1)中のそれぞれと同定義である。R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々水素原子または置換基である。
【0012】
(7) 前記二色性色素が、下記一般式(3)で表される化合物である(1)〜(5)いずれかの液晶表示素子。
【0013】
【化2】

式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は各々水素原子または置換基であるが、少なくとも一つ以上は、−S−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基である。ここで、Sは硫黄原子であり、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、上記(5)中に記載の一般式(1)中のそれぞれと同定義である。
【0014】
(8) 前記ホスト液晶が、ネマチック液晶であることを特徴とする(1)〜(7)いずれかの液晶表示素子。
(9) 前記液晶層が、さらにカイラル剤を含有することを特徴とする(1)〜(8)いずれかの液晶表示素子。
(10) 前記ホスト液晶の誘電率異方性の絶対値が0〜0.1である(1)〜(9)いずれかの液晶表示素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、良好な表示性能(視認性、表示コントラスト)を有するとともに、速い応答速度を示し、簡便に作製可能であり、低電圧駆動可能な液晶表示素子を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶表示素子は、少なくとも1種の二色性色素と少なくとも1種のホスト液晶とを含有する液晶層と、電界の作用により表面の親疎水性が変化する基板の少なくとも1つを有する。
【0017】
本明細書において、二色性色素は、ホスト液晶中に溶解し、光を吸収する機能を有する化合物と定義される。本発明に用いられる二色性色素としては、吸収極大ならびに吸収帯に関しては、いかなるものであってもよいが、イエロー域(Y)、マゼンタ域(M)、あるいはシアン域(C)に吸収極大を有する化合物が好ましい。また、二色性色素は2種類以上を用いてもよく、Y、M、Cに吸収極大を有する二色性色素の混合物を用いるのが好ましい。イエロー色素、マゼンタ色素ならびにシアン色素を混合することによるフルカラー化表示を行う方法については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に詳しい。ここでいう、イエロー域とは、430〜490nmの範囲、マゼンタ域とは、500〜580nmの範囲、シアン域とは600〜700nmの範囲である。
【0018】
本発明に用いられる二色性色素に用いられる発色団について説明する。前記二色性色素の発色団はいかなるものであってもよいが、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素、フェノキサジン色素などが挙げられる。好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素、フェノキサジン色素であり、特に好ましくはアントラキノン色素、フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)である。
【0019】
アゾ色素はモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいかなるものであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。
アゾ色素に含まれる環構造としては芳香族基(ベンゼン環、ナフタレン環など)のほかにも複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)であってもよい。
【0020】
アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0021】
フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)の置換基としては、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。
【0022】
本発明に用いられる二色性色素は、下記一般式(1)で表される置換基を有する化合物であることが好ましい。
一般式(1)
−(Het)j−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1
式中、Hetは酸素原子または硫黄原子であり、B1およびB2は各々2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基を表す。jは0または1を表し、p、q、rは各々0〜5までの数を表し、nは1〜3までの数を表し、B1およびB2の個数の和が3以上10以下の数である。p、qおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2は各々同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1p−(Q1q−(B2r}は同一でも異なっていてもよい。
【0023】
Hetは酸素原子または硫黄原子であり、特に好ましくは硫黄原子である。
1およびB2は各々2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表す。B1およびB2が表す2価のアリーレン基、ヘテロアリールレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基には、置換基を有する2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基も含むものとする。
【0024】
2価のアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基であり、好ましいアリーレン基の具体例を挙げると、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環の基である。特に好ましくは、ベンゼン環、置換ベンゼン環の基であり、さらに好ましくは1、4−フェニレン基である。B1およびB2の表す2価のヘテロアリーレン基としては、好ましくは炭素数1〜20のヘテロアリーレン基であり、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環及びトリアゾール環の基、およびこれらが縮環して形成される縮環ヘテロアリーレン基である。B1およびB2の表す2価の環状炭化水素基としては、好ましくは、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロペンタンー1,3−ジイル基であり、特に好ましくは、(E)−シクロヘキサン−1、4−ジイル基である。
【0025】
1およびB2の表す2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基及び2価の環状炭化水素基は、さらに置換基を有していてもよく、置換基としては、下記の置換基群Vが挙げられる。
置換基群V:
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカルボニル)、炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルフォニル)、ニトロ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、エタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8の置換または無置換のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、4−メチルフェニルアミノ、4−エチルフェニルアミノ、3−n−プロピルフェニルアミノ、4−n−プロピルフェニルアミノ、3−n−ブチルフェニルアミノ、4−n−ブチルフェニルアミノ、3−n−ペンチルフェニルアミノ、4−n−ペンチルフェニルアミノ、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ、2−ピリジルアミノ、3−ピリジルアミノ、2−チアゾリルアミノ、2−オキサゾリルアミノ、N,N−メチルフェニルアミノ、N,N−エチルフェニルアミノ)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ)、炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、2−ピリジルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ)、炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ、3−ピリジルチオ、4−ピリジルチオ、2−キノリルチオ、2−フリルチオ、2−ピロリルチオ)、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする}、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換又は無置換のヘテロアリール基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)。
これら置換基群Vはベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造もとることができる。さらに、これらの置換基上にさらに此処までに説明したVの説明で示した置換基が置換していてもよい。
【0026】
置換基群Vとして好ましいものは、上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
【0027】
1は2価の連結基を表す。好ましくは、炭素原子、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子から構成される原子団からなる連結基である。Q1が表す2価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、シクロヘキシルー1,4−ジイル)、炭素数2〜20のアルケニレン基(例えば、エテニレン)、炭素数2〜20のアルキニレン基(例えば、エチニレン)、アミド基、エーテル基、エルテル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子またはアルキル基、アリール基をあらわす)、アゾ基、アゾキシ基、複素環2価基(例えば、ピペラジン−1,4−ジイル基)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。Q1の表す2価の連結基として、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、エルテル基、カルボニル基、およびそれらを組み合わせた基である。Q1はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては上記置換基群Vが挙げられる。
【0028】
1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基またはアシルオキシ基を表す。C1が表すアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基またはアシルオキシ基には、置換基を有するそれぞれの基も含むものとする。C1は好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルおよびシクロアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、ペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、4−エチルシクロヘキシル、4−プロピルシクロヘキシル、4−ブチルシクロヘキシル、4−ペンチルシクロヘキシル、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル)、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアシル基(例えばアセチル、ホルミル基、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、又は炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ベンジルオキシカルボニル)を表す。C1は特に好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基であり、さらに好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又はトリフルオロメトキシ基である。C1はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては上記置換基群Vが挙げられる。
【0029】
jは0または1を表し、好ましくは0である。
p、q及びrは各々0〜5の数を表し、nは1〜3の数を表し、B1およびB2の個数の和が3以上10以下の数である。なお、p、q、r及びnが2以上の場合、その繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよい。好ましいp、q、r及びnの組合せを以下に記す。
(i) p=3、q=0、r=0、n=1
(ii) p=4、q=0、r=0、n=1
(iii) p=5、q=0、r=0、n=1
(iv) p=2、q=0、r=1、n=1
(v) p=2、q=1、r=1、n=1
(vi) p=1、q=1、r=2、n=1
(vii) p=3、q=1、r=1、n=1
(viii) p=2、q=0、r=2、n=1
(ix) p=1、q=1、r=1、n=2
(x) p=2、q=1、r=1、n=2
【0030】
特に好ましくは、(i)p=3、q=0、r=0、n=1;(iv)p=2、q=0、r=1、n=1;及び(v)p=2、q=1、r=1、n=1;の組合せである。
【0031】
なお、−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1としては、液晶性を示す部分構造を含むことが好ましい。ここでいう液晶とは、いかなるフェーズであってもよいが、好ましくはネマチック液晶、スメクチック液晶、ディスコティック液晶であり、特に好ましくは、ネマチック液晶である。
【0032】
−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1の具体例を以下に示すが、 −{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1の例はこれに限定されるものではない(図中、波線は連結位置を表す)。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
本発明に用いられる二色性色素としては、−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基を1以上有する化合物が好ましく、1〜8有する化合物がより好ましく、1〜4有する化合物がさらに好ましく、特に好ましくは1または2有する化合物である。
【0036】
前記一般式(1)で表される置換基の好ましい構造は、Hetが硫黄原子であり、B1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、B2がシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、C1がアルキル基を表し、j=1、p=2、q=0、r=1およびn=1を表す構造;およびHetが硫黄原子であり、B1がアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、B2がシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、C1がアルキル基を表し、j=1、p=1、q=0、r=2およびn=1を表す構造;である。特に好ましい構造は、Hetが硫黄原子を表し、B1が1,4−フェニレン基を表し、B2がトランス−シクロヘキシル基を表し、C1がアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基)を表し、j=1、p=2、q=0、r=1およびn=1である下記一般式(a−1)で表される構造;およびHetが硫黄原子を表し、B1が1,4−フェニレン基を表し、B2がトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、C1がアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基)を表し、j=1、p=1、q=0、r=2およびn=1である下記一般式(a−2)で表される構造;である。
【0037】
【化5】

【0038】
前記一般式(a−1)および(a−2)中、Ra1〜Ra12は各々独立して、水素原子または置換基を表す。該置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれる置換基が挙げられる。Ra1〜Ra12はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であるのが好ましい。
前記一般式(a−1)および(a−2)中、Ca1およびCa2は各々独立してアルキル基を表し、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基を表す。
【0039】
なお、本発明に用いられる二色性色素としては、下記一般式(2)または(3)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化6】

【0041】
式中、R1は−S−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基である。ここで、Sは硫黄原子であり、B1、B2、Q1、p、q、r、nは上述のものと同定義である。R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々水素原子または置換基である。
【0042】
【化7】

式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は各々水素原子または置換基であるが、少なくとも一つ以上は、−S−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基である。ここで、Sは硫黄原子であり、B1、B2、Q1、p、q、r、nは、[2]中に記載の一般式(1)中のそれぞれと同定義である。
【0043】
2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8で表される置換基としては、上記置換基群Vが挙げられるが、好ましくは、炭素数6〜80、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、4−エチルフェニルチオ、4−n−プロピルフェニルチオ、2−n−ブチルフェニルチオ、3−n−ブチルフェニルチオ、4−n−ブチルフェニルチオ、2−t−ブチルフェニルチオ、3−t−ブチルフェニルチオ、4−t−ブチルフェニルチオ、3−n−ペンチルフェニルチオ、4−n−ペンチルフェニルチオ、4−アミルペンチルフェニルチオ、4−ヘキシルフェニルチオ、4−ヘプチルフェニルチオ、4−オクチルフェニルチオ、4−トリフルオロメチルフェニルチオ、3−トリフルオロメチルフェニルチオ、2−ピリジルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ)、炭素数1〜80、より好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ、3−ピリジルチオ、4−ピリジルチオ、2−キノリルチオ、2−フリルチオ、2−ピロリルチオ)、置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、フェネチルチオ)、置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、4−メチルフェニルアミノ、4−エチルフェニルアミノ、3−n−プロピルフェニルアミノ、4−n−プロピルフェニルアミノ、3−n−ブチルフェニルアミノ、4−n−ブチルフェニルアミノ、3−n−ペンチルフェニルアミノ、4−n−ペンチルフェニルアミノ、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ、2−ピリジルアミノ、3−ピリジルアミノ、2−チアゾリルアミノ、2−オキサゾリルアミノ、N,N−メチルフェニルアミノ、N,N−エチルフェニルアミノ)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、置換もしくは無置換のアルキル基(例えば、メチル、トリフルオロメチル)、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、トリフルオロメトキシ)、置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル)、置換もしくは無置換のヘテロアリール基(例えば、2−ピリジル)、置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ基(例えば、3−チエニルオキシ)などである。
【0044】
2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8として好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換もしくは無置換の、アリールチオ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリーロキシ基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、置換もしくは無置換の、アリールチオ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基又はアリールアミノ基である。
【0045】
11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミド基であり、特に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリールチオ基、アミド基である。
【0046】
16として、好ましくはアミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ基を含む)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基であり、特に好ましくはアミノ基である。
【0047】
以下に、本発明に使用可能な二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
以下に本発明に使用可能なジオキサジン系二色性色素ならびにメロシアニン系二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
【化12】

【0054】
前記一般式(1)で表される置換基を有する二色性色素は、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、特開2003−192664号公報等の記載の方法に従い合成することができる。
【0055】
本発明の液晶組成物に使用可能なホスト液晶は、上述の二色性色素と共存し得るものであれば特に制限はないが、たとえば、ネマチック相あるいはスメクチック相を示す液晶化合物が利用できる。その具体例としては、アゾメチン化合物、アルキル置換ビフェニル化合物、アルコキシ置換ビフェニル化合物、フェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、アルキル置換フェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁および第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。本発明に用いられるホスト液晶としては、ネマチック液晶が好ましい。
【0056】
本発明に用いるホスト液晶の誘電率異方性は、正であっても負であってもよいが、絶対値が小さいほうが好ましく、その絶対値が0〜0.1までの範囲がより好ましい。これは本発明の液晶表示素子においては電界の作用により基板表面の親疎水性が変化することで液晶の配向を制御しているため、ホスト液晶の誘電率異方性の絶対値が小さいほうが、基板表面の親水性による配向力と液晶自身の誘電率異方性に基づいた配向力とが打ち消しあうように働いた場合にも、所望の配列状態をとり易くなるからである。
【0057】
本発明に用いるホスト液晶の屈折率異方性の絶対値は小さいほうが好ましく、0〜0.1の範囲がより好ましい。これは、本発明においてカイラル剤を組み合わせたカイラルネマチック液晶を利用した場合、屈折率異方性の絶対値が小さいホスト液晶を用いると、ウエーブガイドによる光漏れが生じず、結果として表示性能がより改善されるので好ましい。
【0058】
本発明の液晶表示素子における液晶層には、ホスト液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば、液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、カイラル化合物(「カイラル剤」ともいう)、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。そのような添加剤は、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。本発明の液晶表示素子における液晶層には、カイラル化合物を添加することが好ましい。
【0059】
本発明の液晶素子におけるホスト液晶および二色性色素の含有量については特に制限はないが、二色性色素の含有量はホスト液晶の含有量に対して0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜6質量%であることが特に好ましい。ホスト液晶および二色性色素の含有量は、双方を含む液晶組成物を調製し、その液晶組成物を封入した液晶セルの吸収スペクトルをそれぞれ測定して、液晶セルとして所望の光学濃度を示すのに必要な色素濃度を決定することが望ましい。
【0060】
本発明の液晶表示素子に用いられる基板は、表面の親疎水性が電界により可逆的に変化することを特徴とする。なお、本明細書において、「電界の作用により表面の親疎水性が可逆的に変化する」とは、電界の作用により、表面の親疎水性の程度が可逆的に変化することをいい、一方が完全に親水性で他方が完全に疎水性であることを要求するものではなく、2つの状態で親疎水性の程度が異なっていればよい。表面の親疎水性は、電界の存在・非存在に応じて可逆的に変化してもよいし、電界の向きに応じて可逆的に変化してもよい。例えば、基板に+の電圧を印加すると、基板表面の親水性が高くなり、基板に−の電圧を印加すると基板表面の疎水性が高くなってもよい。また、その逆であってもよい。また、本発明の液晶表示素子が、液晶層を挟持する一対の基板を有する場合は、少なくとも一方が、電界の作用により表面の親疎水性が可逆的に変化する基板であればよい。双方がかかる性質を有する基板であってもよい。
【0061】
前記基板は、電極機能を有するものが好ましく、通常、ガラス板やプラスチックフィルムの表面に電極層を有する基板が用いられる。プラスチックフィルムとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、PESあるいはPENなどのフィルムが挙げられる。基板については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第218〜231頁に記載のものを用いることができる。
【0062】
基板の表面に形成される電極層については特に限定されないが、金電極あるいは透明電極が好ましい。透明電極としては、たとえば、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどが挙げられる。透明電極については、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものが用いられる。
なお、支持体として金属板等を用いた場合は、金属板そのものが電極機能を有するので、かかる場合は、別途電極層を形成しなくてもよい。
【0063】
前記基板は、その表面に、電極層及びその上に少なくとも1種の単分子膜を有しているのが好ましい。
前記単分子膜の種類は特に限定されないが、イオン性基を含む分子からなるのが好ましく、末端にイオン性基を有する分子からなるのが好ましい。イオン性基は、アニオン性であってもカチオン性であってもよい。具体的には、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、アンモニウム基、ピリジニウム基などがあげられる。イオン性基として好ましくはカルボキシ基である。
【0064】
親疎水性の変化を大きくするためには、前記単分子膜を構成する分子が、末端がイオン性基で置換された疎水性基を有しているのが好ましい。疎水性基としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状および環状アルキル基ならびに芳香族炭化水素基などをあげることができるが、鎖状アルキル基が好ましい。好ましい鎖状アルキル基としては、炭素数5〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアルキル基、又は該アルキル基における任意の位置(イオン性基が置換する位置は除く)の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素系アルキル基などが挙げられる。
【0065】
また、前記単分子膜を構成する分子は、電極を構成している材料と親和性の高い及び/又は結合可能な基を末端に有しているのが好ましい。該基は、用いる電極の種類に応じて選択される。例えば、金電極層の表面に単分子膜を形成する場合は、末端にチオール基(−SH)を有する分子を用いて、チオール基と金との親和性により及び/又はスルフィド結合(−S−)により分子を固定するのが好ましい。また、ITO電極を用いる場合は、シランカップリング剤との反応等によって、分子を固定するのが好ましい。
【0066】
上記単分子膜は、イオン性基を有する化合物を用いて、従来公知の種々の単分子膜の形成方法を利用して形成することができる。該イオン性基を適当な嵩高さを有する保護基で保護した化合物を用いて、単分子膜を構成する分子間の間隔を調節してもよい。該保護基としては、クロロフェニルジフェニルメチル基などを用いることができる。該保護基は、単分子膜が形成された後、一般的な方法で除去される。前記のイオン性基を有する化合物としては、イオン性基末端とは別の末端にチオール基あるいはシランカップリング剤が結合した化合物が好ましい。上記した様に、末端にチオール基が結合した化合物を用いる場合には、金電極の表面に単分子膜を形成するのが好ましく、末端にシランカップリング剤が結合した化合物を用いる場合には、透明電極であるITO電極の表面に単分子膜を形成させることが好ましい。
【0067】
以下、図1、図2、図3を用いて、電界により親疎水性が変化する機構について説明する。図1は、電極として金電極を用いる場合の、単分子膜の作製方法を示す図である。
【0068】
まず、金で構成された第一電極201と、一端にクロロフェニルジフェニルメタンエステル基411を有する、フッ素置換されたアルキル鎖412を有するアルカンチオールのエタノール溶液を用意する(図1のステップS1)。
【0069】
続いて、第一電極201をアルカンチオールのエタノール溶液に浸漬させて、複数の分子が、クロロフェニルジフェニルメタンエステル基411が第1電極201から遠い側にくるように、第1電極201表面に1つずつ並んで結合された単分子膜400を形成する(図1のステップS2)。
【0070】
さらに、単分子膜400が形成された第1電極201を、トリフルオロ酢酸のエタノール溶液に浸漬させてクロロフェニルジフェニルメチル基を除去し、アルキル鎖412の、第1の電極201と結合された側とは逆側の端にカルボキシ基414を有する単分子膜206aを形成する(図1のステップS3)。クロロフェニルジフェニルメチル基が除去された分子413’は、本明細書における単分子膜の分子の一例に相当する。フッ素置換されたアルキル鎖412は疎水基の疎水部分の一例にあたるフッ素系アルキレン基に相当する。また、カルボキシ基414は上述のイオン性基の一例であり、親水部にあたる。このようにして形成された単分子膜206aが用いられる。
【0071】
図2は、電圧が印加されたときの単分子膜206aを示す図である。
第1電極201と、第2電極(不図示)との間に電圧が印加され、図2(A)に示すように、第1電極201にマイナス電荷201aを印加させた場合、マイナスに帯電したカルボキシ基414と第1電極201のマイナス電荷201aとが反撥しあい、カルボキシ基414は、第1電極201から遠い側に移動する。この結果、単分子膜206aの表面(第1電極201と接触している側と逆の面)が親水性を有するカルボキシ基414で覆われ、単分子膜206aの表面が親水性になる。
【0072】
また、第1電極201と、第2電極との間に上記とは逆方向の電圧が印加され、図2(B)に示すように、第1電極201にプラス電荷201bが集まると、マイナスに帯電したカルボキシ基414が第1電極201のプラス電荷201bに引き寄せられ、アルキル鎖412が折れ曲がってカルボキシ基414が第1電極201に接触する。この結果、単分子膜206aの表面が疎水性を有するアルキル鎖412に覆われ、単分子膜206aの表面が疎水性になる。
【0073】
このように、単分子膜206は、電圧の印加に応じて親疎水性が変化する。
上述のように、単分子膜206aを生成する過程で、クロロフェニルジフェニルメタンエステル基411を有する分子413が用いられ、その後該クロロフェニルジフェニルメチル基を除去しているため、単分子膜206aにおいては構成する分子413’同士の間隔が空いている。このように分子413’同士の間隔を空けることによって、図2(B)に示すように、単分子膜206に疎水性を付与する際にアルキル鎖412が曲がりやすくなり、単分子膜206aの電圧印加による親疎水性の変化幅が向上する。また、第1電極201aとして金電極が用いられ、その金電極とアルカンチオール410とが反応させられることによって、第1電極201aと強固に結合した単分子膜206aが形成され、液晶表示素子の耐久性が向上する。
【0074】
続いて、第1電極201として、金電極の替わりにインジウム−スズ−オキサイド電極(ITO電極)を用いる場合の単分子膜の作製方法について説明する。
【0075】
図3は、ITO電極上に形成された単分子膜206を示す図である。
まず、ITO電極201’を、クロロフェニルジフェニルメタンエステル基を末端に有しフッ素置換されたアルキル鎖412を有するシランカップリング剤のエタノール溶液に浸漬させて、ITO電極201’上に、クロロフェニルジフェニルメタンエステル基を末端に有する単分子膜を形成する。
【0076】
次に、ITO電極201’をトリフルオロ酢酸のエタノール溶液に浸漬させて、クロロフェニルジフェニルメチル基を除去し、末端にカルボキシ基414を有する単分子膜206bを得る。このようなITO電極201’と単分子膜206bとが適用されることによって、透明な第1電極201と単分子膜206が形成される。
【0077】
本発明の液晶の配列制御方法について説明する。液晶分子は、一般的に親水的な表面と接すると、基板に対して水平に、また、疎水的な表面と接すると基板に対して垂直に配向する。この性質を利用することにより、本発明の液晶素子においては、基板表面の親疎水性を可逆的に変化させることで、液晶分子の配列状態を可逆的に変化させることができる。なお、本明細書において、基板の表面とは、液晶表示素子において、液晶層に接する面を意味する。電界の供与又は非供与基板表面を親水的にした場合には液晶分子が水平に配向するのを促進し、基板表面を疎水的にした場合には液晶分子が垂直に配向するのを促進する。
【0078】
本発明の表示素子は、例えば、一対の基板をスペーサーなどを介して、1〜50μm間隔で対向させ、基板間に形成された空間に液晶組成物を配置することにより作製することができる。一対の基板のうち、少なくとも一方に、電界の作用により表面の親疎水性が変化する基板を用いる。前記スペーサーについては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。液晶組成物は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
【0079】
本発明の液晶表示素子は、デジタル画像を一時的に表示させる表示材料、書換え可能な表示媒体としてポイントカード、一時的にだけ用いる資料、画像を表示する媒体として好適に利用することができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0081】
(実施例1)
<表示素子の作製>
1.二色性色素および液晶の調製
二色性色素(1−2)及び(1−8)は、特開2003−192664号号公報に記載の方法に従い合成した。二色性色素(1−13)は、特開2005−120334号公報に記載の方法に従い、合成した。二色性色素(1−14)は、特開2005−120334号公報に記載の方法に従い合成した。ホスト液晶であるネマチック液晶(1)は文献記載の方法に従い調製した(Mol.Cryst.Liq.Cryst.第138巻、第231〜244頁、1986年)。カイラル剤R−811は市販品(アルドリッチ製)を用いた。次に、下表1に示した組合せの二色性色素(1.0質量%)およびカイラル剤R−811(1.2質量%)とをネマチック液晶(ホスト液晶(1))1.0g中に加熱して溶解させた後、室温下1日放置させた。なお、ホスト液晶(1)の誘電率異方性Δεは、0.1であった。ホスト液晶(1)の屈折率異方性Δnは0.10であった。
【0082】
【化13】

【0083】
2.基板の作製
末端にクロロフェニルジフェニルメタンエステル基を有するアルカンチオール化合物(2)は文献記載の方法に従い合成した(Science,第299巻,第371頁、2003年)。
【0084】
【化14】

【0085】
化合物(2)のエタノール溶液中に、金電極が付設されたガラス基板を室温1時間、浸漬させて、金電極表面にチオール化合物を結合させた。次に、該基板を、トリフルオロ酢酸40%エタノール溶液に浸漬させて、クロロフェニルジフェニルメタンを脱保護させた。この基板とガラス基板とを用いて、厚み10μmのスペーサーで図4に示す構成の素子を組み立てた。即ち、ガラス基板10と前記作製した基板を対向配置させ、基板間に調製した液晶組成物を注入して液晶層16を形成した。作製した基板は、ガラス基板10の一方の表面に、金電極12及び単分子膜14を有するもので、単分子膜14側を内側にして配置した。その後、光硬化型シール剤(積水化学製)にて封止した。
【0086】
【表1】

【0087】
3.評価
得られた本発明の表示素子(1)に対して、信号発生器(岩通製)を用いて金電極上がマイナスとなるように電圧(50mV)を印加させて、表示素子を観察したところマゼンタ色に着色していることが確認された。次に、金電極上がプラスとなるように電圧(50mV)を印加させて、表示素子を観察したところマゼンタ色の着色が瞬時に消えて金電極の色が観察された。すなわち、電界の作用により、可逆的に着色状態と透明状態を制御することが可能であることが確認された。
次に、本発明の表示素子(2)および(3)について、同様の評価を行ったところ、同様に、表示素子(2)の場合にはシアン色に、表示素子(1)の場合にはイエロー色に可逆的に変化することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の表示素子は、低電圧による駆動が可能であり、応答速度が速く、かつ、簡便に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】電極として金電極を用いる場合の、単分子膜の作製方法の一例の流れの概略を示す模式図である。
【図2】電圧が印加されたときの単分子膜206a中の分子の様子の一例を概略的に示す模式図である。
【図3】ITO電極上に形成された単分子膜206の一例を概略的に示す模式図である。
【図4】実施例で作製した液晶表示素子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 ガラス基板
12 金電極
14 単分子膜
16 液晶層
201 第一電極
201’ ITO電極
206a、400 単分子膜
410 アルカンチオール
411 クロロフェニルジフェニルメタンエステル基
412 フッ素置換されたアルキル鎖
413 クロロフェニルジフェニルメタンエステル基を有する分子
413’ クロロフェニルジフェニルメタンエステル基が除去された分子
414 カルボキシ基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の二色性色素と少なくとも1種のホスト液晶とを含有する液晶層、及び電界の作用により表面の親疎水性が変化する基板の少なくとも1つを有する液晶表示素子。
【請求項2】
前記基板が、その表面に、電極層及び該電極層上に形成された少なくとも1種の単分子膜を有する請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記単分子膜が、末端にイオン性基を有する少なくとも1種の分子から形成された単分子膜である請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記電極層が金電極層であり、かつ前記単分子膜が、末端にチオール基を有する少なくとも1種の分子から形成された単分子膜である請求項2又は3に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記二色性色素が、下記一般式(1)で表される置換基を有する化合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
一般式(1)
−(Het)j−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1
(式中、Hetは酸素原子または硫黄原子であり、B1およびB2は各々2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基または2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基またはアシルオキシ基を表し、jは0または1を表し、p、q、rは各々0〜5の数を表し、nは1〜3の数を表し、B1およびB2の個数の和が3以上10以下の数であり、p、qおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2は各々同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1p−(Q1q−(B2r}は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記二色性色素が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化1】

1は−S−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基である。ここで、Sは硫黄原子であり、B1、B2、Q1、p、q、r、nは、請求項2中に記載の一般式(1)中のそれぞれと同定義である。R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々水素原子または置換基である。
【請求項7】
前記二色性色素が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化2】

式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は各々水素原子または置換基であるが、少なくとも一つは、−S−{(B1p−(Q1q−(B2rn−C1で表される置換基である。ここで、Sは硫黄原子であり、B1、B2、Q1、p、q、r、nは、請求項2中に記載の一般式(1)中のそれぞれと同定義である。
【請求項8】
前記ホスト液晶が、ネマチック液晶である請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項9】
前記液晶層が、さらにカイラル剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−17861(P2007−17861A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201653(P2005−201653)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】