説明

液晶表示装置の処理方法

【課題】バックライトの光源としてLEDを使用している液晶表示装置において、当該液晶表示装置に搭載されたLEDバックライトモジュールに含まれている資源の有効利用を可能とする液晶表示装置の処理方法を提供する。
【解決手段】バックライトの光源としてLEDを使用している液晶表示装置の処理方法であって、液晶表示装置からキャビネットを分離して液晶パネルモジュールを得る工程と、液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程と、バックライトシャーシ組品からLED基板を取り外す工程と、金属を回収する工程とを含む液晶表示装置の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の処理方法に関し、バックライトの光源として発光ダイオード(LED)を搭載した液晶表示装置に含まれる資源の有効利用に特に有効な処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では所得水準の向上に伴い、エアコンディショナ(エアコン)、テレビジョン受信機(テレビ)、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電製品、パーソナルコンピュータ(パソコン)、ワードプロセッサなどの情報機器、プリンタ、ファックスなどの事務用機器、その他の各種の家具、文具、玩具などが、一般家庭に高い普及率で備えられるようになっており、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。その結果、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄量も年々増加する傾向にある。
【0003】
加えて、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫などの地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0004】
上記のような状況を受け、2001年4月より家電リサイクル法が施行された。ここで、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目(以下、「家電4品目」と略記する)のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0005】
これら家電4品目においては、関係者の鋭意努力のもと、法律施行当初に比べリサイクルが格段に進んでいる。現在、家電4品目に使用されている鉄、銅、アルミニウムなどの金属はもとより、プラスチックについてもリサイクルが拡大しつつある。また、テレビにおいては、ブラウン管表示装置のブラウン管ガラスを切断して電子銃や蛍光体を除去した後、ガラスカレットとして元のブラウン管用ガラスに再生使用するリサイクル技術が既に実用化されている。
【0006】
家電製品に含まれる金属、プラスチックおよびガラスなどの素材のリサイクルに際しては、まず、様々な部品・材料から構成されている家電製品の廃棄物を手解体などで解体し、部品・材料ごとに回収し、素材ごとに分別した後、元の素材として再生利用する方法が一般的である。
【0007】
たとえば、廃ブラウン管テレビの場合には、主に、(1)後キャビネットの取り外し工程、(2)ワイヤーハーネスの取り外し工程、(3)制御基板の取り外し工程、(4)前キャビネットの取り外し工程、(5)電子銃の取り外し工程、(6)ブラウン管前後のガラスの分離工程、(7)ブラウン管ガラスの粉砕工程、という一連の工程により、手解体されている。回収された部品・材料は素材ごとに分別され、それぞれ適した方法で元の素材へ再生される。たとえば、キャビネット用プラスチック、ワイヤーハーネスおよび制御基板に含まれる金属、ブラウン管ガラスなどが再生利用されている。
【0008】
ところで、近年、液晶テレビ、液晶モニタを含む液晶表示装置の需要が、省電力、省スペース、軽量かつデジタル放送の受像に適するといった特性から、近年の地球環境問題への関心の高まり、ならびにテレビ放送のデジタル化と相俟って、急激に増加している。特に、大型の液晶パネルを搭載した大画面液晶テレビや、インフォメーションディスプレイやコンピュータ向けの液晶モニタの需要が劇的に増加している。これに伴い、液晶表示装置の廃棄量も今後急激に増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上などの要求が高くなってきている。
【0009】
ここで、「液晶表示装置」とは、表示部に液晶ディスプレイを搭載した製品を指し、具体的には、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ、デスクトップ型パソコン用の液晶モニタ、ノート型パソコン、携帯電話、車載ナビゲーション用モニタ、携帯情報端末、ゲーム用モニタ、パチンコ、スロットマシンなどの遊技用モニタなども含まれる。
【0010】
ところが、このような液晶表示装置は比較的新しい製品であること、また、現状は比較的廃棄物の量が少ないこともあり、上述したブラウン管テレビのような適切なリサイクルは実用化されていない。廃棄された液晶表示装置は、廃棄物の処理施設で破砕されて、シュレッダーダストなどとともに埋立処理あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0011】
加えて液晶テレビは、近い将来、家電リサイクル法の適用品目として追加される動きもある。この場合、液晶テレビの再商品化率の遵守は勿論のこと、液晶テレビから取り出される回収物の安全かつ適正な処理が求められる。また液晶モニタは、使用されている部材は液晶テレビとほとんど同一であり、このような背景から、液晶テレビや液晶モニタのリサイクル技術の開発は急務となっている。
【0012】
また、上述した液晶テレビ、液晶モニタなどの液晶表示装置は、自ら光を発光しない非発光型であり、光源として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を使用したものや冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorecent Lamp)を使用したものがある。従来は、CCFLを使用したものがほとんどであったが、液晶表示装置の薄型化への要望や色再現性の向上への要望からLEDを使用したバックライトは今後急激に増加すると予想されている。
【0013】
たとえば特開2001−305502号公報(特許文献1)には、液晶テレビの液晶パネルに用いられる液晶、金属材料およびパネルガラスのリサイクル方法として、液晶パネルを切断して液晶を回収した後、パネルガラスを破砕し、非鉄精錬の珪石代替材料として利用する方法が開示されている。
【0014】
また、特開平6−168253号公報(特許文献2)には、液晶テレビ製品の一部に処理方法や使用材料情報をバーコードで表示して、リサイクルプラントで解体される際に、解体ライン入口でバーコードなどを読み取り、解体作業を展開する方法およびシステムが開示されている。
【0015】
さらに、特開2001−115289号公報(特許文献3)には、GaPを主成分とする半導体スクラップの処理方法として、スクラップを水酸化ナトリウムと水酸化カリウムからなる共晶塩とともに加熱溶融しスクラップを完全に分解させ、電解採取によりガリウムを回収する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−305502号公報
【特許文献2】特開平6−168253号公報
【特許文献3】特開2001−115289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
液晶表示装置は、省電力・省資源に貢献でき、デジタル放送の受像に適したテレビ受像機であるので、地球環境問題への注目が高まり、テレビ放送のデジタル化に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、廃棄される液晶表示装置も、数・量ともに急激に増大すると予想される。
【0017】
従来では、液晶テレビ、液晶モニタを含む液晶表示装置のリサイクルのための適切な処理方法が確立されておらず、ブラウン管テレビその他の家電製品や部品と比較して技術確立などが遅れているのが実情である。したがって、今後、廃棄される液晶表示装置の増加に備えたリサイクルのための処理方法の確立が早急に要求される。とくに、ブラウン管テレビや従来の液晶テレビに搭載されていなかったLEDバックライトを効率的に処理し、資源を有効に利用することが望ましい。
【0018】
しかしながら、上述した特許文献1および特許文献2に開示された方法には、液晶表示装置に使用されているバックライトモジュールの処理方法については記載されておらず、資源として有効に利用することはできない。
【0019】
ここで、液晶表示装置に使用されるLEDは、化合物半導体であるGaAs(ガリウムヒ素)、GaP(ガリウムリン)、GaN(ガリウムナイトライド)などを発光材料として使用している。このうち、ガリウムは希少金属である。また、端子材料として銅を使用しているものがある。また、LEDパッケージには、ワイヤボンド材料として貴金属であり高価な金が使用されているものがある。したがって、LEDバックライトを搭載した液晶表示装置を効率的に解体し、ガリウム、銅および金などの金属資源を回収することが望まれている。
【0020】
LEDバックライトモジュールは、金属製のシャーシにLEDモジュールが実装されたプリント基板を固定してあり、LEDに含まれているガリウム、金および銅などの金属資源を効率的に回収するには液晶表示装置のバックライトモジュールから、LEDモジュールを分離する必要がある。
【0021】
しかしながら、特許文献3に開示された方法には、液晶テレビからLEDなどの半導体スクラップを取り出す方法については記載されていない。
【0022】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、バックライトの光源としてLEDを使用している液晶表示装置において、当該液晶表示装置に搭載されたLEDバックライトモジュールに含まれている資源の有効利用を可能とする液晶表示装置の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、バックライトの光源としてLEDを使用している液晶表示装置の処理方法であって、液晶表示装置からキャビネットを分離して液晶パネルモジュールを得る工程と、液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程と、バックライトシャーシ組品からLED基板を取り外す工程と、金属を回収する工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の液晶表示装置の処理方法において、前記金属を回収する工程は、LED基板から取り外されたLEDチップを破砕する工程と、酸溶液により発光材料を溶出する工程とを含むことが好ましい。また本発明における前記金属を回収する工程は、酸溶液を用いて発光材料の金属成分を溶出し得られた金属含有酸溶液を、イオン交換樹脂と接触させることにより、金属をイオン交換樹脂へ吸着させる工程をさらに含むことがより好ましい。
【0025】
本発明の液晶表示装置の処理方法において、前記発光材料は、ガリウムリン、ガリウムヒ素、ガリウムナイトライドのいずれかからなることが好ましい。
【0026】
また本発明の液晶表示装置の処理方法において、前記酸溶液は、塩酸、リン酸、硝酸、フッ酸のいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液晶表示装置のLEDバックライトから効率的に資源を回収することができる、リサイクルのための液晶表示装置の処理方法を提供することができる。また、本発明の液晶表示装置の処理方法によれば、液晶表示装置から材料を分別回収する構成のため、ほとんど廃棄物を発生しない液晶表示装置の処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の液晶表示装置の処理方法の好ましい一例を示すフローチャートである。本発明の処理方法は、液晶表示装置からキャビネット(後キャビネットおよび前キャビネット)を分離して液晶パネルモジュールを得る工程(ステップS2およびステップS4)と、液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程ステップS5)と、バックライトシャーシ組品からLED基板を取り外す工程(ステップS6)と、金属を回収する工程(ステップS7)とを基本的に含む。
【0029】
このような本発明の液晶表示装置の処理方法によって、LEDバックライトに使用されている資源を効率的に回収することができる。また、このような本発明の液晶表示装置の処理方法によれば、解体された部品・材料から効率的に資源を回収することができる。
【0030】
また本発明の液晶表示装置の処理方法は、図1に示す例のように、後キャビネットを取り外す工程(ステップS2)の前にスタンドを取り外す工程(ステップS1)を含み、また、後キャビネットを取り外す工程(ステップS2)と前キャビネットと液晶パネルモジュールとを分離する工程(ステップS4)との間に、制御基板を取り外す工程(ステップS3)をさらに含むことが好ましい。
【0031】
上記各工程の具体的な説明に先立ち、本発明の液晶表示装置の処理方法に供される液晶表示装置の典型的な構造について、まずは説明する。図2は、本発明に供される典型的な一例の液晶表示装置の構造を模式的に示す分解斜視図である。本発明に供される典型的な液晶表示装置は、図2に示すように、後キャビネット1、スタンド2、前キャビネット3、ならびに、後キャビネット1と前キャビネット3との間に配置された制御基板4および液晶パネルモジュール5を基本的に備える。このうち、液晶パネルモジュール5は、バックライトシャーシ6、LEDバックライト7(LEDモジュール7aおよびLED基板7bとから構成)、光学系シート8(プリズムシート、拡散シートなどから構成)、液晶パネルユニット9(液晶ドライバー基板9a、プラスチックケース9b、ベゼル9cおよびパネルガラス9dから構成)から構成されている。液晶材料や透明電極などは2枚のパネルガラス9dの間に封入されている。なお、バックライトシャーシ6、LEDバックライト7などの部品の組み合わせから、バックライトシャーシ組品10が構成される。
【0032】
本発明の液晶表示装置の処理方法は、図2に示したような構造の液晶表示装置の廃棄物(廃液晶表示装置)に好適に適用することができる。図1に示す例の液晶表示装置の処理方法は、上述したように、スタンドを取り外す工程(ステップS1)と、後キャビネットを取り外す工程(ステップS2)と、制御基板を取り外す工程(ステップS3)と、前キャビネットと液晶パネルモジュールとを分離する工程(ステップS4)と、液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程(ステップS5)と、バックライトシャーシ組品からLED基板を取り外す工程と(ステップS6)と、金属を回収する工程(ステップS7)とを含む。上述したように本発明の液晶表示装置の処理方法は、液晶表示装置からキャビネット(後キャビネットおよび前キャビネット)を分離して液晶パネルモジュールを得る工程(ステップS2およびステップS4)と、液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程(ステップS5)と、バックライトシャーシ組品からLED基板を取り外す工程と(ステップS6)と、金属を回収する工程(ステップS7)とを基本的に含んでいればよいが、外側の部品から一つ一つ部品ごとに確実に、液晶表示装置を解体して部品を回収できることから、図1に示す例のようにステップS1からステップS7の各工程の全てを含むことが好ましい。以下、図1および図2を参照しながら本発明の液晶表示装置の処理方法について説明する。
【0033】
〔1〕スタンドを取り外す工程
液晶表示装置がスタンド(図2に示す例ではスタンド2)を備える場合には、このスタンドを取り外す(ステップS1)。スタンドの取り外し方法としては、具体的には、液晶表示装置の本体とスタンドとを締結しているねじを電動ドライバーなどを用い手作業で外して、スタンドを取り外す。このようにして、まず、液晶表示装置のスタンドが回収される。回収されたスタンドからは、含有されている金属およびプラスチックなどを再生し利用することができる。なお、スタンドを備えていない液晶表示装置を本発明の処理方法に供する場合には、当該工程は省略できる。
【0034】
〔2〕後キャビネットを取り外す工程
次に、液晶表示装置の本体から、後キャビネット(図2に示す例では後キャビネット1)を取り外す(ステップS2)。後キャビネットの取り外し方法としては、具体的には、液晶表示装置の本体の後キャビネットと前キャビネットとを留めているねじ、スナップフィットを手作業で外して、後キャビネットを取り外す。このようにして後キャビネットが回収される。回収された後キャビネットは、素材ごとに分別され、プラスチックなどの元の素材へと再生利用される。
【0035】
〔3〕制御基板を取り外す工程
次に、制御基板(図2に示す例では制御基板4)を取り外す(ステップS3)。制御基板の取り外しに際しては、まず、ワイヤーハーネスを取り外す。ワイヤーハーネスの取り外し方法としては、具体的には、電極間を結んでいるコネクタを外す、あるいは、ワイヤーハーネスを切断することによって、ワイヤーハーネスを取り外す。このようにしてワイヤーハーネスが回収される。回収されたワイヤーハーネスは、適切な処理を施すことにより、銅などの金属を再生して利用することができる。続いて、制御基板を固定している締結部品を手作業で外し、制御基板を取り外す。たとえば、ねじにより固定されている場合は、電動ドライバーなどを用いて、手作業でねじを取り外し、制御基板を取り外す。このようにして制御基板が回収される。回収された制御基板からは、銅などの金属を再生し利用することができる。なお、ワイヤーハーネスを取り外さず、ワイヤーハーネスが付いたままの状態で制御基板を回収するようにしてもよい。当該工程を経た後の液晶表示装置は、前キャビネットと液晶パネルモジュールとから構成されることになる。
【0036】
〔4〕前キャビネットと液晶パネルモジュールとを分離する工程
次に、前キャビネット(図2に示す例では前キャビネット3)と液晶パネルモジュール(図2に示す例では液晶パネルモジュール5)とを分離する(ステップS4)。分離の方法としては、前キャビネットと液晶パネルモジュールとを固定しているねじ、スナップフィットなどを手作業で外し、前キャビネットを取り外す。このようにして前キャビネットと液晶パネルモジュールが回収される。前キャビネットは、素材ごとに分別し、プラスチックなどの元の素材へ再生利用することができる。液晶パネルモジュールは、後の解体工程で解体される。
【0037】
〔5〕液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程
次に、上記ステップS4で前キャビネットと分離された液晶パネルモジュール(図2に示す例では液晶パネルモジュール5)を、バックライトシャーシ組品(図2に示す例ではバックライトシャーシ組品10)と液晶パネルユニット(図2に示す例では液晶パネルユニット9)とに分離する(ステップS5)。分離の方法としては、液晶パネルモジュールのスナップフィットやねじを手作業で外すことで、分離を行う。このとき、同時に、液晶パネルユニットを覆っているベゼル、プラスチックを手作業で取り外す。なお、「バックライトシャーシ組品」とは、LEDバックライト、バックライトシャーシなどから構成される部品の組み合わせを指す。このようにして、液晶パネルユニットが回収される。
【0038】
〔6〕バックライトシャーシからLED基板を取り外す工程
次に、バックライトシャーシ(図2に示す例ではバックライトシャーシ6)からLED基板(図2に示す例ではLED基板7b)を取り外す(ステップS6)。スタンドの取り外し方法としては、具体的には、バックライトシャーシとLED基板とを締結しているねじを電動ドライバーなどを用い手作業で外して、LED基板を取り外す。このようにして、まず、バックライトシャーシ組品のバックライトシャーシとLED基板とが回収される。回収されたバックライトシャーシからは、含有されている鉄、アルミニウムなどの金属を再生し利用することができる。回収されたLED基板は、後述する工程で資源が回収される。
【0039】
〔7〕金属を回収する工程
次に、LED基板から金属を回収する(ステップS7)。金属を回収する具体的な方法としては、まず、LED基板(図2に示す例ではLED基板7b)からLEDモジュール(図2に示す例ではLEDモジュール7a)を取り外す。LEDモジュールの取り外し方法としては、基板に実装されたLEDモジュールを機械的に剥ぎ取る。LEDモジュールは、通常はんだによりLED基板上に実装されており、はんだは錫系の材料で比較的軟らかいため、タングステンカーバイドあるいはダイヤモンドなどを使用した超硬工具で作成した押し切り刃を使用し機械的に切断し、LEDモジュールを分離することができる。また、切断の際に、はんだ接合部分を加熱することにより接合強度を劣化させてから切断してもよい。基板から取り外されたLEDモジュールは回収し、後述の破砕工程へと供される。
【0040】
ここで、図3は、本発明に供される典型的な一例のLEDモジュール7aの構造を模式的に示す断面図である。LEDモジュールとは、LEDチップと、それを封止しているパッケージ材料と、外部との導通をとるための端子材料などからなる一体部品を指す。LEDモジュール7aは、たとえば図3に示す例のように、化合物半導体材料からなるLEDチップ11と、金などからなるボンディングワイヤー12と、プラスチックからなるパッケージ13と、銅などからなる端子材料14と、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などからなる封止樹脂材料15と、プラスチックからなるリフレクター16とを備えるように実現される。このうち、たとえばLEDチップ11は、主成分として希少金属であるガリウムを含む。そのため、不要となったLEDモジュール搭載製品から、金属材料を効率的に回収し、資源を有効に利用することが望まれている。
【0041】
LED基板は、ガラス繊維強化エポキシなどの基板材および銅などの配線材料などからなる。LED基板は、非鉄精錬炉に投入することにより、従来公知の非鉄精錬技術により、銅を回収するとともに、有機物を分解し熱回収、ガラス繊維成分は、スラグへと回収され、セメント材料に利用される。
【0042】
次に、LEDモジュールから金属を回収するために、LEDモジュールを破砕する。破砕の方法としては、従来公知の破砕手段により、破砕することができる。例えば、せん断方式の破砕機を用いて樹脂パッケージを破砕することで、封止されている化合物半導体材料と、パッケージ材料、リードフレーム材料が分離される。また、化合物半導体材料と、パッケージ材料、リードフレーム材料が分離されなくとも、当該樹脂パッケージの破砕によって樹脂パッケージに亀裂が入り、化合物半導体材料が露出する。また、切断方式の破砕機を使用することにより、パッケージ材料が切断され、LEDモジュール内の化合物半導体材料が露出する。このように、LEDモジュールを破砕することにより、化合物半導体の露出表面積が大きくなり、後述の酸による浸出が促進される。
【0043】
次に、酸溶液を用いて、LEDモジュールから露出した化合物半導体材料から発光材料の金属成分を溶出(浸出)させる。溶出に使用する酸溶液としては、後述のイオン交換樹脂を使用した金属の分離、濃縮回収効率の観点から、塩酸、リン酸、硝酸、フッ酸のいずれかを含むことが好ましい。具体的には、(1)塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液、(2)フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液、(3)リン酸を主成分とする酸溶液などが好適に用いられる。
【0044】
ここで、発光材料は、ガリウムリン、ガリウムヒ素、ガリウムナイトライドのいずれかからなることが好ましい。上述し(1)た塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合には、化合物半導体材料からガリウムリンが溶出し、(2)フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合には、化合物半導体材料からガリウムヒ素が溶出し、また、(3)リン酸を主成分とする酸溶液を用いた場合には、化合物半導体材料からガリウムナイトライドが溶出する。なお、酸溶液を用いた化合物半導体材料からの発光材料の溶出は、通常、撹拌手段を備えた浸出槽内で行われる。
【0045】
上述した酸溶液を用いた溶出の後、LEDモジュールと酸溶液との混合物をフィルターなどの固液分離手段により分離することで、LEDモジュール残渣と金属含有酸溶液を得ることができる。金属含有酸溶液は、ガリウム、銅などの金属を含み((1)塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合には金も含む)、この溶液から金属を濃縮回収する。金属含有酸溶液からガリウム、銅(および金)を濃縮回収する方法としては、たとえば、硫化物法、水酸化物法、置換析出法、溶媒抽出法、電解採取法を用いることができる。
【0046】
本発明の液晶表示装置の処理方法においては、イオン交換法を用いて、酸溶液を用いて発光材料の金属成分を溶出し得られた金属含有酸溶液を、イオン交換樹脂と接触させることにより、金属をイオン交換樹脂へ吸着させ、金属含有酸溶液から金属を濃縮回収することが好ましい。イオン交換法を用いることで、エネルギーを使用せず、廃棄物を殆ど排出しないという利点がある。LEDモジュール残渣は、エポキシ樹脂などのプラスチックからなり、強化繊維などにリサイクルすることができる。また、熱回収することもできる。
【0047】
ここで、イオン交換法を用いた金属の濃縮回収の詳細は、上述した酸溶液を用いて発光材料を溶出させる工程において用いた酸溶液の種類によって異なる。以下、(A)(1)塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合、ならびに、(2)フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合と、(B)リン酸を主成分とする酸溶液を用いた場合とに分けて、説明する。
【0048】
<(A)(1)塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合、ならびに、(2)フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合>
(1)塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合、ならびに、(2)フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合には、イオン交換法を用いてガリウム、銅(および金)を濃縮回収する際には、適当な濃度の塩酸の添加または水の添加によって塩化物イオン濃度を好ましくは2〜10mol/Lにし、陰イオン交換樹脂へ接触させる。これによって、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)が陰イオン交換樹脂に吸着される。これは、適量の塩化物イオンが存在する溶液中で、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)は塩化物錯イオンを形成し、マイナスの電荷を帯びるため、塩酸酸性水溶液中で陰イオン交換樹脂(好ましくは強塩基性の陰イオン交換樹脂)と接触させた場合、陰イオン交換樹脂に吸着される。硝酸イオン、フッ化物イオンはガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)と錯体を形成しないため、陰イオン交換樹脂への吸着挙動にはほとんど影響せず、塩化物イオン濃度を制御するだけでよい。
【0049】
イオン交換樹脂を用いて金属含有酸溶液からガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)を濃縮回収する場合、酸溶液中の塩化物イオン濃度を2〜10mol/L、より好ましくは4〜8mol/Lに調製することによって特異的に溶液中のガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)を陰イオン交換樹脂に吸着させることが可能である。塩化物イオン濃度が2mol/L未満である場合は、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)は塩化物イオン錯体を形成せずイオン交換樹脂に吸着しない虞があり、塩化物イオン濃度が10mol/Lより高い場合は、陰イオン交換樹脂に吸着される塩化物イオンが多くなり、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)の吸着が阻害される傾向にあるためである。したがって、塩化物イオン濃度が2〜10mol/Lの場合に、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)が陰イオン交換樹脂に吸着される。
【0050】
陰イオン交換樹脂と接触することにより金属イオンが取り除かれた、塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液、または、フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液は、塩化物イオンを含む。このため、後述のリン酸を主成分とする酸溶液からの金属回収において、陽イオン交換樹脂から金属を回収するための塩酸として利用することもできる。
【0051】
ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)が吸着した陰イオン交換樹脂に水を接触させると、イオン交換樹脂表面の塩化物イオン濃度が低下し、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)のクロロ錯体が破壊する。こうして、陰イオン交換樹脂とのイオン結合力が低下するため、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)を陰イオン交換樹脂から急激に離脱することができ、ガリウムイオン、銅イオン(および金イオン)濃縮溶液が得られる。
【0052】
イオン交換法により濃縮、回収された金属イオンは、濃縮溶液のPHを4〜10に調整することにより、水酸化物として沈殿させ、固液分離することにより水酸化物スラッジとして回収することができる。回収された金属水酸化物スラッジは、ガリウム、銅、金などを含み、非鉄精錬所にて精製し、金属材料として再生利用することができる。
【0053】
<(B)(3)リン酸を主成分とする酸溶液を用いた場合>
また、(3)リン酸を主成分とする酸溶液中のガリウムおよび銅を分離回収する方法としては、まず、金属含有酸溶液を、陽イオン交換樹脂へ通液することにより、金属イオンが陽イオン交換樹脂へ吸着し、分離することができる。リン酸溶液中で金属イオンは、正の電荷を帯びているため、陽イオン交換樹脂(好ましくは強酸性陽イオン交換樹脂)と接触させることにより、陽イオン交換樹脂へ吸着させることができる。ガリウムおよび銅が取り除かれた、リン酸を主成分とする酸溶液は、上述のLEDチップから金属を溶出する工程で再利用することができる。
【0054】
陽イオン交換樹脂へ吸着した金属イオンは、塩酸と接触させることにより、脱着回収することができる。使用する塩酸濃度としては、2mol/L以上が好ましく、4〜6mol/Lがより好ましい。塩酸濃度が2mol/L未満である場合には、ガリウムイオンを置換するための水素イオン濃度が低く、樹脂からの脱着が十分にできない虞があるためである。これにより、ガリウム含有塩酸溶液が得られる。得られたガリウム含有塩酸溶液は、上述の(1)塩酸と硝酸を主成分とする酸溶液を用いた場合、ならびに、(2)フッ酸と硝酸を主成分とする酸溶液の場合と同様に、陰イオン交換樹脂へ吸着させる方法で、ガリウムを濃縮回収することができる。
【0055】
なお、陰イオン交換樹脂へ吸着させる工程を省き、そのままPHを調整することにより、水酸化物として沈殿させ、水酸化物スラッジとして回収することもできるが、陰イオン交換樹脂への吸着を行うことで、より濃縮させることができる。
【0056】
また、リン酸を主成分とする酸溶液に塩酸を添加し塩化物イオンを導入することで、陰イオン交換樹脂を使用した濃縮も可能であるが、リン酸と塩酸の混酸が発生するため、廃液処理が困難となる。そのため、陽イオン交換樹脂を使用し、リン酸溶液中の金属はイオン交換樹脂へ吸着させることで除去し、金属を除去したリン酸溶液は再利用することが好ましい。
【0057】
また、バックライトシャーシから取り外したLED基板をそのまま、銅精錬、亜鉛精錬などの非鉄精錬炉に投入し、従来公知の方法により、銅、金、ガリウムなどを回収することももちろん可能である。
【0058】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<実験例1>
ガリウムリンから、塩酸と硝酸の混酸(塩酸:硝酸=3:1)を使用して金属を溶出し、ガリウム含有酸溶液100mLを得た。ICP発光分析(JY238U、ジョバンイボン社製)により分析した結果、得られたガリウム含有リン酸水溶液のガリウム濃度は、145.2mg/Lであった。100mL中のガリウム量としては、14.5mgであった。
【0060】
ガリウム含有リン酸水溶液100mLを、陰イオン交換樹脂(IRA400、ローム・アンド・ハース社製)30mLを充填したカラム(内径:19mm×高さ:25cm)中を流速5.0L/(L−樹脂・h)で通液し、ガリウムを陰イオン交換樹脂へ吸着させた。カラムを通過した酸水溶液中のガリウム濃度は、ICP発光分析の結果、検出限界以下であり、溶液中のガリウムは全て陰イオン交換樹脂へ吸着していた。
【0061】
次に、ガリウムが吸着したイオン交換樹脂が充填されているカラムに、水を通液した。図4は、実験例1で得られた、陰イオン交換樹脂からの回収液のガリウム濃度の測定結果を示すグラフであり、縦軸はガリウム濃度(mg/L)、横軸は通液量(L/L−樹脂)である。図4に示されるように、回収されたガリウム量は、14.0mgであり、ガリウムの回収率は97%であった。
【0062】
<実験例2>
ガリウムナイトライドからリン酸を使用して金属を溶出し、ガリウム含有リン酸水溶液100mLを得た。ICP発光分析(JY238U、ジョバンイボン社製)により分析した結果、得られたガリウム含有リン酸水溶液のガリウム濃度は、519.5mg/Lであった。100mL中のガリウム量としては、52.0mgであった。
【0063】
ガリウム含有リン酸水溶液100mLを、陽イオン交換樹脂(IR120B、ローム・アンド・ハース社製)30mLを充填したカラム(内径:19mm×高さ:25cm)中を流速5.0L/(L−樹脂・h)で通液し、ガリウムを陽イオン交換樹脂へ吸着させた。カラムを通過したリン酸水溶液中のガリウム濃度は、ICP発光分析の結果、検出限界以下であり、溶液中のガリウムは全て陽イオン交換樹脂へ吸着していた。
【0064】
次に、ガリウムが吸着したイオン交換樹脂が充填されているカラムに、4mol/L塩酸溶液を通液した。図5は、実験例2で得られた陽イオン交換樹脂からの回収液のガリウム濃度の測定結果を示すグラフであり、縦軸はガリウム濃度(mg/L)、横軸は通液量(L/L−樹脂)を示す。図5に示されるように、回収されたガリウム量は、46.2mgであり、ガリウムの回収率は89%であった。
【0065】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の液晶表示装置の処理方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明に供される典型的な一例の液晶表示装置である液晶テレビの構造を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】本発明に供される典型的な一例のLEDモジュール7aの構造を模式的に示す断面図である。
【図4】実験例1で得られた、陰イオン交換樹脂からの回収液のガリウム濃度の測定結果を示すグラフであり、縦軸はガリウム濃度(mg/L)、横軸は通液量(L/L−樹脂)である。
【図5】実験例2で得られた陽イオン交換樹脂からの回収液のガリウム濃度の測定結果を示すグラフであり、縦軸はガリウム濃度(mg/L)、横軸は通液量(L/L−樹脂)を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 後キャビネット、2 スタンド、3 前キャビネット、4 制御基板、5 液晶パネルモジュール、6 バックライトシャーシ、7 LEDバックライト、7a LEDモジュール、7b LED基板、8 光学系シート、9 液晶パネルユニット、9a 液晶ドライバー基板、9b プラスチックケース、9c ベゼル、9d パネルガラス、10 バックライトシャーシ組品、11 LEDチップ、12 ボンディングワイヤー、13 パッケージ、14 端子、15 封止樹脂、16 リフレクター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトの光源としてLEDを使用している液晶表示装置の処理方法であって、
液晶表示装置からキャビネットを分離して液晶パネルモジュールを得る工程と、
液晶パネルモジュールをバックライトシャーシ組品と液晶パネルユニットとに分離する工程と、
バックライトシャーシ組品からLED基板を取り外す工程と、
金属を回収する工程とを含む、液晶表示装置の処理方法。
【請求項2】
前記金属を回収する工程が、LED基板から取り外されたLEDチップを破砕する工程と、酸溶液により発光材料を溶出する工程とを含む、請求項1に記載の液晶表示装置の処理方法。
【請求項3】
前記金属を回収する工程が、酸溶液を用いて発光材料の金属成分を溶出し得られた金属含有酸溶液を、イオン交換樹脂と接触させることにより、金属をイオン交換樹脂へ吸着させる工程をさらに含む、請求項1または2に記載の液晶表示装置の処理方法。
【請求項4】
前記発光材料が、ガリウムリン、ガリウムヒ素、ガリウムナイトライドのいずれかからなる、請求項2または3に記載の液晶表示装置の処理方法。
【請求項5】
前記酸溶液が、塩酸、リン酸、硝酸、フッ酸のいずれかを含む、請求項2〜4のいずれかに記載の液晶表示装置の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−226300(P2009−226300A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73982(P2008−73982)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】