説明

液晶表示装置の防水構造

【課題】液晶表示パネルへの水分の影響を極力排除する。
【解決手段】液晶表示パネル10を防水ケース1の内部に収納し、防水ケースの正面板1Aに正面透光部としての開口部4を設けると共に、防水ケースの背面板1Bを透明な背面透光部とした。防水ケース1は、液晶表示パネルホルダベース2と、液晶表示パネルホルダベースの正面開口に嵌合されるホルダ蓋板3とで構成し、ホルダ蓋板の開口部4の周縁に、液晶表示パネルとの隙間をシールする第1の防水パッキン6を配設し、ホルダ蓋板3の外周に、液晶表示パネルホルダベースとの隙間をシールする第2の防水パッキン8を配置した。更に、防水ケース1の下側の周壁1Cに呼吸口9を設け、その呼吸口から配線15を引き出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置や計器類などの表示装置に用いられる液晶表示器の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は特許文献1に記載された従来の車両用ヘッドアップディスプレイ装置の断面図である。
このヘッドアップディスプレイ装置100においては、ケーシング101の内部に筒状の支持体102を設け、その筒状の支持体102の先端に液晶表示パネル110を配置すると共に、その液晶表示パネル110の背後に、複数種のレンズよりなるレンズ群112と、バックライト用のLED114と、LED114を搭載した基板115を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−169399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液晶表示パネルは、水分を多く含んだ雰囲気に曝されると、耐久性や信頼性の低下を来すことが多い。特に、車両用ヘッドアップディスプレイ装置の表示装置として用いられる場合、車室内という高温多湿を繰り返す厳しい環境に置かれるので、故障を引き起こす可能性が高くなる。
【0005】
この点、図4に示した特許文献1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置100では、ケーシング101の内部に液晶表示パネル110を配置しているものの、防水性が完全とはいえないため、水分の影響を受ける可能性があり、長期間の耐久性や信頼性の確保の点で問題が起こる可能性があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境中の水分の影響を極力排除することができ、それにより、車両用ヘッドアップディスプレイ装置や計器類の耐環境性を高めることができると共に高い信頼性の確保が可能になる液晶表示器の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る液晶表示器の防水構造は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 液晶表示パネルを、該液晶表示パネルの正面に位置する正面板と背面に位置する背面板とを有する防水ケースの内部に収納し、前記防水ケースの正面板に、前記液晶表示パネルの有効表示エリアに対応した正面透光部を設けると共に、前記防水ケースの背面板に、前記液晶表示パネルの有効表示エリアに対応した背面透光部を設けたこと。
(2) 上記(1)の構成の液晶表示器の防水構造において、
前記正面透光部として、前記正面板に開口部が設けられており、その開口部の周縁の正面板の内壁面に、前記液晶表示パネルの前面板に圧接する環状の第1の防水パッキンが配設されると共に、前記防水ケースの外壁のうち直接水分がかからないと想定される領域に呼吸口が設けられていること。
(3) 上記(2)の構成の液晶表示器の防水構造において、
前記防水ケースが、前記背面板及び周壁を有し正面が開口した箱型の液晶表示パネルホルダベースと、該液晶表示パネルホルダベースの正面開口に嵌合される前記正面板としてのホルダ蓋板とから構成され、前記ホルダ蓋板を前記液晶表示パネルホルダベースの正面開口部に嵌合させた際に互いに対向する対向面間に、対向面間の隙間をシールする第2の防水パッキンが配設されており、前記ホルダ蓋板に前記開口部が設けられると共に、前記呼吸口から前記液晶表示パネルの配線が外部に引き出されていること。
【0008】
上記(1)の構成の液晶表示器の防水構造によれば、液晶表示パネルを防水ケースの内部に収納したので、液晶表示パネルを外の水分から保護することができる。その際、防水ケースの正面板に、液晶表示パネルの有効表示エリアに対応した正面透光部が設けられているので、その正面透光部を通して、液晶表示パネルの表示内容を外から見ることができるし、外に向けて表示内容を照射することができる。また、防水ケースの背面板に、液晶表示パネルの有効表示エリアに対応した背面透光部が設けられているので、その背面透光部を通して、バックライトの照明光を液晶表示パネルに透過させることができる。
上記(2)の構成の液晶表示器の防水構造によれば、正面透光部として、正面板に開口部が設けられているので、その開口部を通して、直接、液晶表示パネルの表示内容を外から見ることができるし、外に向けて表示内容を照射することができる。また、開口部の周縁の正面板の内壁面に、液晶表示パネルの前面板に圧接する環状の第1の防水パッキンが配設されているので、開口部から侵入しようとする水分を第1の防水パッキンによって遮断することができる。また、防水パッキンの反発力で液晶表示パネルを防水ケースの内壁に押し付けることができるので、液晶表示パネルの位置決めの確実化を図ることができる。また、防水ケースの外壁のうち直接水分がかからないと想定される領域に呼吸口が設けられているので、万一正面板の開口部から防水ケース内部に微量の湿気が入り込んで蓄積するような可能性があっても、その呼吸口から湿気を逃がすことができ、湿気の影響で液晶表示パネルの耐久性や信頼性が劣るのを回避することができる。
上記(3)の構成の液晶表示器の防水構造によれば、防水ケースが、背面板及び周壁を有し正面が開口した箱型の液晶表示パネルホルダベースと、液晶表示パネルホルダベースの正面開口に嵌合される正面板としてのホルダ蓋板とから構成されているので、ホルダ蓋板を外して、液晶表示パネルホルダベースの正面開口から液晶表示パネルホルダベース内部に液晶表示パネルを収納することができる。また、収納後に、ホルダ蓋板を液晶表示パネルホルダベースの正面開口に嵌合させることにより、第2の防水パッキンによってホルダ蓋板と液晶表示パネルホルダベースの隙間をシールすることができるので、液晶表示パネルホルダベースとホルダ蓋板との2部品の組み合わせで防水ケースを構成するものの、その合わせ目の防水性を確保することができる。また、呼吸口から液晶表示パネルの配線が外部に引き出されているので、配線を引き出す孔を敢えて別に設けなくてもよくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶表示パネルを防水ケースの内部に収納したので、液晶表示パネルに及ぼす環境中の水分の影響を極力排除することができる。従って、水分の影響による耐環境性の低下や信頼性の低下を防止することができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の液晶表示器の防水構造の構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)のIb−Ib矢視断面図である。
【図2】同防水構造に使用する液晶表示パネルホルダベースの構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)のIIb−IIb矢視断面図である。
【図3】同防水構造に使用するホルダ蓋板の構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視断面図、(c)は背面図である。
【図4】従来の車両用ヘッドアップディスプレイ装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の液晶表示器の防水構造を図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態の液晶表示器の防水構造の構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)のIb−Ib矢視断面図、図2は同防水構造に使用する液晶表示パネルホルダベースの構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)のIIb−IIb矢視断面図、図3は同防水構造に使用するホルダ蓋板の構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視断面図、(c)は背面図である。
【0013】
この実施形態の防水構造は、図1に示すように、液晶表示パネル10を、該液晶表示パネル10の正面に位置する正面板1Aと背面に位置する背面板1Bと周壁1Cとを有する透明樹脂製の矩形箱型の防水ケース1の内部に収納し、防水ケース1の正面板1Aに、液晶表示パネル10の有効表示エリア10Aに対応した正面透光部としての矩形の開口部4を設けると共に、防水ケース1の透明な背面板1Bを、バックライトの照明光の透過する背面透光部としたものである。液晶表示パネル10は、液晶セル11の後側と前側に偏光板12、13を配置し、後側の偏光板12の更に後側に拡散板14を配置した積層体として構成されている。
【0014】
防水ケース1は、背面板1B及び周壁1Cを有し正面が開口した箱型の液晶表示パネルホルダベース2と、液晶表示パネルホルダベース2の正面開口2Cに嵌合される正面板1Aとしてのホルダ蓋板3とから構成されている。図2に示すように、液晶表示パネルホルダベース2の正面開口2Cには、ホルダ蓋板3の嵌まる嵌合段部2Bと、嵌合段部2Bに嵌った状態のホルダ蓋板3を抜けないように係止する複数の係止爪2Aとが設けられている。
【0015】
また、防水ケース1の正面板1Aとしてのホルダ蓋板3には、正面透光部としての矩形の前記開口部4が設けられており、この開口部4の周縁の正面板1Aの内壁面にはパッキン溝5が設けられ、そのパッキン溝5に、液晶表示パネル1の前側の偏光板(前面板)13に圧接する環状の第1の防水パッキン6が配設されている。また、ホルダ蓋板3の外周にもパッキン溝7が設けられ、そのパッキン溝7に、ホルダ蓋板3を液晶表示パネルホルダベース2の正面開口2Cの段部2Bに嵌合させた際に、互いに対向する対向面間の隙間をシールする第2の防水パッキン8が配設されている。
【0016】
また、図1及び図2に示すように、防水ケース1の外壁のうち、直接水分がかからないと想定される下部側の周壁1Cには呼吸口9が設けられ、その呼吸口9から液晶表示パネル10の配線15(主にフラット回路体よりなる)が外部に引き出されている。
【0017】
この実施形態の防水構造では、液晶表示パネル10を防水ケース1の内部に収納しているので、液晶表示パネル10を外の水分から保護することができる。また、防水ケース1を、正面が開口した箱型の液晶表示パネルホルダベース2と、液晶表示パネルホルダベース2の正面開口2Cに嵌合されるホルダ蓋板3とで構成しているので、ホルダ蓋板3を外して、液晶表示パネルホルダベース2の正面開口2Cから液晶表示パネルホルダベース2の内部に液晶表示パネル10を収納し、液晶表示パネル10の配線15を呼吸口9から外部へ引き出すと共に、液晶表示パネル10の収納後に、ホルダ蓋板3を液晶表示パネルホルダベース2の正面開口2Cの段部2Bに嵌合させることにより、簡単に組み立てることができる。
【0018】
この場合、第2の防水パッキン8によって、ホルダ蓋板3と液晶表示パネルホルダベース2の隙間をシールすることができるので、液晶表示パネルホルダベース2とホルダ蓋板3との2部品の組み合わせで防水ケース1を構成するものの、その合わせ目の防水性を確保することができる。また、ホルダ蓋板3の開口部4の周縁に配置した第1の防水パッキン6が、液晶表示パネル10の前側の偏光板13に圧接するので、開口部4から侵入しようとする水分をこの第1の防水パッキン6によって遮断することができる。
【0019】
また、第1の防水パッキン6の反発力によって、液晶表示パネル10を防水ケース1の背面板1Bに押し付けることができるので、液晶表示パネル10の位置決めの確実化を図ることができる。
【0020】
また、防水ケース1の下側の周壁1Cに呼吸口9を設けているので、万一正面板1Aの開口部4から防水ケース1の内部に微量の湿気が入り込んで蓄積するような可能性があっても、その呼吸口9から湿気を逃がすことができ、湿気の影響で液晶表示パネル10の耐久性や信頼性が劣るのを回避することができる。しかも、呼吸口9から液晶表示パネル10の配線15を外部に引き出しているので、配線15を引き出す孔を敢えて別に設けなくてもよい。
【0021】
また、防水ケース1の正面板1Aに、液晶表示パネル10の有効表示エリア10Aに対応した正面透光部としての開口部4を設けているので、その開口部4を通して、直接、液晶表示パネル10の表示内容を外から見ることができるし、外に向けて表示内容を照射することができる。また、防水ケース1の背面板1Bは透明な背面透光部となっているので、その背面板1Bを通して、バックライトの照明光を液晶表示パネル10に透過させることができる。
【0022】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0023】
例えば、上記実施形態では、防水ケース1の正面板1A(ホルダ蓋板3)に開口部4を設けた場合を示したが、バックライト側の背面板1Bに開口部4を設けて、その開口部4の周囲に第1の防水パッキン6を配置してもよい。そうした場合は、液晶表示パネルホルダベース2を透明樹脂で構成する必要がなくなる。
【0024】
また、ホルダ蓋板3を透明樹脂で構成し、正面板1Aの開口部4を無くしてもよい。
【0025】
また、防水ケース1を完全密封にしてもよく、例えば、金属とガラスによる気密封止(ハーメチックシール)にすることで、更なる防水性と有害雰囲気の侵入防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 防水ケース
1A 正面板
1B 背面板(背面透光部)
1C 周壁
2 液晶表示パネルホルダベース
2C 正面開口
3 ホルダ蓋板
4 開口部(正面透光部)
6 第1の防水パッキン
8 第2の防水パッキン
9 呼吸口
10 液晶表示パネル
13 前側の偏光板(前面板)
15 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルを、該液晶表示パネルの正面に位置する正面板と背面に位置する背面板とを有する防水ケースの内部に収納し、前記防水ケースの正面板に、前記液晶表示パネルの有効表示エリアに対応した正面透光部を設けると共に、前記防水ケースの背面板に、前記液晶表示パネルの有効表示エリアに対応した背面透光部を設けたことを特徴とする液晶表示器の防水構造。
【請求項2】
前記正面透光部として、前記正面板に開口部が設けられており、その開口部の周縁の正面板の内壁面に、前記液晶表示パネルの前面板に圧接する環状の第1の防水パッキンが配設されると共に、前記防水ケースの外壁のうち直接水分がかからないと想定される領域に呼吸口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示器の防水構造。
【請求項3】
前記防水ケースが、前記背面板及び周壁を有し正面が開口した箱型の液晶表示パネルホルダベースと、該液晶表示パネルホルダベースの正面開口に嵌合される前記正面板としてのホルダ蓋板とから構成され、前記ホルダ蓋板を前記液晶表示パネルホルダベースの正面開口部に嵌合させた際に互いに対向する対向面間に、対向面間の隙間をシールする第2の防水パッキンが配設されており、前記ホルダ蓋板に前記開口部が設けられると共に、前記呼吸口から前記液晶表示パネルの配線が外部に引き出されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示器の防水構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−58271(P2012−58271A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198294(P2010−198294)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】