説明

液晶表示装置及びその製造方法

【課題】垂直配向液晶の低電圧側の中間調表示及び応答性を向上させる。
【解決手段】実施形態に係る液晶表示装置1では、アレイ基板2と対向基板3とを液晶層4を挟んで対向させる構成を持つ。アレイ基板2は、第1の電極7、第2の電極6、配向維持層8を備える。第1の電極7は、櫛歯状であり、アクティブ素子と電気的に接続される。第2の電極6は、第1の電極7と絶縁層53を介して形成され、櫛歯状であり、櫛歯の並び方向において、第1の電極7からはみ出る部分を含む。配向維持層8は、液晶層4と接する面に形成され、櫛歯の並び方向において、第2の電極6が第1の電極7からはみ出す方向に液晶配向を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置などの薄型表示装置について、さらなる高画質化、低価格化及び省電力化が求められている。液晶表示装置向けの着色フィルタについては、十分な色純度、高いコントラスト、平坦性など、より高画質表示を実現するための改善が求められている。
【0003】
液晶表示装置において、高画質化のために、VA(Vertically Alignment)、HAN(Hybrid-aligned Nematic)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)などの液晶の配向方式及び液晶駆動方式が提案されており、これらの技術により、広視野角・高速応答の液晶表示装置の実用化が図られている。
【0004】
ガラスなど基板面に対して、液晶を平行に配向させた広視野角で高速応答に対応しやすいVA方式、又は広視野角に有効なHAN方式などの液晶表示装置では、着色フィルタに対する平坦性(膜厚の均一性及び着色フィルタ表面の凹凸の低減)と誘電率などの電気的特性とについて、さらに高いレベルが要求される。このような高画質の液晶表示装置では、斜め方向視認での着色の低減のため、液晶セル厚(液晶層の厚み)を薄くする技術が重要になる。
【0005】
VA方式では、MVA(Multi-Domain Vertically Alignment)、PVA(Patterned Vertically Alignment)、VAECB(Vertically Alignment Electrically Controlled Birefringence)、VAHAN(Vertical Alignment Hybrid-aligned Nematic)、VATN(Vertically Alignment Twisted Nematic)などの様々な改良モードが開発されている。また、VA方式などのような液晶層の厚み方向に駆動電圧を印加する縦電界方式の液晶表示装置では、より高速の液晶応答、広い視野角技術、より高い透過率が求められる。
【0006】
基板表面に対し初期垂直である液晶は、電圧印加時に倒れる方向が定まりにくい。そこで、MVA技術においては、液晶駆動の電圧印加時に垂直配向液晶が不安定であることを解消するために、スリット状の凸部が複数設けられ、これらのスリット間に異なる配向方向の複数の液晶ドメインを形成することにより、広い視野角が確保される。
【0007】
特許文献1(特許第3957430号公報)には、第1及び第2の配向規制構造体(スリット)を用いて液晶ドメインを形成する技術が開示されている。
【0008】
特許文献2(特開2008−181139号公報)には、光配向を用いて4つの液晶ドメインを形成する技術が開示されている。この特許文献2では、広い視野角を確保するために、それぞれの液晶ドメインで、厳密なプレチルト角(水平方向から89度)制御に係わる複数回(4回)の配向処理が必要であり、90°異なる配向軸が必要なことが説明されている。
【0009】
特許文献3(特許第2859093号公報)及び特許文献4(特開4364332号公報)においては、カラーフィルタ基板側に透明導電膜によって形成される第1の電極(あるいは、対向電極、透明電極、表示電極、又は、カラーフィルタ側の共通電極と称してもよい)と、アレイ基板側の第1の電極(画素電極と称してもよい)及び第2の電極(あるいは、アレイ基板側の共通電極と称してもよい)を用い、斜め電界により垂直配向の液晶を制御する技術が開示されている。特許文献3では負の誘電率異方性の液晶が用いられており、特許文献4では、正の誘電率異方性の液晶が説明されている。なお、特許文献4には、負の誘電率異方性の液晶については記載されていない。
【0010】
通常、VA方式又はTN方式などの液晶表示装置の基本的構成は、第3の電極を備えたカラーフィルタ基板と、液晶を駆動する複数の第1の電極を備えたアレイ基板とが、液晶層を挟む。例えば、第1の電極は、TFT(薄膜トランジスタ)素子と電気的に接続され、櫛歯状パターン状に形成された透明電極である。この通常の構成では、カラーフィルタ上の第3の電極とアレイ基板側に形成された第1の電極との間に駆動電圧が印加され、この駆動電圧の印加により液晶が駆動される。第1の電極及び第3の電極を形成する透明導電膜は、通常、ITO(Indium Tin Oxide:(インジウム・スズの金属酸化物薄膜))、IZO(Indium Zinc Oxide)などの導電性の金属酸化物の薄膜である。
【0011】
特許文献5(特開2009−92815号公報)には、異なるプレチルト角を持つ一対の基板を用いる液晶表示装置が開示されている。
【0012】
特許文献6(特開2010−217867号公報)は、配向膜に用いられる配向剤を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3957430号公報
【特許文献2】特開2008−181139号公報
【特許文献3】特許第2859093号公報
【特許文献4】特開4364332号公報
【特許文献5】特開2009−92815号公報
【特許文献6】特開2010−217867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、垂直配向の液晶表示装置に適用されるMVA技術では、広い視野角を確保するために、スリットと呼ばれる配向規制構造体を用いて液晶ドメインが形成される。液晶が負の誘電率異方性の場合、カラーフィルタなどの上に形成されている2つの樹脂製のスリットの間に位置する液晶は、駆動電圧の印加前に基板面に対して垂直方向を向き、駆動電圧の印加時に2つのスリットに対して垂直な方向に倒れ、基板面に水平に並ぼうとする。しかし、2つのスリットの間の中央の液晶は、電圧印加にも関わらず倒れる方向が一義的に定まらず、スプレー配向やベンド配向をとる場合がある。このような液晶の配向乱れは、液晶表示でのざらつき、表示ムラ、透過率低下の原因となる。
【0015】
また、MVA方式の場合、液晶の倒れる量を駆動電圧で細かく制御することが難しく、中間調表示の制御が困難である。特に、MVA方式において、駆動電圧と表示(応答速度)とのリニアリティが低く、低い駆動電圧での中間調表示が困難である。
【0016】
中間調表示を良好に行う手法として、特許文献3及び特許文献4に示されるように、第1の電極、第2の電極、第3の電極を用い、斜め電界方式にて液晶配向を制御する手法は有効である。斜め電界方式では、液晶の倒れる方向を設定することができる。また、斜め電界方式では、液晶の倒れる量を容易に制御でき、中間調表示の制御を効果的に行うことができる。
【0017】
しかし、この斜め電界方式であっても、液晶のディスクリネーション対策が十分ではない場合がある。ディスクリネーションとは、意図しない液晶の配向乱れ又は未配向により、画素内に光の透過率の異なる領域が生じることである。
【0018】
特許文献3では、第3の電極の画素中央に透明導電膜のない配向制御窓を設けることにより、画素中央のディスクリネーションを固定化することが開示されている。しかし、特許文献3では、画素周辺のディスクリネーションの改善方法は開示されていない。また、画素中央でディスクリネーションを固定化できるが、ディスクリネーションを最小化する方法は開示されていない。さらに、液晶の応答性の改善技術については検討されていない。
【0019】
特許文献4では、透明導電膜(透明電極)上に誘電体層を積層するため、斜め電界方式の効果が増長され、好ましい。しかし、この特許文献4の図7に示されるように、電圧印加後も画素中央および画素端部には垂直配向の液晶が残り、透過率及び開口率が低下する場合がある。特許文献4では、負の誘電率異方性の液晶については検討されていない。正の誘電率異方性の液晶を用いる場合、画素中央部のディスクリネーションのため、透過率を向上させることが困難である。このため、特許文献4の技術は、半透過型の液晶表示装置では採用することが困難である。
【0020】
特許文献5には、異なるプレチルト角を持つ一対の基板を用いた液晶表示装置が開示されている。この特許文献5(特に請求項4、図3、[0024]段落など)では、液晶層に紫外光照射で重合するモノマーの添加を行い、液晶セル化後に電圧を印加しながら紫外光を照射して配向膜を形成する、いわゆるPSA(Polymer Sustained Alignment)技術が開示されている。また、特許文献5の[0035]段落には、TFT基板側の液晶分子に付与されるプレチルト角を、基板の垂直方向から1°以上4°以下とし、カラーフィルタ側基板でのプレチルト角を0°とすることが開示されている。また、特許文献5の[0048]段落には、カラーフィルタにITO電極を配置し、さらに垂直配向膜を塗布形成したカラーフィルタの構成が記載されている。特許文献5の図4から図6及び[0022]段落には、一画素分の断面構成が開示されている。
【0021】
しかしながら、特許文献5には、液晶表示装置の単位画素(一画素)内で、2つ又は4つの液晶配向のドメインを形成し、1つのドメインで1つの方向に液晶を配向させる技術については開示されていない。1つのドメイン内で液晶配向が均一化されない場合には、液晶表示装置の高い透過率を確保することが困難である。特許文献5の図4から図6の液晶配向では、単位画素内での液晶の並びが不均一であるため、高透過率とすることが困難である。特許文献5の[0031]段落では、カラーフィルタ基板側から紫外光を照射しているが、カラーフィルタの赤・緑・青などで紫外光の透過率に差があるため、異なる色の間で液晶のプレチルト角に差が生じ、色の間で液晶の応答に差が生じる場合がある。さらに、特許文献5では、TFT遮光部、カラーフィルタのブラックマトリクス、紫外光透過率の悪い画素などにおける紫外光遮光による未重合のモノマーの存在、及び硬化不十分の配向膜による信頼性低下については検討されていない。重合性化合物を液晶に添加し光重合させるPSA手法では、未重合のモノマーの存在、又は硬化不十分の配向膜により、経時的に液晶の応答性変化又は焼き付きを生じることがある。
【0022】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、表示精度が高く、製造工程を簡素化した液晶表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1の態様において、液晶表示装置は、アレイ基板と対向基板とを液晶層を挟んで対向させる構成を持つ。アレイ基板は、第1の電極と、第2の電極と、配向維持層とを備える。第1の電極は、櫛歯状であり、アクティブ素子と電気的に接続される。第2の電極は、第1の電極と絶縁層を介して形成され、櫛歯状であり、櫛歯の並び方向において、第1の電極からはみ出る部分を含む。配向維持層は、液晶層と接する面に形成され、櫛歯の並び方向において、第2の電極が第1の電極からはみ出す方向に液晶配向を行う。対向基板は、液晶駆動時に第1の電極との間で電圧が印加される第3の電極を具備する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の態様においては、液晶表示装置の表示精度を高くすることができ、その液晶表示装置の製造工程を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図2】第1の実施形態に係る着色フィルタ層を備える液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図3】プレチルト角が付与される前において初期状態が垂直配向の液晶を備える液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図4】液晶にプレチルト角が付与された第1の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図5】第1の電極に液晶駆動電圧が印加された直後の第1の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図6】液晶駆動電圧が印加されてから一定時間経過後の第1の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す部分断面図。
【図7】単位サブピクセル又は単位画素の平面形状の第1の例を示す平面図。
【図8】単位サブピクセル又は単位画素の平面形状の第2の例を示す平面図。
【図9】単位サブピクセル又は単位画素の平面形状の第3の例を示す平面図。
【図10】単位サブピクセル又は単位画素に対して備えられる複数の第1の電極及び複数のアクティブ素子の一例を示すブロック図。
【図11】第5の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図12】第6の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図13】第8の実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【図14】第9の実施形態に係る反射偏光板を用いた半透過型液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。
【0027】
以下の実施形態においては、特徴的な部分についてのみ説明し、通常の構成要素と差異のない部分については省略する。
【0028】
以下の実施形態において、液晶表示装置の単一色の表示単位は、1サブピクセル又は1画素であるとする。
【0029】
[第1の実施形態]
本実施形態においては、ディスクリネーションを軽減し、明るい表示を実現し、応答性及び中間調表示が良好な斜め電解方式の液晶表示装置について説明する。
【0030】
以下、本実施形態では、プレチルト角は、基板面から垂直な方向からの角度とする。例えば、基板面に垂直なプレチルト角は、0°と表す。
【0031】
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図である。この図1は、第1の電極の櫛歯部(線状導体)の軸と第2の電極の櫛歯部の軸とに対して、垂直な断面を示している。
【0032】
斜め電界方式の液晶表示装置1は、アレイ基板2と、対向基板3とが、液晶層4を挟んで貼り合わせた構成を持つ。
【0033】
アレイ基板2は、TFTなどのアクティブ素子(液晶駆動素子)が形成されている透明基板40上に、絶縁層51,52、第2の電極6、絶縁層53、第1の電極7、配向維持層(配向膜)8を順次形成することにより構成される。具体的には、アレイ基板2は、透明基板2上に絶縁層51及び絶縁層52を備え、絶縁層52の上に櫛歯状の第2の電極6を備える。さらに、アレイ基板2は、第2の電極6の形成された絶縁層52の上に、絶縁層53を備える。アレイ基板2は、絶縁層53の上に、櫛歯状の第1の電極7を備える。そして、アレイ基板2は、櫛歯状の第1の電極7の形成された絶縁層53の上に、配向維持層8を備える。
【0034】
対向基板3は、透明基板9上に、ブラックマトリクス10、透明導電膜である第3の電極11、透明樹脂層12、配向維持層13を順次形成することにより構成される。図1では、対向基板3の配向維持層13側が、液晶層4に接する状態が示されている。
【0035】
透明基板9としては、例えばガラス基板などが用いられる。ブラックマトリクス10は、透明基板9の平面(表面、上面)を、複数の開口領域(サブピクセル領域又は画素領域)に区分けするように形成される。開口領域の平面形状は、対向する辺が平行な多角形状であるとする。多角形としては、例えば、正方形、長方形、平行四辺形、折れ曲がった「くの字」状(V字状又はブーメラン状)などを用いることができる。第3の電極11は、ブラックマトリクス10の形成された透明基板9の平面を覆うように形成される。第3の電極11として透明導電膜が用いられる。第3の電極11の上には、透明樹脂層12が形成される。透明樹脂層12は、ブラックマトリクス10と重なる部分において突き出た状態となり、開口領域の中心線部分で窪んだ状態となる。さらに透明樹脂層12の上に配向維持層13が形成される。配向維持層13側の対向基板3の表面は、ブラックマトリクス10の形成位置で突出した凸部(重畳部)14を持ち、中央線部で窪んだ凹部15を持つ。
【0036】
ブラックマトリクス10は、液晶表示のコントラストをアップさせるため、単位サブピクセル又は単位画素の周囲、又は、単位サブピクセル又は単位画素の対向する2つの辺に配設される遮光層のパターンである。遮光層は、透明樹脂に遮光性の顔料を分散させた塗膜とする。遮光層は、一般に、感光性を付与され、露光・現像を含むフォトリソグラフィ法を行うことによってパターン形成される遮光性の塗膜である。
【0037】
単位サブピクセル又は単位画素は、ブラックマトリクス10の開口領域に対応する。なお、画素は絵素と同義である。
【0038】
配向維持層8,13は、配向処理を行った配向膜である。配向処理では、例えば、アレイ基板2、対向基板3、液晶層4を組み合わせて液晶セル化した状態で、液晶に電圧(例えば、1Vから10Vの交流又は直流の電圧)を印加しながら垂直配向膜に光など電磁波を照射してプレチルト角を付与する。配向処理において照射される光は、偏光であっても非偏光であってもよい。櫛歯状の第2の電極6は、図1における櫛歯部の並び方向(以下、水平方向という)に対する位置において、単位サブピクセル又は単位画素内で、第1の電極7からはみ出しているはみ出し部2aを含む。水平方向の位置においてずれのある第1の電極7と第2の電極6との間に電圧を印加することで液晶の倒れる方向決めが可能である。このため、本実施形態において配向維持層8,13によって実現されるプレチルト角は微小なものよい。ゆえに、配向処理としては、露光量を多くすることができる非偏光を適用してもよい。
【0039】
この図1においては、アレイ基板2の配向維持層8と、対向基板3の配向維持層13とが、互いに液晶層4を介して向き合っている。すなわち、配向維持層8,13は、それぞれアレイ基板2及び対向基板3の液晶層4と接する面に形成されている。配向維持層8,13は、例えば、約60nmの膜厚とする。
【0040】
対向基板3の配向維持層13側の面では、ブラックマトリクス10との重畳部分が突出しており、凸部14が形成される。
【0041】
対向基板3の配向維持層13側の面では、ブラックマトリクス10による開口領域の中心線部分がへこんでおり、凹部15が形成される。
【0042】
この図1において、偏光板、位相差板などは通常と同様に形成されるため、省略されている。液晶表示装置1は、偏光板に貼り合わせる形で、1枚から3枚の位相差板を備えるとしてもよい。
【0043】
上記のような構成を持つ液晶表示装置の作用及び効果について説明する。
【0044】
本実施形態に係る液晶表示装置においては、対向電極の形成されている対向基板の配向維持層と、液晶駆動素子の形成されているアレイ基板の配向維持層とを対向させ、間に液晶層を挟持する。
【0045】
液晶駆動時に、アレイ基板2の第1の電極7と第2の電極6との間、及びアレイ基板2の第1の電極7と対向基板3の第3の電極11との間で、電位が異なる。本実施形態においては、液晶駆動に、これらの電極6,7,11間に生じる斜め電界が活用される。
【0046】
第1の電極7と第2の電極6とは、いずれも櫛歯状パターンを持つ。櫛歯状パターンは、2μmから40μm程度の幅の2本以上の櫛歯部(線状導体)を電気的に連係部に接続することにより形成される。連係部は、櫛歯部の片側又は両側に形成される。連係部は、液晶表示装置1の位置として、開口領域の外に配置されることが望ましい。櫛歯状パターンの櫛歯部の間隔は、およそ3μmから100μmの範囲で、液晶セル条件、液晶材料に合わせて選択される。櫛歯部の形成密度、ピッチ、電極幅は、単位サブピクセル又は単位画素内で変化してもよい。図1の水平方向において、単位サブピクセル又は単位画素内で、第2の電極6は、第1の電極7よりも、断面中心Cからブラックマトリクス10へ向かう方向にはみ出している(ずれている)。はみ出し量は、液晶材料、駆動条件、液晶層4の厚さなどのディメンションで適宜調整可能である。第2の電極6におけるはみ出し部2aのはみ出し量は、1μmから6μmの小さい量でも十分である。第1の電極7と第2の電極6の重なり部2bは、液晶駆動に係わる補助容量として用いるとしてもよい。
【0047】
配向維持層8,13は、アレイ基板2及び対向基板3において、電極6,7,13より上に直接又は間接的に形成される有機膜である。配向維持層8,13は、液晶層4と接する位置に形成される。配向維持層8,13は、液晶を垂直配向させる配向膜に、光又は熱線などの放射線、又は電界下にて付与されるこれら放射線によって、液晶に対するプレチルト形成機能を付与することにより形成される。放射線としては紫外線が用いられてもよい。単位サブピクセル又は単位画素内の平坦面部分に形成された配向維持層8,13によるプレチルト形成機能は、実用的には、0°から1.5°の範囲で、より好ましくは0.1°から1°の範囲で、液晶にプレチルト角を与える。液晶表示装置1は、斜め電界を活用するため、1°未満の微小なプレチルト角でも液晶層4の液晶分子をスムースに駆動可能である。ノーマリーブラックの垂直配向の液晶では、配向維持層8,13によって与えられるプレチルト角が小さいほど、黒表示時の光漏れを減らし、高いコントラストを得ることができる。しかしながら、通常、プレチルト角が小さい垂直配向の液晶は、低電圧側の液晶駆動電圧が高くなり黒表示から中間調表示の再現性が低下する。
【0048】
しかしながら、本実施形態に係る配向維持層8,13を用いると、微小なプレチルト角であっても、低電圧で液晶応答の速い中間調表示が可能となる。なお、プレチルト角とは、液晶駆動電圧を印加しないときの、基板面の法線に対する液晶分子の長軸方向に対する傾斜角度をいう。垂直配向液晶のプレチルト角は、1.5°より大きくなると、光漏れによりコントラストを低下させる傾向にあり、プレチルト角はコントラスト観点で小さい方が好ましい。
【0049】
本実施形態においては、誘電率異方性が負である液晶について説明しているが、誘電率異方性が正の液晶についても同様である。誘電率異方性が正の液晶の場合、液晶は初期水平配向とし、駆動電圧を印加することにより液晶が基板面から立ち上がる。誘電率異方性が正の液晶の場合、配向維持層8,13に水平配向機能を付与することが必要である。感光性の配向膜を用いたプレチルト角の形成において、プレチルト角を大きくするためには、一般に露光量を増やす。本実施形態に係る液晶表示装置1のような斜め電界方式は、縦電界方式と比較して、液晶を低電圧で駆動容易であり、プレチルト角1°未満の軽い配向機能を付与する処理を行えばよいため、配向処理が簡便である。例えば、誘電率異方性が負の液晶として、室温付近で複屈折率が0.1程度のネマチック液晶を用いるとしてもよい。液晶層4の厚みは特に限定する必要はないが、本実施形態で実効的に用いることの可能な液晶層4のΔndは、概ね300nmから500nmの範囲である。配向維持層8,13を形成するための配向処理前の配向膜としては、例えば、感光性ポリオルガノシロキサン又は感光性ポリオルガノシロキサンと、ポリアミック酸又はポリイミドなどの重合体とを含有させた物質を用いてもよく、シロキサンシンアマートに代表されるシロキサン系重合体を用いてもよく、感光性ポリイミド又は感光性の重合性液晶材料などの塗膜を用いてもよい。また、配向膜としては、アゾベンゼン誘導体を用いた光配向膜、又は、主鎖に三重結合を持つポリアミック酸を含む光配向を用いることもできる。なお、プレチルト角は、例えば、Journal of Applied Physics, Vol.48 No.5, p.1783-1792(1977)に記載されているクリスタルローテーションなどによって測定できる。
【0050】
本実施形態に係る配向維持層8(必要であれば配向維持層13)は、垂直配向膜(プレチルト角は0°)に電場の存在下で光配向処理を行い、微小なプレチルト角を形成した層である。配向維持層8,13の配向膜としては、例えば、特許文献6に記載の配向剤を使用してもよい。
【0051】
TFTのチャネルが可視域透明な酸化物半導体で形成された場合、ブラックマトリクス10などの遮光層のパターンの線幅を細くすることができ、液晶表示装置1の明るさを向上させることができる。本実施形態においては、例えば、光配向を効率的に行い、かつ、液晶表示装置1の信頼性を向上させるために、酸化物半導体TFTを用いるとしてもよい。従来のPSA技術では、光重合性のモノマーを添加した液晶を用いるため、シリコン半導体に関わる大きな面積を占めるTFT遮光部又は着色フィルタ層のブラックマトリクス、紫外光透過率の悪い着色フィルタなどの紫外光遮光による未重合のモノマー残存、硬化不十分の配向膜によって、液晶表示装置の信頼性が低下する場合がある。しかしながら、本実施形態に係る液晶表示装置1においては、遮光部面積を少なくし、広い面積で露光を行い、光重合性のモノマーを使用しないことで、大幅に信頼性を向上させることができる。このような酸化物半導体TFTと比較して、シリコン半導体TFTは、可視域の光に感度をもつため、ブラックマトリクス10などの遮光層でTFTを大きめに遮光する必要がある。
【0052】
酸化物半導体には、可視域透明な金属の複合酸化物を適用することができる。これら金属酸化物を成分とする半導体材料は、亜鉛、インジウム、スズ、タングステン、マグネシウム、ガリウムのうち1種類以上の元素を含む酸化物であり、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛ガリウムインジウム(In−Ga−Zn−O)などの材料を用いるとしてもよく、他の材料を用いてもよい。これらの材料は実質的に透明であり、バンドギャップが2.8eV以上であることが好ましく、3.2eV以上であることがより好ましい。これらの材料の構造は単結晶、多結晶、微結晶、結晶/アモルファスの混晶、ナノ結晶散在アモルファス、アモルファスのいずれでもよい。酸化物半導体層の膜厚は20nm以上が望ましい。酸化物半導体層は、スパッタ法、パルスレーザー堆積法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、ゾルゲル法などの方法を用いて形成される。酸化物半導体層は、好ましくはスパッタ法、パルスレーザー堆積法、真空蒸着法、CVD法によって形成される。スパッタ法では、RFマグネトロンスパッタ法、DCスパッタ法を用いることができる。真空蒸着のためには、加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング法を用いることができる。CVD法としては、ホットワイヤーCVD法、プラズマCVD法などを用いることができるが、他の方法を用いてもよい。
【0053】
本実施形態に係る対向基板3では、ブラックマトリクス10を直接的又は間接的に覆うように透明樹脂層12が配設される。ブラックマトリクス10と重なっている透明樹脂層12の表面は、他の透明樹脂層13の表面より突出した凸部14を形成する。対向基板3における単位サブピクセル又は単位画素の中心を通る領域には凹部15が形成される。このような対向基板3の凸部14及び凹部15は、液晶の配向制御に利用可能である。凸部14は、ブラックマトリクス10と透明樹脂層13との直接的又は間接的な重畳部によって構成される。本実施形態では、凸部14の傾斜部又はショルダー部(肩の部分)での液晶配向を、駆動電圧印加時の液晶の倒れに利用する。
【0054】
凹部15においても、同様に、透明樹脂層13の傾斜部又はショルダー部での液晶配向を、液晶の倒れに利用する。
【0055】
凸部14の高さHは、0.4μmから2μmが好ましい範囲である。高さHが0.3μm以下の場合、電圧印加時の「液晶の倒れのトリガ」として効果が十分でない場合があり、高さHが2μmを超えると液晶セル製造時の液晶の流れに支障が生じる場合がある。
【0056】
凹部15の深さDは、0.3μm以上が望ましい。なお、凹部15は、第3の電極11にスリット(透明導電膜の形成されていない線状又は十字状のパターン)で代替されてもよい。
【0057】
図2は、本実施形態に係る着色フィルタ(カラーフィルタ)層を備える液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図である。
【0058】
液晶表示装置16は、アレイ基板2と対向基板17とを液晶層4を挟持する形で貼り合わせた構成を持つ。
【0059】
対向基板17は、透明基板9上に、ブラックマトリクス10、第3の電極11、透明パターン41、着色フィルタ(赤フィルタR、緑フィルタG、青フィルタB)を備えた着色フィルタ層18、透明樹脂層12、配向維持層13を順次形成して構成される。例えば、透明樹脂層12上には、約60nmの膜厚で配向維持層13が積層されている。ブラックマトリクス10と透明パターン41とのうちの少なくとも一方は、着色フィルタ層18の一部としてもよい。透明パターン30の上に形成された着色フィルタR,G,Bは、薄い膜厚で平坦に形成される。例えば、透明パターン30の膜厚を約0.6μmとし、透明パターン30の上に重ねて形成される着色フィルタR,G,Bの部分を約1.4μmとし、透明パターン30の形成されていない領域に形成される着色フィルタR,G,Bの他の部分を約2.0μmとすることができる。
【0060】
着色フィルタR,G,Bの形成されている平面領域のうち、透明パターン41の形成されている平面領域をダイナミック表示領域とする。一方、着色フィルタR,G,Bの形成されている平面領域のうち、透明パターン41の形成されていない平面領域を通常表示領域とする。本実施形態において、ダイナミック表示領域は、着色フィルタR,G,Bの平面形状の中央部に位置する。
【0061】
着色フィルタ(着色画素と称してもよい)は、有機顔料を透明樹脂に分散させた塗膜である。着色フィルタは、フォトリソグラフィ法により単位サブピクセル又は単位画素に対してパターン形成される。本実施形態において、着色フィルタは、赤フィルタR、緑フィルタG、青フィルタBを含む。着色フィルタの実効的な大きさは、マトリクスパターンの開口領域とほぼ同じになる。
【0062】
対向基板17は、液晶層4と接する表面に、ブラックマトリクス10、第3の電極11、着色フィルタ層18、透明樹脂層12、配向維持層13の積層された位置における凸部14と、開口領域中央線の位置における凹部15とを持つ。
【0063】
配向維持層8,13は、例えば、約60nmの膜厚で、アレイ基板2及び対向基板17の液晶層4と接する面に形成されている。この図2において、偏光板、位相差板などは省略している。
【0064】
対向電極11の上に着色フィルタ層18を備えた対向基板17では、着色フィルタR,G,B間の比誘電率の差が0.8又は1.0を超えると液晶表示において色むら又は光漏れが生じる場合がある。本実施形態においては、着色フィルタR,G,Bの比誘電率は、色剤である有機顔料の選択、顔料比率、母材の樹脂、分散材、その他の材料の選択により、比誘電率の値を4以下に抑えることができる。例えば、後述するように、緑フィルタGの有機顔料には、ハロゲン化銅フタロシアニン緑色顔料よりハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料が好ましい。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を緑フィルタGの色材に用いることで、緑フィルタGの比誘電率を小さくすることができ、緑フィルタGの比誘電率の値を赤フィルタR及び青フィルタBの比誘電率の値と揃えることが容易である。また、液晶駆動において液晶の立ち上がりが光の短波長側(青フィルタB)で速く、長波長側(赤フィルタR)で遅い場合に、着色フィルタR,G,Bの比誘電率の大きさを光の波長の順に調整してもよい。また、液晶表示装置16として用いる液晶の誘電率異方性Δεの値よりも、着色フィルタR,G,Bの構成部材の比誘電率の値を小さくすることにより、液晶駆動に支障ない条件を提供することができる。着色フィルタR,G,Bの形成には、感光性のアクリル樹脂を用いてもよい。一般に、アクリル樹脂などの透明樹脂の比誘電率は、概ね2.8前後である。調査の結果、有機顔料の分散系である着色フィルタR,G,Bの比誘電率の下限は、概ね2.9であった。
【0065】
本実施形態に係る液晶表示装置16のアレイ基板2側の第1の電極7及び第2の電極6の材料は、例えばITOなどの導電性の金属酸化物薄膜を用いることができる。また、金属酸化物薄膜より導電性の高い金属薄膜を用いて第1の電極及び第2の電極が形成されてもよい。液晶表示装置16が反射型又は半透過型の場合には、第1の電極7、第6の電極6のいずれかに、アルミニウム、アルミニウム合金の薄膜を用いてもよい。
【0066】
第1の電極7と第2の電極6とは、厚み方向に絶縁層53によって電気的に絶縁される。着色フィルタ層18、透明樹脂層12、及び絶縁層53の厚みは、液晶層4の厚み、誘電率、印加電圧、駆動条件によって調整することができる。絶縁層53がSiNx(窒化ケイ素)である場合、この絶縁層53の実用的な膜厚の範囲は、例えば0.1μmから0.6μmである。第1の電極7と第2の電極6の膜厚方向の位置は、逆の位置でもよい。また、本実施形態に係る液晶表示装置16では、斜め電界をより有効に活用することができるため、駆動電圧印加時の電気力線のおよぶ範囲を、液晶層4及び透明樹脂層12を含む膜厚方向に拡げたことにより、透過率をアップすることができる。なお、導電性金属酸化物であるITOとの低コンタクト性を有するアルミニウム合金の単層によりゲート配線及びソース配線などの信号線を形成する技術は、例えば、特開2009−105424号公報に開示されている。第1の電極7上にさらに絶縁層を積層することは、液晶駆動時の液晶の焼き付き(電荷の偏り又は蓄積が影響)の緩和効果があり、好ましい。
【0067】
本実施形態において、着色フィルタR,G,Bの比誘電率は、比較的重要な特性であるが、着色剤として添加する有機顔料の透明樹脂に対する比率によってほぼ一義的に決定される。このため、比誘電率を極端に大きく調整することは困難な場合がある。換言すれば、着色フィルタR,G,B中の有機顔料の種類や含有量は、液晶表示装置16として必要な色純度から設定され、それによって、着色フィルタ層18の比誘電率もほぼ決まる。なお、有機顔料の比率を高くして着色フィルタ層18を薄膜化することで、比誘電率を4以上とすることが可能である。また、透明樹脂として高屈折率材料を用いることで、比誘電率を若干アップさせることができる。
【0068】
着色フィルタ層18及び透明樹脂層12の厚みは、液晶のセルギャップ(液晶層4の厚み)との関係で最適化される。必要な電気特性の観点で、例えば、着色フィルタ層18及び透明樹脂層12の厚みが薄くなる場合、液晶層4の厚みを厚くすることができる。着色フィルタ層18及び透明樹脂層12の膜厚が厚い場合、これに対応して液晶層4の厚みを薄くすることができる。
【0069】
以下においては、対向基板17が、垂直方向において、ブラックマトリクス10、第3の電極11、着色フィルタ層18、透明樹脂層12、配向維持層13を積層している凸部14を備え、開口領域の中央線部分を通る凹部15を備え、液晶層4の誘電率異方性が負であり、この対向基板17及び液晶層4を備えた液晶表示装置16の作用及び効果を、説明する。
【0070】
図3は、プレチルト角が付与される前において初期状態が垂直配向の液晶を備える液晶表示装置16の一例を示す部分断面図である。この図3では、上記図2の緑フィルタG部分の左側半分を示している。なお、この図3で図示しない偏光板は、クロスニコルとする。液晶表示装置16はノーマリーブラックであるとする。偏光板は、例えば、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系有機高分子を延伸することによって生成され、延伸方向に吸収軸を有する。
【0071】
図3は、配向処理前における垂直配向の液晶(液晶分子)4a〜4kの初期配向状態を示している。なお、凸部14のショルダー部分、凹部15のショルダー部分付近の液晶4a,4gは、ショルダー部分に対して概ね垂直に配向しており、配向初期の段階で大きめのプレチルト角を付与されている。配向処理が実行されることによって配向維持層8,13となる配向膜は、約60nmの膜厚で、アレイ基板2及び対向基板17における液晶層4と接する面に形成されている。図3において、偏光板、位相差板などは省略している。以下の説明において、配向維持層8,13に最近接の液晶はアンカリング作用を強く受けており、液晶動作の説明上これらの液晶は必要でないため、最近接の液晶は図3において省略されている。
【0072】
図4は、液晶層4に含まれている液晶4a〜4kにプレチルト角が付与された液晶表示装置16の一例を示す部分断面図である。図4の液晶表示装置16では、図3の配向維持層8,13に、概ね0.4°から0.9°のプレチルト角θの配向機能が付与されている。したがって、図3で垂直配向していた液晶4b〜4f,4h〜4kは、図4において1°未満のプレチルト角を持つ。
【0073】
図5は、第1の電極7に液晶駆動電圧が印加された直後の、図4に示した配向維持層8,13を具備する液晶表示装置16の一例を示す部分断面図である。この図5では、単位サブピクセル又は単位画素の左半分の断面を示している。第1の電極7に液晶駆動電圧が印加された直後において、液晶4a〜4kは、図5の矢印方向に倒れる。
【0074】
この図5において、第2の電極6及び第3の電極11は共通の電位としている。駆動電圧印加に基づいて、まず、液晶4a,4h,4iが倒れ始め、続いてこれらの液晶4a,4h,4i周辺の液晶が倒れる。具体的には、凸部14のショルダー部分では、液晶4aが予めプレチルトされており、かつ、ブラックマトリクス10の上に第3の電極11が形成されているため、第1の電極7と第3の電極11との間の電極間距離が小さく、単位サブピクセル又は単位画素の中央線部分と異なり、印加される駆動電圧が液晶4aに伝搬しやすい。したがって、凸部14のショルダー部分近傍の液晶4aは、対向基板17側の他の液晶の倒れる動作のトリガとなる。
【0075】
アレイ基板2側の液晶4h,4iは、第1の電極7と第6の電極6との間が絶縁層53の厚み(例えば0.4μm)しかなく、実効的に強い駆動電圧で印加されることになり、最初に倒れ始める。液晶4a〜4kは、配向維持層8,13によりわずかにプレチルト角が形成されているため、低い電圧で倒れやすい。このため、本実施形態に係る液晶表示装置16は、低電圧での制御性が向上し、液晶4a〜4kの応答性と中間調表示性能が向上する。換言すれば、図5における、倒れのトリガとなる液晶4a,4h,4iから他の液晶4b〜4f,4j,4kへの横方向の倒れの伝播が著しく速くなり、応答速度が向上する。液晶4b〜4f,4j,4kは、例えば、図2に示す矢印のように単位サブピクセル又は単位画素の中央部から両端方向に2分する状態で素早く倒れる。
【0076】
図6は、液晶駆動電圧が印加されてから一定時間経過後の液晶表示装置16の一例を示す部分断面図である。この図6は、緑サブピクセル又は緑画素の左半分の断面を示しているため、緑表示の状態を示す。なお、着色フィルタ層18を備えない対向基板17の場合には、液晶4a〜4kが倒れると白表示となる。
【0077】
図6に透明パターン41は、透明樹脂によって形成される。透明パターン41は、着色フィルタR,G,Bの形成されている平面領域の中心部に形成される。この透明パターン41の形成されている平面領域を、ダイナミック表示領域とする。一方、着色フィルタR,G,Bの平面領域のうち、透明パターン41の形成されていない領域を、通常表示領域とする。着色フィルタR,G,Bのダイナミック領域の膜厚は、着色フィルタR,G,Bの通常表示領域の膜厚よりも薄い。したがって、ダイナミック領域の光透過量は、通常表示領域の光透過量よりも多く、ダイナミック領域を通常表示領域よりも明るく表示することができる。ダイナミック表示領域に配置されている液晶4fは、第1の電極7の複数の櫛歯部のうち開口領域の内側の櫛歯部7aを、開口領域の外側の櫛歯部7bと異なるアクティブ素子で駆動することにより、独立に制御することができ、サブピクセル又は画素の明るさを調整することができる。
【0078】
上記の図5及び図6には図示されていないが、サブピクセル又は画素の反対側(右側)の半分では、液晶の倒れる方向が、図5及び図6の逆向きとなる。本実施形態においては、単位サブピクセル又は単位画素内で右半分と左半分で液晶の傾斜勾配が反対となり、広い視野角を確保することができる。
【0079】
本実施形態において、例えば、単位サブピクセル又は単位画素内で、櫛歯状電極である第1の電極7と第2の電極6との櫛歯部の並びの方向、又は、第2の電極6のはみ出し方向を複数方向とすることにより、単位サブピクセル又は単位画素内で、配向方向が異なる複数の液晶ドメインを形成することができ、視野角を広くすることができる。なお、第1の電極7と第2の電極6との重なり部2bは、補助容量として液晶駆動に活用できる。
【0080】
図7乃至図9は、単位サブピクセル又は単位画素の平面形状の第1乃至第3の例を示す平面図である。
【0081】
単位サブピクセル又は単位画素の平面形状(ブラックマトリクスによって形成される開口領域の平面形状)は、例えば、正方形、長方形、平行四辺形、「くの字」状(V字状又はブーメラン形状)のような、向かい合う辺が互いに平行な多角形パターンとすることができる。
【0082】
図7乃至図9では、単位サブピクセル又は単位画素の平面形状と、第1の電極7との関係を示している。図7では、長方形状の単位サブピクセル又は単位画素の平面図の例である。図8では、くの字状の単位サブピクセル又は単位画素の平面図の例である。図9は、平行四辺形の単位サブピクセル又は単位画素の平面図の例である。図7乃至図9の矢印は、液晶の倒れる方向を示している。図7乃至図9において、第1の電極7の櫛歯部の軸方向は、単位サブピクセル又は単位画素の側辺又は長辺に対して平行に形成されている。
【0083】
液晶表示の広視野角を実現するためには、単位サブピクセル又は単位画素の平面形状は、図8の「くの字」状又は図9の平行四辺形とすることが好ましい。
【0084】
単位サブピクセル又は単位画素に複数のアクティブ素子を形成し、それぞれのアクティブ素子と櫛歯形状の画素電極により、単位サブピクセル又は単位画素を分割駆動し、視角制御又は立体画素表示に用いることができる。くの字状又は平行四辺形の単位サブピクセル又は単位画素の組み合わせは、これら単位サブピクセル又は単位画素の長辺方向に対して、画素電極の櫛歯部及び共通電極の櫛歯部を平行に配設する。これにより、単位サブピクセル又は単位画素内で、複数のドメインを形成することができる。液晶のプレチルト角の形成方向によって複数のドメインを形成することができ、視野角を広くすることができる。画素電極に対する共通電極の水平方向のはみ出し方向に応じて液晶の倒れる方向を決定することにより、複数のドメインを形成することができ、視野角を広くすることができる。
【0085】
単位サブピクセル又は単位画素の平面形状を例えば「くの字」状又は平行四辺形状とすることにより、配向方向の異なる複数の液晶ドメインを形成することができる。
【0086】
従来において、視野角拡大のために複数の液晶ドメインを形成する場合には、配向維持層の複数回・複数方向のラビング、又は、複数回の光配向及び複数方向からの光配向が必要であった。しかしながら、本実施形態においては、複数回の配向処理を実施しなくても、配向方向の異なる複数の液晶ドメインを形成し、視野角を拡大することができる。
【0087】
図10は、単位サブピクセル又は単位画素に対して備えられる複数の第1の電極及び複数のアクティブ素子の一例を示す平面図である。
【0088】
この図10においては、単位サブピクセル又は単位画素内に、櫛歯の並び方向の異なる複数の第1の電極7が配置されている。複数の第1の電極7には、1以上のアクティブ素子19が電気的に接続されている。この図19では、複数の第1の電極7のそれぞれに、アクティブ素子19が接続されている。単位サブピクセル又は単位画素で、複数の第1の電極7に対する複数の第2の電極6の水平方向のはみ出し方向は、複数の方向とする。このように、単位サブピクセル又は単位画素内で複数の配向方向を実現することにより、視野角を広くすることができる。
【0089】
以上で説明した本実施形態に係る液晶表示装置1,16においては、液晶への印加電圧が等電位線の形状として均質な広がりを持つ。このため、対向基板3,17では、第3の電極11上に透明樹脂層12と着色フィルタ層18とのうちの少なくとも一方が誘電体として積層される。本実施形態においては、等電位線が均質に広がることにより、単位サブピクセル又は単位画素内での液晶の倒れを大きくすることができ、これにより透過率を向上させることができる。
【0090】
本実施形態においては、対向電極3,17上に透明樹脂層12と着色フィルタ層18とのうちの少なくとも一方が誘電対として積層される。この構成において、液晶セルギャップを規制するスペーサが、透明樹脂層12と着色フィルタ層18とのうちの少なくとも一方を積層することにより形成されるとしてもよい。これにより、対向基板3,17がアレイ基板2に接することがなくなり、対向ショートによる輝度欠点をなくすことができる
なお、本実施形態において、第3の電極11は、液晶層4に近い位置(例えば、透明樹脂層12よりも液晶層4側、又は、着色フィルタ層18よりも液晶層4側)に形成されるとしてもよい。
【0091】
[第2の実施形態]
本実施形態においては、上記第1の実施形態で説明した緑フィルタGにおいて好ましい緑色顔料について説明する。なお、以下の実施形態で示される組成含有量は、質量比であり、部は質量部である。
【0092】
(緑色顔料の比誘電率の測定)
緑色顔料の比誘電率は、インピーダンスアナライザを用い、電圧3Vの条件にて、120、240、480Hzの周波数で測定する。測定試料は、アルミニウム薄膜からなる導電膜をパターン形成したガラス基板上に緑フィルタGを塗布・硬膜し(膜厚は例えば2μmとする)、さらに緑フィルタGの上にアルミニウム薄膜からなる導電膜パターンを形成する。
【0093】
以下に示す緑色顔料1を含む緑色組成物1、緑色顔料2を含む緑色組成物2、緑色顔料3を含む緑色組成物3を用いて得た3種の緑フィルタGについて、比誘電率を測定する。
【0094】
(緑色顔料1の調製)
下記の組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して赤色顔料1の分散体を作製する。
【0095】
緑色顔料:C.I.Pigment Green 58 10.4部
黄色顔料:C.I.Pigment Yellow 150 9.6部
分散剤 2部
アクリルワニス(固形分20質量%) 66部
(緑色顔料2の調製)
下記の組成の混合物を用い、緑色顔料1と同様の方法で緑色顔料2の分散体を作製する。
【0096】
緑色顔料:C.I.Pigment Green 58 10.4部
黄色顔料:C.I.Pigment Yellow 150 3.2部
黄色顔料:C.I.Pigment Yellow 138 7.4部
分散剤 2部
アクリルワニス(固形分20質量%) 66部
(緑色顔料3の調製)
下記の組成の混合物を用い、緑色顔料1と同様の方法で緑色顔料3の分散体を作製する。
【0097】
緑色顔料:C.I.Pigment Green 36 10.4部
黄色顔料:C.I.Pigment Yellow 150 9.6部
分散剤 2部
アクリルワニス(固形分20質量%) 66部
(緑色組成物1の調製)
下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して緑色組成物1が生成される。
【0098】
緑色顔料1 46部
アクリル樹脂溶液 8部
ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサーアクリレート 4部
光重合開始剤 1.2部
光重合開始剤 3.5部
増感剤 1.5部
シクロヘキサノン 5.8部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 30部
(緑色組成物2の調製)
分散体として、緑色顔料2を使用することを除き、緑色組成物1と同様の組成及び方法で緑色組成物2が生成される。
【0099】
(緑色組成物3の調製)
分散体として、緑色顔料3を使用することを除き、緑色組成物1と同様の組成及び方法で緑色組成物3が生成される。
【0100】
(緑色組成物1から緑色組成物3の比誘電率の比較)
緑色組成物1、緑色組成物2、緑色組成物3の比誘電率を表1に示す。
【表1】

【0101】
液晶表示装置16用の着色フィルタ層18の青フィルタBに用いられる青色顔料、赤フィルタRに用いられる赤色顔料の組成物の塗膜の比誘電率は、概ね3.1から3.7の範囲に調整できるため、緑フィルタGの主要な緑色顔料としては、上記第1の実施形態で説明したように、ハロゲン化銅二ロシアニン緑色顔料よりハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料が好適である。なお、主要な緑色顔料とは、緑フィルタGに一番多く含有される緑色顔料を意味する。
【0102】
[第3の実施形態]
以下に、上記第1の実施形態に係る対向基板3,17に用いられる透明樹脂及び有機顔料などについて例示する。
【0103】
(透明樹脂)
ブラックマトリクス10などの遮光層又は着色フィルタR,G,Bの形成に用いる感光性着色組成物は、顔料分散体に加え、多官能モノマー、感光性樹脂又は非感光性樹脂、重合開始剤、溶剤などを含有する。例えば感光性樹脂及び非感光性樹脂などのような、本実施形態で用いることが可能な透明性の高い有機樹脂を総称して透明樹脂と呼ぶ。
【0104】
透明樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は感光性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、 ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂とイソシアネート基を含有する化合物とを反応させて生成されるとしてもよい。
【0105】
(アルカリ可溶性樹脂)
本実施形態に用いるブラックマトリクス10などの遮光パターン、透明パターン、着色フィルタR,G,Bの形成には、フォトリソグラフィによるパターン形成可能な感光性樹脂組成物を用いることが好ましい。これらの透明樹脂は、アルカリ可溶性を付与された樹脂であることが望ましい。アルカリ可溶性樹脂として、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂を用いるとしてもよく、他の樹脂を用いるとしてもよい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂などを用いることができる。これらのうちでも、アルカリ可溶性樹脂としては、エポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂を用いることが好ましく、特に、エポキシアクリレート系樹脂又はノボラック系樹脂が好ましい。
【0106】
(アクリル樹脂)
本実施形態で適用可能な透明樹脂の代表として、以下のアクリル系樹脂が例示される。
【0107】
アクリル系樹脂としては、単量体として、例えば(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートペンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエーテル基含有(メタ)アクリレート;及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートなどを用いて得る重合体を用いることができる。
【0108】
なお、ここで例示された単量体は、単独で使用、または、2種以上を併用することができる。さらに、アクリル樹脂は、これら単量体と共重合可能なスチレン、シクロヘキシルマレイミド、及びフェニルマレイミドなどの化合物との共重合体を用いて生成されてもよい。
【0109】
また、例えば(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和基を有するカルボン酸を共重合して得られた共重合体と、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基及び不飽和二重結合を含有する化合物とを反応させることにより、感光性を有する樹脂を生成してもよい。例えば、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートの重合体、又は、この重合体とその他の(メタ)アクリレートとの共重合体に、(メタ)アクリル酸などのカルボン酸含有化合物を付加させることによって、感光性を有する樹脂を生成してもよい。
【0110】
(有機顔料)
赤色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、272、279などを用いることができる。
【0111】
黄色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214などを用いることができる。
【0112】
青色顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80などを用いることができ、これらの中では、C.I.Pigment Blue 15:6が好ましい。
【0113】
紫色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50などを用いることができ、これらの中では、C.I.Pigment Violet 23が好ましい。
【0114】
緑色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58などを用いることができ、これらの中では、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料であるC.I.Pigment Green 58が好ましい。
【0115】
(遮光層の色材)
遮光層又はマトリクスパターンに含まれる遮光性の色材は、可視光波長領域に吸収を有することにより遮光機能を示す色材である。本実施形態において遮光性の色材には、例えば、有機顔料、無機顔料、染料などを用いることができる。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタンなどを用いることができる。染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料などを用いることができる。有機顔料については、前記の有機顔料が採用可能である。なお、遮光性成分は、1種を用いてもよく、適当な比率で2種以上を組み合わせてもよい。また、これら色材の表面の樹脂被覆により高体積抵抗化が行われてもよく、逆に、樹脂の母材に対して色材の含有比率を上げて若干の導電性を付与することにより低体積抵抗化が行われてもよい。しかし、このような遮光性材料の体積抵抗値は、およそ1×108〜1×1015Ω・cmの範囲であるので、透明導電膜の抵抗値に影響するレベルではない。同様に、遮光層の比誘電率も色材の選択又は含有比率でおよそ3〜20の範囲で調整できる。ブラックマトリクス10、着色フィルタ層18、透明樹脂層12の比誘電率は、液晶表示装置1,16の設計条件及び液晶駆動条件に応じて、前記されている比誘電率の範囲内で調整できる。
【0116】
[第4の実施形態]
本実施形態においては、上記図2に示す液晶表示装置16の具体例について説明する。液晶表示装置16のアレイ基板2は、透明基板40と、酸化物半導体TFT(図示せず)に電気的に接続される第1の電極7と、第1の電極7と絶縁層53を介して配置される第2の電極6とを備える。配向維持層8,13は、アレイ基板2及び対向基板17の液晶層4に接する側の表面に形成される。配向維持層8,13は、電圧印加と光照射を併用した製造方法によって、感光性の配向膜にプレチルト機能を付与することで形成される。配向維持層8,13へのプレチルト角の付与は、第1の電極7、第2の電極6、第3の電極11に液晶駆動電圧を印加し、図4に示すように液晶4a〜4kを傾斜させた状態で紫外光を照射して行う。図4に示すように、液晶4a〜4kは、水平方向において第1の電極7から第2の電極6がはみ出す方向に倒れるので、プレチルト角の向きは、櫛歯部の並び方向に対し、第1の電極7から第2の電極6がはみ出る方向に形成される。液晶層4は、誘電率異方性が負の液晶を含む。
【0117】
(ブラックマトリクス10の形成)
<ブラックマトリクス形成用のフォトレジスト>
遮光層の材料としてブラックマトリクス形成用フォトレジストが以下の材料を使用して生成される。
【0118】
カーボンブラック分散液
透明樹脂(固形分56.1質量%)
光重合性モノマー
開始剤
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート
レベリング剤
これらの材料を、以下の組成比で混合攪拌することにより、ブラックマトリクス形成用フォトレジスト(固形分中の顔料濃度:約20%)が生成される。
【0119】
カーボンブラック分散液 3.0質量部
透明樹脂 1.4質量部
光重合性モノマー 0.4質量部
第1の光重合開始剤 0.67質量部
第2の光重合開始剤 0.17質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 14質量部
エチル−3−エトキシプロピオネート 5.0質量部
レベリング剤 1.5質量部
<ブラックマトリクス形成条件>
無アルカリガラスである透明基板上に、上記ブラックマトリクス形成用レジストをスピンコートし、乾燥させ、膜厚1.5μmの塗膜を生成する。この塗膜を100℃で3分間乾燥した後、露光用のフォトマスクを用い、光源として超高圧水銀灯ランプを用いて200mJ/cm2の照射を行う。
【0120】
次に、基板に対して2.5%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間の現像を行い、現像後よく基板を水洗し、さらに乾燥した後、基板に対して230℃で60分加熱処理を行い、硬膜させて基板にブラックマトリクス10を形成する。図2に示すブラックマトリクス10の画線幅は、例えば、約16μmとする。ブラックマトリクスの単位サブピクセル又は単位画素の平面形状は、例えば、図7に示す平行四辺形を用いてもよい。
【0121】
(対向電極11の形成)
スパッタリング装置を用いて、ブラックマトリクス10のパターンの全面を覆うように、ITOからなる第3の電極11を0.14μmの膜厚で形成する。
【0122】
(透明パターン41の形成)
後述する感光性樹脂液A、及び透明パターン41に対応する開口パターンを持つフォトマスクを使用して、フォトグラフィ法により、単位サブピクセル又は単位画素の平面の中央部(ブラックマトリクス10の開口領域の中央部)に、ブラックマトリクス10と平行な透明パターン41が形成される。透明パターン41は、例えば開口領域が平行四辺形状の場合に、平行四辺形状とする。透明パターン41の膜厚は、例えば、約0.6μmとする。
【0123】
(着色フィルタR,G,Bの形成)
<着色フィルタ形成用分散液>
着色フィルタR,G,Bに分散する有機顔料として、以下の顔料が使用される。
【0124】
赤色用顔料:C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 177
緑色用顔料:C.I.Pigment Green 58、C.I.Pigment Green Yellow 150
青色用顔料:C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Violet 23
以上の顔料を用いて、赤色、緑色、及び青色の各色分散液が生成される。
【0125】
<赤色分散液>
赤色顔料:C.I.Pigment Red 254 18質量部
赤色顔料:C.I.Pigment Red 177 2質量部
アクリルワニス(固形分20質量%) 108質量部
上記の組成の混合物を均一に攪拌した後、ガラスビーズを用いてサンドミルで5時間分散し、5μmフィルタで濾過して赤色分散液を生成する。
【0126】
<緑色分散液>
緑色顔料:C.I.Pigment Green 58 16質量部
緑色顔料:C.I.Pigment Green Yellow 150 8質量部
アクリルワニス(固形分20質量%) 102質量部
上記の組成の混合物に対して、赤色分散液と同様の生成方法を用いて、緑色分散液を生成する。
【0127】
<青色分散液>
青色顔料:C.I.Pigment Blue 15 50質量部
青色顔料:、C.I.Pigment Violet 23 2質量部
分散剤 6質量部
アクリルワニス(固形分20質量%) 200質量部
上記の組成の混合物に対して、赤色分散液と同様の生成方法を用いて、青色分散液を生成する。
【表2】

【0128】
露光・現像及び硬膜後、各着色フィルタR,G,Bの膜厚は例えば、約2μmとする。
【0129】
(透明樹脂層12の形成)
<樹脂Aの合成>
セパラブルフラスコ中で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを686質量部、グリシジルメタクリレートを332質量部、アゾビスイソブチロニトリルを6.6質量部加え、窒素雰囲気下において80℃で6時間加熱し、樹脂溶液を生成する。
【0130】
次に、樹脂溶液に、アクリル酸を168質量部、メトキノンを0.05質量部、トリフェニルフォスフィンを0.5質量部加え、空気を吹き込みながら100℃で24時間加熱し、アクリル酸付加樹脂溶液を生成する。
【0131】
さらに、生成されたアクリル酸付加樹脂溶液に、テトラヒドロフタル酸無水物を186質量部加え、70℃で10時時間加熱し、樹脂A溶液を生成する。
【0132】
<感光性樹脂液Aの調製>
以下の組成にて、ネガ型の感光性樹脂液Aを調製する。
【0133】
樹脂A 200質量部
光重合性モノマー
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100質量部
光重合開始剤 100質量部
溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 450質量部
上記の感光性樹脂液A及び凹部のパターンのあるフォトマスクを使用し、フォトリスグラフィ法にて、図2に示す、8μm幅、深さ0.5μmの凹部15の線状パターンを具備する透明樹脂層12を形成する。
【0134】
(配向維持層13の形成)
対向基板17への配向維持層13の形成は後述する。
【0135】
(酸化物半導体TFT及びアレイ基板2の構成)
アレイ基板2は、透明基板40であるガラス基板上に、図2に示すように、絶縁層51,52、第2の電極6、絶縁層53、第1の電極7、配向維持層8をこの順で備える。アレイ基板2は、図示されていないが、第1の電極7に液晶駆動電圧を印加するためのアクティブ素子19、アクティブ素子19に電気的に接続されるゲート線及びソース線を備える。
【0136】
アクティブ素子19は、例えば、ボトムゲート型トップコンタクトエッチストッパー構造を持つ。
【0137】
アクティブ素子19の製造においては、まずITO薄膜をDCマグネトロンスパッタ法で140nm形成する。次に、ITO薄膜を着色フィルタR,G,Bの各単位サブピクセル又は単位画素の位置と位置合わせをしながら、所望の形状にパターニングし、ゲート電極及び補助コンデンサ電極を形成する。さらにその上に、プラズマCVD法を用いてSiH4、NH3、H2を原料ガスとしてSiHx薄膜を350nm形成し、透明な絶縁層であるゲート絶膜とする。さらに、チャネル層として、InGaZnO4ターゲットを用いてアモルファスIn−Ga−Zn−O薄膜をDCスパッタ法により40nm形成し、所望の形状にパターニングし、透明なチャネル層を形成する。さらに、Si34ターゲットを用い、RFスパッタ法でAr及びO2を導入しながらSiON薄膜を形成し、所望の形状にパターニングし、チャネル保護層を形成する。さらに、ITO薄膜をDCマグネトロンスパッタ法によって140nm形成し、所望の形状にパターニングし、ソース・ドレイン電極を形成する。
【0138】
(配向維持層8,13の構成と製造方法)
配向維持層(プレチルト角の付与された配向膜)8,13は、それぞれアレイ基板2及び対向基板17の表面に形成される。
【0139】
アレイ基板2及び対向基板17には、予めn−メチル−2−ピロリドンとブチルセルソルブの混合溶剤に溶解した感光性ポリオルガノシロキサンとポリアミック酸との混合の垂直配向剤を印刷して垂直配向膜を形成する。印刷後の乾燥温度は180℃とし、垂直配向膜の膜厚は、例えば、いずれも約60nmとする。
【0140】
3.6μmの球状スペーサを含むエポキシ接着剤を、対向基板17に液晶のシール部として印刷し、この対向基板17の中央に誘電率異方性が負である液晶を滴下し、空気が入らないようアレイ基板を貼り合わせ、液晶セルを形成する。この液晶セルは、一度150℃まで加温して液晶を等方性とする。
【0141】
次に、アレイ基板2の第1の電極7に交流の電圧を印加しながら、透明基板40のガラス面から、また、ガラス面の法線方向(ガラス面に垂直な向き)から非偏光の紫外光を2000J/m2照射する。なお、第1の電極6及び第3の電極11は0Vのアース電位とする。
【0142】
駆動電圧の大きさ、電圧の付与の仕方、紫外光の照射量、斜め方向からの偏光紫外光の併用などにより、種々のプレチルト角を配向膜に付与し、配向維持層8,13を形成することができる。本実施形態では、アレイ基板2上の配向維持層8のプレチルト角は、概ね0.4°から0.9°の範囲とし、水平方向において第1の電極7から第2の電極6がはみ出る方向に傾く。
【0143】
配向処理が行われた液晶セルの両面に偏光板が貼付されて液晶表示装置16が形成される。本実施形態に係る液晶表示装置16は、液晶駆動電圧が無印加のときのノーマリーブラックでの光漏れがほとんどなく、良好な黒表示を実現する。
【0144】
また、本実施形態に係る液晶表示装置16は、第1の電極7、第2の電極6、第3の電極11による斜め電界駆動方式を適用するため、配向維持層8,13のプレチルト角が微小であっても低電圧側での良好な中間調表示を行うことができる。
【0145】
[第5の実施形態]
本実施形態においては、上記図2の液晶表示装置16の変形例について説明する。
【0146】
図11は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図である。
【0147】
液晶表示装置20の対向基板21は、着色フィルタ層18と第3の電極11との構成順序が、図2の対向基板17と入れ替わっている。具体的には、本実施形態に係る対向基板21は、透明基板9の表面に、ブラックマトリクス10が形成され、着色フィルタ層18が形成され、第3の電極11が形成され、透明樹脂層12が形成され、配向維持層13が形成される。対向基板21に用いられる材料及び工程条件は、上記図2の対向基板18と同様とすることができる。
【0148】
[第6の実施形態]
本実施形態においては、上記図2の液晶表示装置16の変形例について説明する。
【0149】
図12は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図である。
【0150】
液晶表示装置22の対向基板23では、着色フィルタ層18の中央線部に凹部24が形成されている点で、透明樹脂層12の中央線部に凹部15が形成されているが着色フィルタ層18の中央線部には凹部15が形成されていない上記図2の対向基板17と相違している。
【0151】
凹部24は、上記図2の対向基板17の凹部15と同様工程で形成できる。例えば、着色フィルタ層18の開口領域の縦中央部(単位サブピクセル又は単位画素パターンの中央線部)に、透過率の異なる線状パターンをハーフトーンで形成したフォトマスクを用いて、凹部24が形成される。
【0152】
本実施形態に係る対向基板23の製造工程においては、上記図2の対向基板17の製造工程で必要であった透明樹脂層12のフォトリソグラフィ工程を省略することができる。すなわち、本実施形態においては、透明樹脂層12に熱硬化の樹脂材料を用い、塗布と熱硬化のみで透明樹脂層12を形成することができる。着色フィルタ層18に凹部24が形成されているため、透明樹脂層12及び配向維持層13は、この着色フィルタ層18の凹部24が埋まらない程度の膜厚とする。
【0153】
[第7の実施形態]
本実施形態においては、上記図1の液晶表示装置1に関する説明を補足する。
【0154】
上記図1の液晶表示装置1の対向基板3は、上記図2の液晶表示装置16の対向基板17の着色フィルタ層18の形成を省略している。この対向基板17は、例えば、白黒表示の小型携帯機器向け液晶表示装置、又は、フィールドシーケンシャル法でのカラー表示用液晶表示装置に備えられる。
【0155】
液晶表示装置1は、着色フィルタ形成の工程を除き、上記図2の液晶表示装置16と同様に、アレイ基板2、対向基板3、誘電率異方性が負の液晶層4を用いてセル化される。対向基板3側には、予めn−メチル−2−ピロリドンとブチルセルソルブとの混合溶剤に溶解したポリイミドの垂直配向剤を印刷して垂直配向膜が形成される。アレイ基板2側には、感光性ポリオルガノシロキサンとポリアミック酸との混合の垂直配向剤を印刷して垂直配向膜が形成される。
【0156】
上記図1の液晶表示装置1では、上記図2の液晶表示装置16と同様に液晶セル化がなされ、電場下の液晶に紫外線が照射され、アレイ基板2上の配向膜にプレチルト角が付与されることにより、配向維持層8が形成される。本実施形態において、対向基板3の配向膜は、感光性を持たないとする。このため、対向基板3では、プレチルト角が付加されない垂直配向膜が配向維持層13となる。上記図1のブラックマトリクス10の開口領域の形状は、例えば、図8に示す「くの字」状のパターンとすることができる。
【0157】
[第8の実施形態]
本実施形態においては、上記図1の液晶表示装置1の変形例について説明する。
【0158】
図13は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図である。
【0159】
液晶表示装置25の対向基板26は、着色フィルタ層18を備えていない。対向基板26は、例えば、白黒表示の小型携帯機器向け液晶表示装置、又は、フィールドシーケンシャル手法によるカラー表示用の液晶表示装置に備えられる。
【0160】
対向基板26の透明樹脂層12には、凹部15が形成されておらず、その代替として第3の電極11の中央線部にスリット(透明導電膜のない線状開口部)27が形成されている。スリット27は、第3の電極11の形成後、エッチング技術を用いたフォトリソグラフィ法で、各単位サブピクセル又は単位画素の中央線部に形成される。配向維持層13の形成は、上記図1の場合と同様である。
【0161】
本実施形態においては、凹部15を設けなくてもスリット27を設けることにより、上記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0162】
[第9の実施形態]
本実施形態においては、反射偏光板を用いた半透過型液晶表示装置を用いて、上記第1乃至第8の実施形態で説明した対向基板3,17,21,23,26を備えた液晶表示装置について説明する。なお、半透過型液晶表示装置ではない他の液晶表示装置についても、上記第1乃至第8の実施形態で説明した対向基板3,17,21,23,26を適用可能である。
【0163】
図14は、本実施形態に係る反射偏光板を用いた半透過型液晶表示装置の構成の一例を示す部分断面図である。反射偏光板としては、例えば、特許第4177398号公報に記載されている反射偏光板を用いることができる。
【0164】
この図14に示す液晶表示装置28は、上記図2に示す対向基板17を備えているが、上記各実施形態で説明した他の対向基板3,21,23,26を用いることもできる。
【0165】
アレイ基板2及び対向基板17の液晶層4に接する側に形成された配向維持層8,13は、感光性ポリオルガノシロキサンとポリアミック酸との混合の垂直配向剤を印刷形成した垂直配向膜である。配向維持層8,13には、上述したように、液晶駆動電圧を印加して光配向処理が行われる。
【0166】
液晶表示装置28は、アレイ基板2及び対向基板17を対向して配置し、アレイ基板2と対向基板17との間に誘電率異方性が負である液晶層4を挟持する構成を持つ。
【0167】
対向基板17の2つの表面のうち液晶層4と反対側の表面には、光学補償層29及び偏光板30が配置されている。
【0168】
アレイ基板2の2つの表面のうち液晶層4と反対側の表面には、偏光板31、光拡散層32、反射偏光板33、光学補償層34、プリズムシート35、光拡散層36、導光板37、光反射板38が順次備えられている。導光板37には、例えばLEDなどの光源39が備えられる。
【0169】
光源39は、RGB個別発光素子であることが望ましいが、擬似白色LEDであってもよい。また、LEDの代わりに、冷陰極線管又は蛍光灯を用いてもよい。光源39としてRGB個別発光素子を用いた場合には、それぞれの発光強度を色ごとに個別に調整することができ、最適な色表示を行うことができる。また、RGB個別発光素子を立体画像表示又は視野角制御に適用してもよい。表示画面のエリア制御でバックライトの明るさを調整してコントラストを向上させる技術であるローカルデミング法は、LED光源に適用容易である。本実施形態においては、通常表示領域とダイナミック表示領域とを併用することで画質を向上させることができる。ローカルデミング法においては、RGB個別発光素子を、図14のようなエッジライト方式でなく、液晶表示装置28の裏面に配置する直下型のバックライト方式で適用することにより、さらに細かいエリア制御で高画質表示することができる。本実施形態に係る液晶表示装置28は、RGB個別発光素子を液晶動作と同期させるフィールドシーケンシャル法を用いることにより、カラー表示可能である。
【0170】
なお、本実施形態に係る液晶表示装置28の単位サブピクセル又は単位画素の平面形状は、単位サブピクセル又は単位画素の平面中心に基づいて、線対称の2つの領域、又は。点対称の4つの領域に分けることができる。上記図10に示すように、例えば、アクティブ素子19とこのアクティブ素子19に接続される第1の電極7とを、単位サブピクセル又は単位画素に2個以上備え、アクティブ素子19ごとに異なる電圧を印加する駆動方式を用いることにより、効率的な視角調整又は立体画像表示を行うことができる。
【0171】
上記各実施形態に係る液晶表示装置1,16,20,22,25,28の製造方法においては、第1の電極7に交流電圧を印加し、第2の電極6及び第3の電極11を共通電位のグランドとし、紫外光を照射することで配向維持層8,13へのプレチルト角が形成される。液晶表示装置1,16,20,22,25,28の種々のディメンション、用いられる液晶の材料特性、配向維持層8,13の形成に用いられる配向膜などに応じて、電圧の印加手法、光照射量、露光の波長は適宜調整することができる。例えば、交流電圧は、非対称性矩形波でもよい。また、液晶駆動電圧の印加については、第1の電極7、第2の電極6、第3の電極11のいずれかをフローティング状態とする、又は、共通電位をプラス又はマイナスにシフトさせるなど、種々の調整が可能である。
【0172】
上記の各実施形態は、発明の趣旨が変わらない範囲で様々に変更して適用することができる。
【符号の説明】
【0173】
1,16,20,22,25,28…液晶表示装置、2…アレイ基板、3,17,21,23,26…対向基板、4…液晶層、40,9…透明基板、51〜53…絶縁層、6…第2の電極、7…第1の電極、8,13…配向維持層、10…ブラックマトリクス、11…第3の電極、12…透明樹脂層、14…凸部、15,24…凹部、2a…はみ出し部、2b…重なり部、18…着色フィルタ層、R…赤フィルタ、G…緑フィルタ、B…青フィルタ、4a〜4k…液晶、19…アクティブ素子、27…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板と対向基板とが液晶層を挟んで対向する液晶表示装置において、
前記アレイ基板は、
アクティブ素子と電気的に接続される櫛歯状の第1の電極と、
前記第1の電極と絶縁層を介して形成され、櫛歯状であり、櫛歯の並び方向において、前記第1の電極からはみ出る部分を含む第2の電極と、
前記液晶層と接する面に形成され、前記櫛歯の並び方向において、前記第2の電極が前記第1の電極からはみ出す方向に液晶配向を行う配向維持層と
を具備し、
前記対向基板は、液晶駆動時に前記第1の電極との間で電圧が印加される第3の電極を具備する、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記対向基板は、前記液晶層と接する側の表面において、単位サブピクセル又は単位画素の多角形パターンの向かい合う2辺部分に凸部を持ち、前記2辺部分の中央部分に凹部を持つ、請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記はみ出す方向は、前記櫛歯の並び方向における単位サブピクセル又は単位画素の中心部を境界として、互いに逆の2つの方向である、請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
単位サブピクセル又は単位画素内で、複数の前記櫛歯の並び方向を持つ、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶層は垂直配向されている液晶を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記アクティブ素子は、透明ソース電極、透明ドレイン電極、透明ゲート電極、透明絶縁層、1種類以上の金属酸化物を含む透明チャネル層を含む薄膜トランジスタである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
単位サブピクセル又は単位画素の平面形状は、向かい合う辺が互いに平行な多角形パターンである、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第3電極は、透明導電膜で形成され、単位サブピクセル又は単位画素の中央部に、線状又は十字状のスリットを持つ、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記対向電極は、赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタをさらに具備する。請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記緑フィルタは、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
アレイ基板と対向基板とが液晶層を挟んで対向する液晶表示装置の製造方法において、
前記アレイ基板は、
アクティブ素子と電気的に接続される櫛歯状の第1の電極と、
前記第1の電極と絶縁層を介して形成される第2の電極と、
前記液晶層と接する面に形成される配向膜とを具備し、
前記対向基板は、
液晶駆動時に前記第1の電極との間で電圧が印加される第3の電極を具備し、
前記第1乃至第3の電極のうちの少なくとも一つに電圧を印加し、
前記アレイ基板における前記液晶層と接しない側の表面より光を照射し、
前記櫛歯の並び方向において、前記第2の電極が前記第1の電極からはみ出す方向に液晶配向を行う配向維持層を、前記配向膜により生成する
ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1乃至前記第3の電極は、透明導電膜によって形成される、請求項11記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記アクティブ素子は、チャネル材料として酸化物半導体が用いられた薄膜トランジスタである、請求項11又は請求項12記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2の電極は、櫛歯状であり、櫛歯の並び方向において、前記第1の電極からはみ出る部分を含む、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記液晶層は、誘電率異方性が負の液晶を含む、請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−220831(P2012−220831A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88274(P2011−88274)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】