説明

液晶表示装置及び液晶表示装置の駆動方法

【課題】高耐圧のゲートドライバを必要とすることなく、液晶の状態転移を行うことができる液晶表示装置及び液晶表示装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】各画素は、画素電極121と対向電極122との間に介挿された液晶LCと、画素電極121と保持容量対向電極123との間に介挿された保持容量SCと、を備える。転移電圧供給回路201は、液晶LCをスプレイ状態からベンド状態へ転移させるための転移電圧を、所定の転移期間に、対向電圧VCOMの供給点Aと保持容量対向電圧VSCの供給点Bとの間に供給する。転移電圧供給回路201は、LC共振回路211で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCB(Optically Compensated Bend)モード液晶表示素子によって映像を表示する液晶表示装置及びその液晶表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OCBモード液晶表示素子は、上下基板にラビング処理を行い、この方向を平行にすることを基本的な構成としている。この素子において、初期の電圧を印加しない状態では液晶がほぼ平行に並んだスプレイ配向状態にある。
このOCBモード液晶表示素子によって映像を表示するためには、液晶の配向状態をスプレイ状態からベンド状態(液晶が弓なり状態に配向)へ転移させる必要がある(以下、このようなスプレイ配向からベンド配向への遷移を“転移”と称す)。このとき、スプレイ状態からベンド状態へ転移させるためには、液晶に20V程度の高電圧の転移電圧を加える必要がある。また、より効率的に転移を促進するためには、加える転移電圧を断続的に変化させる必要がある。
このようなOCBモード液晶表示素子の駆動方法として、上記高電圧の転移電圧を外部から加えるというものがある(例えば、特許文献1参照)。ここでは、転移電圧を変化させるために、画素スイッチング素子のソース電極に加える電圧を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−278524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のOCBモード液晶表示素子の駆動方法にあっては、高電圧を変化させるために上記ソース電極の電圧を変化させるようになっているので、40V以上という高耐圧のゲートドライバを用いる必要がある。
そこで、本発明は、高耐圧のゲートドライバを必要とすることなく、OCBモード液晶表示素子の状態転移を行うことができる液晶表示装置及び液晶表示装置の駆動方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶表示装置は、複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素を備える液晶表示装置であって、前記画素は、画素電極と該画素電極に対向する対向電極との間に介挿された液晶と、前記画素電極と保持容量対向電極との間に介挿された保持容量と、を備え、前記液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させるための転移電圧を、所定の転移期間に、前記対向電極と前記保持容量対向電極との間に供給する転移電圧供給回路を備えることを特徴としている。
【0006】
これにより、画素スイッチング素子のソース電極に電圧を供給することなく(画素スイッチング素子を介さずに)液晶に印加する電圧を変化させることができる。そのため、高耐圧のゲートドライバを必要とせずに液晶の配向状態をスプレイ状態からベンド状態へ転移させることができる。
また、本発明に係る液晶表示装置は、上記において、前記転移電圧供給回路は、LC共振回路により構成されていることを特徴としている。
【0007】
これにより、転移電圧供給回路を比較的簡易な構成で実現可能である。また、転移電圧として振動する電圧を供給することができる。したがって、より効率的に液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させることができる。
さらに、本発明に係る液晶表示装置は、上記において、前記転移電圧供給回路は、前記LC共振回路の駆動信号として駆動パルス信号を入力するように構成されており、前記駆動パルス信号のオン期間は、前記LC共振回路の振動周期の2倍以上に設定されていることを特徴としている。
【0008】
これにより、駆動パルス信号の周期を長く設定することができるので、駆動パルス信号を出力するマイコン等の動作スピードがある程度遅くても制御が可能となる。
さらにまた、本発明に係る液晶表示装置は、上記において、前記転移電圧供給回路は、前記LC共振回路のコンデンサにダイオードを並列接続することを特徴としている。 これにより、駆動パルス信号がオン状態からオフ状態へ移行したときにLC共振回路から発生する振動波を打ち消すことができる。そのため、次にパルスをオンするタイミングとLC共振回路の振動波との同期をとる必要がない。また、LC共振回路の振動波が収束してから次のパルスをオンさせる必要もないので、転移期間を短縮することができる。
【0009】
また、本発明に係る液晶表示装置は、上記において、前記転移電圧供給回路は、前記LC共振回路の駆動信号として駆動パルス信号を入力するように構成されており、前記駆動パルス信号の発生周期は、前記LC共振回路の振動周期と等しく設定されていることを特徴としている。
これにより、液晶の転移に必要なプラスの転移電圧とマイナスの転移電圧とを交互に発生させることができる。そのため、プラス側・マイナス側の2電源を設ける必要がない。また、低電圧の駆動パルス信号から高電圧の転移電圧を得ることができると共に、当該高電圧の転移電圧を連続的に(減衰することなく)供給することができる。
【0010】
さらに、本発明に係る液晶表示装置の駆動方法は、複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素を備え、前記画素は、画素電極と該画素電極に対向する対向電極との間に介挿された液晶と、前記画素電極と保持容量対向電極との間に介挿された保持容量と、を備える液晶表示装置の駆動方法であって、所定の転移期間に、前記液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させるための転移電圧を発生し、これを前記対向電極と前記保持容量対向電極との間に印加することを特徴としている。
これにより、高耐圧なゲートドライバを必要とすることなく、液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における転移電圧供給回路の具体的構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態における転移電圧供給回路の出力波形を示す図である。
【図4】第2の実施形態における転移電圧供給回路の具体的構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態における転移電圧供給回路の出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における液晶表示装置10の構成を示すブロック図である。
この図1に示すように、液晶表示装置10はOCB(Optically Compensated Bend)モードの液晶パネル100を有し、この液晶パネル100のTFT基板上に、データ線駆動回路110、走査線駆動回路120、表示領域が形成されている。表示領域には複数の画素(図1では4画素のみ示す)がマトリクスに配置されている。
データ線駆動回路110は、水平転送クロックCKHに基づいて水平スタート信号を順次転送するシフトレジスタであり、その出力に応じて各データラインDLにRGBの映像信号を供給する。走査線駆動回路120は、垂直転送クロックCKVに基づいて垂直スタート信号を順次転送するシフトレジスタであり、その出力に応じて各ゲートラインGLにゲート信号を供給する。
【0013】
各画素のTFTからなる画素トランジスタGTのドレインは、対応するデータラインDLに接続されている。画素トランジスタGTは、走査線駆動回路120から供給されるゲート信号によって、そのオン・オフが制御される。画素トランジスタGTのソースは画素電極121に接続されている。
また、TFT基板に対向して対向基板が設けられ、この対向基板上に画素電極121と対向して共通電極(対向電極)122が形成されている。TFT基板と対向基板との間には液晶LCが封入されている。ここで、液晶LCは、OCBモードで駆動される液晶である。
【0014】
さらに、共通電極122には、共通電圧(対向電圧)VCOMが液晶パネル100の外部又は液晶パネル100のTFT基板上に設けられた駆動IC200から印加される。
また、画素電極121と保持容量対向電極123との間には、保持容量SCが介挿されている。この保持容量対向電極124には、保持容量対向電圧VSCが駆動IC200から印加される。
画素トランジスタGTがNチャネル型とすると、ゲート信号がHレベルとなると、画素トランジスタGTがオンする。これにより、映像信号がデータラインDLから画素トランジスタGTを通して画素電極121に印加され、共通電極122と画素電極121との間に生じる電界により液晶LCが配向されることにより、液晶表示が行われる。
【0015】
各画素は、液晶LCの配向状態が電源投入前において表示動作不能であるスプレイ状態にある。そして、駆動IC200は、電源投入後に液晶LCの配向状態をスプレイ状態から表示動作可能なベンド状態へ予め転移させるように、共通電圧VCOMの供給点(図1のA点)と保持容量対向電圧VSCの供給点(図1のB点)との間に転移電圧を印加する。この転移電圧は、転移電圧供給回路201から出力される。
図2は、転移電圧供給回路201の具体的構成を示す図である。
転移電圧供給回路201は、コイルLおよびコンデンサCを含むLC共振回路211と、コンデンサCに並列接続されたダイオードDと、スイッチSW1及びSW2とを備える。
【0016】
スイッチSW1及びSW2は、駆動IC200から論理値“0”のスイッチ切替信号が出力されているときに破線で示す状態となり、駆動IC200から論理値“1”のスイッチ切替信号が出力されると実線で示す状態へ切り替わる。本実施形態では、電源投入後、液晶LCの配向状態をスプレイ状態から表示動作可能なベンド状態へ転移させる転移期間中に論理値“1”のスイッチ切替信号を出力するものとする。
すなわち、転移期間中は電圧供給点Aと電圧供給点Bとの間にLC共振回路211から出力される振動する転移電圧を供給する。そして、通常表示時には電圧供給点Aと電圧供給点Bとを接続し、ここに電圧VCOMを共通して供給する。
また、LC共振回路211のC点には、駆動IC200からLC共振回路211の駆動信号である駆動パルス信号P1が入力されるようになっている。
【0017】
図3は、転移電圧供給回路201の出力波形を示す図である。この図3において、矩形波P1が駆動パルス信号であり、振動波V1が図2のA−B間に供給される電圧波形を示している。
本実施形態では、駆動パルス信号P1のオン期間を、LC共振回路211の振動周期(2π√(L・C))の3倍に設定している。これにより、駆動パルス信号P1の1つのオン期間に、LC共振回路211から減衰状に3回振動する電圧波形が発生する。ここでは、15Vの駆動パルス信号P1を入力したとき、25V程度の出力電圧が得られる設定となっている。
【0018】
なお、駆動パルス信号P1のオン期間は、LC共振回路211の振動周期(2π√(L・C))の2倍以上であれば適宜設定可能である。
駆動パルス信号P1がオン状態からオフ状態(0V)へ移行すると、転移電圧供給回路201の出力も停止する。ここで、コンデンサCに並列接続したダイオードDは、駆動パルス信号P1がオフ状態となったときにLC共振回路211から発生する振動波を打ち消す作用をする。
このように、駆動パルス信号P1がオフ状態となったときの転移電圧供給回路201の出力を停止することで、次にパルスをオンするタイミングとLC共振回路211の振動波との同期をとったり、LC共振回路211の振動波が収束してから次のパルスをオンさせたりする必要がない。
【0019】
ところで、OCBモード液晶表示素子の駆動方法として、高電圧の転移電圧を外部から加えると共に、転移電圧を変化させるために画素スイッチング素子のソース電極に加える電圧を変化させるというものがある。しかしながら、この場合、40V以上という高耐圧のゲートドライバを用いる必要がある。
これに対して、本実施形態では、共通電圧VCOMの供給点Aと保持容量対向電圧VSCの供給点Bとの間に転移電圧を供給する。このように、画素スイッチング素子のソース電極に電圧を供給することなく液晶に印加する電圧を変化させることができるので、高耐圧のゲートドライバを必要としない構成とすることができる。
【0020】
また、転移電圧供給回路201としてLC共振回路を適用するので、転移電圧として振動する電圧を供給することができる。したがって、より効率的に液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させることができる。
さらに、駆動パルス信号のオン期間を、LC共振回路の振動周期の2倍以上に設定するので、駆動パルス信号を出力するマイコン等の動作スピードがある程度遅くても制御が可能となる。
また、LC共振回路のコンデンサにダイオードを並列接続するので、駆動パルス信号がオン状態からオフ状態へ移行したときにLC共振回路から発生する振動波を打ち消すことができる。そのため、次にパルスをオンするタイミングとLC共振回路の振動波との同期をとる必要がない。また、LC共振回路の振動波が収束してから次のパルスをオンさせる必要もないので、転移期間を短縮することができる。
【0021】
次に、本発明における第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、駆動パルス信号のオン期間をLC共振回路の振動周期の2倍以上に設定しているのに対し、駆動パルス信号の発生周期とLC共振回路の振動周期を等しく設定したものである。
図4は、転移電圧供給回路201の具体的構成を示す図である。
第2の実施形態の転移電圧供給回路201は、図2においてダイオードDが削除されている点を除いては、図2の転移電圧供給回路201と同様の構成を有する。
図5は、転移電圧供給回路201の出力波形を示す図である。この図3において、矩形波P2が駆動パルス信号であり、振動波V2が図4のA−B間に供給される電圧波形を示している。
【0022】
本実施形態では、駆動パルス信号P2の発生周期と、LC共振回路211の振動周期(2π√(L・C))とを等しく設定している。また、駆動パルス信号P2のオン期間は、比較的短く設定する(ここでは、LC共振回路211の振動周期の1/4程度)。
これにより、駆動パルス信号P2がオン状態からオフ状態となったとき、LC共振回路211から発生する振動はマイナス側に振れるようになる。
また、1回目のパルスにより発生した振動がプラス側に振れるときに2回目のパルスを与えることにより、パルス電圧分だけ電位が上昇することになる。このとき、マイナス側にもほぼ同じ電圧が発生することになる。
ここでは、15Vの駆動パルス信号P2を入力したとき、±30V程度の出力電圧が得られる設定となっている。
【0023】
このように、駆動パルス信号P2の電圧が低くても、高い出力電圧を発生させることができ、且つマイナスの電圧も発生させることができる。
ところで、液晶のスプレイ状態からベンド状態への転移を促進させるために、液晶にプラスの転移電圧とマイナスの転移電圧とを加えようとする場合、プラス側・マイナス側の2電源を必要とする。
これに対して、本実施形態では、転移電圧供給回路をLC共振回路で構成し、駆動パルス信号の発生周期とLC共振回路の振動周期とを等しく設定するので、液晶の転移に必要なプラスの転移電圧とマイナスの転移電圧とを交互に発生させることができる。そのため、プラス側・マイナス側の2電源を設ける必要がない。
また、低電圧の駆動パルス信号から高電圧の転移電圧を得ることができると共に、当該高電圧の転移電圧を連続的に(減衰することなく)供給することができる。
【符号の説明】
【0024】
10…液晶表示装置、100…液晶パネル、110…データ線駆動回路、120…走査線駆動回路、121…画素電極、122…共通電極、123…保持容量対向電極、200…駆動IC、201…転移電圧供給回路、211…LC共振回路、DL…データライン、GL…ゲートライン、LC…液晶、SC…保持容量、SW1,SW2…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素を備える液晶表示装置であって、
前記画素は、画素電極と該画素電極に対向する対向電極との間に介挿された液晶と、前記画素電極と保持容量対向電極との間に介挿された保持容量と、を備え、
前記液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させるための転移電圧を、所定の転移期間に、前記対向電極と前記保持容量対向電極との間に供給する転移電圧供給回路を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記転移電圧供給回路は、LC共振回路により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記転移電圧供給回路は、前記LC共振回路の駆動信号として駆動パルス信号を入力するように構成されており、
前記駆動パルス信号のオン期間は、前記LC共振回路の振動周期の2倍以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記転移電圧供給回路は、前記LC共振回路のコンデンサにダイオードを並列接続することを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記転移電圧供給回路は、前記LC共振回路の駆動信号として駆動パルス信号を入力するように構成されており、
前記駆動パルス信号の発生周期は、前記LC共振回路の振動周期と等しく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素を備え、前記画素は、画素電極と該画素電極に対向する対向電極との間に介挿された液晶と、前記画素電極と保持容量対向電極との間に介挿された保持容量と、を備える液晶表示装置の駆動方法であって、
所定の転移期間に、前記液晶をスプレイ状態からベンド状態へ転移させるための転移電圧を発生し、これを前記対向電極と前記保持容量対向電極との間に印加することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175707(P2010−175707A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16629(P2009−16629)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】