説明

液晶表示装置

【課題】COA型液晶表示装置においてインクジェット方式による球状スペーサ配置を行う場合の、球状スペーサの転動を抑制する。
【解決手段】第1及び第2着色層25a、25bからなる下地部40上に第3着色層25cを積層し、球状スペーサ32の転動を抑制可能なテーパ部28aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に球状スペーサの転動を抑制する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アレイ−対向基板間の液晶層の厚み(以下ギャップという)を一定とするため、直径が均一な樹脂の球(以下球状スペーサという)を用いた液晶表示装置が実用化され、当該球状スペーサの散布方法として生産性、正確性の面からインクジェット工法が検討されている(特許文献1)。
【0003】
インクジェット工法では複数のノズル孔が一列に並べられたノズルヘッドを基板に対して所定間隔ずつ移動させながら、球状スペーサを含む分散液を一体として吐出する。そして分散液が蒸発すると補助容量形成部等所定の箇所に球状スペーサが配置されることとなる。
【0004】
しかしスペーサは球形状であるため、また分散液の表面張力つまり分散液の広がりに引っ張られるため転動しやすいという特徴がある。したがって設計上予定した位置から外れ、表示領域に侵入し、またスルーホールに嵌まり込み、基板間保持に寄与しなくなるという問題があった。
【0005】
この問題を解決すべく基板上に段差を設け、転動を規制する技術が検討されている(特許文献2)。当該段差は基板上の走査線または信号線等の配線、またはブラックマトリクス上でのカラーフィルタ間の凹部段差などを利用し設けられる。
【特許文献1】特開2004−145101号公報
【特許文献2】特開2006−243719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の段差は、既に配設されている配線やブラックマトリクスを利用するものであり、球状スペーサを配置する非表示領域に意図的に形成できず、特に各着色層をブラックマトリクスで囲わないカラーフィルタ・オン・アレイ型液晶表示装置(以下COA型という)には適用できないという欠点があった。
【0007】
COA型はアレイ基板に着色層を設け、対向基板との組みずれを防止し開口率を向上させる有用な技術である。
【0008】
したがって、本発明は、特に、COA型に適用可能な球状スペーサの転動を抑制する凹部を有する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の態様に係る液晶表示装置は、アレイ基板上に設けられた複数の走査線及び信号線と、前記走査線及び信号線の交差部に設けられたスイッチング素子と、前記走査線、前記信号線及び前記スイッチング素子を覆うように前記アレイ基板上に形成され、レジストによりそれぞれ異なる色に着色された第1、第2、及び第3の着色層からなる有機絶縁膜と、前記有機絶縁膜上に形成され表示領域を形成する画素電極と、前記画素電極と前記スイッチング素子を電気的に接続するよう前記有機絶縁膜に設けられたスルーホールと、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板と、前記アレイ基板と対向基板の間に配置され、両基板間を保持する球状スペーサと、前記有機絶縁膜の表面上であり、かつ前記表示領域以外の部分に所定の間隔をもって凹設されたテーパ部と、前記アレイ基板と前記対向基板に挟持された液晶層とを備える液晶表示装置であって、前記球状スペーサはノズルを前記アレイ基板に対して所定間隔ずつ移動させながら球状スペーサを含む分散液を一体として吐出するインクジェット工法により前記テーパ部に落とし込み配置され、前記テーパ部は前記球状スペーサの転動を抑制するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェット工法により落とし込み配置された球状スペーサの転動を抑制することができ、基板間保持に寄与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による液晶表示装置の実施の形態を図面を参照し説明する。なおCOA型を例に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明による液晶表示装置の実施の形態1を図1乃至図4を参照して説明する。また同一部分は同一符号で示す。
【0013】
図1は本発明による液晶表示装置を示す斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿い切断した拡大断面図である。また図3は図2の破線部(R)で示す部分を対向基板11側から見た場合の各着色層25a、25b、25cとスルーホール27及びテーパ部28aの関係を示すアレイ基板10の拡大平面図である。
【0014】
液晶表示装置は表示領域12を有するアレイ基板10と、このアレイ基板10に所定の隙間を保持して対向配置された対向基板11と、表示領域12を駆動する図示しない駆動LSIとを備え、アレイ基板10下面には光源となるLED等からなるバックライトユニット13が配置される。
【0015】
アレイ基板10はガラス等からなる透明基板20aと、この透明基板20a上に形成された多層薄膜21と図示しない配向膜を備えている。透明基板20a上には図3に示す複数本の信号線22及び図示しない走査線が多層薄膜21を介して格子状に配置されている。また各走査線に沿って補助容量線23が配列され、補助容量線23と信号線22がなすマス目上の画素開口にほぼ対応するようIndium・Tin・Oxide(以下ITOという)等の透明導電材料からなり表示領域12を構成する画素電極24が配設される。
【0016】
走査線及び信号線22の各交点部分には、画素電極24を制御するためのスイッチング素子が形成され、スイッチング素子上に多層薄膜21の一部である有機絶縁膜25が被膜されている。
【0017】
有機絶縁膜25はR、G、Bのうちのいずれかのレジストによって着色され、第1着色層25a、第2着色層25b、第3着色層25cを形成している。
【0018】
第1着色層25a及び第2着色層25bは表示領域12のみに形成されるが、第3着色層は表示領域に加え、スルーホール27近傍の表示領域ではない部分(以下非表示領域という)に形成される。
【0019】
各着色層25a、25b、25c上には画素電極24が配される。画素電極24は各着色層25a、25b、25cに形成されたスルーホール27を介し、スイッチング素子と電気的に接続される。
【0020】
ここで、スイッチング素子はゲート電極26a、ソース電極26b、ドレイン電極26cから構成される薄膜トランジスタ26(以下TFTという)を用いる。ゲート電極26aは走査線と、またソース電極26bは信号線22と夫々電気的に接続される。
【0021】
走査線と接続されたゲート電極26aに電圧が印加されると、ソース電極26bとドレイン電極26c間が導通し、TFT26が一定期間オン状態になる。この期間に画像表示に必要な信号が信号線22から供給され所定のタイミングで書き込まれる。
【0022】
ドレイン電極26cは画素電極24と有機絶縁膜25の各着色層25a、25b、25cに形成されたスルーホール27を介し電気的に接続される。
【0023】
スルーホール27周縁部には、詳細を後述するテーパ部28aが凹設されている。
【0024】
対向基板11はガラス等からなる透明基板20bを有し、アレイ基板10と対向に配置される。また対向基板11は液晶層30側にITOからなる透明電極33と図示しない配向膜を有する。
【0025】
アレイ基板10と対向基板11とは表示領域12の周縁である額縁領域においてシール材29を用いて接合され、アレイ基板10と対向基板11とシール材29とで囲まれた領域に液晶層30が形成されている。
【0026】
シール材29は液晶層30を封止し、シール材29内側にはブラックマトリクス層31(以下BM層という)が遮光層として配置される。
【0027】
アレイ基板10と対向基板11間の距離は球状スペーサ32によって保持される。球状スペーサ32は直径を均一とする樹脂からなり、直径は3〜6μmである。
【0028】
さらにアレイ基板10及び対向基板11の夫々液晶層30側と反対に位置する面には図示しない偏光板が夫々配設されている。
【0029】
上記球状スペーサ32はインクジェット工法により打ち込まれ配置される。以下特に図3を用いて球状スペーサ32の吐出方法について説明する。
【0030】
インクジェット装置には横梁状のノズルヘッドが備えられており、このノズルヘッドの下面には一定の間隔でノズル孔が配列されている。ノズルヘッドはアレイ基板10の信号線22または走査線の方向に沿って一定の間隔ずつ移動して球状スペーサ32を含む分散液の吐出を行う。
【0031】
またノズルヘッドはアレイ基板10の基板面の法線方向からアレイ基板10の基板面と平行な方向に任意の角度に傾斜させることができ、このように傾斜した状態で信号線22または走査線に沿った方向にアレイ基板10上を走査しつつ間欠的に移動することで、スルーホール27周縁の本実施の形態にかかるテーパ部28aに対して、球状スペーサ32を配置することができる。
【0032】
以下、本実施の形態の特徴的部分であるテーパ部28aについて図2乃至4を参照し詳細に説明する。なお同一部分は同一符号で示す。
【0033】
図4は図3のB−B線に沿う拡大断面図である。
【0034】
第1着色層25aはスルーホール27近傍に第1着色層25aと同一材料からなる第1下地部40aを有する。また第2着色層25bはスルーホール27近傍に第2着色層25bと同一材料からなる第2下地部40bを有する。
【0035】
また第3着色層25cのスルーホール27近傍等非表示領域に形成される部分は第1及び第2下地部40a、40b上に積層され形成されている。
【0036】
そのため第1及び第2下地部40a、40bの上方に位置する第3着色層25cの部分25c2は、第1及び第2下地部40a、40b上に積層されていない第3着色層25cの部分25c1と比べ高くなる。これにより高低差が生まれ、すなわちテーパ部28aとなる。
【0037】
テーパ部28aの深さ(d1)は、下地部40の厚みと下地部40の上方に位置する第3着色層25cの部分25c2の界面の表面積によって異なる。例えば表面積が大きい場合、積層される第3着色層25cが下地部40に固持され、深さ(d1)が第1及び第2下地部40a、40bの厚みと略等しくなる傾向があり、表面積が小さくなるにつれ積層される第3着色層25cが周囲に拡がり、テーパ部28aが浅くなる傾向がある。
【0038】
第1及び第2下地部40a、40bを夫々第1及び第2着色層25a、25bと同一工程にて形成する場合、第1及び第2下地部40a、40bは第1及び第2着色層25a、25bの厚みと等しくなる。
【0039】
本実施の形態では、例えば第1及び第2着色層25a、25bの膜厚は5μmであり、同様に第1及び第2下地部40a、40bの厚みも5μmである。またテーパ部28aの深さ(d1)は1μmとする。
【0040】
これによりテーパ部28aは上述のインクジェット工法によりテーパ部28aに打ち込み配置された球状スペーサ32の転動を抑制する効果を奏する。
【0041】
なおテーパ部28aの深さ(d1)はわずかであったとしても球状スペーサ32の転動を抑制する一定の効果を奏し、深くなるにしたがい抑制効果は高まるが、例えば球状スペーサ32の直径の4分の1程度の深さ(d1)を有すれば十分に抑制することができる。
【0042】
(実施の形態2)
以下、本発明による液晶表示装置の実施の形態2の特徴的部分であるテーパ部28bについて図2、及び図5乃至図8を参照して説明する。なお、実施の形態1のテーパ部28a以外の構造は、本実施の形態においても同様に備えるものとする。また同一部分は同一符号とする。
【0043】
実施の形態2のテーパ部28bは実施の形態1のテーパ部28aと比べ、下地部40を用いずに形成されている点、実施の形態1と異なる。
【0044】
図5は、図3と異なり、図2の破線部(R)で示す部分を対向基板11側から見た場合の各着色層25a、25b、25cとスルーホール27及びテーパ部28bの関係を示すアレイ基板10の他の拡大平面図である。
【0045】
図6は図5のC−C線に沿う拡大断面図である。
【0046】
ここでは第3着色層25c上にテーパ部28bを有する。テーパ部28bの形成はフォトマスクに濃淡をつけ、露光量を調整することで行う。
【0047】
本実施の形態では下地部40を用いないため、第3着色層25c又はスルーホール27周縁部以外の箇所にテーパ部28bを形成することが可能である。
【0048】
テーパ部28bの深さ(d2)はテーパ部28bを形成する膜厚、例えば第3着色層25cであれば5μmを上限として、露光量を調整することによって所望の深さとすることが可能である。
【0049】
これにより実施の形態1同様、テーパ部28bに打ち込み配置された球状スペーサ32の転動を抑制する効果を奏する。
【0050】
なお、上述の実施の形態は各着色層25a、25b、25cが格子状構造を対象として説明したが、ストライプ型構造においても同様に適用可能である。
【0051】
図7はストライプ型構造における液晶表示装置に本実施の形態を適用した、各着色層25a、25b、25cと球状スペーサ32の関係を示すアレイ基板10の拡大平面図である。
【0052】
図8は図7のD−D線に沿う拡大断面図である。
【0053】
各着色層25a、25b、25cをストライプ型構造に形成する場合であっても、フォトマスクに濃淡をつけ、露光量を調整することによりテーパ部28cを形成することが出来、その効果も格子状構造と同様の効果を奏する。
【0054】
なお本発明は以上の構成に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による液晶表示装置を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿い切断した拡大断面図。
【図3】図2の破線部(R)部分を示す図であり、実施の形態1のアレイ基板の拡大平面図。
【図4】図3のB−B線に沿う拡大断面図。
【図5】図2の破線部(R)部分を示す他の図であり、実施の形態2のアレイ基板の拡大平面図。
【図6】図5のC−C線に沿う拡大断面図。
【図7】上記実施の形態2にかかるストライプ型構造におけるアレイ基板の拡大平面図。
【図8】図7のD−D線に沿う拡大断面図。
【符号の説明】
【0056】
10…アレイ基板、11…対向基板、12…表示領域、22…信号線、24…画素電極、25…有機絶縁膜、26…薄膜トランジスタ、27…スルーホール、28a,28b,28c…テーパ部、30…液晶層、32…球状スペーサ、40…下地部、40a…第1下地部、40b…第2下地部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板上に設けられた複数の走査線及び信号線と、
前記走査線及び信号線の交差部に設けられたスイッチング素子と、
前記走査線、前記信号線及び前記スイッチング素子を覆うように前記アレイ基板上に形成され、レジストによりそれぞれ異なる色に着色された第1、第2、及び第3の着色層からなる有機絶縁膜と、
前記有機絶縁膜上に形成され表示領域を形成する画素電極と、
前記画素電極と前記スイッチング素子を電気的に接続するよう前記有機絶縁膜に設けられたスルーホールと、
前記アレイ基板に対向して配置された対向基板と、
前記アレイ基板と対向基板の間に配置され、両基板間を保持する球状スペーサと、
前記有機絶縁膜の表面上であり、かつ前記表示領域以外の部分に所定の間隔をもって凹設されたテーパ部と、
前記アレイ基板と前記対向基板に挟持された液晶層とを備える液晶表示装置であって、
前記球状スペーサはノズルを前記アレイ基板に対して所定間隔ずつ移動させながら球状スペーサを含む分散液を一体として吐出するインクジェット工法により前記テーパ部に落とし込み配置され、前記テーパ部は前記球状スペーサの転動を抑制するようにしたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記テーパ部は前記第1、第2、及び第3の各着色層のうちいずれか2層を下地部とし、残りの1層を被着することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−186824(P2009−186824A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27810(P2008−27810)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】