説明

液晶配向剤、液晶表示素子、液晶配向膜及びポリオルガノシロキサン化合物

【課題】液晶表示素子として一般に要求される電圧保持率、耐光性と言った特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短い液晶表示素子を形成しうる光配向性液晶配向剤の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]光配向性基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体を含有する液晶配向剤である。下記式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(LCD)の配向膜を形成するための材料として好適な液晶配向剤、この液晶配向剤から形成される液晶配向膜、この液晶配向膜を備える液晶表示素子、及び液晶配向剤に好適に用いられるポリオルガノシロキサン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子においては、液晶分子を基板面に対して所定の方向に配向するために、基板表面に液晶配向膜が設けられている。この液晶配向膜は、通常、基板表面に形成された有機膜表面をレーヨン等の布材で一方向にこする方法(ラビング法)により形成される。しかし、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、ラビング工程中にほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるという問題があるほか、TFT(Thin Film Transistor)素子を有する基板の場合には、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こって製品歩留まり低下の原因となるという問題もある。そこで、液晶セルにおいて液晶を配向する別の手段として、基板表面に形成した感放射線性の有機薄膜に偏光又は非偏光の放射線を照射することによって液晶配向能を付与する光配向法が提案されている(特許文献1〜6参照)。この光配向法によると、工程中にほこりや静電気を発生させることなく均一な液晶配向を形成することができる(特許文献7〜9参照)。
【0003】
かかる液晶表示装置は携帯電話や液晶テレビ等の動画表示用装置として期待されていることから、液晶表示素子に求められる特性として、動画を滑らかに表示しつつ残像を極力抑えるべく、電気光学効果の応答時間のさらなる高速化が求められている。この要求に対して、液晶配向膜に用いるポリマー側鎖に誘電異方性を与える構造を付与することで改善を図る技術が報告されている(特許文献10及び11参照)。しかし、本特許文献は光配向機能を有さない液晶配向膜に関するものであり、また、電気光学応答時間の高速化以外に実用面で重要となる配向性や電圧保持率、残像特性等の電気特性、光配向特性については全く記載されていない。
【0004】
このような状況から、液晶表示素子として一般に要求される電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短い液晶表示素子を形成しうる光配向性液晶配向剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−307736号公報
【特許文献2】特開2004−163646号公報
【特許文献3】特開2002−250924号公報
【特許文献4】特開2004−83810号公報
【特許文献5】特開平9−211468号公報
【特許文献6】特開2003−114437号公報
【特許文献7】国際公開第2009/25385号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2009/25386号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2009/25388号パンフレット
【特許文献10】特表2007−521361号公報
【特許文献11】特表2007−521506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は液晶表示素子として一般に要求される電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短い液晶表示素子を形成しうる光配向性液晶配向剤、その液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備える垂直配向型等の液晶表示素子及び上記液晶配向剤に好適に用いられるポリオルガノシロキサン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]光配向性基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体(以下、[A]重合体)と称することがある)を含有する液晶配向剤である。
【化1】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合及びエステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【0008】
本発明の液晶配向剤によれば、光配向性基及び上記式(A1)で表される特定構造の基を有する[A]重合体を含有することで、この液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備える液晶表示素子は、電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、短い電気光学応答時間を発揮することができる。
【0009】
上記光配向性基は、下記式(B1)で表される構造を有することが好ましい。
【化2】

(式(B1)中、Rはフッ素原子又はシアノ基である。a’は0〜4の整数である。a’が2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【0010】
当該液晶配向剤は、上記光配向性基が上記特定構造を有することで、感度を向上させることができる。
【0011】
上記式(A1)におけるRは、下記式(A2)で表されることが好ましい。
【化3】

(式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
当該液晶配向剤によれば、上記Rが上記特定構造を有することで、本発明の効果をさらに向上させることができる。
【0013】
[A]重合体は、ポリオルガノシロキサン構造を有することが好ましい。
当該液晶配向剤は、[A]重合体がポリオルガノシロキサン構造を有することで、耐光性を向上させることができる。
【0014】
[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、「[B]重合体」と称することがある)をさらに含有することが好ましい。
当該液晶配向剤は、[B]重合体をさらに含有することで、その溶液特性及び得られる液晶表示素子の電気特性を改善することができる。
【0015】
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える。
当該液晶表示素子は、上述の当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備えるので、一般に要求される電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、短い電気光学応答時間を発揮することができる。
【0016】
当該液晶表示素子は、液晶配向膜が配向方位の異なる2以上の領域を有することが好ましい。
当該液晶表示素子は、液晶配向膜が配向方位の異なる2以上の領域を有することで、3D表示への適用が可能となる。
【0017】
本発明の液晶配向膜は、当該液晶配向剤から形成される。
当該液晶配向膜は、上述の液晶配向膜から形成されるので、これを備える液晶表示素子は、一般に要求される電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、短い電気光学応答時間を発揮することができる。
【0018】
本発明のポリオルガノシロキサン化合物は、
光配向性基及び下記式(A1)で表される基を有する。
【化4】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【0019】
当該ポリオルガノシロキサン化合物は、光配向性基及び上記式(A1)で表される特定構造の基を有するので、当該液晶配向剤の成分として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光配向モードに適用でき、高速応答性を付与することが可能であり、また同時に優れた耐光性を示す液晶表示素子を形成可能な液晶配向剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例で製造したパターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、光配向性基及び上記式(A1)で表される基を含有する[A]重合体を含有する。この液晶配向剤は光配向モードに適用でき、これを用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、液晶表示素子として一般に要求される電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短いものとなる。また、当該液晶配向剤は[B]重合体等の後述する「他の重合体」を含有できる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0023】
<[A]重合体>
【0024】
[A]重合体は、光配向性基及び上記式(A1)で表される基を含有する。
【0025】
[光配向性基]
光配向性基としては、公知の光配向性基を適宜用いることができるが、シンナメート構造、カルコン構造、アゾベンゼン構造を有する基があることが好ましく、感度の点からシンナメート構造を有することが特に好ましい。
光配向性基としては、下記式(B1)で表される構造を有する基が好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
上記式(B1)中、Rは、フッ素原子又はシアノ基である。a’は、0〜4の整数である。a’が2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。
【0028】
上記式(B1)におけるa’としては、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
上記式(B1)で表される構造を有する基としては、下記式(B1−1)で表される基、式(B1−2)で表される基が好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
上記式(B1−1)及び(B1−2)中、R、a’及び*は、上記式(B1)と同義である。
式(B1−1)中、Rは水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基又は炭素数1〜40のアルキル基である。但し上記アルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。
は単結合、酸素原子、−COO−又は−OCO−である。+はRと結合する結合手を示す。
は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。
は単結合、酸素原子、−COO−又は−OCO−である。+はRと結合する結合手を示す。
b’は0〜3の整数である。
式(B1−2)中、Rは水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基又は炭素数1〜40のアルキル基である。但し上記アルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。
は酸素原子又は2価の芳香族基である。
は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。
は単結合、酸素原子、−COO−又は−OCO−である。+はRと結合する結合手を示す。
c’は0〜3の整数である。
【0031】
上記式(B1−1)におけるR及び上記式(B1−2)におけるRの脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基を有するシクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基、コレステニル基、コレスタニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
上記R及びRの炭素数1〜40のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基(但し、このアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子により置換されていてもよい)が好ましい。かかるアルキル基の例としては、例えばn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、4,4,4−トリフロロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基等が挙げられる。
【0032】
上記式(B1−1)におけるR及び上記式(B1−2)におけるRの2価の芳香族基としては、例えば1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基等が挙げられる。
上記R及びRの2価の複素環式基としては、例えば1,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、1,4−フラニレン基等が挙げられる。
上記R及びRの2価の縮合環式基としては、例えばナフチレン基等が挙げられる。
【0033】
上記式(B1−1)で表される基としては、下記式で表される基が好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
上記式中、R及び*は、上記式(B1−1)と同義である。dは1〜10の整数である。
【0037】
上記式(B1−2)で表される基としては、下記式で表される基が好ましい。
【0038】
【化9】

【0039】
上記式中、R及び*は、式(B1−2)と同義である。
【0040】
本発明における[A]重合体は、上記式(B1)で表される構造を、0.2〜6ミリモル/g有することが好ましく、0.3〜5ミリモル/g有することがより好ましい。
【0041】
[上記式(A1)で表される基]
上記式(A1)のRはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0042】
上記Rで表される炭素数2〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、及びトリアコンチレン基等が挙げられる。これらのうち、液晶配向を安定に発現させるためにペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基等の炭素数が5以上20以下のアルキレン基が好ましい。
【0043】
は、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rとしては、例えば、エテンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。なお、Rは上記結合のいずれかを含んでいればよいが、各結合を組み合わせて含んでいてもよい。また、Rがフェニレン基又はシクロヘキシレン基である場合は、形成される配向膜の配向性や溶媒への溶解性の観点から、Rは炭素数が1〜30のアルキレン基を含んでいることが好ましい。なおaは0又は1である。
【0044】
は少なくとも2つの単環構造を有する基であり、好ましくは、正又は負の誘電異方性を示す。単環構造とは、一の環構造が他の環構造から独立して存在しており、一の環構造の結合が他の環構造と共有されている、いわゆる縮合環構造を有しない構造である。また、単環構造としては、脂環式構造、芳香環式構造、複素環式構造のいずれでもよく、これらを組み合わせて有していてもよい。
【0045】
は少なくとも2つ以上の単環構造を有する基である限り特に限定されないが、Rは下記式(A2)で表される基が好ましい。
【0046】
【化10】

【0047】
上記式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環のうちのいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0048】
当該液晶配向剤の[A]重合体の側鎖に、上記式(A2)で表される基を導入することにより、得られる液晶表示素子の電気光学応答性をさらに高速化させることができる。式(A2)中、Rは、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。2価の複素環基としては、例えばピリジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基等が挙げられる。
【0049】
上記式(A2)において、Rは、置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む、RとRとを連結する連結基であり、[A]重合体に必要とされる配向性や誘導異方性に応じて適宜選択することができる。Rとしては、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、エテンジイル基、エチンジイル基、エーテル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、エタンジイルオキシ基、フルオロメタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、エタンジイル基、エチンジイル基、エステル基、メタンジイルオキシ基、ジフルオロメタンジイルオキシ基が好ましい。なお、bは0又は1の整数であり、側鎖構造の設計においてRは含まれていても含まれていなくてもよい。
【0050】
上記式(A2)において、Rは、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。cは1〜9の整数である。Rとしては、例えばcが1の場合、上記Rとして例示した2価の基と同じ基等が挙げられる。
【0051】
上記式(A2)中、Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられ、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等の炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0052】
上記式(A2)において、Rが複数の置換基(R)を有する場合は、それぞれ異なるものを組み合わせて用いても良い。Rが複数の置換基を有する場合の組み合わせとしては、所望の誘電異方性を安定して発現させるために、フッ素原子とシアノ基との組み合わせ、フッ素原子とアルキル基との組み合わせ、シアノ基とアルキル基との組み合わせが好ましい。なお、cは1〜9の整数である。
【0053】
[A]重合体は、光配向性基及び上記式(A1)で表される構造を有する基を有しているならば、公知の重合体主鎖を適宜選択できるが、ポリオルガノシロキサン、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ(スチレン‐フェニルマレイミド)誘導体、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン誘導体、ポリアミック酸エステルを主鎖構造とすることが、電気特性の面から好ましく、耐光性の面からポリオルガノシロキサン(以下、「[a]ポリオルガノシロキサン化合物」と称することがある)とすることが好ましい。
【0054】
当該液晶配向剤が含有する[A]重合体がポリオルガノシロキサン構造を有する場合、
[a]ポリオルガノシロキサン化合物を含有し、
この[a]ポリオルガノシロキサン化合物が、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、
光配向性基及びカルボキシル基を有する化合物(以下、「特定カルボン酸A」と称することがある)に由来する部分と、
下記式(A1−C)で表されるカルボキシル基を有する化合物(以下、「特定カルボン酸B」と称することがある)に由来する部分と
を有することが好ましい。
【0055】
【化11】

【0056】
上記式(A1−C)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。
【0057】
当該液晶配向剤が上記特定の構造を有することで、側鎖に光配向性基及び誘電異方性を有する構造が導入され、この光配向性を有する液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、さらに電気特性及び残像特性が向上し、より応答時間が短縮される。また、エポキシ基とカルボキシル基との間の反応性を利用することで、主鎖としてのポリオルガノシロキサンに側鎖としての光配向性基、上記式(A1−C)で表される誘電異方性を有する構造を容易に導入できる。
【0058】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物は、主としてポリオルガノシロキサンのエポキシ基と特定カルボン酸のカルボキシル基との反応生成物として得られることになると考えられるが、以降の説明を容易にするために、便宜的にエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(とその誘導体)に由来する部分と、特定カルボン酸に由来する部分とに分けて当該液晶配向剤に含有される[a]ポリオルガノシロキサン化合物について説明する。
【0059】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分]
この部分は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物の構造のうち、ポリマー主鎖としてのポリオルガノシロキサン骨格と、このポリオルガノシロキサン主鎖から延びている側鎖としてのエポキシ基含有骨格とを含む概念である。上述のように[a]ポリオルガノシロキサン化合物では、大部分のエポキシ基は特定カルボン酸と反応してその初期の構造を有していないと考えられるが、特定カルボン酸がエポキシ基以外の部分と結合している場合もあり得る。そこで、本発明では両者の態様を含めて「エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分」ということとする。
【0060】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物が、グリシジル基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基を含む基等のエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分を含むことで当該液晶配向剤はより配向性や電圧保持率といった電気特性が向上する。エポキシ基としては下記式(X−1−1)又は式(X−2−1)で表される基であることが好ましい。
【0061】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに上記式(X−1−1)又は(X−2−1)で表される基を含ませることにより、当該液晶配向剤の[a]ポリオルガノシロキサン化合物に、上記特定構造を有する化合物に由来する側鎖基を導入しやすくなる。
【0062】
【化12】

【0063】
上記式(X−1−1)及び(X−2−1)中、*は結合手を示す。
【0064】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量としては、500〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましく、1,000〜20,000が特に好ましい。
【0065】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成方法]
このようなエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくはエポキシ基を有するシラン化合物、又はエポキシ基を有するシラン化合物と、他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0066】
上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0067】
上記他のシラン化合物としては、例えば、
1個のケイ素原子を有する化合物で、
4つの加水分解性基を有するものとして、
テトラクロロシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランなど、
3つの加水分解性基を有するものとして、
トリクロロシラン等のトリハロシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン;フルオロトリクロロシラン;フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン等のフルオロトリアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン等のアルキルトリクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン等のフッ素化アルキルトリクロロシラン;2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン等のフッ素化アルキルトリアルコキシシラン;ヒドロキシメチルトリクロロシラン等のヒドロキシアルキルトリクロロシラン;ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のヒドロキシアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリクロロシラン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;メルカプトメチルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン等のメルカプトアルキルトリクロロシラン;メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン等のアルケニルトリクロロシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン;フェニルトリクロロシラン等のアリールトリクロロシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシランなど、
2つの加水分解性基を有するものとして、
メチルジクロロシラン等のアルキルジクロロシラン;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等のアルキルジアルコキシシラン;ジメチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン等のジフッ素化アルキルジクロロシラン;(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン等のジフッ素化アルキルジアルコキシシラン;(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン等のアルキル・メルカプトアルキルジクロロシラン;(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン等のアルキル・メルカプトアルキルジアルコキシシラン;(メチル)(ビニル)ジクロロシラン等のアルキルアルケニルジクロロシラン;ジビニルジクロロシラン等のジアルケニルジクロロシラン;ジビニルジメトキシシラン等の時アルケニルジアルコキシシラン;ジフェニルジクロロシラン等のジアリールジクロロシラン;ジフェニルジメトキシシラン等のジアリールジアルコキシシラン;
1つの加水分解性基を有するものとして、
クロロジメチルシラン等のジアルキルクロロシラン;メトキシジメチルシラン等のジアルキルアルコキシシラン;クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン等のトリアルキルハロシラン;メトキシトリメチルシラン等のトリアルキルアルコキシシラン;(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン等のジアルキルアルケニルクロロシラン;、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン等のジアルキルアルケニルアルコキシシラン;(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン等のジアリールアルキルクロロシラン;(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のジアリールアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。
【0068】
市販品としては、例えば
KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業製);
グラスレジン(昭和電工製);
SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング製);
FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー製);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ製);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学製);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート製);
GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工製)等の部分縮合物が挙げられる。
【0069】
これらの他のシラン化合物のうち、得られる液晶表示素子の配向性及び保存安定性の観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0070】
本発明に好ましく用いられるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは誘電異方性を有する側鎖を充分な量で導入するため、そのエポキシ当量が100〜10,000g/モルであることが好ましく、150〜1,000g/モルであることがより好ましく、150〜300g/モルであることが特に好ましい。従って、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの前駆体を合成するに際し、シラン化合物と他のシラン化合物との使用割合を、得られるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の範囲となるように調製して設定することが好ましい。本発明で用いられるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するに際しては、シラン化合物のみを用い、他のシラン化合物を使用しないことがより好ましい。
【0071】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物、エーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
【0072】
上記炭化水素化合物としては、例えばトルエン、キシレン等;上記ケトン化合物としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等;上記エステル化合物としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等;上記エーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;上記アルコール化合物としては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等が挙げられる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0073】
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物100質量部に対して、好ましくは10〜10,000質量部、より好ましくは50〜1,000質量部である。エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モルであり、より好ましくは1〜30倍モルである。
【0074】
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を用いることができる。
【0075】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
【0076】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。これらの有機塩基のうち、反応が穏やかに進行する点を考慮して、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミンが好ましい。
【0077】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物又は有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物又は有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環等の副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。また、触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸との反応物を含有する当該液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、Chemical Reviews、95巻、p1409(1995年)に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造又はかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに、当該液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合には、シラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
【0078】
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば、全シラン化合物に対して好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
【0079】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の加水分解又は加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基及び水と混合して、例えば油浴等により加熱することにより実施することが好ましい。
【0080】
加水分解・縮合反応時には、油浴の加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱するのが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
【0081】
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2質量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0082】
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01,DMS−E12、DMS−E21,EMS−32(以上、チッソ製)等が挙げられる。
【0083】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンそのものが加水分解されて生じる加水分解物に由来する部分や、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン同士が加水分解縮合した加水分解縮合物に由来する部分を含んでいてもよい。当該部分の構成材料であるこれらの加水分解物や加水分解縮合物もエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの加水分解、縮合条件と同様に調製することができる。
【0084】
[特定カルボン酸に由来する部分]
光配向性基又は上記式(A1)で表される基の部分は、当該液晶配向剤に含有される[a]成分のポリオルガノシロキサン化合物の構造のうち、主としてポリオルガノシロキサン主鎖から延びているエポキシ基に由来する構造と結合しているカルボシキル基に由来する構造を始点とする側鎖構造に相当する。但し、本発明では、特定カルボン酸がエポキシ基以外の部分と結合している場合も含めて「特定カルボン酸に由来する部分」ということとする。
【0085】
[特定カルボン酸A]
特定カルボン酸Aとしては、上記式(B1)で表される構造を有するものとして下記式(B1−1C)で表される化合物、式(B1−2C)で表される化合物が好ましい。
【0086】
【化13】

【0087】
上記式(B1−1C)中のR、R、R、X、X、a’及びb’並びに
上記式(B1−2C)中のR、R、R、X、X、a’及びc’は、それぞれ上記式(B1−1)又は式(B1−2)と同義である。
上記式(B1−1C)中、Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基又は2価の芳香族基である。
が単結合のとき、eは1かつRは水素原子である。
がメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基又は2価の芳香族基のとき、eは0又は1かつRはカルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR’(但し、上記R’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)、−CH=CH又はSOClである。
上記式(B1−2C)中、Rは2価の芳香族基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基であり、Xは酸素原子、−COO−又はOCO−である。但し、+はRと結合する結合手を示す。
fは0〜3の整数である。
はカルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR(ただし上記Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)、−CH=CH又はSOClである。Xは単結合、−OCO−(CH又はO−(CHである。但し、+はRと結合する結合手を示す。i及びjは、それぞれ0〜10の整数である。
【0088】
上記式(B1−1C)で表される化合物としては、上記式(B1−1C)においてXが単結合であってRが水素原子である化合物であるか、又は
がメチレン基、アルキレン基若しくは2価の芳香族基であってRがカルボキシル基である化合物が好ましく、
上記式(B1−2C)で表される化合物としては、上記式(B1−2C)においてRがカルボキシル基である化合物が好ましい。以下、カルボキシル基を有するこのような化合物を「カルボン酸(B1)」という。
このようなカルボン酸(B1)として、より好ましくは、上記式(B1−1C)で表される化合物として、例えば下記式で表されるが好ましい。
【0089】
【化14】

【0090】
【化15】

【0091】
上記式中、Rは、上記式(B1−1C)と同義である。dは1〜10の整数である。
【0092】
上記式(B1−2)で表される化合物として、下記式で表される化合物が好ましい。
【0093】
【化16】

【0094】
上記式中、Rは、上記式(B1−2C)と同義である。
【0095】
[特定カルボン酸B]
特定カルボン酸Bとしては例えば、下記式(D−1)〜(D−25)で表される化合物が挙げられる。
【0096】
【化17】

【0097】
上記式(D−1)〜(D−25)中、Rは上記式(A1−C)と同義である。mは1〜30の整数である。
【0098】
上記式(A2)で表される基としては、例えば下記式(E−1)〜(E−116)で表される基が挙げられる。
【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
【化24】

【0106】
上記式(E−1)〜(E−123)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。Xはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である。
【0107】
上記Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。上記Rで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0108】
[特定カルボン酸の合成方法]
特定カルボン酸の合成手順は特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。代表的な合成手順としては、例えば(1)フェノール骨格を有する化合物と、高級脂肪酸エステルのアルキル鎖部分をハロゲンで置換した化合物とを塩基性条件下で反応させ、フェノール骨格の水酸基とハロゲンで置換された炭素との結合を形成し、その後エステルを還元して特定カルボン酸とする方法、(2)フェノール骨格を有する化合物とエチレンカーボネートとを反応させて末端アルコール化合物を生成させ、その水酸基とハロゲン化ベンゼンスルホニルクロリドとを反応させて活性化し、その後活性化部分に水酸基を含む安息香酸メチルを反応させて、スルホニル部分の脱離とともに末端アルコール化合物の水酸基と置換基として水酸基を含む安息香酸メチルの水酸基との結合を生成させ、次いでエステルを還元して特定カルボン酸とする方法等が例示される。但し、特定カルボン酸の合成手順はこれらに限定されるものではない。
【0109】
<[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法>
[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法としては、特に限定されず一般的な公知の方法で合成するこができる。エポキシ基を有する[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと特定カルボン酸とを、好ましくは触媒の存在下に反応させることにより合成することができる。
【0110】
ここで特定カルボン酸は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001〜10モル、より好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.05〜2モル使用される。
【0111】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で特定カルボン酸の一部を下記式(4)で表される化合物で置き換えて使用してもよい。この場合、[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、特定カルボン酸及び下記式(4)で表される化合物の混合物とを反応させることにより行われる。
【0112】
【化25】

【0113】
上記式(4)中、
は炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基である。但し、上記アルキル基及びアルコキシ基の水素原子の一部又は全部がシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基等の置換基で置換されていてもよい。
は単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。
は単結合、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、シクロへキシレン基、ビシクロへキシレン基又は下記式(L−1)若しくは(L−2)で表される基である。
Zは[a]ポリオルガノシロキサン化合物中のエポキシ基と反応して結合基を形成しうる1価の有機基である。
但し、Lが単結合であるときにはLは単結合である。
【0114】
【化26】

【0115】
上記式(L−1)及び(L−2)において「*」を付した結合手がそれぞれZと結合する。
【0116】
Zはカルボキシル基であることが好ましい。
【0117】
上記式(4)においてAが示す炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、4,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、6−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノナニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基等が挙げられる。
【0118】
炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノナニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0119】
ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の炭化水素基としては、例えば下記式(H−1)〜(H−3)で表される基が挙げられる。
【0120】
【化27】

【0121】
上記式(H−1)〜(H−3)中、*は結合手を示す。
【0122】
上記式(4)におけるAとしては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基及び上記式(H−1)又は(H−3)から選ばれる基が好ましい。
【0123】
上記式(4)で表される化合物としては、下記式(4−1)〜(4〜6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0124】
【化28】

【0125】
上記式(4−1)〜(4−6)中、uは1〜5の整数である。vは1〜18の整数である。wは1〜20の整数である。kは1〜5の整数である。pは0又は1である。qは0〜18の整数である。rは0〜18の整数である。s及びtはそれぞれ独立して0〜2の整数である。
【0126】
これらの化合物の中でも、下記式(5−1)〜(5−7)で表される化合物がより好ましい。
【0127】
【化29】

【0128】
上記式(4)で表される化合物は、特定カルボン酸とともにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと反応し、得られる液晶配向膜にプレチルト角発現性を付与する部位となる化合物である。本明細書においては上記式(4)で表される化合物を、以下、「他のプレチルト角発現性化合物」と称することがある。
【0129】
本発明において、特定カルボン酸とともに他のプレチルト角発現性化合物を使用する場合、特定カルボン酸及び他のプレチルト角発現性化合物の合計の使用割合は、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して好ましくは0.001〜1.5モル、より好ましくは0.01〜1モル、さらに好ましくは0.05〜0.9モルである。この場合、他のプレチルト角発現性化合物は、特定カルボン酸との合計に対して好ましくは75モル%以下、より好ましくは50モル%以下の範囲で使用される。他のプレチルト角発現性化合物の使用割合が75モル%を超えると、液晶の高速応答性に悪影響が出る場合がある。
【0130】
ポリオルガノシロキサン中のエポキシ基と上記式(4)で表される化合物及び他のプレチルト角発現性化合物で表されるカルボン酸基含有化合物の反応に使用される触媒としては、有機塩基、又はエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進する、いわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
【0131】
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0132】
上記硬化促進剤としては、例えば
ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール化合物;
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムo,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
上記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0133】
これらの触媒の中でも、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が好ましい。
【0134】
触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100質量部に対して好ましくは100質量部以下、より好ましくは0.01〜100質量部、さらに好ましくは0.1〜20質量部の量で使用される。
【0135】
反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間、より好ましくは0.5〜20時間である。
【0136】
[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成反応は、必要に応じて有機溶媒の存在下に行うことができる。かかる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料及び生成物の溶解性並びに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の質量が溶液の全質量に占める割合)が、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下となる量で使用される。
【0137】
こうして得られた[a]ポリオルガノシロキサン化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるスチレン換算での重量平均分子量は特に限定されないが、1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜20,000であることがより好ましい。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
【0138】
本発明の[a]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに、特定カルボン酸のカルボキシレート部分のエポキシ基への開環付加により特定カルボン酸に由来する構造を導入している。この製造方法は簡便であり、しかも特定カルボン酸に由来する構造の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
【0139】
<任意成分>
当該液晶配向剤は、[A]重合体の他に、本発明の効果を損なわない限り、例えば[A]重合体以外の重合体(以下、「他の重合体」と称することがある)、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と称することがある)、官能性シラン化合物、界面活性剤等のその他の任意成分を含有してもよい。
【0140】
[他の重合体]
他の重合体は、当該液晶配向剤の溶液特性及び得られる液晶表示素子の電気特性をより改善するために使用できる。他の重合体としては、例えば、
ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体([B]重合体);
下記式(5)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「他のポリオルガノシロキサン」と称することがある);
ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0141】
【化30】

【0142】
上記式(5)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0143】
<[B]重合体>
[B]重合体はポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。以下、ポリアミック酸、ポリイミドについて詳述する。
【0144】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0145】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0146】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0147】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0148】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられるほか特願2010−97188号に記載のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0149】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。
【0150】
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の使用量としては、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなることが、特に好ましい。
【0151】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0152】
脂肪族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0153】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0154】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられるほか、特願2009−97188号に記載のジアミンが挙げられる。
【0155】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(A−1)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0156】
【化31】

【0157】
上記式(A−1)中、Xはメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基、−O−、−COO−又は−OCO−である。rは0又は1である。sは0〜2の整数である。tは1〜20の整数である。
【0158】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0159】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。
【0160】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。
【0161】
有機溶媒の使用量(a)としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0162】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0163】
[ポリイミド]
ポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造できる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。
【0164】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」と称することがある)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」と称することがある)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0165】
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、0.5時間〜48時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましい。
【0166】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0167】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0168】
脱水剤の使用量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1モルに対して0.01モル〜20モルが好ましい。
【0169】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0170】
脱水閉環触媒の使用量としては、含有する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環剤の含有量が多いほど高くできる。
【0171】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0172】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜20時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0173】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0174】
[他のポリオルガノシロキサン]
当該液晶配向剤は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物以外の他のポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。他のポリオルガノシロキサンは、上記式(5)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、当該液晶配向剤が他のポリオルガノシロキサンを含む場合、他のポリオルガノシロキサンの大部分は、[a]ポリオルガノシロキサン化合物とは独立して存在しているもの、その一部は[a]ポリオルガノシロキサン化合物との縮合物として存在していても良い。
【0175】
上記式(5)中のX及びYにおいて、
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等;
炭素数1〜16のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等;
炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基等が挙げられる。
【0176】
他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」と称することがある)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0177】
ここで使用できる原料シラン化合物としては、例えば、上記[a]オルガノポリシロキサン化合物の合成における他のシラン化合物として例示したものと同様の化合物等が挙げられる。これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランが好ましい。
【0178】
他のポリオルガノシロキサンを合成する際に、任意的に使用することのできる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物若しくはエステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらの化合物及び各溶媒化合物は単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0179】
アルコール化合物としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等が挙げられる。
【0180】
ケトン化合物としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン等のモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン等のβ−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0181】
上記アミド化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。
【0182】
エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0183】
その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホリン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテル、又はエステル化合物が特に好ましい。
【0184】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシ基及びハロゲン原子の総量の1モルに対して、好ましくは0.01〜100モルであり、より好ましくは0.1〜30モルであり、さらに1〜1.5モルであることが好ましい。
【0185】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アンモニア、アルカリ金属化合物等が挙げられる。
【0186】
上記金属キレート化合物としては、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン;テトラキス(アセチルアセトナート)チタン;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン;テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等の2種以上のキレート配位子を含むチタン化合物などのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリル(アセチルアセトナート)ジルコニウム;テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム;トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のトリアルコキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジアルコキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のモノアルコキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム;モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等の2種以上のキレート配位子を含むジルコニウム化合物などのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0187】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪族飽和カルボン酸;マロン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和カルボン酸;サリチル酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;モノクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン含有カルボン酸;クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0188】
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。
【0189】
上記有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0190】
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら触媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0191】
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましい。金属キレート化合物としては、チタンキレート化合物がより好ましい。
【0192】
触媒の使用量は、原料シラン化合物100質量部に対して好ましくは0.001〜10質量部であり、より好ましくは0.001〜1質量部である。
【0193】
触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、又は添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
【0194】
他のポリオルガノシロキサンの合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的又は連続的に添加することができる。
【0195】
他のポリオルガノシロキサンの合成の際の反応温度としては、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは15〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5〜24時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
【0196】
当該液晶配向剤が、他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して10,000質量部以下であることが好ましい。他の重合体のより好ましい含有量は、他の重合体の種類により異なる。
【0197】
当該液晶配向剤が、[B]重合体を含有する場合における使用割合としては、[A]重合体100質量部に対して[B]重合体の合計量100〜5,000質量部が好ましく、200〜3,000質量部がより好ましい。
【0198】
一方、当該液晶配向剤が、他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における両者の好ましい使用割合は、[A]重合体100質量部に対する他のポリオルガノシロキサンの量として5〜2,000質量部であり、好ましくは100〜2,000質量部である。
【0199】
当該液晶配向剤が、他の重合体を含有するものである場合、他の重合体としては、[B]重合体、又は他のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0200】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、[A]重合体の架橋反応をより強固にする目的で当該液晶配向剤に含ませることができる。硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で当該液晶配向剤に含ませることができる。
【0201】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物、又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸が挙げられる。
【0202】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0203】
シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(6)で表される化合物、ポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物の他、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0204】
【化32】

【0205】
上記式(6)中、xは1〜20の整数である。
【0206】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等を用いることができる。これらの触媒は、加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
【0207】
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;4級リン化合物;4級アミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0208】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から、当該液晶配向剤に含ませることができる。
【0209】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0210】
当該液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の[a]ポリオルガノシロキサン化合物と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜40質量部以下、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0211】
なお、当該液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
【0212】
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、さらに特開昭63−291922号公報に記載されているテトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。
【0213】
当該液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、[A]重合体と任意的に使用される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0214】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0215】
当該液晶配向剤が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤の全体100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
【0216】
<液晶配向剤の調製方法>
当該液晶配向剤は、上述の通り、[A]重合体を必須成分として含有し、必要に応じてその他の任意成分を含有できるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0217】
当該液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、[A]重合体及び任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。当該液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒は、任意的に添加される他の重合体の種類により異なる。
【0218】
当該液晶配向剤が、[A]重合体及び[B]重合体を含有する場合における好ましい有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒が挙げられる。このとき、本発明のポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。これら有機溶媒は、単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0219】
一方、当該液晶配向剤が、重合体として[a]ポリオルガノシロキサン化合物のみを含有する場合、又は[a]ポリオルガノシロキサン化合物及び他のポリオルガノシロキサンを含有する場合における好ましい有機溶媒としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。これらのうち、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチルが好ましい。
【0220】
当該液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無及びその種類に従って、上記した有機溶媒の1種以上を組み合わせて得ることができる。このような溶媒は、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、かつ液晶配向剤の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
【0221】
当該液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の質量が液晶配向剤の全質量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。当該液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1質量%以上である場合には、この塗膜の膜厚が過小となりにくくなって良好な液晶配向膜を得ることができる。一方、固形分濃度が10質量%以下の場合には、塗膜の膜厚が過大となることを抑制して良好な液晶配向膜を得ることができ、また、液晶配向剤の粘性が増大することを防止して塗布特性を良好なものとすることができる。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えば、スピンナー法による場合には1.5〜4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。当該液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは0℃〜40℃である。
【0222】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、その駆動方式に特に制限はなく、TN、STN、IPS、FFS、VA(VA−MVA方式、VA−PVA方式等を含む)、HPA等公知の各種方式に本技術を適用することが可能であり、上記液晶配向剤から形成された上記液晶配向膜を具備する。一般的に、液晶表示素子は表面に透明電極及び液晶配向膜がこの順に積層された一対の基板を備え、この一対の基板が内側に対向配設されており、この一対の基板間に液晶が充填され、周辺部がシール剤でシールされている。
【0223】
<液晶配向膜の形成方法>
本発明の液晶配向剤は、光配向法により液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。
液晶配向膜を形成する方法としては、例えば基板上に本発明の液晶配向膜を塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜に偏光または非偏光の放射線を照射してより液晶配向能を付与する方法等が挙げられる。
まず、パターン状の透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法等の適宜の塗布方法により塗布する。そして、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
上記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、環状オレフィン樹脂の如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。
上記透明導電膜としては、SnOからなるNESA(登録商標)膜、In−SnOからなるITO膜等を用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、公知の方法が用いられる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板又は透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板及び透明導電膜上に、予め官能性シラン化合物、チタネート化合物等を塗布しておいてもよい。
【0224】
次いで、上記塗膜に直線偏光若しくは部分偏光された放射線又は非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10〜3,000J/mである。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下であっても良好な液晶配向能を付与することができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
【0225】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜は、特に垂直配向型の液晶表示素子に適用したときにその有利な効果を最大限に発揮することができ、好ましい。
本発明の液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、先ずそれぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法であり、これにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
いずれの方法による場合でも、次いで、用いた液晶が等方相をとる温度まで液晶セルを加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0226】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。ここで液晶配向膜が垂直配向性である場合には、液晶配向膜が形成された2枚の基板における配向容易軸の方向が平行となるようにセルを構成し、これに、偏光板をその偏光方向が配向容易軸と45°の角度をなすように貼り合わせることにより、垂直配向型液晶セルを有する液晶表示素子とすることができる。
上記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
上記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を好ましく用いることができる。
垂直配向型液晶セルの場合には、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、長期信頼性、高速応答性等の諸性能に優れるものである。
【実施例】
【0227】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0228】
以下の実施例において得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び[E]ポリオルガノシロキサン化合物の重量平均分子量(Mw)は、下記仕様のGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー製、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
なお、以下の実施例において用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの原料化合物及び重合体の合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。
【0229】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成>
[合成例1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキ
シシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。合成例1で得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)はMw=2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
【0230】
<特定カルボン酸の合成>
[特定カルボン酸1の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸1を合成した。
【0231】
【化33】

【0232】
[合成例2]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル6.3g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物1を11g得た。
【0233】
[合成例3]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物1を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸1を8g得た。
【0234】
[特定カルボン酸2の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸2を合成した。
【0235】
【化34】

【0236】
[合成例4]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル15g、エチレンカーボネート13.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.5g、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、150℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を酢酸エチル300mL、1N−水酸化ナトリウム水溶液100mLの混合溶液で分液洗浄した。有機層を抽出した後、更に1N−水酸化ナトリウム水溶液100mL、水100mLの順で分液洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を留去した。得られた固体を真空乾燥後、エタノール100mL/ヘキサン250mLで再結晶することにより、化合物2を13.1g得た。
【0237】
[合成例5]
冷却管、滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに化合物2を12g、4−クロロベンゼンスルホニルクロリド12.7g、脱水塩化メチレン60mLを加え混合した。氷浴で反応溶液を冷却した状態で、トリエチルアミン6.6gの脱水塩化メチレン10mL溶液を10分かけて滴下した。氷浴状態のまま、30分撹拌し、室温に戻して更に6時間撹拌した。反応溶液にクロロホルム150mLを加え、水100mLで4回分液洗浄を行った。抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機溶媒を留去した。得られた固体をエタノールで洗浄することで化合物3を16.1g得た。
【0238】
[合成例6]
冷却管を備えた300mLの三口フラスコに化合物3を15g、4−ヒドロキシ安息香酸メチル11g、炭酸カリウム12.5g、N,N−ジメチルホルムアミド180mLを加え、80℃で9時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、エタノールで更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物4を10g得た。
【0239】
[合成例7]
冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、化合物4を9.5g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、テトラヒドロフラン15mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸2を9g得た。
【0240】
[特定カルボン酸3の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸3を合成した。
【0241】
【化35】

【0242】
[合成例8]
合成例2において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを10.7g用いることで化合物5を13.7g得た。
【0243】
[合成例9]
合成例3において、化合物1の代わりに化合物5を13.5g用いることで、特定カルボン酸3を11.2g得た。
【0244】
[特定カルボン酸4の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸4を合成した。
【0245】
【化36】

【0246】
[合成例10]
合成例4において、4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの代わりに2、3、5、6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを25.5g用いることで、化合物6を23.1g得た。
【0247】
[合成例11]
合成例5において化合物2の代わりに化合物6を18.9g用いることで、化合物7を24.1g得た。
【0248】
[合成例12]
合成例6において化合物3の代わりに化合物7を20g用いることで、化合物8を15.4g得た。
【0249】
[合成例13]
合成例7において化合物4の代わりに化合物8を13g用いることで、特定カルボン酸4を11.4g得た。
【0250】
[特定カルボン酸5の合成]
下記反応スキームに従い特定カルボン酸5を合成した。
【0251】
【化37】

【0252】
[合成例14]
特定カルボン酸1の合成と同様にしてメチレン基の数を10から5へ変更した特定カルボン酸5を15g合成した。
【0253】
[特定カルボン酸6の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸6を合成した。
【0254】
【化38】

【0255】
[合成例15]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル10.1g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物9を10.8g得た。
【0256】
[合成例16]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物9を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸6を6g得た。
【0257】
[特定カルボン酸7の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸7を合成した。
【0258】
【化39】

【0259】
[合成例17]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピル−シクロヘキシル)フェノール)9.1gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸7を5.9g得た。
【0260】
[特定カルボン酸8の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸8を合成した。
【0261】
【化40】

【0262】
[合成例18]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4−プロピル−4”−ヒドロキシターフェニル)12.9gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸8を7.1g得た。
【0263】
[特定カルボン酸9の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸9を合成した。
【0264】
【化41】

【0265】
[合成例19]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4−(4−プロピルシクロヘキシルメトキシ)フェノール)10.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸9を6.5g得た。
【0266】
[特定カルボン酸10の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸10を合成した。
【0267】
【化42】

【0268】
[合成例20]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物(2,3−ジフルオロ−4’−(4−プロピルフェニルエチル)ビフェニル)12.6gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸10を7.2g得た。
【0269】
[特定カルボン酸11の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸11を合成した。
【0270】
【化43】

【0271】
[合成例21]
出発化合物(2,2’,3,3’−テトラフルオロ−4’−プロピル−4−ヒドロキシビフェニル)10.1gを上記反応スキームに記載の化合物14.2gに変えたこと以外は、上記特定カルボン酸6の合成と同様にして特定カルボン酸11を7.6g得た。
【0272】
[特定カルボン酸12の合成]
下記反応スキームに従い、特定カルボン酸12を合成した。
【0273】
【化44】

【0274】
[合成例22]
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、4−[ジフルオロ(4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ]−2,3−ジフルオロフェノール12.5g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水でさらに洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物10を14.8g得た。
【0275】
[合成例23]
次に、冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物10を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、特定カルボン酸12を6g得た。
【0276】
<桂皮酸誘導体の合成>
[桂皮酸誘導体(A−1)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−1)を合成した。
【0277】
【化45】

【0278】
[合成例24]
還流管を備えた200mLのナスフラスコに、デシルコハク酸無水物12g、4−アミノ桂皮酸8.2g及び酢酸を100mLを仕込み、2時間還流下で反応を行った。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカカラムで精製を行い、更にエタノール及びテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶を行うことにより、桂皮酸誘導体(A−1)の白色結晶(純度98.0%)を10g得た。
【0279】
[桂皮酸誘導体(A−2)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−2)を合成した。
【0280】
【化46】

【0281】
[合成例25]
1Lのナス型フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸82g、炭酸カリウム304g及びN−メチル−2−ピロリドン400mLを仕込み、室温で1時間攪拌を行った後、1−ブロモオクタン212gを加えて100℃で5時間攪拌した。その後、減圧にて溶剤を留去した。ここに水酸化ナトリウム48g及び水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応後、反応系を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールで再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−2)の白色結晶80gを得た。
【0282】
[桂皮酸誘導体(A−3)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−3)を合成した。
【0283】
【化47】

【0284】
[合成例26]
107gの4−ブロモ桂皮酸を、83gの塩化チオニル中で4時間還流して、赤色透明溶液を得た。次に、未反応の塩化チオニルを留去した後、残渣をトルエンから再結晶し、n−ヘキサンで洗浄することにより、化合物(A−3−1)の白色結晶85gを得た。
次に25.0g(0.147モル)の4−アミルシクロヘキサノールを25mLのピリジンに溶解した。この溶液の温度を約3℃に保持しつつ、ここに上記で得た化合物(A−3−1)の43.3g(0.176モル)を350mLのピリジンに懸濁した液を滴下し、さらに3時間反応を行った。得られた反応混合物(懸濁液)を、1.3kgの塩酸酸性氷水に投入し、生じた沈殿を濾過し、水洗し、乾燥することにより、化合物(A−3−2)の粗製物(クリーム色粉末)50gを得た。
上記で得た化合物(A−3−2)の粗製物50g、0.28gの酢酸パラジウム及び1.52gのトリ(o−トリル)ホスフィンの混合物に、窒素雰囲気下、125mLの乾燥トリエチルアミンを加えて反応を行った。化合物(A−3−2)の粗製物が完全に溶解した後、10.8gのアクリル酸をシリンジで注入し、さらに95℃で2時間反応を継続した。得られた暗緑色の反応混合物を1.3kgの塩酸酸性氷水に投入し、生じた沈殿を濾過により分離した。得られた化合物を500mLの酢酸エチルに溶解し、1Nの塩酸及び5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液で順次に洗浄した後、有機層を回収して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して桂皮酸誘導体(A−3)の粗製物(黄色固体)56gを得た。この粗製物をエタノールから再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−3)の黄色粉末30g(収率55%)を得た。
【0285】
[桂皮酸誘導体(A−4)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−4)を合成した。
【0286】
【化48】

【0287】
[合成例27]
1Lのナス型フラスコに4−ヒドロキシ安息香酸メチル91.3g、炭酸カリウム182.4g及びN−メチル−2−ピロリドン320mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ヨード−4,4,4−トリフロロブタン157.1gを加え100℃で5時間撹拌した。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム48g及び水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(A−4−1)の白色結晶を110g得た。
この化合物(A−4−1)のうちの12.41gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル100mL及びN,N−ジメチルホルムアミド77μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。
次に、上記とは別の500mL三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸7.39g、炭酸カリウム13.82g、テトラブチルアンモニウム0.48g、テトラヒドロフラン50mL及び水100mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−4)の白色結晶を10.0g得た。
【0288】
[桂皮酸誘導体(A−5)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−5)を合成した。
【0289】
【化49】

【0290】
[合成例28]
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(A−5−1)31g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mL及びN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層を、希塩酸で2回及び水で3回順次に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去して得られた固体を酢酸エチル及びテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−5)の結晶を15g得た。
【0291】
[桂皮酸誘導体(A−6)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−6)を合成した。
【0292】
【化50】

【0293】
[合成例29]
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(A−6−1)28g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mL及びN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層を、希塩酸で2回及び水で3回順次に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去して得られた固体を酢酸エチル及びテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−6)の結晶を13g得た。
【0294】
[桂皮酸誘導体(A−7)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−7)を合成した。
【0295】
【化51】

【0296】
[合成例30]
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(A−7−1)34g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mL及びN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層を、希塩酸で2回及び水で3回順次に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去して得られた固体を酢酸エチル及びテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−7)の結晶を14g得た。
【0297】
[桂皮酸誘導体(A−8)の合成]
下記反応スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−8)を合成した。
【0298】
【化52】

【0299】
[合成例31]
還流管及び窒素導入管を備えた300mLのナスフラスコに、化合物(A−8−1)21g、塩化チオニル80mL及びN,N−ジメチルホルムアミド0.1mLを仕込んで80℃で1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物から塩化チオニルを留去し、次いで塩化メチレンを150mL加えて得た有機層を水で3回洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去して得た固体にテトラヒドロフラン400mLを加えた。
一方、滴下ロート及び温度計を備えた1Lの三口フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸16g、炭酸カリウム24g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.87g、水200mL及びテトラヒドロフラン100mLを仕込んで5℃以下に氷冷した。ここに、上記テトラヒドロフラン溶液を3時間かけて滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に希塩酸を加えてpHを4以下にした後、トルエン3L及びテトラヒドロフラン1Lを加えて得た有機層を水で3回洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去して得た固体をエタノール及びテトラヒドロフランの混合溶剤から再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−8)を21g得た。
【0300】
<[a]ポリオルガノシロキサン化合物の合成>
[実施例1]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例3で得た特定カルボン酸1を5.0g、上記合成例24で得た桂皮酸誘導体(A−1)5.1g及びUCAT18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.20gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、該溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[a]ポリオルガノシロキサン化合物a−1を白色粉末として14.5g得た。ポリオルガノシロキサン化合物a−1のMwは15,500であった。
[実施例2〜22]
使用する特定カルボン酸及び桂皮酸誘導体の種類と量を表1に記載の内容にした以外は実施例1と同様にしてa−2〜a−22の[a]ポリオルガノシロキサン化合物を得た。
【0301】
【表1】

【0302】
上記表1中、変性量とはポリオルガノシロキサンが有するエポキシ量に対する特定カルボン酸又は桂皮酸誘導体の導入比率を示す。
【0303】
[比較合成例1]
100mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン9.8g、メチルイソブチルケトン28g、上記合成例31で得た桂皮酸誘導体(A−8)5.6g及びUCAT 18X(サンアプロ製の4級アミン塩)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌した。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して、この溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、ポリオルガノシロキサン化合物Ca−1を白色粉末として9.6g得た。Ca−1のMwは9,800であった。
【0304】
<[B]重合体の合成>
<ポリアミック酸の合成>
[合成例32]
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.61g(0.1モル)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル21.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン367.6gに溶解し、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃5時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−1を35g得た。
【0305】
[合成例33]
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)とシクロヘキサンビス(メチルアミン)14.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン329.3gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。次いで、反応物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40度15時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−2を32g得た。
【0306】
<ポリイミドの合成>
[合成例34]
上記合成例33で得たポリアミック酸PA−2を17.5gとり、これにN−メチル−2−ピロリドン232.5g、ピリジン3.8g及び無水酢酸4.9gを添加し、120℃において4時間反応させてイミド化を行った。次いで、反応混合液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下で15時間乾燥することにより、ポリイミドPI−1を15g得た。
【0307】
[合成例35]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物18.75g(0.0836モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン7.359g(0.0681モル)、3,5−ジアミノ安息香酸=5ξ−コレスタン−3−イル 8.895g(0.0170モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解させ、60℃で5時間反応させた。この重合溶液の粘度を測定したところ、2000mPa・sであった。次いで、この溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを加えてしばらく攪拌した後、ピリジン6.61g及び無水酢酸8.54gを添加し、110℃で4時間脱水閉環させた。その後、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40度で15時間乾燥することにより、イミド化率51%のポリイミドPI−2を26.6g得た。
【0308】
<液晶配向剤の調製>
[実施例23]
合成例32で得たポリアミック酸PA−1を含有する溶液を、これに含有されるポリアミック酸PA−1に換算して1,000質量部に相当する量をとり、[a]ポリオルガノシロキサン化合物a−1(100質量部)を加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン及びブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(S−1)を調製した。
【0309】
[実施例24〜54並びに比較例1及び2]
[B]重合体としてのポリアミック酸又はポリイミド、[a]ポリオルガノシロキサン化合物の組み合わせを表2に記載のとおりとし、実施例23と同様に操作して、液晶配向剤S−2〜S−32並びにCS−1及びCS−2を調製した。
【0310】
<液晶配向膜の形成>
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記実施例で調製した液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を形成した基板を1対(2枚)作成した。
【0311】
<液晶表示素子の製造>
上記液晶配向膜を形成した基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0312】
[実施例55]
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記実施例37で調製した液晶配向剤(S−15)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜を形成し、同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。この基板の一方について、塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射した。次にこの偏光UV照射した基板の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、もう1対の基板(偏光UV照射していない方)の液晶配向膜面を対向させて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0313】
[実施例56]
上記合成例35で得たポリイミドPI−2 100質量部に対し、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン20質量部、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)となるようにN−メチル−2−ピロリドン及びブチルセロソルブをそれぞれ加えて、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤S−33を調製した。
図1に示したスリット状にパターニングされたITO膜を有するガラス基板の透明電極面上に上記調製した液晶配向剤(S−33)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜を形成した。
次に図1に示したスリット状にパターニングされたITO膜を有するガラス基板の透明電極面上に、上記実施例37で調製した液晶配向剤(S−15)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して膜厚0.08μmの塗膜を形成した。この基板の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、もう1対の基板(偏光UV照射していない方)の液晶配向膜面を対向させて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。その後、10VのAC電圧を印加した状態の上記で作製したセルにハロゲンランプを用いて50,000J/mの光照射を行った後、セル基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、偏光UV照射時の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0314】
[比較例3]
下記表2に示す成分(表2中の「−」は該当する成分を用いなかったことを示す)を用いて実施例23と同様に調製した液晶配向剤CS−3を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を、対向させて重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙にネガ型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
さらに、基板の外側両面に、偏光板を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を製造した。
【0315】
<評価>
上記実施例の液晶配向剤を用いて製造した液晶表示素子について以下の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。なお、実施例56においては、パターン電極基板を用いているため、電圧保持率及び耐光性の測定は行わなかった。
【0316】
[電圧保持率(VHR(%))]
上記製造した液晶表示素子に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
【0317】
[耐光性]
カーボンアークを光源とするウェザーメーターで3,000時間照射後のVHRを上記同様にして測定し(5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定。測定装置は東陽テクニカ製VHR−1を使用)、照射前の測定値と比べてVHR変化量が1%以下のものを「○」と、1%を超え3%未満のものを「△」と、3%以上のものを「×」として評価を行った。
【0318】
[応答速度(立ち上がり時の電気光学応答性)]
偏光顕微鏡、光検出器及びパルス発生機を含む装置で液晶応答の立ち上がりの時間を測定した。ここで液晶応答速度は、作製した液晶表示素子に電圧無印加状態から4Vの電圧を最大1秒間印加した際に、透過率10%から透過率90%に変化するのに要した時間(単位:ミリ秒(msec.))と定義して評価を行った。
【0319】
【表2】

【0320】
上記表2中、ポリオルガノシロキサンは[B]重合体100質量部に対する配合量(質量部)を示す。
【0321】
表2の結果から明らかなように、実施例の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、耐光性に優れると共に、液晶の応答速度について比較例の液晶表示素子に比べ高速化されていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0322】
本発明の液晶配向剤は、一般に要求される電圧保持率、耐光性といった特性を満足しつつ、電気光学応答時間の短い液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。また、本発明のオルガノポリシロキサン化合物は、当該液晶配向剤の原料として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0323】
1:ITO電極
2:スリット部
3:遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]光配向性基及び下記式(A1)で表される基を有する重合体を含有する液晶配向剤。
【化1】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)
【請求項2】
上記光配向性基が、下記式(B1)で表される構造を有する請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(B1)中、Rはフッ素原子又はシアノ基である。a’は0〜4の整数である。a’が2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項3】
上記式(A1)におけるRCが、下記式(A2)で表される請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。
【化3】

(式(A2)中、Rはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は2価の複素環基である。これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは置換基を有していてもよいメチレン基及び炭素数2〜10のアルキレン基、二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合並びに複素環基のうちの少なくともいずれかを含む連結基である。Rはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、シクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン又は複素環化合物から(c+1)個の水素原子を除いた(c+1)価の基である。この基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは0又は1である。cは1〜9の整数である。dは1又は2である。R、R、R及びbがそれぞれ複数の場合、複数のR、R、R及びbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
[A]重合体が、ポリオルガノシロキサン構造を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜を
備える液晶表示素子。
【請求項7】
液晶配向膜が配向方位の異なる2以上の領域を有する請求項6に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項9】
光配向性基及び下記式(A1)で表される基を有するポリオルガノシロキサン化合物。
【化4】

(式(A1)中、Rはメチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。但し、これらの基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは二重結合、三重結合、エーテル結合、エステル結合及び酸素原子のうちのいずれかを含む連結基である。Rは少なくとも2つの単環構造を有する基である。aは0又は1である。)

【図1】
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【公開番号】特開2012−159825(P2012−159825A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251945(P2011−251945)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】