説明

液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子

【課題】少ない露光量による光配向法によって良好な液晶配向能を示し、且つ電気特性等の諸性能に優れる液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】上記液晶配向剤は、下記式


(式中、「*」は結合手であることを示す。)
で表される基に代表される特定の基を有する感放射線性ポリオルガノシロキサンを含有する。本発明の液晶配向剤は、TN型、STN型またはIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子に好適に適用することができ、特にIPS型の液晶セルを有する横電界方式の液晶表示素子に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶を、液晶配向膜を有する透明電極付き基板でサンドイッチ構造にし、必要に応じて液晶分子の長軸が基板間で0〜360°連続的に捻れるようにしてなるTN(Twisted Nematic)型およびSTN(Super Twisted Nematic)型、基板の片側のみに電極を形成して基板と平行方向に電界を印加するIPS(In Plane Switching)型、負の誘電異方性を有するネマチック型液晶を用いるVA(Vertical Alignment)型等の種々の液晶セルを有する液晶表示素子が知られている(特許文献1〜4参照)。上記のうちIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子は、横電解方式の液晶表示素子として知られている。
このような液晶セルにおいては、液晶分子を基板面に対して所定の方向に配向するために、基板表面に液晶配向膜が設けられている。この液晶配向膜は、TN型、STN型およびIPS型の液晶セルにおいては、通常、基板表面に形成された有機膜表面をレーヨン等の布材で一方向にこする方法(ラビング法)により形成される。しかし、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、ラビング工程中にほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるという問題があるほか、TFT(Thin Film Transistor)素子を有する基板の場合には、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こり、製品歩留まり低下の原因となるという問題もあった。さらに、今後ますます高精細化の傾向にある液晶表示素子においては、画素の高密度化に伴って基板表面に不可避的に生じる凹凸のために、均一なラビング処理が困難となりつつある。
【0003】
そこで、液晶セルにおいて液晶を配向する別の手段として、基板表面に形成した感光性有機薄膜に偏光または非偏光の放射線を照射することによって液晶配向能を付与する光配向法が提案されている(特許文献5〜15参照)。この技術によれば、静電気やほこりを発生することなく、均一な液晶配向を実現することができるという。この技術は、TN型、STN型、IPS型の液晶セルのほか、VA型の液晶セルにも適用することができる。
近年、TN型液晶セルに用いる液晶配向剤において特定のアゾ化合物を用いることにより、光配向法によって良好な電気特性を有する液晶配向膜が得られることが報告されている(特許文献16)。しかし、この技術によると、液晶配向膜の形成のために10,000J/m以上もの高い積算露光量が必要であるため、露光装置の経時的損傷の度合が大きく、液晶配向膜製造コストが高騰する問題を内包する。
この点、特定の長鎖構造または環状構造を有する重合体を含有する液晶配向剤が、少ない露光量の光配向法によって液晶配向性および電気特性に優れる液晶配向膜を与えることが報告された(特許文献17〜19)。この技術は、VA型液晶セルを有する液晶表示素子に適用した場合には所期の性能を有する液晶配向膜を容易且つ安価に形成することができる優れた技術であるが、TN型、STN型またはIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用した場合に液晶配向性は、必ずしも十分であるとはいえない。
TN型、STN型またはIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子、特にIPS型の液晶表示素子に適用した場合に、少ない露光量の光配向法によって液晶配向性および電気特性に優れる液晶配向膜を与えることのできる液晶配向剤は、未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−91277号公報
【特許文献2】特開平1−120528号公報
【特許文献3】米国特許第5,928,733号明細書
【特許文献4】特開平11−258605号公報
【特許文献5】特開平6−287453号公報
【特許文献6】特開平10−251646号公報
【特許文献7】特開平11−2815号公報
【特許文献8】特開平11−152475号公報
【特許文献9】特開2000−144136号公報
【特許文献10】特開2000−319510号公報
【特許文献11】特開2000−281724号公報
【特許文献12】特開平9−297313号公報
【特許文献13】特開2003−307736号公報
【特許文献14】特開2004−163646号公報
【特許文献15】特開2002−250924号公報
【特許文献16】特開2007−138138号公報
【特許文献17】国際公開第2009/025385号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2009/025386号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2009/025388号パンフレット
【特許文献20】特開昭63−291922号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chemical Reviews, 95, p1409(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、TN型、STN型またはIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用した場合に、少ない露光量による光配向法によって良好な液晶配向能を示し、且つ電気特性等の諸性能に優れる液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤を提供することにある。 本発明の他の目的は、上記の如き優れた特性を備える液晶配向膜および液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
下記式(A1’)および(A2’)
【0008】
【化1】

【0009】
(式(A1’)中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素原子またはシアノ基であり、Rはフェニレン基またはシクロヘキシレン基であり、ただし前記フェニレン基またはシクロヘキシレン基の水素原子の一部または全部はフッ素原子またはシアノ基で置換されてもよく、Rは単結合、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−CH=CH−または−NH−であり、aは0〜3の整数であり、aが2または3である場合に複数存在するRおよびRは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよく、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、bは0〜4の整数であり、「*」は結合手であることを示し;
式(A2’)中、R’は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素原子またはシアノ基であり、Rはフェニレン基またはシクロヘキシレン基であり、ただし前記フェニレン基またはシクロヘキシレン基の水素原子の一部または全部はフッ素原子またはシアノ基で置換されてもよく、Rは単結合、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子または−NH−であり、cは1〜3の整数であり、cが2または3である場合に複数存在するRおよびRは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよく、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、dは0〜4の整数であり、Rは酸素原子、−COO−または−OCO−(ただし、以上において「+」を付した結合手がRと結合する。)であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、−OCO−(CH−または−O−(CH−(ただし、以上において「+」を付した結合手が−(R−R−側であり、fおよびgは、それぞれ、1〜10の整数である。)であり、eは0〜3の整数であり、そして「*」は結合手であることを示す。)
のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する感放射線性ポリオルガノシロキサンを含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜によって達成され、
第三に、上記の液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤は、TN型、STN型またはIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子、特にIPS型の液晶セルを有する横電解方式の液晶表示素子に適用した場合に、少ない露光量による光配向法によって良好な液晶配向能を示し、且つ電気特性等の諸性能に優れる液晶配向膜を形成することができる。
かかる本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する本発明の液晶表示素子は、高品位の表示が可能であり、しかも安価であるため、各種の表示装置として有効に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液晶配向剤は、上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する感放射線性ポリオルガノシロキサンを含有する。
<感放射線性ポリオルガノシロキサン>
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有するものである。
上記式(A1’)におけるRおよび上記式(A2’)におけるR’の炭素数1〜3のアルキル基としては、それぞれ、メチル基、エチル基またはn−プロピル基が好ましい。上記式(A1’)におけるRおよび上記式(A2’)におけるRのフェニレン基およびシクロへキシレン基は、それぞれ、1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
上記式(A1’)におけるRとしては、単結合、酸素原子または−CH=CH−であることが好ましい。
上記式(A2’)におけるRの2価の芳香族基としては、例えば1,4−フェニレン基または4,4’−ビフェニレン基等を;
2価の脂環式基としては、例えば1,4−シクロへキシレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基等を;
2価の複素環式基としては、例えばフラン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル基等を;
2価の縮合環式基としては、例えばアントラキノン−2,6−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、アントラセン−9,10−ジイル基、カルバゾール−3,6−ジイル基、ジベンゾチオフェン−2,8−ジイル基等を、それぞれ挙げることができる。上記式(A2’)におけるeは0であることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンが有する基の具体例としては、上記式(A1’)で表される基として、例えば下記式
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
【化14】

【0024】
【化15】

【0025】
(ただし以上において、「*」は結合手であることを示す。)
のそれぞれで表される基を挙げることができ;
上記式(A2’)で表される基として、例えば下記式
【0026】
【化16】

【0027】
【化17】

【0028】
【化18】

【0029】
【化19】

【0030】
【化20】

【0031】
【化21】

【0032】
【化22】

【0033】
【化23】

【0034】
【化24】

【0035】
【化25】

【0036】
【化26】

【0037】
(ただし以上において、「*」は結合手であることを示す。)
のそれぞれで表される基を挙げることができる。
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンにおける上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基の含有割合は、0.2〜6ミリモル/g−ポリマーであることが好ましく、0.3〜5ミリモル/g−ポリマーであることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基のほかに、さらにエポキシ基を有することが好ましい。この場合、感放射線性ポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、好ましくは150g/モル以上であり、より好ましくは200〜10,000g/モルであり、さらに200〜2,000g/モルであることが好ましい。このような割合でエポキシ当量の感放射線性ポリオルガノシロキサンを用いることにより、本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の保存安定性を損なうことなく、液晶配向性により優れ、残像特性に優れる液晶配向膜を形成しうることとなり、好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜100,000であることがより好ましく、特に3,000〜30,000であることが好ましい。
【0038】
<感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成>
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、上記の如きものである限り、どのような方法によって合成されたものを用いてもよい。本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成方法としては、例えば
上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する加水分解性シラン化合物、または該加水分解性シラン化合物とその他の加水分解性シラン化合物との混合物を加水分解および縮合する方法、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、下記式(A1)および(A2)
【0039】
【化2】

【0040】
(式(A1)中のR、R、R、R、aおよびbは、それぞれ、上記式(A1’)におけるのと同義であり;
式(A2)中のR’、R、R、R、R、R、c、dおよびeは、それぞれ、上記式(A2’)におけるのと同義である。)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを反応させる方法等によることができる。
これらのうち、原料化合物の合成の容易性、反応の容易性等の観点から、後者の方法によることが好ましい。
以下、本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンを合成するための好ましい方法である、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A1)および(A2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種との反応方法について説明する。
【0041】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン]
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンにおけるエポキシ基は、酸化エチレン骨格または1,2−エポキシシクロアルカン骨格が、直接に、または途中が酸素原子によって中断されていてもよいアルキレンを介して、ケイ素原子に結合している基(エポキシ基を有する基)に含まれるものとしてポリオルガノシロキサン中に存在することが好ましい。このようなエポキシ基を有する基としては、例えば下記式(EP−1)または(EP−2)
【0042】
【化27】

【0043】
(式(EP−1)および(EP−2)中、「*」は結合手であることを示す。)
で表される基を挙げることができる。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、好ましくは100〜10,000g/モルであり、より好ましくは150〜1,000g/モルである。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、500〜100,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましく、特に1,000〜5,000であることが好ましい。
このような、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、例えばエポキシ基を有するシラン化合物、またはエポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水および触媒の存在下において加水分解および縮合することにより合成することができる。
上記エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0044】
上記他のシラン化合物としては、例えばテトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、
【0045】
2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、
【0046】
(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジエメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のケイ素原子を1個有するシラン化合物のほか、
【0047】
商品名で、例えばKC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業(株)製);グラスレジン(昭和電工(株)製);SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー(株)製);DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ(株)製);メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学(株)製);エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート(株)製);GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工(株)製)等の部分縮合物を挙げることができ、これらのうちの1種以上を使用することができる。
【0048】
他のシラン化合物としては、上記のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランおよびジメチルジエトキシシランよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。
本発明におけるエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたっては、エポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物との使用割合を、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記の好ましい範囲になるように調製して設定することが好ましい。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール等を挙げることができる。
【0049】
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレン等を;上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等を;
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等を;
上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を;
上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用量は、シラン化合物の合計(エポキシ基を有するシラン化合物と任意的に用いられる他のシラン化合物との合計をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
【0050】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を用いることができる。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等を挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0051】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の触媒としては、アルカリ金属化合物または有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物または有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環等の副反応を生じることなく、高い加水分解および縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。また、触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと桂皮酸誘導体との反応物を含有する本発明の液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、非特許文献1(Chemical Reviews, 95, p1409(1995))に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造またはかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないのでシラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに本発明の液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合にはシラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計1モルに対して好ましくは0.01〜3モルであり、より好ましくは0.05〜1モルである。
【0052】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の加水分解および縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴等の適当な加熱装置を用いて加熱することによって実施することが好ましい。
加水分解および縮合反応の際には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱することが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、撹拌しなくてもよく、あるいは混合液を還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応混合物から分離した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01,DMS−E12、DMS−E21,EMS−32(以上、チッソ(株)製)等を挙げることができる。
【0053】
[上記式(A1)および(A2)のそれぞれで表される化合物]
上記式(A1)および(A2)のそれぞれで表される化合物の具体例としては、上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基として上記に例示した基の結合手に水素原子を結合してなるカルボン酸を挙げることができる。
【0054】
[感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成]
本発明の液晶配向剤に含有される感放射線性ポリオルガノシロキサンは、好ましくは上記の如きエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A1)および(A2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種とを、好ましくは触媒および有機溶媒の存在下に反応させることにより、容易に得ることができる。
ここで、上記式(A1)および(A2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種は、その合計が、ポリオルガノシロキサンの有するエポキシ基1モルに対して、好ましくは0.001〜10モル、より好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.05〜2モル、特に好ましくは0.05〜0.8モルの割合で使用される。
上記触媒としては、有機塩基、またはエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0055】
上記硬化促進剤としては、例えばベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミンの如き3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物の如きイミダゾール化合物;
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニルの如き有機リン化合物;
【0056】
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレートの如き4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
前記イミダゾール化合物、有機リン化合物や4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
【0057】
これらのうち、好ましくはテトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドの如き4級アンモニウム塩である。 触媒は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A1)および(A2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種との反応は、必要に応じて有機溶剤の存在下に行うことができる。かかる有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコール等を挙げることができる。これらのうち、エーテル、エステルまたはケトンが、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる割合で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。 上記の如き感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの有するエポキシの開環付加によって上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を導入する方法である。この合成方法は簡便であり、しかも上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基の導入率を高くすることができる点で極めて好適な方法である。
【0058】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き感放射線性ポリオルガノシロキサンを含有する。
本発明の液晶配向剤は、上記の如き感放射線性ポリオルガノシロキサンのほかに、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば感放射線性ポリオルガノシロキサン以外の重合体(以下、「他の重合体」という。)、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(ただし、感放射線性ポリオルガノシロキサンに該当するものを除く。以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物(ただし、感放射線性ポリオルガノシロキサンに該当するものを除く。)、界面活性剤等を挙げることができる。
【0059】
[他の重合体]
上記他の重合体は、本発明の液晶配向剤の溶液特性および得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために使用することができる。かかる他の重合体としては、例えばポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体、上記感放射線性ポリオルガノシロキサン以外のポリオルガノシロキサン(以下、「他のポリオルガノシロキサン」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0060】
{ポリアミック酸}
上記ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物等を、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献17〜19に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0061】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、さらに、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含むものであることが好ましく、20モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のみからなるものであることが、最も好ましい。
【0062】
ポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等を挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等を;
【0063】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、
【0064】
ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサンおよび下記式(D−1)
【0065】
【化28】

【0066】
(式(D−1)中、Xは炭素数1〜3のアルキル基、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、hは0または1であり、iは0〜2の整数であり、jは1〜20の整数である。)
で表される化合物等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等を、それぞれ挙げることができるほか、
特許文献17〜19に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(D−1)におけるXは炭素数1〜3のアルキル基、−O−または−COO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基C2j+1−の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等を挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D−1−1)〜(D−1−4)
【0067】
【化29】

【0068】
のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
上記式(D−1)において、hおよびiは同時には0にならないことが好ましい。
これらジアミンは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。 ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜10時間行われる。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;
m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒等を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%となるような量である。
【0069】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法等により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法等により、ポリアミック酸を精製することができる。
【0070】
{ポリイミド}
上記ポリイミドは、上記の如くして得られたポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環することにより合成することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、あるいはアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。 ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行うことができる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下する場合がある。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜48時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸構造単位の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
【0071】
上記方法(i)において得られるポリイミドは、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換等の方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0072】
{他のポリオルガノシロキサン}
本発明における他のポリオルガノシロキサンは、上記の感放射線性ポリオルガノシロキサン以外のポリオルガノシロキサンである。かかる他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物およびハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」ともいう。)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水および触媒の存在下において加水分解および縮合することにより合成することができる。
【0073】
ここで使用される原料シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等を挙げることができ、これらのうちの1種以上を使用することが好ましく、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびトリメチルエトキシシランよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。 本発明における他のポリオルガノシロキサンは、上記の如き原料シラン化合物を使用するほかは、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成方法として上記したところと同様にして合成することができる。
他のポリオルガノシロキサンにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。
【0074】
{他の重合体の使用割合}
本発明の液晶配向剤が、前述の感放射線性ポリオルガノシロキサンとともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の使用割合としては、感放射線性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して10,000重量部以下であることが好ましい。他の重合体のより好ましい使用割合は、他の重合体の種類により異なる。
本発明の液晶配向剤が、感放射線性ポリオルガノシロキサンならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである場合における両者のより好ましい使用割合は、感放射線性ポリオルガノシロキサン100重量部に対するポリアミック酸およびポリイミドの合計量100〜5,000重量部であり、さらに200〜2,000重量部であることが好ましい。
一方、本発明の液晶配向剤が、感放射線性ポリオルガノシロキサンおよび他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における両者のより好ましい使用割合は、感放射線性ポリオルガノシロキサン100重量部に対する他のポリオルガノシロキサンの量として100〜2,000重量部である。
本発明の液晶配向剤が、感放射線性ポリオルガノシロキサンとともに他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の種類としては、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体もしくは他のポリオルガノシロキサンまたはこれらの双方であることが好ましい。
【0075】
[硬化剤および硬化触媒] 上記硬化剤および硬化触媒は感放射線性ポリオルガノシロキサンの架橋反応をより強固にする目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができ、上記硬化促進剤は硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で本発明の液晶配向剤に含有されることができる。
上記硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物またはエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができ、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸を例示することができる。
上記多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物およびその他の多価カルボン酸無水物を挙げることができる。 シクロヘキサントリカルボン酸無水物の具体例としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等を挙げることができ、その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(CA−1)
【0076】
【化30】

【0077】
(式(CA−1)中、kは1〜20の整数である。)
で表される化合物およびポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物およびこれらの水素添加物等を挙げることができる。
上記硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等を用いることができる。これらの触媒は加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
上記硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;
4級リン化合物;
4級アミン化合物;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物の如きアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩の如き高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤、等を挙げることができる。
【0078】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から本発明の液晶配向剤に含有されることができる。 かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン等を、好ましいものとして挙げることができる。
本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の感放射線性ポリオルガノシロキサンと任意的に使用される他の重合体との合計100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは0.1〜30重量部である。
なお、本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、その架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
【0079】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができ、さらに特許文献20(特開昭63−291922号公報)に記載されている如き、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等を使用することができる。
本発明の液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の感放射線性ポリオルガノシロキサンと任意的に使用される他の重合体との合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下である。
【0080】
[界面活性剤]
上記界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等を挙げることができる。 本発明の液晶配向剤が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤の全体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
【0081】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上述の通り、感放射線性ポリオルガノシロキサンを必須成分として含有し、そのほかに必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
本発明の液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、感放射線性ポリオルガノシロキサンおよび任意的に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。
本発明の液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒は、任意的に添加される他の重合体の種類により異なる。 本発明の液晶配向剤が感放射線性ポリオルガノシロキサンならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有するものである場合、ならびに感放射線性ポリオルガノシロキサンならびにポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体のほかにさらに他のポリオルガノシロキサンを含有するものである場合における好ましい有機溶剤としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができる。このとき、本発明のポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。これら有機溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0082】
一方、本発明の液晶配向剤が、重合体として感放射線性ポリオルガノシロキサンのみを含有するものである場合、または感放射線性ポリオルガノシロキサンおよび他のポリオルガノシロキサンを含有するがポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有しないものである場合における好ましい有機溶剤としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。この中で好ましくは、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル等を挙げることができる。
【0083】
本発明の液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無およびその種類に従い、上記した有機溶媒の1種または2種以上を組み合わせて得られるものであって、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、且つ液晶配向剤の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い場合がある。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。 本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃であり、より好ましくは0℃〜40℃である。
【0084】
<液晶配向膜の形成方法>
本発明の液晶配向剤は、光配向法により液晶配向膜、TN型もしくはSTN型の液晶セルを有する液晶表示素子またはIPS型の液晶セルを有する横電解方式の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。本発明の液晶配向剤は、特にIPS型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されることとなり、好ましい。
本発明の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成するには、基板上に、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を経る方法によることができる。
ここで、本発明の液晶配向剤を、TN型またはSTN型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。一方、本発明の液晶配向剤を、IPS型の液晶セルを有する液晶表示素子に適用する場合には、片面に透明導電膜または金属膜が櫛歯状にパターニングされた電極を有する基板と、電極が設けられていない対向基板とを一対とし、櫛歯状電極の形成面と、対向基板の片面とに、それぞれ本発明の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成する。
いずれの場合も、上記の基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。上記透明導電膜としては、例えばIn−SnOからなるITO膜、SnOからなるNESA(登録商標)膜等を用いることができる。上記金属膜としては、例えばクロム等の金属からなる膜を使用することができる。透明導電膜および金属膜のパターニングには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチング法、スパッタ法等によりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等によることができる。
【0085】
基板上への液晶配向剤の塗布に際して基板または導電膜ないし電極と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板および電極上に、予め官能性シラン化合物、チタネート等を塗布しておいてもよい。
基板上への液晶配向剤の塗布は、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法、インクジェット印刷法等の適宜の塗布方法により行うことができ、次いで、塗布面を予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0086】
このようにして形成された塗膜に、直線偏光もしくは部分偏光された放射線または無偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。無偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等を使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得ることができる。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10〜3,000J/mである。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下であっても良好な液晶配向能を付与することができ、液晶表示素子の生産性向上と製造コストの削減に資する。
【0087】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
先ず、上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板を準備し、この一対の基板間に液晶が狭持された構成の液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。 第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。 いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。ここで、液晶配向膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度およびそれぞれの基板と偏光板との角度を適当に調整することにより、所望の液晶表示素子を得ることができる。
【0088】
前記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を用いることができる。ネマティック型液晶を形成する正の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が用いられる。また前記液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶;
商品名「C−15」、「CB−15」(以上、メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;
p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加して使用してもよい。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、電気特性等の諸性能に優れるものである。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の合成例における重量平均分子量は、それぞれ下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm なお、以下の合成例においては、原料化合物および重合体の合成を下記の合成スケールで必要に応じて繰り返すことにより、以降の実施例における必要量を確保した。
【0090】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成例>
合成例ES1
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500gおよびトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。
次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗から30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、これを0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)を粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。 このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)の粘度、Mwおよびエポキシ当量を表1に示した。
【0091】
合成例ES2〜3
仕込み原料を表1に示すとおりとした以外は、合成例1と同様にしてエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−2)および(ES−3)を、それぞれ粘調な透明液体として得た。
これらのエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのMwおよびエポキシ当量を表1に示した。 なお、表1において、原料シラン化合物の略称は、それぞれ以下の意味である。
ECETS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
MTMS:メチルトリメトキシシラン
PTMS:フェニルトリメトキシシラン
【0092】
【表1】

【0093】
<上記式(A1)で表される化合物の合成例>
下記合成例A1−1〜A1−4のようにして下記式(A1−1)〜(A1−4)
【0094】
【化31】

【0095】
のそれぞれで表される化合物(以下、それぞれ「化合物(A1−1)」、「化合物(A1−2)」、「化合物(A1−3)」および「化合物(A1−4)」という。)を合成した。
合成例A1−1
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、4−ブロモジフェニルエーテル20g、酢酸パラジウム0.18g、トリス(2−トリル)ホスフィン0.98g、トリエチルアミン32.4gおよびジメチルアセトアミド135mLを仕込んで混合し、溶液とした。次にアクリル酸7gをシリンジを用いて上記溶液に加えて撹拌した後、120℃で3時間、撹拌下に反応を行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。不溶物をろ別した後、ろ液を1N塩酸300mL中に注ぎ、析出物を回収した。この析出物を酢酸エチルおよびヘキサンからなる混合溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(容積比))から再結晶することにより、化合物(A1−1)を8.4g得た。
合成例A1−2
冷却管を備えた300mLの三口フラスコに、4−フルオロフェニルボロン酸6.5g、4−ブロモけい皮酸10g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム2.7g、炭酸ナトリウム4g、テトラヒドロフラン80mLおよび純水39mLを仕込んで混合した後、80℃において8時間撹拌下に反応を行った。反応の終了をTLCにより確認した後、反応混合物を室温まで冷却した。冷却後の反応混合物を1N塩酸200mL中に注ぎ、析出物を回収した。得られた析出物を酢酸エチルに溶解した溶液を、1N塩酸100mL、純水100mLおよび飽和食塩水100mLにより順次に洗浄した、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた固体を真空乾燥することにより、化合物(A1−2)を9g得た。
【0096】
合成例A1−3
冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、4−フルオロスチレン3.6g、4−ブロモけい皮酸6g、酢酸パラジウム0.059g、トリス(2−トリル)ホスフィン0.32g、トリエチルアミン11gおよびジメチルアセトアミド50mLを仕込んで混合し、溶液とした。この溶液につき、120℃で3時間撹拌して反応を行った。TLCにより反応の終了を確認した後、反応混合物を室温まで冷却し、不溶物をろ別した後、ろ液を1N塩酸300mLに注ぎ、析出物を回収した。この析出物を酢酸エチルから再結晶することにより、化合物(A1−3)を4.1g得た。
合成例A1−4
冷却管を備えた200mLの三口フラスコに,4−ビニルビフェニル9.5g、4−ブロモけい皮酸10g、酢酸パラジウム0.099g、トリス(2−トリル)ホスフィン0.54g、トリエチルアミン18gおよびジメチルアセトアミド80mLを仕込んで混合し、溶液とした。この溶液を120℃で3時間撹拌して反応を行った。TLCにより反応の終了を確認した後、反応混合物を室温まで冷却し、不溶物をろ別した後、ろ液を1N塩酸500mL中に注ぎ、析出物を回収した。この析出物をジメチルアセトアミドおよびエタノールからなる混合溶媒(ジメチルアセトアミド:エタノール=1:1(容積比))から再結晶することにより、化合物(A1−4)を11g得た。
【0097】
<上記式(A2)で表される化合物の合成例>
下記合成例A2−1およびA2−2のようにして下記式(A2−1)および(A2−2)
【0098】
【化32】

【0099】
のそれぞれで表される化合物(以下、それぞれ「化合物(A2−1)」および「化合物(A2−2)」という。)を合成した。
合成例A2−1
冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、フェニルアクリレート10g、4−ブロモ安息香酸11.3g、酢酸パラジウム0.13g、トリス(2−トリル)ホスフィン0.68g、トリエチルアミン23gおよびジメチルアセトアミド100mLを仕込んで混合し、溶液とした。この溶液につき、120℃において3時間撹拌下に反応を行った。TLCで反応の終了を確認した後、反応混合物を室温まで冷却し、不溶物をろ別した後、ろ液を1N塩酸500mL中に注ぎ、沈殿物を回収した。この沈殿物を酢酸エチルから再結晶することにより、化合物(A2−1)を9.3g得た。
【0100】
合成例A2−2
滴下漏斗を備えた200mLの三口フラスコに、4−シクロヘキシルフェノール10g、トリエチルアミン6.3gおよび脱水テトラヒドロフラン80mLを仕込んで混合した。これを氷浴で冷却し、滴下漏斗からアクリロイルクロリド5.7gおよび脱水テトラヒドロフラン40mLからなる溶液を滴下した。滴下終了後、更に氷浴下で1時間撹拌した後、室温に戻して更に2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を濾過し、生成した塩を除去した。ろ液に酢酸エチルを加えて得た有機層を水洗した後、減圧下に溶媒を除去し、乾固して、中間体であるアクリル酸4−シクロヘキシルフェニルを12.3g得た。
次いで、冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得たアクリル酸4−シクロヘキシルフェニルのうちの6g、2−フルオロ−4−ブロモ安息香酸5.7g、酢酸パラジウム0.06g、トリス(2−トリル)ホスフィン0.32g、トリエチルアミン11gおよびジメチルアセトアミド50mLを仕込んで混合し、溶液とした。この溶液につき、120℃において3時間撹拌下に反応を行った、TLCにより反応の終了を確認した後、反応混合物を室温まで冷却し、不溶物をろ別した後、ろ液を1N塩酸300mL中に注ぎ、生成した沈殿物を回収した。この沈殿物を酢酸エチルから再結晶することにより、化合物(A2−2)を3.4g得た。
【0101】
<カルボン酸の比較合成例>
合成例RA1
200mLの三口フラスコに、4−ヒドロキシカルコン11.21g、ブロモ酢酸エチル8.35g、炭酸カリウム13.8gおよびジメチルアセトアミド100mLを仕込んで混合し、120℃で7時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却した後、これに酢酸エチル100mLを加えて得た有機層を水洗した。得られた有機層から減圧下に溶媒を除去して、一旦乾固した後、エタノールおよび水からなる混合溶媒(エタノール:水=4:1(容積比))から再結晶を行い、中間体であるカルコニルオキシ酢酸エチルを11.4gを得た。
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに、上記で得たカルコニルオキシ酢酸エチルのうちの6.2g、水酸化ナトリウム2g、エタノール200mLおよび水50mLを仕込んで混合し、還流下で3時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を冷却した後、希塩酸を加えて酸性とした後、酢酸エチル500mLにより抽出を行った。得られた有機層につき、これを水洗した後、減圧下に溶媒を除去して乾固することにより、下記式(RA−1)
【0102】
【化33】

【0103】
で表される化合物(化合物(RA−1))を4.1g得た。
【0104】
<感放射線性ポリオルガノシロキサンの合成例>
合成例S1
100mLの三口フラスコに、上記合成例ES1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)9.3g、メチルイソブチルケトン26g、上記合成例A1−1で得た化合物(A1−1)3gおよびUCAT 18X(商品名。サンアプロ(株)製の4級アミン塩である。)0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物をメタノールに投入して生成した沈殿物を回収し、これを酢酸エチルに溶解して溶液とし、該溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−1)を白色粉末として6.3g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−1)の重量平均分子量Mwは3,500であった。
合成例S2
合成例S1において、化合物(A1−1)の代わりに上記合成例A1−2で得た化合物(A1−2)3gを用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−2)の白色粉末を7.0g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−2)の重量平均分子量Mwは4,900であった。
【0105】
合成例S3
合成例S1において、化合物(A1−1)の代わりに上記合成例A1−3で得た化合物(A1−3)4gを用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−3)の白色粉末を10g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−3)の重量平均分子量Mwは5,000であった。
合成例S4
合成例S1において、化合物(A1−1)の代わりに上記合成例A1−4で得た化合物(A1−4)4gを用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−4)の白色粉末を10g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−4)の重量平均分子量Mwは4,200であった。
【0106】
合成例S5
合成例S1において、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)の代わりに上記合成例ES2で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−2)10.5gを、化合物(A1−1)の代わりに上記合成例A2−1で得た化合物(A2−1)3.35gを、それぞれ用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−5)の白色粉末を7.0g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−5)の重量平均分子量Mwは5,500であった。
合成例S6
合成例S1において、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−1)の代わりに上記合成例ES3で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(ES−3)11.4gを、化合物(A1−1)の代わりに上記合成例A2−3で得た化合物(A2−2)4.6gを、それぞれ用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−6)の白色粉末を9.6g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−6)の重量平均分子量Mwは7,400であった。
【0107】
<感放射線性ポリオルガノシロキサンの比較合成例>
合成例RS1
合成例S−1において、化合物(A1−1)の代わりに特許文献17(国際公開第2009/025385号パンフレット)に記載の方法に従って合成した下記式
【0108】
【化34】

【0109】
で表される化合物4.4gを用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(RS−1)の白色粉末を7.2g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(RS−1)の重量平均分子量Mwは9,400であった。
合成例RS2
合成例S1において、化合物(A1−1)の代わりに上記合成例RA1で得た化合物(RA−1)3.52gを用いたほかは上記合成例S1と同様にして、感放射線性ポリオルガノシロキサン(RS−2)の白色粉末を9.1g得た。この感放射線性ポリオルガノシロキサン(RS−2)の重量平均分子量Mwは6,900であった。
【0110】
<他の重合体の合成例>
[ポリアミック酸の合成例]
合成例pa1
シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.61g(0.1モル)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル21.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン367.6gに溶解し、室温で6時間反応を行った。反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(pa−1)を35g得た。
合成例pa2
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)とシクロヘキサンビス(メチルアミン)14.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン329.3gに溶解し、60℃で6時間反応を行った。反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(pa−2)を32g得た。
【0111】
[ポリイミドの合成例]
合成例pi−1
上記合成例pa−2で得たポリアミック酸pa−2のうちの17.5gをとり、これをN−メチル−2−ピロリドン232.5gに溶解し、さらにピリジン3.8gおよび無水酢酸4.9gを添加して120℃において4時間脱水閉環反応を行った。反応終了後、反応混合液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。この沈殿物を回収し、メタノールで洗浄した後、減圧下で15時間乾燥することにより、ポリイミド(pi−1)を15g得た。
[他のポリオルガノシロキサンの合成例]
合成例s1
合成例S1において、化合物(A1−1)の代わりにラウリン酸5gを用いたほかは上記合成例S1と同様にして、他のポリオルガノシロキサン(s−1)の白色粉末を11g得た。この他のポリオルガノシロキサン(s−1)の重量平均分子量Mwは6,000であった。
【0112】
実施例1
<液晶配向剤の調製>
感放射線性ポリオルガノシロキサンとして上記合成例S1で得た感放射線性ポリオルガノシロキサン(S−1)の100重量部と、他の重合体として上記合成例pa−1で得たポリアミック酸(pa−1)の1,000重量部とを合わせ、これにN−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加えて、溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:ブチルセロソルブ=50:50(重量比)、固形分濃度が3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0113】
<液晶表示素子の製造>
櫛歯状にパターニングされたクロムからなる金属電極を片面に有するガラス基板と電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対とし、ガラス基板の電極を有する面と対向ガラス基板の一面とに、それぞれ上記で調製した液晶配向剤(LA−1)をスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中で200℃で1時間加熱(ポストベーク)して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこれら塗膜表面に、それぞれHg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線300J/mを、基板法線方向から照射して液晶配向膜を有する一対の基板を得た。 上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、偏光紫外線を照射した際の各基板の向きが逆になるように重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、メルク社製液晶、MLC−7028を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の偏光紫外線の光軸の基板面への射影方向と直交するように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0114】
<液晶表示素子の評価方法>
上記で製造した液晶表示素子につき、以下の方法により評価した。評価結果は表2に示した。
(1)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を光学顕微鏡により観察し、異常ドメインが観察されなかった場合を液晶配向性「良」とし、異常ドメインが観察された場合を液晶配向性「不良」として評価した。
(2)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶表示素子に、60℃において、5Vの電圧を、60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
【0115】
実施例2〜12ならびに比較例1および2
実施例1において、感放射線性ポリオルガノシロキサンおよび他の重合体としてそれぞれ表2に記載の種類および量の重合体を使用したほかは上記実施例1と同様にして液晶配向剤を調製し、液晶配向膜形成時の偏光紫外線の照射量を表2のとおりとしたほかは上記実施例1と同様にして液晶表示素子を製造して評価した。評価結果は表2にそれぞれ示した。
なお実施例7においては、液晶配向剤の調製の際に他の重合体として2種類の重合体を併用した。
【0116】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1’)および(A2’)
【化1】

(式(A1’)中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素原子またはシアノ基であり、Rはフェニレン基またはシクロヘキシレン基であり、ただし前記フェニレン基またはシクロヘキシレン基の水素原子の一部または全部はフッ素原子またはシアノ基で置換されてもよく、Rは単結合、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、−CH=CH−または−NH−であり、aは0〜3の整数であり、aが2または3である場合に複数存在するRおよびRは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよく、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、bは0〜4の整数であり、「*」は結合手であることを示し;
式(A2’)中、R’は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素原子またはシアノ基であり、Rはフェニレン基またはシクロヘキシレン基であり、ただし前記フェニレン基またはシクロヘキシレン基の水素原子の一部または全部はフッ素原子またはシアノ基で置換されてもよく、Rは単結合、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子または−NH−であり、cは1〜3の整数であり、cが2または3である場合に複数存在するRおよびRは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよく、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、dは0〜4の整数であり、Rは酸素原子、−COO−または−OCO−(ただし、以上において「+」を付した結合手がRと結合する。)であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、−OCO−(CH−または−O−(CH−(ただし、以上において「+」を付した結合手が−(R−R−側であり、fおよびgは、それぞれ、1〜10の整数である。)であり、eは0〜3の整数であり、そして「*」は結合手であることを示す。)
のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する感放射線性ポリオルガノシロキサンを含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【請求項2】
上記感放射線性ポリオルガノシロキサンが、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、
下記式(A1)および(A2)
【化2】

(式(A1)中のR、R、R、R、aおよびbは、それぞれ、上記式(A1’)におけるのと同義であり;
式(A2)中のR’、R、R、R、R、R、c、dおよびeは、それぞれ、上記式(A2’)におけるのと同義である。)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種と
の反応生成物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
さらに、ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有する、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
さらに、上記感放射線性ポリオルガノシロキサン以外のポリオルガノシロキサンを含有する、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
基板上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を経ることを特徴とする、液晶配向膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項7】
横電解方式である、請求項6に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
上記式(A1’)および(A2’)のそれぞれで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有することを特徴とする、ポリオルガノシロキサン。

【公開番号】特開2010−217868(P2010−217868A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280664(P2009−280664)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】