説明

液滴吐出ヘッド、画像形成装置及び液滴吐出ヘッドの製造方法

【課題】撥液層の端部位置精度が良く滴吐出特性のばらつきが少なく、かつインク充填性及び気泡排出性の良いインク滴吐出ヘッドを得る。
【解決手段】液滴を吐出する複数のノズル孔が存在するノズル部領域と、ノズル孔に連通する液室の少なくとも一部が存在する液室部領域と、液室内の液体を加圧してノズル孔から液滴を吐出するための圧力発生手段とを備え、前記ノズル孔の液室側とは反対側の吐出面側に撥液層が形成された液滴吐出ヘッドを製造する方法において、前記ノズル部領域と前記液室部領域とを共通組成の材料を用いてノズル・液室部材として一体に形成するプロセスと、一体形成されたノズル・液室部材の上記吐出面側と反対側に、導電性構造体を密着してこれらを接地して保持するプロセスと、撥液剤を微粒子化した上で帯電させるプロセスと、帯電した微粒子化撥液剤を前記吐出面側に塗布して撥液層を成膜するプロセスとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出ヘッドを備える画像形成装置並びに液滴吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータやワークステーションから画像を出力する印字機、ファクシミリ、複写機、これらの機能を併せ持った複合機等の画像形成装置として、インク滴を記録媒体(用紙ともいう)に吐出するインク滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッドともいう)を備えたインクジェット方式画像記録装置が知られている。インク滴吐出ヘッドは、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルが連通する液流路(加圧室、加圧液室、圧力室、液室、インク室、吐出室等ともいう)を形成する液流路形成部材と、各液流路内のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させるためのエネルギーを発生させるアクチュエータ素子(圧力発生手段、エネルギー発生手段ともいう)とを備えて構成され、吐出ヘッドのアクチュエータ素子を画像情報に応じて駆動することで所要のノズルからインク滴を吐出させて画像を記録するようになっている。上記アクチュエータ素子は、圧電素子等の電気機械変換素子、或いはヒータ等の電気熱変換素子、若しくは電極等の静電気力発生手段を主たる構成要素としている。
【0003】
近年、インクジェット方式画像形成装置の汎用化に伴い、従来の染料インク使用を前提としたインクジェット専用紙以外の普通紙を用いた場合での高画質化も求められてきている。そのため、普通紙での滲みを防止するため、インクを高粘度化したり、染料インク以外の顔料系インクが採用されている。顔料インクの場合、染料インクに比べて、早期に増粘する。そのため、高粘度化したインクが吐出ヘッドのノズルに付着/固着して、滴吐出方向を曲げたり、滴の大きさにバラツキが生じ、あるいは滴吐出速度が不安定になる等、吐出性能の劣化を引き起こすことが一層問題になっている。
【0004】
そこで、ノズルのインク滴吐出側表面に撥液膜を形成して、ノズル吐出側表面の均一性を高めることが図られている。例えば特許文献1では、ノズルを構成するノズル孔形成部材のインク滴吐出側面に、霧状に微粒子化し帯電させた撥液剤を塗布して成膜することが提案されている。しかしながら、このような撥液剤の静電塗布では、微粒子化した撥液剤がランダムにノズル孔内壁面に入り込んでしまうため、ノズル孔内壁面に撥液膜が形成されてしまう。これによってノズル孔内に撥液性のムラを起こし、吐出性能の劣化を十分に解決できていない。
【0005】
特許文献2では、ノズル孔形成部材表面に撥液層を真空蒸着法により形成した後、酸素プラズマ処理により内壁面に入り込んだ撥液層を除去することが提案されている。また特許文献3では、加熱接合時に熱拡散しノズル孔内壁に付着する撥液材料に対し、接合時にインク供給側から流路、ノズル孔を通じて吐出面側に向かう気流を発生させて、内壁への回り込みを防ぐ方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2で提案された方法においては、内壁面に入り込んだ撥液膜を完全に除去することが難しく、極微量に残存した撥液膜によりノズル孔内に撥水性のムラが生じ、吐出不良の原因になり得る。また特許文献3で提案された方法では、接合温度の不安定化、異物の混入等、ヘッド歩留まり低下の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、撥液層の端部位置精度が良く滴吐出特性のばらつきが少なく、かつ液体充填性及び気泡排出性の良い液滴吐出ヘッドを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、液滴を吐出する複数のノズル孔が存在するノズル部領域と、ノズル孔に連通する液室の少なくとも一部が存在する液室部領域と、液室内の液体を加圧してノズル孔から液滴を吐出するための圧力発生手段とを備え、前記ノズル孔の液室側とは反対側の吐出面側に撥液層が形成された液滴吐出ヘッドを製造する方法において、前記ノズル部領域と前記液室部領域とを共通組成の材料を用いてノズル・液室部材として一体に形成するプロセスと、一体形成されたノズル・液室部材の上記吐出面側と反対側に、導電性構造体を密着してこれらを接地して保持するプロセスと、撥液剤を微粒子化した上で帯電させるプロセスと、帯電した微粒子化撥液剤を前記吐出面側に塗布して撥液層を成膜するプロセスとを有することによって解決される。
【0009】
製品的には、液滴を吐出する複数のノズル孔が存在するノズル部領域とノズル孔に連通する液室の少なくとも一部が存在する液室部領域とが共通組成の材料で形成されたノズル・液室部材と、液室内の液体を加圧してノズル孔から液滴を吐出するための圧力発生手段とを備え、前記ノズル孔の液室側とは反対側の吐出面側に撥液層が形成され、撥液層がノズル孔内壁に存在しない液滴吐出ヘッドによって、上記課題を解決できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液滴吐出ヘッドの吐出面に撥液層を形成する際に、吐出面側と反対側に、導電性構造体を密着して接地保持した上で帯電した撥液剤を塗布するので、高いファラデーケージ効果が得られ、ノズル孔内壁に撥液剤が付着することを回避でき、撥液層の端部位置精度が良くなり、滴吐出特性のばらつきが小さくなる。またノズル孔が存在するノズル部領域と液室の少なくとも一部が存在する液室部領域とを一体成形するので、液体充填性と気泡排出性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るインク滴吐出ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【図2】同ヘッドの液室長手方向に沿う部分断面図である。
【図3】同ヘッドのノズル液室部材の製造方法を説明する図である。
【図4】同ヘッドの撥液層の成膜方法を説明する図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置の概略斜視図である。
【図6】同装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明に係るインク滴吐出ヘッドの一例について図1、図2を参照して説明する。図1は同ヘッドの分解斜視図であり、図2は同ヘッドのノズル孔配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿った模式的断面図である。
【0013】
このインク滴吐出ヘッドは、複数のノズル孔3を備えたノズル・液室部材1と、このノズル・液室部材1の下面に接合したダイアフラム部材2とを有し、これらによってノズル孔3に連通する液室4、並びに液室4と連通する連通部24を画定する。また液室4に対応してダイアフラム部材2には圧電素子5とベース部材6を備えるアクチュエータユニット7が接合されている。圧電素子5は、ダイアフラム部材2の液室4に対応する壁面を変形させて、インク滴をノズル孔3から吐出させるものである。圧電素子5の構造、作動は一例として特許文献2や特許文献3に詳細に述べられ、公知であるので、ここでは説明を省略する。圧電素子12の側面に形成される外部電極には、駆動信号を与えるために配線手段としてのFPC26を直接接続し、このFPC26には圧電素子5に選択的に駆動波形を印加するための駆動回路(ドライバIC)27が実装されている。
【0014】
FPC26を接続した圧電素子5やベース部材6で構成されるアクチュエータユニット7の外周側でダイアフラム部材2の下面には、フレーム17が接合され、このフレーム部材17に形成された共通液室20から、ダイアフラム部材2に形成された供給口25を介して、連通部24、したがって液室4に、インクが供給される。
【0015】
上記ノズル・液室部材1はノズル部と液室部とから構成され、その機能、特徴から組織構造、製造条件が異なっているが、各液室4に対応して例えば直径10〜60μmのノズル孔3が形成され、インク滴吐出側面(液室側と反対の面)には撥液層(撥水膜)8が形成されている。従来のノズル板と流路板(液室部)を接合する構成の場合、ノズル板の板厚が薄くハンドリングが悪く作業性に問題があったが、ノズル・液室部材一体構造とすることにより作業性が向上する。
【0016】
ノズル・液室部材1のノズル部は、記録インクの吐出時の流体抵抗を小さくするため、出来るだけ薄くすることが望まれるが、一方で記録インク吐出時の圧力による振動や用紙との接触等、外力による変形を避けるために一定の厚みを有しなければならない。本実施形態では、ノズル・液室部材1の形成にニッケル電析を用いる。ニッケル電析によって析出ニッケルが等方的成長する性質を用いるのである。このような電鋳工法を用いることによって接着剤や微細接合工程を用いない一体型流路形成が可能となる。電析によって、ノズル部は、記録インク入口側(液室部側)からノズル孔(吐出孔)までがラウンド形状になるように形成されている。ラウンド形状の形成により記録インク吐出時の流体抵抗の低減が可能である。また耐圧性、変形については、析出膜に電解質液中の光沢剤が取り込まれ易い低電流密度条件下でノズル部を形成して、結晶粒を緻密にすることで高硬度とすることができる。
【0017】
液室部はその厚さがノズル部の2倍以上(図2の例では4倍程度)と非常に厚くなっている。そのため、電析時間が長くなり高コストとなりがちであるが、ノズル部形成時よりも高電流密度条件下で液室部を形成して、光沢剤の取り込みを抑え結晶粒の大きい構造とすることで析出効率を向上して処理時間の短縮を達成する。ノズル部と液室部の密着性を確保・向上するため、ノズル部と液室部の移行領域(厚さ0.1μm〜5μm程度)において結晶粒径がノズル部と略同等の大きさから液室部の粒径に緩やかに変化しているのが好適である。
【0018】
次にノズル・液室部材1の一連の製造工程について説明する。図3aに示すようなレジスト等の絶縁体9を表面に設けた電析用基板10に対して、電流密度3A/dmの条件でニッケルを基板表面に電析し、絶縁体9にニッケルがせり出しながら成長してノズル層11を形成する(図3b,c)。このノズル層11がノズル・液室部材1のノズル部である。ノズル部の厚みは所望のノズル径と絶縁体9の径により決定され、ノズル部厚みL=(絶縁体径−所望のノズル径)/2+絶縁体厚さHとなる。図3B,cに示すように、ノズル孔(吐出孔、図の下側)から記録インク入口側(液室部側、図の上側)までがラウンド形状になるようにノズル層11が形成される。
【0019】
次いでノズル層11を形成した電析用基板10の液室部相当範囲にドライフィルムレジストをラミネートする。このときラミネーターは真空吸引式が望ましい。そしてドライフィルムレジストに液室のパターンの露光、現像処理を行い、液室用レジストパターン12を形成する(図3d)。液室用レジストをパターンニングした電析用基板に電流密度10A/dmの条件でニッケルを電析し、液室層13を形成する(図3e)。この際、ノズル層(ノズル部)と液室層(液室部)の密着性を確保・向上するため、液室層電析処理初期(ノズル層と液室層の界面から厚さ0.1μm〜1μm程度)においてはノズル層形成時と同様の電流密度とすることで界面近傍に類似結晶粒径層を形成し、しかる後に本来の液室層用電流密度へ次第に上げていくこと(移行領域の形成、トータルで5μm程度)で、ノズル層11から液室層13への組織の変化を緩やかにする。液室部厚さlとしては20μmから100μmが好ましい。またノズル層と液室層の密着性向上のため、液室部の電析前処理としてプラズマ照射や塩酸処理等を施しノズル層表面を活性化してもよい。
【0020】
形成されたノズル・液室部材から、絶縁体9と共に電析用基板10を取り除き(図3f)、更に液室用レジスト12を剥離して最終的なノズル・液室部材1を得る(図3g)。
このようにして得られたノズル・液室部材1に撥液層(撥水膜)を形成する工程について図4を参照して説明する。撥液膜としては液状シリコーン系樹脂を用いて説明するが、これに限定されるものではない。ただシリコーン系樹脂の撥液剤は、付着後に3次元架橋反応が発生するため、耐久性の良い安定した撥液膜を得ることが容易である。更にシリコーン系樹脂膜の厚さを0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上とすることにより、ワイピングに対する耐久性及びインク耐性を向上することができる。また、シリコーン系樹脂膜の粗さRaを0.2μm以下にすることで、ワイピング時のインクの拭き残しを低減することができる。
【0021】
撥液層の形成には静電塗布法を用いる。静電塗布法を実施する装置は、不図示の供給タンク(シリコーン系樹脂の溶液を収容する)に接続したエアスプレー33と、エアスプレー出口近傍に配された電極針34と、電極針に電気接続した電源装置38とを備えて構成されている。まず、ノズル・液室部材1の液室部側に金属等、導電性の構造体32を密着して塗布空間内に配置する。ノズル・液室部材1と構造体32はグラウンドに設置する。次に撥液剤であるシリコーン系樹脂溶液をエアスプレー33により微粒子化し、20μm以下に微粒子化した撥液剤35をアシストエアーにより噴霧する。図4の例では撥液剤を微粒子化する方法としてエアスプレーを用いた霧化法(2流体エアスプレー式霧化法)であるが、超音波霧化でもよいし、1流体のエアレススプレーでもよい。20μm以下の粒径とすることで、吐出面に付着した際の平均膜粗さが±1.0μm以下の平面性の良好な膜を得ることができる。
【0022】
電極針34に、電源装置38によって例えば60kVの高電圧を印加することで、エアスプレー33とノズル・液室部材1の間に高電界を発生させる。電圧は1〜120kVの範囲で変更することができる。微粒子化された撥液剤は、高電界領域内を通過することにより帯電する。ここで撥液剤を帯電する方法として、電極針から電界を発生させる方法を取っているが、例えば電界をかけた構造体の間に撥液剤を通すことで帯電させる方法でもよいし、予め撥液剤に電荷をかけてから微粒子化する方法でもよい。帯電した撥液剤45はクーロン力によりグラウンド状態のノズル・液室部材1に引き付けられ、ノズル・液室部材1のノズル孔側(吐出面側)に衝突する。この際、ノズル・液室部材1と構造体42を密着させることでノズル孔以外を閉空間として形成された空間36は、ファラデーケージ効果により電気力線が及ばない。このため、帯電した撥液剤45は上記空間36に進入しない。この際、既述のように、ノズル孔は直径10〜60μmに形成されている。ノズル孔の直径は60μm以下で短いほど望ましい。ノズル孔を60μm以下にすることにより、空間36は擬似的に閉空間に近づき、ファラデーケージ効果が強く発生するため、ノズル孔内壁部に撥液剤の付着がないノズル・液室部材を形成できる。
【0023】
このようにして、ノズル・液室部材の吐出面側に撥液層8を成膜する。従来の撥液層形成では、例えば特許文献1で説明されているように、ノズル板の吐出面側と反対面(流路基板)側に導電性構造体を密着保持して行わないため、ノズル孔開口部空間にファラデーケージが形成されない。このため微粒子化した撥液剤がノズル孔内壁部に進入してしまい、ノズル孔内壁部及びノズル板流路側へ付着する。しかし、本例のように撥液層を成膜することで、ノズル孔内壁部及びノズル・液室部材の液室部側への撥液剤の付着を防止することができる。
【0024】
撥液膜の成膜後、導電性構造体32を取り除いてノズル・液室部材1を開放する。こうして、吐出不良が発生しない良好な吐出を実現するノズル・液室部材を実現することができる。このように撥液層を備えたノズル・液室部材1の下面にダイアフラム部材2を接合してインク滴吐出ヘッドを作り出していく。
【0025】
最後に、本発明に係るインク滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット方式画像記録装置の一例について図5及び図6を参照して説明する。図5は同画像記録装置の斜視図、図6は同画像記録装置の機構部の概略側面図である。
【0026】
このインクジェット方式画像記録装置は、装置本体81の内部に主走査方向(図6で紙面垂直方向)に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインク滴吐出ヘッド、インク滴吐出ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等を有して構成される印字機構部82を収納している。装置本体81の下部には図6右側から複数の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイ)84を抜き差し自在に装着することができ、また装置本体81の図6左側方では、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、画像記録装置は、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込んで、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、装置本体81の図6右側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
【0027】
印字機構部82では、不図示の装置本体側板に横架されたガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とを用いてキャリッジ93が主走査方向に摺動自在に保持されている。このキャリッジ93では、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を夫々吐出する4つのインク滴吐出ヘッド94を、複数のインク吐出口(ノズル孔)を主走査方向と交差する方向に配列して、且つインク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93には、ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0028】
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインク滴吐出ヘッド94へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインク滴吐出ヘッドへ供給されるインクを僅かな負圧に維持している。インク滴吐出ヘッドとしてここでは各色用のヘッド94夫々を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを夫々有した1個のヘッドユニットであってもよい。
【0029】
ここで、キャリッジ93は用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装され、用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置されている。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93が固定されている。主走査モーター97の正逆回転によりキャリッジ93が往復動する。
【0030】
一方、給紙カセット84にセットされた用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、分離された用紙83を案内するガイド部材103と、ガイド部材を案内された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105、及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とが設けられている。搬送ローラ104は副走査モータ107(図5)によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0031】
そして、インク滴吐出ヘッド94の下方には、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109が設けられている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112が設けられ、更に用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とが配設されている。
【0032】
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じてヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分あるいは数行分(ヘッドのノズル孔による)を記録し、用紙83を所定量搬送後に次の行領域の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達して画像記録が最終的に行われた信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
【0033】
キャリッジ93の移動方向一方端側(図5における手前側)の位置(記録領域を外れた範囲)には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117が配置されている。詳細は示さないが、回復装置117はキャッピング手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。印字待機中に、キャリッジ93は回復装置117側に移動され、キャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、ノズル部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中等に記録と関係しないインクを吐出することにより、全てのノズル孔のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0034】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94のノズル孔を密封し、チューブを通して吸引手段でノズル孔からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出面に付着したインクやゴミ等をクリーニング手段により除去して吐出状態を回復する。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【符号の説明】
【0035】
1 ノズル・液室部材
2 ダイアフラム部材
3 ノズル孔
4 浴室
5 圧電素子
6 ベース部材
7 アクチュエータユニット
8 撥液層
17 フレーム
20 共通液室
25 インク供給口
26 FPC
27 駆動回路(ドライバIC)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2005−138383号公報
【特許文献2】特開2010−76422号公報
【特許文献3】特開2010−214828号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズル孔が存在するノズル部領域と、ノズル孔に連通する液室の少なくとも一部が存在する液室部領域と、液室内の液体を加圧してノズル孔から液滴を吐出するための圧力発生手段とを備え、前記ノズル孔の液室側とは反対側の吐出面側に撥液層が形成された液滴吐出ヘッドを製造する方法において、
前記ノズル部領域と前記液室部領域とを共通組成の材料を用いてノズル・液室部材として一体に形成するプロセスと、
一体形成されたノズル・液室部材の上記吐出面側と反対側に、導電性構造体を密着してこれらを接地して保持するプロセスと、撥液剤を微粒子化した上で帯電させるプロセスと、帯電した微粒子化撥液剤を前記吐出面側に塗布して撥液層を成膜するプロセスと
を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項2】
前記撥液剤としてシリコーン系樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項3】
前記撥液剤を20μm以下の粒子径に微粒子化することを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項4】
前記撥液剤に1〜120kVの電圧を印加することで、前記撥液剤を帯電することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項5】
前記ノズル・液室部材を電析処理によって形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項6】
相対的に低めの電流密度で前記ノズル部領域を形成し、相対的に高めの電流密度で前記液室部領域を形成することを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項7】
前記ノズル部領域を形成するための相対的に低めの電流密度から、前記液室部領域を形成するための相対的に高めの電流密度へ漸次電流密度を変えて電析処理することで移行領域を形成することを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項8】
液滴を吐出する複数のノズル孔が存在するノズル部領域とノズル孔に連通する液室の少なくとも一部が存在する液室部領域とが共通組成の材料で形成されたノズル・液室部材と、液室内の液体を加圧してノズル孔から液滴を吐出するための圧力発生手段とを備え、前記ノズル孔の液室側とは反対側の吐出面側に撥液層が形成され、撥液層がノズル孔内壁に存在しないことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
結晶粒径が相対的に細かく高硬度に形成されたノズル部領域と、結晶粒径が相対的に大きく低硬度に形成された液室部領域との間に結晶粒径が漸次変わる移行領域を備えたことを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
ノズル孔が60μm以下の径であることを特徴とする請求項8又は9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254545(P2012−254545A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128187(P2011−128187)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】