説明

液滴吐出ヘッドの製造方法

【課題】ノズルプレートと流路形成基板とを接合する際、位置決めピンとの接触面積を減少することによりチッピングを防止し、歩留まりの向上および製造コストの低減を図った液滴吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液滴を吐出する複数のノズル孔5を有するノズルプレート1と、ノズル孔5のそれぞれに連通する吐出室13を加圧するアクチュエーターを備える流路形成基板2とを具備する液滴吐出ヘッドの製造方法において、ノズルプレート1及び流路形成基板2にそれぞれ複数箇所に多角形からなる位置決め孔6、7、11、12を形成する工程と、位置決め孔に治具50に設けられた円柱状の位置決めピン8を挿入し、ノズルプレート1と流路形成基板2とを位置決めして接合する工程とを有し、位置決め孔のうち一方6、11は、基準となる正多角形に形成され、他方7、12は、位置決めピン8との位置ずれを吸収するように長孔状の多角形に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの製造方法に関する。特に、本発明は、ノズルプレートと流路形成基板とを接合する際における位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズルプレートと、このノズルプレートに接合されノズルプレートとの間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバー等のインク流路が形成された流路形成基板とを備え、駆動部により吐出室に圧力を加えることでインク滴を選択されたノズル孔より吐出するように構成されている。駆動手段としては、静電気力を利用する静電駆動方式や、圧電素子(ピエゾ素子)による圧電駆動方式、発熱素子を利用する駆動方式等がある。
【0003】
近年、インクジェットヘッドに対して、印字、画質等の高品位化の要求が一段と強まり、そのため高密度化並びに吐出性能の向上が強く要求されている。このような背景からインクジェットヘッドのノズル孔もますます微小化・多ノズル化する傾向にある。
このようなインクジェットヘッドを製造する場合、それぞれ別工程で作製されたノズルプレートと流路形成基板とを治具を用いて各ノズル孔にそれぞれの流路溝が高精度に連通するように位置決めし接合することが必要となる。
【0004】
従来のインクジェットヘッドでは、ノズルプレートと流路形成基板とを接合する際、これらノズルプレート及び流路形成基板の端部近傍に設けられた2箇所の位置決め孔を基準として、両基板の位置決めを行っている。この場合、位置決め孔は位置決めピンの円柱状の形状に合わせて円形になっているため、位置決めピンとの接触面積が大きくなり、そのため少しでも位置ずれ(位置決め孔の間隔寸法誤差)があるとチッピングが起こり、高精度の位置決めをすることが困難になっている。
【0005】
一方、位置決め孔の形状に関して、例えば四角形としたものがある(例えば、特許文献1参照)。このように位置決め孔を四角形とした場合は、円形のものに比べて位置決めピンとの接触面積は減少するが、正四角形であるため、位置決めピンとの位置ずれによってチッピングが生じることに変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−114371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、近年のノズル孔の微小化・多ノズル化に伴いノズルプレートは薄肉化しているため、位置決めピンとの位置ずれによってチッピングが起こりやすくなり、歩留まりが悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑み、ノズルプレートと流路形成基板とを接合する際、位置決めピンとの接触面積を減少することによりチッピングを防止し、歩留まりの向上および製造コストの低減を図った液滴吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室を加圧するアクチュエーターを備える流路形成基板とを具備する液滴吐出ヘッドの製造方法において、
ノズルプレート及び流路形成基板にそれぞれ複数箇所に多角形からなる位置決め孔を形成する工程と、
位置決め孔に治具に設けられた円柱状の位置決めピンを挿入し、ノズルプレートと流路形成基板とを位置決めして接合する工程とを有し、
位置決め孔のうち一方は、基準となる正多角形に形成され、他方は、位置決めピンとの位置ずれを吸収するように長孔状の多角形に形成されているものである。
【0010】
このように構成することにより、ノズルプレートと流路形成基板とを接合する際、ノズルプレートおよび流路形成基板に配設された位置決め孔はすべて多角形に形成されているので、円柱状の位置決めピンとの接触面積が減少する。さらに、一方の位置決め孔は正多角形に、他方の位置決め孔は長孔状の多角形に形成されているので、正多角形の位置決め孔を基準として位置決め精度を確保できるとともに、位置決めピンとの位置ずれを長孔状の多角形に形成されている他方の位置決め孔で吸収することができる。従って、ノズルプレートや流路形成基板のチッピングを防止することができ、歩留まりが向上する結果、液滴吐出ヘッドの製造コストの低減が可能となる。
【0011】
また、ノズルプレートの位置決め孔は、異方性ドライエッチングによりノズル孔を加工すると同時に形成するものである。これにより、容易かつ高精度に位置決め孔をノズルプレートに形成することができる。
【0012】
また、流路形成基板の位置決め孔についても、異方性ウェットエッチングにより吐出室となる凹部を加工すると同時に形成するもので、容易かつ高精度に位置決め孔を流路形成基板に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】組立状態におけるインクジェットヘッドの断面図である。
【図3】インクジェットヘッドのノズルプレートと流路形成基板との接合時における位置決め状況を示す断面図である。
【図4】ノズルプレートの上面図である。
【図5】実施の形態1に係るインクジェットヘッドのノズルプレートの製造工程を示す概略断面図である。
【図6】実施の形態1に係るインクジェットヘッドの製造工程を示す概略断面図である。
【図7】本発明のインクジェットヘッドを適用したインクジェットプリンタの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、液滴吐出ヘッドの一例として、ノズルプレートの表面に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するフェイス吐出型の静電駆動方式のインクジェットヘッドを挙げるが、これに限られるものでないことはいうまでもない。
【0015】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図で、一部を断面であらわしてある。図2は組立状態におけるインクジェットヘッドの断面図、図3はインクジェットヘッドのノズルプレートと流路形成基板との接合時における位置決め状況を示す断面図、図4はノズルプレートの上面図である。
本実施の形態のインクジェットヘッド10は、複数のノズル孔5が所定のピッチで形成されたノズルプレート1と、各ノズル孔5に連通する流路溝として吐出室13、リザーバー19等が区画形成された流路形成基板2とを貼り合わせて構成される。
流路形成基板2は、ここではシリコン製のキャビティー基板3と、吐出室13を加圧する駆動手段として静電アクチュエーター20が区画形成されたガラス製の電極基板4とを陽極接合することによって構成されている。
【0016】
ノズルプレート1は、シリコン基板からなり、図4に示すように、基板端部近傍の2箇所に多角形からなる位置決め孔6、7が形成されている。ここでは、位置決め孔6、7は八角形で形成されているが、四角形以上の多角形であればよい。このうち一方の位置決め孔6は位置決めの基準となる基準孔であり、正八角形に形成されている。他方の位置決め孔7は、位置決めピン8との位置ずれを吸収するための孔で長孔状の多角形(八角形)に形成されている。なお、位置決め孔6、7はノズル孔5と同時に異方性ドライエッチングで形成される。
【0017】
基準となる位置決め孔6の多角形(八角形)の外形寸法D1、D2は、位置決め精度の観点からD1=D2=600〜800μmとしている。他方の位置決め孔7の多角形(八角形)の外形寸法D3、D4は、D3=600〜800μm、D4=800〜2000μmとしている。長孔状の位置決め孔7は、多角形の2辺が位置決め間隔方向に若干伸びるよう長めに形成されている。
【0018】
流路形成基板2には、位置決め孔6、7とそれぞれ対応する位置に、それぞれ同じ形状及び同じ外形寸法の正八角形の位置決め孔11および長孔状の八角形の位置決め孔12が形成されている。位置決め孔11、12の加工方法については後述する。
【0019】
断面円形からなる2本の位置決めピン8は、図3に示すように、治具50のベース板51に立設されており、上記の位置決め孔6、7及び11、12にそれぞれ対応する位置に設けられている。そして、流路形成基板2とノズルプレート1とを接着接合する際には、流路形成基板2の接合面(図3の上面)に接着剤が転写された当該流路形成基板2を、位置決め孔11、12にそれぞれ位置決めピン8を挿通してベース板51上に載置する。ついで、ノズルプレート1の位置決め孔6、7にそれぞれ位置決めピン8を挿通して、ノズルプレート1を流路形成基板2と位置決めし、押圧板52でノズルプレート1を押圧・加熱することにより、流路形成基板2とノズルプレート1とを接着接合する。これによって、ノズルプレート1の各ノズル孔5と流路形成基板2の各吐出室13とが連通するよう高精度に位置決めされる。また、特に薄肉に形成されるノズルプレート1は、位置決め孔6、7が多角形で形成されているため、断面円形の位置決めピン8との接触面積が減少し、かつ、基準となる一方の位置決め孔6は正多角形に、他方の位置決め孔7は長孔状の多角形に形成されているため、位置決めピン8との位置ずれを吸収することができ、その結果、ノズルプレート1のチッピングを防止することができる。従って、歩留まりが向上し、製造コストの低減が可能となる。
【0020】
さらに、各基板の構成について説明する。
電極基板4は、ガラス基板にエッチング加工により複数の凹部15を区画形成し、各凹部15内にITO(Indium Tin Oxide)からなる個別電極16を形成することによって構成されている。そして、各個別電極16が、シリコン製のキャビティー基板3に形成された各吐出室13の底壁で構成される振動板14と所定のギャップ17を隔てて対向するように位置合わせして、キャビティー基板3と電極基板4とが陽極接合される。このように、所定のギャップ17を隔てて対向配置された振動板14と個別電極16とにより静電アクチュエーター20が構成される。そして、電極取り出し部23において、各個別電極16とキャビティー基板3上の共通電極22には、ドライバーICなどの駆動制御回路30を搭載したFPC(図示せず)が配線接続される。なお、静電アクチュエーター20の動作時における絶縁破壊や短絡等を防止するために、キャビティー基板3の電極基板4との接合面にはシリコンの熱酸化膜からなる絶縁膜21が形成されている。また、ギャップ17はエポキシ樹脂等の封止材25により外部連通部を気密に封止されている。
【0021】
シリコン基板からなるキャビティー基板3には、水酸化カリウム水溶液を用いて異方性ウェットエッチングすることにより複数の吐出室13となる凹部13aが区画形成される。各吐出室13となる凹部13aの底壁は前述のように振動板14を構成する。また、振動板14は、シリコン基板の表面に高濃度のボロン(B)を拡散させたボロン拡散層により形成されており、ボロン拡散層の厚さを振動板14の厚さと同じにするものである。これは、アルカリによる異方性ウェットエッチングにより、吐出室13を形成する際に、ボロン拡散層が露出した時点でエッチングレートが極端に小さくなるため、いわゆるエッチングストップ技術により振動板14を所望の厚さに精度よく形成することができるからである。
【0022】
また、キャビティー基板30には、各吐出室13に細溝状のオリフィス18を介して共通に連通するリザーバー19となる凹部19aが異方性ウェットエッチング加工により形成されている。リザーバー19の凹部19a底部には、電極基板4を貫通するインク導入孔24が連通して形成されている。インク導入孔24には図示しないインクカートリッジが接続され、インクカートリッジ内のインクがインク導入孔24、リザーバー19、オリフィス18、吐出室13を通じて各ノズル孔5の先端まで満たされている。
【0023】
本実施の形態のインクジェットヘッド10は上記のように構成されており、任意のノズル孔5よりインク滴を吐出させるためには、そのノズル孔5に対応する静電アクチュエーター20を以下のように駆動する。
駆動制御回路30により当該個別電極16と共通電極である振動板14間にパルス電圧を印加する。パルス電圧の印加によって発生する静電気力により振動板14が個別電極16側に引き寄せられて当接し、吐出室13内に負圧を発生させ、リザーバー19内のインクを吸引し、インクの振動(メニスカス振動)を発生させる。このインクの振動が略最大となった時点で、電圧を解除すると、振動板14は個別電極16から離脱して、その時の振動板14の復元力によりインクを当該ノズル孔5から押出し、インク滴を吐出する。
【0024】
次に、図5および図6を参照して、インクジェットヘッド10の製造方法について説明する。ここでは主にノズルプレート1の位置決め孔6、7および流路形成基板2の位置決め孔11、12の加工方法を中心に説明する。なお、図5および図6は図4のA−Aにおける拡大断面図である。
【0025】
(ノズルプレート1の製造方法)
(A)まず、厚み280μmのシリコン基板100を用意し、このシリコン基板100を熱酸化装置(図示せず)にセットして、酸化温度1075℃、酸化時間4時間、酸素と水蒸気の混合雰囲気中の条件で熱酸化処理し、シリコン基板100の表面に膜厚1μmのSiO2 膜101を均一に成膜する(図5(A))。
【0026】
(B)次に、シリコン基板100の一方の面(インク吐出側の面)のSiO2 膜101上にレジスト(図示せず)をコーティングし、フォトリソグラフィーによりノズル孔5となる部分5a及び多角形の位置決め孔6、7となる部分6a、7aをパターニングし、緩衝フッ酸水溶液(BHF)により上記の各部分5a、6a、7aのSiO2 膜101をエッチング除去して開口する(図5(B))。そして、レジストを硫酸洗浄などにより剥離する。
【0027】
(C)次に、Deep−RIE(Reactive Ion Etching)ドライエッチング装置(図示せず)により、SiO2 膜101の開口部を、深さ60μmまで垂直に異方性ドライエッチングし、ノズル穴部5bおよび位置決め穴部6b、7bを形成する(図5(C))。この場合のエッチングガスとしては、C48、SF6 を使用し、これらのエッチングガスを交互に使用すればよい。ここで、C48は形成される孔の側面のエッチングが進行しないように孔側面を保護するために使用し、SF6 は孔の垂直方向のエッチングを促進させるために使用する。
【0028】
(D)次に、BHFにて、シリコン基板100上のSiO2 膜101をエッチング除去する(図5(D))。
(E)そして、シリコン基板100のノズル穴部5bおよび位置決め穴部6b、7bが形成された面に、両面接着テープを用いて支持基板(図示せず)を貼り付け、反対側の面を研削加工し、シリコン基板100の厚みを薄く加工することによりノズル孔5および位置決め孔6、7を開口する(図5(E))。その後、UV光を照射することにより、両面接着テープおよび支持基板をシリコン基板100から剥離する。
【0029】
以上により、ウェハ状のシリコン基板100より各々に分割された図4に示すような複数のノズル孔5及び多角形の位置決め孔6、7を有するノズルプレート1が作製される。
【0030】
(流路形成基板2の製造方法)
(A)まず、別工程にて電極基板4が作製される(図6(A))。すなわち、ホウ珪酸ガラス等からなる板厚約1mmのガラス基板400に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸によってエッチングすることにより所望の深さの凹部15を形成する。そして、例えば、スパッター法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を形成し、このITO膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして個別電極16となる部分以外をエッチング除去して、凹部15の内部に個別電極16を形成する。その後、多角形の位置決め孔11、12とインク導入孔24とをブラスト処理で加工する。
以上により、複数の個別電極16及び多角形の位置決め孔11、12を有する電極基板4が作製される。
【0031】
(B)次に、片面に振動板14となるボロン拡散層(図示せず)および熱酸化膜からなる絶縁膜21を形成したシリコン基板300を電極基板4上に陽極接合する。そして、このシリコン基板300を研削加工により点線で示すような厚さまで薄くなるように加工する(図6(B))。
【0032】
(C)次に、薄肉に加工された接合済みシリコン基板300の表面にフォトリソグラフィーによってレジストパターニングを行い、KOH水溶液による異方性ウェットエッチングによってインク流路溝と多角形の位置決め孔11、12を形成する(図6(C))。これによって、多角形の位置決め孔11、12、並びに、底壁を振動板14とする吐出室13となる凹部13a、オリフィス18となる細溝18a、リザーバー19となる凹部19aおよび電極取り出し部23となる凹部(図示せず)が形成される。その際、ボロン拡散層の表面でエッチングストップがかかるので、振動板14の厚さを高精度に形成することができる。その後、電極取り出し部23となる凹部(図示せず)をCHF3ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)ドライエッチングで開口する。さらに、キャビティー基板3に共通電極22を形成するとともに、開口された電極取り出し部23におけるギャップ17の外気連通部を封止材25で気密に封止する。
以上により、複数のインク流路溝及び多角形の位置決め孔11、12を有する流路形成基板2が作製される。
【0033】
(D)そして、図6(D)に示すように、上面の接合面に接着剤が転写された流路形成基板2を、治具50のベース板51上に立設された位置決めピン8を各位置決め孔11、12に挿通して流路形成基板2をセットする。そしてさらに、各位置決めピン8を、図5により作製されたノズルプレート1の位置決め孔6、7に挿通し位置決めし、前述したように押圧板52(図3参照)でノズルプレート1を押圧・加熱することによりノズルプレート1と流路形成基板2とを接着接合する。
【0034】
従って、本実施の形態のインクジェットヘッド10の製造方法によれば、ノズルプレート1と流路形成基板2とを接合する際、ノズルプレート1の位置決め孔6、7および流路形成基板2の位置決め孔11、12はすべて多角形に形成されているので、円柱状の位置決めピン8との接触面積が減少する。さらに、一方の位置決め孔6および11は正多角形に、他方の位置決め孔7および12は長孔状の多角形に形成されているので、正多角形の位置決め孔6、11を基準として位置決め精度を確保できるとともに、位置決めピン8との位置ずれを長孔状の多角形に形成されている他方の位置決め孔7、12で吸収することができる。従って、ノズルプレート1や流路形成基板2のチッピングを防止することができ、歩留まりが向上する結果、液滴吐出ヘッドの製造コストの低減が可能となる。
【0035】
また、ノズルプレート1の位置決め孔6、7は、異方性ドライエッチングによりノズル孔5を加工すると同時に形成されているので、容易かつ高精度に位置決め孔6、7を形成することができる。
流路形成基板2の位置決め孔11、12についても、異方性ウェットエッチングにより吐出室13となる凹部13aを加工すると同時に形成されてるので、容易かつ高精度に位置決め孔11、12を形成することができる。
【0036】
実施の形態1では、フェイス吐出型の静電駆動方式のインクジェットヘッド10について述べたが、駆動方式は静電方式に限らず、ピエゾ方式、発熱方式でも本発明を適用することができる。また、本発明は、基板の端部から液滴を吐出するエッジ吐出型でも同様に適用できる。また、本発明により製造された液滴吐出ヘッドは、例えば図7に示すようなインクジェットプリンター500に搭載されるほか、ノズル孔より吐出される液状材料を変更することにより、液晶ディスプレイのカラーフィルターの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ノズルプレート、2 流路形成基板、3 キャビティー基板、4 電極基板、5 ノズル孔、6、7 位置決め孔、8 位置決めピン、10 インクジェットヘッド、11、12 位置決め孔、13 吐出室、14 振動板、15 凹部、16 個別電極、17 ギャップ、18 オリフィス、19 リザーバー、20 静電アクチュエーター、21 絶縁膜、22 共通電極、23 電極取り出し部、24 インク導入孔、25 封止材、30 駆動制御回路、50 治具、51 ベース板、52 押圧板、100、300 シリコン基板、400 ガラス基板、500 インクジェットプリンター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズルプレートと、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室を加圧するアクチュエーターを備える流路形成基板とを具備する液滴吐出ヘッドの製造方法において、
前記ノズルプレート及び前記流路形成基板にそれぞれ複数箇所に多角形からなる位置決め孔を形成する工程と、
前記位置決め孔に治具に設けられた円柱状の位置決めピンを挿入し、前記ノズルプレートと前記流路形成基板とを位置決めして接合する工程とを有し、
前記位置決め孔のうち一方は、基準となる正多角形に形成され、他方は、前記位置決めピンとの位置ずれを吸収するように長孔状の多角形に形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記ノズルプレートの前記位置決め孔は、異方性ドライエッチングにより前記ノズル孔を加工すると同時に形成することを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記流路形成基板の前記位置決め孔は、異方性ウェットエッチングにより前記吐出室となる凹部を加工すると同時に形成することを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−158822(P2010−158822A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2239(P2009−2239)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】