説明

液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置

【課題】 液滴を吐出するために発生させる圧力の発生効率を向上することができる液滴吐出ヘッドを得る。
【解決手段】 円筒状の圧電素子32を、圧電縦効果(d33)による径方向、圧電横効果(d31)による軸方向及び周方向の3方向に変形させて、圧電素子32の内部に設けた圧力室46のインクを加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置に係り、詳細には、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に印字を行うインクジェット記録ヘッド等に用いられる液滴吐出ヘッド、及び、インクジェット記録装置等に用いられる液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出に圧電素子を用いたインクジェット記録ヘッド、特に圧電素子の圧電縦効果又は圧電横効果を利用したアクチュエータを用いたヘッド構成においては、アクチュエータの変形効率を高めるために、圧力室の一部に剛性の低い部分を設ける必要がある。しかし、圧力室に低剛性部を設けることは、圧力の発生効率を低下させることになるため問題となる。
【0003】
一方、インクジェット記録ヘッドによる印字で高解像度化を図るには、ノズルピッチを狭めてノズルを高密度に、例えばマトリックス状に配置する必要があり、これに伴い、各ノズルに対応させて設ける圧電素子については小型で且つ高密度に配置できる構造が求められる。
【0004】
そこで、積層型の圧電素子を用いてその内部に圧力室を形成し、この圧電素子を積層方向に挟んでノズルプレートと供給路プレートを対向配置することにより、圧力室に低剛性部を設けなくとも圧力の発生効率が改善可能で、且つ、従来のカイザー型の圧電素子に比べてノズル配置を高密度化できるヘッド構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−81055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、積層型の圧電素子を積層方向に繰り抜いて圧力室を形成するため、圧力室内に正負両極の電極が露出することになる。そのため、この電極部分を完全にシールする必要があり、さらに、電極に合わせて貫通孔や溝等の加工が必要となるため、製造上の課題がある。また、各ノズルに対応させて設ける圧電素子の間に電気的不活性領域を設ける必要があり、圧電素子をより高密度に実装する際の障害となる。また、圧電素子が積層方向へ圧縮/膨張変形する際に、供給路プレート側の端面の変形状態がフラットでないため、供給路プレートと圧電素子の接合部に応力が生じて故障を招く恐れがある。
【0006】
また、圧力の発生効率を向上するためには、上記構成のように、圧力室を一方向(圧電素子の積層方向)に変形させてインクに圧力(吐出エネルギー)を加えるよりも、圧力室を複数方向に変形させ、圧力室内の多くの面でインクに圧力を加える方が望ましい。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して、液滴を吐出するために発生させる圧力の発生効率を向上することができる液滴吐出ヘッドを提供することを課題とする。また、その液滴吐出ヘッドを備えることで低消費電力化を図ることができる液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、液体貯留室から供給路を介して液体が供給される圧力室を、圧電素子の圧電縦効果及び圧電横効果の変形によって複数方向へ変形させることにより、この圧力室内の液体に圧力を加えて圧力室と連通されたノズルから液滴を吐出することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明では、液体貯留室から供給路を介して圧力室に供給された液体を、ノズルから液滴として吐出させるため、圧電素子の変形によって圧力室を変形させ、圧力室内の液体に圧力を加える。ここで、圧電素子は圧電縦効果及び圧電横効果の変形によって圧力室を複数方向へ変形させるため、例えば圧電縦効果のみ、又は、圧電横効果のみの変形によって圧力室を変形させる場合に比べ、圧力の発生効率が向上する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧力室の内壁面の少なくとも一部が前記圧電素子の変形部により形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明では、圧力室の内壁面の少なくとも一部を形成する圧電素子の変形部が、圧力室内の液体を直接的に加圧するため、液体に加えられる圧力の損失が小さくされ、圧電素子の変形によって発生された圧力が液体に効率よく伝達される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子の前記ノズル配置側とは反対側に、圧電素子に接合されて前記圧力室を形成するとともに圧電素子の変形に伴って移動する可動内壁面が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明では、圧電素子の変形に伴って可動内壁面が移動し、圧力室内の液体を液滴吐出方向(ノズル側)へ加圧/減圧する。これにより、圧力室の液滴吐出方向への変形が可能となり、圧力の発生効率を向上することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記可動内壁面は、前記供給路が形成された供給路プレートにより形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明では、上記の可動内壁面を、供給路が形成された供給路プレートによって形成することにより、この可動内壁面を形成するために専用のプレート等を設ける場合に比べて、液滴吐出ヘッドを小型に構成できる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記供給路プレートは、複数の前記圧電素子に対応する複数の前記可動内壁面がそれぞれ繋がれてその繋ぎ部が供給路プレート本体よりも低剛性とされており、且つ、この繋ぎ部は前記液体貯留室の構成部位であることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明では、供給路プレートは、複数の圧電素子に対応する複数の可動内壁面がそれぞれ繋がれて一体的に構成されており、例えば圧電素子の高速駆動に伴い圧電素子及び可動内壁面が振動する際に、可動内壁面同士を繋いで給路プレート本体よりも低剛性とされた繋ぎ部によってその振動が減衰される。これにより、隣接する圧電素子間での駆動動作の影響を低減することができる。
【0018】
また、この繋ぎ部は液体貯留室の内壁の一部を構成する構成部位であるため、液滴を吐出するために圧力室で発生された圧力は、低剛性とされたこの繋ぎ部によって吸収される。これにより、液滴吐出時に特定の圧力室で発生した圧力が供給路から液体貯留室へを伝わり、隣接する圧力室での圧力発生に及ぼす悪影響を改善することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子が筒状に形成され、その筒状の圧電素子の内部に前記圧力室が設けられていることを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載の発明では、筒状とされた圧電素子は、圧電縦効果によって例えば軸方向(液滴吐出方向)に変形(圧縮/膨張)し、且つ、圧電横効果によって例えば内周面を内方/外方へ変形(縮径/拡径)させる。これにより、圧電素子の内部に設けられた圧力室内の液体が、圧電素子の内周面全面によって加圧されるようになり、圧力の発生効率を向上することができる。また、圧電素子を筒状とすることにより、圧電素子(圧力室)及びノズルを高密度に配置することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子の分極方向が圧電素子の内外方向とされていることを特徴としている。
【0022】
請求項7に記載の発明では、筒状の圧電素子において、圧電素子の分極方向を圧電素子の内外方向とすることにより、圧電素子の圧電縦効果及び圧電横効果の変形が可能となる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子に駆動信号を印加するための正負電極の一方が圧電素子の内周面に、他方が圧電素子の外周面に設けられていることを特徴としている。
【0024】
請求項8に記載の発明では、筒状の圧電素子において、圧電素子に駆動信号を印加するための正負電極の一方を圧電素子の内周面に、他方を圧電素子の外周面に設けることにより、圧電素子の分極方向を圧電素子の内外方向とすることができ、圧電素子の圧電縦効果及び圧電横効果の変形が可能となる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記液体貯留室、前記供給路、前記圧力室、前記圧電素子、及び前記ノズルのうちの少なくとも2つ以上が異なる層に形成されていることを特徴としている。
【0026】
請求項9に記載の発明では、液滴吐出ヘッドに設ける各部のうちの少なくとも2つ以上を異なる層に配置した場合、例えば各部を複数の構成部材(基板等)に振り分けて形成し、それらの複数の構成部材を積層することで液滴吐出ヘッドを製造することがでる。これにより、液滴吐出ヘッドの製造性が向上する。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子を備えるとともにその圧電素子の内部に前記圧力室が設けられる圧電素子基板と、前記ノズルが形成されたノズルプレートと、前記圧電素子基板と前記ノズルプレートの間に設けられ、前記圧力室と前記ノズルを連通させるための連通路、及び、前記圧電素子に駆動信号を供給するための配線パターンが形成された配線基板と、を有し、前記配線パターンが、前記圧電素子基板と前記配線基板の間、及び、前記配線基板と前記ノズルプレートの間の少なくとも一方に形成されていることを特徴としている。
【0028】
請求項10に記載の発明では、圧電素子基板とノズルプレートの間に、圧力室とノズルを連通させるための連通路、及び、圧電素子に駆動信号を供給するための配線パターンが形成された配線基板を設けることにより、圧力室とノズルの連通を妨げることなく、圧電素子基板とノズルプレートの間に上記の配線パターンを形成し、圧電素子に駆動信号を供給することができる。また、このような配線基板を用いることにより、例えばノズル及び圧電素子が高密度に配置される場合でも、駆動信号の供給路(配線パターン)を容易に確保及び形成することができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項10記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズルプレートと前記配線基板とが一体化されていることを特徴としている。
【0030】
請求項11に記載の発明では、ノズルプレートと配線基板とを一体で形成することにより、ノズルプレートと配線基板の接合工程を省くことができて液滴吐出ヘッドの製造性が向上する。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は請求項11記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記配線基板における前記ノズルの近傍に、前記駆動信号を送信する駆動素子が形成されていることを特徴としている。
【0032】
請求項12に記載の発明では、駆動素子が配線基板の製造プロセスで配線パターン等とともに形成可能であるため、例えば、駆動用のパッケージIC等を配線基板上に実装する工程が不要となり、製造性が向上する。また、圧電素子の駆動に伴って発熱する駆動素子が、ノズルから吐出されるインクの流れで冷却されるため、温度上昇による駆動素子の誤作動や液滴吐出記録ヘッドの加熱を抑えることができる。
【0033】
請求項13に記載の発明は、請求項10〜請求項12の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記配線パターンが前記圧電素子基板と前記配線基板の間に形成されてそれらに覆われるとともに、その配線パターンの一部が前記圧力室内に露出されていることを特徴としている。
【0034】
請求項13に記載の発明では、例えば、配線基板に実装された圧電素子駆動用のIC(発熱部品)等が発熱した際に、その熱は配線パターンを伝導され、圧力室内の液体によって放熱されるため、発熱部品の冷却効果が高められる。
【0035】
請求項14に記載の発明は、請求項13記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子の前記内周面に設けられた前記正負電極の一方と、前記圧力室内に露出された前記配線パターンの一部とを電気的に接続させたコンタクト部が圧力室内に配置されていることを特徴としている。
【0036】
請求項14に記載の発明では、コンタクト部によって、圧電素子の内周面に設けた正負電極の一方と配線パターンとの電気的な接続を図りつつ、請求項13に記載の発明のような、発熱部品に対する高い冷却効果を得ることができる。
【0037】
請求項15に記載の発明は、請求項14記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記正負電極の一方、及び、前記コンタクト部が低透水性絶縁膜で被覆されていることを特徴としている。
【0038】
請求項15に記載の発明では、電極及びコンタクト部が低透水性膜によって液体から保護されるため、電極及びコンタクト部の腐食による断線等を防止することができる。
【0039】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜請求項15の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴としている。
【0040】
請求項16に記載の発明では、液滴を吐出するために発生させる圧力の発生効率を向上することができる液滴吐出ヘッドを備えることで、液滴吐出装置の低消費電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の液滴吐出ヘッドは上記構成としたので、液滴を吐出するため発生させる圧力の発生効率を向上することができる。また、本発明の液滴吐出装置はその液滴吐出ヘッドを備えることで低消費電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置について説明する。
【0043】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いてインクジェット記録装置100の概要を説明する。なお、記録媒体は記録紙Pとして説明する。また図1では、インクジェット記録装置100における記録紙Pの搬送方向を副走査方向として矢印Sで表し、その搬送方向と直交する方向を主走査方向として矢印Mで表す。
【0044】
図1に示されるように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクジェット記録ユニット130(インクジェット記録ヘッド10)を搭載するキャリッジ112を備えている。キャリッジ112は、記録紙Pの搬送方向上流側に一対のブラケット114が突設されており(図では片側のブラケット114のみを示している)、この一対のブラケット114にそれぞれ形成された円形孔には、主走査方向に架設されたシャフト120が挿通されている。
【0045】
キャリッジ112に対し主走査方向の両端側には、主走査機構116を構成する駆動プーリー(図示省略)と従動プーリー(図示省略)が配設されている。これらの駆動プーリーと従動プーリーとに巻回されて、主走査方向に走行するタイミングベルト122の一部がキャリッジ112に固定されている。これにより、キャリッジ112は、駆動プーリーの回転駆動によってタイミングベルト122が主走査方向に走行すると、一対のブラケット114がシャフト120にガイドされて主走査方向に往復移動する。
【0046】
インクジェット記録装置100の前側下部には、画像印刷前の記録紙Pを束状にして収納しておく給紙トレイ126が設けられている。この給紙トレイ126の上方には、上記各色のインクジェット記録ユニット130によって画像が印刷された記録紙Pが排出される排紙トレイ128が設けられている。また、キャリッジ112及びシャフト120の下方には、給紙トレイ126から1枚ずつ給紙された記録紙Pを所定のピッチで副走査方向へ搬送する搬送ローラー及び排出ローラーからなる副走査機構118が設けられている。
【0047】
その他、このインクジェット記録装置100には、印刷時において各種設定を行うコントロールパネル124や、メンテナンスステーション(図示省略)等が設けられている。メンテナンスステーションは、キャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリーニング動作等のメンテナンス動作を行うようになっている。
【0048】
また、各色のインクジェット記録ユニット130は、図2及び図3に示されるインクジェット記録ヘッド10と、それにインクを供給するインクタンク(図示省略)とが一体に構成されたものであり、インクジェット記録ヘッド10の下面(インク吐出面)に形成された複数のノズル22(図3参照)が、記録紙Pと対向するようにキャリッジ112上に搭載されている。これにより、インクジェット記録ヘッド10が主走査機構116によって主走査方向に移動しながら、記録紙Pに対してノズル22から選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録される。
【0049】
そして、主走査方向への1回の移動が終了すると、記録紙Pは、副走査機構118によって副走査方向に所定ピッチ搬送され、再びインクジェット記録ヘッド10(インクジェット記録ユニット130)が主走査方向(前述とは反対方向)に移動しながら、次のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録されるようになっており、このような動作を複数回繰り返すことによって、記録紙Pに画像データに基づく全体画像がフルカラーで記録される。
【0050】
インクジェット記録装置100は以上の構成とされており、次に、このインクジェット記録装置100に搭載されたインクジェット記録ヘッド10について詳細に説明する。
【0051】
図2〜図4に示される本実施形態のインクジェット記録ヘッド10は、図の下側からノズルプレート12、プリント配線基板14、圧電素子基板(アクチュエータプレート)16、供給路プレート18、及びインクプールプレート20の順に積層され、各部材が互いに接合されて構成されている。
【0052】
図4に示されるように、ノズルプレート12には円形貫通孔からなる複数のノズル22が形成されており、これらのノズル22は所定の間隔でマトリックス状に配置されている。
【0053】
プリント配線基板14には、ノズルプレート12の各ノズル22と対応する位置に、ノズル径よりも少し大径の円形貫通孔からなる連通路24がそれぞれ形成されている(図3(B)及び図6(B)参照)。プリント配線基板14の上面には、各連通路24と対応する位置に、円環状のコンタクト電極26がそれぞれ形成されており、各コンタクト電極26は、基板上面に形成された配線パターン28を介して、基板上面の端部近傍に実装された駆動IC30と電気的に接続されている。また、この駆動IC30は、プリント配線基板14上に形成されたコンタクト部31を通して外部(ヘッド制御部)から制御信号(印字命令)が入力され、その制御信号に基づいて、以下に説明する圧電素子基板16の各圧電素子32に電気信号(駆動信号)を送信し、各圧電素子32をそれぞれ所定のタイミングで駆動させる。
【0054】
図5に示されるように、圧電素子基板16は、上記の駆動IC30によって個別に駆動される複数の圧電素子32を備えている。これらの圧電素子32は圧電素子基板16の厚み方向に沿って貫通された円筒状とされ、内径が連通路24よりも少し大径とされている(図3(B)及び図6(B)参照)。また、各圧電素子32は、上記の各ノズル22及び各連通路24に対応してマトリックス状に配置されるとともに、下端部が薄肉のベース基板部33に繋がれて一体化されている。
【0055】
図6(A)、(B)に示されるように、圧電素子32の外周面には、正極側の電極34が外周面全面を被覆するよう形成されている。各圧電素子32の電極34は、ベース基板部33の上面に形成された共通電極36を介して互いに電気的に接続されており、共通電極36は、図示しない配線パターンを介して駆動IC30と電気的に接続されている。また、圧電素子32の内周面には、負極側の電極38が内周面全面を被覆するよう形成されており、各圧電素子32の電極38は、下端部をプリント配線基板14上の各コンタクト電極26に接触させて電気的に接続されている。
【0056】
このように、この円筒状の圧電素子32では、正電極(電極38)を外周面に、負電極(電極34)を内周面に設けていることにより、分極方向が圧電素子32の内外方向となるよう、詳細には、圧電素子32の外側から内側へ向かう方向となるよう構成されている。なお、この正負電極については、圧電素子32の内外で逆に配置することも可能である。また、この圧電素子32は、分極方向の側面(外側面)が壁部(ベース基板部33)に繋がれた構造であることにより、所謂Wall型の圧電素子として構成さている。これにより、駆動IC30からの電気信号が電極34、38間に配置された圧電素子32に印加されると、圧電素子32は後述する所定の変形動作を行う。
【0057】
供給路プレート18には、圧電素子基板16の各圧電素子32と対応する位置に、圧電素子32の内径よりも少し小径の円形貫通孔からなる供給路40がそれぞれ形成されている(図3(B)及び図6(B)参照)。供給路プレート18の下面における各圧電素子32との対応位置には、供給路40を中心として圧電素子32の外径と略同径の円形状に突出された突出部(厚肉部)42がそれぞれ設けられ、これらの突出部42は各圧電素子32に強固に接合されている。また、各突出部42はそれぞれ繋がれてその繋ぎ部(突出部42の周囲)は供給路プレート本体及び突出部42よりも薄肉とされており、この繋ぎ部によって低剛性のダンパ部44が形成されている。
【0058】
供給路プレート18を圧電素子基板16に積層すると、図6(A)、(B)に示されるように、円筒状の圧電素子32の内部に圧力室46が形成される。この圧力室46は、上壁面46Aが突出部42の下面(可動内壁面)によって形成され、周面状とされた内側壁面46Bが、電極38が被覆形成された圧電素子32の内周面(変形部)によって形成されている。
【0059】
図3(A)及び図6(A)に示されるように、インクプールプレート20は、下面側に空洞部が形成されており、上面には、空洞部に連通されたインクインレット(インク供給路)48が設けられている。このインクプールプレート20を供給路プレート18に積層すると、上記の空洞部によって供給路プレート18との間にインクプール50が形成される。また、供給路プレート18のダンパ部44は、インクプール50の内壁の一部を構成する構成部位となっており、このインクプール50には、外部(インクタンク)からインクインレット48を通しインクが供給されて貯留される。
【0060】
本実施形態のインクジェット記録ヘッド10は以上の構成とされており、このインクジェット記録ヘッド10では、上述したように、ノズル22からインクプール50までの各部(ノズル22、連通路24、圧力室46(圧電素子32)、供給路40、及びインクプール50)が、各構成部材によって層状に配置されている。
【0061】
次に、上述した本実施形態のインクジェット記録ヘッド10による印字(インク吐出)動作及び作用について説明する。
【0062】
インクジェット記録ヘッド10による印字では、まず、インクプール50に貯留されたインクが供給路40を通して圧力室46に供給され、さらに、圧力室46から連通路24を通してノズル22まで充填される。
【0063】
ここで、圧電素子32は、電極34、38間に電気信号が加えられないと、図7(A)に示されるように、円筒状のまま形状が保たれる。また、印字命令によって電極34、38間に電気信号が加えられると、圧電素子32は充電されて、図7(B)に示されるように、軸方向断面で見ると樽状に膨張するよう変形する。
【0064】
本実施形態の圧電素子32では、図7(C)に示されるように、分極方向に電気信号を加え、それと平行方向に歪みを生じさせる圧電縦効果(d33)により、矢印d33で示した径方向に膨張変形し、さらに、分極方向に電気信号を加え、それと垂直方向に歪みを生じさせる圧電横効果(d31)により、矢印d31(a)で示した軸方向に圧縮変形し、矢印d31(b)で示した周方向に収縮変形する。このように、この円筒状の圧電素子32は、圧電縦効果による径方向、圧電横効果による軸方向及び周方向の3方向に変形する。
【0065】
ここで、圧電素子32の圧電横効果による軸方向への圧縮変形により、圧電素子32の上端面に接合された供給路プレート18の突出部42、すなわち圧力室46の上壁面46Aがノズル22側へ移動し(図7(B)の矢印A)、圧力室46内のインクを加圧し圧縮する。さらに、圧電素子32の圧電縦効果による径方向への膨張変形と、圧電横効果による周方向への収縮変形とが合わされて、圧電素子32の内周面(変形部)、すなわち圧力室46の内側壁面46Bが内方へ膨出し(図7(B)の矢印B)、圧力室46内のインクを加圧し圧縮する。そして、これらの2つの変形動作による圧力室46の2方向への変形によって加圧された圧力室46内のインクは、連通路24を介しノズル22からインク滴として吐出される。
【0066】
続いて、電極34、38間への電気信号の印加を停止し、圧電素子32に蓄積された電荷を放電すると、圧電素子32は、図7(B)の状態から図7(A)に示される元の円筒形状に戻る。そしてこれに伴い、ノズル22内に形成されたメニスカスの復帰力によって、吐出された分のインクがインクプール50から供給路40を通して圧力室46内に補充される。
【0067】
このインク吐出動作を繰り返すことにより、インクジェット記録ヘッド10のノズル22からインク滴が連続的に吐出されて、用紙等に印字される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド10では、インクプール50から供給路40を介して圧力室46に供給されたインクを、ノズル22からインク滴として吐出させるため、圧電素子32の変形によって圧力室46を変形させ、圧力室46内のインクに圧力を加える構成であるが、この圧電素子32は圧電縦効果及び圧電横効果の変形によって圧力室46を2方向へ変形させるため、例えば圧電縦効果のみ、又は、圧電横効果のみの変形によって圧力室を変形させる場合に比べ、圧力の発生効率が向上する。
【0069】
また、本実施形態では、圧力室46の内側壁面46Bを形成する圧電素子32の変形部である内周面が、圧力室46内のインクを直接的に加圧するため、インクに加えられる圧力の損失が小さくされ、圧電素子32の変形によって発生された圧力がインクに効率よく伝達される。
【0070】
また、本実施形態では、圧電素子32の変形に伴って圧力室46の上壁面46Aが移動し、圧力室46内のインクを吐出方向(ノズル22側)へ加圧/減圧する構成であり、これにより、圧力室46のインク吐出方向への変形が可能となり、圧力の発生効率を向上することができている。また、この可動構造とした圧力室46の上壁面46A(可動内壁面)を供給路プレート18(突出部42)によって形成していることにより、このような可動内壁面を形成するために専用のプレート等を設ける場合に比べて、インクジェット記録ヘッド10を小型に構成できる。
【0071】
また、本実施形態では、圧電素子32を円筒状に形成してその内部に圧力室46を設けていることにより、圧力室46内のインクが、圧電素子32の内周面全面(圧力室46の内側壁面46B)によって加圧されるようになり、圧力の発生効率を向上することができている。さらに、このような円筒状の圧電素子32であれば、圧電素子32(圧力室46)及びノズル22を高密度に配置することができるため、印字画像の高解像度化を実現できる。
【0072】
また、本実施形態では、上述したインク吐出動作で圧電素子32が高速駆動されるが、この高速駆動に伴い圧電素子32及び圧力室46の上壁面46A(突出部42)が振動する際に、突出部42同士を繋いで給路プレート本体よりも低剛性とされたダンパ部44によってその振動が減衰される。これにより、隣接する圧電素子32間での駆動動作の影響(クロストーク)を低減することができる。
【0073】
また、このダンパ部44はインクプール50の内壁の一部を構成する構成部位であるため、インク滴を吐出するために圧力室46で発生された圧力はダンパ部44によって吸収される。これにより、インク滴吐出時に特定の圧力室46で発生した圧力が供給路40からインクプール50へを伝わり、隣接する圧力室46での圧力発生に及ぼす悪影響を改善することができる。したがって、インク吐出性能が安定する。
【0074】
また、本実施形態では、インクジェット記録ヘッド10に設ける各部(ノズル22、連通路24、圧力室46(圧電素子32)、供給路40、及びインクプール50)を異なる層に配置していることにより、それらの各部を複数の構成部材に振り分けて形成し、各構成部材を積層することでインクジェット記録ヘッド10を製造することができる。これにより、インクジェット記録ヘッド10の製造性が向上する。
【0075】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100では、上記のインクジェット記録ヘッド10を備えることで低消費電力化が図られる。
【0076】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、上述したインクジェット記録ヘッド10に使用する圧電素子基板の変形例である。
【0077】
図8(A)に示されるように、本実施形態の圧電素子基板60では、複数設けられた圧電素子62が四角筒状に形成されている。この圧電素子62も、第1の実施形態と同様に、ノズルプレート12の各ノズル22に対応してマトリックス状に配置されるとともに、下端部が薄肉のベース基板部63に繋がれて一体化されている。また、図8(B)に示されるように、圧電素子62の外周面には、正極側の電極34が外周面全面を被覆するよう形成されており、内周面には、負極側の電極38が内周面全面を被覆するよう形成されて、分極方向が圧電素子62の内外方向(外側から内側へ向かう方向)となるよう構成されている。
【0078】
そしてこの圧電素子62も、電極34、38間に電気信号が加えられると、図8(B)に示されるように、圧電縦効果(d33)により、矢印d33で示した内外方向に膨張変形し、さらに、圧電横効果(d31)により、矢印d31(a)で示した軸方向に圧縮変形し、矢印d31(b)で示した辺方向に収縮変形して、軸方向断面で見ると、図7(B)に示した矢印A、B方向に変形する。
【0079】
したがって、このような四角筒状の圧電素子62の場合でも、圧電縦効果及び圧電横効果の各変形が合わせられ、圧力の発生効率を向上することができる。
【0080】
また、このような四角筒状の場合、エッチング加工等を用いて一枚の基板に複数の圧電素子を配列形成する際に、円筒状等に比べて個々の圧電素子の形成が容易であり、且つ、より狭い間隔で配置することができる。これにより、第1及び第2の実施形態のように、複数の圧電素子をマトリックス状に配置した場合に、円筒状よりも四角筒状の圧電素子の方が無駄なスペースを生じさせることなくより高密度に配置することができ、更なるノズルの高密度化が可能となる。
【0081】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態で説明したインクジェット記録ヘッド10において、プリント配線基板の構成を変更した変形例である。
【0082】
図9に示されるように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド70は、第1の実施形態と同様に、ノズルプレート12、プリント配線基板72、圧電素子基板16、供給路プレート18、及びインクプールプレート20が積層されて構成されている。
【0083】
ここで、本実施形態のプリント配線基板72の上面には、図10に示されるように、圧電素子32を駆動するための電気信号を送信する複数の駆動素子(ICチップ)74が形成されている。これらの駆動素子74は、プリント配線基板72の製造プロセスにおいて、配線パターン等とともに形成されたものであり、ノズルプレート12の各ノズル22に対応させた形成した各連通路24の近傍に、すなわち各ノズル22の近傍にそれぞれ配置されるとともに、基板上に形成された配線パターンを介して各コンタクト電極26と電気的に接続されている。また、これらの駆動素子74も、プリント配線基板72の上面端部に形成されたコンタクト部76を通して外部から制御信号が入力されると、その制御信号に基づいて、圧電素子基板16の各圧電素子32に電気信号を出力し、各圧電素子32を駆動させる。
【0084】
本実施形態のインクジェット記録ヘッド70は以上の構成とされており、このインクジェット記録ヘッド70では、第1の実施形態で説明したような駆動IC30をプリント配線基板上に実装する工程が不要となるため、製造性が向上する。また、圧電素子32の駆動に伴って発熱する駆動素子74が、ノズル22から吐出されるインクの流れで冷却されるため、温度上昇による駆動素子74の誤作動やインクジェット記録ヘッド70の加熱(熱ストレス)を抑えることができる。さらに、プリント配線基板72上における圧電素子基板16に覆われていない部分(露出部)では、配線パターン(電気配線)を低密度で配線することができるため、第1の実施形態の構成に比べ、電気的な信頼性を向上させることができる。
【0085】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1の実施形態で説明したインクジェット記録ヘッド10において、配線パターン等の構成を変更した変形例である。
【0086】
図11に示されるように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド80は、プリント配線基板82に上面(圧電素子基板16とプリント配線基板82の間)に形成された配線パターン(コンタクト電極)84が圧電素子基板16に覆われるとともに、その一部が圧電素子32の下端部から圧力室46(連通路24)側へ露出されている。この露出部が、圧電素子32の内周面に形成された電極38と電気的に接続されたコンタクト部86とされている。また、ここでの電極38は、コンタクト部86から更に下方へ延長され、連通路24の内周も被覆するよう形成されている。さらに、コンタクト部86を含む電極38の表面には、低透水性膜88が形成されており、この低透水性膜88によって、電極38及びコンタクト部86は被覆されている。
【0087】
これにより、本実施形態のインクジェット記録ヘッド80では、圧電素子32の内周面に電極38を設ける場合のその電極38と配線パターン84とを電気的に接続することができる。また、駆動IC30が発熱した際に、その熱は配線パターン84を伝導され、圧力室46から連通路24へ流れるインクによって放熱されるため、駆動IC30の冷却効果が高まる。また、電極38及びコンタクト部86は低透水性膜88によってインクから保護されるため、インクの電気分解や、電極38及びコンタクト部86の腐食による断線等を防止することができ、信頼性を向上することができる。
【0088】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、上述した第4の実施形態に係るインクジェット記録ヘッド80において、更に配線パターンの構成を変更した変形例である。
【0089】
図12に示されるように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド90は、プリント配線基板92の上面には配線パターンが形成されておらず、配線パターン94はプリント配線基板92の下面に、すなわちノズルプレート12とプリント配線基板92の間に形成されている。また、上述した、圧電素子32の内周面から連通路24の内周面まで延長形成された電極38の下端部が、配線パターン94とのコンタクト部96とされている。また、本実施形態も、コンタクト部96を含む電極38の表面に低透水性膜88が形成され、低透水性膜88によって電極38及びコンタクト部96が被覆されている。
【0090】
このように、配線パターン94をノズルプレート12とプリント配線基板92の間に形成した場合には、第1〜第4の実施形態のように圧電素子32及びコンタクト電極26等が多数配置されるプリント配線基板92の上面側(圧電素子基板16とプリント配線基板92の間)に配線パターンを形成するよりも、パターンの配線可能領域、及び、配線自由度が向上する。これにより、多くの配線パターンを容易に形成できるようになり、ノズルの更なる高密度化が可能となる。また、本実施形態の場合も、電極38及びコンタクト部86は低透水性膜88によってインクから保護されるため、信頼性が向上する。
【0091】
以上、本発明を上述した第1〜第5の実施形態により詳細に説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の形態が実施可能である。
【0092】
例えば、上述した実施形態の形態では、ノズルプレート12とプリント配線基板14、72、82、92とを別体としているが、これらを一体化することも可能である。その場合には、ノズルプレートとプリント配線基板の接合工程を省くことができてインクジェット記録ヘッドの製造性が向上する。
【0093】
また、本発明は、上述したインクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置に限らず、半導体等のパターン形成のために液滴を吐出するパターン形成装置等に使用される他の液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの外観を示す斜視図である。
【図3】(A)は図2のインクジェット記録ヘッドの外観とその内部構成を部分破断にて示す斜視図、(B)は(A)の3B部を拡大した斜視図である。
【図4】図2のインクジェット記録ヘッドの分解状態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る圧電素子基板の外観を示す斜視図である。
【図6】図2のインクジェット記録ヘッドの断面を示し、(A)は図3(A)の6A−6A線断面図、(B)は(A)の6B部を拡大した断面図である。
【図7】(A)は本発明の第1の実施形態に係る圧電素子及び圧力室の未変形状態を示す断面図、(B)は変形状態を示す断面図、(C)は圧電素子の変形方向を示す拡大斜視図である。
【図8】(A)は本発明の第2の実施形態に係る圧電素子基板の外観を示す斜視図、(B)は圧電素子の変形方向を示す拡大斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの外観を示す斜視図である。
【図10】図9のインクジェット記録ヘッドの分解状態を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子付近を示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子付近を示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
12 ノズルプレート
14 プリント配線基板
16 圧電素子基板
18 供給路プレート
20 インクプールプレート
22 ノズル
24 連通路
28 配線パターン
32 圧電素子
34 電極
38 電極
40 供給路
42 突出部
44 ダンパ部
46 圧力室
46A 上壁面
46B 内側壁面
50 インクプール
60 圧電素子基板
62 圧電素子
70 インクジェット記録ヘッド
72 プリント配線基板
74 駆動素子
76 コンタクト部
80 インクジェット記録ヘッド
82 プリント配線基板
84 配線パターン
86 コンタクト部
88 低透水性膜
90 インクジェット記録ヘッド
92 プリント配線基板
94 配線パターン
96 コンタクト部
100 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯留室から供給路を介して液体が供給される圧力室を、圧電素子の圧電縦効果及び圧電横効果の変形によって複数方向へ変形させることにより、この圧力室内の液体に圧力を加えて圧力室と連通されたノズルから液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記圧力室の内壁面の少なくとも一部が前記圧電素子の変形部により形成されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記圧電素子の前記ノズル配置側とは反対側に、圧電素子に接合されて前記圧力室を形成するとともに圧電素子の変形に伴って移動する可動内壁面が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記可動内壁面は、前記供給路が形成された供給路プレートにより形成されていることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記供給路プレートは、複数の前記圧電素子に対応する複数の前記可動内壁面がそれぞれ繋がれてその繋ぎ部が供給路プレート本体よりも低剛性とされており、且つ、この繋ぎ部は前記液体貯留室の構成部位であることを特徴とする請求項4記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記圧電素子が筒状に形成され、その筒状の圧電素子の内部に前記圧力室が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記圧電素子の分極方向が圧電素子の内外方向とされていることを特徴とする請求項6記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記圧電素子に駆動信号を印加するための正負電極の一方が圧電素子の内周面に、他方が圧電素子の外周面に設けられていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記液体貯留室、前記供給路、前記圧力室、前記圧電素子、及び前記ノズルのうちの少なくとも2つ以上が異なる層に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
前記圧電素子を備えるとともにその圧電素子の内部に前記圧力室が設けられる圧電素子基板と、
前記ノズルが形成されたノズルプレートと、
前記圧電素子基板と前記ノズルプレートの間に設けられ、前記圧力室と前記ノズルを連通させるための連通路、及び、前記圧電素子に駆動信号を供給するための配線パターンが形成された配線基板と、
を有し、
前記配線パターンが、前記圧電素子基板と前記配線基板の間、及び、前記配線基板と前記ノズルプレートの間の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記ノズルプレートと前記配線基板とが一体化されていることを特徴とする請求項10記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
前記配線基板における前記ノズルの近傍に、前記駆動信号を送信する駆動素子が形成されていることを特徴とする請求項10又は請求項11記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項13】
前記配線パターンが前記圧電素子基板と前記配線基板の間に形成されてそれらに覆われるとともに、その配線パターンの一部が前記圧力室内に露出されていることを特徴とする請求項10〜請求項12の何れか1項記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項14】
前記圧電素子の前記内周面に設けられた前記正負電極の一方と、前記圧力室内に露出された前記配線パターンの一部とを電気的に接続させたコンタクト部が圧力室内に配置されていることを特徴とする請求項13記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項15】
前記正負電極の一方、及び、前記コンタクト部が低透水性絶縁膜で被覆されていることを特徴とする請求項14記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項1〜請求項15の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−263997(P2006−263997A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82742(P2005−82742)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】