説明

液滴吐出装置及びプログラム

【課題】記録ヘッドの記録動作中に発生した吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う場合、その補完処理された画像データに基づく記録動作が行われるまでの間における液滴及び記録媒体の無用な消費を低減できる液滴吐出装置等を提供する。
【解決手段】記録媒体に液滴を記録用の画像データに基づいて吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドと、記録ヘッドの記録動作に連動して吐出不良ノズルの発生の有無を検出する検出手段と、検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う補完処理手段と、吐出不良ノズルの発生を検出したときに、記録ヘッドに送る記録用の画像データを空値に切り替えて実行中の記録動作を中止するとともに、処理動作が完了した後に当該補完処理された画像データを送って当該記録ヘッドによる記録動作を新たな記録媒体に対して開始する制御を行う制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液滴吐出装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙等の記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置としては、インク詰まり等のヘッド不良に起因した印刷不良箇所を検出する検出手段と、その検出手段により検出された印刷不良箇所をヘッドにおけるノズル等の正常な記録要素を使用して補正するように印刷(代行印刷、上書き印刷など)する補正印刷手段とを有するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この他にも、インクジェット記録装置としては、印字ヘッドにより記録媒体に印字された不吐出検出用のドットを読み取って吐出不良を検出する不吐出検出手段と、その検出後の記録媒体を印字ヘッドの印字位置まで戻す逆送手段とを備え、その検出後、逆送手段により記録媒体を印字ヘッドの印字位置まで戻してその印字ヘッドにより最終出力画像を得るための印字を行うものが知られている(特許文献2)。
【0004】
また、インクジェット記録装置としては、記録媒体への記録に先立って記録ヘッドにより搬送手段(搬送ベルト)上に不吐出検出チャートを記録し、それを読取部で読み取って解析することで不吐出ノズルを検出し、その不吐出ノズルの検出情報に基づいて記録データの不吐出補完処理を行い、その不吐出補完処理がされると記録ヘッドに信号を送って記録媒体への記録を行うものが知られている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−187881号公報
【特許文献2】特開2005−313625号公報
【特許文献3】特開2006−187979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、記録媒体にインク等の液滴を吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドの記録動作中に液滴の吐出状態が不良となる吐出不良ノズルが発生したことを検出したときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う場合、その補完処理された画像データに基づく記録ヘッドの記録動作が行われるまでの間における液滴及び記録媒体の無用な消費を低減することができる液滴吐出装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(A1)の液滴吐出装置は、記録媒体に液滴を記録用の画像データに基づいて吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの記録動作に連動して吐出不良ノズルの発生の有無を検出する検出手段と、
前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う補完処理手段と、
前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、前記記録ヘッドに送る前記記録用の画像データを空値に切り替えて実行中の記録動作を中止するとともに、前記補完処理手段の処理動作が完了した後に当該補完処理された画像データを送って当該記録ヘッドによる記録動作を新たな記録媒体に対して開始する制御を行う制御手段と
を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明(A2)の液滴吐出装置は、上記発明A1の吐出装置において、前記記録ヘッドの記録動作が行われる位置に記録媒体を供給する供給装置を備え、前記制御手段は、前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、前記供給装置の新たな供給動作を中止する制御を行うものである。
【0009】
この発明(A3)の液滴吐出装置は、上記発明A2の吐出装置において、前記制御手段が、前記補完処理手段の処理動作が完了した後に、前記給紙手段の給紙動作を再開する制御を行うものである。
【0010】
また、この発明(A4)の液滴吐出装置は、上記発明A1の吐出装置において、前記記録ヘッドの記録動作が行われる位置に記録媒体を供給する供給装置を備え、前記制御手段は、前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、前記供給装置の要求されている一連の供給動作のうちの残りの供給動作を続行する制御を行うものである。
【0011】
この発明(A5)の液滴吐出装置は、上記発明A4の吐出装置において、前記制御手段が、前記記録ヘッドの補完処理された画像データの記録動作を開始するまで、当該記録ヘッドにおける吐出不良ノズルの発生を抑制するための特別の液滴吐出動作を当該記録ヘッドにて実行する制御を行うものである。
【0012】
この発明(A6)の液滴吐出装置は、上記発明A5の吐出装置において、前記制御手段が、前記特別の液滴吐出動作として吐出不良検出パターンを記録する動作を実行する制御を行うものである。
【0013】
この発明(A7)の液滴吐出装置は、上記発明A6の吐出装置において、前記検出手段が、前記記録ヘッドの記録動作により記録媒体に吐出不良検出パターンを記録し、その記録結果から吐出不良ノズルの発生を検出するものであり、
当該検出手段が、前記特別の液滴吐出動作として記録する吐出不良検出パターンを使用して吐出不良ノズルの発生を検出するものである。
【0014】
さらに、この発明(A8)の液滴吐出装置は、上記発明A1〜A7のいずれかの吐出装置において、前記制御手段を動作させる使用形態とそれを動作させない使用形態とを選択する選択手段を有するものである。
【0015】
この発明(A9)の液滴吐出装置は、上記発明A9の吐出装置において、前記選択手段は、前記制御手段を動作させる使用形態を選択した場合、前記特別の液滴吐出動作を行わずに前記給紙手段の給紙動作を続行する使用形態と、前記特別の液滴吐出動作を行いつつ前記給紙手段の給紙動作を続行する使用形態とを選択する選択パターンを有するものである。
【0016】
また、この発明(B1)のプログラムは、記録媒体に液滴を記録用の画像データに応じて吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドにより記録を行い、その記録ヘッドの記録動作に連動して吐出不良ノズルの発生の有無を検出する機能を備えた液滴吐出装置に使用される記録用入力データを処理する第一機能と、
前記記録ヘッドに吐出不良ノズルが発生した検出結果の情報を受けたときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う第二機能と、
前記記録ヘッドに吐出不良ノズルが発生した検出結果の情報を受けたときに、当該記録ヘッドに送る前記記録用の画像データを空値に切り替えて実行中の記録動作を中止するとともに、その補完処理の動作が完了した後に当該補完処理された画像データを送って当該記録ヘッドによる記録動作を新たな記録媒体に対して開始する制御処理を行う第三機能とを有し、
前記第一機能、第二機能及び第三機能がコンピュータの処理により実現されるものである。
【0017】
この発明(B2)のプログラムは、上記発明B1のプログラムにおいて、前記第三機能を実行させる使用形態とそれを実行させない使用形態とを選択する選択動作を発生させる制御処理を行う第四機能を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
上記発明A1の液滴吐出装置によれば、記録ヘッドの記録動作中に吐出不良ノズルが発生したことを検出したときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う場合、その補完処理された画像データの記録ヘッドの記録動作が行われるまでの間における液滴及び記録媒体の無用な消費を低減することができる。
【0019】
上記発明A2では、この発明の構成を有しない場合に比べて、記録ヘッドの記録動作が停止された後に記録媒体が無用に供給されることがない。
【0020】
上記発明A3では、この発明の構成を有しない場合に比べて、補完処理された画像データの記録ヘッドの記録動作が給紙手段から供給される新たな記録媒体に対して行われ、液滴及び記録媒体の無用な消費が低減されつつ補完処理が有効に機能する。
【0021】
上記発明A4では、この発明の構成を有しない場合に比べて、記録動作がなされず給紙動作で供給される未使用の記録媒体を再利用することができ、記録媒体の無用の消費が低減される。
【0022】
上記発明A5では、この発明の構成を有しない場合に比べて、補完処理された画像データの記録ヘッドの記録動作が行われるまでの間におけるノズル(液滴)の乾燥が防止されて当該記録ヘッドにおける吐出不良ノズルの新たな発生が抑制される。
【0023】
上記発明A6では、この発明の構成を有しない場合に比べて、特別のインク吐出動作を容易に行うことができる。
【0024】
上記発明A7では、この発明の構成を有しない場合に比べて、補完処理された画像データの記録ヘッドの記録動作が行われるまでの間における当該記録ヘッドにおける吐出不良ノズルの新たな発生を検出することができる。
【0025】
上記発明A8では、この発明の構成を有しない場合に比べて、吐出不良ノズルが発生した後の記録ヘッドによる記録結果を許容できる使用者(装置利用者)であれば、実行中の記録動作が補完処理動作の完了するまで中止されることがなくなり記録時間の遅延を回避することができる。
【0026】
上記発明A9では、この発明の構成を有しない場合に比べて、吐出不良ノズルの発生を検出した後における液滴及び記録媒体の無用な消費を低減することと、その後に発生する吐出不良ノズルに起因した記録結果の品質低下を回避することのいずれかの効果を選択して得ることが可能になる。
【0027】
また、上記発明B1のプログラムによれば、コンピュータの処理により第一機能、第二機構及び第三機能が実現され、そのうち特に第三機能が実現されると、液滴吐出装置において記録ヘッドの補完処理された画像データの記録動作が行われるまでの間の液滴及び記録媒体の無用な消費を低減させることが可能になる。
【0028】
上記発明B2では、この発明の構成を有しない場合に比べて、インク吐出記録装置の使用者に、第三機能を実行させず、吐出不良ノズルの発生が検出されたときにも実行中の記録動作を中止しないで続行させるという選択の機会を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るインク吐出記録装置の概要を示すものである。
【0030】
このインク吐出記録装置1は、図1に示すように、インクを吐出して記録を行う記録部2と、記録部2に供給する記録媒体としての用紙10を収容するとともに送り出す給紙収容部3と、給紙収容部3から送り出された用紙10を記録部2に搬送する給紙搬送部4と、記録後の用紙10を排紙収容部11又は記録部2に搬送する記録後搬送部5と、記録部2において用紙10に記録された結果(記録内容)を読み取る読取部6と、これら各部の動作を含む記録装置全体の動作について制御する制御部7とを主に有するものである。図中の一点鎖線は、上記各搬送部4,5等を搬送されるときの用紙10の主な経路を示している。
【0031】
給紙収容部3は、所要のサイズ及び種類からなる用紙10を複数枚積み重ねた状態で収容する用紙収容体31と、用紙収容体31に収容されている用紙10を1枚ずつ送り出す送出装置32とで主に構成されている。送出装置32は、図示しない回転駆動源からの動力を受けて回転するロール等の用紙送り手段を組み合わせて構成される。この給紙収容部3は、記録部2の記録動作が開始されるタイミングに合わせて送出装置32が作動し、これにより用紙収容体31にある用紙10を1枚ずつ給紙搬送部4に送り出す。
【0032】
給紙搬送部4は、記録部2(の記録ヘッドのノズル面)に対向して配置され、供給される用紙10をその平面性を保持しながら搬送する記録搬送部44と、給紙収容部3から送り出された用紙10を記録搬送部44まで搬送して受け渡す給紙路部41とで構成されている。
【0033】
給紙路部41は、給紙部3の送出装置32とベルト搬送部44の間に配置される複数の用紙搬送ロール対42a〜42cや、図示しない搬送路形成ガイド材等で構成されている。各ロール対42は、図示しない回転駆動源からの動力を受けて回転する。ロール対42のうちベルト搬送部44の直前に配置されるロール対42cは、用紙10を記録部2(の記録位置)に最終的に供給すべきタイミングを調整する給紙タイミング調整ロール対として構成されている。給紙タイミング調整ロール対42cは、搬送される用紙10の先端部を回転停止しているロール対に一時的に突き当てた状態にした後、そのロール対を所要のタイミングで回転始動するようになっている。また、この調整ロール対42cは、用紙10の先端部を回転停止しているロール対に突き当てる際に、その用紙10の搬送方向Aに対して斜めに傾いて搬送されている状態を矯正する。
【0034】
記録搬送部44は、用紙10を搬送するベルト搬送装置45と、そのベルト搬送装置45の搬送ベルトに用紙10を静電作用で吸着させる吸着部材49とを備えている。
【0035】
ベルト搬送装置45は、供給される最大送り幅の用紙10を保持できるベルト幅からなる無端状の搬送ベルト46を、少なくとも記録部2と対向する位置で平面状に保持させるように配置された複数のロール47a〜47cに掛け回して取り付けたものである。搬送ベルト46は、ロール47aとロール47cの間で平面状に保持されており、また、駆動ロールとして構成されるロール47aが図示しない回転駆動源からの動力を受けて回転することにより矢印で示す方向(図1,2中の反時計回り方向)に回転する。ロール47aとロール47cの間には、図2に示すように、搬送ベルト46を平面状に保持するため、そのベルト内周面側に上部が平面である支持部材48が配置される。吸着部材49は、搬送ベルト46の従動ロール47cで支持される位置で用紙10を静電作用で吸着させるロール状の部材を使用している。また、吸着部材49には、搬送ベルト42の外周面を用紙10の静電吸着ができる極性に帯電させる帯電用電圧が印加されている。
【0036】
記録後搬送部5は、記録部2における記録動作が終了した記録後の用紙10を排紙収容部11に搬送する排出路部51と、記録後の用紙10をその表裏面を反転させた状態で記録部2に再送する反転再送路部52とを備えている。
【0037】
排出路部51については、記録部2(ベルト搬送部44の用紙剥離部)と排紙収容部11の間に配置される複数の用紙搬送ロール53a〜53c、用紙誘導材53d、搬送ロール対54a〜54dや、図示しない搬送路形成ガイド材等で構成されている。反転再送路部52については、排出路部51の下流部(搬送ロール対54a〜54dの配置範囲)を兼用するものであり、その兼用部分以外の部分については、排出路部51の中途位置(ロール53cとロール対54aの間)にある分岐部と給紙路部41の中途位置(ロール対42aとロール対42bの間)にある合流部との間に配置される、複数の用紙搬送ロール55a〜55eや図示しない搬送路形成ガイド材等で構成されている。上記各搬送ロール対53、55も、図示しない回転駆動源からの動力を受けて回転する。
【0038】
記録部2は、使用するインクの色の数に合わせて設けられた複数の記録ヘッド21と、この記録ヘッド21のメンテナンス作業を行うメンテナンスユニット28を備えている。
【0039】
この実施形態における記録ヘッド21は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(B)という4色のインクが使用され、その4色の各インクに対応させた4つの記録ヘッド21Y,21M,21C,21Kとして構成されている。
【0040】
各記録ヘッド21(Y,M,C,K)はいずれも、図2や図3に示すように、用紙10と対向する側にインクを吐出する複数のノズル(吐出口)22が後述するような列状に配置された帯状のノズル面21aを有する構造からなり、そのノズル面21aに配置されるノズル22が最大送り幅Wの用紙10の幅方向における両端部と対応する位置まで形成された、いわゆるライン型の記録ヘッドである。帯状のノズル面21aは、例えば、用紙10の搬送方向Aと直交する方向に沿う状態で配置される。
【0041】
また、各記録ヘッド21(Y,M,C,K)は、用紙10の搬送方向Aの上流側から21Y,21M,21C,21Kという順番で所定の間隔をあけて配置されている。さらに、各記録ヘッド21は、図示しない保持部材によって所定の位置に保持されているとともに、図示しない移動装置により記録動作位置とメンテナンス位置(例えば記録動作位置の上方側の位置)との間で移動するようになっている。
【0042】
各記録ヘッド21における複数のノズル22は、記録ヘッド21の記録対象領域の長手方向(用紙の搬送方向Aと直交する方向)に沿って直線状に並んだ状態の列や、千鳥状、マトリクス状等に並んだ状態の列となるように配置されている。各記録ヘッド21におけるノズル22からのインク吐出の駆動方式は、例えば、ピエゾ方式、サーマルジェット方式等の公知の駆動方式が採用されている。また、各記録ヘッド21には、記録装置1内に装着されるインクタンク25K,25C,25M,25Yから図示しないインク供給路を介して対応する色のインク(液体)が個別に供給される。
【0043】
メンテナンスユニット28は、記録ヘッド21のノズル面21aを覆って外気との接触を遮断するキャップ構造物、ノズル面21aを拭いて清掃する拭取り部材、空吐出されるインクを捕獲するインク受け部材、ノズル面21aの吸引を行ってノズル先端部などに存在するインクなどを強制的に取り除く吸引機構等を有するものである。
【0044】
この実施形態におけるメンテナンスユニット28は、記録ヘッド21Y,21Mのメンテナンス作業を行う第一ユニット28Aと記録ヘッド21C,21Kのメンテナンス作業を行う第二ユニット28Bとの2組に分割されている。この分割された各ユニット28A,28Bは、平常時(メンテナンス非作業時)には、記録ヘッド21Y,21Kの用紙搬送方向Aの上流側又は下流側に退避した待機位置にそれぞれ配置されている。また、各ユニット28A,28Bは、メンテナンス作業時になると、メンテナンス位置に移動した各記録ヘッド21のノズル面21aと対向する作業位置まで図示しない移動装置によって移動させられる。
【0045】
読取部6は、記録部2において用紙10に記録される所要の記録画像を読み取る読取センサで構成されている。
【0046】
この実施形態では、読取部6の読取センサとして、図3に示すように、読取素子61が用紙10の搬送方向Aと直交する方向に沿って列状に並べて配置されたライン型のセンサを使用している。読取部6の読取センサは、記録部2の用紙搬送方向Aの下流側の位置であって搬送ベルト装置44の搬送ベルト46のうちロール47a,47c間で平面状態に保持される部分に対向した状態で配置されている。また、読取取部6は、読取素子(受光素子)61に加えて、読み取り対象を照明する光を発生する発光素子を有している。読み取り対象となる所要の記録画像は、主に、用紙10の搬送方向Aの先端部10a又は後端部10dとなる余白部に記録される後述の吐出不良ノズル検出用パターン65である。
【0047】
制御部7は、図4に示すように、インク吐出記録装置1の本体側に設置される本体制御部70で構成されている。この本体制御部70には、公知の通信方式が採用された通信制御部71を介してホストコンピュータ100が接続されている。
【0048】
本体制御部70には、バス等の伝送路72を介して、記録装置1のシステム全体における各動作を制御するシステム制御部73と、ホストコンピュータ100等から入力される記録用データ(記録画像データ)を所要の画像処理を行う記録画像処理部74と、記録部2の記録ヘッド21にインクの吐出状態が不良である吐出不良ノズルの発生の有無やその不良ノズルの発生位置などを解析して検出する不良ノズル解析検出部75とが接続されている。インクの吐出状態が不良である(換言すれば吐出不良ノズルである場合)とは、ノズルからインクが吐出しない不吐出の場合のほか、ノズルからのインクの吐出方向が正規の方向からずれる場合(吐出方向の異常)、ノズルからのインクの吐出量が不足する場合(吐出量の不足)などである。
【0049】
システム制御部73、記録画像処理部74及び不良ノズル解析検出部75はいずれも、所要の情報処理が行われる演算処理部76と、所要の制御プログラムや各種データ等が記憶される記録部77とを有し、コンピュータの1種として構成されている。演算処理部76は、CPU(中央演算処理装置)などで構成される。記録部77は、メモリ(半導体素子等)、記憶装置(ハードディスク等)などの1種又は複数種のものを組み合わせて構成される。また、この制御部73、処理部74及び解析検出部75は、伝送路72を介して互いに必要な情報等が送信(やり取り)されるようになっている。
【0050】
システム制御部73は、例えば、前記した給紙収容部3の給紙動作(主に送出装置32の動作)や、給紙搬送部4及び記録後搬送部5の用紙搬送動作(主に搬送ロール対等の作動)や、記録部2における記録ヘッド21の移動動作や、記録部2のヘッドメンテナンスユニット28の動作などを、記憶部77に予め格納されている制御プログラムとデータに基づいて制御する。また、システム制御部73には、所要の情報を表示する表示部12と、所要の入力操作を行う操作部13が接続されている。システム制御部73は、表示部12及び操作部13の各動作についても制御する。表示部12は、液晶表示パネル等で構成される。操作部13は、ボタン、スイッチ類が配置された操作パネル等で構成される。
【0051】
ホストコンピュータ100は、そのコンピュータ全体の動作を制御する制御部101、コンピュータの各動作の制御プログラムやデータ、インク吐出記録装置1で記録すべき記録用データなどを記憶する記憶部102、所要の情報を表示する表示部103、所要の入力等の操作を行う操作部104等を有している。このホストコンピュータ100は、例えば、複数のネットワーク端末機等から要求される記録ジョブ(記録要求処理)を一括管理して記録装置1に転送するいわゆるプリントサーバや、記録装置1で記録すべき記録用データを作成するとともにそのデータの記録を記録装置1に要求するパーソナルコンピュータなどである。
【0052】
この実施形態に係るインク吐出記録装置1は、その記録を行うときには、ホストコンピュータ100(の記憶部102)に予め蓄積されている記録用データ(記録画像の元データ)が記録装置1に送信された後、その送信されて入力された記録用データを記録装置1の記録画像処理部74において所要の画像処理をして出力用の画像データに変換する。記録画像処理部74には、記録部2における各記録ヘッド21(Y,M,C,K)の記録動作(インク吐出)を制御するヘッド駆動制御部78が接続されている。ヘッド駆動制御部78は、記録動作時における動作タイミングの基準となる印字クロックを生成する印字クロック生成部79や記憶部77等を有している。また、ヘッド駆動制御部78は、記録動作時になると、記録画像処理部74から画像処理された画像データが送信されて入力されるとともに、その画像データを印字クロック生成部79から生成される印字クロックに従って各記録ヘッド21(Y,M,C,K)に送信して出力し、その画像データに応じて各記録ヘッド21の記録動作を実行させる。
【0053】
また、インク吐出記録装置1は、1枚の用紙10に対して記録ヘッド21による記録を行う毎に、その記録ヘッド21における吐出不良ノズルの発生の有無等について検出する。この実施形態では、図3に示すように、記録動作を実行するときに、通常の画像の記録とは別に、用紙10の搬送方向Aの先端部10a又は後端部10b等の余白部に対して記録ヘッド21によって吐出不良ノズル検出用パターン65を記録し、その記録した検出用パターン65を読取部6で読み取った後、その読み取ったパターンの読取データを不良ノズル解析検出部75において解析する。これにより、吐出不良ノズルの発生の有無や、その発生した位置(どの位置のノズルか)を特定している。
【0054】
さらに、インク吐出記録装置1は、吐出不良ノズルの発生が検出されたときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う。この補完処理は、後述するように記録画像処理部74におけるスジムラ補正の一動作として行われる(図5参照)。
【0055】
そして、インク吐出記録装置1は、吐出不良ノズルの発生が検出されると、後述するようにシステム制御部73により、記録画像処理部74に対して記録ヘッド21の実行中の記録動作を中止させる制御信号を送るとともに、給紙収容部3における新たな給紙動作を中止する制御を行う(図7参照)。また、前記した記録画像処理部74での補完処理の動作が完了すると、その補完処理された画像データが記録画像処理部74からヘッド駆動制御部78に出力され、ヘッド駆動制御部78がその画像データに基づいて当該記録ヘッド21による記録動作を新たな用紙10に対して開始する制御を行う(図7参照)。また、システム制御部73が給紙収容部3等による新たな給紙動作を再開する制御を行う(図7参照)。
【0056】
以下、この実施形態に係るインク吐出記録装置1の動作について説明する。
【0057】
インク吐出記録装置1の記録動作に際しては、その記録動作の開始指令とその記録すべき記録用データがホストコンピュータ100側から記録装置1側に送信される。
【0058】
ホストコンピュータ100には、記憶部102(例えばハードディスク)に記録装置1で記録すべき記録用データが予め格納されている。記録装置1による記録を行う者(利用者)は、その記録を行うときに、コンピュータ100における表示部103に表示される記録ジョブの管理画面から記録したい記録ジョブを操作部104の操作で選択することにより記録開始の指示を行う。記録ジョブは、利用者が作成する1組の記録要求処理に関する情報(記録すべき文書、画像などに関する管理情報)である。記録ジョブの管理画面は、例えば、記録用ファイル又はフォルダが一覧として表示される画面である。
【0059】
この記録開始の指示が行われると、ホストコンピュータ100では制御部101の制御により記憶部102から選択された記録ジョブの記録用データが読み出されて記録装置1へ送信される。このときの記録用データは、通信制御部71を通して記録装置1側に伝達され、記録画像処理部74における記憶部77の画像メモリとして用意された記憶領域又は記憶装置に記憶保持される。
【0060】
また、このときホストコンピュータ100に格納されている記録用データは、記録対象の画像(文字等を含む)がカラー画像である場合、例えば記録ヘッド21で使用するインクの色(Y,M,C,K)に応じた色成分ごとの記録用データRD(Y,M,C,K)として格納されている。この色成分別に分離された記録用データRD(Y,M,C,K)は、その色成分ごとに記録画像処理部74の記憶部77に記憶される。ちなみに、その記録用データについては、必ずしもこのように色成分ごとに分離されたデータであることに限定されない。すなわち、記録装置1(記録画像処理部74)側で色成分ごとの分離が行われる構成であってもよい。
【0061】
記録画像処理部74では、図5に示すように、各色成分の記録用データRD(Y,M,C,K)ごとに分配して画像処理を施し、最終的に記録部2の記録ヘッド21に送信するための画像データIDを生成する。図5に示す画像処理は、1色の記録用データに対して行われるものであるが、他の色成分の記録用データに対しても同様に行われる。
【0062】
このとき記録画像処理部74では、図5に示すように、ホストコンピュータ100から送信されて記憶された記録用データRDを、色成分ごとにページ単位(用紙10の片面に記録する画像の単位)で記憶部77における入力ページメモリ(1)に一旦保持し、その画像データをページ単位で読み出してからXレジ補正、γ補正、スジムラ補正、ハーフトーン(処理)、ノズル並替等の共通の処理をした後、画像データIDとして出力ページメモリ(1)に格納して保持する。入力ページメモリと出力ページメモリは、記録画像処理部74の記憶部77に用意される記憶領域(又は記憶装置)である。
【0063】
ここで、上記Xレジ補正は、記録する画像を記録ヘッド21におけるノズル22の配列方向に合わせてシフトさせる処理であり、この補正により色成分別のヘッド21(Y,M,C,K)間での画像のずれが記録画像の方で調整されて解消される。上記γ補正は、記録画像の濃度を補正する処理である。上記ハートーン処理は、入力した画像データのビット(bit)数を所定のビット数に変更する処理であり、例えば8ビットのデータを2ビットのデータに変換する。上記ノズル並替は、記録ヘッドの2次元のノズル配置に合わせて記録画像のデータの配列を変換する処理である。
【0064】
そして、上記スジムラ補正は、吐出不良ノズルに起因して記録画像中に発生する筋状のむらである画像不良を補完する処理である。具体的には、所定のノズル22のインク吐出条件について補正する処理を行う。このスジムラ補正は、不良ノズル解析検出部75から送信される吐出不良ノズルの不良内容や位置等に関する検出結果の情報に応じて用意されているインク吐出条件の補正パラメータ(データ)に基づいて行われる。補正パラメータのデータは、記録画像処理部74の記憶部77に予め格納されている。
【0065】
また、記録画像処理部74では、一連の記録動作がページによって異なる内容の画像データである場合、図5に示すように、その異なるページ毎の画像データをその記録の順番に従って2つの入力ページメモリ1,2に振り分けて記憶させるとともに、その異なる各ページの画像データについて前記した共通の画像処理を行った後に、その処理後の各ページの画像信号を2つの出力ページメモリ1,2に振り分けて記憶させる。
【0066】
さらに、記録画像処理部74では、記録動作を開始する際に、出力ページメモリ(1,2)から出力される各ページの画像信号ISに吐出不良検出用パターンを追加して合成する処理を行う。
【0067】
吐出不良検出用パターン(図3中の符号65)は、記録ヘッド21(Y,M,C,K)における全ノズル22のインクの吐出状態が不良であるか否かとその吐出不良が発生したノズルの位置を検出することが可能なパターン画像であり、公知のパターン等が使用される。この検出用パターンは、例えば、用紙10の搬送方向Aの先端部の余白部分に形成される。また、この検出用パターンは、4つの記録ヘッド21(Y,M,C,K)の全ノズルの吐出不良の発生等を検出することができるパターンとして1枚の用紙10に対し一度に形成される。ただし、用紙の余白領域を十分に確保できない等の事情により1枚の用紙に1度で形成することができない場合には、複数の用紙に分配して形成するようにしても構わない。このような検出用パターンのデータは、記録画像処理部74の記憶部77に予め格納されている。
【0068】
続いて、インク吐出記録装置1は、記録画像処理部74の画像処理により1ページ分の画像データIDが生成されて出力ページメモリに格納されると、図6に示すように、システム制御部73の制御により、給紙収容部3を作動させて用紙10の給紙動作を開始するとともに、給紙搬送部4及び記録後搬送部5を作動させて用紙10の記録部2への搬送動作を開始する(ステップS10)。
【0069】
給紙収容部3では、図1や図2に示すように、送出装置32が作動することにより用紙10を1枚ずつ給紙搬送部4に送り出す。この送り出された用紙10は、給紙搬送部4の給紙路部41を通して搬送され、給紙搬送部4の記録搬送部44における搬送ベルト46に対して吸着部材49により静電吸着された後、記録搬送部44により記録部2の各記録ヘッド21(のノズル面21a)の直下を通過するように搬送される。
【0070】
次いで、この供給される用紙10が記録部2の記録位置(ノズル面21aの直下)に到達すると、その到達するタイミングに合わせて、システム制御部74の制御により記録部2を作動させて記録ヘッド21による記録動作を開始する(ステップS11)。
【0071】
記録部2では、ヘッド駆動制御部78が記録画像処理部74から印字クロック信号に同期して読み出されて送信される画像データIDに基づいて記録ヘッド21を駆動する。これにより、記録ヘッド21では、画像データIDに対応して該当するノズル22から所定の色のインク(液滴)を、記録搬送部44で搬送される用紙10に対しドット状に吐出する。インクの吐出は、用紙の搬送方向Aの上流側に配置される記録ヘッド21Yを先頭にその下流側に順次配置される記録ヘッド21M,21C,21Kという順番で行われる。
【0072】
このときの記録動作は、まず、図3に示すように用紙10の先端部10aにある余白部に対する吐出不良検出用パターン65の記録から開始される。1枚の用紙の先端部10aに4色(Y,M,C,K)の検出パターンを一度で記録する場合には、すべての記録ヘッド21(Y,M,C,K)により検出パターン用の画像データに基づいて、各色(Y,M,C,K)用の検出パターンを各色の検出領域に記録する。続いて、その用紙10のユーザ記録対象領域に対し、所要の記録ヘッド21(Y,M,C,K)によって記録用の画像データIDに基づいた通常の画像の記録が行われる。
【0073】
次いで、記録部2における記録動作が終了すると、その記録が行われた用紙10が記録搬送部44の搬送ベルト46で搬送されて読取部6の直下を通過するときに、不良ノズル解析検出部75の制御により読取部6の読取センサ(発光源を含む)が作動し、その用紙の先端部10aに記録された吐出検出用パターン65を読み取る(ステップS12)。この読取部6で読み取られた検出用パターン65の読取りデータは、不良ノズル解析検出部75に取り込まれて後述するように解析処理される。
【0074】
読取部6を通過した用紙10は、片面記録を行う記録ジョブであれば、作動している記録後搬送部5の排出路部51により搬送されて排紙収容部11にまで搬送される。また、両面記録を行う記録ジョブの場合には、その片面記録が終了した用紙10が、排出路部51により所定の距離だけ搬送された後、その搬送方向の後端部側から反転再送路部52に引き込まれ、その表裏面が反転させられた状態で給紙搬送部4により再び記録部2に搬送される。反転再送路部52で搬送された用紙2が記録部2を再び通過することにより、その用紙裏面(第2面)に裏面用の画像が記録される。この裏面記録時にも、その用紙10の裏面に検出用パターン65が形成される。
【0075】
以上の動作が実行されることにより、記録装置1による1枚の用紙10に対する記録が終了するが、このとき記録指示の要求を受けた記録ジョブに次の新たな用紙10に対する記録があるか否かが判断される(ステップS13)。この際、次の記録があれば、その記録ジョブにおける指定枚数分だけ、用紙10の給紙が実行されて前述した1枚の用紙10に対する記録動作が同様に繰り返して行われる。一方、次の記録がない場合には記録動作が終了する。
【0076】
また、この記録装置1では、図7に示すように、不良ノズル解析検出部75において読取部6で読み取った検出用パターン65の読取りデータに基づき吐出不良ノズルの発生の有無等を解析して検出する(ステップS20)。
【0077】
この際、記録ヘッド21に吐出不良ノズルが存在しない場合は、図8に示すように、その記録ヘッド21の全ノズル22から吐出された液滴のインクが、用紙10に対して所望の位置及び大きさの点(ドット)状にほぼ共通した状態で付着する。
【0078】
図8は、記録ヘッド21の各ノズル22から吐出されて用紙10に付着した付着インク15の状態を示す。ここでは、記録ヘッド21として、例えばノズル22が用紙搬送方向Aと直交する方向に千鳥状に配列されて2列に並ぶ用紙搬送方向Aの上流側ノズル群22Aとその下流側ノズル群22Bとして配置されている記録ヘッドを想定し、この場合に、その上流側ノズル群22A及び下流側ノズル群22Bから2回ずつインクの吐出を行ったときの各ノズル群22A,22Bから吐出されて付着した付着インク15A,15Bの状態を示している。図8中において1つの円(○)が、1つのノズル22から吐出されて形成された付着インクを示す。吐出不良ノズルが発生していない場合には、図8に示すように、付着インク15A,15Bがノズル群22A,22Bと同じ数だけ存在し(付着インクの抜けがなく)、その各付着インクの付着位置や大きさ(量)についてもほぼ共通した同じ結果になる。
【0079】
一方、記録ヘッド21に不吐出の吐出不良ノズルが発生した場合は、図9に示すように、付着インク15が形成されずに抜けた空白部分(ドット抜け)が存在する記録結果となる。図9では、上流側ノズル群21Aの一部のノズル21Axと下流側ノズル群21Bの一部のノズル21Bxが不吐出の状態になった場合(該当ノズルを「●」で示す)に、その吐出不良ノズル21Ax、21Bxからインクが吐出されないため、かかるノズル21Ax、21Bxと対応する位置に付着インクが形成されず抜けた結果(付着インク15を示す「○」がない部分:図中の括弧書きの符号15Ax,15Bxを付した矢印の先で示す空白部分)となる。これにより、その不吐出の不良ノズルが存在する記録ヘッド21で記録される結果(記録画像)には、そのドット抜けが用紙の搬送方向Aに対し連続した状態で存在することで全体として筋のように見える記録欠陥、いわゆる筋むらが発生してしまう。
【0080】
不良ノズル解析検出部75では、検出用パターン65の読取りデータから、不吐出、吐出方向異常、吐出量不足などの吐出不良が発生しているか否かという点や、吐出不良になっているノズルの位置を解析して検出する。
【0081】
このときの解析及び検出は、画像解析技術等の公知の解析手法を利用して行うことができる。例えば、その読取りデータを、解析検出部75の記憶部77に予め格納されている検出パターン65の基準読取りデータと対比することで行われる。このときの検出は、例えば、その検出に使用される検出用パターン65を形成した用紙10に対する通常の画像記録が終了する前までの間に結果が判明するような速さで処理される。また、この解析及び検出は、検出用パターンが複数枚の用紙10に配分(分割)されて記録される場合には、その各用紙に記録した分割検出用パターンの読取りデータを入手する毎に逐次行うか、あるいは、4つの記録ヘッド21による検出用パターンの全ての読取りデータを入手できた段階で1度にまとめて行われる。このときの検出は、例えば、分割されて形成される検出用パターンの最後のパターンが形成された用紙に対する通常の画像記録が終了する前までの間に結果が判明するような速さで処理される。
【0082】
不良ノズル解析検出部75において吐出不良ノズルの発生が検出されると、その検出結果がシステム制御部73及び記録画像処理部74に送信される。
【0083】
そして、この記録装置1では、図7に示すように、システム制御部73が吐出不良ノズルの発生を検出した結果の情報を受信すると(ステップS21)、その制御部73における演算処理部76が記憶部77に格納されている制御プログラムに基づき、記録部2のヘッド駆動制御部78に対して記録ヘッド21の実行中の記録動作を中止させる制御を実行させる制御信号を送るとともに(ステップS22)、給紙収容部3に対して新たな用紙の給紙動作を中止させる制御を実行する(ステップS23)。このような中止の制御は、記録動作に関する制御(図6)に対する割り込み処理として実行される。
【0084】
このときの実行中の記録動作の中止は、記録開始の指示がされた分の記録動作が行われている記録ヘッド21におけるインク吐出(の駆動)を、その記録の途中であっても直ちに停止させるものである。また、この記録動作の中止を行う制御は、その記録動作が中止させられた記録ヘッド21の駆動のためにヘッド駆動制御部78に送信された画像データIDを、ヘッド駆動制御部78が空値のデータ(いわゆる「NULLデータ」)に切り替えることで実行される。つまり、ヘッド駆動制御部78は、記録画像処理部74の記憶部76(図5に示す出力ページメモリ)に保持されている当該画像データIDを記録ヘッド21に対して送らず、通常の画像を記録するための通常の記録用画像データに関するデータ成分が含まれない空状態のデータ(但しこの場合、後述する「特別のインク吐出動作」を行うときには、そのときのデータを除く。)を記録ヘッド21に送ることになる。
【0085】
この実行中の記録動作を中止することにより、吐出不良ノズルの発生が検出された記録ヘッド21においてはインクの吐出が行われなくなり、インクが無用に消費されることがない。また、新たな用紙10に対する後続の記録動作も行われなくなり、その分だけ用紙が無用に消費されることがない。
【0086】
また、新たな用紙の給紙動作の中止は、給紙収容部3における送出装置32の新たな作動を停止させることである。このとき、給紙搬送部4(給紙路部41、記録搬送部44)及び記録後搬送部5(排出路部51、反転再送路部52)は、用紙10をいつでも搬送することが可能な状態に保たれる。
【0087】
この新たな用紙の給紙動作を中止することにより、吐出不良ノズルの発生が判明した直後の記録ヘッド21による記録を行うために新たな用紙10が搬送されることがなくなり、その分だけ用紙が無用に消費されることがない。
【0088】
また、新たな用紙の給紙動作を中止するときに給紙搬送部4及び記録後搬送部5を用紙搬送が可能な状態に保っておくことにより、その給紙動作を中止する時点で給紙搬送部4及び記録後搬送部5により搬送中の用紙10が存在していた場合、その用紙10を排紙収容部11等に排出することができる。しかも、その搬送中の用紙10が吐出不良ノズルの発生前における記録ヘッド21による記載が行われたものである場合には、その排出された用紙を正常な記録物として取り扱うことができる。また、その搬送中の用紙10が吐出不良ノズルが発生した記録ヘッド21による記録がされていない(未記録の)用紙である場合には、その排出された後の用紙10を記録装置1の記録などに再度利用することができ無駄にならない。
【0089】
また、この記録装置1では、図7に示すように、記録画像処理部74が吐出不良ノズルの発生を検出した結果の情報を受信すると、その処理部74における演算処理部76が記憶部77に格納されている制御プログラムに基づき、前記した吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理動作を開始する(ステップS24)。
【0090】
このときの補完処理には、吐出不良ノズル以外の正常なノズルのインク吐出条件を調整して補正する公知の補完方式が適用される。具体的には、例えば図10に示すように、吐出不良ノズル(図9で例示したノズル21Ax、21Bx)で記録されない部分(ドット抜け)を補完する観点から、その吐出不良ノズルに隣接する正常ノズル(21A1、21A2、21B1、21B2)のインク吐出条件を調整して補正する画像処理の1つ(図5のスジムラ補正)として行われる。
【0091】
図10に示す補完処理は、出不良ノズルに隣接する正常ノズルのインク突出量の条件について平常時の設定値よりも増加させた値に補正するものである。このような補完処理は、例えばノズル22の吐出量の条件として「小」、「中」及び「大」の異なるレベルを予め用意しておき、吐出不良ノズルの発生が検出されない平常時には「小レベル」又は中レベル」の吐出量条件を使用する一方で、補完処理の対応時には「大レベル」の吐出量を混在させて使用するように構成することで行われる。この補完処理された画像データの記録動作を行った場合の記録結果については後述する。
【0092】
補完処理としての画像処理(スジムラ補正)は、吐出不良の内容(不吐出、吐出方向ずれ、吐出量不足など)及びその不良ノズルの位置に関する情報に応じて予め設定された吐出条件の補正パラメータ(図5)に基づいて行われる。吐出不良ノズルの発生が検出されて補完処理が必要になると、記録画像処理部74では、スジムラ補正の補正パラメータのデータを吐出不良の内容等に関する検出情報に適応したパラメータデータに変更したうえで、その記憶部77の入力ページメモリ(図5)に格納されている記録用データRDを読み出し、その読み出した記録用データRDについて前記した画像処理(図5に示すXレジ補正、γ補正、スジムラ補正、ハーフトーン(処理)、ノズル並替)を同様に行う。このときに読み出されて画像処理される記録用データRDは、先の中止された記録動作に使用された画像データIDの記録用データRDと同じ場合と、その中止した記録動作の後続の記録に使用される予定の記録用データRDである場合とがある。上記中止された記録動作に使用された記録用データと同じ場合には、例えば、記録ジョブで指定された最終ページの記録動作が中止され、その最終ページの画像データをリカバリーするために使用する元の記録用データである場合も含まれる。
【0093】
この記録画像処理部74の処理動作により、スジムラ補正によって補完処理された新たな画像データIDが生成され、その補完処理後の新たな画像データIDが記憶部77の出力ページメモリ(図5)に格納される。このようにして補完処理の動作が終了し、その補完処理された情報データが記録画像処理部74からシステム制御部73及びヘッド制御部78に送信される。
【0094】
さらに、この記録装置1では、図7に示すように、システム制御部73が、記録画像処理部74における補完の処理動作が開始された後にその処理動作が終了(完了)したか否かについて管理する(ステップS25)。
【0095】
以上の補完の処理動作が終了すると、システム制御部73は、給紙収容部3による新たな給紙動作を再開することを許可する(可能にする)状態になるとともに(ステップS26)、ヘッド制御部78が記録部2による補完処理された画像データの記録動作を開始することを許可する状態になる(ステップS27)。
【0096】
この際、先の中止された記録動作に関する記録ジョブに残り(未記録)の記録動作がある場合は、システム制御部73及びヘッド制御部78の制御により、その残りの記録動作がすぐに開始される。すなわち、この場合は、給紙収容部3により新たな用紙10が給紙されて給紙搬送部4を通して記録部2に搬送される一方、記録部2ではその新たに供給される用紙10に対し補完処理された画像データに基づく記録ヘッド21の記録動作が行われる。このときヘッド制御部78では、先の記録動作の中止の際に空値に切り替えて記録ヘッド21に送っていた空データを、その補完処理された記録用の画像データに切り替える。
【0097】
そして、この記録動作では、記録ヘッド21自体には吐出不良ノズルが存在したままであるが、補完処理された画像データの記録動作を行うことにより、その吐出不良ノズルに起因して発生していた記録欠陥(筋むらの発生など)が解消又は低減される。ちなみに、補完処理された画像データの記録動作の際に記録される画像(データ)は、一般に記録動作が中止されたときの画像と同じになる場合と、その中止したときの画像と異なる画像(例えば中止された画像の次に記録が予定されている画像)になる場合とがある。
【0098】
図10は、前記した補完処理によるインク吐出条件(吐出量レベルの補正)を付加した記録ヘッド21の記録結果(付着インク15の状態)の一例を示す。
【0099】
図10に示す記録結果は、不吐出である吐出不良ノズル(21Ax、21Bx)に隣接する正常ノズル(21A1、21A2、21B1、21B2)の吐出量レベルを平常時の「中」から「大」のレベルに変更した補完処理を行って記録動作を実施したときの結果である。図中の点線で示す丸(15A1、15A2、15B1、15B2)が当該正常ノズルによる付着インクの状態を示す。このとき他の正常ノズル22の突出量の条件は、平常時のレベル(「中レベル」)のままである。上記隣接する正常ノズルによる付着インク(点線の丸)は、図10に示すように、平常時のインク吐出量よりも多くなった分、用紙10上において平常時の吐出量に設置された他の正常ノズルによる付着インク(実線の丸で示すもの)よりも面積が広がった大きなものとなる。この結果、補完処理による記録を行うことにより、吐出不良ノズル(ノズル21Ax、21Bx)で記録されない部分(図9に示すドット抜けの空白部)の一部が、隣接する正常ノズルによる大きめの付着インクによって埋め合わせられた状態となり、視認されにくくなる。
【0100】
このように補完の処理動作が終了した後に新たな給紙動作や記録動作を再開して開始することにより、その補完の処理動作が終了するまでは前述したとおり吐出不良ノズルの発生が検出された時点で記録動作や新たな給紙動作が中止されていることになる。このため、補完の処理動作が終了するまでは吐出不良ノズルが発生した記録ヘッド21によるインクの吐出が行われないので、その分インクが無用に消費されることがない。また、その記録ヘッド21による記録動作が新たに供給される用紙10に対して行われることもないので、その分だけ用紙が無用に消費されることもない。
【0101】
このような効果は、補完処理の動作の所要時間が長くなるような場合に、その処理時間が長くなる補完処理動作が終了するまでは吐出不良ノズルの発生が検出された時点から記録動作等が中止されて行われることがないので、特に有効となる。その所要時間が長くなる場合とは、例えば、記録ヘッド21の記録幅(用紙の搬送方向Aと直行する方向の長さ)が広くなったりあるいはノズルの総数が増加して処理対象の画像データが膨大になる場合や、補完方式として処理時間が長いものを採用した場合などである。
【0102】
また、補完処理された画像データに基づく記録ヘッド21の記録動作が開始された後においても、その記録ヘッド21による検出用パターン65の記録と、そのパターンの読取部6による読み取りと、不良ノズル解析検出部75による検出用パターンの読取りデータに基づく吐出不良ノズルの発生の検出とが同様に行われる。この場合、その記録ヘッド21に発生した吐出不良ノズルからの検出用パターン用のインク吐出がなされないか又は正常になされないので、不良ノズル解析検出部75では既に検出した吐出不良ノズルを除いた他のノズルのなかに新たな吐出不良が発生しているか否かを解析して検出することになる。なお、後述する記録ヘッド21のメンテナンス処理を実行した後は、先に検出された吐出不良ノズルが正常に戻る(回復)する場合もあるため、その記録ヘッド21の全ノズルについて吐出不良が発生しているか否かの検出を改めて行う。
【0103】
この他、この記録装置1では、メンテナンスユニット28による記録ヘッド21のメンテナンス処理(吐出不良の回復処理)が実行される。通常の(自動設定の)メンテナンス処理は、記録装置1の電源投入時や、記録動作の開始時や、記録動作途中(例えば1000頁の記録完了ごとの時期)に、記録ヘッド21のノズル面21aの拭き取りや、インクの空吐出(ダミー吐出)などが行われる。しかし、この実施形態においては、吐出不良ノズルの発生が判明したときには記録動作を中止して補完処理を行った記録動作を行うことを優先し、記録動作の停止所要時間が前者に比べて長い通常のメンテナンス処理を行わないようにしている。また、記録ヘッド21に吐出不良ノズルの発生が判明したときには、装置利用者に、前記したような記録動作等を中止して補完処理を行う使用形態と、記録ヘッドの吸引等のメンテナンス処理を行う使用形態のいずれかを選択してもらい、その選択された使用形態に沿って動作させるように構成することができる。このときのメンテナンス処理としては、例えば、記録ヘッド21の吸引動作、ノズル面21aの拭き取り動作及びダミー吐出動作を組み合わせることが可能である。
【0104】
また、この記録装置1は、その装置1にある表示部12及び操作部13(図4)又はホストコンピュータ100にある表示部103及び操作部104(図4)において、例えば初期設定の設定内容の一部として制御形態を選択することができる機能を有している。
【0105】
その選択可能な制御形態としては、例えば、不良ノズル解析検出部75から吐出不良ノズルの発生の検出結果の情報を受けたときに前記した記録動作及び給紙動作の中止と補完処理動作の完了後に記録動作等の開始(再開)という制御を実行する「第一制御モード」と、第一制御モードの制御を行わず別の制御を実行する「第二制御モード」とが用意される。第二制御モードは、例えば、不良ノズル解析検出部75から吐出不良ノズルの発生の検出結果の情報を受けたときに、吐出不良ノズルが存在したままの記録ヘッド21による記録動作を(指定された記録枚数が終了するまで)継続させるという制御を行う制御形態である。この第二制御モードの場合、補完の処理動作は継続する記録動作中に行い、例えばその継続記録が終了して次の新たな記録動作を行う際に、その終了した補完処理された画像データに基づく次の記録動作を行うことになる。
【0106】
この制御形態の選択操作は、装置利用者が操作部13(又は105)の所要の操作をすると、システム制御部73の制御により表示部12(又は103)に選択用の操作画面が表示され、その操作画面に表示される入力ボタン(操作部の一部)などを操作することで行われる。操作画面は、第一制御モードと第二制御モードのいずれか一方を選択するものか、あるいは、第一制御モードを使用するか使用しないかの一方を選択するものである。後者の画面構成の場合は「使用しない」を選択すると第二制御モードになる。この選択操作の結果は、次の選択操作がされるまでの間、記録部77に保持される。ホストコンピュータ100の操作部105が操作された場合は、その操作結果が記録装置1側のシステム制御部73に送信された後、そのシステム制御部73がコンピュータ100側に操作画面を表示部103に表示させる制御動作を実行させる内容の指令を送信するように構成される。
【0107】
このような制御形態を選択する機能があることにより、吐出不良ノズルが発生した後の記録ヘッド21による記録結果、即ちわずかな筋むらが発生している場合などを許容できる装置利用者であれば、第一制御モードでなく第二制御モードを選択することで、実行中の記録動作が補完処理動作の完了するまで中止されること(中止の制御)がなくなり、その記録動作が強制的に中止される期間(待機期間)が発生することによる記録時間の遅延(長期化)を回避することができる。
【0108】
[第2の実施形態]
図11は、第2の実施形態に係るインク吐出記録装置の概要を示すものである。
【0109】
このインク吐出記録装置1Bは、図11に示すように、記録媒体としての用紙10の搬送部に関する構成が最も異なる以外は第1の実施形態に係るインク吐出記録装置1とほぼ同じ構成からなるものである。このため、以下の説明及び図面において第1の実施形態に係る記録装置1と共通する構成部分については同じ符号を付し、その共通する構成部分の説明を必要な場合以外は省略する。
【0110】
インク吐出記録装置1Bは、給紙収容部3に収容されている用紙10を記録部2に向けて搬送する給紙搬送部40と、記録後の用紙10を排紙収容部等に搬送する記録後搬送部50とを、連続して配置される回転ドラムにより主に構成している。また、給紙搬送部40には処理液塗布部80を、記録後搬送部50にはインク乾燥部85及び画像定着部90をそれぞれ配置している。図中の一点鎖線は、上記各搬送部40,50等を搬送されるときの用紙10の経路の一部を示している。
【0111】
給紙搬送部40は、複数の用紙搬送ロール対42a〜42cと、複数の搬送ドラム45A,45B,45Cにて構成されている。搬送ドラム45A〜Cはいずれも、その周面の軸方向に用紙10の先端部を挟んで保持する保持部材43が設けられている。各搬送ドラム45間では、用紙10を受け渡すとともに保持部材43に保持させるようになっている。この給紙搬送部40によれば、給紙収容部3から1枚ずつ送り出される用紙10が、複数の用紙搬送ロール対42により搬送された後に複数の搬送ドラム45に受け渡されて搬送され、記録部2まで搬送される。
【0112】
また、この給紙搬送部における第1の搬送ドラム45Aには、用紙10の記録面に処理液を塗布する処理液塗布部80が配置されている。処理液塗布部80は、搬送ドラム45Aの周方向に沿って処理液塗布装置81と処理液乾燥装置82を設けて構成されるものであり、処理液塗布装置81によって用紙10の記録面に処理液を塗布し、処理液乾燥装置82によって塗布された処理液が乾燥される。処理液塗布装置81は、処理液を複数のロールに付着させて塗布するロールコーターで構成されている。処理液乾燥装置82は、熱風を噴出す熱風ノズル83と赤外線ヒーター84とで構成されている。
【0113】
処理液としては、インクと反応してそのインクを構成する色材(顔料)と溶媒を分離させる効果を促進するものが適用される。また、処理液は、処理液乾燥装置82の乾燥作用により処理液中の水などの溶媒が蒸発され、固体もしくは薄膜処理機層として用紙の記録面に付着する。処理液を上記乾燥工程で薄層化することで、記録部2で打滴されたインクのドットが用紙の表面と接触して必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液と反応し色材が凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすくなる。
【0114】
第3の搬送ドラム45Cの上部周面には、ライン型の記録ヘッド21Y,21M,21C,21Kがドラム周方向に沿って配置されている。各記録ヘッド21は、そのノズル面21aを搬送ドラム45Cの周面に対し所定の間隔をあけて対向させた状態で設置されている。これにより、記録部2が構成されている。この記録部2では、搬送ドラム45Cに保持された用紙10の記録面の処理液層上に各色(Y,M,C,K)のインクが吐出されて各色の画像が記録される。
【0115】
この記録部2における記録ヘッド21は、搬送ドラム45Cの回転軸45sに配置された回転速度を検出する図示しないエンコーダの検出信号に同期して打滴を行うようになっており、これにより、ノズルから吐出されるインクの着弾位置を高精度に決定することができるともに、搬送ドラム45Cの振れ、回転軸45sの精度、ドラム45Cの表面速度等に依存せずに打滴ムラを低減することが可能となる。また、この記録部2には、図示しない記録ヘッドのメンテンナンスユニット(28)が記録ヘッド21の近くの位置に設置されている。
【0116】
記録後搬送部50は、複数の搬送ドラム45D,45E,45F、45Gにて構成されている。この記録後搬送部50によれば、記録部2で記録が行われた後の用紙10が、複数の搬送ドラム45D〜Gに受け渡されて搬送された後、図示しない排紙収容部などに搬送される。
【0117】
記録後搬送部50における第5の搬送ドラム45Eの上部周面には、用紙10の記録面に形成された画像のインクを乾燥させるインク乾燥部85が配置されている。インク乾燥部85は、搬送ドラム45Eの表面に接近して交互に配置される熱風ノズル86と赤外線ヒーター87とで構成されている。このインク乾燥部85を通過することにより、用紙10の記録面におけるインクが前記した処理液層の色材凝集作業により分離された溶媒が乾燥され、その記録面に薄膜の画像層が形成される。
【0118】
また、記録後搬送部50における第7の搬送ドラム45Gの上部周面には、用紙10の記録面に形成された画像のインクを用紙上に定着させる画像定着部90が配置されている。画像定着部90は、搬送ドラム45Gの表面に近接して配置される加熱ロール91とそのドラム表面に圧接した状態で配置される定着ロール92で構成されている。加熱ロール91は、熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれたものであり、インクに含まれるラテックスのガラス転移点(Tg)の温度以上の熱エネルギーが付与される。定着ロール92又は搬送ドラム45Gの少なくとも一方は、その表面に弾性層が形成された構成になっている。
【0119】
この画像定着部90を通過することにより、インクの画像が記録された後にインクの乾燥が行われた用紙10が加熱および加圧され、この結果、画像のインクに含まれるラテックス粒子が溶融されて用紙上の凹凸に押し込まれて定着されるとともに、画像の表面の凹凸がならされて光沢性が得られる。なお、画像定着部90は、インク乾燥部85で用紙の記録面に形成されたインクの画像を乾燥及び定着させることができれば十分であるため、その設置を省略しても構わない。
【0120】
この記録装置1Bでは、読取部6が画像定着部90を設置する最終段の搬送ドラム45Gの周面に配置している。読取部6は、この他にも、例えば第3の搬送ドラム45Cの周面に配置してもよい。
【0121】
また、この記録装置1Bには、以下の異なる点を除き、第1の実施形態に係る記録装置1と同様の制御部7(図4、図5)を有している。
【0122】
異なる点としては、まず、システム制御部73の制御対象の1つが(給紙搬送部4及び記録後搬送部5に代えて)搬送ドラム45を使用する給紙搬送部40及び記録後搬送部50に変更されている点である。また、各搬送部40,50に新たに設置される処理液塗布部80、インク乾燥部85及び画像定着部90が新たな制御対象として追加されている点である。さらに、システム制御部73の記憶部77に格納されている制御プログラムのうち吐出不良ノズルの発生を検知した後における制御動作に関するプログラム(図11参照)の一部が後述するように第1の実施形態におけるプログラム(図7参照)に対して変更されている点である。
【0123】
そして、この記録装置1Bの動作は、以下に説明する異なる部分が少しあるほかは、第1の実施形態に係る記録装置1の動作と共通している。
【0124】
記録動作については、その記録開始指令とその記録すべき画像データがホストコンピュータ100側から記録装置1B側に送信されると、第1の実施形態に係る記録装置1による記録動作とほぼ同じ動作が実行される。
【0125】
この場合、給紙収容部3から1枚ずつ送り出される用紙10が給紙搬送部40の搬送ドラム45A〜45Cによって記録部2に搬送されると、記録部2の記録ヘッド21による記録動作が開始される。このときの記録動作は、処理液塗布部80で処理液が塗布された用紙10の記録面に対して、初めに吐出不良検出用パターン65の記録(図3参照)が行われ、しかる後に通常の画像の記録が行われる。記録部2での記録が終了した用紙10は、記録後搬送部50における搬送ドラム45D〜45Gによって排紙収容部などに搬送される。この記録後搬送部50による搬送工程では、前記したインク乾燥部85による乾燥と、画像定着部90による定着と、読取部6による検出用パターンの読み取りとが行われる。以上の動作が実行されることにより、記録装置1Bによる1枚の用紙10に対する記録が終了するが、この記録動作は、指定された記録枚数分だけ同様に繰り返される(図6参照)。
【0126】
この記録装置1Bにおいても、読取部6により検出用パターン65の読み取りが行われると、その読取りデータが不良ノズル解析検出部75に送信される。これにより、図11に示すように、不良ノズル解析検出部75でその読取りデータに基づき吐出不良ノズルの発生の有無等の解析と検出が第1の実施形態の場合と同様にして行われるとともに(ステップS30)、吐出不良ノズルが発生したか否かが管理される(ステップS31)。
【0127】
不良ノズル解析検出部75において吐出不良ノズルの発生が検出されて、その検出結果がシステム制御部73及び記録画像処理部74に送信されると、システム制御部73では、その演算処理部76が記録部77に格納されている制御プログラムに基づき、記録部2に対して記録ヘッド21の実行中の記録動作を中止させる制御を行う(ステップS32)。この実行中の記録動作の中止により、第1の実施形態の場合と同様に、インクと用紙が無用に消費されることがない。
【0128】
一方、この記録装置1Bでは、この実行中の記録動作の中止の際、第1の実施形態の場合のように新たな給紙動作を中止させる制御(図7のステップS23)が行われない。このため、この実行中の記録動作が中止されたときでも、給紙搬送部40と記録後搬送部50は、用紙10を搬送する状態に保たれる。
【0129】
このように用紙の搬送状態を可能に状態に維持することにより、記録動作を中止した記録ジョブにおいて残りの記録動作がある場合には、その残り記録動作に使用するための用紙10が記録部2を単に通過する状態で記録給紙搬送部40と記録後搬送部50によって搬送され、何も記録されない白紙の状態で排出収容部に排出される。この際、理液塗布部80、インク乾燥部85及び画像定着部90も動作せず、その搬送される用紙に対して処理液の塗布、乾燥、及び定着の処理を行わない。この結果、排出された用紙10は、白紙の状態であるため、給紙収容部3に収容することで再利用される。これにより、給紙収容部3にある用紙10が一度排出収容部まで搬送されるものの、その搬送された用紙が無用に消費されることはない。
【0130】
一方、中止された記録動作の前の記録動作による記録が終了した用紙10であって記録後搬送部50により搬送途上にあったものが存在している場合は、その記録後の用紙10が記録後搬送部50の途中に残留することなく排出収容部までに確実に搬送されて排出される。
【0131】
このような記録動作の中止をするときにも給紙動作を中止せずに続行可能な状態にする制御は、例えば、以下のインク吐出記録装置に適用することができる。すなわち、記録動作の中止に合わせて新たな給紙動作を急に止めることが難しい給紙収容部、給紙搬送部等の用紙搬送手段を有する記録装置の場合や、給紙動作を一度中止すると給紙動作の再開時に次の給紙動作を開始するまでに時間のかかる用紙搬送手段を有する記録装置の場合などである。ちなみに、この実施形態に係る記録装置1Bは前者の場合に該当する。
【0132】
また、この記録装置1Bでは、記録画像処理部74が吐出不良ノズルの発生を検出した結果の情報を受信すると、その処理部74における演算処理部76が記憶部77に格納されている制御プログラムに基づき、図12に示すように、前記した吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理動作を開始され(ステップS33)、また、その処理動作が開始されると、システム制御部73がその処理動作が終了したか否かを管理する(ステップS34)。
【0133】
補完の処理動作が終了すると、システム制御部73は、記録部2による補完処理された画像データに基づく記録動作を開始することを許可する状態になる(ステップS35)。
【0134】
この際、先の中止された記録動作に関する記録ジョブに残りの記録動作がある場合は、その残りの記録動作がすぐに開始される。このときの記録動作は、給紙収容部3から新たな用紙10が給紙されて給紙搬送部40を通して記録部2に搬送され、その供給される用紙10に対して補完処理された画像データによる記録動作(検出用パターン65の記録と、通常の画像の記録)が行われる。この記録装置1Bでは、前記したように記録動作を中止した際に給紙動作を続行可能な状態にしているため、補完の処理動作が終了した後に開始される記録動作時に、新たな用紙10を記録部2に対して直ちに供給することができる。
【0135】
なお、この記録装置1Bでは、吐出不良ノズルの発生が検出されたときに実行中の記録動作の中止をしても給紙動作について続行可能な状態に維持しているが、図12に示すように、補完の処理動作が開始されてからそれが終了するまでの間において供給搬送される用紙10に対して記録部2で特別のインク吐出動作を行うように構成することができる(ステップS40)。
【0136】
特別のインク吐出動作は、通常の画像を記録するときのインク吐出動作とは異なるインクの吐出動作であり、補完の処理動作が完了して記録動作が再開されるまでの待機時期に実行できる吐出動作であればよい。具体的には、例えば、記録部2の全ての記録ヘッド21の全ノズル22(検出された吐出不良ノズルを含めてもよい)からインクを一定量だけ形式的に吐出させる動作(空吐出)や、吐出不良検出用パターン65等のような特殊な画像を記録するためにインクを吐出させる動作である。この特別のインク吐出動作は、用紙10の搬送方向Aの先端部又は後端部の余白領域に対して行われる。
【0137】
このような特別のインク吐出動作を行うことにより、実行中の記録動作の中止から補完の処理動作が完了して記録動作が再開されるまでの待機期間に、記録ヘッド21のノズル22が外気に長い間触れ続けてインクが乾くことより目詰まりした状態になって、新たな吐出不良ノズルが発生してしまうことを抑制することができる。また、特別のインク吐出動作を用紙10の先端部又は後端部の余白領域という狭い領域に限って形成すれば、インクの無用な消費が抑えられる。
【0138】
特別のインク吐出動作として吐出不良検出用パターン65の記録を行う場合には、その記録した検出パターン65を読取部6で読み取り、その読取りデータに基づき不良ノズル解析検出部75において前記した吐出不良ノズルの発生の有無等に関する解析と検出を行うように構成することができる。この構成は、補完処理動作の所要時間が長い等の理由により待機時間が長くなる場合に有効である。このように構成することにより、待機期間において記録部2の記録ヘッド21に新たな吐出不良ノズルが発生した場合には、その発生を検出することができる。
【0139】
また、この待機期間において新たな吐出不良ノズルの発生を検出した場合には、先の補完処理動作が終了したがその後の記録動作が再開されていないタイミングであれば、その新たに検出された吐出不良ノズルの検出情報に対する新たな補完の処理動作を開始し、その処理動作が終了するまで記録動作を中止した状態に保つように構成することができる。これにより、待機期間において新たに発生した吐出不良ノズルに対する補完処理を直ちに開始することができ、また、その処理動作が終了するまで記録動作が中止されることでインクと用紙が無用に消費されない。
【0140】
この他、この記録装置1Bは、第1の実施形態に係る記録装置1の場合と同様に、その装置1にある表示部12及び操作部13(図4)又はホストコンピュータ100にある表示部103及び操作部104(図4)において、例えば初期設定の設定内容の一部として制御形態を選択することができる機能を付加してもよい。
【0141】
その選択可能な制御形態としては、例えば、不良ノズル解析検出部75から吐出不良ノズルの発生の検出結果の情報を受けたときに前記した記録動作の中止と補完処理動作の完了後に記録動作の開始(再開)という制御を実行する「第一制御モード」と、第一制御モードの制御を行わず別の制御を実行する「第二制御モード」とが用意される。第二制御モードは、第1の実施形態における第二制御モードと同じ制御内容とする。この実施形態では、第一制御モードについて、実行中の記録動作を中止した待機期間に特別のインク吐出動作を行わないという制御を実行する「第一制御モードA(別名:白紙排出モード)」と、その待機期間に特別のインク吐出動作を行うという制御を実行する「第一制御モードB(別名:ヘッド乾き防止モード)」との選択ができるように構成することができる。
【0142】
このような制御形態を選択する機能があることにより、吐出不良ノズルが発生した後の記録ヘッド21による記録結果を許容できる装置利用者であれば、第一制御モードでなく第二制御モードを選択することで、第1の実施形態において「第二制御モード」を選択した場合と同様に、実行中の記録動作が補完処理動作の完了するまで中止されることがなくなり、その記録動作が強制的に中止される時期(待機時間)が発生することによる記録時間の遅延を回避することができる。
【0143】
また、第一制御モードを選択した場合においても、必要に応じて「第一制御モードA(白紙排出モード)」と「第一制御モードB(ヘッド乾き防止モード)」のいずれか一方を任意に選択することが可能になる。「第一制御モードA」を選択したときには、動作中の記録動作が中止された後に搬送される用紙10に対して特別のインク吐出動作が実行されず、その用紙にインクが吐出されることがなく完全な白紙の状態で排出され、このため、その排出された用紙を再利用しやすくなり、また、インクと用紙が無用に消費されることもない。一方、「第一制御モードB」を選択したときには、動作中の記録動作が中止された後の待機期間に特別のインク吐出動作が実行され、このため、前述したように待機時期に新たな吐出不良ノズルが発生してしまうことを抑制することができる。
【0144】
[他の実施形態]
第1及び第2の実施形態では、用紙10として当初より所定の規格サイズに裁断された用紙を使用する場合を説明したが、インクを吐出して記録する対象である記録媒体としては、記録装置1、1Bにおいて搬送可能であり記録部2でのインク吐出による記録が可能なものであれば適用可能であり、例えば、ロール紙、樹脂フィルム等の記録媒体を使用することもできる。ロール紙を使用する場合は、例えば、給紙収容部3についてロール紙を装着して送り出すように構成し、また記録後のロール紙を巻き取るように構成する。
【0145】
また、第1及び第2の実施形態では、記録部2の記録ヘッド21の記録に使用される記録用入力データ(記録用データRD)の画像処理を行う機能(第一機能)と吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う機能(第二機能)とを実現する制御プログラム(図5と図7に示す制御を行うもの)を制御部7の記録画像処理部74の記憶部77に格納した。また、不良ノズル解析検出部75から吐出不良ノズルが発生した検出結果の情報を受けたときに、記録部2における記録ヘッドに送る記録用の画像データを空値に切り替えて実行中の記録動作等を中止するとともに補完処理の動作が完了した後にその補完処理された画像データを送って記録ヘッド21による記録動作を新たな用紙10に対して行う制御処理を行う機能(第三機能)を実現する制御プログラム(図7又は図11に示す制御を行うもの。ただし、図7のステップS20と図11のステップS30を除く。)を制御部7のシステム制御部73の記憶部77に格納していた。
【0146】
しかし、これらの制御プログラムは、記録装置1,1Bの側ではなく、その記録装置と接続して使用されるホストコンピュータ100の記憶部102(図4)に格納して利用することもできる。上記各制御プログラムには、その制御に必要なデータも含まれる。このように利用する場合は、記録装置の不良ノズル解析検出部75から吐出不良ノズルが発生した検出結果の情報が、ホストコンピュータ100の制御部101に送信されるように構成する。また、このように構成で利用する制御プログラムは、例えば、所要の記憶媒体に格納しておき、使用対象のホストコンピュータの記憶部に読み込ませて格納するか、あるいは、インターネット上の正規のサイト(のウェブサーバーなど)に保管しておき、そのサイトからダウンロードしてホストコンピュータの記憶部にインストールして格納する。
【0147】
このように制御プログラムをホストコンピュータ100に格納して使用する場合は、そのコンピュータ100側で吐出不良ノズルの発生が検出された情報を受けたときに、実行中の記録動作等を中止するとともに補完の処理動作が完了した後にその補完処理された画像データの記録動作等を開始する制御内容をコンピュータ100側から記録装置1、1Bに対して送信することになる。またこの場合、補完処理の動作がホストコンピュータ100の制御部101において実行されることになり、一般にその処理動作を記録装置1側で行う場合に比べて処理時間が長くなることが多いが、このような状況において動作中の記録動作を中止して補完処理動作が完了した後に再開することは、インクと用紙の無用な消費を抑制することができる。
【0148】
また、上記の制御プログラムにおいては、ホストコンピュータ100の表示部103及び操作部104(図4)に、例えば初期設定の設定内容の一部として制御形態を選択する選択画面を表示して使用できる機能を付加してもよい。この場合の選択可能な制御形態は、例えば、第1及び第2の実施形態で説明したような「第一制御モード」及び「第二制御モード」の制御形態や、さらに第一制御モードに関する「第一制御モードA」及び「第一制御モードB」の制御形態が挙げられる。
【0149】
さらに、第1及び第2の実施形態では、記録部2としてライン型の記録ヘッド21を適用したインク吐出記録装置1、1Bについて説明したが、その記録部2としては、図13に示すように、用紙10の搬送方向Aに対しほぼ直交する方向Bに往復移動して記録を行う、いわゆるシリアル型(スキャン型)の記録ヘッド25を使用する記録部2であっても構わない。
【0150】
この記録ヘッド25は、そのヘッド25を支持する支持部材26の一部が、給紙搬送部(記録搬送部)4,40の用紙搬送方向Aに対しほぼ直交する方向に固定して設置される棒状の直線ガイド部材27に移動自在に取り付けられている。また、記録ヘッド25は、その直線ガイド部材27とほぼ平行する状態で図示しない駆動ロール及び従動ロールにかけ回されて記録ヘッド25の移動方向に合わせて両方向に回転する無端状の移動ベルトの一部分に連結されている。これにより、記録ヘッド25は、用紙10の搬送方向Aに対してほぼ直交する移動方向B1及びB2に往復移動するようになっている。
【0151】
また、この記録ヘッド25は、前記4色(Y,M,C,K)のインクを吐出するインクヘッド25(Y,M,C,K)で構成されており、その各ヘッドには用紙10と対向する部位に複数のノズル(22)が配列されたノズル面(25a)が形成されている。各ヘッドのノズルはいずれも、用紙の搬送方向Aに伸びる所定の領域内に複数配列されている。図13の符号6は、記録ヘッド25で記録される吐出不良ノズル検出用パターン(65)を読み取る読取部である。読取部6は、記録ヘッド25のノズル(22)列による記録の結果(特に検出用パターン)を読み取ることができる位置に(状態で)配置される。また、この記録ヘッド25は、記録動作を行わない非記録動作時には、直線ガイド部材27の一端部に設置されるホームポジションに移動して停止している。また、そのホームポジションには、図示しないメンテナンスユニットが設置されている。
【0152】
このようなシリアル型の記録ヘッド25を適用した記録部2における記録動作は、その記録ヘッド25が移動方向A1の一方向に移動するときに行われる場合と、記録ヘッド25が移動方向A1,A2の双方に移動するときに行われる場合がある。また、この記録ヘッド25の移動方向B1及びB2の時期に連動して用紙10が給紙搬送部4(40)によって間欠的に搬送される。
【0153】
記録ヘッド25のインク吐出による記録動作では、記録ヘッド25が用紙10の搬送方向Aの左右側端部のいずれか一方の余白領域に移動した際に、検出用パターン(65)が記録される。検出用パターンは、用紙10の搬送方向Aの先端部又は後端部の余白領域に記録するように構成してもよい。また、記録ヘッド25が用紙10の記録対象領域を移動している際に、通常の画像が記録される。
【0154】
そして、記録ヘッド25の移動に伴い読取部6が検出用パターン上を通過するタイミングで、その検出用パターンを読み取る。この読取りデータは不良ノズル解析検出部(75)に送信され、不良ノズル解析検出部で吐出不良ノズルの発生の有無等に関する検出が行われる。この場合、吐出不良ノズルが発生した検出されると、システム制御部73の制御により記録ヘッド25の実行中の記録動作が停止されるとともに、記録画像処理部74において補完の処理動作が開始される。記録中であった用紙10は、記録動作が途中の状態でもそのまま搬送されて正常に排出される。実行中の記録動作が停止された際は、記録ヘッド25は一旦前記したホームポジションに移動する。
【0155】
その後、補完の処理動作が終了すると、その補完処理された画像データの記録動作が開始される。用紙10の新たな供給動作については、上記の記録動作の停止と連動して停止させるとともに、補完の処理動作が終了した後に再開するように構成してもよい。
【0156】
前記各実施形態等においては、肉眼で色が識別できる有色のインクを液滴として記録ヘッドから吐出させるインク吐出記録装置の構成例について説明したが、記録ヘッドから記録用の画像データに応じて吐出させる液体としては、有色のインクに代えて、例えば、可視光では透明であって紫外線や赤外線を吸収すると視認される液体(例えば透かし記録用液体)や、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)などにおける薄膜を形成するための液体等の有色インク以外の液体を吐出させる液滴吐出装置として構成することも可能である。また、前記記録ヘッドによりインク等の液滴を吐出して記録を行う対象である記録媒体としては、液滴を吐出して所望の内容の記録(形成)が可能なものであれば、その形態、構造等については特に制約されず、用紙以外の物でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】第1の実施形態に係るインク吐出記録装置を示す説明図である。
【図2】図1の記録装置における記録部及び記録搬送部等を示す一部拡大図である。
【図3】図1の記録装置における記録部及び読取部を示す一部透視上面図である。
【図4】制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】記録画像処理部における画像処理の流れを示す説明図である。
【図6】記録動作の基本的な流れを示すフローチャートである。
【図7】吐出不良ノズルの発生を検出したときの制御動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】吐出不良ノズルが発生していない記録ヘッド及びその記録ヘッドによる記録結果を模式的に示す説明図である。
【図9】吐出不良ノズルが発生した記録ヘッド及びその記録ヘッドによる記録結果を模式的に示す説明図である。
【図10】吐出不良ノズルが発生した記録ヘッド及びその記録ヘッドに補完処理の条件を付加して記録を行ったときの記録結果を模式的に示す説明図である。
【図11】第2の実施形態に係るインク吐出記録装置の要部を示す説明図である。
【図12】図11の記録装置における吐出不良ノズルの発生を検出したときの制御動作の流れを示すフローチャートである。
【図13】シリアル型の記録ヘッドを使用する記録部の構成例を示す上面説明図である。
【符号の説明】
【0158】
1,1B…インク吐出記録装置(液滴吐出装置)
3 …給紙収容部(給紙手段)
6 …読取部(検出手段の一部)
10…用紙(記録媒体)
12,103…表示部(選択手段の一部)
13,104…操作部(選択手段の一部)
21,25…記録ヘッド
22…ノズル
22Ax,22Bx…吐出不良ノズル
32…送出装置(給紙手段の一部)
65…吐出不良検出用パターン(検出手段の一部)
73…システム制御部(制御手段)
74…記録画像処理部(スジムラ補正:補完処理手段)
75…不良ノズル解析検出部(検出手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を記録用の画像データに応じて吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの記録動作に連動して吐出不良ノズルの発生の有無を検出する検出手段と、
前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う補完処理手段と、
前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、前記記録ヘッドに送る前記記録用の画像データを空値に切り替えて実行中の記録動作を中止するとともに、前記補完処理手段の処理動作が完了した後に当該補完処理された画像データを送って当該記録ヘッドによる記録動作を新たな記録媒体に対して開始する制御を行う制御手段と
を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの記録動作が行われる位置に記録媒体を供給する供給装置を備え、
前記制御手段は、前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、前記供給手段の新たな供給動作を中止する制御を行う請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記補完処理手段の処理動作が完了した後に、前記給紙手段の給紙動作を再開する制御を行う請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドの記録動作が行われる位置に記録媒体を供給する供給装置を備え、
前記制御手段は、前記検出手段が吐出不良ノズルの発生を検出したときに、前記供給装置の要求されている一連の供給動作のうちの残りの供給動作を続行する制御を行う請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記記録ヘッドの補完処理された画像データの記録動作を開始するまで、当該記録ヘッドにおける吐出不良ノズルの発生を抑制するための特別の液滴吐出動作を当該記録ヘッドにて実行する制御を行う請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記特別の液滴吐出動作として吐出不良検出パターンを記録する動作を実行する制御を行う請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記記録ヘッドの記録動作により記録媒体に吐出不良検出パターンを記録し、その記録結果から吐出不良ノズルの発生を検出するものであり、
当該検出手段が、前記特別の液滴吐出動作として記録する吐出不良検出パターンを使用して吐出不良ノズルの発生を検出する請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記制御手段を動作させる使用形態とそれを動作させない使用形態とを選択する選択手段を有する請求項1〜7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記選択手段は、前記制御手段を動作させる使用形態を選択した場合、前記特別の液滴吐出動作を行わずに前記給紙手段の給紙動作を続行する使用形態と、前記特別の液滴吐出動作を行いつつ前記給紙手段の給紙動作を続行する使用形態とを選択する選択パターンを有する請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
記録媒体に液滴を記録用の画像データに応じて吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドにより記録を行い、その記録ヘッドの記録動作に連動して吐出不良ノズルの発生の有無を検出する機能を備えた液滴吐出装置に使用される記録用入力データを処理する第一機能と、
前記記録ヘッドに吐出不良ノズルが発生した検出結果の情報を受けたときに、その吐出不良ノズルによる記録不良を補完する処理を行う第二機能と、
前記記録ヘッドに吐出不良ノズルが発生した検出結果の情報を受けたときに、当該記録ヘッドに送る前記記録用の画像データを空値に切り替えて実行中の記録動作を中止するとともに、その補完処理の動作が完了した後に当該補完処理された画像データを送って当該記録ヘッドによる記録動作を新たな記録媒体に対して開始する制御処理を行う第三機能とを有し、
前記第一機能、第二機能及び第三機能がコンピュータの処理により実現されることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
前記第三機能を実行させる使用形態とそれを実行させない使用形態とを選択する選択動作を発生させる制御処理を行う第四機能を有する請求項10に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−76190(P2010−76190A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245803(P2008−245803)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】