説明

液滴吐出装置

【課題】所望の位置に液滴を塗布させ、生産性を向上させるとともに、高精細なパターン膜を形成する液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】第1方向に向けて開口した第1開口部と第2方向に向けて開口した第2開口部とを有するノズル孔と、前記ノズル孔に対応して設けられ、前記ノズル孔から液滴を吐出させるために動作する素子と、前記第1開口部においてメニスカスを形成するとともに、前記第1開口部で前記液滴を吐出させる第1吐出パルスと、前記第2開口部においてメニスカスを形成するとともに、前記第2開口部で前記液滴を吐出させる第2吐出パルスと、を含む駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記液滴を前記第1方向に吐出させる指令に基づいて、前記素子に対して前記第1吐出パルスを印加し、前記液滴を前記第2方向に吐出させる指令に基づいて、前記素子に対して前記第2吐出パルスを印加する印加制御部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カラーフィルター等の製造では、基板上にパターン膜等を形成する装置として、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置が用いられる。このような液滴吐出装置では、より高精細なパターン膜を形成するため、基板に対して液滴吐出ヘッドを傾け、走査方向に対して液滴吐出ヘッドのノズル孔のピッチが狭くなる状態で走査しながら液滴を吐出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−300664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、液滴吐出ヘッドの傾き調整が困難であり、また、複数回の走査が必要であるため、生産性が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる液滴吐出装置は、第1方向に向けて開口した第1開口部と第2方向に向けて開口した第2開口部とを有するノズル孔と、前記ノズル孔に対応して設けられ、前記ノズル孔から液滴を吐出させるために動作する素子と、前記第1開口部においてメニスカスを形成するとともに、前記第1開口部で前記液滴を吐出させる第1吐出パルスと、前記第2開口部においてメニスカスを形成するとともに、前記第2開口部で前記液滴を吐出させる第2吐出パルスと、を含む駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記液滴を前記第1方向に吐出させる指令に基づいて、前記素子に対して前記第1吐出パルスを印加し、前記液滴を前記第2方向に吐出させる指令に基づいて、前記素子に対して前記第2吐出パルスを印加する印加制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1開口部においてメニスカスが形成された状態で第1吐出パルスを印加させることにより第1方向に向けて液滴が吐出される。また、第2開口部においてメニスカスが形成された状態で第2吐出パルスを印加させることにより第2方向に向けて液滴が吐出される。換言すれば、一のノズル孔において複数のメニスカスの形成が可能となり、複数の方向に液滴を吐出させることが可能となる。従って、液滴の吐出方向を制御して、所望の位置に機能液を塗布させることができる。特に、例えば、カラーフィルターの製造に適用する場合において、液滴吐出ヘッドの傾き調整等が不要となり、また、より多くのノズル孔から液滴吐出することが可能となるため、生産性を向上させるとともに、高精細なカラーフィルターを製造することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる液滴吐出装置では、前記ノズル孔の前記第1及び第2開口部の壁面が、断面視において直線形状であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ノズル孔は、第1及び第2開口部の壁面が直線形状である。換言すれば、ノズル孔は複数のストレート部を有する。このため、各開口部において容易にメニスカスを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】液滴吐出装置の制御ブロック図。
【図4】ヘッド制御部の制御ブロック図。
【図5】駆動信号及びスイッチ制御情報を示す説明図。
【図6】液滴吐出動作を示す説明図。
【図7】液滴吐出動作を示す説明図。
【図8】液滴吐出動作を示す説明図。
【図9】カラーフィルターの製造に適用した場合の説明図。
【図10】変形例にかかるノズル孔の形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【0012】
(液滴吐出装置の構成)
まず、液滴吐出装置の構成について説明する。図1は、液滴吐出装置の構成を示す斜視図である。図1に示すように、液滴吐出装置1には、直方体形状に形成される基台2が備えられている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0013】
基台2の上面2aには、Y方向に延びる一対の案内レール3a,3bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a,3bに対応する図示しない直動機構を備えた走査手段を構成するテーブル及びワーク移動テーブルとしてのステージ4が取り付けられている。そのステージ4の直動機構は、例えば案内レール3a,3bに沿ってY方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するY軸モーター(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モーターに入力されると、Y軸モーターが正転又は逆転して、ステージ4が同ステップ数に相当する分だけ、Y軸方向に沿って所定の速度で往動又は、復動する(Y方向に走査する)ようになっている。
【0014】
さらに、基台2の上面2aには、案内レール3a,3bと平行に主走査位置検出装置5が配置され、ステージ4の位置が計測できるようになっている。
【0015】
そのステージ4の上面には、載置面6が形成され、その載置面6には、図示しない吸引式の基材チャック機構が設けられている。そして、載置面6に基材7を載置すると、基材チャック機構によって、その基材7が載置面6の所定位置に位置決め固定されるようになっている。
【0016】
基台2のX方向両側には、一対の支持台8a,8bが立設され、その一対の支持台8a,8bには、X方向に延びる案内部材9が架設されている。案内部材9は、その長手方向の幅がステージ4のX方向よりも長く形成され、その一端が支持台8a側に張り出すように配置されている。案内部材9の上側には、吐出する液体を供給可能に収容する収容タンク10が配設されている。一方、その案内部材9の下側には、X方向に延びる案内レール11がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0017】
案内レール11に沿って移動可能に配置されるキャリッジ12は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ12の直動機構は、例えば案内レール11に沿ってX方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するX軸モーター(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をX軸モーターに入力すると、X軸モーターが正転又は逆転して、キャリッジ12が同ステップ数に相当する分だけX方向に沿って往動又は復動する(X方向に走査する)。案内部材9とキャリッジ12との間には、副走査位置検出装置13が配置され、キャリッジ12の位置が計測できるようになっている。そして、キャリッジ12の下面(ステージ4側の面)には、ヘッドユニット14が設置されている。ヘッドユニット14は、機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド14aと、液滴吐出ヘッド14aに対して駆動パルスを印加する印加制御部としてのヘッド制御部14bとを備えている。
【0018】
基台2の片側の一方(図中X方向の逆方向)には、保守用基台15が配置されている。保守用基台15の上面15aには、Y方向に延びる一対の案内レール16a,16bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その保守用基台15の上側には、一対の案内レール16a,16bに対応する図示しない直動機構を備えた移動手段を構成する保守ステージ17が取り付けられている。その保守ステージ17の直動機構は、例えばステージ4と同様の直動機構であり、Y方向に沿って往動又は、復動するようになっている。
【0019】
保守ステージ17の上には、メンテナンス部21が配置されている。メンテナンス部21は、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19及びワイピングユニット20を備えている。フラッシングユニット18は、液滴吐出ヘッド14aのノズル部における機能液の乾燥(増粘)を防止するために機能液を空吐出させるためのものである。キャッピングユニット19は、液滴吐出ヘッド14aのノズル部が目詰まりした際にノズル部から機能液を強制的に吸引して、機能液を排出させるものである。ワイピングユニット20は、液滴吐出ヘッド14aのノズルプレート115の面を拭く装置である。
【0020】
保守用基台15と基台2との間には、重量測定装置22が配置されている。重量測定装置22には、電子天秤が設置され、電子天秤には、受け皿が配置されている。液滴が、液滴吐出ヘッド14から受け皿に吐出され、電子天秤が液滴の重量を測定するようになっている。受け皿は、スポンジ状の吸収体を備え、吐出される液滴が、跳ねて、受け皿の外に出ないようになっている。電子天秤は、液滴吐出ヘッド14が液滴を吐出する前後で、受け皿の重量を測定し、吐出前後の受け皿の重量の差分を測定している。
【0021】
キャリッジ12が、案内レール11に沿って、X方向に移動することにより、ヘッドユニット14は、メンテナンス部21、重量測定装置22、基材7と対向する場所に移動することができるように構成されている。
【0022】
(液滴吐出ヘッドの構成)
図2は、液滴吐出ヘッドの構成を示し、同図(a)は断面図であり、同図(b)は一部拡大図である。図2(a)に示すように、液滴吐出ヘッド14aは、複数のノズル孔120を有するノズルプレート115と、各ノズル孔120に対応して設けられ、ノズル孔120から液滴を吐出させるために動作する素子としての圧電素子113等を備えている。さらに詳細には、各ノズル孔120と相対する位置には、各ノズル孔120と連通するキャビティ111が形成されている。そして、収容タンク10から機能液が供給されるように構成されている。当該キャビティ111の上側(Z軸方向)には、上下方向(Z方向:縦振動)に振動して、キャビティ111内の容積を拡大縮小する振動板114と、上下方向に伸縮して振動板114を振動させる圧電素子113が配設されている。そして、制御部から圧電素子113を駆動するための駆動信号を受けると、圧電素子113が伸張して、振動板114がキャビティ111内の容積を縮小する。その結果、ノズル孔120から機能液が液滴として吐出される。なお、液滴吐出ヘッド14aに適用される素子としては、本実施形態のおける縦振動型の圧電素子113の他に、撓み変形型の圧電素子を用いてもよい。また、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液を液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであってもよい。
【0023】
次に、ノズル孔120の構成について説明する。図2(b)に示すように、ノズル孔120は、第1方向D1に向けて開口した第1開口部120aと第2方向D2に向けて開口した第2開口部120bを有する。本実施形態では、さらに、第3方向D3に向けて開口した第3開口部120cを有する。また、各第1〜第3方向D1〜D3のそれぞれの方向が異なっており、本実施形態では、第1方向D1は、Z軸(負)方向(重力方向)であり、第2方向D2は、第1方向D1から角度θ1を有した方向であり、第3方向D3は、第1方向D1から角度θ1とは反対方向に角度θ2を有した方向である。なお、第2及び第3方向D2,D3の角度θ1、θ2は、任意に設定可能である。例えば、第1方向D1(重力方向)を基準として0〜45°の範囲で設定することができる。また、第1方向D1に向けて開口した第1開口部120aの壁部130aは、図2(b)に示すように、断面視において直線形状である。同様にして、第2及び第3開口部120b,120cの壁部130b,130cも断面視において直線形状を有している。すなわち、ノズル孔120は、複数の方向に開口した第1〜第3開口部120a〜120cを有するとともに、複数の直線形状からなる壁部130a〜130cを有している。このようなノズル孔120を備えたノズルプレート115は、例えば、第1方向D1に向けて開口した第1開口部120aを有する第1ノズルプレート115aと、第2方向D2に向けて開口した第2開口部120bを有する第2ノズルプレート115bと、第3方向D3に向けて開口した第3開口部120cを有する第3ノズルプレート115cと、を積層するとともに、各第1〜第3ノズルプレート115a〜115cを接着することにより形成することができる。
【0024】
(液滴吐出装置の電気制御の構成)
図3は、液滴吐出装置の制御ブロック図である。図3において、液滴吐出装置1はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(演算処理装置)40と、各種情報を記憶するメモリー41を有する。
【0025】
主走査駆動装置42、副走査駆動装置43、主走査位置検出装置5、副走査位置検出装置13、ヘッドユニット14は、入出力インターフェース45およびバス46を介してCPU40に接続されている。さらに、入力装置47、ディスプレイ48、重量測定装置22を構成する電子天秤49、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20も入出力インターフェース45およびバス46を介してCPU40に接続されている。
【0026】
主走査駆動装置42は、ステージ4の移動を制御する装置であり、移動部としての副走査駆動装置43は、キャリッジ12の移動を制御する装置である。主走査位置検出装置5が、ステージ4の位置を認識し、主走査駆動装置42が、ステージ4の移動を制御することにより、ステージ4を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。同じく、副走査位置検出装置13が、キャリッジ12の位置を認識し、副走査駆動装置43が、キャリッジ12の移動を制御することにより、キャリッジ12を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。
【0027】
入力装置47は、液滴を吐出する各種加工条件を入力する装置であり、例えば、基材7に液滴を吐出する座標を図示しない外部装置から受信し、入力する装置である。ディスプレイ48は、加工条件や、作業状況を表示する装置であり、操作者は、ディスプレイ48に表示される情報を基に、入力装置47を用いて操作を行う。
【0028】
電子天秤49は、液滴吐出ヘッド14aが吐出する液滴を受ける、受け皿の重量を測定する装置である。液滴が吐出される前後の受け皿の重量を測定して、測定値をCPU40に送信する。図1に示す重量測定装置22は、受け皿と電子天秤49などから構成される。
【0029】
メモリー41は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト51を記憶する記憶領域や、基材7内における吐出位置の座標データである吐出位置データ52を記憶するための記憶領域が設定される。さらに、基材7を主走査方向(Y方向)へ移動する主走査移動量と、キャリッジ12を副走査方向(X方向)へ移動する副走査移動量とを記憶するための記憶領域や、CPU40のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0030】
CPU40は、メモリー41内に記憶されたプログラムソフト51にしたがって、基材7における表面の所定位置に機能液を液滴吐出するための制御を行うものである。
【0031】
CPU40は、例えば、液滴吐出ヘッド14aを液滴吐出のための初期位置へセットするための吐出開始位置を演算したり、基材7を主走査方向(Y方向)へ所定の速度で走査移動させるための制御を演算したり、液滴吐出ヘッド14aを副走査方向(X方向)へ所定の副走査量で移動させるための制御を演算したり、液滴吐出ヘッド14a内の複数あるノズルのうちのいずれを作動させて機能液を吐出するかを制御するための演算を行う。
【0032】
次に、ヘッド制御部14bの構成について説明する。図4は、ヘッド制御部の構成を示すブロック図である。ヘッド制御部14bは、液滴を第1方向D1に吐出させる指令に基づいて、素子としての圧電素子113に対して第1吐出パルスを印加させ、液滴を第2方向D2に吐出させる指令に基づいて、素子としての圧電素子113に対して第2吐出パルスを印加させるものである。なお、本実施形態のヘッド制御部14bでは、さらに、液滴を第3方向D3に吐出させる指令に基づいて、素子としての圧電素子113に対して第3吐出パルスを印加させるものである。すなわち、ヘッド制御部14bは、液滴吐出動作時において、ドット形成データに含まれる吐出方向データ(SI)に基づいて、駆動信号生成部70において生成された駆動信号(COM)における必要な部分を選択して圧電素子113に印加させている。
【0033】
図4に示すように、ヘッド制御部14bは、シフトレジスター(SR)141と、ラッチ回路(LAT)142と、デコーダー143と、スイッチ(SW)144と、制御ロジック145とを有する。そして、これらの中で、制御ロジック145を除いた各部は、各圧電素子113に対応して設けられている。
【0034】
ヘッド制御部14bの制御は、次のように行われる。まず、シフトレジスター141には、吐出方向データ(SI)がクロック信号(CLK)に同調してセットされる。そして、 ラッチ回路142は、シフトレジスター141にセットされたデータをラッチする。ラッチされたデータは、デコーダー143へ入力される。
【0035】
制御ロジック145は、スイッチ144の制御に用いられるスイッチ制御情報q0〜q3を記憶する。スイッチ制御情報q0〜q3は、スイッチ144を動作させる際に用いられる。デコーダー143は、制御ロジック145から出力されるスイッチ制御情報q0〜q3の中から、必要なスイッチ制御情報q0〜q3を吐出方向データSIに応じて選択し、スイッチ144に出力する。例えば、デコーダー143は、「吐出なし」に対応する吐出方向データSIに対応して、スイッチ制御情報q0を選択する。そして、スイッチ制御情報q0をスイッチ144に出力する。また、デコーダー143は、「第1方向吐出」に対応する吐出方向データSIに対応して、スイッチ制御情報q1を選択する。そして、スイッチ制御情報q1をスイッチ144に出力する。また、デコーダー143は、「第2方向吐出」に対応する吐出方向データSIに対応して、スイッチ制御情報q2を選択する。そして、スイッチ制御情報q2をスイッチ144に出力する。また、デコーダー143は、「第3方向吐出」に対応する吐出方向データSIに対応して、スイッチ制御情報q3を選択する。そして、スイッチ制御情報q3をスイッチ144に出力する。
【0036】
スイッチ144は、駆動信号COMの圧電素子113への印加を制御する。本実施形態におけるスイッチ144は、アナログスイッチによって構成されている。そして、入力されたスイッチ制御情報(デコーダー143で選択された後のスイッチ制御情報)がHレベルの場合にオン状態となり、入力されたスイッチ制御情報がLレベルの場合にオフ状態となる。そして、スイッチ144は、オン状態の期間に亘って対応する駆動信号を圧電素子113に印加する。また、オフ状態の期間に亘って対応する駆動信号を遮断する。
【0037】
次に、駆動信号生成部70について説明する。駆動信号生成部70は、第1開口部120aにおいてメニスカスを形成するとともに、第1開口部120aで液滴を吐出させる第1吐出パルスPS1と、第2開口部120bにおいてメニスカスを形成するとともに、第2開口部120bで液滴を吐出させる第2吐出パルスPS2と、を含む駆動信号COMを生成する。なお、本実施形態の駆動信号生成部では、さらに、第3開口部120cにおいてメニスカスを形成するとともに、第3開口部120cで液滴を吐出させる第3吐出パルスPS3と、を含む駆動信号COMを生成する。
【0038】
図5は、駆動信号及びスイッチ制御情報を示す説明図である。図5(a)に示すように、駆動信号COMは、繰り返し単位でもある吐出期間T毎に繰り返し生成される。本実施形態における駆動信号COMは3つの吐出パルス(PS1〜PS3)を含む。ここで、吐出パルスとは、圧電素子113に所定の動作をさせるためのパルスを含むものである。
【0039】
駆動信号COMは、期間T11内に生成される第1吐出パルスPS1と、期間T12内に生成される第2吐出パルスPS2と、期間T13内に生成される第3吐出パルスPS3とを含んで構成されている。これらの第1〜第3吐出パルスPS1〜PS3はいずれも、圧電素子113に液滴を吐出させるための所定の動作を行わせる。本実施形態では、液滴の吐出方向に応じて圧電素子113に印加する吐出パルスを特定している。具体的には、第1方向D1への吐出指令としての吐出方向データ(SI)に対応して、第1吐出パルスPS1を圧電素子113に印加する。これにより、第1方向D1に液滴が吐出される。また、第2方向D2への吐出指令としての吐出方向データ(SI)に対応して、第2吐出パルスPS2を圧電素子113に印加する。これにより、第2方向D2に液滴が吐出される。第3方向D3への吐出指令としての吐出方向データ(SI)に対応して、第3吐出パルスPS3を圧電素子113に印加する。これにより、第3方向D3に液滴が吐出される。
【0040】
第1〜第3吐出パルスPS1〜PS3の圧電素子113への印加は、各期間T11〜T13を単位とするスイッチ144のオン・オフ制御によって行われる。すなわち、第1吐出パルスPS1の印加は、期間T11に亘ってスイッチ144をオン状態にすることでなされ、第2吐出パルスPS2の印加は、期間T12に亘ってスイッチ144をオン状態にすることでなされ、第3吐出パルスPS3の印加は、期間T13に亘ってスイッチ144をオン状態にすることでなされる。
【0041】
前述したように、スイッチ144の制御は、スイッチ制御情報q0〜q3によってなされる。スイッチ制御情報q0〜q3のうち、スイッチ制御情報q0は、吐出なしの吐出方向データ(SI)に対するスイッチ144の制御パターンを示し、スイッチ制御情報q1は、第1方向D1への吐出方向データ(SI)に対するスイッチ144の制御パターンを示し、スイッチ制御情報q2は、第2方向D2への吐出方向データ(SI)に対するスイッチ144の制御パターンを示し、スイッチ制御情報q3は、第3方向D3への吐出方向データ(SI)に対するスイッチ144の制御パターンを示す。これらのスイッチ制御情報q0〜q3は、いずれも3ビットのデジタルデータで構成されている。そして、3ビットのうち最上位ビットは、期間T11におけるスイッチ144のオン・オフ状態を示し、中間のビットは、期間T12におけるスイッチ144のオン・オフ状態を示し、最下位ビットは、期間T13におけるスイッチ144のオン・オフ状態を示す。そして、各ビットには、オン状態を示すデータ[1]か、オフ状態を示すデータ[0]が与えられる。
【0042】
図5(b)に示すように、吐出なしの指令の場合、第1〜第3吐出パルスPS1〜PS3のいずれにも圧電素子113へは印加されない。従って、スイッチ制御情報q0はデータ[000]とされる。この場合、いずれの期間T11〜T13においても、スイッチ144はオフ状態となる。第1方向D1への吐出指令の場合、第1吐出パルスPS1が圧電素子113に印加される。このため、対応するスイッチ制御情報q1はデータ[100]とされる。これにより、期間T11に亘って駆動信号COMが圧電素子113に印加される。第2方向D2への吐出指令の場合、第2吐出パルスPS2が圧電素子113に印加される。このため、対応するスイッチ制御情報q2はデータ[010]とされる。これにより、期間T12に亘って駆動信号COMが圧電素子113に印加される。第3方向D3への吐出指令の場合、第3吐出パルスPS3が圧電素子113に印加される。このため、対応するスイッチ制御情報q3はデータ[001]とされる。これにより、期間T13に亘って駆動信号COMが圧電素子113に印加される。
【0043】
次に、液滴の吐出動作について説明する。図6〜図8は、液滴の吐出動作を示す説明図である。図6は、第1吐出パルスPS1の印加による吐出動作を示している。図6(a)は、第1吐出パルスPS1における電圧変化パターンを示し、図6(b)〜図6(e)は、液滴の吐出動作を示している。
【0044】
図6(a)において、符号VCは待機状態の電位(中間電位)、VHは充電状態の電位(高電位)、VLは放電状態の電位(低電位)を示している。そして、符号t1は、待機状態から充電状態までの期間であり、t2は充電状態を保持する期間であり、t3は充電状態から放電状態までの期間を示している。
【0045】
そして、待機状態では、図6(b)に示すように、ノズル孔120のノズルプレート115の面の付近においてメニスカス(機能液の液面)が形成される。待機状態から充電状態までの期間t1では、キャビティ111の容積が増大する。これにより、メニスカスがZ軸方向に移動する。そして、図6(c)に示すように、ノズル孔120の第1開口部120aにおいてメニスカスが形成される。充電状態から放電状態までの期間t3では、キャビティ111の容積が減少する。これにより、図6(d),(e)に示すように、ノズル孔120の第1開口部120aにおいて液滴121が吐出される。ここで、第1開口部120aにおいて吐出された液滴121は第1方向D1に吐出される。本実施形態では、Z軸(負)方向に開口された第1開口部120aから、Z軸(負)方向に向けて液滴121が吐出される。
【0046】
図7は、第2吐出パルスPS2の印加による吐出動作を示している。図7(a)は、第2吐出パルスPS2における電圧変化パターンを示し、図7(b)〜図7(e)は、液滴の吐出動作を示している。図7(a)において、待機状態の電位(中間電位)、充電状態の電位(高電位)、放電状態の電位(低電位)及び期間t1〜t3における待機状態、充電状態、放電状態の説明については、図6と同様なので説明を省略する。
【0047】
待機状態では、図7(b)に示すように、ノズル孔120のノズルプレート115の面の付近においてメニスカス(機能液の液面)が形成される。待機状態から充電状態までの期間t1では、キャビティ111の容積が増大する。これにより、メニスカスがZ軸方向に移動する。そして、図7(c)に示すように、ノズル孔120の第2開口部120bにおいてメニスカスが形成される。充電状態から放電状態までの期間t3では、キャビティ111の容積が減少する。これにより、図7(d),(e)に示すように、ノズル孔120の第2開口部120bにおいて液滴121が吐出される。ここで、第2開口部120bにおいて吐出された液滴121は第2方向D2に吐出される。本実施形態では、Z軸(負)成分方向であってX軸(負)成分方向に開口された第2開口部120bから、Z軸(負)成分方向であってX軸(負)成分方向に向けて液滴121が吐出される。
【0048】
図8は、第3吐出パルスPS3の印加による吐出動作を示している。図8(a)は、第3吐出パルスPS3における電圧変化パターンを示し、図8(b)〜図8(e)は、液滴の吐出動作を示している。図8(a)において、待機状態の電位(中間電位)、充電状態の電位(高電位)、放電状態の電位(低電位)及び期間t1〜t3における待機状態、充電状態、放電状態の説明については、図6と同様なので説明を省略する。
【0049】
待機状態では、図8(b)に示すように、ノズル孔120のノズルプレート115の面の付近においてメニスカス(機能液の液面)が形成される。待機状態から充電状態までの期間t1では、キャビティ111の容積が増大する。これにより、メニスカスがZ軸方向に移動する。そして、図8(c)に示すように、ノズル孔120の第3開口部120cにおいてメニスカスが形成される。充電状態から放電状態までの期間t3では、キャビティ111の容積が減少する。これにより、図8(d),(e)に示すように、ノズル孔120の第3開口部120cにおいて液滴121が吐出される。ここで、第3開口部120cにおいて吐出された液滴121は第3方向D3に吐出される。本実施形態では、Z軸(負)成分方向であってX軸(正)成分方向に開口された第3開口部120cから、Z軸(負)成分方向であってX軸(正)成分方向に向けて液滴121が吐出される。
【0050】
以上のように、図6〜図8によれば、各第1〜第3吐出パルスPS1〜PS3毎に異なった中間電位VCと高電位VHとの差(VHC)を設けることにより、ノズル孔120の各第1〜第3開口部120a〜120cの位置に合わせて、メニスカスの移動量を設定させることができる。本実施形態では、ノズルプレート115の面から、第3開口部120c、第2開口部120b、第1開口部120aの順で距離が離れる(長くなる)。すなわち、第1開口部120aでは最も機能液を大きく引き込む必要がある。そこで、第3開口部120c、第2開口部120b、第1開口部120aに対応する順に中間電位VCと高電位VHとの差(VHC)の差を大きく設けている。
【0051】
次に、上記のヘッドユニット14を備えた液滴吐出装置1を用いて、パターン膜形成部材の製造方法に適用した例について説明する。図9は、パターン膜形成部材に適用した例を示した説明図である。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのカラーフィルターの製造方法に適用した例について説明する。
【0052】
カラーフィルターの製造方法は、例えば、基板100上に形成された区画部101(ブラックマトリクス)によって区画された区画領域102内に、色素膜の材料を含む機能液を液滴として吐出し、機能液を基板100上に塗布する。そして、塗布された機能液を固化することによりカラーフィルター110が形成される。
【0053】
そこで、まず、図9(a)に示すように、基板100をステージ4の載置面6に載置する。また、ヘッドユニット14と基板100とが対向する位置に移動させる。そして、ノズル孔120毎に液滴の吐出方向を制御する。具体的には、第1開口部120aにおいてメニスカスを形成するとともに、第1開口部120aで液滴Dを吐出させる第1吐出パルスPS1と、第2開口部120bで液滴Dを吐出させる第2吐出パルスPS2と、第3開口部120cで液滴Dを吐出させる第3吐出パルスPS3と、を含む駆動信号COMが形成され、ノズル孔120のうち、ノズル孔120−Qには、液滴121を第1方向D1に吐出させる指令に基づいて圧電素子113に第1吐出パルスPS1を印加させ、ノズル孔120−Rには、液滴121を第2方向D2に吐出させる指令に基づいて圧電素子113に第2吐出パルスPS2を印加させ、ノズル孔120−Sには、液滴121を第3方向D3に吐出させる指令に基づいて圧電素子113に第3吐出パルスPS3を印加させる。
【0054】
そして、図9(b)に示すように、ノズル孔120−Qからは、第1方向D1に向けて液滴121が吐出される。ノズル孔120−Rからは、第2方向D2に向けて液滴121が吐出される。ノズル孔120−Sからは、第3方向D3に向けて液滴121が吐出される。吐出された液滴121は区画領域102内に着弾する。また、液滴121の吐出方向は、区画領域102の中央部に向けられているため、液滴121も区画領域102の中央部に着弾する。このため、液滴121が区画部101上への乗り上げが抑制される。すなわち、隣接する区画領域102に塗布された機能液同士が接触することがない。従って、不均一なパターン形状の形成を防止することができる。また、混色を防止することができる。さらに、液滴121は、吐出制御によって吐出方向が制御されるため、より多くのノズル孔120から液滴121の吐出が可能となり、生産性を向上させることができる。
【0055】
次に、塗布された機能液121’を固化することによりパターン膜としての色素膜105が形成される。このようにして、カラーフィルター110が形成される。
【0056】
なお、上記の実施形態では、パターン膜形成部材としてのカラーフィルター110の製造方法に適用したが、これに限定されない。例えば、他のパターン膜形成部材として、有機EL、金属配線等にも適宜適用することができる。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0057】
従って、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0058】
ノズル孔120に、第1方向D1に向けて開口した第1開口部120aと、第2方向D2に向けて開口した第2開口部120bと、第3方向D3に向けて開口した第3開口部120cと、を設け、第1〜第3方向D1〜D3に応じて、駆動信号COMに含まれる第1〜第3吐出パルスPS1〜PS3を圧電素子113に印加させた。第1吐出パルスPS1を印加させた場合、第1方向D1に向けて開口した第1開口部120aにおいてメニスカスを形成させるとともに、第1開口部120aで液滴121が吐出される。これにより、第1方向D1に向けて液滴121を吐出させることができる。第2吐出パルスPS2を印加させた場合、第2方向D2に向けて開口した第2開口部120bにおいてメニスカスを形成させるとともに、第2開口部120bで液滴121が吐出される。これにより、第2方向D2に向けて液滴121を吐出させることができる。第3吐出パルスPS3を印加させた場合、第3方向D3に向けて開口した第3開口部120cにおいてメニスカスを形成させるとともに、第3開口部120cで液滴121が吐出される。これにより、第3方向D3に向けて液滴121を吐出させることができる。このように、液滴Dの吐出方向が制御され、所望の位置に機能液を塗布させることができる。さらに、このようなヘッドユニット14を備えた液滴吐出装置1を用いて、例えば、カラーフィルターの製造に用いた場合には、各ノズル孔120から吐出される液滴121の吐出方向が制御されるため、確実に区画領域102内に液滴121を吐出することができる。これにより、区画部101上への機能液の塗布が低減し、隣接する区画領域102内に塗布された機能液の接触がなくなり、混色を防止することができる。
【0059】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0060】
(変形例)上記実施形態では、一のノズル孔120に、第1〜第3方向D1〜D3に対応して、3つの開口部(第1〜第3開口部120a〜120c)を設けたが、これに限定されない。例えば、図10(a)〜(c)に示すように、一のノズル孔120において、2つの開口部を備えたものであってもよい。このようにしても、それぞれことなる2方向に液滴121を吐出することが可能となり、所望の箇所に機能液を塗布させることができる。また、図10(d)に示すように、第1〜第3方向D1〜D3に対応する開口部(第1〜第3開口部120a〜120c)の配置位置が異なってもよい。この場合、各開口部の位置に対応して、圧電素子113に吐出パルスを印加させればよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…液滴吐出装置、14…ヘッドユニット、14a…液滴吐出ヘッド、14b…印加制御部としてのヘッド制御部、40…CPU、41…メモリー、70…駆動信号生成部、113…圧電素子、115…ノズルプレート、120…ノズル孔、120a…第1開口部、120b…第2開口部、120c…第3開口部、121…液滴、130a〜130c…壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に向けて開口した第1開口部と第2方向に向けて開口した第2開口部とを有するノズル孔と、
前記ノズル孔に対応して設けられ、前記ノズル孔から液滴を吐出させるために動作する素子と、
前記第1開口部においてメニスカスを形成するとともに、前記第1開口部で前記液滴を吐出させる第1吐出パルスと、前記第2開口部においてメニスカスを形成するとともに、前記第2開口部で前記液滴を吐出させる第2吐出パルスと、を含む駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記液滴を前記第1方向に吐出させる指令に基づいて、前記素子に対して前記第1吐出パルスを印加し、前記液滴を前記第2方向に吐出させる指令に基づいて、前記素子に対して前記第2吐出パルスを印加する印加制御部と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ノズル孔の前記第1及び第2開口部の壁面は、断面視において直線形状であることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−191360(P2011−191360A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55444(P2010−55444)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】