説明

液滴吐出装置

【課題】液体の攪拌効率に優れ、組成のばらつきの少ない液体を吐出する液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る液滴吐出装置の態様の1つは、液体が収容され、該液体を流出させる第1容器と、前記第1容器から流出した前記液体が流入する第2容器と、前記第2容器から流出した前記液体が流入し、該液体を吐出するヘッドと、前記第2容器および前記ヘッドを搭載し、第1方向および該第1方向と交差する第2方向に沿って移動するキャリッジと、前記第2容器内部に配置され、前記キャリッジの移動にともなって、前記第2容器内を移動する攪拌子と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを収容するインクタンクから、インクを吐出するヘッドにインクを供給して、該ヘッドからインクを吐出する液滴吐出装置が知られている。また最近では、インクタンクおよびヘッドといった構成の他に、サブタンクと称する容器を備えた液滴吐出装置が提案されている。例えば、特許文献1には、台板上に固定されたサブインクタンクと、ヘッドと、をインクチューブによって接続して、ヘッドにインクを供給する記録装置が開示されている。また、特許文献2には、顔料を含むインクが収容されたインクカートリッジと、プリントヘッドと、をインク流路によって接続して、インク流路内に常に一定量のインクを保持させるようにしたサブタンクを備えたインク供給システムが記載されている。
【0003】
一方、液滴吐出装置に用いられるインクは、沈降し得る成分を含有する場合がある。このようなインクを用いると、沈降し得る成分がインク流路等で沈降して、成分組成のばらついたインクがヘッドに供給される場合がある。このようなインクがヘッドに供給されると、例えば、ヘッドの吐出不良や記録濃度のムラなどを生じることがあった。
【0004】
そのため、例えば、特許文献2には、サブタンクの内部に設けられた攪拌子等によってインクを攪拌し、これによってインクに含まれる顔料等の成分の沈降を抑制することができる等の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−225255号公報
【特許文献2】特開2006−272648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来の技術では、サブタンクと称する容器の内部に設けられた攪拌子を効率的に移動させることができず、サブタンクの内部においてインクを十分に攪拌することができない場合があった。
【0007】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の1つは、液体の攪拌効率に優れ、組成のばらつきの少ない液体を吐出する液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明に係る液滴吐出装置の態様の1つは、
液体が収容され、該液体を流出させる第1容器と、
前記第1容器から流出した前記液体が流入する第2容器と、
前記第2容器から流出した前記液体が流入し、該液体を吐出するヘッドと、
前記第2容器および前記ヘッドを搭載し、第1方向および該第1方向と交差する第2方向に移動するキャリッジと、
前記第2容器内部に配置され、前記キャリッジの移動にともなって、前記第2容器内を移動する攪拌子と、
を有する。
【0010】
適用例1に記載の液滴吐出装置によれば、攪拌子が第2容器内の第1方向および第2方向に移動できるので、第2容器内の液体の攪拌効率を向上できる。これにより、ヘッドに十分に攪拌された液体を供給することができるので、ヘッドは、組成のばらつきの少ない液体を吐出することができる。
【0011】
[適用例2]
適用例1において、
前記第2容器内における前記攪拌子の第1方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第1方向の長さの0.5倍以上であり、
前記第2容器内における前記攪拌子の第2方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第2方向の長さの0.5倍以上である。
【0012】
適用例2に記載の液滴吐出装置によれば、攪拌子が第2容器内の第1方向および第2方向のいずれの方向にも一層移動しやすくなるので、第2容器内の液体の攪拌効率をさらに向上できる。
【0013】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第2容器内における前記攪拌子の第1方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第1方向の長さの0.6倍以上であり、
前記第2容器内における前記攪拌子の第2方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第2方向の長さの0.6倍以上であることができる。
【0014】
適用例3に記載の液滴吐出装置によれば、攪拌子の可動距離を十分に確保できるので、キャリッジの移動を有効に利用して、第2容器内の液体をより一層効率的に攪拌することができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第2容器の内部空間は、水平面で切った際に円または楕円の断面を生じる形状を有し、かつ、前記第2容器の内壁面は、鉛直方向下向きに凸の曲面を含むことができる。
【0016】
適用例4に記載の液滴吐出装置によれば、液体に沈降し得る成分が含まれる場合において、重力の影響によって、当該成分が凸の曲面の鉛直下向きに窪んだ部分に集まりやすい。また、攪拌子は、移動時において、凸の曲面の鉛直下向きに窪んだ部分を通過しやすくなる。そのため、第2容器内の沈降し得る成分が攪拌子によって液体中に再分散されやくすくなるため、十分に攪拌された液体をヘッドに供給することができる。
【0017】
[適用例5]
適用例4において、
前記凸の曲面は、球体または楕円体の表面の一部の形状であることができる。
【0018】
[適用例6]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第2容器の内壁面は、底部に環状に形成された攪拌経路を有することができる。
【0019】
適用例6に記載の液滴吐出装置によれば、攪拌子が環状の攪拌経路を移動しやすいので、キャリッジがいずれの方向に移動しても、攪拌子が第2容器内の最も窪んだ部分を通過しやすくなる。これにより、第2容器内の液体は、効率よく攪拌される。また、攪拌子が環状の攪拌経路を周回するように移動するので、攪拌子と第2容器の内壁面との衝突音が低減する。
【0020】
[適用例7]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第2容器の内壁面は、底部に四角形状に形成された攪拌経路を有することができる。
【0021】
適用例7に記載の液滴吐出装置によれば、第1方向と第2方向にキャリッジが移動する力に合わせて、効率よく攪拌子を移動させることができる。これにより、第2容器内の液体は、効率よく攪拌される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置を模式的に示す平面図。
【図2】実施形態に係る液滴吐出装置を模式的に示す側面図。
【図3】実施形態に係る液滴吐出装置における第2容器を示す模式図。
【図4】実施形態に係る液滴吐出装置における第2容器を示す模式図。
【図5】実施形態に係る液滴吐出装置における第2容器を示す模式図。
【図6】実施形態に係る液滴吐出装置における第2容器を示す模式図。
【図7】実施形態に係る液滴吐出装置における第2容器を示す模式図。
【図8】実施形態に係る液滴吐出装置におけるキャリッジの移動を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0024】
1.液滴吐出装置
本実施形態に係る液滴吐出装置は、第1容器と、第2容器と、ヘッドと、キャリッジと、攪拌子と、を有する。図1は、本実施形態に係る液滴吐出装置の一例である液滴吐出装置10を模式的に示す平面図であり、図2は、液滴吐出装置10を模式的に示す側面図である。以下、液滴吐出装置10について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0025】
1.1.第1容器
液滴吐出装置10は、液体が収容され、該液体を流出させる第1容器20を有する。図1に示すように、第1容器20は、第1管30を介して第2容器40と接続されている。これにより、第1容器20内の液体は、第2容器40に供給される。なお、図1の例では、第1容器20は、第1管30を介して第2容器40と接続されているが、これに限定されず、第1容器20と第2容器40とが第1管30を介さずに接続されていてもよい。その場合は、例えば、第1容器20は、第2容器40とともにキャリッジに搭載されてもよい。
【0026】
第1容器20は、消費した液体を再度補充できるような構造であることが好ましく、液滴吐出装置10の作動中に液体を補充できる構造であることがより好ましい。第1容器20が、液滴吐出装置10の作動中に液体を補充できる構造である場合には、液滴吐出装置10の作動を中止せずに第1容器20に液体を補充でき、作業効率をさらに向上させることができる。
【0027】
本明細書中における第1容器20に収容される液体は、溶液に限らず、サスペンジョン、エマルジョン等の分散体であってもよい。例えば、第1容器20に収容される液体としては、インク組成物、有機ELディスプレー用材料、液晶ディスプレー等のカラーフィルター用材料、FED(電界放出ディスプレー)用材料、電気泳動ディスプレー等の電極やカラーフィルター用材料、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料等が挙げられる。
【0028】
また、第1容器20に収容される液体は、沈降し得る成分を含むことができる。沈降し得る成分としては、例えば、溶媒に対する比重が高い成分であって、インク組成物にあっては、例えば、無機顔料、有機顔料、金属顔料、および中空樹脂粒子から選択される少なくとも1種であり、それらに結合または吸着した成分を含むことができる。
【0029】
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラックなどを挙げることができる。
【0030】
金属顔料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン等の単体、またはそれらの合金などを挙げることができる。
【0031】
中空樹脂粒子としては、例えば、米国特許第4880465号や特許第3562754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を挙げることができる。なお、中空樹脂粒子とは、例えば、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されているものである。中空樹脂粒子は、白色顔料として使用することができる。
【0032】
1.2.第2容器
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、キャリッジ60に搭載された第2容器40を有する。図1に示すように、第2容器40は、第1管30を介して第1容器20と接続されており、第2管32を介してヘッド50と接続されている。また、第2容器40は、その内部に攪拌子48を有する。
【0033】
第1容器20から流出した液体は、第1管30内を流通して第2容器40内に流入する。第2容器40は、一定量の液体を貯留することができる。そのため、第2容器40内では、組成のばらついた液体が第2容器40内に供給されても、組成のばらつきの少ない液体と混合されるので、液体の組成が急激に変化することを抑制できる。さらに、第2容器40内における攪拌子48は、キャリッジ60の移動にともなって、第2容器40内を移動する。これにより、第2容器40内に供給された液体は、攪拌子48によって十分に攪拌される。そのため、液体に含まれる成分の濃度の偏りが抑制される。このように、第2容器40がキャリッジ60に搭載されていると、第2容器40内の液体を攪拌させる機構を別に設ける必要がなく、キャリッジ60の移動機構を利用して第2容器40内の液体を攪拌することができる。
【0034】
そして、第2容器40内で攪拌された液体は、第2容器40から流出して、第2管32内を流通した後、ヘッド50内部に流入する。ヘッド50は、このような経路で、供給された液体を吐出することができる。そのため、ヘッド50は、液体に含まれる各成分の濃度のばらつきが少ない液体を吐出することができる。
【0035】
本実施形態に係る液滴吐出装置10におけるキャリッジ60は、第1方向Xおよび第1方向Xと交差する(図示の例では直交している)第2方向Yに沿って移動する。攪拌子48は、キャリッジ60が第1方向Xに移動する際には、第2容器40内の第1方向Xに移動する傾向にあり、キャリッジ60が第2方向Yに移動する際には、第2容器40内の第2方向Yに移動する傾向にある。そのため、第2容器40内部の第1方向Xの長さが十分にないと、攪拌子48は、キャリッジ60の第1方向Xへの移動の際に、第1方向Xに移動しにくくなる場合がある。同様に、第2容器40内部の第2方向Yの長さが十分にないと、攪拌子48は、キャリッジ60の第2方向Yへの移動の際に、第2方向Yに移動しにくくなる場合がある。そのため、第2容器40内の液体は、キャリッジ60が移動しても、十分に攪拌されない場合がある。
【0036】
このことから、本実施形態に係る液滴吐出装置10は、好ましくは、第2容器40内における攪拌子48の第1方向Xの可動距離が、第2容器40内部の第1方向Xの長さの0.5倍以上であり、かつ、第2容器40内における攪拌子48の第2方向Yの可動距離が、第2容器40内部の第2方向Yの長さの0.5倍以上である。また、より好ましくは、第2容器40内における攪拌子48の第1方向Xの可動距離が、第2容器40内部の第1方向Xの長さの0.6倍以上、または、第2容器40内における攪拌子48の第2方向Yの可動距離が、第2容器40内部の第2方向Yの長さの0.6倍以上である。このようにすれば、攪拌子48は、キャリッジ60が第1方向Xおよび第2方向Yのいずれの方向に移動しても、キャリッジ60の移動にともなって第2容器40内を移動しやすくなる。これにより、第2容器40内の液体は、攪拌子48によって十分に攪拌される。また、前記第1方向Xおよび第2方向Yにおける攪拌子48の可動距離のうち一方が0.6倍以上であれば、攪拌子48の可動距離を十分に確保でき、キャリッジ60の移動を有効に利用して、第2容器40内の液体を攪拌することができる。なお、第1方向Xおよび第2方向Yにおける攪拌子48の可動距離の両者とも、0.6倍以上であるのが一層好ましい。さらに、キャリッジの移動態様に合わせ、第1方向Xおよび第2方向Yにおける攪拌子48の可動距離の一方又は両方を、0.7倍以上としてもよい。
【0037】
本実施形態に係る第2容器40の内部空間は、水平面で切った際に円又は楕円の断面を生じる形状を有し、かつ、第2容器40の内壁面が鉛直下向きに凸の曲面を有することが好ましい。本発明における第2容器の内部空間とは、第2容器内部の液体が充填可能な空間のことをいう。
【0038】
このような内部空間を有する第2容器の幾つかを以下に例示する。
【0039】
第2容器としては、例えば、図3〜図5に示す第2容器40、140、240を例示できるが、図3〜図5に示す形状に限定されるものではない。なお、図3〜図5に示す第2容器の形状は、第2容器の内部形状(内壁面の形状)を示すものである。
【0040】
また、第2容器40の内部空間における鉛直下向きに凸の曲面の具体例としては、球体または楕円体の表面の一部の形状を有するものが挙げられる。
【0041】
図3は、本実施形態に係る液滴吐出装置10における第2容器40を示す模式図である。また、図3(A)は第2容器40を模式的に示す斜視図であり、図3(B)は第2容器40を模式的に示す平面図であり、図3(C)は第2容器40を模式的に示す側面図である。図3(A)〜(C)に示すように、第2容器40の内壁面は、鉛直下向きに凸の曲面である曲面部42と、曲面部42と接続され平面視において楕円形である上面部44と、を有する半楕円体形状である。なお、図3における第2容器40の上面部44は、平面視において楕円形であるが、これに限定されず、例えば平面視において円形等であってもよい。
【0042】
図4は、本実施形態に係る液滴吐出装置10における第2容器140を示す模式図である。また、図4(A)は第2容器140を模式的に示す斜視図であり、図4(B)は第2容器140を模式的に示す平面図であり、図4(C)は第2容器140を模式的に示す側面図であり、図4(D)は第2容器140を図4(C)のD−D線に沿って切断した際の切断面を示す断面図である。図4(A)〜(D)に示すように、第2容器140の内壁面は、鉛直下向きに凸の曲面である曲面部142と、曲面部142と接続され平面視において正方形である上面部144と、を有する、いわゆるドーム形状である。なお、第2容器140の上面部144が平面視において正方形であるものを示したが、これに限定されず、例えば、上面部144が平面視において長方形や、平行四辺形、台形等であってもよい。
【0043】
本実施形態における液滴吐出装置10のキャリッジ60は、第1方向Xおよび第2方向Yに移動することができる。そのため、第2容器40内で攪拌子48が第1方向Xにしか移動できないと、キャリッジ60が第2方向Yに移動した際に攪拌子48が移動せず、第2容器40内に供給された液体の攪拌効率が低下することになる。これに対して、図3および図4に示す第2容器40(140)の内部空間は、水平面で切った際に円又は楕円の断面を生じる形状を有し、かつ鉛直下向きに凸の曲面を有する。つまり、第2容器40(140)の凸の曲面(曲面部42、142)は、中央部に向かうにつれて鉛直方向下向きに窪んだいわゆるお椀型の形状を有している。そのため、攪拌子48は、キャリッジ60がいずれの方向に移動しても、キャリッジ60の移動にともなって第2容器40内を容易に移動することができるので、第2容器40内の液体の攪拌効率を向上させることができる。
【0044】
また、液体に含まれる沈降し得る成分は、凸の曲面(曲面部42、142)の鉛直下向きに最も窪んだ部分に集まりやすい。また、第2容器40(140)内の攪拌子48は、移動時において、凸の曲面(曲面部42、142)の鉛直下向きに最も窪んだ部分(攪拌子48の位置エネルギーが最小となる部分)を通過しやすい。そのため、第2容器40内の沈降物が攪拌子48によって液体中に再分散されやすくなるため、ヘッド50には、十分に攪拌された良好な液体が供給される。
【0045】
また、第2容器40(140)の内部空間が上記のような形状を有しており、かつ、第2容器40(140)内部の第1方向Xの長さおよび第2方向Yの長さが攪拌子48を十分に移動させることができるように設計されていると、第2容器40(140)内の液体を攪拌させる効果がより一層高くなる。
【0046】
また、図5は、本実施形態に係る液滴吐出装置10における第2容器240を示す模式図である。また、図5(A)は第2容器240を模式的に示す斜視図であり、図5(B)は第2容器240を模式的に示す平面図であり、図5(C)は第2容器240を模式的に示す側面図である。図5(A)〜(C)に示すように、第2容器240の内部空間は、水平面で切った際に楕円の断面を生じ、かつ、水平面と直交する面で切った際にも楕円の断面を生じる。つまり、第2容器240の内壁面は、楕円体の形状の曲面部242のみからなる。なお、第2容器240の内部空間は、楕円体の形状であることに限定されず、例えば球体等であってもよい。
【0047】
図5における第2容器240は、上述した図3(図4)の第2容器40(140)と同様の効果を有することに加えて、次の効果を有している。具体的には、第2容器40(140)の内壁面は、曲面部42(142)と接続される上面部44(144)を有しているので、曲面部42(142)と上面部44(144)との接続部分に辺(接続線)を有する。このような第2容器40(140)を用いた場合、攪拌子48は、第2容器40(140)内を曲面部42(142)に接しながら移動するが、接続線を越えて上面部44(144)に接触することがある。これにより、衝突音が生じる場合がある。
【0048】
これに対して、第2容器240の内壁面は、滑らかな1つの曲面部242からなる。第2容器240の内壁面は、第2容器40(140)の内壁面のような接続線を有しないので、攪拌子48は、第2容器240内を曲面部242のみに接しながら移動する。そのため、第2容器240を用いると、攪拌子48の移動時において、攪拌子48と第2容器240の内壁面との衝突音を低減することができる。
【0049】
一方、本実施形態に係る第2容器の内壁面は、底部に平面的に見て環状となる攪拌経路を有することができる。図6は、本実施形態に係る液滴吐出装置10における第2容器340を示す模式図である。また、図6(A)は第2容器340を模式的に示す斜視図であり、図6(B)は第2容器340を模式的に示す平面図であり、図6(C)は第2容器340を模式的に示す側面図である。図6に示すように、第2容器340は、底部に平面視において環状の形状を備えた攪拌経路を有している。本実施形態における攪拌経路の環の形状としては、正円の外周形状に限らず、楕円の外周形状、長方形のすべての角を落としたいわゆる角丸長方形の外周形状、平行する2本の直線とそれらを接続する外側に凸の曲線部からなるいわゆるトラックの外周形状等とすることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、攪拌経路の一例として、溝を有しているもので説明するが、これに限定されず、例えば、攪拌経路が管状に形成されているものであってもよい。
【0051】
第2容器340の内壁面が底部の平面視において環状の形状の攪拌経路を有する。そのため、キャリッジ60がいずれの方向に移動しても、攪拌子48は、キャリッジ60の移動にともなって攪拌経路の内部を容易に移動することができるので、第2容器40内の液体の攪拌効率を向上させることができる。
【0052】
また、攪拌子48は、攪拌経路内を平面的に見て環を周回するように移動するので、第2容器40内の内壁面を転がるように移動し、内壁面への衝突が生じにくくなる。このため、底部に円環状の攪拌経路を有する第2容器340によれば、キャリッジ60の移動時の動作音を抑制することができる。
【0053】
また、攪拌子48が移動する攪拌経路は、底部の平面視において四角形状(長方形、正方形、台形等)に形成されていてもよい。この形状の攪拌経路を有することで、第1方向Xと第2方向Yにキャリッジが移動する力に合わせて、効率よく攪拌子48を移動させることが出来る。
【0054】
第2容器の内壁面は、底部において、第1方向Xに平行な第1の攪拌経路と、第1の攪拌経路と接続された第2方向Yに平行な第2の攪拌経路と、を有することができる。図7は、本実施形態に係る液滴吐出装置10における第2容器440を示す模式図である。また、図7(A)は第2容器440を模式的に示す斜視図であり、図7(B)は第2容器440を模式的に示す平面図である。図7に示すように、第2容器440の内壁面は、底部において、第1方向Xに平行な第1の攪拌経路446(446aおよび446b)と、第1の攪拌経路446aおよび446bの第1方向Xの一方の側を接続し、第2方向Yと平行な第2の攪拌経路447と、を有する。なお、第1の攪拌経路および第2の攪拌経路の数は、特に限定されず、それぞれ1つ以上設けられていればよい。
【0055】
第2容器の内壁面の底部において、第1方向Xと平行な第1の攪拌経路と、第2方向に平行な第2の攪拌経路と、を有していると、攪拌子48は、キャリッジ60が第1方向Xに移動する場合には、第1方向Xに沿う第1の攪拌経路に沿って移動し、キャリッジ60が第2方向Yに移動する場合には、第2方向Yに沿う第2の攪拌経路に沿って移動しやすくなる。このように、攪拌子48がキャリッジ60の移動にともなって攪拌経路に沿って移動しやすくなるので、第2容器440内の液体は、攪拌子48によって十分に攪拌される。この際に、攪拌経路は一回の記録モードの開始から終了までの過程において、キャリッジ60が移動する第1方向Xと第2方向Yとの経路に合わせて形成されているのが好ましい。これにより、キャリッジ60が記録モードの過程で第1方向Xと第2方向Yとに移動する力を漏れなく攪拌に生かすことが可能になる。
【0056】
なお、第2容器340(440)の内壁面が上述した形状を備えており、かつ、第2容器340(440)内部の第1方向Xの長さおよび第2方向Yの長さが攪拌子48を十分に移動させることができるように設計されていると、第2容器340(440)内の液体を攪拌させる効果がより一層高くなる。
【0057】
攪拌子48の形状としては、第2容器20内を移動できる形状であればよく、例えば、球、回転楕円体(ラグビーボール型、円盤型など)、円柱、円錐、角錐、角柱などを挙げることができる。
【0058】
1.3.ヘッド
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、第2容器40から流出した液体が流入し、該液体を吐出するヘッド50を有する。また、ヘッド50は、キャリッジ60に搭載されている。このため、ヘッド50は、キャリッジ60の移動にともなって移動して、被吐出媒体Pの所望の位置に液体を吐出することができる。
【0059】
なお、ヘッド50は、例えば、ピエゾ式インクジェット、サーマルジェット式インクジェット等の従来公知の方式を用いて、液体を吐出することができる。
【0060】
また、図1の例では、ヘッド50は、第2管32を介して第2容器40と接続されているが、これに限定されず、第2容器40とヘッド50とが第2管32を介さずに直接接続されていてもよい。また、ヘッド50は、複数のノズル孔を有していてもよく、ノズル孔から液体を吐出することができる。
【0061】
1.4.キャリッジ
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、第2容器40およびヘッド50を搭載するキャリッジ60を有する。キャリッジ60は、第1方向Xおよび第1方向と交差する第2方向Yに沿って移動する。具体的には、キャリッジ60は、略平面上において、第1方向Xおよび第2方向Yに沿って移動することができる。キャリッジ60の移動する平面は、特に限定されないが、水平面と平行であることが好ましい。キャリッジ60の移動する平面が水平であると、キャリッジ60の移動によって攪拌子48に加えられた力によって発生する運動エネルギーは、位置エネルギーへと変換されにくくなる。そのため、攪拌子48は、キャリッジ60の移動によって加えられた力を効率よく利用することができる。
【0062】
キャリッジ60を移動させる手段としては、特に限定されず、例えば図1に示す第1駆動機構70および第2駆動機構80を用いて行うことができる。図1に示すように、第1駆動機構70は、第1モーター72と、第1ボールねじ74と、を有する。キャリッジ60は、第1ボールねじ74と、キャリッジ60に取り付けられた雌ねじ部材(図示せず)と、を螺合させることによって、第1駆動機構70に接続される。このようにすれば、キャリッジ60は、第1モーター72の駆動によって第1ボールねじ74を正逆方向に回転させることにより、第1方向Xに沿って往復移動することができる。
【0063】
また、図1に示すように、第2駆動機構80は、第2ボールねじ84と、第2モーター82と、を有する。第1駆動機構70は、第2ボールねじ84と、第1駆動機構70に取り付けられた雌ねじ部材(図示せず)と、を螺合させることによって、第2駆動機構80に接続される。このようにすれば、第1駆動機構70に接続されたキャリッジ60は、第2モーター82の駆動によって第2ボールねじを正逆方向に回転させることにより、第2方向Yに沿って往復移動することができる。
【0064】
1.5.その他の構成
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、以下の構成を備えることができる。
【0065】
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、第1管30および第2管32を備えていてもよい。第1管30は、上述したように第1容器20と第2容器40とを接続して、第1容器20内の液体を第2容器40内に供給する。第1管30は、第1容器20のいずれの部分に接続されても良く、また、第2容器40のいずれの部分に接続されてもよい。また、第2容器40内の攪拌子48が第1管30内部を移動しないようにするために、例えば、両者の接続部分を攪拌子48が通過できない程度に狭窄したり、第1管30の内径を小さくしてもよい。
【0066】
また、第2管32は、上述したように第2容器40とヘッド50とを接続して、第2容器40内の液体をヘッド50に供給する。第2管32は、第2容器40のいずれの部分に接続されても良く、また、ヘッド50のいずれの部分に接続されてもよい。また、第2容器40内の攪拌子48が第2管32内部を移動しないようにするために、例えば、両者の接続部分を攪拌子48が通過できない程度に狭窄したり、第2管32の内径を小さくしてもよい。
【0067】
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、搬送機構90を備えていてもよい。搬送機構90は、被吐出媒体Pを搬送する機能を備えているものであれば特に限定されない。図1および図2に示すように、被吐出媒体Pがロール状である場合には、搬送部90は、巻き出し部92と、巻き取り部94と、を備えていてもよい。ロール状の被吐出媒体Pは、巻き出し部92に設置され巻き出された後、第1方向Xの一方の向き(図2のX2方向)に搬送されて、巻き取り部94で巻き取られる。
【0068】
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、吸引機構100を備えていてもよい。吸引機構100は、被吐出媒体Pに画像を記録する際に、キャリッジ60の移動領域において被吐出媒体Pを固定することができる。これにより、吸引機構100は、被吐出媒体Pに記録される画像の位置がずれる等の不具合を、抑制することができる。例えば、吸引機構100は、図1および図2に示すように、吸引装置102と、吸引テーブル104と、を有することができる。被吐出媒体Pは、吸引テーブル104の位置まで搬送されると、吸引装置102によって吸引テーブル104に吸着させられる。
【0069】
本実施形態に係る液滴吐出装置10は、制御部110を備えていてもよい。制御部110は、例えば、CPUとメモリーとを有するコンピューターを利用して構成することができる。制御部110は、第1容器20、ヘッド50、キャリッジ60(第1駆動機構70および第2駆動機構80)、搬送部90、吸引機構100等を制御する機能を担う。
【0070】
1.6.用途
本実施形態では、液滴吐出装置10をインクジェットプリンター等の画像記録装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、液滴吐出装置10は、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)、電気泳動ディスプレー等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置等にも適用することができる。
【0071】
2.画像記録方法
図8は、本実施形態に係る液滴吐出装置10におけるキャリッジ60の移動状態を示す説明図である。以下、図8を参照しながら、本実施形態に係る液滴吐出装置10を用いた画像の記録方法について説明する。
【0072】
所定の位置(例えば、図8(B)の位置r1)から被吐出媒体Pへの画像の記録を開始させる場合、制御部110は、キャリッジ60を第1方向Xの一方向(図8ではX1方向)に移動させるとともに、ヘッド50から液体を吐出させる。これにより、被吐出媒体Pの第1ラインに画像が記録される。このとき、第2容器40内の攪拌子48は、第1方向Xに沿って移動して、第2容器40内の液体を攪拌する。
【0073】
次に、制御部110は、キャリッジ60を第2方向Yの一方向(図8ではY2方向)に移動させる。このとき、第2容器40内の攪拌子48は、第2方向Yに沿って移動して、第2容器40内の液体を攪拌する。
【0074】
次に、制御部110は、キャリッジ60を第1方向Xの他方向(図8ではX2方向)に移動させるとともに、ヘッド50から液体を吐出させる。これにより、被吐出媒体Pの第2ラインに画像が記録される。このとき、第2容器40内の攪拌子48は、第1方向Xに沿って移動して、第2容器40内の液体を攪拌する。
【0075】
このような動作を繰り返すことにより、画像は、キャリッジ60の移動した移動領域Rに対応する被吐出媒体Pの部分に記録される(図8(B))。
【0076】
その後、制御部110は、被吐出媒体Pを第1方向Xの他方向(図8ではX2)に搬送させて、画像の記録が行われていない被吐出媒体Pの領域への画像の記録を開始させる。このとき、制御部110は、前回の記録を終了させたキャリッジ60の位置(図8(C)では位置r2)から、画像の記録を開始させることができる。この場合において、制御部110は、前回の記録とは逆の動作(例えば、前回の画像の記録で行った動作が図8(B)である場合には、図8(C))を行わせてもよい。キャリッジ60の移動ロスが低減できるためである。なお、キャリッジ60は、記録の終了した後、毎回記録開始の領域に移動しても良い(つまり図8(c)において、記録終了後にr2からr1に移動する)。これにより、毎回同じ場所から記録を開始することができる。
【0077】
以上のようにキャリッジ60が移動することにより、被吐出媒体Pに所望の画像を記録することができる。
【0078】
本実施形態に係る画像記録方法は、上述した液滴吐出装置10を用いて行われるものである。そのため、攪拌子48は、キャリッジ60の第1方向Xおよび第2方向Yへの移動を利用して、第2容器40内の液体を効率的に攪拌できる。これにより、ヘッド50に十分に攪拌された良好な液体が供給されるので、ヘッド50は、組成のばらつきの少ない液体を吐出することができる。
【0079】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0080】
10…液滴吐出装置、20…第1容器、30…第1管、32…第2管、40(140、240、340、440)…第2容器、42(142)…曲面部、44(144)…上面、50…ヘッド、60…キャリッジ、70…第1駆動機構、72…第1モーター、74…第1ボールねじ、80…第2駆動機構、82…第2モーター、84…第2ボールねじ、90…搬送機構、92…巻き出し部、94…巻き取り部、100…吸引機構、102…吸引装置、104…吸引テーブル、110…制御部、446…第1の攪拌経路、447…第2の攪拌経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容され、該液体を流出させる第1容器と、
前記第1容器から流出した前記液体が流入する第2容器と、
前記第2容器から流出した前記液体が流入し、該液体を吐出するヘッドと、
前記第2容器および前記ヘッドを搭載し、第1方向および該第1方向と交差する第2方向に移動するキャリッジと、
前記第2容器内部に配置され、前記キャリッジの移動にともなって、前記第2容器内を移動する攪拌子と、
を有する、液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2容器内における前記攪拌子の第1方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第1方向の長さの0.5倍以上であり、
前記第2容器内における前記攪拌子の第2方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第2方向の長さの0.5倍以上である、液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2容器内における前記攪拌子の第1方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第1方向の長さの0.6倍以上であり、
前記第2容器内における前記攪拌子の第2方向の可動距離は、前記第2容器内部の前記第2方向の長さの0.6倍以上である、液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第2容器の内部空間は、水平面で切った際に円または楕円の断面を生じる形状を有し、かつ、前記第2容器の内壁面は、鉛直方向下向きに凸の曲面を含む、液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記凸の曲面は、球体または楕円体の表面の一部の形状である、液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第2容器の内壁面は、底部に環状に形成された攪拌経路を有する、液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第2容器の内壁面は、底部に四角形状に形成された攪拌経路を有する、液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−101413(P2012−101413A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250833(P2010−250833)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】