説明

液状およびゲル状の低分子量エチレンポリマー類

本発明は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、DSCによって測定した総結晶化度が10%より小さく、および、ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーに関する。本発明はまた、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、DSCによって測定した総結晶化度が50%より小さく、および、ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、DSCで測定した総結晶化度が10%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類に関する。
【0002】
本発明はまた、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、DSCで測定した総結晶化度が50%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類にも関する。
【背景技術】
【0003】
エチレンポリマー類は一般的に、密度および分子量で特徴づけられる。「超低密度ポリエチレン」(ULDPE)および「直鎖状超低密度ポリエチレン」(VLDPE)は、直鎖状低密度ポリエチレン類の一部であって密度が約0.915g/cm以下のものを示すために、ポリエチレン技術において同義で用いられてきた。よって「直鎖状低密度ポリエチレン」(LLDPE)は、密度が約0.915g/cmより大きい直鎖状ポリエチレン類に適用される。このようなポリマー類の密度は、一般的にエチレンポリマー中のコモノマーの増減により調節されるが、実際には、エチレンポリマー類で達成可能な最低密度には重合をするために用いられる触媒のコモノマー組込能力と相関関係がある。
【0004】
従来の遷移金属チーグラー触媒類存在下でのエチレン重合または共重合は、固体状であり、典型的には有効な密度の限界が約0.90g/cmである、不均一直鎖状ポリマー類を生成する。しかし、いわゆる「シングルサイト」触媒類の出現により、このようなシステムのコモノマー組込能力が改良されたため、低密度の限界はさらに低くなった。メタロセン類(ハフニウム、チタニウム、バナジウム、またはジルコニウムのような金属に結合した1つ以上のシクロペンタジエニル配位子を有する有機金属化合物である)を含むシングルサイト触媒類は、均一直鎖状エチレン/α−オレフィンコポリマー類を生成する。が挙げられる。Elstonの米国特許第3,645,992号は、可溶性バナジウム触媒を用いて製造された、均一直鎖状エチレンオレフィンコポリマー類を開示する。その開示中では、「均一コポリマー類」は、コモノマーが所定の分子内で不規則に分布しており、実質的に全コポリマー分子が同一のエチレン対コモノマー比率を有するポリマー類として規定される。均一ポリマー類はまた、狭い組成分布を有するポリマーとしても定義され、すなわちこれらは単一の溶融ピークしか持たず、測定可能な「直鎖状」ポリマーフラクションを本質的に欠いている。
【0005】
米国特許第5,272,236号および第5,278,272号は、シングルサイト幾何拘束性重合触媒を用いて製造された、実質的に直鎖状のエチレンオレフィンコポリマー類を開示する。開示されている実質的に直鎖状のコポリマー類は、炭素1000個あたり約0.01個から約3個の長鎖分枝を有することを特徴とする。Elstonの均一コポリマー類とは異なり、開示されている実質的に直鎖状のコポリマー類は、分子量分布(Mw/Mn)がASTM D−1238に従い測定されるI10/Iとは無関係であることを特徴とする。
【0006】
ポリマー密度に加えて、エチレンポリマーの分子量は、それが用いられる用途に大きく依存して異なる。一般的には、ポリマーを製品(例えば、フィルム類、発泡体類、ファイバー類、および、成形品類)に加工することを要求する目的のほとんどでは、一般的には数平均分子量(Mn)が30,000を超えるような、相応の高分子量が必要とされる。
【0007】
しかし、このようなポリマー類を既存の組成物の添加剤として用いる場合は、ポリマー添加剤を用いて改良しようとする最終組成物の性能面によって異なるが、このような分子量の限界をさらに低下させることが可能である。ポリマー性添加剤は、例えば、コーティング類、接着剤類、加工添加剤類、潤滑剤類、および燃料添加剤類、乳化剤類、可塑剤類(ガラス転移温度「Tg」のような特性を改良するために用いる)、シーラント類、およびコーキング剤類、織布類、ファイバー/織物コーティング、保護コーティング類、および、バインダー類、およびクリング(cling)添加剤類として用いられる組成物に用いられる。このような配合物中でのエチレン系ポリマー添加物の一般的な適用は、最終の粘度によって異なる。一般的には、配合物の粘度を増加させるためには高分子量ポリマー添加剤を用い、配合物の粘度を低下させるためには低分子量ポリマーを用いる。
【0008】
粘度改良剤類に加えて、数多くの用途においてポリマー添加剤類を分散剤類として用いることが可能である。例えば、合成炭化水素油類は、一般的には、少なくとも1つの炭化水素を基剤成分とする油および1つ以上のポリマー性添加剤類の混合物を含む。一般的に、分散添加剤類は、潤滑油中で酸化により生じる不溶性物質を懸濁させ、それによってスラッジの凝集および沈殿を防止するために用いられる。今日までのところ、このような分散剤類は、主にポリイソブチレンのようなオレフィンポリマー類の誘導体化により生成され、その高レベルの不飽和は、極性分子を機能化するサイト(site)として(例えば、ポリマー二重結合への無水マレイン酸グラフト)用いられる。この極性基によるさらなる機能化は、前記のような潤滑油組成物中のポリマーの分散特性を改良する。エチレン系ポリマー類もまた、この分散剤用途に用いられてきた。例えば、WO94/19436は、ビス−シクロペンタジエニルメタロセン触媒を用いて製造され、流動点が−30℃より低く、Mnが1500〜7500であり、エチレン含有率が50重量パーセント以下であり、全ポリマー鎖の少なくとも30%がエチルビニリデン基で停止されている、エチレン/ブテンコポリマー類を開示する。これらの基はつづいてさらに極性部分(moiety)で機能化され、分散特性を改良される。油組成物中のポリマー性添加剤の他の用途としては、油がその流動点(すなわち油が流動する最低温度)に近い温度に冷却された場合の、ワックス類および他のポリマー性部分の結晶化防止が挙げられる。地下からのオイル掘削、回収、および輸送に、このワックス結晶化防止性能が重要となり得るのは、そのような操作は、典型的には、油井の頭部(head)に到達した油を冷却することになり、ワックス結晶化が下流方向の油輸送システムの目詰まりを引き起こす可能性があるためである。よって、流動点に有益な効果(すなわち、特に周辺環境温度と比較して、流動点を低くする)を有するポリマー添加剤類を添加すると、このような機器が詰まる傾向が低下し、輸送装置を局所的に加熱したり、または、詰まったラインから障害物を機械的に引き抜くといった対策の必要性が最小となることによって、油のスクリーニング、濾過、およびポンピングを要する操作が大きく改良される。同様に、他の理由でポリマー添加剤類が組成物中に含まれる場合も、上述の理由から、最終的な油組成物の流動点に悪影響(流動点の上昇)を及ぼさないようにしなければならない。
【0009】
米国特許第6,262,324B1号は、50〜75mol%のエチレンを有し、分子量が2000より小さく、分子量分布が2.5より小さく、ランダムなモノマー分布を伴う頭尾分子構造を有し、臭素価が>2であり、そして流動点が0℃より低い、エチレン/α−オレフィンコポリマー類およびターポリマー類の製造方法を開示し、ここで、前記コポリマーは、メタロセン/アルモキサン触媒系を用いて製造された前駆体ポリマーをクラッキングすることによって得られる。
【0010】
WO01/18109A1は、ポリプロピレンと混和性があり、分子量Mwが500から10,000であり、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した分子量分布、Mw/Mnが約1.5から約3の低分子量エチレン/α−オレフィンコポリマー類である、ポリプロピレンの可塑剤を開示する。コモノマー含有量が20から70モル、Tgは−80℃以上から−30℃以下、そして、結晶化度は5%以下であり、メタロセン/アルモキサン触媒系を用いて製造された。
【0011】
米国特許第6,017,859号は、Mnが300〜15000であり、平均エチレン連続長(average ethylene sequence length)が1〜3であり、100炭素原子当たり平均して少なくとも5つの分枝を有し、それら分枝の50%以上がメチルおよび/またはエチル分枝であり、ポリマー鎖の少なくとも30%がビニルまたはビニレン基で停止され、ポリマー鎖の15%以下がビニリデン基およびトリ置換オレフィン性基で停止されている、エチレン/α−オレフィンコポリマー類を開示する。このポリマーは、メタロセン/アルモキサン触媒系を用いて製造された。
【0012】
米国特許第6,054,544号および第6,335,410B1号は分子量分布が狭く、すなわち、Mw/Mnが2.5より小さく、および、数平均分子量(Mn)が11,000以下であることからもわかるように超低分子量であり、DSCで測定した結晶化度が10から80%の間である、非流動性エチレンポリマー類を開示する。
【0013】
そのような添加剤が、低分子量および密度を有するだけではなく、液状で供給可能な場合は、当該添加剤の輸送および分配システムが円滑となるだけではなく、液状組成物への混合が改良され、非常に有用であろう。さらに、そのような液状のポリマー類は、油への添加剤として使用可能なだけではなく、それ自身が潤滑剤組成物の基剤成分として使用可能である。液体状態では、前述の全ての用途において、他の成分とのブレンドにポリマー添加剤の加熱をほとんどまたは全く必要とせず、添加が容易となる。
【0014】
米国特許第6,063,973号は、粘度指数が大きく(94〜145VI)、流動点が低く(−60℃から−10℃)、そして、分枝指数が1000個のCH基あたり約151から586分枝である、高分枝の合成ポリエチレン流動体類を開示する。ポリマー類の分枝構造は、エチレンをTaCl/AlEtClまたはTiCl/AlEtCl触媒系の存在下で重合させることにより得られた。
【0015】
米国特許第4,704,491号は、エチレン含有率が10〜85モル%であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が300〜10,000であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量分布、Mw/Mnが約1.5から約2.5であり、ヨウ素価が0〜85であり、粘度指数が130から350であり、発火点が低くとも240℃であり、そして流動点が0℃以下である、液状エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーを開示する。
【0016】
液状であることに加え、実質的にアモルファス構造を有するポリマー性添加剤は、基剤のポリマーシステムとの混和性を大きく増加させることができる。そのような添加剤ポリマー類は、Tgが低いことにより、それ自体またはコンパウンドされた材料中のどちらでも、低温特性を改良する結果をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
よって、液状であり、ガラス転移点が低いだけではなく、シングルサイト触媒系により製造され、コモノマーレベルが大きく、ほぼ完全にアモルファスである(すなわち、総パーセント結晶化度が10%より小さく、好適には5%より小さく、より好適には2%より小さい)均一性液状低分子エチレン/α−オレフィンコポリマー類を入手可能にすることは非常に有利である。これは、他の物質との相溶性の改良、容易な混合、ならびに、流れ挙動および最終配合物の特性を改質する能力を提供し、よって、様々な用途での使用を促進する。最終的に、このようなポリマー類は液状のため、添加剤としてだけではなく、合成オイル組成物の基剤成分となる物質として用いることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は特に、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、総結晶化度が10%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類に関する。
【0019】
本発明の他の実施態様においては、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、総結晶化度が50%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類に関する。本発明のゲル状ポリマー類は液状ではないが、液状ポリマー類の長所のうちいくつかを有し、前記長所としては、改善された他の物質との相溶性の改良、ブレンドの容易さ、ならびに最終配合物の流れ挙動および特性を改質する能力が挙げられる。
【0020】
本発明はさらに、エチレンと少なくとも1つのエチレン性不飽和コモノマーを、最低でも80℃の反応温度でシングルサイト触媒の存在下で反応させ、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、総結晶化度が10%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、液状均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを生成することを含む、本発明の液状均一低分子量エチレンポリマー類の製造方法を提供する。
【0021】
本方法の1つの実施態様においては、所望の低分子量液状ポリマーの生成に反応器中への水素添加が必要とならないように充分高いコモノマーレベルで重合を行う。
【0022】
本発明はさらに、エチレンと少なくとも1つのエチレン性不飽和コモノマーを、最低でも80℃の反応温度でシングルサイト触媒の存在下で反応させ、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、総結晶化度が50%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、液状均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを生成することを含む、本発明のゲル状均一低分子量エチレンポリマー類の製造方法を提供する。
【0023】
本方法の1つの実施態様においては、所望の低分子量ゲル状ポリマーの生成に反応器中への水素添加が必要とならないように充分高いコモノマーレベルで重合を行う。
【0024】
本発明の均一液状およびゲル状低分子量、高コモノマー含有ポリマー類は、現在入手可能な低分子量ポリマー類に対し、強化された性能を提供する点に有用性がある。これらのポリマー類の主要な用途としては、コーティング類、接着剤類、加工添加剤類、潤滑剤類、燃料およびオイルの流動点降下添加剤類、ワックス結晶性低下添加剤類、粘度指数向上剤類、剪断性安定剤類、粘着性付与剤類、加工助剤類、相溶化剤類、乳化剤類、可塑剤類(Tgのような特性の改良向け)、シーラント類ならびにコーキング類、織布類、ファイバー/織物コーティング、保護コーティング類、ならびに、バインダー類が挙げられる。上述のポリマー類はまた、広範な範囲の他のポリマー類、コポリマー類、フィラー類、ワックス類、顔料類、添加剤類、および、加工助剤類と組み合わせた配合物製品としても有用である。
【0025】
また、本発明の均一液状およびゲル状低分子量高コモノマー含有ポリマー類の粘度はより高い分子量のポリマー類より低く、多くの他のポリマー類(例えば、ポリオレフィン類、スチレン性ブロックコポリマー類、エチレンアクリル酸コポリマー類)と相溶性があり、よってこれらは配合者または処理者に、油類の有する物理特性の損失(例えば、印刷性、触感および埃の付着性に影響する表面への密着および移行の損失)なしに製品を改質し、流動性を促進するために用いられる。本発明のポリマー類はまた、ブレンド成分として用いられた場合、押出コーティングおよびラミネートシステムのポリマー接着性を増強することが可能である。
【0026】
本発明のポリマー類のさらに他の有利な点は、これらは低結晶性のため、フィラー類(例えばタルク、カーボンブラック、シリカ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミニウムトリハイドレート、など)および/または、酸化防止剤類(例えば、ヒンダードフェノール類のIrganox1010;ホスフィット類のIrgafos168、など)、クリング添加剤類(例えばポリイソブチレン)、アンチブロック添加剤類、着色剤類、顔料類、ワックス類、造核剤類、エキステンダー油(extender oil)類、難燃剤類、および、粘着性付与剤類のような他の添加剤類を、高レベルで充填可能な点である。ポリマー中に含有可能なフィラーの量は、フィラーを含む組成物の分子構造、および/または、フィラーがポリマーがもたらす他の機能強化の干渉をしない程度によってのみ制限される。ポリマー組成物とフィラーをあわせた総重量を基準として、70重量%、80重量%、またはそれ以上の固形物レベルを達成可能である。この高充填性は特にマスターバッチ用途に有用であり、例えば1つ以上のフィラー類および/または添加剤類をより大量の組成物中に導入するために比較的少量のポリマーを用いる。
【0027】
よって、液状ポリマー類の改良された流れ特性のため、高フィラー充填物は他のポリマー類に、より効果的に分散可能である。加えて、これらの低粘度のために、過剰な加熱および剪断なしに良好な添加剤分散性が得られ、その結果ポリマーの劣化は最小となる。これらの良好な分散特性によって、フィラーの効率を促進し、その性能を改良する(例えば、液状ポリマー中に分散する着色剤濃縮物の透明度を改良する)ことができる。このような高充填された液状ポリマーマスターバッチ類は加工が容易なため、添加剤の処理量が増加し、そして、ポリマー劣化に起因する規格外品が低減することによって、配合者は費用を節減可能となる。最終的に、液状ポリマーは低粘度および低融点なため、発泡剤および架橋剤のような熱に敏感な添加剤向けに、処理温度を低下させることが可能である。
【0028】
上述のポリマー類、および、1つ以上の前記インターポリマー類を含み強化された加工/特性バランスを有する組成物は、発泡体類、ファイバー類、フィルム類、射出成形物品類、圧縮成形物品類、熱成形物品類、押出物品類、カレンダー成形物品類、ホットメルト接着剤類、感圧性接着剤類、シーラント組成物類、および、フィラー用のバインダー類、顔料類、および、添加剤パッケージ類の担体を含む、広範囲にわたる異なる構造に加工可能である。
【0029】
本発明のこれらの実施態様および他の実施態様を、以下の詳細な説明により詳細に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
特に記載しない限り、以下の試験方法を用いる。分子量の測定は、混合多孔質カラム(Polymer Laboratories 103、104、105および106)を3本備えるWaters 150℃高温クロマトグラフィーユニットを140℃の装置温度で操作するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で行う。溶媒は1,2,4−トリクロロベンゼンであり、それを用いて試料の0.3重量%溶液を調製して注入する。流速は1.0mL/分であり、1回の注入量は100マイクロリットルである。
【0031】
ポリエチレンの相当分子量は、ポリエチレン及びポリスチレンに対する適切なMark−Houwinkの係数(WilliamsおよびWardによってJournal of Polymer Science, Polymer Letters, Vol. 6, p. 621,1968に記載)を用いて次の式
ホ゜リエチレン = a*(Mホ゜リスチレン
を誘導し求める。前記式中、a=0.4316およびb=1.0である。
【0032】
ポリマーの数平均分子量、Mnは、各分子量の範囲における分子の数を、分子量に対してプロットしたものの第1のモーメントとして表される。実質的には、これは全分子の総分子量を分子の数で除したものであり、通常のやり方で、以下の式に基づいて計算される。
Mn=Σn*M/Σn=Σw/Σ(w/M
(式中、
=分子量Mを有する分子の数、
=分子量Mを有する物質の重量分率、および、
Σn=分子の総数である)。
【0033】
重量平均分子量Mwは、通常のやり方で、次の式:M=Σwi*Mi(式中、w及びMは、GPCカラムから溶出するi番目の画分の、それぞれ、重量分率及び分子量である)に従って計算される。
【0034】
本明細書中では、これらの2つの平均の比、分子量分布(MWDまたはMw/Mn)を分子量分布の幅を決定するために用いる。
【0035】
溶融粘度は以下の方法に基づき、ブルックフィールドラボラトリーズ(Brookfield Laboratories)のDVII+ビスコメーターを用いて、使い捨てアルミニウムサンプルチャンバー内で測定した。用いたスピンドルは、10から100,000センチポイズの範囲の粘度を測定するのに適するSC−31熱溶融スピンドルである。サンプルをチャンバーに注ぎ入れ、つぎにそれをブルックフィールドサーモセル(Brookfield Thermosel)に挿入し、曲がったラジオペンチを用いてロックした。スピンドルが挿入され回転するときにチャンバーが回転しないよう、サンプルチャンバーはブルックフィールドサーモセルに嵌るノッチを底部に有する。サンプルを必要な温度に加熱し、溶融サンプルがサンプルチャンバーの上部から約1インチ下にくるまで、さらにサンプルを追加する。粘度計器具を下降させ、スピンドルをサンプルチャンバーの中に沈める。粘度計のブラケットがサーモセルに並ぶまで下降を続ける。粘度計のスイッチを入れ、トルクの読み取り値が30から60パーセントの範囲となる剪断速度を設定する。約15分の間、または値が安定するまで、毎分読み取りを行い、最終の読み取り値を記録する。
【0036】
パーセント結晶化度は、10℃/分で、TA Q1000を用いて示差走査熱分析によって測定する。サンプルを180℃に加熱し、3分間その温度を維持した。それを10℃/分で−90℃まで冷却した。それをつぎに10℃/分で150℃まで加熱した。溶融温度およびパーセント結晶化度を2回目の熱曲線から求める。パーセント結晶化度は、以下の式から算出することができる。
パーセントC=(A/292 J/g)×100
(式中、パーセントCはパーセント結晶化度を表し、Aはジュール(J/g)で表した測定したエチレンを基剤とするポリマーの融解熱を表す)。融点、結晶点、およびガラス転移点温度もまた、この方法で測定した。
【0037】
流動点はASTM D−97を用いて測定する。
【0038】
動粘度はASTM D445を用いて測定する。
【0039】
密度は実質的にはASTM D−792に従い、以下の方法を用いて測定する。
1.Mettler製の体積が正確に10.0000mlのガラスシンカー(glass sinker)の重量を空気中で測定する。
2.シンカーを化学天秤につるす。
3.シンカーをつぎに液体中に入れる。
3.シンカーの浮力のついた重量と空気中の重量との差を求める。アルキメデスの法則に従い、差分は10.0000mlの液体の重量と等しい。
4.シンカーの重量の差を10.0000で除し、そしてこれを液体の密度としてg/cmで報告する(有効数字3桁の精度)。
【0040】
オクテン含有率は、以下の方法を用いる13C NMR分析法で求める。
【0041】
1)約0.5gのポリマーを10mmのNMRチューブに入れる。
約1gの溶媒をチューブに加え、キャップをして約130℃の加熱ブロック内に20〜30分置いて、ポリマーを融解する。管を加熱ブロックから取り出し、放冷する。2gの溶媒を加えてサンプルを最終的な体積にする。用いる溶媒は、オルト−ジクロロベンゼンとテトラクロロエタン−dの50/50混合物であり、0.025Mのアセチルアセトナトクロム(緩和剤)を含む。キャップを開けたチューブを窒素ボックスに約20分入れ、加熱中のサンプルの酸化を防止する。サンプルにキャップをして、つづいて加熱ブロックに戻し、約130℃でポリマーを溶解する。均一化を徹底するため、定期的にヒートガンを用いてサンプルを緩やかに還流させる。
【0042】
2)データ取得
エチレン/オクテンポリマーサンプルの13C NMRスペクトルを400MHzのNMR分光計で取得する。約1時間、分光器中でサンプルを平衡させる。重水素ロック信号(lock signal)で最適化することによって、サンプルをシム(shim)した。13C NMRデータを収集するために用いた取得パラメータは以下の通りである。
ブロックサイズ = 32K
スイープ幅 = 24,200Hz
パルス幅 = 90°
スキャン回数 = 4000
温度 = 130℃
リサイクル時間 = 6秒
【0043】
プロピレン/エチレンコポリマー類の13C NMR分析を、以下の方法を用いてエチレンおよびプロピレン含有量を決定するために用いた。
【0044】
13C NMR分析
0.025Mのアセチルアセトナトクロム(緩和剤)を含むテトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約3gを、10mmNMRチューブ中の0.4gのポリマーのサンプルに加えてサンプルを調製した。チューブおよびその内容物を150℃に加熱し、サンプルを溶解および均質化した。Varian Unity Plus 400MHz分光計を用い、100.4MHzの13C共鳴周波数を用いてデータを得た。緩和剤の存在下で定量的な13C NMRデータ取得を確実とするように、取得パラメータを選択した。データは、ゲートHデカップリング、データファイル毎に4000トランジエント(transient)、6秒のパルス繰返し遅延、24,200Hzのスペクトル幅、および、32kデータポイントのファイルサイズを用い、プローブヘッドを130℃に加熱し取得した。
【0045】
末端基分析
全てのサンプルの末端基分析を、以下の方法を用いH NMRを用いて行った。
【0046】
約0.100gのポリマーを、10mm NMRチューブ中の2.5mlの溶媒に加え、サンプルを調製した。溶媒は、1,1,2,2−テトラクロロエタン−dおよびペルクロロエチレンの50/50混合物である。チューブおよびその内容物を110℃に加熱し渦を作ることによって、サンプルを溶解および均質化した。Varian Unity Plus 400MHz NMR分光器を用いてデータを収集した。Presat実験に用いた取得パラメータは、30μsのパルス幅、データファイルあたり200トランジエント、1.6秒の取得時間、10000Hzのスペクトル幅、32kデータポイントのファイルサイズ、温度セットポイント110℃、D1遅延時間4.40秒、Sadly4.0秒、および、16のSatpwrを含む。
【0047】
「均一ポリマー」の語は、エチレン/α−オレフィンインターポリマー中で、(1)所定のポリマー分子内で、α−オレフィンコモノマーがランダムに分布すること、(2)実質的に全てのポリマー分子が同一のエチレン対コモノマー比率を有すること、ならびに、(3)インターポリマーが、例えば温度の関数としてポリマー分別溶出を行う方法のような既知の分別技術で測定可能な高密度(結晶)ポリマーフラクションを本質的に欠くこと、を意味する。均一ポリマー類の例としては、米国特許第5,272,236号(Laiら)、米国特許第5,278,272号、米国特許第6,054,544号、および、米国特許第6,335,410B号に規定されている、実質的に直鎖状のポリマー類が挙げられる。
【0048】
本明細書で用いる「インターポリマー」の語は、コポリマーまたはターポリマーなどを示す。すなわち、インターポリマーの生成には、エチレンと1つ以上の他のコモノマーとを重合させる。
【0049】
本明細書で用いる「液状ポリマー」の語は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、総結晶化度が10%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、均一エチレン/α−オレフィンポリマーを示す。
【0050】
本明細書で用いる「ゲル状ポリマー」の語は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、総結晶化度が50%より小さく、ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、均一エチレン/α−オレフィンポリマーを示す。
【0051】
本発明の液状およびゲル状ポリマー類は、エチレンと、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエンなどとの、均一ポリマーである。
【0052】
本発明の均一液状およびゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、エチレンと少なくとも1つの適切なコモノマーとのインターポリマー類であってもよい。好適なコモノマー類としては、C3〜20α−オレフィン類(特にプロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテン)、C4〜40非共役ジエン類、スチレン、アルキル置換スチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブテン、1,4−ヘキサジエン、ナフテン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、およびシクロオクテン)、ならびに、それらの混合物類が挙げられる。最も好適なのはプロピレンおよび1−オクテンである。
【0053】
エチレンプロピレンジエンターポリマー類(EPDM類)を製造する場合は、ジエン類は典型的には6から15の炭素原子を有する非共役ジエン類である。ターポリマー類を製造するために使用可能な好適な非共役ジエン類の代表的な例として、
(a)1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、および1,6−オクタジエンのような直鎖非環式ジエン類、
(b)5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、および3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンのような分枝鎖非環式ジエン類、
(c)4−ビニルシクロヘキセン、1−アリル−4−イソプロピリデンシクロヘキサン、3−アリルシクロペンテン、4−アリルシクロヘキセン、および1−イソプロペニル−4−ブテニルシクロヘキセンのような単環脂環式ジエン類、ならびに、
(d)ジシクロペンタジエン、アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、およびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−メチレン−6−メチル−2−ノルボルネン、5−メチレン−6,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−(3−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネンなど)
のような、多環脂環式縮合および架橋環状ジエン類が挙げられる。
【0054】
好適なジエン類は、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、7−メチル−1,6−オクタジエン、および4−ビニルシクロヘキセンなどからなる群より選択される。使用することができる1つの好適な共役ジエンは、ピペリレンである。
【0055】
最も好適なモノマー類はエチレン、プロピレン、およびエチリデンノルボルネン、または、エチレンおよびC3〜8α−オレフィンの混合物であり、最も特別にはプロピレンおよび1−オクテンである。
【0056】
本発明の均一液状およびゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、より好適には15,000より小さく、さらにより好適には11,000より小さく、最も好適には9,000より小さいことによって特徴づけられる。本発明のプロセスを用いると、5000より小さい数平均分子量を得ることが可能である。
【0057】
本発明の均一液状およびゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、150℃における溶融粘度が20,000cPより小さく、好適には10,000cPより小さく、より好適には5,000cPより小さく、最も好適には1000cPより小さいことにより特徴づけられ、150℃における溶融粘度を500cPより小さくすることも容易に達成可能である。しかし、ジエンが低分子量液状ポリマーの成分である場合、100℃における溶融粘度は好適には120,000cPより小さい。
【0058】
本発明の均一液状およびゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、Tgが−30℃より低く、好適には−50℃より低く、好適には−60℃より低い。
【0059】
本発明の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は実質的にアモルファスであり、DSCによって測定した総パーセント結晶化度が10%より小さく、好適には7%より小さく、より好適には5%より小さく、さらにより好適には2%より小さい。
【0060】
本発明の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、DSCによって測定した総パーセント結晶化度が50%より小さく、好適には40%より小さく、より好適には30%より小さく、さらにより好適には20%より小さい。
【0061】
本発明の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、最終ポリマー中のコモノマー含有量が15モル%より大きく、好適には30モル%より大きく、より好適には40モル%より大きく、さらにより好適には50モル%より大きい。
【0062】
本発明の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、最終ポリマー中のコモノマー含有量が10モル%より大きく、好適には12モル%より大きく、より好適には13モル%より大きく、さらにより好適には15モル%より大きい。
【0063】
本発明の均一液状またはゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、典型的には密度が0.870g/cmより小さい。
【0064】
本発明の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、典型的には、ポリマー中のビニリデン類のレベルが、鎖あたり(Mnを基準として)35%より低く、好適には30%より低く、より好適には25%より低く、さらにより好適には20%より低い。
【0065】
本発明の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、典型的には、ポリマー中のビニリデン類のレベルが、鎖あたり(Mnを基準として)15%より低く、好適には10%より低く、より好適には5%より低く、さらにより好適には3%より低い。
【0066】
本発明の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、ASTM D−97によって測定した流動点が50℃より低いことによって特徴づけられる。好適には、流動点は40℃より低く、より好適には25℃より低く、さらにより好適には15℃より低く、最も好適には0℃より低い。
【0067】
本発明の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、ASTM D−97によって決定した流動点が90℃より低いことによって特徴づけられる。好適には、流動点は80℃より低く、より好適には70℃より低く、さらにより好適には60℃より低く、最も好適には40℃より低い。
【0068】
本発明の液状およびゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、米国特許第5,064,802号、第5,132,380号、第5,703,187号、第6,034,021号、EP0468651、EP0514828、WO93/19104、および、WO95/00526に開示されている幾何拘束性触媒類を用いて製造可能である。他の適切な種類の触媒類は、米国特許第5,044,438号、第5,057,475号、第5,096,867号、および第5,324,800号に開示されているメタロセン触媒類である。幾何拘束性触媒類は、メタロセン触媒類であると考えてもよく、両方は場合によりシングルサイト触媒類として先行文献中に言及されていることに留意しなければならない。
【0069】
例えば、触媒類は式
【化1】


で示される金属配位錯体類から選択されてもよい。
【0070】
(式中、Mは元素周期表の3、4〜10族、またはランタノイド系列の金属であり、Cpは、Mにη結合モードで結合したシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル基であり、Zはホウ素、または、元素周期表の14族の元素、および、場合により、イオウまたは酸素を含む部分であり、前記部分は最大40までの非水素原子を含み、および、場合により、CpおよびZは一緒になって縮合環系を形成し、Xは独立にそれぞれの場合アニオン性リガンド基であり、前記Xは30までの非水素原子を有し、Yがアニオン性の場合nはMの価数より2小さく、Yが中性の場合はMの価数より1小さく、Lは独立にそれぞれの場合中性ルイス塩基リガンド基であり、前記Lは30までの非水素原子を有し、mは0、1、2、3または4であり、YはZおよびMに結合し、窒素、リン、酸素またはイオウおよび40までの非水素原子を含む、アニオン性または中性のリガンド基であり、場合によりYおよびZは一緒になって縮合環系を形成していてもよい)。
【0071】
適切な触媒類は式
【化2】


で示される金属配位錯体類から選択されてもよい。
【0072】
(式中、R’はそれぞれの場合独立に、水素、アルキル、アリール、シリル、ゲルミル、シアノ、ハロおよび20までの非水素原子を有するこれらの組合せからなる群より選択され、Xはそれぞれの場合独立にヒドリド、ハロ、アルキル、アリール、シリル、ゲルミル、アリールオキシ、アルコキシ、アミド、シロキシ、および、20までの非水素原子を有するそれらの組合せからなる群より選択され、Lはそれぞれの場合独立に、30までの非水素原子を有する中性ルイス塩基リガンドであり、Yは−O−、−S−、−NR−、−PR-−、または、OR、SR、NR、PRからなる群から選択される中性の2つの電子供与性リガンドであり、M、n、およびmは、前記の定義の通りであり、ZはSiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiR、GeR、BR、BRであり、ここで、Rはそれぞれの場合独立に、水素、アルキル、アリール、シリル、ハロゲン化アルキル、20までの非水素原子を有するハロゲン化アリール基、および、それらの混合物、または、Y、Z、もしくは、YおよびZの両方からの2つ以上のR基は縮合環系を形成する)。
【0073】
式Iおよび以下の式は触媒類の単量体構造を示しているが、錯体は2量体またはより大きなオリゴマーとして存在してもよいことに留意すべきである。
【0074】
さらに好適には、R’、Z、または、R*の少なくとも1つが電子供与性の部分である。よって、Yが式−N(R””)−または−P(R””)−(式中、R””はC1〜10アルキルまたはアリールである)に対応する窒素またはリンを含有する基、すなわちアミドまたはホスフィド基であることが非常に好ましい。
【0075】
追加の触媒類は式
【化3】


で示されるアミドシラン−またはアミドアルカンジイル−化合物類から選択されてもよい。
【0076】
(式中、Mはシクロペンタジエニル基にη結合モードで結合する、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、R’はそれぞれの場合独立に、水素、シリル、アルキル、アリール、および、10までの炭素またはケイ素原子を有するそれらの組合せからなる群から選択され、Eはケイ素または炭素であり、Xはそれぞれの場合独立に、10までの炭素原子を有するヒドリド、ハロ、アルキル、アリール、アリールオキシ、または、アルコキシであり、mは1または2であり、ならびに、nはMの原子価に応じて1または2である)。
【0077】
上記の金属配位化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、前記アミド基上の前記R’がメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、(異性体類を含む)、ノルボルニル、ベンジル、フェニルなどであり、前記シクロペンタジエニル基がシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニルなどであり、前記シクロペンタジエニル基上のR’が、それぞれの場合、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、(異性体類を含む)、ノルボルニル、ベンジル、フェニルなどであり、Xがクロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、(異性体類を含む)、ノルボルニル、ベンジル、フェニルなどである、化合物を挙げることができる。
【0078】
詳細な化合物としては、これらに限定されるものではないが、(tert−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジメチル、(tert−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタニウムジメチル、(メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロリド、(メチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタニウムジクロリド、(エチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−メチレンチタニウムジクロロ、(tert−ブチルアミド)ジフェニル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)−シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル−(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタニウムジクロリド、(フェニルホスフィド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジルなどを挙げることができる。
【0079】
他の適切な種類の触媒は、米国特許第5,965,756号および第6,015,868号に開示されている置換インデニル含有金属錯体類である。他の好適な触媒類は、米国特許第5,616,664号、および同時係属中の米国特許出願シリアル番号第09/230,185号、および、第09/715,380号、米国特許仮出願シリアル番号第60/215,456号、第60/170,175号、および、第60/393,862号に開示されている。これらの触媒類は、より高分子量の能力を有する傾向がある。
【0080】
上記の触媒類の1種類は、以下のインデニル含有金属である。
【化4】

【0081】
(式中、Mは形式酸化状態が+2、+3または+4であるチタニウム、ジルコニウム、またはハフニウムであり、A’は40までの非水素原子を有するヒドロカルビル、フルオロ置換ヒドロカルビル、ヒドロカルビロキシ置換ヒドロカルビル、ジアルキルアミノ置換ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、および、それらの混合物から選択される基で、少なくとも2つまたは3つの部位を置換された置換インデニル基であり、および、A’はさらにMに2価のZ基を通じて共有結合していてもよく、ZはA’およびMの両方にσ結合を通じて結合する2価の部分であり、Zはホウ素または元素周期律表の14族の元素を含み、および、窒素、リン、イオウ、または酸素もまた含み、Xは60までの原子を含み、環状、非局在、π結合リガンド基を除く、アニオン性またはジアニオン性リガンド基であり、X’は独立にそれぞれの場合、20までの原子を有する中性ルイス塩基であり、pは0、1、または2であり、Mの形式酸化状態より2小さく、ただし、Xがジアニオン性リガンド基の場合、pは1であり;qは0、1または2である)。
【0082】
上記の錯体類は、単離結晶として場合により純粋な形で、または、他の錯体類との混合として、溶媒和付加物の形で、場合によっては溶媒中、特に有機液体中で、およびそれらの2量体またはキレート誘導体の形で存在していてもよく、ここで前記キレート剤は有機物質であり、好適には中性ルイス塩基、特にトリヒドロカルビルアミン、トリヒドロカルビルホスフィン、または、それらのハロゲン化誘導体である。
【0083】
好適な触媒は、
【化5】


で表される。
【0084】
(式中、RおよびR2は、RまたはRの少なくとも1つが水素でないことを条件として、独立して水素、ヒドロカルビル、ペルフルオロ置換ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、および、それらの混合物から選択される基であり、20までの非水素原子を含み、R、R、R、およびRは独立に、水素、ヒドロカルビル、ペルフルオロ置換ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、および、それらの混合物から選択される基であり、20までの非水素原子を含み、Mはチタニウム、ジルコニウム、または、ハフニウムであり、Zはホウ素または元素周期律表14族の一員を含み、および窒素、リン、イオウ、または酸素も含む2価部分であり、60までの非水素原子を有し、pは0、1または2であり、qは0または1であるが、ただし、pが2でqが0の場合はMが+4の形式的酸化状態にあって、Xがハライド、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、ジ(ヒドロカルビル)アミド、ジ(ヒドロカルビル)ホスフィド、ヒドロカルビルスルフィドおよびシリル基に加えて、それらのハロ−、ジ(ヒドロカルビル)アミノ−、ヒドロカルビルオキシ−、および、ジ(ヒドロカルビル)ホスフィノ−置換誘導体からなる群から選択されるアニオン性リガンドであり、ここで、前記X基は20までの非水素原子を有し、pが1でqが0の場合には、Mが+3の形式的酸化状態にあって、Xがアリル、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル、および2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルからなる群から選択される安定化アニオン性リガンド基であるか、または、Mが+4の形式的酸化状態にあって、および、Xが共役ジエンの2価誘導体であり、MとXは一緒にメタロシクロペンテン基を形成しており、ならびに、pが0でqが1の場合、Mが+2の形式的酸化状態にあって、X’は場合により1つ以上のヒドロカルビル基で置換されていてもよい中性の共役もしくは非共役ジエンであり、前記X’は40までの炭素原子を有し、Mと一緒にπ錯体を形成する)。
【0085】
さらに好適な触媒は、
【化6】


で表される。
【0086】
(式中、RおよびRは水素またはC1〜6アルキルであるが、ただしRまたはRの少なくとも1つが水素でないことを条件とし、R、R、RおよびRは独立して水素またはC1〜6アルキルであり、Mはチタニウムであり、Yは−O−、−S−、−NR−、−PR−であり、Zは、SiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiRまたはGeRであり、Rはそれぞれの場合独立して水素であるか、または、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールおよびそれらの組み合わせから選択される一員であり、前記Rは20までの非水素原子を有し、場合により、Zからの2つのR基(Rが水素でない場合)、またはZからのR基とYからのR基が環系を形成していてもよく、pは0、1または2であり、qは0または1であり、ただし、pが2でqが0の場合はMは+4の形式的酸化状態にあり、ならびに、Xは独立してそれぞれの場合メチルまたはベンジルであり、pが1でqが0の場合、Mが+3の形式的酸化状態にあって、Xが2−(N,N−ジメチル)アミノベンジルであるか、または、Mが+4の形式的酸化状態にあってXが1,4−ブタジエニルであり、および、pが0でqが1の場合、Mが+2の形式的酸化状態にあって、X’が1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンである)。 後者のジエンは、実際に個々の幾何学的異性体の混合物である金属錯体の生成をもたらす不斉ジエン基の例である。
【0087】
本発明で使用できるさらに他の触媒類、共触媒類、触媒系、および活性化手法は、1996年8月1日に公開のWO96/23010、1999年3月25日に公開のWO99/14250、1998年9月24日に公開のWO98/41529、1997年11月13日に公開のWO97/42241、1997年11月13日に公開のWO97/42241、Scollardらにより公開のJ. Am. Chem. Soc 1996,118, 10008-10009、1996年11月13日に公開のEP0468537B1、1997年6月26日に公開のWO97/22635、1999年10月13日に公開のEP0949278A2、1999年10月13日に公開の0949279A2、2000年12月27日に公開のEP1063244A2、米国特許第5,408,017号、米国特許第5,767,208号、米国特許第5,907,021号、1988年8月11日に公開のWO88/05792、1988年8月11日に公開のWO88/05793、1993年12月23日に公開のWO93/25590、米国特許第5,599,761号、米国特許第5,218,071号、1990年7月12日に公開のWO90/07526、米国特許第5,972,822号,米国特許第6,074,977号、米国特許第6,013,819号、米国特許第5,296,433号、米国特許第4,874,880号、米国特許第5,198,401号、米国特許第5,621,127号、米国特許第5,703,257号、米国特許第5,728,855号、米国特許第5,731,253号、米国特許第5,710,224号、米国特許第5,883,204号、米国特許第5,504,049号、米国特許第5,962,714号、米国特許第5,965,677号、米国特許第5,427,991号、1993年10月28日に公開のWO93/21238、1994年2月17日に公開のWO94/03506、1993年10月28日に公開のWO93/21242、1994年1月6日に公開のWO94/00500、1996年1月4日に公開のWO96/00244、1998年11月12日に公開のWO98/50392、WangらによるOrganometallics, 1998,17, 3149-3151、YounkinらによるScience 2000,287, 460-462、ChenおよびMarksによるChem. Rev. 2000,100, 1391-1434、Alt and KopplによるChem. Rev. 2000,100, 1205-1221、ResconiらによるChem. Rev. 2000,100, 1253-1345、IttelらによるChemRev. 2000,100, 1169-1203、CoatesによるChem. Rev., 2000,100, 1223-1251、ならびに1996年5月9日に公開のWO96/13530に開示されているものを含む。1999年1月15日に出願のUSSN09/230,185、米国特許第5,965,756号、米国特許第6,150,297号、2000年11月17日に出願のUSSN09/715,380に開示されている触媒類、共触媒類、および、触媒システム類もまた有用である。さらに、前述の触媒類の製造方法は、例えば米国特許第6,015,868号に記載されている。
【0088】
活性化共触媒と組み合わせるか、または、活性化技術を用いることで、上記触媒類を触媒活性にしてもよい。本明細書で用いられる適切な活性化共触媒としては、これらに限定されるものではないが、ポリマー性またはオリゴマー性アルモキサン類、特にメチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム改質メチルアルモキサン、またはイソブチルアルモキサン;中性ルイス酸、例えば、各ヒドロカルビルまたはハロゲン化ヒドロカルビル基が1から30の炭素を有するC1〜30ヒドロカルビル置換13族化合物、特にトリ(ヒドロカルビル)アルミニウム−、または、トリ(ヒドロカルビル)ホウ素化合物、および、それらのハロゲン置換(過ハロゲン化を含む)誘導体類、より詳細には過フルオロ化トリ(アリール)ホウ素、および、過フルオロ化トリ(アリール)アルミニウム化合物、フルオロ置換(アリール)ホウ素化合物とアルキル含有アルミニウム化合物の混合物、詳細にはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとトリアルキルアルミニウムの混合物、または、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと、アルキルアルモキサン類との混合物、さらに詳細には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとメチルアルモキサンとの混合物、および、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとパーセンテージの高級アルキル基類で改質したメチルアルモキサン(MMAO)との混合物、および、最も詳細には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素とトリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム;高分子でなく、適合性の、非配位性のイオン形成化合物類(酸化条件下でのそのような化合物類の使用を含む)、特に、適合性非配位性アニオンのアンモニウム−、ホスホニウム−、オキソニウム−、カルボニウム−、シリリウム−、または、スルホニウム塩、または、適合性配位性アニオンのフェロセニウム塩の使用;バルクエレクトロリシス(bulk electrolysis)、ならびに、前記活性化共触媒と活性化技術の組み合わせが含まれる。他の金属錯体に関する前述の活性化共触媒および活性化技術は、以下の文献に教示されている。EP−A−277,003、US−A−5,153,157、US−A−5,064,802、EP−A−468,651(米国特許出願シリアル番号第07/547,718号に相当)、EP−A−520,732(米国特許出願シリアル番号第07/876,268号に相当)、および、EP−A−520,732(1992年5月1日出願の米国特許出願シリアル番号第07/884,966号に相当)。
【0089】
中性ルイス酸類の組み合わせ、特に各アルキル基中の炭素数が1から4のトリアルキルアルミニウム化合物と、各ヒドロカルビル基中の炭素数が1から20のハロゲン化トリ(ヒドロカルビル)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせ、さらに前記中性ルイス酸混合物とポリマー性もしくはオリゴマー性アルモキサンの組み合わせ、そして単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマー性もしくはオリゴマー性アルモキサンの組み合わせが、特に望ましい活性化共触媒類である。そのようなトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン/アルモキサン混合物の組み合わせを用いると、低いレベルのアルモキサンにおいて、触媒の活性化が最も高い効率で起こることが観察された。4族金属錯体:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン:アルモキサンの好適なモル比は1:1:1から1:5:10、より好適には1:1:1から1:3:5である。このようなより低いレベルのアルモキサンの効率的な使用は、より少ない高価なアルモキサン共触媒の使用による、高い触媒効率でのオレフィンポリマー類の製造を可能とする。さらに、アルミニウム残渣のレベルがより少ない、したがって、透明度がより高いポリマー類が得られる。
【0090】
本発明の実施態様の一部で共触媒として有用なイオン形成化合物は、プロトンを供与する能力を持つブレンステッド酸であるカチオン、および、親和性のある非配位性アニオンA-を含むものである。本明細書中で用いる「非配位性」の語は、第4族金属を含有する前駆体錯体およびそれらから誘導される触媒誘導体に配位しないか、または、このような錯体に僅かに弱く配位され、それによって中性のルイス塩基で置換され得る程度の不安定さを残している、アニオンまたは物質を意味する。非配位性アニオンは、カチオン金属錯体中の電荷平衡アニオンとして機能する場合は、それによって、実質的にカチオン性金属錯体の触媒としての使用目的を阻害する中性の錯体を途中で生じさせるようなアニオン性置換基またはそのフラグメントの上記カチオンへの移動を引き起こさない、アニオンを特にさす。「適合性アニオン」は、最初に形成された錯体が分解するとき中性に劣化することなく、そして次の所望の重合または錯体の他の使用に干渉しないアニオンである。
【0091】
好適なアニオン類は、電荷を帯びた金属またはメタロイド核を含む、単一の配位錯体を含むものであり、ここでアニオンは2つの成分が混合される場合に形成されることがある活性触媒種(金属カチオン)の電荷を平衡にする能力を有する。また、前記アニオンは、オレフィン性、ジオレフィン性、および、アセチレン性不飽和化合物、または、エーテル類もしくはニトリル類のような他の中性のルイス塩基によって置きかえられ得る程度に、置換活性(labile)であるべきである。適切な金属類としては、これらに限定されるものではないが、アルミニウム、金および白金が挙げられる。適切なメタロイド類としては、これらに限定されるものではないが、ホウ素、リンおよびケイ素が挙げられる。金属またはメタロイド原子を1個有する配位錯体類を含むアニオンを含有する化合物はもちろん公知であり、特にアニオン部分の中にホウ素原子を1個有するそのような化合物が、多く市販されている。
【0092】
好適には、このような共触媒は、下記一般式によって表わすことができる。
【0093】
(L−H)(A)d− ・・・式VII
【0094】
(式中、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)は、ブレンステッド酸であり、Ad-は、d−の電荷を有するアニオンであり、および、dは1から3の整数である)。 より好適には、Ad−は、化学式[M’Qに対応する。(式中、M’は形式的酸化状態が+3のホウ素またはアルミニウムであり、および、Qは独立してそれぞれの場合、ヒドリド、ジアルキルアミド、ハライド、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシド、ハロ置換ヒドロカルビル、ハロ置換ヒドロカルビルオキシ、および、ハロ置換シリルヒドロカルビルラジカル類(過ハロゲン化ヒドロカルビル−、過ハロゲン化ヒドロカルビルオキシ−、および、過ハロゲン化シリルヒドロカルビル−ラジカルを含む)から選択され、ここで、前記Qは20までの炭素を有し、ただしQハライドは1回以内である)。 適切なヒドロカルビルオキシドであるQ基の例は、米国特許第5,296,433号に開示されている。
【0095】
より好適な態様において、dは1であり、すなわち、前記対イオンは単一負電荷を有し、A-である。本発明の触媒類の調製に特に有用なホウ素を含む活性化共触媒類は、下記一般式により表すことができる。
【0096】
(L−H)(M’Q ・・・式VIII
【0097】
(式中、Lは前に定義した通りであり、 M’は3価の形式酸化状態にあるホウ素またはアルミニウムであり、そしてQは20までの非水素原子を有するヒドロカルビル−、ヒドロカルビルオキシ−、フッ素化ヒドロカルビル−、フッ素化ヒドロカルビルオキシ−、またはフッ素化シリルヒドロカルビル−基であり、ただし、Qヒドロカルビルは1回以内である)。最も好適には、Qはそれぞれの場合、フッ素化アリール基、特にペンタフルオロフェニル基である。好適な(L−H)+カチオン類は、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジ(オクタデシル)アニリニウム、ジ(オクタデシル)メチルアンモニウム、メチルビス(水素化タロウイル)アンモニウム、およびトリブチルアンモニウムである。
【0098】
活性化共触媒として使用可能なホウ素化合物の具体例は、これらに限定されるものではないが、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(sec−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラート、および、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラートのような、トリ置換アンモニウム塩類;ジ−(i−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、および、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのような、ジアルキルアンモニウム塩類;トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(o−トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、および、トリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのような、トリ置換ホスホニウム塩類;ジフェニルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジ(o−トリル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、および、ジ(2,6−ジメチルフェニル)オキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのような、ジ置換オキソニウム塩類;ジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジ(o−トリル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、および、ビス(2,6−ジメチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのような、ジ置換スルホニウム塩類、である。
【0099】
好適なシリリウム塩活性化共触媒としては、これらに限定されるものではないが、トリメチルシリリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トリエチルシリリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、および、それらのエーテル置換付加物である。シリリウム塩類は以前、J. Chem Soc. Chem. Comm., 1993,383-384、および、Lambert, J. B.らによるOrganometallics, 1994,13,2430-2443に概要が開示された。上述したシリリウム塩類を付加重合用触媒類の活性化用共触媒類として用いることが米国特許第5,625,087号に開示されている。アルコール類、メルカプタン類、シラノール類、および、オキシム類と、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの錯体類もまた有効な触媒活性化剤であり、本発明の実施態様に使用可能である。そのような共触媒は、米国特許第5,296,433号に開示されている。
【0100】
触媒系は、必要な成分を溶液重合法によって重合が実施される溶媒に添加することにより、均一触媒として調製可能である。前記触媒系はまた、シリカゲル、アルミナ、または、他の適切な無機担体物質のような触媒担体物質に吸着させることにより、不均一触媒として調製して用いることも可能である。不均一または担持形態で調製される場合、シリカを担体物質として用いることが好適である。
【0101】
常時、触媒成分だけではなく個々の原料も酸素および湿分から保護されるべきである。したがって、触媒成分および触媒は、酸素および湿分を含まない雰囲気中で製造しそして回収するべきである。好適には、したがって、例えば窒素やアルゴンのような乾燥不活性ガスの存在下で反応を行う。
【0102】
用いられる金属錯体:活性化共触媒のモル比は、好適には1:1000から2:1であり、より好適には1:5から1.5:1であり、最も好適には1:2から1:1である。金属錯体がトリスペンタフルオロフェニルボランおよびトリイソブチルアルミニウムで変成されたメチルアルモキサンで活性化される好適な態様においては、チタン:ホウ素:アルミニウムのモル比率は、典型的には1:10:50から1:0.5:0.1であり、最も典型的には約1:3:5である。
【0103】
一般的に、チーグラー・ナッタまたはメタロセン系重合反応に用いられる条件、すなわち、大気圧から3500気圧(34.5kPa)の範囲の反応器圧力で重合を達成することができる。反応器温度は80℃より高くあるべきであり、典型的には100℃から250℃、好適には100℃から150℃であり、高い反応器温度、すなわち100℃を超える反応器温度では低分子量ポリマー類が生成し易くなる。
【0104】
液状低分子量ポリマー類の製造に用いるプロセスの1つの実施態様では、反応器中で水素を用いない。最終ポリマー中のコモノマー含有量を15モル%より大きく、好適には30モル%より大きく、より好適には40モル%より大きく、さらにより好適には50モル%より大きくするために、反応器へのコモノマー供給が充分なこともまた、このプロセスの特徴である。
【0105】
一般的には、エチレンの差圧が10から1000psi(70から7000kPa)、最も好適には40から60psi(300から400kPa)になるように重合方法を実施する。重合は、一般的には80から250℃、好適には90から170℃、そして最も好適には95℃を超え140℃までの温度で行う。
【0106】
ほとんどの重合反応においては、用いられる触媒:重合性化合物のモル比は10−12:1から10−1:1、より好ましくは10−9:1から10−5:1である。
【0107】
溶液重合条件では、それぞれの反応成分に対して溶媒を用いる。好適な溶媒の例として、反応温度で液体である鉱油(mineral oil)および種々の炭化水素が挙げられる。有用な溶媒の説明的例には、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびノナンのようなアルカン類ばかりでなく、ケロセンおよびExxon Chemicals Inc.から入手可能なIsopar E(商標)を含むアルカン類の混合物、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのようなシクロアルカン類、そしてベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼンおよびジエチルベンゼンのような芳香族が含まれる。
【0108】
溶媒は、反応器中で相分離が起こらないようにするのに充分な量で使用する。溶媒は熱を吸収する作用をするので、溶媒が少ないほど反応器の断熱性が小さくなる。溶媒:エチレン比(重量基準)は典型的には、2.5:1から12:1であり、それより大きくては触媒効率が低下する。最も典型的な溶媒:エチレン比(重量基準)は、5:1から10:1の範囲内である。
【0109】
重合はバッチ式または連続式重合プロセスで行うことができ、本発明の低分子量ポリマー類の製造には連続溶液重合プロセスが最も好適である。連続プロセスでは、エチレン、コモノマー、ならびに、場合により溶媒およびジエンを反応域に連続的に供給し、生成重合体を反応域から連続的に取り除く。
【0110】
本発明の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、第1の反応器で重合され、低分子量ポリマーが製造される反応器と直列または並列に接続される第2の反応器で重合される第2のポリマー(より高分子量および/または異なる密度、および/または不均一である)と共に、所望の特性を有する反応器内ポリマーブレンドを製造してもよい。少なくとも1つの成分が本発明の均一液状またはゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーであるブレンドを製造する、本明細書の開示中の教示に基づき適用可能な、2基の反応器を用いるプロセスの例は、WO94/00500(米国特許出願シリアル番号第07/904,770号に相当)および、1993年1月29日に出願の米国特許出願シリアル番号第08/10958号に開示されている。
【0111】
本明細書に開示されている均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類は、潤滑油の製造に、または油の添加剤類として用いることができる。本明細書に開示されているポリマー類は、以下の米国特許中に開示されている潤滑剤または油の添加剤の1つ以上の成分のかわりに用いることが可能である。発明の名称が「Unsaturated copolymers, processes for preparing the same, and compositions containing the same」である米国特許第6,310,164号、発明の名称が「Polyolefin block copolymer viscosity modifier」である米国特許第6,110,880号、発明の名称が「Copolymers of ethylene alpha-olefin macromers and dicarboxylic monomers and derivatives thereof, useful as additives in lubricating oils and in fuels」である米国特許第6,100,224号、発明の名称が「Copolymer and copolymer composition」である米国特許第6,084,046号、発明の名称が「Polymers derived from ethylene and 1-butene for use in the preparation of lubricant disperant additives」である米国特許第6,030,930号、発明の名称が「Polymers derived from olefins useful as lubricant and fuel oil additives, processes for preparation of such polymers and additives and use thereof」である米国特許第6,017,859号、発明の名称が「Lubricating oil composition」である米国特許第5,912,212号、発明の名称が「Polymers derived from olefins useful as lubricant and fuel oil additives, processes for preparation of such polymers and additives and use thereof (PT-1267)」である米国特許第5,811,379号、発明の名称が「Ethylene alpha-olefin/diene interpolymer-substituted carboxylic acid dispersant additives」である米国特許第5,759,967号、発明の名称が「Gel-free alpha-olefin dispersant additives useful in oleaginous compositions」である米国特許第5,747,596号、発明の名称が「Functionalization of polymers based on Koch chemistry and derivatives thereof」である米国特許第5,717,039号、発明の名称が「Gel-free ethylene interpolymer dispersant additives useful in oleaginous compositions」である米国特許第5,663,129号、発明の名称が「Oxidation-inhibitive lubricating oil composition」である米国特許第5,658,865号、発明の名称が「Derivatized ethylene alpha-olefin polymer useful as multifunctional viscosity index improver additive for oleaginous composition (PT-796)」である米国特許第5,366,647号、発明の名称が「Fuel compositions of novel ethylene alpha-olefin polymers substituted amine dispersant additives」である米国特許第5,294,234号、発明の名称が「Ethylene alpha-olefin polymer substituted mono-and dicarboxylic acid lubricant dispersant additives」である米国特許第5,277,833号、発明の名称が「Derivatized ethylene alpha-olefin polymer useful as multifunctional viscosity index improver additive for oleaginous composition」である米国特許第5,275,747号、発明の名称が「Ethylene alpha-olefin polymer substituted mono- and dicarboxylic acid dispersant additives (PT-920)」である米国特許第5,229,022号、および、発明の名称が「Novel ethylene alpha-olefin copolymer substituted Mannich base lubricant dispersant additives」である米国特許第5,017,299号。
【0112】
本明細書に開示する均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類を用いて、多用な潤滑剤組成物または潤滑油を配合することが可能である。例えば、潤滑油組成物は、本発明に開示する均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類および潤滑油添加剤を含むことが可能である。均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類を潤滑油の基油(base oil)として用い、極圧添加剤、耐摩耗剤、油性向上剤、および、洗浄分散剤のような少なくとも1つの添加剤と混合すると、卓越した特性を有する潤滑油組成物を得ることが可能である。
【0113】
加えて他の潤滑油組成物は、(1)鉱油および/または炭化水素合成油を含む基油、(2)135℃デカリン中で測定した固有粘度[η]が0.1から5.0dl/gであるか、100℃の動粘度が4から200センチストロークである、本発明の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー、および場合により(3)潤滑油添加剤、を含むことが可能である。
【0114】
本発明の実施態様に従い、粘度指数向上剤を配合することも可能である。これは、前記潤滑油組成物に使用可能なものと同一の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類を含む。同様に、本発明の実施態様に従い、潤滑油相溶性改良剤を配合することも可能である。これは、3つめの潤滑油組成物に使用可能なものと同一の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類を含む。
【0115】
本発明の実施態様に従い(1)沸点が150から400℃である中間留分(middle fraction)燃料油、および(2)均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類を含む燃料油流動性改質剤を含む、燃料油組成物を製造することも可能である。
【0116】
本発明の実施態様に用いる潤滑油添加剤は、極圧添加剤、耐摩耗剤、油性向上剤、および、洗浄分散剤から選択される少なくとも1つの添加剤である。
【0117】
極圧添加剤類の例としては、スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、チオホスフィナート類、チオカーボナート類、脂肪類、油類、硫化油脂類、および、オレフィンスルフィド類のような、イオウ系極圧添加剤類、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、リン酸エステルアミン類、および、亜リン酸エステルアミン類のようなリン酸類、ならびに、塩素化炭化水素類のようなハロゲン化合物類が挙げられる。
【0118】
耐摩耗剤の例としては、二硫化モリブデンのような無機または有機モリブデン化合物類、アルキルメルカプチルボラートのような有機ホウ素化合物類、グラファイト、硫化アンチモン、ホウ素化合物類、および、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0119】
油性向上剤類の例としては、オレイン酸およびステアリン酸のような高級脂肪酸類、オレイルアルコールのような高級アルコール類、アミン類、エステル類、硫化油脂類、ならびに、塩素化油脂類が挙げられる。
【0120】
洗浄分散剤類の例としては、スルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、およびスルホン酸バリウムのようなスルホン酸金属塩類、チオホスホナート類、フェナート類、サリチラート類、スクシンイミド類、ベンジルアミン類、および、スクシナート類を挙げることができる。
【0121】
潤滑油組成物はさらに、粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、および、消泡剤を含んでいてもよい。
【0122】
粘度指数向上剤類としては一般的に潤滑油に添加されるものを使用可能であるが、これらの例としては、鉱油のような天然樹脂類、エチレン/α−オレフィンコポリマー、α−オレフィンホモポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリ(メト)アクリラートおよびナフタレン縮合物のような合成樹脂類が挙げられる。酸化防止剤類の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールのようなアミン化合物類、および、ジチオリン酸亜鉛のようなイオウまたはリン化合物類が挙げられる。
【0123】
腐食防止剤の例としては、シュウ酸のようなカルボン酸類およびそれらの塩類、スルホナート類、エステル類、アルコール類、リン酸およびその塩類、ベンゾチアゾールおよびその誘導体類、ならびに、チアゾール化合物類が挙げられる。
【0124】
消泡剤の例としては、ジメチルシロキサンおよびシリカゲル分散物のようなシリコーン化合物類、アルコール化合物類、ならびにエステル化合物類が挙げられる。要求される潤滑特性に応じて用いる潤滑油添加剤の量は変化するが、通常の範囲は、100重量部の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを基準として、0.01から80重量部、好適には0.05から60重量部である。
【0125】
潤滑油組成物は、50重量%までの量の鉱油または炭化水素合成油をさらに含んでいても良い。
【0126】
潤滑油組成物は均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを基油として含むため、この組成物は粘度特性、熱安定性、酸化安定性および耐摩耗性だけではなく、添加剤類との相溶性にも優れる。
【0127】
場合により潤滑油組成物において用いられる基油は、鉱油および/または炭化水素合成油を含む潤滑基油である。これらの油類は、100℃における粘度が1.5から40.0mm/秒、好適には2.0から10mm/秒である限りは、特に制限なく単独または2種以上の混合物として使用可能である。鉱油は上記範囲の粘度を有する。
【0128】
鉱油は、例えば、パラフィン基原油または中間基原油を常圧蒸留にかけ、もしくは、常圧蒸留の残油を減圧蒸留にかけ、つづいて得られた蒸留油を通常の方法で精製することによって得られる精製油、または、前記で得られた精製油を高脱蝋(deep dewaxing)することにより得られる高脱蝋油である。精製方法の例としては、水素添加、脱蝋、溶媒抽出、アルカリ蒸留、硫酸洗浄およびクレー処理が挙げられる。これらの方法は、単一で行っても、適切に組み合わせて行ってもよく、また、同じ方法を複数回くりかえしてもよい。これらの場合には、方法の順序および繰り返しの回数については特に制限はない。本発明において、厳しい条件下の溶媒脱蝋プロセスで得られた、または、ゼオライト触媒を用いた触媒性水素添加脱蝋プロセスのような高脱蝋プロセスによって得られた鉱油を用いることが特に好適である。
【0129】
好適に用いられる炭化水素合成油類の例としては、2から20の炭素原子を有するオレフィン類またはこれらのオレフィン類の任意の混合物の重合または共重合によって得られるオリゴマー類、例えば、1−オクテンのオリゴマー、1−デセンのオリゴマー、および1−ドデセンのオリゴマーが挙げられる。鉱油および/または炭化水素合成油に加えて、ジ−2−エチルヘキシルセバカート、ジオクチルアジパート、および、ジオクチルドデカノアートのようなジエステル類、ペンタエリスリトールテトラオレアート、およびトリメチロールプロパントリペラルゴナートのようなポリオールエステル類もまた使用可能である。オリゴマー類は、2から20の炭素原子を有するオレフィン類を、何らかのプロセスで(共)重合することによって得られる。
【0130】
本明細書で開示される添加剤濃縮物類および潤滑油組成物は、他の添加剤類を含んでいてもよい。そのような添加剤類の使用は任意であり、組成物中のそれらの存在は、特定の用途および要求される性能のレベルにより異なる。よって、他の添加剤を含む、または除外する場合がある。添加剤濃縮物は典型的には、約0.1重量%から約30重量%の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー、および、約70重量%から約99.9重量%の、実質的に不活性で通常は液状の有機希釈剤を含む。
【0131】
潤滑油組成物類は、多くの場合ジチオリン酸亜鉛類、ジンク0,0ジヒドロカルビルジチオホスフェート類、および他の一般名でよばれる、ジチオリン15酸の亜鉛塩をしばしば含む。これらは場合によって2DPという省略形でよばれる。追加の極圧、耐磨耗性(anti-wear)および耐オキシダント性能を得るために、1つ以上のジチオリン酸類の亜鉛塩類が少量存在してもよい。
【0132】
場合により本発明の潤滑油類に使用可能な他の添加剤としては、例えば洗浄剤類、分散剤類、補助的な粘度改良剤類、酸化防止剤類、腐蝕防止剤類、流動点降下剤類、極圧添加剤類、耐磨耗剤類、色安定剤、摩擦改良剤、および、消泡剤が挙げられる。本発明の組成物に含むことができる極圧添加剤ならびに腐蝕および酸化防止剤は、塩素化脂肪族炭化水素類、有機硫化物類および多硫化物類、ジヒドロカーボンおよびトリヒドロカーボンホスフィット類のようなリン酸エステル類、ならびに、モリブデン化合物類を例示として挙げられる。
【0133】
他の酸化防止剤類としては、アルキル化ジフェニルアミン類、ヒンダードフェノール類のような物質、特に、フェノール性−OH基のオルト位に、3級ブチルのような3級アルキル基を有する物質などが挙げられる。このような物質は当業者に周知である。
【0134】
消えにくい泡の生成を低減または防止するため用いる消泡剤類としては、シリコーン類または有機ポリマー類が挙げられる。これらおよび追加の消泡剤組成物の例は、Henry T. Kemerによる「Foam Control Agents」(Noyes Data Corporation, 1976)の125〜162頁に記載されている。
【0135】
洗浄剤類および分散剤類は、灰生成タイプ(ash-producing type)でも無灰タイプ(ashless type)でもよい。灰生成洗浄剤類は、アルカリまたはアルカリ土類金属と、スルホン酸類、カルボン酸類、フェノール類、または少なくとも1つの直接の炭素−リン結合があることにより特徴づけられる有機リン酸類の、油溶性の中性および塩基性塩類で例示される。
【0136】
上記に示した他の添加剤類は、0.001重量%以上、通常は約0.01重量%から20重量%の範囲の濃度で、それぞれ潤滑性組成物中に存在してもよい。ほとんどの場合、これらは約0.1重量%から約10重量%、より多くの場合には約5重量%までで、それぞれが貢献する。
【0137】
本明細書に記載の多様な本発明の添加剤組成物類は、潤滑粘度の油に直接添加可能である。しかし好適には、これらは本質的に不活性で通常は液状有機希釈剤、例えば鉱油や、ポリα−オレフィン、ナフサ、ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような合成油によって希釈され、添加剤濃縮物を形成する。これらの濃縮物は、通常は本発明のインターポリマー類を約0.1重量%から約30重量%、多くの場合約1重量%から約20重量%、より多くの場合約5重量%から約15重量%含む場合があり、さらに1つ以上の他の公知または上述の添加剤を含む場合がある。添加剤濃縮物は、多くの場合高温で、通常は150℃より低い、多くの場合約130℃以下、しばしば約115℃以下で、所望の成分を一緒に混合することにより製造する。
【0138】
本発明の潤滑組成物類は、天然または合成潤滑油類、およびこれらの混合物を含む、潤滑粘度の油を用いる。鉱油と、合成油類、特にポリα−オレフィン油類およびポリエステル油類の混合物が多くの場合用いられる。天然油類は、動物油類および植物油類(例えばヒマシ油、ラード油、および他の植物酸エステル類)、ならびに、液状石油、および溶媒処理または酸処理されたパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系−ナフテン系タイプの鉱物性潤滑油のような、鉱物性潤滑油類を含む。水素化処理された、または水素化分解された油は、有用な潤滑粘度の油の範囲内に含まれる。
【0139】
石炭またはシェール(shale)から誘導される潤滑粘度の油類もまた有用である。合成潤滑油類は、炭化水素油類およびハロ置換炭化水素油類(重合または共重合されたオレフィン類など、およびこれらの混合物のような)、アルキルベンゼン類、ポリフェニル(例えば、ビフェニル類、ターフェニル類、アルキル化ポリフェニル類など)、アルキル化ジフェニルエーテル類、および、アルキル化ジフェニルスルフィド類、ならびに、これらの誘導体類および類似体類、およびこれらの同族体類を含む。
【0140】
アルキレンオキシドポリマー類およびインターポリマー類、およびこれらの誘導体類、ならびにこれらの末端水酸基がエステル化などにより変性されたものは、使用可能な既知の合成潤滑油類の他の部類を構成する。
【0141】
使用可能な他の適切な種類の合成潤滑油類は、ジカルボン酸類のエステル類、およびCからC12のモノカルボン酸類とポリオール類またはポリエーテルポリオール類から製造されたものを含む。
【0142】
他の合成潤滑油類は、リン含有酸類の液状エステル類、ポリマー性テトラヒドロフラン類、および、アルキル化ジフェニルオキシド類を含む。上記本明細書中に開示された種類の、未精製、精製、および再精製油類は、天然または合成のどちらでも(および、これらのいずれか2種以上の混合物も)本発明の組成物類に用いることが可能である。
【0143】
上記記載の潤滑粘度の油類の詳細な例は、Chamberlin IIIの米国特許第4,326,972号、および、欧州特許公報第107,282号で得られる。潤滑油の基油の基本的な概要の記載は、D. V. Brockによる文献、"Lubrication Engineering", Volume 43, pages 184-5, March, 1987に記載されている。
【0144】
酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール類(例えばIrganox(商標)1010、Irganox(商標)1076)、ホスフィット類(例えば、Irgafos(商標)168))、アンチブロック添加剤類、顔料類、およびフィラー類のような添加剤類もまた、所望の配合特性を妨害しない限りは、改良された配合に含まれてもよい。
【0145】
当業者は、特に開示されてないいずれかの成分が存在しなくても、本明細書に開示されている発明を実施できることを認識するであろう。下記の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるものであり、限定的に解釈するためのものではない。特に反する記載がない限り、部数およびパーセンテージはすべて重量基準で表される。
【実施例】
【0146】
触媒の製造
1)ジメチルシリル(2−メチル−s−インダセニル)(t−ブチルアミド)チタニウム1,3−ペンタジエン(触媒1)の合成
触媒1は、米国特許第5,965,756号の実施例23に基づき合成可能である。
【0147】
2)(N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジ−(4−n−ブチル−フェニル)−1−((1,2,3,3a,7a−η)−3−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1H−インデン−1−イル)シランアミナート−(2−)−N−)ジメチルチタニウム(触媒2)の合成
【0148】
(i)(p−Bu−Ph)SiClの製造
還流凝縮器および250mL滴下漏斗を備えた窒素雰囲気下の3つ口250mL丸底フラスコに、4.87gのMgの削り屑(0.200モル)を投入した。続けて、1−ブロモ−4−ブチルベンゼン(42.62g、0.200モル)および80mLのTHFを滴下漏斗に加えた。このとき、10mLのブロモベンゼン/THF溶液を、少量の臭化エチルと共にMgの削り屑に加えた。この溶液をつづいて反応開始するまで撹拌した。つぎに残りのブロモベンゼン/THF溶液を滴下し、還流を発生させた。ブロモベンゼン/THF溶液を添加後、マグネシウムがなくなるまで混合物を還流下で加熱した。
【0149】
つづいて、得られたグリニャール溶液を、窒素雰囲気下の還流凝縮器を備える3つ口丸底フラスコに装着された250mL滴下漏斗に移した。100mLのヘプタンを丸底フラスコに投入し、SiCl(15.29g、0.090モル)をつづいて投入した。この溶液に、グリニャール溶液を滴下した。添加を完了した後に、得られた混合物を2時間還流し、つづいて室温まで放冷した。不活性雰囲気下で溶液を濾過した。残った塩類をさらにヘプタンで洗浄し(3×40mL)、洗液を原液のヘプタン溶液とあわせた。
【0150】
つぎに、常圧蒸留によってヘプタンを除去した。つぎに得られた粘性の油を1mmで210℃において生成物を回収しながら減圧蒸留し、19.3g(58%)の生成物を得た。H(C)δ:0.80(t,6H),1.19(m,4H),1.39(m,4H),2.35(t,4H),7.0(d,4H),7.7(d,4H)。
【0151】
(ii)(p−Bu−Ph)SiCl)(NH−t−Bu)の製造
ジクロロ−ジ(p−ブチルフェニル)シラン(4.572g、12.51mmol)を45mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液に、1.83g、25.03mmolのt−BuNHを加えた。終夜撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を45mLのヘキサンで抽出し、濾過した。溶媒を減圧下で除去し、4.852gの生成物をオフホワイト色の油として得た。H(C)δ:0.75(t,6H),1.15(s,9H),1.2(m,4H),1.4(m,4H),1.51(s,1H),2.4(t,4H),7.05(d,4H),7.8(d,4H)。
【0152】
(iii)(p−Bu−Ph)Si(3−イソインドリノ−インデニル)(NH−t−Bu)の製造
20mLのTHFに溶解した4.612g(11.47mmol)の(p−Bu−Ph)Si(Cl)(NH−t−Bu)を、30mLのTHFに溶解した2.744g(8.37mmol)のリチウム1−イソインドリノ−インデニドに加えた。反応混合物を終夜撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を50mLのヘキサンで抽出し、濾過した。溶媒を除去し、6.870gの生成物を、非常に粘性の赤褐色の油として得た。収率91.0%。H(C)δ:0.75(m,6H),1.15(s,9H),1.25(m,4H),2.4(m,4H),4.2(s,1H),4.5(dd,4H),5.6(s,1H)6.9−7.7(m,16H)。
【0153】
(iv)(p−Bu−Ph)Si(3−イソインドリノ−インデニル)(NH−t−Bu)のジリチウム塩の製造
6.186g(10.33mmol)の(p−Bu−Ph)Si(3−イソインドリノ−インデニル)(NH−t−Bu)の50mLのヘキサン溶液に1.6Mのn−BuLi溶液13.5mLを加えた。n−BuLiの添加後数分で、黄色の沈殿物が現われた。終夜攪拌後、黄色の沈殿物をフリット上に集め、ヘキサン20mLで4回洗浄し、そして減圧下で乾燥し、4.4184gの生成物を黄色粉末として得た。収率70.0%。
【0154】
(v)ジクロロ(N−1,1−ジメチルエチル)−1,1−(4−ブチル−フェニル)−1−((1,2,3,3a,7a−η)−3−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1H−インデン−1−イル)シランアミナート−(2−)−N−)チタニウムの製造
ドライボックス中で2.620g(7.1mmol)のTiCl(THF)を40mLのTHF中に懸濁させた。この溶液に、60mLのTHFに溶解した4.319g(7.07mmol)の(p−Bu−Ph)Si(3−イソインドリノ−インデニル)(NH−t−Bu)のジリチウム塩を2分以内に加えた。つづいてこの溶液を60分間撹拌した。その後、1.278gのPbCl(4.60mmol)を加え、溶液を60分間攪拌した。つづいて減圧下でTHFを除去した。残渣を50mLのトルエンで抽出し、濾過した。溶媒を減圧下で除去し、黒色の結晶性固体が残った。ヘキサンを加え(35mL)、その黒色懸濁物を0.5時間攪拌した。固体をフリット上に集め、ヘキサン30mLで2回洗浄し、減圧下で乾燥し、4.6754gの生成物を黒−青色の結晶性固体として得た。収率92.4%。H(トルエン−d)δ:0.75(m,6H),1.25(m,4H),1.5(m,4H),1.65(s,9H),2.5(t,4H),4.5(d,2H),5.0(d,2H),6.0(s,1H),6.8−8.2(m,16H)。
【0155】
(vi)(N−1,1−ジメチルエチル)−1,1−(4−ブチル−フェニル)−1−((1,2,3,3a,7a−η)−3−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1H−インデン−1−イル)シランアミナート−(2−)−N−)−ジメチルチタニウムの製造
ジクロロ(N−1,1−ジメチルエチル)−1,1−(4−ブチル−フェニル)−1−((1,2,3,3a,7a−η)−3−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−1H−インデン−1−イル)シランアミナート−(2−)−N−)チタニウム(1.608g、2.25mmol)を35mLのトルエンに懸濁した。この溶液に、3mL(4.75mmol)の1.6MのMeLiエーテル溶液を加えた。反応色が直ちに深緑−黒色から深赤色に変化した。1時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を55mLのヘキサンで抽出し、濾過した。溶媒を除去し、1.456gの赤色固体が残った。収率96%。H(トルエン−d)δ:0.3(s,3H),0.8(m,6H),1.05(s,3H),1.25(m,4H),1.5(m,4H),1.75(s,9H),2.5(m,4H),4.5(d,2H),4.8(d,2H),5.7(s,1H),6.7−8.3(m,16H)。
【0156】
3)(CMeSiMeBu)Ti(η−1,3−ペンタジエン)(触媒3)の合成
触媒3は、米国特許第5,556,928号の実施例17に基づき合成可能である。
【0157】
4)rac−[1,2−エタンジイルビス(1−インデニル)]ジルコニウム(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)(触媒4)の合成
触媒4は、米国特許第5,616,664号の実施例11に基づき合成可能である。
【0158】
アルメエニウムボラート[メチルビス(水素化タローアルキル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート](共触媒1)の合成
共触媒1、アルメエニウム(Armeenium)ボラートは、ARMEEN(登録商標) M2HT(Akzo―Nobelから入手可能)、HCl、およびLi[B(C]から、米国特許第5,919,983号の実施例2に基づき製造可能である。
【0159】
実施例
実施例1〜19および比較例1〜8の製造
ポリマーを1ガロン、オイルジャケット付き、オートクレーブ型連続撹拌反応器(CSTR)中で製造した。Lightning A-320 回転翼を備える磁力結合の攪拌器で混合した。反応器を475psig(3,275kPa)でリキッドフル(liquid full)で運転した。プロセス流は、底部から入り、頂上部から出た。熱伝導油を反応器のジャケットを通し循環させ、反応熱の一部を除去した。反応器の出口において、マイクロモーション(micromotion)流量計で流量と溶液密度を測定した。反応器出口の全てのラインは50psi(344.7kPa)ストリームでトレースされ、断熱されていた。
【0160】
ISOPAR−E溶媒およびコモノマーを反応器に30psigの圧力で供給した。反応器への溶媒供給を、Micro−Motion(商標)質量流量計により計測した。可変スピードダイアフラムポンプで溶媒の流れを制御し、溶媒圧力を反応器圧力まで増加させた。コモノマーをMicro−Motion(商標)質量流量計で計量し、リサーチコントロール(Research control)バルブを用いて制御した。1−オクテンストリームを溶媒ポンプで吸引する溶媒ストリームと混合し、溶媒と共にリアクターにポンプで注入した。残存溶媒をエチレンおよび(場合により)水素と合わせ、反応器に供給した。流れを制御するリサーチコントロールバルブ直前で、エチレンストリームをMicro−Motion(商標)質量流量計で計量した。3つのBrooks流量計/コントローラ(1〜200sccmおよび2〜100sccm)を用いて、水素をエチレン制御バルブの出口においてエチレンストリーム中に供給した。
【0161】
エチレンまたはエチレン/水素混合物を、室温で溶媒/コモノマーストリームとあわせた。反応器に入る溶媒/モノマーの温度を、2つの熱交換機を用いて制御した。このストリームは、1ガロンCST反応器の底部に入る。3成分触媒システムおよびその溶媒フラッシュも、モノマーストリームとは別のポートを通じて反応器の底部から入る。
【0162】
計量器で溶液の密度を測定後、反応器の生成物ラインに触媒停止剤を加え重合を停止させた。他のポリマー添加剤類を触媒停止剤と共に加えてもよい。反応器流出ストリームはつづいてリアクター後の加熱器に入り、溶媒除去フラッシュ(flash)のためさらにエネルギーを与えられる。流出液がリアクター後の加熱器を出るとフラッシュが起こり、圧力は475psigから、圧力制御バルブ地点で10まで低下する。このフラッシュしたポリマーを、高温の油のジャケットを備える揮発分除去装置(devolatilizer)に入れた。揮発分除去装置内で、約90%の揮発分がポリマーより除去された。揮発分は揮発分除去装置の上部から排出される。残存ストリームは冷却水のジャケットを備える交換機で凝縮され、つづいてグリコールのジャケットを備える溶媒/エチレン分離容器に入る。溶媒を容器の最低部から除去し、エチレンを頂上部から排気する。エチレンストリームをMicro−Motion質量流量計で計量する。この未反応エチレンの測定値を、エチレン転換率の算出に用いた。揮発分除去装置でポリマーを分離し、ギアポンプで排出した。生成物を被覆パン(lined pan)に収集し、減圧オーブン内で、140℃で24時間乾燥した。
【0163】
添加剤類(例えば、酸化防止剤、顔料など)がインターポリマー生成物に含有され、全てのポリマーを約1000ppmのIrganox1010および2000ppmのIrgafos168で安定化させた。Irganox(商標)およびIrgafos(商標)はどちらも、Ciba Geigy Corporationが製造し、同社の商標である。Irgafos(商標)168はホスフィット安定剤であり、Irganox(商標)1010はヒンダードポリフェノール(例えば、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナート)]−メタン)安定剤である。
【0164】
表Iは、重合条件の概要を示す。実施例1〜16および比較例1〜8においてコモノマーは1−オクテンであり、実施例17〜19においてコモノマーはプロピレンであった。
【0165】
【表1】

【0166】
表2は実施例の分子量、流動点、熱的挙動、コモノマー含有量、および、粘度データの概要を示す。これらの粘度は小さく、製造された最も低分子量の物質では、177℃で3cPの値に達する。本発明の液状低分子量ポリマー類は、同等の分子量の一般的なポリエチレン類よりも、所定の分子量で粘度が実質的に小さく、よって高分子量に起因する良好な機械的特性および改良されたプロセス性、ならびに/または低粘度を提供する。加えて、全ての実施例は低結晶化度を示し、例えば全て米国特許第6,054,544号の実施例1〜14に開示のものよりも非常に低い。融点(Tm)および結晶化温度(Tc)をガラス転移点と共に表2に示す。ガラス転移点は低く(−55℃より低い)、実施例それ自体または他の物質との組み合わせで、良好な低温特性を提供する。これらの物質の流動点も一般的には低く(50℃より低い)、サンプルの室温における流動性、ならびに、周囲空気(25℃)または氷点の水(0℃)またはより低温(<0℃)の雰囲気状態でも液状を保つ可能性を示す。
【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
表3は、これらのポリマー類の末端基分析の結果を%ビニル/鎖、%シス−トランス/鎖(ビニレン)、鎖あたりの%トリ置換、および、%ビニリデン/鎖を示す。%飽和鎖末端は、シス−トランス、ビニル、およびビニリデンを含まない、これら全てである。不飽和を有する鎖の%は、100%−%飽和鎖末端である。ビニルレベルは低く(本発明のポリマー類では20%より低い)、多くはビニルレベルが10%より低い。実施例17〜19で製造したエチレン/プロピレンサンプルは、本質的にはビニルを含まない(1%以下)ことを示した。低ビニルレベルの物質は熱安定性が非常に良好であり、高温における時間経過による劣化が少ないことを示す。対照的に、比較例は一般的にビニルレベルがより大きい。
【0170】
ゲル状ポリマー実施例20〜25
一連のゲル状ポリマーを、実施例1〜19の均一低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類の製造と同一のプロセスを用いて製造した。表4はプロセス条件、表5はポリマー特性、および、表6はポリマー中の不飽和レベルの概要を示す。
【0171】
ゲル状ポリマー類は、結晶化度が大きく、ビニリデン含有量が低い点で、液状ポリマー類から区別される。
【0172】
【表4】

【0173】
【表5】

【0174】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーであって、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、
b)DSCによって測定した総結晶化度が10%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、
ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマーはエチレンと、エチレン性不飽和モノマー類、共役または非共役ジエン類、およびポリエン類からなる群より選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであり、ならびに、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が15,000より小さく、
b)コモノマー含有量が15モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が7%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が40℃より低い、
請求項1の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー。
【請求項3】
前記コモノマーが、C〜C20α−オレフィン類、スチレン、アルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、およびナフテン類からなる群より選択されるエチレン性不飽和モノマーであり、ならびに、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が11,000より小さく、
b)コモノマー含有量が30モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が5%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が25℃より低い、
請求項1の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー。
【請求項4】
前記コモノマーが、C〜C20α−オレフィンであるエチレン性不飽和モノマーであり、前記α−オレフィンは、1−プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンからなる群よりさらに選択され、ならびに、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が9,000より小さく、
b)コモノマー含有量が40モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が2%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が15℃より低い、
請求項1の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー。
【請求項5】
前記コモノマーはエチレン性不飽和であり、プロピレンおよび1−オクテンからなる群より選択され、ならびに、
a)コモノマー含有量が50モルパーセントより大きく、および、
b)ASTM D97によって測定した流動点が0℃より低い、
請求項4の均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類。
【請求項6】
エチレンと、少なくとも1つのエチレン性不飽和コモノマーを、最低でも80℃の反応温度で、水素の不存在下およびシングルサイト触媒の存在下で反応させることを含む、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、
b)コモノマー含有量が15モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が10%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、
均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを製造するプロセス。
【請求項7】
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、
b)DSCによって測定した総結晶化度が10%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が50℃より低い、
均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを含む、流動点降下添加剤。
【請求項8】
前記均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーが、エチレンと、エチレン性不飽和モノマー類、共役または非共役ジエン類、およびポリエン類からなる群より選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであり、ならびに、前記ポリマーは、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が15,000より小さく、
b)コモノマー含有量が15モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が7%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が40℃より低い、
請求項7の流動点降下添加剤。
【請求項9】
前記均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーが、C〜C20α−オレフィン類、スチレン、アルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、およびナフテン類からなる群より選択されるエチレン性不飽和モノマーのコポリマーであり、ならびに、前記ポリマーは、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が11,000より小さく、
b)コモノマー含有量が30モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が5%より小さく、
d)ASTM D97によって測定した流動点が25℃より低い、
請求項7の流動点降下添加剤。
【請求項10】
前記均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーが、C〜C20α−オレフィンであるエチレン性不飽和モノマーのコポリマーであり、前記α−オレフィンは、1−プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンからなる群よりさらに選択され、ならびに、前記ポリマーは、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が9,000より小さく、
b)コモノマー含有量が40モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が2%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が15℃より低い、
請求項7の流動点降下添加剤。
【請求項11】
前記均一液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーは、プロピレンおよび1−オクテンからなる群より選択されるエチレン性不飽和のコポリマーであり、ならびに、前記ポリマーは、
a)コモノマー含有量が50モルパーセントより大きく、および、
b)ASTM D97によって測定した流動点が0℃より低い、
請求項9の流動点降下添加剤。
【請求項12】
請求項1の前記液状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを含む、潤滑油として用いる合成油であり、前記油は100℃における動粘度が4から200センチストロークである、合成油。
【請求項13】
均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーであって、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、
b)DSCによって測定した総結晶化度が50%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、
ポリマー。
【請求項14】
前記ポリマーはエチレンと、エチレン性不飽和モノマー類、共役または非共役ジエン類、およびポリエン類からなる群より選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであり、ならびに、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が15,000より小さく、
b)コモノマー含有量が10モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が40%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が80℃より低い、
請求項13の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー。
【請求項15】
前記コモノマーが、C〜C20α−オレフィン類、スチレン、アルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、およびナフテン類からなる群より選択されるエチレン性不飽和モノマーであり、ならびに、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が11,000より小さく、
b)コモノマー含有量が12モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が30%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が70℃より低い、
請求項13の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー。
【請求項16】
前記コモノマーが、C〜C20α−オレフィンであるエチレン性不飽和モノマーであり、前記α−オレフィンは、1−プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンからなる群よりさらに選択され、ならびに、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が9,000より小さく、
b)コモノマー含有量が13モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が20%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が60℃より低い、
請求項13の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー。
【請求項17】
前記コモノマーがエチレン性不飽和であり、プロピレンおよび1−オクテンからなる群より選択され、ならびに、
a)コモノマー含有量が15モルパーセントより大きく、および、
b)ASTM D97によって測定した流動点が40℃より低い、
請求項16の均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマー類。
【請求項18】
エチレンと、少なくとも1つのエチレン性不飽和コモノマーを、最低でも80℃の反応温度で、水素の不存在下およびシングルサイト触媒の存在下で反応させることを含む、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、
b)コモノマー含有量が10モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が50%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、
均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを製造するプロセス。
【請求項19】
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が25,000より小さく、
b)DSCによって測定した総結晶化度が50%より小さく、および、
c)ASTM D97によって測定した流動点が90℃より低い、
均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを含む、流動点降下添加剤。
【請求項20】
前記均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーが、エチレンと、エチレン性不飽和モノマー類、共役または非共役ジエン類、およびポリエン類からなる群より選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであり、ならびに、前記ポリマーは、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が15,000より小さく、
b)コモノマー含有量が10モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が40%より小さく、
c)ASTM D97によって測定した流動点が80℃より低い、
請求項19の流動点降下添加剤。
【請求項21】
前記均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーが、エチレンとコモノマーとのコポリマーであり、ここで前記コモノマーは、C〜C20α−オレフィン類、スチレン、アルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、およびナフテン類からなる群より選択されるエチレン性不飽和モノマーであり、ならびに、前記ポリマーは、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が11,000より小さく、
b)コモノマー含有量が12モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が30%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が70℃より低い
請求項19の流動点降下添加剤。
【請求項22】
前記均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーが、C〜C20α−オレフィンであるエチレン性不飽和モノマーのコポリマーであり、前記α−オレフィンは、1−プロペン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンからなる群よりさらに選択され、ならびに、前記ポリマーは、
a)ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した数平均分子量(Mn)が9,000より小さく、
b)コモノマー含有量が13モルパーセントより大きく、
c)DSCによって測定した総結晶化度が20%より小さく、および、
d)ASTM D97によって測定した流動点が60℃より低い、
請求項19の流動点降下添加剤。
【請求項23】
前記均一ゲル状低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーは、プロピレンおよび1−オクテンからなる群より選択されるエチレン性不飽和のコポリマーであり、ならびに、前記ポリマーは、
a)コモノマー含有量が15モルパーセントより大きく、および、
b)ASTM D97によって測定した流動点が40℃より低い、
請求項22の流動点降下添加剤。
【請求項24】
請求項13の前記ゲル低分子量エチレン/α−オレフィンポリマーを含む、潤滑油として用いる合成油であり、前記油は100℃における動粘度が4から200センチストロークである、合成油。

【公表番号】特表2006−502259(P2006−502259A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541929(P2004−541929)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/030910
【国際公開番号】WO2004/031250
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】