説明

液状媒質を処理する装置及び方法

【課題】未分化細胞または微生物、例えば、バクテリア、ウィルスなどの除去及び/または液状媒質中の塩過飽和を主目的とする液状媒質処理装置を提供する。
【解決手段】装置は、被処理液状媒質容器(6)と連通し、かつ高周波超音波(4)を発生する発生器(1)を内蔵するコンパートメント(2)と、平均直径が1mm以下の微小泡(5)を発生させる発生器(3)とから成り、超音波発生器及び微小泡発生器を、コンパートメント(2)内へ発射される超音波(4)のフィールド内に微小泡(5)が放出されるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状媒質中の微生物、例えば、藻類、バクテリア、ウィルスを除去すること及び/または液状媒質中の塩の過飽和を可能にすることを目的とする液状媒質処理のための新規の装置及び方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
高周波超音波を使用するか低周波超音波を使用するかによって、流体に対して異なる効果が得られることは当業者に公知である。機械的作用を得るには、低周波(概ね16〜100kHz)を使用するのが普通である。
【0003】
キャビテーションによる機械的作用は、例えば、不均質な物質を混合し、乳化し、分散させることによって液体の脱気を可能にする。この機械的作用は、液体中に強力な剪断作用を発生させることにより、例えば、この媒質中に存在する生体細胞を、その細胞膜が裂ける程度にまで粉砕することを可能にする。
【0004】
上記と同じ機械的作用は、キャビテーション泡の破裂によって形成される液体のマイクロジェットの作用による表面洗浄にも利用される。同様に、種々の反応物を極めて効率的に混合することができるから、種々の化学反応、特に不均一反応における拡散現象を促進するのにこの機械的作用を利用すれば有益である。
【0005】
概ね300kHz〜数MHzの高周波を使用する場合、キャビテーション現象は比較的弱く、その機械的作用は低周波使用の場合よりも小さい。
【0006】
液状媒質に高周波超音波を加えることによって、発生するキャビテーション泡の持続時間が著しく短縮され、低周波を加える場合に観察される化学現象とは根本的に異なる化学現象が均質相中に起こる。
【0007】
高周波超音波の使用に特異なパラメータの1つは、低い機械的エネルギーで溶液を脱気できるにも拘らず、それ自体が大きいエネルギーを必要とする低周波超音波を加える場合よりも得られる効果が大きいことである。
【0008】
超音波の使用が液状媒質の解毒を可能にすることは、種々の公知文献に開示されている。
【0009】
米国特許第5,198,122号は、種々の毒性有機化合物を含む液状及び固状媒質の解毒方法を開示しており、この方法は、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化アルミニウムリチウムから成る触媒を前記媒質に添加し、これに超音波を作用させることにより混合物中にキャビテーションを起こさせ、容易に解毒または汚染物質抽出を達成するというものである。
【0010】
ドイツ特許出願第4,407,564号は、酸化剤(オゾン)または相間移動触媒を添加することによって有機物質または微生物を酸化する方法を開示している。
【0011】
特開平7−155756号公報((株)丸島アクアシステム)は、植物プランクトンを含有する貯水槽を浄化する方法及び装置を開示している。この装置の第1槽において、水中にキャビテーションを発生させる超音波バイブレータを利用して植物プランクトンを不活性化する。この処理によって得られた生成物を第2槽に移し、動物プランクトンによる不活性化植物プランクトンの捕食を促進する。
【0012】
同様に、超音波によるキャビテーション現象及びオゾン、過酸化物及び/または触媒の注入によって有機塩素系物質または微生物を除去することも、既にいくつかの文献に開示されている(伊那食品工業(株)の特開平5−345192号公報;(株)クボタの特開平5−228481号公報;同じくクボタ(株)の特開平5−228480号公報;及び、同じくクボタ(株)の特開平5−228496号公報)。
【0013】
日本特許出願第820010627号(Hitachi Kiden Kogyo KK)は、高周波及び低周波超音波を利用することによって発生させた機械的作用で藻類胞子を除去する方法を開示している。先ず高周波超音波の機械的作用によって滅菌するとともに胞子をプレートに付着させ、次いで低周波超音波によるキャビテーション現象の浄化作用によって前記胞子を除去する。
【0014】
これらの公知例は、いずれも低周波超音波の機械的作用を利用している。
【0015】
水溶液中のフェノールの音化学的分解が超音波の周波数に応じてその程度に差が生ずることは、Petrier C. et al.の科学論文(Journal of Physical Chemistry,No.98,10514−10520(1994))から公知である。この論文によれば、音化学的分解度は、超音波による水の音分解によって発生するH,OH及びHOO・のような遊離基の存在と直接関連すると考えられる。特に、高周波超音波を発射した場合、・OH及び・OOH基が多くなると記述されている。
【0016】
上記論文に図示されているように、超音波によって発生する基は蛍光を発し、その分布は、装置の着想と設計によって異なるばかりでなく、超音波の周波数によっても異なる。超音波が形成した基によるこの蛍光は、水性組成物にルミノールを添加することによって顕在化する。
【0017】
ただし、上記論文は、水性媒質中に存在する微生物を攻撃してこれを除去するのに、高周波超音波によって得られる酸化現象を利用できることには全く触れていない。
【0018】
米国特許第2,717,874号は、塩素化試薬を添加することによって、微生物を含む水性媒質を処理する装置を開示している。この装置は、処理すべき水性媒質のタンクと連通する鐘形容器(セル)と、その底部に配置された高周波超音波発生器とから成る。鐘形容器は、間欠泉コーンに気泡を発生させる手段をも含む。
【0019】
特許出願WO93/13674号は、ミルクまたはミルクをベースとする製品を低温殺菌することによってバクテリア、ウィルス、胞子などのような一部微生物を除去する方法を開示している。この文献に記述されている装置及び方法は、低周波及び特に長時間作用させる場合には高出力で得られるキャビテーションを利用するのがその基本である。
【0020】
ヨーロッパ特許出願EP−Al−0,633,049号は、超音波を発射することによって液体を処理し、この液体中に存在する粒子を分離させる方法を開示している。この方法は、高周波を利用して定常波界による微粒子の分離を可能にするものである。定常波界においては、位相または周波数の変化に伴なって位置が変化し、その結果、節及び腹に集中したままの状態で粒子が伴出される。生物学的粒子の場合、この装置はいかなる性質の固体粒子をも超音波界に閉じ込める生化学反応器の形成を可能にし、これにより液状媒質の濾過を可能にする。なお、この装置は、生物学的物質の滅菌と微生物の不活性化を可能にする。
【0021】
米国特許第4,961,860号は、低周波超音波によって微生物を除去する水処理方法を開示している。ただし、この装置は、微生物を除去する機械的作用を得るのに極めて大きいエネルギー消費を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第5,198,122号明細書
【特許文献2】独特許出願公開第4,407,564号明細書
【特許文献3】特開平7−155756号公報
【特許文献4】特開平5−345192号公報
【特許文献5】特開平5−228481号公報
【特許文献6】特開平5−228480号公報
【特許文献7】特開平5−228496号公報
【特許文献8】米国特許第2,717,874号明細書
【特許文献9】国際公開第93/13674号パンフレット
【特許文献10】欧州特許出願公開第0,633,049号明細書
【特許文献11】米国特許第4,961,860号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Journal of Physical Chemistry,No.98,10514−10520(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
この発明の目的は、液状媒質中に存在する未分化の動物細胞、例えば腫瘍細胞及び/または微生物、特に、藻類、バクテリア、ウィルスなどの中和、増殖防止及び/または除去を、簡単にかつ低コストで、しかも公知技術の欠点を解消して達成できる装置及び方法を提供することにある。
【0025】
この発明の具体的な目的の1つは、水泳プール、貯水塔、養魚池、アクアリウムなどのような貯水槽、さらには工業用回路、例えば、水質が特に重要視される冷却回路の水、あるいはヒトまたは動物から抽出されたり、逆にヒトまたは動物に投与される血液や血漿のような生理的液体のような各種液状媒質中に存在する前記未分化細胞または微生物、特に、藻類の中和、増殖防止及び/または除去である。
【0026】
この発明は、被処理媒質に対する上記効果を得るのに添加化学剤の添加を必要としない装置及び方法を得ることをも目的とする。
【0027】
この発明の他の目的は、多大のエネルギーを消費しない装置及び方法を得ることにある。
【0028】
この発明のさらに他の目的は、定常波界現象を伴なうことなく超音波で液状媒質を処理する装置及び方法を得ることにある。
【0029】
この発明の最後の目的は、水性媒質を塩で過飽和する、即ち、水性媒質中におけるこれらの塩の自然な可溶性を超える塩濃度を得ることを可能にする水性媒質処理装置及び処理方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一態様を示す図
【図2】本発明の一態様を示す図
【図3】比較テストの結果を示す図
【図4】比較テストの結果を示す図
【図5】比較テストの結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び2に示すこの発明は(未分化細胞または微生物を含有する可能性のある)液状媒質、好ましくは水性媒質を処理する装置または設備において、好ましくは円筒形または断面が矩形の形状を呈し、好ましくは被処理液状媒質の“タンク”6と連通するコンパートメント2と、前記コンパートメント2の(壁に沿って)配置されて、1つまたは2つ以上の高周波超音波4をコンパートメント2内へ(好ましくはコンパートメント2の中心部にむかって)発射する超音波発生器1と、コンパートメント2内に発生した超音波4の中に微小気泡5を発生させるように配置した1つまたは2つ以上の微小気泡5の発生器3とから成ることを特徴とする前記装置または設備に係わる。
【0032】
“微小泡”とは、平均直径が1mm以下、好ましくは50μmまたはそれ以下、さらに好ましくは30μm以下の気泡を意味する。
【0033】
“未分化細胞”とは、高増殖作用を示す細胞、例えば、腫瘍細胞、骨髄細胞または全形成能細胞、特に藻類細胞などを意味する。
【0034】
被処理液状媒質中に存在する“微生物”とは、ヒトまたは動物、または液状媒質搬送貯蔵設備に有害な作用を及ぼすおそれのある病原または非病原微生物を意味する。このような微生物としては、バクテリア、ウィルスまたは藻類がある。これら微生物の定義には、単細胞または多細胞体、特に、種々の液状媒質、好ましくは水泳プール、貯水槽アクアリウム、冷却塔のような工業用冷却回路中の水のような水性媒質中に存在する可能性のある藻類が含まれる。
【0035】
“液状媒質”という表現には、参考のためその内容を本願明細書に引用した米国特許第5,401,237号に記載されているように、ヒトや動物に投与したり、あるいはヒトや動物から抽出し、処理後(血液、血清、髄液などのような生理的液体の生体外処理後)再びヒトや動物に注入される生理的液体をも含まれる。
【0036】
“高周波”とは、100kHz〜数MHz、好ましくは200kHz〜10MHzの範囲を指す。
【0037】
微小気泡5の前記発生器3をコンパートメント2の基部11、即ち、コンパートメント2の底に配置することにより、微小泡が自然に上昇するか、または液流と一緒に伴流するようにすることが好ましい。
【0038】
微小気泡は、空気、オゾン、または酸素の微小泡であることが好ましい。
【0039】
この発明では、前記微生物がその環境中にH22をも形成できるH・、・OH、HOO・のような基が生成することによって除去されると考えられ、このH22 及び/またはこれらの基は微生物に対して有毒であり、従って、これら微生物を不活性化及び/または破壊する。
【0040】
前記基やH22分子は、高周波超音波が水の分子に作用して、(特に酸素の存在において)下記反応を惹起することによって形成されると考えられる:
2O → H・+・OH
H・+O2 → HOO・
HOO・ + HOO・ → H22 + O2
・OH + ・OH → H22
【0041】
これら微小泡の存在においてこの方法を実施すれば、毒性体を生成させるのに必要なエネルギーを軽減できる。
【0042】
即ち、超音波界に微小泡を注入すると、超音波によって形成されるキャビテーション泡に微小泡が重なることによって励起された毒性体の数が増大するからであると考えられる。
【0043】
この現象は、超音波処理を適当サイズの微小泡の存在と併用した場合、肉眼で観察される。
【0044】
この現象は、超音波界4を通過する時に起こる微小泡5の分裂によって強調され、特に装置がコンパートメント2の壁に沿って順次配置された複数の発生器を含む場合には、微小泡の分裂は次第に顕著になる。
【0045】
これらの特性を添付図面の図3〜5に比較テストの結果として具体的に図示した。
【0046】
図3及び4は、セレナストルム カプリコルヌツム藻類の計数概要である。この藻類を最適培養条件下に置いた場合、この発明の装置で、微小泡を注入しながら(図3)処理しても、注入せずに(図4)処理しても、回収限界値が制限される。所与の超音波出力においては、処理効果がコンパートメントにおける滞留時間に比例し、従って、流量に反比例する。
【0047】
図5は、超音波の効果を対照標準(濃度、流量、温度、起泡条件はすべて同じであるが、超音波は利用しない)との比較で示す。超音波を利用しても、微小泡を注入しない処理では液状媒質中に存在する藻類の増殖を抑止できず、その数を減らすこともできない。 また、この発明の装置には、超音波を特定ゾーンに向ける必要がないという利点がある。即ち、処理装置は、その場で形成される生成物(例えば、基やH2O2)を被処理水性媒質のタンク6にむかって拡散させることによって機能するからである。
【0048】
また、この発明の装置では、超音波4の発生器1が定常波現象を起こさないように配向されている。即ち、コンパートメント2の軸線9、液流及び微小泡5に対して斜めに配向されている(軸線9に対して直角ではなく鋭角)(図2参照)。このように配向することで、前記コンパートメント2中に固定ゾーンを形成することなく、コンパートメント2内のすべての微小泡5を充分均等に処理することができる。
【0049】
この発明の好ましい実施例では、装置はコンパートメント2内の超音波4の界にむかって光を発する発光器12、即ち、電磁放射線発生器をも含み、放射線の周波数の大部分は可視域にある。ただし、用途によっては、特定の微生物を除去するため、周波数が紫外線に相当する電磁放射線(UVA、UVBまたはUVCタイプ)またはその他のタイプのエネルギー放射、例えば、赤外線、レーザー、マイクロウェーブなどを使用することも有益である。
【0050】
その理由は、超音波及び光の照射とこの照射界への微小泡発射との組合わせから成る処理が、液状媒質中に存在する微生物、特に藻類を不活性化し、除去するのに特に有効であることを発明者らが偶然発見したことにある。音ルミネセンス現象は、ある種の微生物に対して極めて有毒な一連の生化学反応の要因であるスーパーオキシド基や一重項酸素のような極めて活性な酸素添加体の生成を促進することができる。
【0051】
いわゆる光増感分子の存在において、このような現象が起こり、その結果としてある種の癌細胞に対する抗癌作用が得られることは公知である(Umemura S.I.,Japanese J.of Cancer Res.,81,PP.962−966(1990))。光増感分子としては、例えば、ポルフィリン、塩素、テトラサイクリン、メチレンブルー、フルオレセイン、アクリジン、ローダミンなどが挙げられる。これらの活性剤を生体に注射または経口投与し、次いで音ルミネセンスによって活性化することにより、特に酸化的ストレスによる生化学的反応において基本的役割を果す一重項酸素を生成させる。一重項酸素の作用は、例えばプロテイン、脂質、アミノ酸、ヌクレオチドのような種々の細胞成分を酸化することである。
【0052】
この発明では、処理すべき媒質に対して必ずしも光増感剤を添加しなくてもよい。なぜなら、発明者が得た予期せぬ所見によれば、ある種の微生物、特に藻類や、ある種の細胞、特に、既に光増感分子を含有している体液中に存在する腫瘍細胞のような未分化細胞においては、光増感剤を添加しなくても所要の作用が現われるからである。
【0053】
ヒトまたは動物の体液を処理する場合、この発明の装置はタンク6を必要とせず、ヒトまたは動物の身体に直接連結することによって、体液を取出し、体外処理したのち再び注入すればよい。
【0054】
図1に示すこの発明の好ましい実施例では、タンク6とコンパートメント2との間に水性媒質を電磁処理するための手段13を介在させる。この手段13は、処理すべき水性媒質の流れ方向に見てコンパートメント2の上流側に位置する。
【0055】
“水性媒質電磁処理手段”とは、結晶形成の変更または形状変更を可能にする装置を意味する(結晶の形態変更)。
【0056】
このような装置は、結晶の核形成及び/または成長及び/または形態を制御するための信号発生器を開示するヨーロッパ特許出願EP−0,515,346号に記述されており、この文献の内容は参考のため本願明細書に引用した。この文献は、炭酸カルシウムの結晶を(導管、交換器などの内部に)酒石堆積物を形成できない樹状結晶に変える例を記述している。
【0057】
前記水性媒質を電磁処理手段の少なくとも2つのトランスファ手段の間に形成されるフィールドの作用(結晶、特に、炭酸カルシウムの核形成及び/または結晶形成及び/または結晶形成を変化させる作用)下に置くと、前記トランスファ手段の少なくとも一方がほぼ方形の電気信号を受信する。この方形電気信号は、信号が低レベルに近い第1位相と、信号が高レベルに近い第2位相から成り、低レベルまたは高レベルに近い時、前記信号は、一連の減衰変分を有する。
【0058】
信号は、周波数が100,000Hz以下、好ましくは1000〜30,000Hzの方形波と、周波数が100,000Hz以下、好ましくは1MHz〜15MHzの減衰正弦波との重ね合わせとなるように設定するのが有益であり、正弦波の減衰は、その5周期後に変分量が初期変分量の10%以下となるように設定する。
【0059】
この発明の1実施例では、方形波の位相ごとに該方形波が単一の減衰正弦波と組合わさり、減衰波の周波数は方形波の周波数よりも大きく、減衰波は方形波の位相ごとに発信され、減衰波の持続時間は、10ns〜500μs、好ましくは100ns〜100μsである。
【0060】
この発明の1実施例では、方形波の低レベルと高レベルとの間に存在する電位差が5〜200V、好ましくは12〜60Vであるのに対して、減衰波はその変分が最小レベルと最大レベルとの間の帯域にあり、両レベル間の電位差は1〜60V、好ましくは10〜35Vである。
【0061】
前記水性媒質電磁処理手段は、その内容を参考のため本願明細書に引用している米国特許第4,879,045号に記載されているような装置であってもよい。
【0062】
発明者が得た予想外の所見として、高周波超音波界において微小泡で水性媒質を処理する素子の上流側に電磁処理手段を設けた場合、この発明の装置は、結晶現象が起こる前に水性媒質中の塩を広範囲にわたって過飽和させることができる。
【0063】
“塩過飽和”とは、水性媒質中の塩の濃度を、前記塩を沈殿させることなく(塩の可溶生成物に相当する濃度以上に)増大させる可能性を意味する。
【0064】
例えば、前記塩が水性媒質中に存在する炭酸カルシウムであり、これが水性媒質導管を介して、汲み上げ/配水網へ供給されたり、あるいは水性媒質に前記塩が添加されることもある。
【0065】
水性媒質中に存在するこの多量の塩は、水の部分蒸発によっても発生し、この現象は冷却塔において特に重要である。
【0066】
液状媒質が他の塩、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属のリン酸塩または硫酸塩の過飽和を含む場合もある。
【0067】
発明者が得た予想外の所見として、処理ずみ液状媒質中における塩、特に炭酸カルシウムの濃度を飽和濃度(沈殿前の最大可溶度)の10倍にまで高めることができる。
【0068】
このように処理された水が透明であることも観察された。
【0069】
このような装置を利用することによって、酒石堆積物防止システムを開発し、過飽和塩を含む水を生成させ、過飽和塩の存在によってある種の微生物に対する生体毒効果を発生させることなどが可能になる。
【0070】
このような装置は、沈殿のない濃縮媒質を得、これに試薬を添加して特殊な化学反応を起こさせることをも可能にする。
【0071】
発明者が得た予想外の所見として、処理ずみ水性媒質中に最適レベルの塩過飽和現象を発生させるためには、超音波界において、微小泡が形成されるコンパートメントから離して、好ましくはその上流側に電磁処理手段を設置する必要がある。
【0072】
この発明の装置は、被処理液状媒質を収容するタンク6と導管2との間に、液状媒質を循環させるポンプ7と、好ましくは濾過、遠心分離または沈殿によって液状媒質中に存在する微生物及び/または塩を回収する手段(例えば、サイクロンなど)を介在させることも可能である。
【0073】
この発明は、処理すべき液状媒質中に存在する微生物、特に藻類の中和及び/または除去を目的とするこの発明の装置の利用にも係わる。
【0074】
“微生物の中和及び/または除去”とは、この液状媒質中で増殖する可能性のある微生物を(微生物の種類、液状媒質の種類によって異なる)一定濃度レベル以下に減少または維持することを意味する。
【0075】
この発明はまた、液状媒質、好ましくは水性媒質中に塩過飽和を発生させること、即ち、液状媒質中におけるこの塩の自然可溶性を超える、好ましくはその5倍、場合によっては10倍の濃度の塩を得ることを目的とするこの発明の装置の利用にも係わる。
【0076】
こうして得られる過飽和媒質を利用することにより、試薬を添加して特殊な化学反応を起こさせ、生成物に新しい性質(サイズ、形状、比表面積など)を与えることができる。添加する試薬は固体でも液体でも気体でもよく、不均質な混合物であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒質中に存在する未分化細胞及び/又は微生物の中和、除去及び/又は成長阻止のための液状媒質処理方法であって、
当該方法は気体及び高周波音波を前記液状媒質中に発射することからなり、
前記高周波音波は、約200kHzと数MHzの間で、且つ、低周波音波照射に伴う機械的作用を制限する出力で使用され、
前記気体及び前記高周波音波の照射が前記未分化細胞及び/又は微生物の回収限界値を制限する、
方法。
【請求項2】
前記気体及び高周波音波の照射が音ルミネッセンス現象を増強する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記微生物が病原性又は非病原性の単細胞又は多細胞体からなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記微生物が、バクテリア、ウィルス、菌類及び藻類からなる群から選択される1以上からなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記未分化細胞が、癌細胞、骨髄細胞及び全形成能細胞のうちの少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記液状媒質に試薬を添加することにより化学反応、沈澱反応及び結晶反応のうちの少なくとも1つを誘発する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記液状媒質が塩を含み、且つ、
前記液状媒質中での塩結晶の核形成、結晶形成及び成長のうちの少なくとも1つを変更できるように、前記液状媒質を電磁的に処理することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記液状媒質が塩過飽和されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記液状媒質中における前記塩の自然な可溶性よりも少なくとも5倍高い塩濃度が得られる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記気体が空気からなる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記気体及び高周波超音波の照射が前記液状媒質中での遊離基の形成を促進する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記気体及び高周波超音波の照射が前記液状媒質中での未分化細胞及び/又は微生物に有毒な分子の形成を促進する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記液状媒質に電磁波を照射することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記電磁波がマイクロウェーブ、赤外線、紫外線又はレーザーの1以上からなる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記液状媒質中で増殖する可能性のある微生物を一定濃度レベル以下に減少又は維持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ヒト又は動物から生理的液体を抽出し、前記液体の生体外処理後に前記液体を再びヒト又は動物に注入することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記生理的液体が未分化細胞、高増殖作用を示す細胞及び/又は微生物を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記生理的液体が、血液、血清及び髄液の1以上からなる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
ヒト又は動物の高増殖作用を示す細胞の処理方法であって、
前記ヒト又は動物の高増殖作用を示す細胞を含む液状媒質を準備し、
気体及び高周波音波を前記液状媒質中に発射することからなり、
前記高周波音波は、約200kHzと数MHzの間で、且つ、低周波音波照射に伴う機械的作用を制限する出力で使用され、
前記気体及び前記高周波音波の照射が前記ヒト又は動物の高増殖作用を示す細胞の回収限界値を制限する、
方法。
【請求項20】
前記気体及び高周波音波の照射が音ルミネッセンス現象を増強する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記高増殖作用を示す細胞が、癌細胞、骨髄細胞及び全形成能細胞のうちの少なくとも1つである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記準備が、ヒト又は動物から生理的液体を取り出すことを含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記気体及び高周波音波の発射が、前記液状媒質への光増感分子の添加なしに行われる、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記気体が空気からなる、請求項19記載の方法。
【請求項25】
前記気体及び高周波超音波の照射が前記液状媒質中での遊離基の形成を促進する、請求項19記載の方法。
【請求項26】
前記気体及び高周波超音波の照射が前記液状媒質中での未分化細胞に有毒な分子の形成を促進する、請求項19記載の方法。
【請求項27】
前記液状媒質に電磁波を照射することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項28】
前記電磁波がマイクロウェーブ、赤外線、可視線、紫外線又はレーザーの1以上からなる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記液状媒質中で増殖する可能性のある微生物を一定濃度レベル以下に減少又は維持することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項30】
液状媒質を保持するチャンバ;
約200kHzと数MHzの間で、且つ、低周波音波照射に伴う機械的作用を制限する出力で、高周波音波を前記液状媒質に照射するために前記チャンバについて配置されている超音波発生器;
前記チャンバ内で且つ前記超音波発生器により発生する超音波の中に気体を発射するために前記チャンバ及び前記超音波発生器について配置されている気体発生器
を備えており、前記チャンバ、前記超音波発生器、及び、前記気体発生器は、前記チャンバ内の液状媒質中に存在する未分化細胞及び/又は微生物の回収限界値を制限するように構成されている、液状媒質処理装置。
【請求項31】
前記チャンバ内に照射される超音波が前記チャンバ内の液状媒質中に定常波現象を発生させないように、前記超音波発生器が前記チャンバの軸線に対して斜めに配置されている、請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記超音波発生器が前記チャンバの基部に配置されている、請求項30記載の装置。
【請求項33】
前記チャンバ内で且つ前記超音波発生器により発生する超音波の中に電磁波を照射するために前記チャンバ、前記超音波発生器、及び、前記気体発生器について配置されている電磁波発生器を更に備える、請求項30記載の装置。
【請求項34】
前記電磁波発生器がマイクロウェーブ、赤外線、可視線、紫外線又はレーザーの1以上を照射するように配置されている、請求項33記載の装置。
【請求項35】
前記気体発生器が空気を発射する、請求項33記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−158679(P2010−158679A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87717(P2010−87717)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【分割の表示】特願2006−328639(P2006−328639)の分割
【原出願日】平成9年7月4日(1997.7.4)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】