説明

液状樹脂材料供給装置およびその制御方法

【課題】 液状樹脂材料の計量値の精度を向上させる。
【解決手段】 液状樹脂材料A,Bを送出する圧送ポンプ22と、圧送ポンプ22により送出された材料を蓄えるシリンダ24aと、ピストン24bを押し下げる押し下げ板27を上下方向に移動させる移動装置28と、圧送ポンプ22およびシリンダ24aの間に設けられた材料流入弁23の開閉を制御する流入弁制御部と、シリンダ24aおよび射出装置9の間に設けられた材料流出弁25の開閉を制御し、少なくとも材料を射出装置9に供給するときには材料流出弁25を開かせる流出弁制御部とを備える材料供給装置2であって、上記流出弁制御部は、射出装置9における材料の計量が終了することにより押し上げられる押し下げ板27が、この押し下げ板27の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に、材料流出弁25を閉じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置に対して材料を供給する液状樹脂材料供給装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、液状樹脂材料を射出する射出装置に対して、液状樹脂材料を供給する材料供給装置(原料計量供給装置)に関する技術が開示されている。この材料供給装置は、圧送ポンプから送出された液状樹脂材料をシリンダ内に蓄え、シリンダのピストンを前進させることによって液状樹脂材料を射出装置に供給している。また、この材料供給装置と射出装置との間には、液状樹脂材料を供給するときに開かれる流出弁(吐出弁)が備えられており、この流出弁は材料の供給が終了した時点で閉じられる。
【特許文献1】特開2002−254471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、液状樹脂材料の供給が終了すると、流出弁と射出装置との間に残された液状樹脂材料には残留応力が生じる。そして、この残留応力によって液状樹脂材料の一部が射出装置に流れ込んでしまい液状樹脂材料の計量値が変化してしまうことがある。
【0004】
そこで、本発明は、液状樹脂材料の計量値の精度を向上させることができる液状樹脂材料供給装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液状樹脂材料供給装置は、液状樹脂材料を計量して射出する射出装置に対して、液状樹脂材料を供給する液状樹脂材料供給装置であって、液状樹脂材料を送出する圧送ポンプと、圧送ポンプにより送出された液状樹脂材料を蓄えるシリンダと、シリンダのピストンを押し下げる押し下げ部材の移動を制御する押し下げ部材制御手段と、圧送ポンプおよびシリンダの間に設けられた流入弁の開閉を制御し、少なくとも液状樹脂材料をシリンダに蓄えるときには流入弁を開かせる流入弁制御手段と、シリンダおよび射出装置の間に設けられた流出弁の開閉を制御し、少なくとも液状樹脂材料を射出装置に供給するときには流出弁を開かせる流出弁制御手段と、を備え、上記押し下げ部材制御手段は、流出弁制御手段により流出弁が開かれたときに、押し下げ部材をピストンが押し下げられる方向に移動させるとともに、射出装置から計量が終了したことを示す計量終了信号を受信したときに、押し下げ部材をピストンが押し下げられる方向とは反対の方向に移動させ、上記流出弁制御手段は、押し下げ部材の上昇限度位置がピストン自体の上昇限度位置よりも下方または同じ高さに位置するように設計されている場合には、押し下げ部材が当該押し下げ部材の上昇限度位置まで上昇したとき、一方、押し下げ部材の上昇限度位置がピストン自体の上昇限度位置よりも上方に位置するように設計されている場合には、押し下げ部材がピストン自体の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に流出弁を閉じさせることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の液状樹脂材料供給装置を制御する方法は、液状樹脂材料を計量して射出する射出装置に対して、液状樹脂材料を供給する液状樹脂材料供給装置を制御する方法であって、液状樹脂材料供給装置が、液状樹脂材料を送出する圧送ポンプと当該圧送ポンプにより送出された液状樹脂材料を蓄えるシリンダとの間に設けられた流入弁を開かせて、シリンダに液状樹脂材料を蓄えさせる工程と、シリンダと射出装置との間に設けられた流出弁を開かせるとともに、シリンダのピストンを押し下げる押し下げ部材を、ピストンが押し下げられる方向に移動させて、射出装置に液状樹脂材料を供給させる工程と、射出装置から液状樹脂材料の計量が終了したことを示す計量終了信号を受信したときに、押し下げ部材をピストンが押し下げられる方向とは反対の方向に移動させる工程と、押し下げ部材の上昇限度位置がピストン自体の上昇限度位置よりも下方または同じ高さに位置するように設計されている場合には、押し下げ部材が当該押し下げ部材の上昇限度位置まで上昇したとき、一方、押し下げ部材の上昇限度位置がピストン自体の上昇限度位置よりも上方に位置するように設計されている場合には、押し下げ部材がピストン自体の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に、流出弁を閉じさせる工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
これらの発明によると、少なくとも液状樹脂材料をシリンダに蓄えている間は、流入弁制御手段により流入弁が開かれるため、圧送ポンプにより送出された液状樹脂材料はシリンダ内に蓄えられる。また、少なくとも液状樹脂材料を射出装置に供給している間は、流出弁制御手段により流出弁が開かれるため、押し下げ部材制御手段により制御される押し下げ部材がシリンダのピストンを押し下げることによって、シリンダに蓄えられた液状樹脂材料が射出装置に供給される。このような発明において、流出弁制御手段は、押し下げ部材の上昇限度位置がピストン自体の上昇限度位置よりも下方または同じ高さに位置するように設計されている場合には、押し下げ部材が当該押し下げ部材の上昇限度位置まで上昇したとき、一方、押し下げ部材の上昇限度位置がピストン自体の上昇限度位置よりも上方に位置するように設計されている場合には、押し下げ部材がピストン自体の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に流出弁を閉じさせる。これにより、射出装置における計量が終了した後に、シリンダと射出装置との間にある液状樹脂材料に残留応力が生じていても、第1の所定時間が経過するまでは流出弁が開かれた状態で維持されるため、シリンダと射出装置との間にある液状樹脂材料の一部がシリンダ内に流れ込むことができ、上述した残留応力を低減させることができる。したがって、射出装置における計量が終了した後に、シリンダと射出装置との間にある液状樹脂材料が、残留応力によって射出装置に流れ込む事態を防止することができる。それゆえに、液状樹脂材料の計量値が変化してしまう事態を防止することができ、ひいては、液状樹脂材料の計量値の精度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の液状樹脂材料供給装置において、上記第1の所定時間は、シリンダと射出装置との間にある液状樹脂材料に生じる残留応力が、流出弁が閉じられたときに、少なくとも当該残留応力によって液状樹脂材料が射出装置に流出してしまうことがない程度にまで低減するのに要する時間であることが好ましい。
【0009】
これにより、射出装置における計量が終了した後に、シリンダと射出装置との間にある液状樹脂材料に残留応力が生じていても、この残留応力によって液状樹脂材料が射出装置に流出してしまうことがない程度にまで残留応力を低減させることができるため、射出装置における計量が終了した後に、シリンダと射出装置との間にある液状樹脂材料が、残留応力によって射出装置に流れ込む事態を確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明の液状樹脂材料供給装置において、上記流入弁制御手段は、流入弁が開くことにより押し上げられるピストンが、限界に達するまで押し上げられたときに開始される第2の所定時間が経過した後に、流入弁を閉じさせ、上記第2の所定時間は、シリンダ内の圧力が、少なくとも大気圧よりも高くなるために要する時間であることが好ましい。
【0011】
これにより、ピストンが限界に達するまで押し上げられて、シリンダ内に液状樹脂材料が充満した後も、圧送ポンプにより送出される液状樹脂材料がシリンダ内に送り込まれるため、シリンダ内の圧力を大気圧よりも高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液状樹脂材料の計量値の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る液状樹脂材料供給装置および液状樹脂材料供給装置を制御する方法の好適な実施形態について説明する。
【0014】
図1は、材料計量システム1の構成を示すための図である。図1に示すように、材料計量システム1は、材料供給装置2(液状樹脂材料供給装置)と、射出装置9とに大別される。材料供給装置2は、射出成形のために射出される液状樹脂材料を、射出装置9に供給する装置である。射出装置9は、材料供給装置2から供給された液状樹脂材料を計量し、計量後の液状樹脂材料を射出する装置である。以下において材料供給装置2および射出装置9の構成について詳述する。
【0015】
まず、材料供給装置2について説明する。材料供給装置2は、射出装置9に液状樹脂材料A(例えば、液状シリコーンゴム;以下、材料Aと記載する)を供給するための供給経路4と、射出装置9に液状樹脂材料B(例えば、液状シリコーンゴム;以下、材料Bと記載する)を供給するための供給経路5と、供給経路4、供給経路5および射出装置9を制御するための制御装置6とを備える。
【0016】
供給経路4と供給経路5は、並列に設置され、同様の構成をしている。供給経路4,5における同じ構成要素には同じ番号を付し、さらにこれらの番号の後尾にAまたはBを付した。このAまたはBを付すことによって、供給経路4内の構成要素であるのか、供給経路5内の構成要素であるのかを区別する。なお、特に区別する必要がない場合には、AおよびBの表記を省略して説明する。
【0017】
供給経路4は、容器21Aと、圧送ポンプ22Aと、材料流入弁23Aと、吐出装置24Aと、材料流出弁25Aと、押し下げ板27A(押し下げ部材)と、移動装置28Aとを備える。
【0018】
容器21Aには、材料Aが収容される。なお、射出装置9から射出される材料は、この容器21Aに収容される材料Aと、容器21Bに収容される材料Bとが混合された材料となる。
【0019】
圧送ポンプ22Aは、容器21A内に収容された材料Aを吸い上げて吐出装置24Aへ送出する。
【0020】
材料流入弁23Aは、材料Aの吐出装置24Aへの流入を制御するバルブである。具体的に説明すると、材料流入弁23Aが開いているときには、圧送ポンプ22Aから送出された材料Aが吐出装置24Aに流入可能な状態となる。一方、材料流入弁23Aが閉じているときには、圧送ポンプ22Aから送出された材料Aの吐出装置24Aへの流入が遮断されることになる。
【0021】
吐出装置24Aは、シリンダ24aAとピストン24bAとを有する。シリンダ24aAは、圧送ポンプ22Aによって送出された材料Aを蓄える。ピストン24bAは、シリンダ24aA内において上下に移動可能に配置されており、ピストン24bAの下端部には、パッキンが取り付けられている。ピストン24bAは、このパッキンによって水密かつ摺動可能な状態でシリンダ24aAに内接している。ピストン24bAの上端部は、シリンダ24aAの上端部に形成された貫通孔から外部に突出している。
【0022】
押し下げ板27Aは、ピストン24bAの上端部の上方に配置されている。押し下げ板27Aは、移動装置28Aに取り付けられており、この移動装置28Aによって上下方向に移動させられる。なお、本実施形態における押し下げ板27Aの上昇限度位置は、ピストン24bA自体の上昇限度位置よりも下方または同じ高さに位置するように設計されている。ここで、押し下げ板27Aの上昇限度位置がピストン24bA自体の上昇限度位置よりも下方に設計されている場合には、ピストン24bAは、押し下げ板27Aが存在することによってピストン24bA自体の上昇限度位置まで上昇することが不可能となる。
【0023】
材料流出弁25Aは、材料Aの射出装置9への流出を制御するバルブである。具体的に説明すると、材料流出弁25Aが開いているときには、吐出装置24Aに蓄えられた材料Aが射出装置9に流出可能な状態となる。一方、材料流出弁25Aが閉じているときには、吐出装置24Aに蓄えられた材料Aの射出装置9への流出が遮断されることになる。
【0024】
供給経路5は、容器21Bに収容される液状樹脂材料が、材料Aとは異なる材料Bである点で、上述した供給経路4と異なる。したがって、その他の構成要素については、供給経路4と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0025】
次に、図2を参照して、制御装置6の機能構成について説明する。
【0026】
制御装置6は、物理的には、CPU(中央処理装置)、ROMやRAM等のメモリ、各装置に制御信号を送信するためのインターフェース等から構成される。図2に示すように、制御装置6は、材料流出弁制御部61(流出弁制御手段)と、材料流入弁制御部62(流入弁制御手段)と、押し下げ板制御部63(押し下げ部材制御手段)と、タイマー制御部64とを有する。
【0027】
材料流出弁制御部61は、材料流出弁25を開閉させるための制御信号を送信する。これにより、材料流出弁25の開閉が制御される。なお、材料流出弁制御部61は、少なくとも材料Aまたは材料Bを射出装置9に供給するときには流出弁25を開かせるための制御信号を送信する。
【0028】
材料流出弁制御部61による制御を具体的に説明すると、まず、材料流出弁制御部61は、射出装置9において材料の計量が開始されたことを示す計量開始信号を受信した場合に、材料流出弁25を開かせるための制御信号を送信する。
【0029】
また、材料流出弁制御部61は、第1の所定時間が経過した後に、材料流出弁25を閉じさせるための制御信号を送信する。この第1の所定時間は、射出装置9における材料の計量が終了することにより上昇する押し下げ板27が、当該押し下げ板27の上昇限度位置まで上昇したときに開始する時間である。また、この第1の所定時間は、シリンダ24aと射出装置9との間に残された材料Aまたは材料Bに生じる残留応力が、少なくとも当該残留応力によって材料Aまたは材料Bが射出装置9に流出してしまうことがない程度にまで低減するのに要する時間であり、オペレータにより予め計測され、制御装置6内のメモリに格納されている。
【0030】
材料流入弁制御部62は、材料流入弁23を開閉させるための制御信号を送信する。これにより、材料流入弁23の開閉が制御される。なお、材料流入弁制御部62は、少なくとも材料Aまたは材料Bをシリンダ24aに蓄えるときには流入弁23を開かせるための制御信号を送信する。
【0031】
材料流入弁制御部62による制御を具体的に説明すると、まず、材料流入弁制御部62は、材料流出弁制御部61によって材料流出弁25が閉じられるときに、材料流入弁23を開かせるための制御信号を送信する。
【0032】
また、材料流入弁制御部62は、第2の所定時間が経過した後に、材料流入弁23を閉じさせるための制御信号を送信する。この第2の所定時間は、材料流入弁23が開くことにより押し上げられるピストン24bが、限界に達するまで押し上げられたときに開始される時間である。また、この第2の所定時間は、シリンダ24a内の圧力が、少なくとも大気圧よりも高くなるために要する時間であり、オペレータにより予め計測され、制御装置6内のメモリに格納されている。
【0033】
押し下げ板制御部63は、押し下げ板27を上下方向に移動させるための制御信号を送信する。押し下げ板27は、制御信号を受信した移動装置28によって、上下方向に移動させられることになる。
【0034】
押し下げ板制御部63による制御を具体的に説明すると、まず、押し下げ板制御部63は、材料流出弁制御部61によって材料流出弁25が開かれたときに、押し下げ板27を下方向に移動させるための制御信号を送信する。これにより、下方向に移動する押し下げ板27によって、この押し下げ板27に当接するピストン24bが押し下げられるため、シリンダ24a内に蓄えられた材料Aまたは材料Bが、射出装置9に向かって流出することになる。
【0035】
また、押し下げ板制御部63は、材料の計量が終了したことを示す計量終了信号を射出装置9から受信したときに、押し下げ板27を上方向に移動させるための制御信号を送信する。これにより、押し下げ板27によるピストン24bへの押し下げ圧力が開放されるため、ピストン24bは押し下げ板27からの圧力を受けることなく上昇することができる。
【0036】
タイマー制御部64は、第1の所定時間および第2の所定時間の計測を開始させる制御信号を送信する。これにより、材料供給装置2のタイマー(不図示)において、第1の所定時間および第2の所定時間の計測が開始される。
【0037】
次に、図1に示す射出装置9について説明する。射出装置9は、射出用シリンダ91およびスクリュー92を有する。射出用シリンダ91は、材料供給装置2から供給された液状樹脂材料を収容し、スクリュー92は、射出用シリンダ91に収容された液状樹脂材料を外部に射出させるスクリュー型のピストンである。
【0038】
次に、図3および図4を参照して、材料供給装置2において実行される材料供給処理について説明する。この材料供給処理は、処理を開始させるスイッチがON状態になってからOFF状態になるまでの間、繰り返しかつ連続して実行される。また、以下において説明する材料供給処理の処理手順は、繰り返しかつ連続して実行される処理手順のうち、射出装置9において計量が開始されてから、次回に計量が開始されるまでを一の処理単位とした場合における処理手順である。
【0039】
図3は、材料供給処理の処理手順を説明するためのフローチャートであり、図4は、材料供給処理にかかわる各種信号の変化を説明するためのタイミングチャートである。
【0040】
ここで、図4(a)は、射出装置9において材料の計量が開始されたときに出力される計量開始信号の波形を示す図であり、図4(b)は、射出装置9における材料の計量値の変化を示す図である。また、図4(c)は、材料供給装置2の材料流出弁制御部61から出力される材料流出弁25を開閉させるための制御信号の波形を示す図である。この波形がローレベルであるときには、材料流出弁25を閉じさせるための制御信号が出力されていることを示し、ハイレベルであるときには、材料流出弁25を開かせるための制御信号が出力されていることを示す。また、図4(d)は、材料供給装置2の押し下げ板制御部63から出力される押し下げ板27を上下方向に移動させるための制御信号の波形を示す図である。すなわち、この波形により、材料供給装置2の押し下げ板27の上下方向の位置の変化が示される。また、図4(e)は、材料供給装置2のピストン24bの上下方向の位置の変化を示す図である。図4(f)は、第1の所定時間の波形を示す図である。この波形のハイレベルである期間が、第1の所定時間に相当する。また、図4(g)は、材料供給装置2の材料流入弁制御部62から出力される材料流入弁23を開閉させるための制御信号の波形を示す図である。この波形がローレベルであるときには、材料流入弁23を閉じさせるための制御信号が出力されていることを示し、ハイレベルであるときには、材料流入弁23を開かせるための制御信号が出力されていることを示す。さらに、図4(h)は、第2の所定時間の波形を示す図である。この波形のハイレベルである期間が、第2の所定時間に相当する。
【0041】
まず、図4に示す時間t1において、射出装置9で材料の計量が開始されたことを示す計量開始信号が、ローレベルからハイレベルに切り替わると(図4(a))(ステップS1)、材料供給装置2の材料流出弁制御部61は、材料流出弁25を開かせるための制御信号を出力する。これにより、材料流出弁制御信号がローレベルからハイレベルに切り替わり(図4(c))、材料流出弁25が開くことになる(ステップS2)。これと並行して、押し下げ板制御部63は、押し下げ板27を下方向に移動させるための制御信号が出力する(図4(d))。これにより、押し下げ板27が下降するとともに、この押し下げ板27に当接するピストン24bが押し下げ板27に押し下げられながら下降する(図4(e))(ステップS3)。
【0042】
次に、時間t2において、射出装置9で計量されている材料の計量値が目標値に達したときに(図4(b))、材料の計量が終了したことを示す計量終了信号が射出装置9から出力される。押し下げ板制御部63は、この計量終了信号を受信したときに(ステップS4)、押し下げ板27を上方向に移動させるための制御信号を出力する(図4(d))。これにより、押し下げ板27が上昇するとともに、この押し下げ板27により下方向に圧力を受けていたピストン24bが、押し下げ板27からの圧力が開放されることによって徐々に上昇する(図4(e))(ステップS5)。ここで、押し下げ板27からの圧力が開放されたピストン24bは、シリンダ24aと射出装置9との間にある材料Aまたは材料Bに生じた残留応力によって押し上げられながら徐々に上昇することになる。
【0043】
次に、時間t3において、押し下げ板27が、この押し下げ板27の上昇限度位置まで上昇した場合に(図4(d))(ステップS6;YES)、タイマー制御部64は、第1の所定時間の計測を開始させるための信号を出力する。これにより、材料供給装置2のタイマーは、第1の所定時間の計測を開始する(図4(f))(ステップS7)。
【0044】
次に、時間t4において、材料供給装置2のタイマーが第1の所定時間の計測を終了すると(図4(f))(ステップS8)、材料流出弁制御部61は、材料流出弁25を閉じさせるための制御信号を出力する。これにより、材料流出弁制御信号がハイレベルからローレベルに切り替わり(図4(c))、材料流出弁25が閉じることになる(ステップS9)。これと並行して、材料流入弁制御部62は、材料流入弁23を開かせるための制御信号を出力する。これにより、材料流入弁制御信号がローレベルからハイレベルに切り替わり(図4(g))、材料流入弁23が開くことになる(ステップS10)。
【0045】
次に、時間t5において、ピストン24bが限界に達するまで押し上げられた場合に(図4(e))(ステップS11;YES)、タイマー制御部64は、第2の所定時間の計測を開始させるための信号を出力する。これにより、材料供給装置2のタイマーは、第2の所定時間の計測を開始する(図4(h))(ステップS12)。
【0046】
次に、時間t6において、材料供給装置2のタイマーが第2の所定時間の計測を終了すると(図4(h))(ステップS13)、材料流入弁制御部62は、材料流入弁23を閉じさせるための制御信号を出力する。これにより、材料流入弁制御信号がハイレベルからローレベルに切り替わり(図4(g))、材料流入弁23が閉じることになる(ステップS14)。その後、射出装置9において、次回の材料の計量が開始されるまでの間に、材料の計量値が0にリセットされる。
【0047】
上述した本実施形態における材料供給装置2によると、少なくとも材料Aまたは材料Bをシリンダ24aに蓄えている間は、材料流入弁制御部62により材料流入弁23が開かれるため、圧送ポンプ22により送出された材料Aまたは材料Bは、シリンダ24a内に蓄えられる。また、少なくとも材料Aまたは材料Bを射出装置9に供給している間は、材料流出弁制御部61により材料流出弁25が開かれるため、押し下げ板制御部63により制御される押し下げ板28がシリンダ24aのピストン24bを押し下げることによって、シリンダ24aに蓄えられた材料Aまたは材料Bが射出装置9に供給される。
【0048】
このような材料供給装置2において、本実施形態における材料流出弁制御部61は、射出装置9における材料の計量が終了することにより押し上げられる押し下げ板27が、この押し下げ板27の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に、材料流出弁25を閉じさせている。そして、この第1の所定時間として、シリンダ24aと射出装置9との間にある材料Aまたは材料Bに生じる残留応力が、材料流出弁25が閉じられたときに、少なくとも当該残留応力によって材料Aまたは材料Bが射出装置9に流出してしまうことがない程度にまで低減するのに要する時間が設定されている。
【0049】
これにより、射出装置9における計量が終了した後に、シリンダ24aと射出装置9との間にある材料Aまたは材料Bに残留応力が生じていても、上述した第1の所定時間が経過するまでは材料流出弁25が開かれた状態で維持されるため、シリンダ24aと射出装置9との間にある材料Aまたは材料Bの一部がシリンダ24a内に流れ込むことができ、シリンダ24aと射出装置9との間に生じた残留応力を低減または消滅させることができる。したがって、射出装置9における計量が終了した後に、シリンダ24aと射出装置9との間にある材料Aまたは材料Bが、残留応力によって射出装置9に流れ込む事態を確実に防止することができ、射出装置9における材料の計量値の精度を向上させることができる。さらに、射出装置9における材料の計量値の精度が向上することによって、射出装置9から射出された材料により成形される成形品に生じるバリを低減させることができ、成形品の品質を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態における材料流入弁制御部62は、材料流入弁23が開くことにより押し上げられるピストン24aが限界に達するまで押し上げられたときに開始される第2の所定時間が経過した後に、材料流入弁23を閉じさせている。そして、この第2の所定時間として、シリンダ24a内の圧力が、少なくとも大気圧よりも高くなるために要する時間が設定されている。
【0051】
したがって、ピストン24bが限界に達するまで押し上げられて、シリンダ24a内に材料Aまたは材料Bが充満した後も、圧送ポンプ22により送出される材料Aまたは材料Bがシリンダ24a内に送り込まれるため、シリンダ24a内の圧力を大気圧よりも高くすることができる。これにより、シリンダ24a内に蓄えられている材料Aまたは材料Bに気泡が発生した場合であっても、シリンダ24a内の内圧が高められるため、気泡を消滅させることができる。さらに、気泡を消滅させることによって、気泡の存在により発生する材料Aまたは材料Bの供給量のバラツキを解消させることができる。これにより、材料Aと材料Bの供給比を、予め設定した値に維持させることが可能になるため、射出装置9から射出された材料により成形される成形品の品質を安定させることができる。また、気泡を消滅させることにより、材料供給装置2をより安定して稼働させることができる。
【0052】
また、本実施形態における材料供給装置2において、射出装置9に材料を供給している間は、押し下げ板27によってピストン24bが押し下げられているため、シリンダ24a内の圧力は大気圧よりも高い状態で維持される。また、射出装置9への供給が終了したときから材料流出弁25を閉じるまでの間は、シリンダ24aと射出装置9との間にある材料Aまたは材料Bの一部が残留応力によりシリンダ24a内に流れ込むため、シリンダ24a内の圧力が大気圧よりも高い状態で維持される。さらに、材料流出弁25が閉じると同時に開かれる材料流入弁23が開かれている間は、圧送ポンプ22によって材料Aまたは材料Bがシリンダ24a内に送出されているため、シリンダ24a内の圧力が大気圧よりも高い状態で維持される。このように、本実施形態における材料供給装置2では、シリンダ24a内の圧力を常時大気圧よりも高い状態に維持させることができる。これにより、ピストン24bの下端部に取り付けられたパッキンにゆるみが発生する事態を防止することができ、シリンダ24a内を密閉状態のまま維持することができる。さらに、シリンダ24a内を密閉状態のまま維持することにより、シリンダ24a内に空気が混入する事態を防止することができ、材料Aおよび材料Bの射出装置9への供給を安定して行わせることができる。
【0053】
なお、上述した実施形態における第1の所定時間は、押し下げ板27が、当該押し下げ板27の上昇限度位置まで上昇してから開始しているが、第1の所定時間を開始させるタイミングは、これに限定されない。例えば、押し下げ板27Aの上昇限度位置が、ピストン24bA自体の上昇限度位置よりも上方に位置するように設計されている場合には、押し下げ板27Aがピストン24bA自体の上昇限度位置まで上昇してから開始することとしてもよい。この場合には、押し下げ板27が当該押し下げ板27の上昇限度位置に到達する前に、第1の所定時間が開始されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】材料計量システムの構成を例示するための図である。
【図2】材料供給装置に含まれる制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】材料供給処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】材料供給処理にかかわる各種信号の変化を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1・・・材料計量システム、2・・・材料供給装置、21A,21B・・・容器、22A,22B・・・圧送ポンプ、23A,23B・・・材料流入弁、24A,24B・・・吐出装置、24aA,24aB・・・シリンダ、24bA,24bB・・・ピストン、25A,25B・・・材料流出弁、27A,27B・・・押し下げ板、28A,28B・・・移動装置、4,5・・・供給経路、6・・・制御装置、61・・・材料流入弁制御部、62・・・材料流出弁制御部、63・・・押し下げ板制御部、64・・・タイマー制御部、9・・・射出装置、A,B・・・液状樹脂材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状樹脂材料を計量して射出する射出装置に対して、前記液状樹脂材料を供給する液状樹脂材料供給装置であって、
前記液状樹脂材料を送出する圧送ポンプと、
前記圧送ポンプにより送出された前記液状樹脂材料を蓄えるシリンダと、
前記シリンダのピストンを押し下げる押し下げ部材の移動を制御する押し下げ部材制御手段と、
前記圧送ポンプおよび前記シリンダの間に設けられた流入弁の開閉を制御し、少なくとも前記液状樹脂材料を前記シリンダに蓄えるときには前記流入弁を開かせる流入弁制御手段と、
前記シリンダおよび前記射出装置の間に設けられた流出弁の開閉を制御し、少なくとも前記液状樹脂材料を前記射出装置に供給するときには前記流出弁を開かせる流出弁制御手段と、を備え、
前記押し下げ部材制御手段は、前記流出弁制御手段により前記流出弁が開かれたときに、前記押し下げ部材を前記ピストンが押し下げられる方向に移動させるとともに、前記射出装置から計量が終了したことを示す計量終了信号を受信したときに、前記押し下げ部材を前記ピストンが押し下げられる方向とは反対の方向に移動させ、
前記流出弁制御手段は、前記押し下げ部材の上昇限度位置が前記ピストン自体の上昇限度位置よりも下方または同じ高さに位置するように設計されている場合には、前記押し下げ部材が当該押し下げ部材の上昇限度位置まで上昇したとき、一方、前記押し下げ部材の上昇限度位置が前記ピストン自体の上昇限度位置よりも上方に位置するように設計されている場合には、前記押し下げ部材が前記ピストン自体の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に前記流出弁を閉じさせることを特徴とする液状樹脂材料供給装置。
【請求項2】
前記第1の所定時間は、前記シリンダと前記射出装置との間にある前記液状樹脂材料に生じる残留応力が、前記流出弁が閉じられたときに、少なくとも当該残留応力によって前記液状樹脂材料が前記射出装置に流出してしまうことがない程度にまで低減するのに要する時間であることを特徴とする請求項1記載の液状樹脂材料供給装置。
【請求項3】
前記流入弁制御手段は、前記流入弁が開くことにより押し上げられる前記ピストンが、限界に達するまで押し上げられたときに開始される第2の所定時間が経過した後に、前記流入弁を閉じさせ、
前記第2の所定時間は、シリンダ内の圧力が、少なくとも大気圧よりも高くなるために要する時間であることを特徴とする請求項1または2記載の液状樹脂材料供給装置。
【請求項4】
液状樹脂材料を計量して射出する射出装置に対して、前記液状樹脂材料を供給する液状樹脂材料供給装置を制御する方法であって、
前記液状樹脂材料供給装置が、
前記液状樹脂材料を送出する圧送ポンプと当該圧送ポンプにより送出された前記液状樹脂材料を蓄えるシリンダとの間に設けられた流入弁を開かせて、前記シリンダに前記液状樹脂材料を蓄えさせる工程と、
前記シリンダと前記射出装置との間に設けられた流出弁を開かせるとともに、前記シリンダのピストンを押し下げる押し下げ部材を、前記ピストンが押し下げられる方向に移動させて、前記射出装置に前記液状樹脂材料を供給させる工程と、
前記射出装置から前記液状樹脂材料の計量が終了したことを示す計量終了信号を受信したときに、前記押し下げ部材を前記ピストンが押し下げられる方向とは反対の方向に移動させる工程と、
前記押し下げ部材の上昇限度位置が前記ピストン自体の上昇限度位置よりも下方または同じ高さに位置するように設計されている場合には、前記押し下げ部材が当該押し下げ部材の上昇限度位置まで上昇したとき、一方、前記押し下げ部材の上昇限度位置が前記ピストン自体の上昇限度位置よりも上方に位置するように設計されている場合には、前記押し下げ部材が前記ピストン自体の上昇限度位置まで上昇したときに開始される第1の所定時間が経過した後に、前記流出弁を閉じさせる工程と、
を備えることを特徴とする液状樹脂材料供給装置を制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−205660(P2006−205660A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23633(P2005−23633)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】