説明

液状油性化粧料

【課題】経時安定性、耐水性、のび、使用感、乾燥性、化粧持ちに優れた液状メイクアップ化粧料などに好適な液状油性化粧料を提供する。
【解決手段】(a)ハイドロフルオロエーテル5〜40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20〜60重量%と、(c)シリコン樹脂2〜10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2〜10重量%と、(e)粉体10〜40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が400mPa・s以下であることを特徴とする液状油性化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーション、アイライナー、アイシャドウー等のメイクアップ化粧料に好適な液状油性化粧料に関し、更に詳しくは、水彩絵の具のような良好な塗布性で、使用性に優れるだけでなく、塗布後の乾燥性、仕上がり、化粧持ちにも優れた液状油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファンデーション、アイライナー、アイシャドー等の液状化粧料には、汗、涙、皮脂などによる化粧膜のにじみやよれ、接触によるはがれ等の化粧崩れが生じやすく、その対応策として被膜形成能を有する合成樹脂エマルジョンや油溶性樹脂等が用いられている。
このような液体化粧料としては、被膜形成剤としてアクリル−シリコーン系グラフト共重合体を配合することで、耐水性及び耐油性並びに塗膜物性に優れた被膜を形成し、化粧機能性が高く、使用性の良い化粧料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の化粧料は、耐水性や耐皮脂性に優れるものの、化粧料の乾きがやや遅く、乾く前に化粧崩れが生じてしまうことがあった。そこで、乾燥性を向上させる手法としては、パーフルオロポリエーテルやハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤を使用することが知られている。
【0004】
例えば、1)25℃における粘度が5mPa・s未満となる特定のハイドロフルオロエーテルを1重量%以上を必須成分とする化粧料(例えば、特許文献2参照)、2)25℃における粘度が5mPa・s未満となる特定のハイドロフルオロエーテルと、環状シリコーンとを含むことを特徴とする化粧料(例えば、特許文献3参照)、3)特定のハイドロフルオロエーテル、シリコーン系樹脂、顔料、有機変性粘土鉱物とを夫々特定量含有してなる油性口唇化粧料や油性アイメイクアップ化粧料(例えば、特許文献4及び5参照)、4)顔料及び/又は染料及び/又はフィラーの粒子を含有するメイクアップまたは日焼け止め化粧料組成物における、転写防止剤としての、少なくとも1種のパーフルオロシクロアルキル化合物からなる揮発性ポリオルガノハロゲン溶媒の使用(例えば、特許文献6参照)、5)ネイルケア組成物における、乾燥促進剤としての、少なくとも1種の特定物性となるハイドロフルオロシクロアルキル化合物の使用(例えば、特許文献7参照)などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記各文献に記載されるパーフルオロポリエーテルやハイドロフルオロエーテル等のフッ素系の溶剤は、油性化粧料の処方中への安定配合が難しいため、有機粘土鉱物やワックス類を配合する必要があり、結果としてペースト状の高粘度の化粧料しか得られず、また、乾燥後の皮膜にべとつき感が生じてしまい、塗布性及び使用性に課題があるのが現状である。
【特許文献1】特開2002−47140号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特許第3211740号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2004−269418号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2005−255624号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2005−255625号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特許第3400732号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】特許第3452820号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、ハイドロフルオロエーテルのフッ素系の溶剤を含有してなる液状油性化粧料であっても、乾燥後の皮膜にべとつき感もなく、水彩絵の具のような良好な塗布性で、使用性に優れるだけでなく、塗布後の乾燥性、仕上がり、化粧持ちにも優れた液状油性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、ハイドロフルオロエーテルと、低沸点シリコーンオイルと、シリコン樹脂と、特定の増粘剤と、粉体とを夫々特定量含有すると共に、25℃におけるずり速度191.5sec−1の粘度を特定粘度値以下に設定することにより、上記目的の液状油性化粧料が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) (a)ハイドロフルオロエーテル5〜40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20〜60重量%と、(c)シリコン樹脂2〜10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2〜10重量%と、(e)粉体10〜40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が400mPa・s以下であることを特徴とする液状油性化粧料。
(2) 低沸点シリコーンオイルが、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の液状油性化粧料。
(3) シリコン樹脂が、トリメチルシロキシケイ酸、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の液状油性化粧料。
(4) 粉体は、チタン系表面処理剤で処理してなることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の液状油性化粧料。
(5) 25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が50〜400mPa・sであることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の液状油性化粧料。
(6) 25℃、65%RHの条件下において、濾紙法による塗布直後1分間までの平均初期蒸発速度が、0.15〜2.00mg/secであることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の液状油性化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乾燥後の皮膜にべとつき感もなく、経時安定性、耐水性、のび、使用感、乾燥性及び化粧持ちに優れた液状油性化粧料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を発明ごとに詳しく説明する。
本発明の液状油性化粧料は、(a)ハイドロフルオロエーテル5〜40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20〜60重量%と、(c)シリコン樹脂2〜10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2〜10重量%と、(e)粉体10〜40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が400mPa・s以下であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いる(a)成分のハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、下記一般式(I)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
2n+1−O−C2x+1 ………(I)
〔式(I)中、nは1〜6、xは1〜6である。〕
具体的には、COCH、COC、C11OC、COC、COCなどが挙げられ、例えば、市販の「Cosmetic Fluid CF−61」(3M社製)の商品名で発売されているメチルパーフルオロブチルエーテルや、「Cosmetic Fluid CF−76」(3M社製)の商品名で発売されているエチルパーフルオロブチルエーテル等を用いることができる。
これらのハイドロフルオロエーテルは、単独で又は2種類以上のものを混合して用いことができる。
【0012】
これらのハイドロフルオロエーテルの含有量は、液状油性化粧料全量に対して、5〜40重量%であり、好ましくは、15〜30重量%である。このハイドロフルオロエーテルの含有量が5重量%未満では、乾燥性の向上が期待できず、一方、40重量%を超えると、化粧料の経時安定性が損なわれるため、好ましくない。
【0013】
本発明に用いる(b)成分の低沸点シリコーンオイルとしては、鎖状及び環状のシリコーン油、例えば、低重合度ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(例えば、商品名:KF−96−A−1CS、信越化学工業社製)、デカメチルテトラシロキサン(例えば、商品名:KF−96L−1.5CS、信越化学工業社製)、デカメチルシクロペンタシロキサン(例えば、商品名:KF995、信越化学工業社製)、メチルトリメチコン(例えば、商品名:TMF−1.5、信越化学工業社製)などが挙げられ、好ましくは、眼粘膜や皮膚への刺激性の点から、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンを用いることが望ましい。
これらの低沸点シリコーンオイルは、単独で又は2種類以上のものを混合して用いことができる。
【0014】
これらの低沸点シリコーンオイルの含有量は、液状油性化粧料全量に対して、20〜60重量%であり、好ましくは、30〜50重量%である。この低沸点シリコーンオイルの含有量が20重量%未満では、化粧料の経時安定性が損なわれるため、好ましくなく、一方、60重量%を超えると、乾燥性の向上が期待できず、好ましくない。
【0015】
本発明に用いる(c)成分のシリコン樹脂は、塗布後に耐水性を有する皮膜形成を目的として含有するものであり、例えば、トリメチルシロキシケイ酸(例えば、商品名:KF7312J,KF7312T,X−21−5250、いずれも信越化学工業社製)、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体(例えば、商品名:KP545,KP549、いずれも信越化学工業製)などを用いることができる。
これらの低沸点シリコーンオイルは、単独で又は2種類以上のものを混合して用いることができる。
【0016】
これらのシリコン樹脂〔固形分(樹脂純分)〕の含有量は、液状油性化粧料全量に対して、2〜10重量%であり、好ましくは、3〜7重量%である。このシリコン樹脂の含有量が2重量%未満では、耐水性、耐摩擦性が低下し、結果として化粧持ちが悪くなってしまうため、好ましくなく、一方、10重量%を超えると、皮膚のつっぱり感が強くなり、好ましくない。
【0017】
本発明に用いる(d)成分の増粘剤は、保存時は(e)成分の粉体となる顔料や感触調整用粉体の沈降・ハードケーキ化を防止する目的で含有されるものである。また、本発明による液状化粧料は、水彩絵の具のような良好な塗布性を持たせる必要があるため、使用時には低粘度であることが要求される。よって、本発明では、(a)成分のハイドロフルオロエーテルと(b)成分の低沸点シリコーンオイルの混合系において十分なチキソ性を付与可能な増粘剤が要求される。
本発明で用いる(d)成分の増粘剤としては、上記要求特性を有する成分、具体的には架橋型メチルポリシロキサン(例えば、商品名:KSG−15、信越化学工業社製)、ステアリン酸イヌリン(例えば、商品名:レオパールISK、千葉製粉社製)、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、商品名:シュガーワックスS−10E、第一工業製薬社製)から選ばれる1種又は2種類以上のものを混合して用いることができる。これ以外にも、ステアリルアンモニウムへクトライト、ジステアリルジモニウムへクトライト等の有機変性粘土鉱物が挙げられるが、揮発性シリコーンオイルを構造中に含み過ぎてしまう傾向があり、化粧料塗布後の塗膜乾燥性が低下し、ベタツキ感が長期間残ってしまうため、目的の液状化粧料が得られないこととなる。
【0018】
これらの増粘剤の含有量は、液状油性化粧料全量に対して、2〜10重量%であり、好ましくは、3〜5重量%である。この増粘剤の含有量が2重量%未満では、十分な増粘剤含有効果が得られず、粉体の沈降・ハードケーキ化が生じることとなり、好ましくなく、一方、10重量%を超えると、粉体沈降抑制効果が向上する反面、化粧料がゲル状〜ペースト状になるため、使用感が悪化してしまい、好ましくない。
【0019】
本発明に用いる(e)成分の粉体は、メイクアップ化粧料に使用される顔料や感触調整用粉体で、かつ、(a)成分のハイドロフルオロエーテル及び(b)成分の低沸点シリコーンオイルに膨潤しないものであれば、特に限定されるものではない。
用いることができる顔料としては、例えば、タール色素、酸化鉄、酸化チタン、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、コンジョウ、カルミン、アルミナフレーク・ガラスフレークを含めたパール剤等の着色顔料や、銀や酸化チタンをガラスフレークにコートしたラメ状光沢を有する複合顔料等が挙げられる。
用いることができる感触調整用粉体は、感触や質感を調整することができる粉体であり、例えば、タルク、マイカ、ナイロン末、シリカ粉末、シルク末、ポリエチレン末、PMMAが挙げられる。
これらの粉体である顔料や感触調整用粉体は、少なくとも1種(各単独で又は2種類以上のものを混合して)用いることができる。
【0020】
これらの粉体の含有量は、液状油性化粧料全量に対して、10〜40重量%であり、好ましくは、15〜30重量%である。この粉体の含有量が10重量%未満では、メイクアップ化粧料として十分な色相濃度が得られないだけでなく、塗布後のパウダリー感が不足し、好ましくなく、一方、40重量%を超えると、塗布感が悪化してしまい、好ましくない。
【0021】
本発明においては、水彩絵の具のような使用性が必要となる。本発明に用いる粉体となる顔料や感触調整用粉体によっては、(a)成分のハイドロフルオロエーテルや(b)成分の低沸点シリコーンオイルの混合物中で凝集を生じ、経時安定性を悪化させてしまうものがある。そこで、このような場合又は更なる分散性の向上の点から、ハイドロフルオロエーテルや低沸点シリコーンオイルの混合物中での濡れ性を更に良好にし、分散性を更に向上させる目的で、好ましくは、粉体(顔料、感触調整用粉体)はチタン系表面処理剤で処理してなるものを用いることが望ましい。
用いることができるチタン系表面処理剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパオロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパオロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティツクエスチルチタネート、ジイソプロポキシビス8アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアルミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、チトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、下記一般式(I)で示されるトリイソステアリン酸イソプロピルチタンなどで表面処理した少なくとも1種が挙げられる。これらのチタン系表面処理剤の中で、使用性、汎用性、更なる粉体の分散性の向上の点などから、更に好ましくは、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンで表面処理したものが望ましい。
【化1】

【0022】
本発明において、粉体(顔料、感触調整用粉体)をチタン系表面処理剤で処理する方法等としては、粉体をチタン系表面処理剤含有の溶媒中で浸漬により粉体表面を処理したものなどを挙げることができる。
このチタン系表面処理剤による粉体(顔料、感触調整用粉体)への処理濃度は、配合する粉体種によって適宜調整する必要があるが、概ね1重量%〜10重量%とすることが好ましい。この処理濃度が1重量%未満では、処理剤の効果が不十分なため、更なる効果の発現が期待することができず、一方、処理濃度が10重量%を越える場合は、粉体のパウダリー感が損なわれるため、好ましくない。
また、この処理剤による粉体の処理は、配合する全ての粉体に処理しても良いし、特定の粉体にのみ処理を行う場合であっても、経時安定性が良好であれば問題はない。
なお、一般的な粉体の表面処理方法として、代表的な表面処理方法としてシリコン処理やフッ素処理等が挙げられるが、本発明に使用するハイドロフルオロエーテルや低沸点シリコーンオイルの影響で、満足な結果は得られなかった。
【0023】
本発明の液状油性化粧料には、前記各必須成分等の他に、通常のメイクアップ化粧料に用いられる任意成分などを含有せしめることができる。具体的には、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美容成分、香料などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0024】
本発明の液状油性化粧料は、水彩絵の具のような良好な塗布性を持たせる必要があるため、使用時には低粘度であることが要求され、25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度は400mPa・s以下であることが必要であり、好ましくは、50mPa・s〜400mPa・sとすることが望ましい。
この粘度が400mPa・sを超えると、化粧料の粘度上昇により、使用感が悪化してしまい、好ましくない。なお、粘度が50mPa・s未満であると、皮膚上で滲みやすくなり、使用上好ましくないものとなる。
なお、上記粘度値以下の場合の調整は、上述の(d)成分の増粘剤の含有及び最適な含有量の調整等により行うことができる。
【0025】
また、本発明の液状油性化粧料は、塗布直後のパウダーのような使用感を得るため、揮発溶剤であるハイドロフルオロエーテルと揮発性シリコーンオイルの化粧料からの初期段階での蒸発速度を適切な範囲に設定することが好ましい。本発明における初期蒸発速度は、25℃、65%RHの環境下で濾紙法により、塗布直後から1分間まで測定した平均値で0.15〜2.00mg/secであることが好ましく、更に好ましくは、0.8〜1.5mg/secとすることが望ましい。
この初期蒸発速度が2.00mg/secを超えると、蒸発速度が速すぎるため、化粧料の「のび」が極端に悪くなってしまい、使用上好ましくない。また、初期蒸発速度が0.15mg/sec未満の場合、塗布後の化粧料のべたつき感が長時間残ってしまったり、化粧持ちが悪化するため、使用上好ましくない。なお、初期蒸発量の調整は、ハイドロフルオロエーテルと揮発性シリコーンオイルの混合溶液の混合比率や混合溶剤の配合量によって行うことができる。
【0026】
このように構成される本発明の液状油性化粧料が、(a)成分のフッ素系溶剤であるハイドロフルオロエーテルを用いても、液状油性化粧料の処方中へ安定配合ができ、有機粘土鉱物やワックス類を配合する必要がなく、しかも、乾燥後の皮膜にべとつき感もなく、経時安定性、耐水性、のび、使用感、乾燥性及び化粧持ちに優れた液状油性化粧料が何故得られるかは下記のように推察される。
すなわち、本発明の液状油性化粧料は、塗布前は液状であるが、皮膚上に塗布直後にハイドロフルオロエーテル及び揮発性シリコーンオイルの混合溶剤が揮発して素早くパウダリー感が発現し、その後樹脂分が皮膜を形成することで性能が効果的に発揮されることによるものであり、(a)成分のハイドロフルオロエーテル5〜40重量%と、(b)成分の低沸点シリコーンオイル20〜60重量%と、(c)成分のシリコン樹脂2〜10重量%と、(d)成分の架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤2〜10重量%と、(e)成分の粉体10〜40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が400mPa・s以下とすることにより、初めて、後記実施例に示されるように、水彩絵の具のような良好な塗布性で、使用性に優れるだけでなく、塗布後の乾燥性、経時安定性、耐水性、のび、使用感及び化粧持ちに優れた各性能を発揮でき、かかる性能は、上記(a)〜(e)成分の相互間の配合バランス及び設定した特定の粘度値により達成されるものである。
【実施例】
【0027】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〜11及び比較例1〜9〕
下記表1及び2に示す処方の試料(アイメイクアップ化粧料)を調製した。
各化粧料の粘度は、TVE−30H粘度計(東機産業株式会社製)1°34′×R24標準コーンプレートを用いて25℃、ずり速度191.5sec−1(50rpm)における粘度を測定した。
【0029】
上記で調製した実施例1〜11及び比較例1〜9の試料について、下記各評価方法等により、経時安定性、耐水性、化粧持続性、塗布性、のび、使用感、乾燥性、化粧持ちの評価及び初期蒸発速度を測定した。
これらの結果を下記表1及び2に示す。なお、表1中で用いた表面処理雲母チタン、表面処理ナイロン末は、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンをイソプロピルアルコール又はn−ヘキサン中に分散させた後、所定の処理濃度になるように雲母チタン又はナイロン末を添加し、攪拌・乾燥して得られたものである。
【0030】
(経時安定性の評価法)
試料を蓋付サンプル瓶(内容量20ml)に取り、40℃の条件下で1ヶ月間放置後、粉体(顔料や感触調整用粉体)の沈降状態について下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:顔料や感触調整用粉体の沈降が認められない。
○:顔料や感触調整用粉体の沈降が若干認められるものの、沈降物は柔らかい。
△:顔料や感触調整用粉体の沈降があり、沈降物は若干硬い。
×:顔料や感触調整用粉体顔料の沈降があり、沈降物は完全に固化している。
【0031】
(耐水性の評価法)
上腕部に試料を適量塗布し、乾燥後水中において指で擦取して、その後の状態を下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
◎:評価前と比較して、塗膜の変化が全く認められない。
○:評価前と比較して、塗膜の変化が殆ど認められない。
△:塗膜の剥がれが認められる。
×:塗膜が完全に落ちている。
【0032】
(塗布性、のび、使用感、乾燥性、化粧持ちの各評価法)
各試料について、実際にパネラー(成人女性10名)により、のび、使用感、乾燥性、化粧持ちの使用テストを行い、下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0033】
(初期蒸発速度の測定方法)
25℃、65%RHの環境下において、φ90mmの濾紙上に化粧料約1gを正確に秤量する。秤量直後から1分後の重量を再び測定し、測定前後の重量差から下記式により初期蒸発速度を算出した。
初期蒸発速度(mg/sec)=(W−W)÷60×1000
ここで、W、Wは下記のとおりである。
:測定開始直後に濾紙に秤量された化粧料の重量(g)
:測定開始1分後の濾紙上の化粧料の重量(g)
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
上記表1及び2の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜11は、本発明の範囲外となる比較例1〜9に較べ、経時安定性に優れ、耐水性、のび、使用感、乾燥性、化粧持ちに優れた性能を発揮できることが判明した。
比較例を更に具体的にみると、比較例1では、(a)成分のハイドロフルオロエーテルの含有量が多く、(b)成分の低沸点シリコーンオイルの含有量が少ないため、経時安定性、使用感が悪くなることが判り、一方、比較例2では、(a)成分のハイドロフルオロエーテルの含有量が少なく、(b)成分の低沸点シリコーンオイルの含有量が多い場合は使用感及び乾燥性が悪くなることが判った。
比較例3及び4は、(c)成分のシリコン樹脂の含有量が多い場合、少ない場合であり、これらの場合も、耐水性、のびや使用憾、化粧持ちなどが悪くなることが判った。比較例5は、(d)成分の増粘剤の含有量が多く、粘度が高い場合であり、この場合、のびや使用憾などが悪くなり、一方、比較例6は、(d)成分の増粘剤の含有量が少ない場合であり、この場合は、経時安定性や使用憾などが悪くなることが判った。
比較例7は、(c)成分のシリコン樹脂を使用せず、(e)成分の粉体の含有量を多くした場合であり、この場合は、経時安定性、耐水性、のびなどが悪くなり、一方、比較例8は、(e)成分の顔料のみ少なくした場合においても、使用感、化粧持ちが悪くなることが判った。次に、比較例9は、増粘剤が(d)成分に規定する以外の増粘剤を使用した場合であり、粘度値が高く、耐水性、のび、使用感が悪くなることが判った。
本発明の(a)〜(e)成分の各要件及び粘度値を充足しない比較例1〜9の場合は、経時安定性、耐水性、のび、使用感、乾燥性、化粧持ちの全てを満足することができないことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハイドロフルオロエーテル5〜40重量%と、(b)低沸点シリコーンオイル20〜60重量%と、(c)シリコン樹脂2〜10重量%と、(d)架橋型メチルポリシロキサン、ステアリン酸イヌリン、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の増粘剤2〜10重量%と、(e)粉体10〜40重量%とを少なくとも含有し、かつ、25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が400mPa・s以下であることを特徴とする液状油性化粧料。
【請求項2】
低沸点シリコーンオイルが、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の液状油性化粧料。
【請求項3】
シリコン樹脂が、トリメチルシロキシケイ酸、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の液状油性化粧料。
【請求項4】
粉体は、チタン系表面処理剤で処理してなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の液状油性化粧料。
【請求項5】
25℃、ずり速度191.5sec−1における粘度が50〜400mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の液状油性化粧料。
【請求項6】
25℃、65%RHの条件下において、濾紙法による塗布直後1分間までの平均初期蒸発速度が、0.15〜2.00mg/secであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の液状油性化粧料。

【公開番号】特開2008−137991(P2008−137991A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284781(P2007−284781)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】