説明

液相拡散接合における被接合材のクランプ装置

【課題】 被接合材の両端部に他の2つの被接合材の端部をそれぞれ接合する接合作業の総合的な効率を向上させ、接合作業コストの低減を可能とする、液相拡散接合における被接合材のクランプ装置を提供する。
【解決手段】 第1の被接合材22を把持する第1把持部10dと、第2の被接合材21を把持する第2把持部10aと、第3の被接合材23を把持する第3把持部10bと、これら第1把持部〜第3把持部を支持する連結部10cとを備えている。第1把持部10dは連結部10cに沿って往復移動可能に支持されている。第3把持部10bは連結部10cとの間の距離を可変となす距離調整機構部10eを介して連結部10cにより支持されている。距離調整機構部10eは、一端部を第3把持部10bに接続されたアーム10e’と、アーム10e’の位置を固定するために連結部に取り付けられたアーム固定手段10e”とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント等のボイラ内部において熱交換のために使用される通液配管を形成している管状部材等の損傷部分の補修の際に、切除された当該損傷部分に代わって新規管状部材等を接合するのに適用可能な液相拡散接合の技術に属するものであり、特に、本発明は液相拡散接合における被接合材のクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントや化学プラントなどの各種プラントの密集した配管(例えば、ボイラ用の高温環境下で使用される鋼製の配管)を形成する管状部材の損傷部分を補修する方法として、当該損傷部分を切除し、その部分にほぼ同等な寸法で同等な材質の新規管状部材を液相拡散接合することがなされている。この接合に先立ち、新規管状部材の両端部及びこれらに接合される既設管状部材の切断端部に開先加工が施される。また、接合時には、新規管状部材と既設管状部材との互いに接合される端部である接合端部及びこれらの間に配置される接合材料(例えば、鋼に硼素(B)等を添加することにより低融点化したアモルファスシート)からなる接合部分に対して加熱及び加圧がなされる。
【0003】
以上のような新規管状部材の両端部とそのそれぞれに対向して配置された既設管状部材の端部との従来の液相拡散接合では、例えば特許第3276513号公報(特許文献1)及び特開平9−242725号公報(特許文献2)に記載されているように、新規管状部材の一方の端部についての接合を完了した後に他方の端部についての接合を行っている。
【特許文献1】特許第3276513号公報
【特許文献2】特開平9−242725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載のように、新規管状部材の各端部についての接合に際しては、新規管状部材の端部と既設管状部材の端部とを整列させるために、新規管状部材と既設管状部材とをそれぞれ把持する把持部を備えたクランプ装置が使用される。
【0005】
管状部材の上記切除される損傷部分及びそれに連なる部分が直線状で、従って、上記新規管状部材の各端部についての接合に際して使用される新規管状部材及び既設管状部材の端部が直線状である場合には、クランプ装置としては、新規管状部材とその一方の端部に対向配置される既設管状部材の端部とが一直線上に同軸状に整列するように新規管状部材及び既設管状部材を把持するものを用いることができる。これにより、新規管状部材の一方の端部と一方の既設管状部材の端部との接合即ち第1回目の接合を完了した時の、第2回目の接合のための新規管状部材の他方の端部と他方の既設管状部材の端部との整列は良好なものとなる。
【0006】
しかるに、管状部材の上記切除される損傷部分及びそれに連なる部分は、直線状の場合のみならず、曲線状たとえば円弧状の場合もある。そのような場合には特に、新規管状部材の一方の端部と一方の既設管状部材の端部との接合(第1回目の接合)を完了した時の、第2回目の接合のための新規管状部材の他方の端部と他方の既設管状部材の端部との整列状態が良好でなくなりやすい。そのような場合には、従来のクランプ装置では、第2回目の接合のための新規管状部材と既設管状部材とのクランプ装置による把持の作業は、新規管状部材の端部と既設管材の端部との整列状態が良好になるようにこれら管状部材の端部同士の位置関係を調節した上でクランプ装置をセットすることが必要になることから、面倒なものとなる。
【0007】
このように、従来のクランプ装置では、新規管材の一方の端部についての接合及び他方の端部についての接合の総合的な作業効率が十分とはいえない。
【0008】
本発明は、上記の様な技術的課題を解決し、特に被接合材の両端部に他の2つの被接合材の端部をそれぞれ接合する接合作業の総合的な効率を向上させ、もって接合作業コストの低減を可能とする、液相拡散接合における被接合材のクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明によれば、上記目的を達成するものとして、
第1の被接合材の第1の接合端部を第2の被接合材の第2の接合端部と接合し、更に前記第1の被接合材の前記第1の接合端部とは反対側の第3の接合端部を第3の被接合材の第4の接合端部と接合する際に、前記第1の被接合材を前記第2の被接合材に対して位置決めして保持し更に前記第3の被接合材に対して位置決めして保持するクランプ装置であって、
前記第1の被接合材を把持する第1把持部と、前記第2の被接合材を把持する第2把持部と、前記第3の被接合材を把持する第3把持部と、これら第1把持部〜第3把持部を支持する連結部とを備えており、
前記連結部に対する前記第1把持部の取り付け位置は、前記連結部に対する前記第2把持部の取り付け位置と前記連結部に対する前記第3把持部の取り付け位置との間にあり、
前記第3把持部は前記連結部との間の距離を可変となす距離調整機構部を介して前記連結部により支持されていることを特徴とするクランプ装置、
が提供される。
【0010】
本発明の一態様においては、前記第1把持部は前記連結部に沿って往復移動可能に支持されている。本発明の一態様においては、前記連結部は直線状をなしている。本発明の一態様においては、前記第1把持部、前記第2把持部及び前記第3把持部は、前記連結部の延在する面と直交する方向の周りでそれぞれ回動可能なように前記連結部により支持されている。
【0011】
本発明の一態様においては、前記距離調整機構部は、一端部を前記第3把持部に接続されたアームと、該アームの位置を固定するために前記連結部に取り付けられたアーム固定手段とを含んでなる。本発明の一態様においては、前記アーム固定手段に対して前記アームをその延在方向に沿って往復移動させるための駆動手段が設けられており、前記アームには前記駆動手段と係合する係合部が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明のクランプ装置においては、第1の被接合材の第1の接合端部を第2の被接合材の第2の接合端部と接合する第1回目の接合の際に、第1把持部により第1の被接合材を把持し且つ第2把持部により第2の被接合材を把持すると共に、第3把持部を第3の被接合材に適合させておくことができるので、第1の被接合材の第3の端部を第3の被接合材の第4の接合端部と接合する第2回目の接合の際には、直ちに第1把持部により第1の被接合材を把持し且つ第3把持部により第2の被接合材をその接合端部が第1の接合材と整列するようにして把持することができる。かくして、第1回目の接合を完了した時の第2回目の接合のための第1の被接合材の第3の接合端部と第3の被接合材の第4の接合端部との整列状態が良好でない場合においても、距離調整機構部により第3把持部と連結部との間の距離を適宜変化させることで容易に整列状態を良好にすることができ、第2回目の接合のためのクランプ作業の効率が高められ、もって総合的な接合作業効率が改善され、接合時間の短縮及び接合作業コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明による液相拡散接合における被接合材のクランプ装置の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図9はクランプ装置の使用状態即ちこのクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【0015】
図1(a)及び図1(b)にそれぞれ正面及び側面を示すように、火力発電プラントのボイラ内部には熱交換用の通水配管を形成する壁状に密集配置されて大略上下方向に延びる複数の管材30が設けられている。管材30は、例えば炭素鋼からなる。管材は直線状に延びた部分や曲線状たとえば円弧形状に延びた部分がある。本実施形態では、曲線状に延びた管材部分に経時劣化による損傷部分31が発生した場合につき説明する。
【0016】
図2に示されるように、損傷部分のある管材につき、損傷部分31を切除することにより管材30が分断される。分断された管材30の2つの部分により、既設管材21,23が形成される。これらの既設管材はいずれもその端部及びその近傍が曲線状をなしている。下側の既設管材21の上向き端面21a及び上側の既設管材23の下向き端面23aに対して、接合のための所要の表面粗さに仕上げる開先加工を施す。これらの既設管材21,23の端面21a,23aは、それぞれ当該位置における管材の中心線の曲線形状の方向(即ち管材の延在方向)に対して略直交するように、形成される。
【0017】
次に、図3に示されるように、切除された損傷部分31と同等な寸法で欠陥のない新規管材22を用意し、その両端面に対して接合のための所要の表面粗さに仕上げる開先加工を施す。この新規管材22は直線形状をなしている。新規管材22の両端面は管材の中心線の方向(即ち管材の延在方向)に対して略直交するように、形成される。但し、新規管材22の中心線に沿った長さは既設管材21,23の端面21a,23aの位置での管材中心の間の距離より常温において僅かに[例えば0.5mm〜3mm程度]短いものとする。以上のように、切除された管材損傷部分が曲線状であっても、新規管材としては近似的に直線状のものを使用することができる。これは、切除される損傷部分31の長さ及びその曲線形状の曲率が、直線状の新規管材を使用したとしても切除された曲線状管材損傷部分の場合とそれほど通水特性に変わりがないような程度であることに基づく。このように、直線状の新規管材22を使用することで、わざわざ所要の長さ及び曲率の曲線状の管材を作製することなく、一般的な直線状の管材を所要の長さに切断したものを使用することができる。
【0018】
そして、新規管材22の下向き端面と既設管材21の上向き端面とを液相拡散接合により接合する第1回目の接合を行い、更に新規管材22の上向き端面と既設管材23の下向き端面とを液相拡散接合により接合する第2回目の接合を行う。
【0019】
ここで、本実施形態の液相拡散接合に使用される接合装置につき説明する。図10は、本発明によるクランプ装置を含む接合装置の構成の概略を示すブロック図である。
【0020】
本実施形態の液相拡散接合装置は、第1の加熱装置としての抵抗加熱装置1、第2の加熱装置としての高周波加熱装置2、温度検知手段としての温度センサ4、加圧力検知手段としての加圧力センサ6及び制御装置8を備えている。抵抗加熱装置1は、電源1aと発熱抵抗体1bとを有する。高周波加熱装置2は、高周波電源2aと整合トランス2bと高周波加熱コイル2cとを有する。電源1a及び高周波電源2aは制御装置8から発せられる駆動信号により動作の制御を受ける。電源1aの電力は発熱抵抗体1bに供給され、高周波電源2aの電力は整合トランス2bを経て高周波加熱コイル2cに供給される。発熱抵抗体1b、高周波加熱コイル2c、温度センサ4、加圧力センサ6、及び保持手段としてのクランプ装置10更には付勢手段としての油圧シリンダ11を含んで接合ヘッド12が構成される。
【0021】
以上のような抵抗加熱装置1、高周波加熱装置2、温度センサ4、加圧力センサ6及び油圧シリンダ11としては、従来知られているものを使用することができる。
【0022】
制御装置8は、温度センサ4により検知される温度の信号及び加圧力センサ6により検知される加圧力の信号が入力され、これに基づき抵抗加熱装置1、高周波加熱装置2及び油圧シリンダ11に駆動信号を出力する。
【0023】
クランプ装置は、図3他に示されるように、第1の被接合材としての新規管材22を把持する第1把持部10dと、第2の被接合材としての既設管材21を把持する第2把持部10aと、第3の被接合材としての既設管材23を把持する第3把持部10bと、これら第1把持部〜第3把持部を支持する直線状の連結部10cとを備えている。連結部10cに対する第1把持部10dの取り付け位置は、連結部10cに対する第2把持部10aの取り付け位置と連結部10cに対する第3把持部10bの取り付け位置との間にある。
【0024】
第1把持部10dは、図3における紙面(即ち、連結部10cの延在する面)と垂直な方向の回動中心の周りで回動可能なように基部10d’に取り付けられており、該基部10d’が連結部10cに取り付けられている。この基部10d’の取り付けは、図11及び図12に示されているように、連結部10cにその延在方向に沿って形成されたガイド溝10c’に対して摺動可能なようになされている。即ち、第1把持部10dは連結部10cに沿って往復移動可能に支持されている。
【0025】
図11に示されているように、連結部10cに適宜の位置にて取り付けられた付勢手段としての油圧シリンダ11のピストンロッド11’の作用端が、基部10d’に係合されており、油圧シリンダ11を作動させることで基部10d’を矢印で示すように第2把持部10aの方へと付勢することができる。尚、基部10d’とピストンロッド11’との係合は所望により適宜解除することができ、従って基部10d’及び第1把持部10dはガイド溝10c’に沿って、油圧シリンダ11とは無関係に適宜の位置にて新規管材を把持することができる。
【0026】
基部10d’及びガイド溝10c’の適合部分の断面形状を図12に示すようにすることで、基部10d’をガイド溝10c’に対して溝長手方向のみならず溝深さ方向にも適宜の範囲にわたって移動可能なようにすることができる。即ち、基部10d’の底部に溝幅方向に外方へと突出する突出部10d”を形成しておき、ガイド溝10c’の開口部近傍に溝幅方向に内方へと突出する突出部10c”を形成しておき、これら突出部10d”,10c”同士が互いに最も遠くにある位置から当接する位置まで、基部10d’を溝深さ方向に移動させることができる。これとは異なり、突出部10d”,10c”をこれら同士が常時当接するような位置に設けることで、溝深さ方向の相対移動を生じないようにすることもできる。
【0027】
第2把持部10aは、図3における紙面と垂直な方向の回動中心の周りで回動可能なように基部10a’に取り付けられており、該基部10a’が連結部10cに固定されている。
【0028】
第3把持部10bは、連結部10cとの間の距離を可変となす距離調整機構部10eを介して連結部10cにより支持されている。距離調整機構部10eは、一端部を第3把持部10bに接続されたアーム10e’と、該アーム10e’の位置を固定するために連結部10cに取り付けられたアーム固定手段10e”とを含んでなる。所望の位置に配置されたアーム10e’をアーム固定手段10e”で固定することにより、該アーム10e’の先端に取り付けられた第3把持部10bの連結部10cからの距離を適宜の値に設定することができる。アーム10e’は、図示されているような円弧形状をなすものであってもよいし、単純な直線状のものであってもよい。
【0029】
アーム固定手段10e”に対して、アーム10e’をその延在方向に沿って往復移動させるための駆動手段を設けておくことができる。このような駆動手段としては、図13に示すようなものが例示される。即ち、アーム10e’にその延在方向に沿ってラック10ee’を形成しておき、これと噛み合うピニオンギヤ10ee”をアーム固定手段10e”に配置し、該ピニオンギヤ10ee”をハンドルなどを用いた手動入力またはモータなどを用いた自動入力により回動させることができる。
【0030】
以上の第1把持部〜第3把持部による管材の把持は、例えば油圧駆動によりなされる。
【0031】
温度センサ4は、例えば熱電対からなり、第1回目の接合の際には、図3に示されているように、第1及び第2の被接合材としての1対の被接合管材22,21のうちの一方である新規管材22の接合端部の外面に固定しておくことができ、また、第2回目の接合の際には、第1及び第3の被接合材としての1対の被接合管材22,23のうちの一方である新規管材22の接合端部の外面に、固定しておくことができる。加圧力センサ6としては、図3に示されているように、被接合管材21〜23のうちの接合に関与する管材の接合端部近傍の外面に付された歪ゲージを用いることができる。加圧力センサ6としてはロードセルを用いることもでき、該ロードセルはクランプ装置10の適宜の箇所に付設しておくことができる。
【0032】
さて、第1回目の接合では、先ず、図3に示されるように、第2の被接合材としての既設管材21と第1の被接合材としての新規管材22と第3の被接合材としての既設管材23とを、それぞれクランプ装置の第2把持部10a、第1把持部10d及び第3把持部10bにより把持する。その際に、新規管材22の下端部と既設管材21の上端部とが整列して対向するようにし、また距離調整機構部10eにおいては第3把持部10bがアーム10e’により把持されるように該アーム10e’のアーム固定手段10e”に対する位置が設定される。そして、既設管材21の上端部と新規管材22の下端部との間に接合材料としてのアモルファスシートを配置する。アモルファスシートとしては、例えば管材21,22,23と同等な炭素鋼に融点降下元素としてのホウ素(B)等を添加することにより低融点化したものを使用することができる。アモルファスシートの厚さは例えば25μm程度である。
【0033】
続いて、図4に示されるように、油圧シリンダ11を作動させることで基部10d’に取り付けられた第1把持部10dを第2把持部10aの方へと付勢して接合部分に所定範囲内の加圧力を発生させながら、高周波加熱コイル2cにより新規管材22の下端部及び既設管材21の上端部並びにこれらにより挟持されたアモルファスシートを所定範囲内の温度に加熱する。制御装置8では、温度センサ4により検知される温度及び加圧力センサ6により検知される加圧力が予め設定された範囲内の値を示すように、高周波加熱装置2及び油圧シリンダ11を制御する。
【0034】
加熱により、アモルファスシートと、既設管材21の上端部及び新規管材22の下端部とが溶融せしめられる。即ち、この加熱温度がアモルファスシートの融点以上であることから、アモルファスシートが溶融せしめられ、該アモルファスシート中の融点降下元素であるホウ素が既設管材21の上端部及び新規管材22の下端部へと拡散する。これにより、既設管材21の上端部及び新規管材22の下端部の融点が降下して、この加熱温度で溶融せしめられるようになる。しかる後に、ホウ素は既設管材21及び新規管材22にて更に拡散し、溶融部分のホウ素濃度が低下する。また、これらと並行して、溶融したアモルファスシート中のホウ素濃度も低下する。これにより、溶融状態にある既設管材21の上端部、新規管材22の下端部及びアモルファスシートは、それらの融点が上昇することで、この加熱温度で凝固する。
【0035】
図4に示されているように、高周波加熱コイル2cは、既設管材21の上端部(第2の接合端部)と、これに対向する新規管材22の下端部(第1の接合端部)との径方向外方に位置しており、第1及び第2の接合端部に対して高周波誘導による加熱を行うことができる。高周波加熱コイル2cは、クランプ装置10に取り付けられていて、縦方向(上下方向)に延びた分割面により分割された2つの部分からなり、一方の部分に対して他方の部分がヒンジなどにより回動可能に結合されている。従って、接合ヘッド12を接合のための位置に配置し或いはその位置から退去させる際に、高周波加熱コイル2cを管材21,22に対して所定の位置に配置し或いは該所定の位置から除去することができる。尚、従来の液相拡散接合装置と同様に、高周波加熱コイル2cの周囲にシールドガスを供給する手段を設けておくことができる。
【0036】
かくして、図5に示されるように、既設管材21の上端部と新規管材22の下端部との接合(第1回目の接合)が完了する。
【0037】
第2回目の接合では、先ず、図6に示されるように、第1把持部10dは、連結部10cの上記ガイド溝10c’に沿って新規管材22の上端部の近傍へと移動せしめられ、ここで新規管材22を把持する。
【0038】
続いて、図7に示されるように、距離調整機構部10eにおいてアーム10e’をアーム固定手段10e”に対して適宜の位置へと移動させることで、第3把持部10bにより把持された既設管材23の下端部が新規管材22の上端部と対向するような配置にする。そして、既設管材23の下端部と新規管材22の上端部との間に、上記第1回目の接合の場合と同様にして、接合材料としてのアモルファスシートを配置する。
【0039】
続いて、図8に示されるように、第3把持部10bより下方に位置する新規管材22の部分に発熱抵抗体1bを適用する。発熱抵抗体1bは、高周波加熱コイル2cと同様に、縦方向(上下方向)に延びた分割面により分割された2つの部分からなり、一方の部分に対して他方の部分がヒンジなどにより回動可能に結合されている。従って、接合ヘッド12を接合のための位置に配置し或いはその位置から退去させる際に、発熱抵抗体1bを被接合材に対して所定の位置に配置し或いは該所定の位置から除去することができる。
【0040】
発熱抵抗体1bを発熱させて新規管材22を膨張させることで接合部分に所定範囲内の加圧力を発生させながら、高周波加熱コイル2cにより新規管材22の下端部及び既設管材21の上端部並びにこれらにより挟持されたアモルファスシートを所定範囲内の温度に加熱する。制御装置8では、温度センサ4により検知される温度及び加圧力センサ6により検知される加圧力が予め設定された範囲内の値を示すように、高周波加熱装置2及び抵抗加熱装置1を制御する。
【0041】
加熱により、アモルファスシートと、既設管材23の下端部及び新規管材22の上端部とが溶融せしめられる。即ち、上記第1回目の接合の場合と同様に、この加熱温度がアモルファスシートの融点以上であることから、アモルファスシートが溶融せしめられ、該アモルファスシート中の融点降下元素であるホウ素が既設管材23の下端部及び新規管材22の上端部へと拡散する。これにより、既設管材23の下端部及び新規管材22の上端部の融点が降下して、この加熱温度で溶融せしめられるようになる。しかる後に、ホウ素は既設管材23及び新規管材22にて更に拡散し、溶融部分のホウ素濃度が低下する。また、これらと並行して、溶融したアモルファスシート中のホウ素濃度も低下する。これにより、溶融状態にある既設管材23の下端部、新規管材22の上端部及びアモルファスシートは、それらの融点が上昇することで、この加熱温度で凝固する。
【0042】
かくして、既設管材23の下端部と新規管材22の上端部との接合(第2回目の接合)が完了し、図9に示されるように、既設管材21,23が新規管材22を介して連結された形態が得られる。
【0043】
以上の実施形態では、新規管材として直線状のものを使用しているので、第2回目の接合のために接合端部同士が対向配置された時(図7)に、接合端部の端面同士が非平行になりやすい。そのような場合には、接合端面同士のなす角度が平行に近づくように少なくとも一方の接合端面を再加工してもよい。
【0044】
また、以上の実施形態では、第1の加熱装置として抵抗加熱装置を使用しているが、本発明においては、第1の加熱装置として上記実施形態での第2の加熱装置と同様な高周波加熱装置を使用してもよい。
【0045】
以上の実施形態では、第1、第2及び第3の被接合材として鋼からなり且つ管状をなしているものが使用されているが、本発明においては、第1、第2及び第3の被接合材は、鋼以外の金属からなるものであってもよいし、管状以外の例えば棒状をなしているものであってもよい。
【0046】
更に、以上の実施形態においては、アモルファスシートを第1の被接合材の接合端部と第2または第3の被接合材の接合端部との間に配置する際に、第1〜第3の被接合材の接合端部とは別体の独立したアモルファスシートを配置しているが、本発明においては、アモルファスシートを第1〜第3の被接合材の接合端部の端面に予め接着剤などで接着しておいてもよい。また、接合材料として、第1〜第3の被接合材の接合端部の端面に予め堆積形成したものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図2】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図3】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図4】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図5】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図6】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図7】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図8】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図9】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合の工程を示す模式図である。
【図10】本発明によるクランプ装置を用いた液相拡散接合装置の一実施形態の構成の概略を示すブロック図である。
【図11】第1把持部の基部の連結部への取り付け状態を示す部分断面図である。
【図12】第1把持部の基部の連結部への取り付け状態を示す部分断面図である。
【図13】アームの往復移動のための駆動手段を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1 抵抗加熱装置
1a 電源
1b 発熱抵抗体
2 高周波加熱装置
2a 高周波電源
2b 整合トランス
2c 高周波加熱コイル
4 温度センサ
6 加圧力センサ
8 制御装置
10 クランプ装置
10a 第2把持部
10a’ 基部
10b 第3把持部
10c 連結部
10c’ ガイド溝
10c” 突出部
10d 第1把持部
10d’ 基部
10d” 突出部
10e 距離調整機構部
10e’ アーム
10e” アーム固定手段
10ee’ ラック
10ee” ピニオンギヤ
11 油圧シリンダ
11’ ピストンロッド
12 接合ヘッド
21,23 既設管材
21a,23a 既設管材端面
22 新規管材
30 管材
31 管材損傷部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合材の第1の接合端部を第2の被接合材の第2の接合端部と接合し、更に前記第1の被接合材の前記第1の接合端部とは反対側の第3の接合端部を第3の被接合材の第4の接合端部と接合する際に、前記第1の被接合材を前記第2の被接合材に対して位置決めして保持し更に前記第3の被接合材に対して位置決めして保持するクランプ装置であって、
前記第1の被接合材を把持する第1把持部と、前記第2の被接合材を把持する第2把持部と、前記第3の被接合材を把持する第3把持部と、これら第1把持部〜第3把持部を支持する連結部とを備えており、
前記連結部に対する前記第1把持部の取り付け位置は、前記連結部に対する前記第2把持部の取り付け位置と前記連結部に対する前記第3把持部の取り付け位置との間にあり、
前記第3把持部は前記連結部との間の距離を可変となす距離調整機構部を介して前記連結部により支持されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記第1把持部は前記連結部に沿って往復移動可能に支持されていることを特徴とする、請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記連結部は直線状をなしていることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記第1把持部、前記第2把持部及び前記第3把持部は、前記連結部の延在する面と直交する方向の周りでそれぞれ回動可能なように前記連結部により支持されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記距離調整機構部は、一端部を前記第3把持部に接続されたアームと、該アームの位置を固定するために前記連結部に取り付けられたアーム固定手段とを含んでなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記アーム固定手段に対して前記アームをその延在方向に沿って往復移動させるための駆動手段が設けられており、前記アームには前記駆動手段と係合する係合部が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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