説明

液量決定装置、インクジェット記録装置、及び、液量決定方法

【課題】インク滴の体積を、紙粉や塵埃等によって、誤検知しない検知装置の提供。
【解決手段】インク滴がレーザ光を交差した際に発生する散乱光を受光する受光手段と、レーザ光がフォトダイオード66を照射することを遮るマスク67とを有する。検出装置は、フォトダイオード66で受光された前方散乱光の受光量に基づいてインク滴の体積を決定する。これにより、インク滴以外の物質が光線を遮った場合に、光線の遮断が誤検知されて、インク滴の体積を誤って算出してしまうことを防げるという効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出された液滴の液量を決定する液量決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置の一つとして、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、搬送された用紙に対してノズルからインク滴を吐出することによって、用紙に文字や図形等の画像を記録する。
【0003】
インクジェット記録装置においては、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインクの粘度の上昇や固化、或いは、ノズルへの塵埃の付着等が発生すると、ノズルから吐出されるインク滴の体積が小さくなる場合がある。インク滴の体積が小さくなった状態で記録すると、画像に隙間が生じてしまい、画像品質が低下することとなる。
【0004】
そこで、吐出されたインク滴の体積を算出し、算出された体積等に基づいてインク滴を吐出するノズルの駆動波形を調整するインクジェット記録装置が提案されている(特許文献1)。このインクジェット記録装置は、所定時間毎にインク滴が光線を遮る量を測定し、測定結果からインク滴の吐出方向における断面形状を求めると共に、インク滴の吐出方向と直角な方向のインク滴の断面を円形と仮定してインク滴の体積を算出する。
【0005】
また、光軸がインク滴吐出口の配列面に略平行となるように光源と光センサーを配置した検出手段を備え、光束中に液滴を吐出した際の検出手段の検出信号をもとに、インク滴の吐出状態を判定する液滴検出装置が提案されている(特許文献2)。この液滴検出装置は、インク滴検出信号から、出力信号の落ち込み量を検出し、この落ち込み量を用いて液滴サイズを算出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法により、インク滴が光線を遮る量に基づいてインク滴の体積を算出した場合には、紙粉や塵埃等が光線を遮ることによって、光線の遮断を誤検知してしまうことがあった。即ち、従来の装置を用いた場合には、インク滴以外の物質が光線を遮った場合に、光線の遮断が誤検知されて、インク滴の体積を誤って算出してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、液滴を吐出する吐出手段と、前記吐出手段によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光手段と、前記レーザ光の光軸と交差するように配置され、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光手段と、前記レーザ光が前記受光手段を照射することを遮る遮光手段と、前記受光手段で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする液量決定装置である。
【0008】
請求項4に係る発明は、液滴を吐出する吐出手段と、前記吐出手段によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光手段と、前記レーザ光が通過する通過部が形成され、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする液量決定装置である。
【0009】
請求項6に係る発明は、液滴を吐出する吐出工程と、前記吐出工程によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光工程と、前記レーザ光の光軸と交差するように配置された受光手段で、前記レーザ光を受光せず、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光工程と、前記受光工程で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定工程と、を有することを特徴とする液量決定方法である。
【0010】
請求項7に係る発明は、液滴を吐出する吐出工程と、前記吐出工程によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光工程と、前記レーザ光が通過する通過部が形成された受光手段で、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光工程と、前記受光工程で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定工程と、を有することを特徴とする液量決定方法である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、液量決定装置は、液滴がレーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光し、受光された前方散乱光の受光量に基づいて液滴の液量を決定する。液量決定装置は、レーザ光を遮る量に基づいて液滴の量を算出しないので、液滴以外の物質が光線を遮った場合に、光線の遮断が誤検知されて、液量を誤って算出してしまうことを防げるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る検知装置を備えたインクジェット記録装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る検知装置を備えたインクジェット記録装置の印刷位置の近傍を側面から見た模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る検知装置を備えたインクジェット記録装置の印刷位置の近傍を上面から見た模式図である。
【図4】図3の一断面(A−A)を示した断面図である。
【図5】インクジェット記録装置の印刷位置に配置された本発明の一実施形態に係る検知装置の模式図である。
【図6】受光ユニットのフォトダイオードの模式図である。
【図7】受光ユニットの受光部回路を示すブロック図である。
【図8】本実施形態のインクジェット記録装置の制御部を説明するためのブロック図である。
【図9】液量決定の処理方法を示した処理フロー図である。
【図10】検知波形の模式図である。
【図11】粒径と散乱光の強度の関係を示した説明図である。
【図12】検知波形の模式図である。
【図13】インクジェット記録装置の印刷位置に配置された比較例に係る検知装置の模式図である。
【図14】比較例に係る検知装置の受光ユニットの検知波形である。
【図15】フォトダイオードの他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<実施形態の全体構成>>
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態について説明する。まずは、図1乃至図4を用いて本実施形態の全体構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る検知装置を備えたインクジェット記録装置の模式図である。図2は、本発明の一実施形態に係る検知装置を備えたインクジェット記録装置の印刷位置の近傍を側面から見た模式図である。図3は、本発明の一実施形態に係る検知装置を備えたインクジェット記録装置の印刷位置の近傍を上面から見た模式図である。図4は、図3の一断面(A−A)を示した断面図である。
【0014】
図1に示すインクジェット記録装置1は、ラインプリンタとも呼ばれ、印字幅分のヘッドを配置することにより、搬送された記録媒体の一例としての用紙に記録するように構成されている。図1に示されているように、インクジェット記録装置1は、記録媒体の一例としての用紙を積載し給紙する給紙ユニット10と、給紙された用紙を搬送する搬送ユニット20と、搬送中の用紙に液滴の一例としてのインク滴を吐出して画像を形成するヘッドユニット30と、画像が形成された用紙を積載する排紙トレイを備えた排紙ユニット40と、ヘッドユニット30を維持する維持ユニット50と、液滴の一例としてのインク滴を検知する検知装置60と、インクジェット記録装置1の全体の動作を制御する制御部70と、を備えている。
【0015】
給紙ユニット10は、用紙を積載する給紙トレイと、給紙カセットに積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙ローラを備えている。給紙トレイは、様々な用紙のサイズに適用できるよう構成されている。この給紙トレイに用紙をセットした際に用紙のサイズと用紙の方向(縦・横)とを判別できるように、また用紙切れや給紙時のエラーを検知できるように、給紙ユニット10はセンサを備えていても良い。
【0016】
ヘッドユニット30は、インクを吐出するヘッド31と、ヘッド31にインクを供給するため不図示のサブタンクと、チューブを介してサブタンクにインクを補充供給する不図示のインクカートリッジとを備えている。
【0017】
ヘッド31にはノズルが設けられており、このノズルから、例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを吐出する。本実施形態では、ヘッド31は、ピエゾ素子を有している。このピエゾ素子は、ヘッド31に供給されたインクを加圧する。これにより、ヘッド31はノズルからインク滴が吐出する。吐出されるインク滴のサイズは、ピエゾ素子の駆動波形に基づいて変えられる。なお、ヘッド31は、複数の小滴を連続して吐出して、これらをマージさせることにより、大きいサイズの液滴を形成することもできる。
【0018】
本実施形態では、複数のヘッド31は、インク吐出方向が下向きとなるよう、千鳥格子状に並べて配置されている(図3参照)。ヘッドユニット30は、必ずしも複数のヘッドを備えている必要はなく、ラインヘッドとしての1つのヘッドを備えたものであっても良い。また、インク色の数、及び、ヘッド31の用紙搬送方向に対しての配列順序は、上記の構成に限定されない。なお、ヘッドユニット30は、インクカートリッジ内のインクをサブタンクに供給するために、インクカートリッジの装填部に供給ポンプユニットを備えていても良い。
【0019】
ヘッドユニット30は、不図示のモータによって駆動され、用紙の搬送ユニット20上の位置(印刷位置)と維持ユニット50上の位置との間を移動する(図1参照)。この場合、ヘッドユニット30は、印刷を開始する際に搬送ユニット20上の印刷位置に移動する。また、ヘッドユニット30は、印刷を終了した際や、電源を遮断する際、ヘッド31のクリーニング動作を行う際などに維持ユニット50上の位置に移動する。
【0020】
維持ユニット50はキャップを備え、維持ユニット50上に移動したヘッドユニット30のヘッド31をキャップする。これにより、維持ユニット50は、ヘッド31のノズル開口部からのインクの乾燥を防止する。
【0021】
搬送ユニット20は、駆動ローラ21と従動ローラ22からなるローラと、これらのローラ間に掛け渡された無端状の搬送ベルト23と、用紙を吸引する吸引ファン24と、空吐出されたインクを収容する廃液ユニット25と、を備えている。
【0022】
搬送ベルト23は、駆動ローラ21が不図示のモータにより回転することで周回移動する。ヘッド31と搬送ベルト23との間隔(ギャップ)は、特に限定されないが、1mm程度とすることができる。また、搬送ベルト23には、ヘッドユニット30のヘッド31の配列パターンに対応して複数の吸引孔26が千鳥格子状に形成されている(図3参照)。この吸引孔26は、搬送ベルト23の全周に渡り均等に配置されている。これにより用紙は、搬送ベルト23上に吸引ファン24により吸い付けられ、搬送ベルト23の周回移動によって一枚毎に搬送される。なお、吸引孔26の形状としては、特に限定されないが、用紙を正確に搬送するために通常円形である。
【0023】
インクジェット記録装置1が連続印刷する場合には、搬送ユニット20による用紙の搬送速度と、給紙ユニット10による用紙の給紙速度が制御部70によって共に制御される。これにより、用紙サイズや印刷速度に応じて、搬送される用紙の間隔が調整される。なお、印刷された用紙は、排紙ユニット40に排紙され排紙トレイに蓄積される。
【0024】
廃液ユニット25は、搬送ベルト23の吸引孔26を解してヘッド31から空吐出されたインクを収容する廃液トレイと、廃液トレイに収容されたインクが所定の容量の限度に達したことを検知するセンサとを備えている。これにより、ユーザはセンサの検知に基づいて廃液トレイのインクを廃液として捨てることができる。
【0025】
検知装置60は、図3の用紙の搬送方向Pに対して左手側に配置されたレーザ光を発光する発光ユニット61と、搬送方向Pに対して右手側に配置された受光ユニット62とを備えている。本実施形態では、用紙の搬送方向Pと垂直に配置されたヘッド31の各列に対応して8組の検知ユニットが備えられている。
【0026】
制御部70は、インクジェット記録装置1の全体の動作を制御する。このため、制御部70は、後述のCPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶装置を備えている。
【0027】
<検知装置の構成>
続いて、図5乃至図7を用いて検知装置60の構成を説明する。図5は、インクジェット記録装置の印刷位置に配置された本発明の一実施形態に係る検知装置の模式図である。図6は、受光ユニットのフォトダイオードの模式図である。図7は、受光ユニットの受光部回路を示すブロック図である。
【0028】
検知装置60の各検知ユニットは、図5に示すように、レーザ光を照射し、ヘッド31のノズルから吐出されたインク滴Tがレーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を検知する。発光ユニット61は、ヘッド31から吐出されたインク滴Tの経路と交差するようにレーザ光を発光する。このため、発光ユニット61は、発光素子としてのレーザダイオード63と、レーザダイオード63の近傍に配置されレーザ光を集光するコリメートレンズ64と、レーザ光のビーム径を絞るためのアパーチャ65とを備える。アパーチャ65の形状は、用途に応じて決定され特に限定されないが、本実施形態では円状の穴が空いたものが用いられている。
【0029】
受光ユニット62は、発光ユニット61から発光されたレーザ光の光軸Xと垂直に交差するように配置され、インク滴Tがレーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光するフォトダイオード66と、レーザ光がフォトダイオード66を照射することが遮るマスク67と、フォトダイオード66によって出力された電流を電圧に変換する受光部回路68が設けられている。なお、発光ユニット61と受光ユニット62とは、通常、取付用の治具等を用いて、発光ユニット61から発光されるレーザ光の光軸を調整しながら精度よく取り付けられる。また、フォトダイオード66は、前方散乱光を検知することが可能であれば、必ずしも光軸Xと垂直に交差しなくても良い。
【0030】
フォトダイオード66は、発光ユニット61の発光するレーザ光のビーム径よりも大きいものであれば良く、用途に応じて公知のものが用いられる。本実施形態において、レーザ光の受光面でのビーム径は、特に限定されないが、0.5mm以下である。また、本実施形態においてフォトダイオード66の大きさは、特に限定されないが、5mm×5mm以下である。
【0031】
フォトダイオード66の受光面の中心部の上面には、図6に示されるように、レーザ光を遮光するためのマスク67が設けられている。マスク67の部材は、好ましくは、レーザ光を反射せず吸収する黒色の部材である。これによりレーザ光の反射や外乱によって発生する検知の誤差を抑制することができる。
【0032】
マスク67の面積は、レーザ光の受光面でのビーム径に基づいて適宜選択されるが、通常ビーム径より1mm〜1.5mm大きい長さの辺を有する正方形とすることができる。なお、本実施形態では、マスク67の形状は、正方形としたが、同様の径を有する多角形又は円であっても良い。発光ユニット61は、このマスク67された部分にレーザ光を照射する。これによりフォトダイオード66は、マスク67された部分以外の受光部で前方散乱光を検知する。この場合、フォトダイオード66は、光軸に対して垂直な面の全方向の前方散乱光を検知できるので、レーザ光の出力が小さくても高い精度でインク滴Tを検知することができる。
【0033】
図7に示すように、受光ユニット62の受光部回路68は、電流−電圧変換部と、ハイパスフィルタと、ローパスフィルタとを有する。電流−電圧変換部は、フォトダイオード66から前方散乱光の受光量に基づいて出力された電流を、電流−電圧変換すると共に増幅する。ハイパスフィルタとローパスフィルタは、フォトダイオードによって検知された信号に含まれる必要のない周波数帯を削除して検知波形を得る。出力された検知波形は、所定のレベルになるまでオペアンプにより増幅される。検知装置60は、前方散乱光の受光量に基づいて、電気的にインク滴Tを検知することが可能となる。
【0034】
受光部回路68から出力された検知波形は、インク滴Tの液量の決定に用いられる。本実施形態において、液量にはインク滴Tの体積や径、質量等が含まれる。これにより、ヘッド31のノズルの欠損や吐出状態の判断が可能となる。なお、ノズルの欠損と判断された場合には、インクジェット記録装置1は、ヘッドユニット30を維持ユニット50上に移動させてヘッド31やノズルの回復動作を実行させても良い。また、吐出状態に問題がないと判断された場合には、インクジェット記録装置1は、上記の回復動作を実行せずに印刷を開始させても良い。
【0035】
<<<制御部のハードウェア構成及び機能構成>>>
本実施形態のインクジェット記録装置1の制御部70のハードウェア構成及び機能構成について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態のインクジェット記録装置1の制御部70を説明するためのブロック図である。
【0036】
本実施形態のインクジェット記録装置1の制御部70は、インクジェット記録装置1全体の動作を制御するCPU101、所定のプログラムを記憶したROM102、CPU101のワークエリアとして使用されるRAM103、インクジェット記録装置1の電源が遮断されている間もデータを保持する不揮発性メモリ(NVRAM)104、画像データに対する各種信号処理、並び替え等の画像処理、又はインクジェット記録装置1全体を制御するための入出力信号を処理するASIC(Application Specific Integrated Circuit)105、ホストコンピュータ等の外部機器とのデータ、信号の送受信を行うためのI/F(Interface)106、検知装置60の検知波形を入力するためのI/O(Input/Output)ポート107を有する。
【0037】
また、インクジェット記録装置1の制御部70は、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって動作することで実現される、搬送制御部71と、ヘッド制御部72と、維持制御部73と、検知制御部74と、液量決定部75とを有する。
【0038】
搬送制御部71は、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって、給紙ユニット10、及び搬送ユニット20の動作を制御する。例えば、搬送制御部71が、給紙を開始する旨の信号を送信することで、給紙ユニット10の給紙ローラは給紙トレイに積載された用紙を一枚ずつ給紙する。また、搬送制御部71が、用紙の搬送を開始する旨の信号を送信することで、搬送ユニット20の駆動ローラ21が駆動して搬送ベルト23が周回移動する。
【0039】
ヘッド制御部72は、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって、ヘッドユニット30の動作を制御する。例えば、ヘッド制御部72は、ヘッド31のピエゾ素子を駆動制御するための駆動波形を生成し、インクを吐出する制御を行う。
【0040】
維持制御部73は、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって、維持ユニット50の動作を制御する。例えば、維持制御部73は、ヘッド31をキャップする旨の信号を送信することで、維持ユニット50のキャップでヘッドユニット30のヘッド31をキャップする制御を行う。
【0041】
検知制御部74は、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって、検知装置60の動作を制御する。例えば、検知制御部74は、レーザ光を発光する旨の信号を送信することで、発光ユニット61のレーザダイオード63を発光させる制御を行う。
【0042】
液量決定部75は、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって、検知装置60によって出力された検知波形の面積(受光量)に基づき、液量を決定する。
【0043】
<<実施形態の処理・動作>>
続いて、本実施形態に係るインクジェット記録装置1で液量の一例としてのインク滴Tの体積を決定する処理方法を図9乃至図12を用いて説明する。図9は、液量決定の処理方法を示した処理フロー図である。図10は、検知波形の模式図である。図11は、ミー散乱における粒径と散乱光の強度の関係を示した説明図である。図12は、受光ユニット62の検知波形の模式図である。
【0044】
この液量決定処理は、制御部70のI/Oポート107が、検知装置60の受光ユニット62から出力された検知波形を受信することで開始する(ステップS1)。受光ユニット62は、インク滴Tがレーザ光と交差し始めた時(t1)から、交差し終える時(t2)までの時間(Δt)前方散乱光を検知する。このため、受光ユニット62から出力される検知波形は所定の面積を持ったものとなる(図10参照)。
【0045】
続いて、液量決定部75は受光ユニット62の検知波形の面積を算出する(ステップS2)。インク滴Tの検知波形の面積は、一般的に電圧変量を時間変量で積分した値で示される。ここで、検知波形の面積Sは次の式で求められる。
S=1/2×(Δt×ΔV)
【0046】
続いて、液量決定部75は検知波形の面積値に基づいてインク体積を算出する(ステップS3)。インク滴Tの径とレーザ光の波長の関係から、レーザ光をインク滴Tに照射した場合には、ミー散乱による光の散乱現象が発生すると考えられる。図11に示されるように、ミー散乱においては、粒径が大きくなるにつれて、光軸方向の前方散乱光は大きくなる。これにより、受光部の検知波形の面積はインク滴Tの大きさに応じて大きくなる。例えば、インクの小滴(3pl)、中滴(10pl)、大滴(20pl)のレーザ光の光軸方向の前方散乱光の検知波形は図12のようになる。この場合、検知波形の面積値はインク断面積にほぼ比例する。このため、検知波形の面積値Sをインク滴Tの断面積としてインク体積Vを算出することができる。
V=3/4×S1.5
【0047】
なお、直接光の影響を避けようとした場合には、受光ユニット62において、フォトダイオード66をレーザ光の光軸から離して配置した方が良いようにも考えられる。ところが、フォトダイオード66を光軸から離して配置した場合には、インク滴Tの体積を正確に算出できなくなる。その理由について図13及び図14を用いて説明する。図13は、インクジェット記録装置の印刷位置に配置された比較例に係る検知装置の模式図である。図14は、比較例に係る検知装置の受光ユニットの検知波形である。
【0048】
図13の検知装置は、フォトダイオード66を光軸Xから垂直方向にずらして配置させた点で本実施形態の検知装置60とは異なる。ミー散乱においては、粒径が大きくなるにつれて光軸から離れた位置に散乱する光Aは大きくなるが(図11参照)、その増加量は光軸X方向の散乱光と比較して小さい。例えば、小滴(3pl)、中滴(10pl)、大滴(20pl)のインク滴Tによる検知波形は図14のようになる。即ち、粒径が大きくなると、検知波形の面積値の変化が小さくなるため、インク体積の算出が困難になる。
【0049】
<<実施形態の補足>>
上記実施形態では、液量決定部75はインクジェット記録装置1の制御部70に備えられていた。しかしながら、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。液量決定部75は、外部の情報処理装置に備えられていても良い。この場合、インクジェット記録装置1の受光ユニット62の検知波形は、外部の情報処理装置に送信され、外部の情報処理装置の液量決定部75によってインク滴Tの液量が決定される。
【0050】
また、上記実施形態では、フォトダイオード66の受光面上に、レーザ光を遮光するためのマスク67が設けられていた。しかしながら、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。他の実施形態について図15を用いて説明する。図15は、フォトダイオード66の他の例を示す模式図である。図15のフォトダイオード66には、レーザ光Lが通過する通過部69が形成されている。通過部69は、空間であっても、ガラスやプラスチックのようなレーザ光が通過する材料であっても良い。これにより、フォトダイオード66は、レーザ光を受光せず、インク滴Tがレーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光することができる。なお、通過部69の形状は四角形に限定されず、四角形以外の多角形または円形、楕円形等であっても良い。
【0051】
<<実施形態の主な効果>>
以上説明したように、上記実施形態の検出装置60は、インク滴Tがレーザ光を交差した際に発生する散乱光を受光するフォトダイオード66と、レーザ光がフォトダイオード66を照射することを遮るマスク67とを有する。これにより検出装置60は、フォトダイオード66で受光された前方散乱光の受光量に基づいてインク滴Tの体積を決定する。本実施形態の検出装置60は、レーザ光の光線を遮る量に基づいてインク滴Tの体積を算出しないので、インク滴以外の物質が光線を遮った場合に、光線の遮断が誤検知されて、インク滴の体積を誤って算出してしまうことを防げるという効果を奏する。
【0052】
また、上記実施形態の検出装置60のマスク67は、フォトダイオード66上に設けられている。これにより、レーザ光がフォトダイオード66を直接照射することを遮ることができるという効果を奏する。
【0053】
また、上記実施形態の検出装置60のマスク67の部材は、レーザ光を反射せず吸収する黒色の部材である。これによりレーザ光の反射や外乱によって発生する検知の誤差を抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態の検出装置60のフォトダイオード66は、レーザ光を直接受光しないように、環状に形成されものに置き換えられる。これにより、マスク67を設けなくてもフォトダイオード66が、レーザ光を受光せず、光軸近傍の前方散乱光を受光することが可能となるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット記録装置
10 給紙ユニット
20 搬送ユニット
21 駆動ローラ
22 従動ローラ
23 搬送ベルト
24 吸引ファン
25 廃液ユニット
26 吸引孔
30 ヘッドユニット(吐出手段の一例)
31 ヘッド
40 排紙ユニット
50 維持ユニット
60 検知装置
61 発光ユニット(発光手段の一例)
62 受光ユニット(受光手段の一例)
63 レーザダイオード
64 コリメートレンズ
65 アパーチャ
66 フォトダイオード
67 マスク(遮光手段の一例)
68 受光部回路
69 通過部
70 制御部
71 搬送制御部
72 ヘッド制御部
73 維持制御部
74 検知制御部
75 液量決定部(決定手段の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2003−127430号公報
【特許文献2】特開2005−280351号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光手段と、
前記レーザ光の光軸と交差するように配置され、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光手段と、
前記レーザ光が前記受光手段を照射することを遮る遮光手段と、
前記受光手段で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする液量決定装置。
【請求項2】
前記遮光手段が、前記受光手段上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の液量決定装置。
【請求項3】
前記遮光手段が、前記レーザ光を吸収する材料を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液量決定装置。
【請求項4】
液滴を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光手段と、
前記レーザ光が通過する通過部が形成され、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光手段と、
前記受光手段で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定手段と、を備えたことを特徴とする液量決定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液量決定装置を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
液滴を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光工程と、
前記レーザ光の光軸と交差するように配置された受光手段で、前記レーザ光を受光せず、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定工程と、を有することを特徴とする液量決定方法。
【請求項7】
液滴を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程によって吐出された前記液滴の経路と交差するようにレーザ光を発光する発光工程と、
前記レーザ光が通過する通過部が形成された受光手段で、前記液滴が前記レーザ光を交差した際に発生する前方散乱光を受光する受光工程と、
前記受光工程で受光された前記前方散乱光の受光量に基づいて前記液滴の液量を決定する決定工程と、を有することを特徴とする液量決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−63601(P2013−63601A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203942(P2011−203942)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】