説明

混合された選択性制御剤を含む触媒組成物及び該触媒組成物を使用する重合方法

本開示は、プロ触媒、助触媒、及び、第1の選択性制御剤と、第2の選択性制御剤と、活性制限剤とを含む混合された外部電子供与体を含むチーグラー・ナッタ型触媒組成物を提供する。本発明の触媒組成物を組み込む重合方法により、約50g/10分を超えるメルトフローレートを有する高剛性のプロピレン系ポリマーが製造される。本発明の重合方法は、ビスブレーキング(visbreaking)を全く伴うことなく、標準的な水素濃度を利用して、ただ1つだけのリアクターにおいて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年8月24日出願の米国仮特許出願第60/957,888号の優先権を主張する2008年8月21日出願の国際特許出願番号PCT/US2008/073882の一部継続出願であり、それぞれの出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
より高性能なポリマーを必要とすることが拡大し続けるので、大きいメルトフローを有する高剛性のプロピレン系ポリマーに対する要求が増え続けている。選択性制御剤(SCA)の混合物を含むポリマー触媒組成物が公知である。混合されたSCAにより、それぞれのSCAから与えられる特性を有するオレフィン系ポリマーの製造が可能である。しかしながら、混合されたSCAを含む触媒組成物の使用は、オレフィン重合反応の大きい発熱性は変化させない。重合期間中に発生する過度な熱は重合反応の操作性を著しく危うくする。過度な発熱及び/又は不十分な熱除去は製造の中断及び/又はリアクターの運転停止を容易に生じさせる可能性がある。
【0003】
過度な熱に起因するリアクターの中断又は運転停止のリスクを軽減又は排除する、高剛性/高メルトフローのプロピレン系ポリマーを製造するための触媒組成物が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、大きいメルトフローレート及び大きい剛性を有するプロピレン系ポリマーを製造するための触媒組成物及び重合方法を提供する。本発明の触媒組成物は自己制限(self-limiting)性であり、かつ、強い水素応答を、標準的な重合条件のもとでの高メルトフロー/高剛性のプロピレン系ポリマーの製造とともに示す。
【0005】
本開示は触媒組成物を提供する。本発明の触媒組成物は、プロ触媒組成物、助触媒、及び、混合された外部電子供与体(M−EED)を含む。M−EEDは、活性制限剤(ALA)、第1の選択性制御剤(SCA1)及び第2の選択性制御剤(SCA2)を含む。SCA1及びSCA2が0.1〜1.0:1のモル比で存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態において、ALAが、芳香族エステル又はその誘導体、脂肪族エステル又はその誘導体、ジエーテル、ポリ(アルキレングリコール)エステル、及び、それらの組合せから選択される。
【0007】
1つの実施形態において、SCA1がジメトキシシラン系化合物である。
【0008】
1つの実施形態において、SCA2が、ジエトキシシラン系化合物、トリエトキシシラン系化合物、テトラエトキシシラン系化合物、トリメトキシシラン系化合物、ジエーテル、ジアルコキシベンゼン、2つの線状アルキル基を含有するジメトキシシラン系化合物、2つのアルケニル基を含有するジメトキシシラン系化合物、及び、それらの組合せから選択される。
【0009】
本開示は方法を提供する。1つの実施形態において、プロピレン及び必要な場合には少なくとも1つの他のオレフィンを、重合条件下、重合リアクターにおいて触媒組成物と接触させることを含む重合方法が提供される。触媒組成物は、プロ触媒、助触媒及びM−EEDを含む。本発明の方法はさらに、メルトフローレートが少なくとも50g/10分であるプロピレン系ポリマーを形成することを含む。
【0010】
1つの実施形態において、本発明の触媒組成物により、重合反応が自己制限される。
【0011】
本開示は組成物を提供する。1つの実施形態において、少なくとも5ppmの活性制限剤を含むプロピレン系ポリマーが提供される。本発明のプロピレン系ポリマーは、ASTM D1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定されるとき、約50g/10分を超えるメルトフローレートを有する。
【0012】
本開示の利点が、改善された触媒組成物の提供である。
【0013】
本開示の利点が、改善された重合方法の提供である。
【0014】
本開示の利点が、改善されたプロピレン系ポリマーの提供である。
【0015】
本開示の利点が、重合反応を自己制限する、高メルトフロー/高剛性のプロピレン系ポリマーを製造する触媒組成物の提供である。
【0016】
本開示の利点が、高メルトフロー/高剛性のプロピレン系ポリマーを、ビスブレーキング(visbreaking)を伴うことなく、標準的な量の水素を伴って製造するための方法である。
【0017】
本開示の利点が、下記の特性の1つ又はそれ以上とともに、大きいメルトフローを有するプロピレン系ポリマーの提供である:高い最終的融点、低いオリゴマー含有量、低い毒性若しくは毒性がないこと、少ない分解生成物若しくは分解生成物がないこと、及び/又は、少ない不快臭若しくは不快臭がないこと。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プロピレン系ポリマーについての最終融解温度及びメルトフローレートを示すグラフである。
【図2】プロピレン系ポリマーについてのオリゴマー含有量及びメルトフローレートを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1つの実施形態において、触媒組成物が提供される。本発明の触媒組成物は、プロ触媒組成物、助触媒、及び、混合された外部電子供与体(M−EED)を含む。M−EEDは、第1の選択性制御剤(SCA1)、第2の選択性制御剤(SCA2)及び活性制限剤(ALA)を含む。M−EEDは、約0.1:1から約1.0:1までのSCA1:SCA2のモル比を含む。
【0020】
M−EEDは、3つ以上の選択性制御剤(SCA3、SCA4など)及び/又は2つ以上のALAを含み得ることが理解される。
【0021】
本発明のプロ触媒組成物はチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物であり得る。従来のチーグラー・ナッタ型プロ触媒はどれも、本発明の触媒組成物において使用することができる。
【0022】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は遷移金属化合物及び第2族金属化合物を含有する。遷移金属化合物は、遷移金属化合物に由来する固体の錯体であり得る。例えば、遷移金属化合物は、チタン、ジルコニウム、クロム又はバナジウムのヒドロカルビルオキシド化合物、ヒドロカルビル化合物、ハリド(ハロゲン化物)化合物又はそれらの混合物に由来する固体の錯体であり得る。
【0023】
遷移金属化合物は一般式TrXを有し、但し、式中、Trは遷移金属であり、Xはハロゲン或いはC1−10のヒドロカルボキシル基又はヒドロカルビル基であり、xは、第2族金属化合物との組合せでの本化合物におけるそのようなX基の数である。Trは、第4族又は第5族又は第6族の金属であり得る。1つの実施形態において、Trは第4族の金属であり、例えば、チタンなどである。Xは、クロリド、ブロミド、C1−4アルコキシド又はフェノキシド、或いは、それらの混合であり得る。1つの実施形態において、Xはクロリドである。
【0024】
チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物を形成するために使用することができる好適な遷移金属化合物の限定されない例が、TiCl、ZrCl、HfCl、TiBr、TiCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl、Ti(OCBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Zr(OCCl及びTi(OC)Clである。そのような遷移金属化合物の混合物も同様に使用することができる。少なくとも1つの遷移金属化合物が存在する限り、遷移金属化合物の数に対する制限は何らない。1つの実施形態において、遷移金属化合物はチタン化合物である。
【0025】
好適な第2族金属化合物の限定されない例には、ハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハリド、マグネシウムオキシハリド、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び、マグネシウムのカルボン酸塩が含まれる。1つの実施形態において、第2族金属化合物はマグネシウムジクロリドである。
【0026】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、マグネシウム化合物に担持されるか、又は、そうでない場合にはマグネシウム化合物に由来するチタン成分の混合物である。好適なマグネシウム化合物には、無水塩化マグネシウム、塩化マグネシウム付加物、マグネシウムジアルコキシド又はマグネシウムアリールオキシド、或いは、カルボン酸化されたマグネシウムジアルコキシド又はマグネシウムアリールオキシドが含まれる。1つの実施形態において、マグネシウム化合物はマグネシウムジ(C1−4)アルコキシドであり、例えば、ジエトキシマグネシウムなどである。
【0027】
好適なチタン成分の限定されない例には、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド及び/又はハロゲン化チタンが含まれる。チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物を調製するために使用される化合物には、1つ又はそれ以上のマグネシウムジ(C1−4)アルコキシド、マグネシウムジハリド、マグネシウムアルコキシハリド、或いは、それらの混合物、及び、1つ又はそれ以上のチタンテトラ(C1−4)アルコキシド、四ハロゲン化チタン、チタン(C1−4)アルコキシドハリド、或いは、それらの混合物が含まれる。
【0028】
前駆体組成物を、当分野では一般に公知であるように、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物を調製するために使用することができる。前駆体組成物は、前述の混合されたマグネシウム化合物、チタン化合物又はそれらの混合物の塩素化によって調製することができ、また、固体/固体メタセシスによる特定の組成物の形成又は可溶化を助ける、「クリッピング剤」と呼ばれる1つ又はそれ以上の化合物の使用を伴うことがある。好適なクリッピング剤の限定されない例には、トリアルキルボラート(特に、トリエチルボラート)、フェノール性化合物(特に、クレゾール)及びシランが含まれる。
【0029】
1つの実施形態において、前駆体組成物は式MgTi(ORの混合マグネシウム/チタン化合物であり、但し、式中、Rは、1個〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基、或いは、COR’(式中、R’は、1個〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)である;それぞれのOR基は同じであるか、又は異なる;Xは独立して、塩素、臭素又はヨウ素である;dは0.5〜56であり、又は、2〜4であり、又は、3である;fは2〜116であり、又は、5〜15である;gは0.5〜116であり、又は、1〜3であり、又は、2である。前駆体は、その調製で使用される反応混合物からアルコールを除くことによる制御された沈殿化によって調製することができる。1つの実施形態において、反応媒体は、芳香族の液体(特に、塩素化芳香族化合物、例えば、クロロベンゼンなど)と、アルカノール(特に、エタノール)及び無機の塩素化剤との混合物を含む。好適な無機の塩素化剤には、ケイ素、アルミニウム及びチタンの塩素誘導体が含まれ、例えば、四塩化チタン又は三塩化チタンなどが含まれ、特に、四塩化チタンが含まれる。塩素化剤により、部分的な塩素化がもたらされ、これにより、比較的高レベルのアルコキシ成分(1つ又はそれ以上)を含有する前駆体が生じる。塩素化において使用される溶液からアルカノールを除くことにより、望ましい形態学及び表面積を有する固体前駆体が沈殿する。前駆体が反応媒体から分離された。その上、得られた前駆体は特に均一な粒子サイズを有しており、また、得られたプロ触媒の崩壊だけでなく、粒子が砕けることに対して抵抗性がある。1つの実施形態において、前駆体組成物はMgTi(OEt)Clである。
【0030】
次に、前駆体は、無機のハロゲン化物化合物(好ましくは、チタンのハロゲン化物化合物)とのさらなる反応(ハロゲン化)及び内部電子供与体の取り込みによって固体のプロ触媒に変換される。十分な量で前駆体に既に取り込まれていないならば、内部電子供与体を、ハロゲン化の前に、又は、ハロゲン化の期間中に、又は、ハロゲン化の後で別個に加えることができる。この手順を必要な場合にはさらなる添加物又は補助物の存在下において1回又はそれ以上繰り返すことができ、そして、最終的な固体生成物を脂肪族の溶媒により洗浄することができる。固体のプロ触媒を作製し、回収し、また、貯蔵するどのような方法も、本開示における使用のために好適である。
【0031】
前駆体をハロゲン化するための1つの好適な方法は、(必要な場合には炭化水素希釈剤又はハロ炭化水素希釈剤の存在下において)前駆体を、四価チタンハロゲン化物と高い温度で反応することによるものである。好ましい四価チタンハロゲン化物が四塩化チタンである。オレフィン重合プロ触媒の製造で用いられる、必要に応じて使用される炭化水素溶媒又はハロ炭化水素溶媒は好ましくは、(12個を含めて)12個までの炭素原子を含有し、又は、(9個を含めて)9個までの炭素原子を含有する。例示的な炭化水素には、ペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン及びデカヒドロナフタレンが含まれる。例示的な脂肪族ハロ炭化水素には、塩化メチレン、臭化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタン及びテトラクロロオクタンが含まれる。例示的な芳香族ハロ炭化水素には、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン及びクロロトルエンが含まれる。脂肪族ハロ炭化水素は、少なくとも2つのクロリド置換基を含有する化合物であり得る(例えば、四塩化炭素又は1,1,2−トリクロロエタンなど)。芳香族ハロ炭化水素はクロロベンゼン又はo−クロロトルエンであり得る。
【0032】
ハロゲン化を1回又はそれ以上繰り返すことができ、但し、必要な場合には、不活性な液体(例えば、脂肪族又は芳香族の炭化水素又はハロ炭化水素など)による洗浄を、ハロゲン化と、ハロゲン化との間に、また、ハロゲン化の後に伴う。さらに必要な場合には、不活性な液体希釈剤(特に、脂肪族又は芳香族の炭化水素、或いは、脂肪族又は芳香族のハロ炭化水素)と接触させることを、特に、100℃を超える高い温度で、又は、110℃を超える高い温度で伴う1回又はそれ以上の抽出を、不安定な化学種を除くために、特に、TiClを除くために用いることができる。
【0033】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、(i)ジアルコキシマグネシウムを、標準温度において液体である芳香族の炭化水素又はハロ炭化水素に懸濁すること、(ii)前記ジアルコキシマグネシウムをハロゲン化チタンと接触させること、及び、さらには、(iii)得られた組成物を前記ハロゲン化チタンと再度接触させること、並びに、前記ジアルコキシマグネシウムを(ii)における前記ハロゲン化チタンによる処理の期間中のある時点で芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させることによって得られる固体の触媒組成物を含む。
【0034】
1つの実施形態において、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、(i)式MgTi(OR(前記で記載される通り)の前駆体物質を、標準温度において液体である芳香族の炭化水素又はハロ炭化水素に懸濁すること、(ii)前記前駆体をハロゲン化チタンと接触させること、及び、さらには、(iii)得られた組成物を前記ハロゲン化チタンと再度接触させること、並びに、前記前駆体を(ii)における前記ハロゲン化チタンによる処理の期間中のある時点で芳香族ジカルボン酸のジエステルと接触させることによって得られる固体の触媒組成物を含む。
【0035】
プロ触媒組成物は内部電子供与体を含む。本明細書中で使用される「内部電子供与体」は、プロ触媒組成物の形成の期間中に付加される化合物、又は、そうでない場合には、プロ触媒組成物の形成の期間中に形成される化合物であって、得られたプロ触媒組成物に存在する1つ又はそれ以上の金属に1対の電子を与える化合物である。何らかの特定の理論によってとらわれないが、内部電子供与体は、活性部位の形成を調節することを助け、それにより、触媒の立体選択性を高めることが考えられる。
【0036】
1つの実施形態において、内部電子供与体は二座化合物である。「二座化合物」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも2つの酸素含有官能基を含有し、これらの酸素含有官能基が、ヘテロ原子(1つ又はそれ以上)を場合により含有し得る少なくとも1つの飽和したC−C10炭化水素鎖によって隔てられる化合物である。二座化合物は、フタラート、ジエーテル、スクシナート、フェニレンジベンゾアート、マレアート、マロナート、グルタラート、ジアルコキシベンゼン、ビス(アルコキシフェニル)、ジオールエステル、ケトエステル、アルコキシアルキルエステル、ビス(アルコキシアルキル)フルオレン及びそれらの任意の組合せであり得る。
【0037】
1つの実施形態において、内部電子供与体はフタラートであり、これには、ジイソブチルフタラート及び/又はジ−n−ブチルフタラートが含まれる。
【0038】
1つの実施形態において、内部電子供与体は9,9−ビス(メトキシメチル)−9H−フルオレンである。
【0039】
1つの実施形態において、内部電子供与体はフェニレンジベンゾアートである。
【0040】
チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物はまた、不活性な担体物質を含むことができる。担体は、遷移金属化合物の触媒性能を有害に変化させない不活性な固体であり得る。例には、金属の酸化物(例えば、アルミナなど)及びメタロイドの酸化物(例えば、シリカなど)が含まれる。
【0041】
本発明の触媒組成物は助触媒を含む。前述のチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物とともに使用される助触媒がアルミニウム含有組成物であり得る。好適なアルミニウム含有組成物の限定されない例には、有機アルミニウム化合物が含まれ、例えば、1個〜10個の炭素原子又は1個〜6個の炭素原子をそれぞれのアルキル基又はアルコキシド基に含有するトリアルキルアルミニウム化合物、ジアルキルアルミニウムヒドリド化合物、アルキルアルミニウムジヒドリド化合物、ジアルキルアルミニウムハリド化合物、アルキルアルミニウムジハリド化合物、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物及びアルキルアルミニウムジアルコキシド化合物などが含まれる。1つの実施形態において、助触媒はC1−4トリアルキルアルミニウム化合物であり、例えば、トリエチルアルミニウム(TEA又はTEAl)などである。アルミニウム対チタンのモル比が10〜200:1であり、又は、35〜50:1である。1つの実施形態において、アルミニウム対チタンのモル比が45:1である。
【0042】
本発明の触媒組成物は、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)と、活性制限剤(ALA)とを含む混合された外部電子供与体(M−EED)を含む。本明細書中で使用される「外部電子供与体」(又は「EED」)は、1対の電子を金属原子に与えることができる少なくとも1つの官能基を含有する、プロ触媒形成とは無関係に添加される化合物である。特定の理論によって何らとらわれないが、触媒組成物における1つ又はそれ以上の外部電子供与体の提供はホルマント(formant)ポリマーの下記の特性に影響を及ぼすことが考えられる:タクチシティー(すなわち、キシレン可溶物)のレベル、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分布(MWD)、融点及び/又はオリゴマーレベル。
【0043】
SCAのための好適な化合物の限定されない例には、ケイ素化合物、例えば、アルコキシシランなど;エーテル及びポリエーテル、例えば、アルキルエーテル及び/又はアルキルポリエーテル、シクロアルキルエーテル及び/又はシクロアルキルポリエーテル、アリールエーテル及び/又はアリールポリエーテル、混合アルキル/アリールエーテル及び/又は混合アルキル/アリールポリエーテル、混合アルキル/シクロアルキルエーテル及び/又は混合アルキル/シクロアルキルポリエーテル、並びに/或いは、混合シクロアルキル/アリールエーテル及び/又は混合シクロアルキル/アリールポリエーテルなど;エステル及びポリエステル、特に、モノカルボン酸又はジカルボン酸(例えば、芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸など)のアルキルエステル、シクロアルキルエステル及び/又はアリールエステルなど;そのようなエステル又はポリエステルのアルキルエーテル誘導体又はシクロアルキルエーテル誘導体又はチオエーテル誘導体、例えば、芳香族モノカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸のアルキルエステル又はアルキルジエステルのアルキルエーテル誘導体など;及び、前記のすべての第15族ヘテロ原子置換誘導体又は第16族ヘテロ原子置換誘導体;並びに、アミン化合物、例えば、環式、脂肪族又は芳香族のアミンなど、より具体的には、ピロール化合物又はピリジン化合物が含まれ、但し、前記SCAのすべてが合計で2個〜60個の炭素を含有し、かつ、1個〜20個の炭素をどのようなアルキル基又はアルキレン基においても含有し、3個〜20個の炭素をどのようなシクロアルキル基又はシクロアルキレン基においても含有し、6個〜20個の炭素をどのようなアリール基又はアリーレン基においても含有する。
【0044】
1つの実施形態において、SCA1及び/SCA2は、下記の一般式(I)を有するシラン組成物である:
SiR(OR’)4−m (I)
【0045】
上記式において、Rは独立してそれぞれが水素であるか、或いは、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子、第15族ヘテロ原子、第16族ヘテロ原子又は第17族ヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の置換基により場合により置換されるヒドロカルビル基又はアミノ基である。Rは、水素及びハロゲンを除いて20個までの原子を含有する。R’はC1−20アルキル基であり、mは、0、1又は2である。1つの実施形態において、Rは、C6−12アリール基、C6−12アルキル基又はC6−12アラルキル基、C3−12シクロアルキル基、C3−12分岐アルキル基、或いは、C3−12環式アミノ基であり、R’はC1−4アルキル基であり、mは1又は2である。
【0046】
1つの実施形態において、SCA1はジメトキシシラン系化合物である。ジメトキシシラン系化合物には、少なくとも1つの第二級アルキル基及び/又は第二級アミノ基がケイ素原子に直接に結合するジメトキシシラン系化合物が含まれ得る。好適なジメトキシシラン系化合物の限定されない例には、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン及び前記化合物の任意の組合せが含まれる。
【0047】
1つの実施形態において、SCA1は剛性促進組成物である。「剛性促進組成物」は、本明細書中で使用される場合、本開示の方法条件に従う操作を別にすれば、得られたポリマーの剛性を目的とする重合条件のもとで増大させるか、又は、そうでない場合には高める組成物である。好適な剛性促進組成物の限定されない例には、上記において開示されるジメトキシシラン系化合物のいずれもが含まれる。
【0048】
1つの実施形態において、SCA1はジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0049】
1つの実施形態において、SCA2は、ジエトキシシラン系化合物、トリエトキシシラン系化合物、テトラエトキシシラン系化合物、トリメトキシシラン系化合物、2つの線状アルキル基を含有するジメトキシシラン系化合物、2つのアルケニル基を含有するジメトキシシラン系化合物、ジエーテル、ジアルコキシベンゼン及びそれらの任意の組合せから選択されるケイ素化合物である。
【0050】
SCA2のための好適なケイ素化合物の限定されない例には、下記の化合物が含まれる:ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、n−プロピルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ビニル(クロロメチル)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−(ジエトキシメチルシリル)エタン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、オクタエトキシ−1,3,5−トリシラペンタン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−メチルジエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、及び、ジイソブチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、O−(ビニルオキシブチル)−N−トリエトキシシリルプロピルカルバマート、10−ウンデセニルトリメトキシシラン、n−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−[5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、トリエトキシシリルウンデカナールエチレングリコールアセタール、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル−O−メントカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、スチリルエチルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、(S)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、(R)−N−1−フェニルエチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、S−(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、及び、O−(メタクリルオキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)カルバマート、テトラメトキシシラン、及び/又は、テトラエトキシシラン。
【0051】
1つの実施形態において、SCA2は、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−ペンテン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン及び前記化合物の任意の組合せであり得る。
【0052】
1つの実施形態において、SCA2は、2つの線状アルキル基を含有するジメトキシシラン系化合物、2つのアルケニル基又は水素を含有するジメトキシシラン系化合物(但し、1つ又はそれ以上の水素原子はハロゲンによって置換される場合がある)、及び、それらの任意の組合せから選択される。
【0053】
1つの実施形態において、SCA2は、ジエーテル、ジエーテルのダイマー、ジアルコキシベンゼン、ジアルコキシベンゼンのダイマー、線状炭化水素基によって連結されるジアルコキシベンゼン、及び、それらの任意の組合せであり得る。下記において示されるALAのためのジエーテルは、SCA2のジエーテルのための限定されない例として同等に当てはまることに留意されたい。
【0054】
1つの実施形態において、SCA2はメルトフロー促進組成物である。「メルトフロー促進組成物」は、本明細書中で使用される場合、本開示の方法条件に従う操作を別にすれば、得られたポリマーのメルトフローレートを目的とする重合条件のもとで増大させる組成物である。メルトフロー促進組成物は、上記において開示されるような、SCA2として好適であるシラン組成物のいずれか、ジエーテル、アルコキシベンゼン、エステル、ケトン、アミド及び/又はアミンであり得る。
【0055】
1つの実施形態において、触媒組成物は、1以下であるSCA1対SCA2のモル比を含み、又は、0.1〜1.0:1であるSCA1対SCA2のモル比を含む。さらなる実施形態において、SCA1:SCA2のモル比が0.1〜0.9:1であり、又は、0.2〜0.5:1である。何らかの特定の理論によってとらわれないが、SCA1:SCA2のモル比を1.0以下に維持することは、両方のSCAがホルマントプロピレン系ポリマーの特性に寄与することを有利に可能にすることが見出されている。
【0056】
M−EEDは活性制限剤(ALA)を含む。「活性制限剤」は、本明細書中で使用される場合、高い温度における触媒活性、すなわち、約100℃を超える温度における重合条件での重合リアクターにおける触媒活性を低下させるものである。ALAの提供は自己制限性の触媒組成物をもたらす。本明細書中で使用される「自己制限」性の触媒組成物は、約100℃を超える温度で低下した活性をはっきりと示す触媒組成物である。言い換えれば、「自己制限」は、反応温度が通常的には80℃未満である通常の重合条件のもとでの触媒活性と比較して、反応温度が100℃を超えて上昇するときの触媒活性の低下である。加えて、実用的な基準として、重合方法(例えば、通常の処理条件で稼動する流動床気相重合など)が、ポリマー粒子の凝集に関してのリスクを低下させるとともに中断し、かつ、その結果として触媒床の崩壊を生じさせることができるならば、触媒組成物は、「自己制限」性を有すると言われる。
【0057】
この場合に使用される、高い温度における重合活性の標準化された尺度として、触媒活性が、温度に起因する異なるモノマー濃度を補償するために調節される。例えば、液相(スラリー又は溶液)重合条件が使用されるならば、高い温度での反応混合物における低下したプロピレン溶解度を説明するための補正係数が含められる。すなわち、触媒活性が、より低い温度(特に、67℃の標準)と比較して、「低下した溶解性」を補償するために「正規化」される。温度Tにおける「正規化(された)」活性、すなわち、Aが、濃度補正係数[P(67)]/[P(T)]が乗じられる温度Tでの測定された活性、すなわち、(重量・ポリマー/重量・触媒/hr)として定義され、但し、式中、[P(67)]は67℃におけるプロピレン濃度であり、[P(T)]は温度Tにおけるプロピレン濃度である。正規化活性のための式が下記に示される。
正規化活性(A)=([P(67)]/[P(T)])×活性(T)
【0058】
この式において、温度Tにおける活性に、温度Tにおけるプロピレン濃度に対する、67℃におけるプロピレン濃度の比率が乗じられる。得られた正規化活性(A)は、温度上昇によるプロピレン濃度の低下について調節されたものであり、様々な温度条件のもとでの触媒活性を比較するために使用することができる。補正係数が、液相重合において使用される条件について下記に示される。
67℃ 85℃ 100℃ 115℃ 130℃ 145℃
1.00 1.42 1.93 2.39 2.98 3.70
【0059】
この補正係数は、重合活性が、用いられる条件のもとではプロピレン濃度とともに直線的に増大することを仮定している。補正係数は、使用される溶媒又は希釈剤の関数である。例えば、上記で示される補正係数は、一般的なC6−10脂肪族炭化水素の混合物(Isopar(商標)E、Exxon Chemical Companyから入手可能)についてである。気相重合条件のもとでは、モノマーの溶解度は通常、要因ではなく、活性は一般に、温度の違いについて補正されない。すなわち、活性と、正規化活性とが同じである。
【0060】
「正規化活性比」がA/A67として定義される(式中、Aは温度Tにおける活性であり、A67は67℃における活性である)。この値を、温度の関数としての活性変化の指標として使用することができる。例えば、A100/A67が0.30に等しいことは、100℃における触媒活性が67℃における触媒活性の30パーセントに過ぎないことを示す。100℃において、35%以下のA100/A67比が、自己制限性の系である触媒系をもたらすことが見出されている。
【0061】
ALAは、芳香族エステル又はその誘導体、脂肪族エステル又はその誘導体、ジエーテル、ポリ(アルキレングリコール)エステル、及び、それらの組合せであり得る。好適な芳香族エステルの限定されない例には、芳香族モノカルボン酸のC1−10のアルキルエステル又はシクロアルキルエステルが含まれる。その好適な置換された誘導体には、芳香族環(1つ又はそれ以上)又はエステル基の両方が、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子又は第15族ヘテロ原子又は第16族ヘテロ原子(特に、酸素)を含有する1つ又はそれ以上の置換基により置換される化合物が含まれる。そのような置換基の例には、(ポリ)アルキルエーテル基、シクロアルキルエーテル基、アリールエーテル基、アラルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ジアルキルアミン基、ジアリールアミン基、ジアラルキルアミン基及びトリアルキルシラン基が含まれる。芳香族カルボン酸エステルは、安息香酸のC1−20ヒドロカルビルエステル(但し、ヒドロカルビル基は非置換であるか、或いは、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子含有置換基又は第15族ヘテロ原子含有置換基又は第16族ヘテロ原子含有置換基により置換される)、及び、そのC1−20(ポリ)ヒドロカルビルエーテル誘導体、又は、C1−4アルキルベンゾアート及びそのC1−4環アルキル化誘導体、又は、メチルベンゾアート、エチルベンゾアート、プロピルベンゾアート、メチルp−メトキシベンゾアート、メチルp−エトキシベンゾアート、エチルp−メトキシベンゾアート及びエチルp−エトキシベンゾアートが含まれる。1つの実施形態において、芳香族カルボン酸エステルはエチルp−エトキシベンゾアートである。
【0062】
1つの実施形態において、ALAは脂肪族エステルである。脂肪族エステルはC−C30脂肪族酸エステルである場合があり、また、モノエステル又はポリ(2つ以上)エステルである場合があり、また、直鎖又は分岐である場合があり、また、飽和又は不飽和である場合があり、また、それらの任意の組合せである場合がある。C−C30脂肪族酸エステルはまた、1つ又はそれ以上の第14族ヘテロ原子含有置換基又は第15族ヘテロ原子含有置換基又は第16族ヘテロ原子含有置換基により置換される場合がある。好適なC−C30脂肪族酸エステルの限定されない例には、脂肪族C4−30モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C4−20モノカルボン酸及び脂肪族C4−20ジカルボン酸のC1−4アリルモノエステル及びC1−4アリルジエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸及び脂肪族C8−20ジカルボン酸のC1−4アルキルエステル、及び、C2−100(ポリ)グリコール又はC2−100(ポリ)グリコールエーテルのC4−20モノカルボキシラート誘導体又はC4−20ポリカルボキシラート誘導体が含まれる。さらなる実施形態において、C−C30脂肪族酸エステルはイソプロピルミリステート及び/又はジ−n−ブチルセバカートであり得る。
【0063】
1つの実施形態において、ALAはイソプロピルミリステートである。
【0064】
1つの実施形態において、ALAはジエーテルである。ジエーテルは、下記の式によって表されるジアルキルジエーテルであり得る:
【化1】

【0065】
上記式において、R〜Rは互いに独立して、20個までの炭素原子を有するアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり、但し、これらのアルキル基又はアリール基又はアラルキル基は、R及びRが水素原子であり得るならば、第14族ヘテロ原子、第15族ヘテロ原子、第16族ヘテロ原子又は第17族ヘテロ原子を必要に応じて含有することができる。好適なジアルキルエーテル化合物の限定されない例には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン及び9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが含まれる。さらなる実施形態において、ジアルキルエーテル化合物は2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである。
【0066】
1つの実施形態において、ALAはポリ(アルキレングリコール)エステルである。好適なポリ(アルキレングリコール)エステルの限定されない例には、ポリ(アルキレングリコール)モノアセタート又はポリ(アルキレングリコール)ジアセタート、ポリ(アルキレングリコール)モノミリステート又はポリ(アルキレングリコール)ジミリステート、ポリ(アルキレングリコール)モノラウラート又はポリ(アルキレングリコール)ジラウラート、ポリ(アルキレングリコール)モノオレアート又はポリ(アルキレングリコール)ジオレアート、グリセリルトリ(アセタート)、C2−40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、及び、それらの任意の組合せが含まれる。1つの実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)エステルのポリ(アルキレングリコール)成分はポリ(エチレングリコール)である。
【0067】
1つの実施形態において、アルミニウム対ALAのモル比が1.4〜85:1である場合があり、又は、2.0〜50:1である場合があり、又は、4〜30:1である場合がある。2つ以上のカルボキシラート基を含有するALAについては、カルボキシラート基のすべてが、効果的な成分であると見なされる。例えば、2つのカルボキシラート官能基を含有するセバカート分子は、2つの効果的な機能性分子を有すると見なされる。
【0068】
1つの実施形態において、触媒組成物は0.5〜25:1のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、1.0〜20:1のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、1.5〜15:1のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、約6未満のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、約5未満のAl対M−EEDのモル比を含み、又は、4.5未満のAl対M−EEDのモル比を含む。
【0069】
1つの実施形態において、Al:M−EEDのモル比が0.5〜4.0:1である。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、0.5:1〜4.0:1のAl/M−EEDのモル比により、十分な量のアルミニウムが、重合反応を標準の重合温度で維持するために提供されることが考えられる。しかしながら、(例えば、温度暴走又は方法不調に起因する)高い温度では、より多くのアルミニウム化学種が他の触媒成分と反応する。このことは、重合反応を遅くするアルミニウム不足を引き起こす。アルミニウム不足により、アルミニウムと錯体形成する電子供与体の数における対応する低下が引き起こされる。錯体形成していない供与体の自由電子対が触媒系の毒となり、これにより、反応が自己制限される。
【0070】
本明細書中で使用される「総SCA」は、SCA1及びSCA2の(モルでの)合計量である。言い換えれば、総SCA=SCA1(モル)+SCA2(モル)。M−EEDにおけるALAの量は触媒自己制限能を高い温度で高め、一方で、SCA1の量は剛性を生成ポリマーにおいて提供し、かつ、SCA2の量はメルトフローを生成ポリマーにおいて提供する。総SCA対ALAのモル比が0.43〜2.33:1であり、又は、0.54〜1.85:1であり、又は、0.67〜1.5:1である。SCA1対総SCAのモル比が0.2〜0.5:1であり、又は、0.25〜0.45:1であり、又は、0.30〜0.40:1である。出願人らは、驚くべきことに、また、予想外であったが、(1)SCA1対SCA2、及び/又は、(2)総SCA対ALA、及び/又は、(3)SCA1対総SCAの制御されたモル比により、自己制限性の触媒が使用可能であるという特性と併せて、大きいメルトフロー及び大きい剛性の特異な特性を有する生成ポリマーが得られることを発見している。
【0071】
1つの実施形態において、総SCA対ALAのモル比が0.43〜2.33:1であり、SCA1対総SCAのモル比が0.2〜0.5:1である。
【0072】
1つの実施形態において、触媒組成物は1.4〜85:1のAl対総SCAのモル比を含み、又は、2.0〜50:1のAl対総SCAのモル比を含み、又は、4.0〜30:1のAl対総SCAのモル比を含む。
【0073】
1つの実施形態において、触媒組成物は、1.0未満である総SCA対ALAのモル比を含む。驚くべきことに、また、予想外であったが、総SCA対ALAのモル比を1.0未満に維持することにより、リアクターの操作性が著しく改善されることが見出されている。
【0074】
1つの実施形態において、M−EEDは、ジシクロペンチルジメトキシシラン(SCA1)、メルトフロー促進組成物(SCA2)及びイソプロピルミリステート(ALA)を含む。さらなる実施形態において、SCA2が、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチル−ジメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−ペンテン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、テトラエトキシシラン、1−エトキシ−2−(6−(2−エトキシフェノキシ)ヘキシルオキシ)ベンゼン、1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼン及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0075】
本発明の触媒組成物の様々な成分の間におけるモル比が下記において表1に示される。
【表1】

【0076】
本発明の触媒組成物は、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0077】
1つの実施形態において、重合方法が提供される。本発明の重合方法は、プロピレン及び必要な場合には少なくとも1つの他のオレフィンを、重合条件下、重合リアクターにおいて触媒組成物と接触させることを含む。触媒組成物は、本明細書中に開示される触媒組成物のいずれであってもよく、プロ触媒、助触媒、及び、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)と、活性制限剤(ALA)とを含む混合された外部電子供与体(M−EED)を含む。本発明の方法はまた、2.16kgの重りを用いた230℃でのASTM D1238−01試験法に従って測定されるとき、メルトフローレート(MFR)が少なくとも50g/10分であるプロピレン系ポリマーを形成することを含む。
【0078】
1つの実施形態において、本発明の方法は、60g/10分を超えるMFRを有するプロピレン系ポリマー、又は、70g/10分を超えるMFRを有するプロピレン系ポリマー、又は、80g/10分を超えるMFRを有するプロピレン系ポリマー、又は、100g/10分を超えるMFRを有するプロピレン系ポリマー、又は、50g/10分を超え、約1000g/10分までであるMFRを有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。
【0079】
本発明の方法は、プロピレン及び必要な場合には少なくとも1つの他のオレフィンを重合リアクターにおいて触媒組成物と接触させることを含む。1つ又はそれ以上のオレフィンモノマーをプロピレンと一緒に重合リアクターに導入して、触媒と反応させ、ポリマー、コポリマー(又はポリマー粒子の流動床)を形成させることができる。好適なオレフィンモノマーの限定されない例には、下記の化合物が含まれる:エチレン;C4−20α−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンなど;C4−20ジオレフィン、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)及びジシクロペンタジエンなど;C8−40ビニル芳香族化合物、これには、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンが含まれる;及び、ハロゲン置換されたC8−40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンなど。
【0080】
1つの実施形態において、本発明の方法は、プロピレンを触媒組成物と接触させて、プロピレンホモポリマーを形成することを含む。
【0081】
本明細書中で使用される「重合条件」は、所望されるポリマーを形成するための、触媒組成物及びオレフィンの間での重合を促進させるために好適な重合リアクター内の温度パラメーター及び圧力パラメーターである。重合方法は、1基又は2基以上の重合リアクターにおいて作動する気相重合方法、スラリー重合方法又は塊状重合方法であり得る。従って、重合リアクターは、気相重合リアクター、液相重合リアクター又はそれらの組合せであり得る。
【0082】
重合リアクターにおける水素の供給は重合条件の構成要素の1つであることが理解される。重合期間中、水素は連鎖移動剤であり、生成ポリマーの分子量(及び、それに対応して、メルトフローレート)に影響を及ぼす。
【0083】
1つの実施形態において、重合が液相重合を介して行われる。
【0084】
1つの実施形態において、重合が気相重合を介して行われる。本明細書中で使用される「気相重合」は、1つ又はそれ以上のモノマー成分を含有する上昇する流動化媒体が、触媒の存在下、流動化媒体によって流動状態で維持されるポリマー粒子の流動床の中を通り抜けることである。「流動化(fluidization)」、「流動(化された)(fluidized)」又は「流動化(させる)(fluidizing)」は、微細に分割されたポリマー粒子の層がガスの上昇流によって持ち上げられ、かつ、かき混ぜられる気体・固体接触方法である。粒子層の隙間を通り抜ける流体の上向きの流れにより、粒子の重量を超える圧力差及び摩擦抵抗増加が達成されるとき、流動化が粒子層において生じる。従って、「流動床」は、流動化媒体の流れによって流動状態で懸濁される多数のポリマー粒子である。「流動化媒体」は、1つ又はそれ以上のオレフィンガス、場合により、キャリアガス(例えば、H又はNなど)、及び、場合により、気相リアクターの中を通って上昇する液体(例えば、炭化水素など)である。
【0085】
典型的な気相重合リアクター(又は気相リアクター)は、容器(すなわち、リアクター)、流動床、分配プレート、入口配管及び出口配管、コンプレッサー、サイクルガスの冷却器又は熱交換器、並びに、生成物排出システムを含む。容器は反応域及び速度低下域を含み、それらのそれぞれが分配プレートの上方に位置する。流動床が反応域に位置する。1つの実施形態において、流動化媒体は、プロピレンガスと、少なくとも1つの他のガス(例えば、オレフィン及び/又はキャリアガス(例えば、水素又は窒素など)など)とを含む。
【0086】
1つの実施形態において、接触させることが、触媒組成物を重合リアクターに供給し、オレフィンを重合リアクターに導入することを介して生じる。1つの実施形態において、本発明の方法は、オレフィンを助触媒と接触させることを含む。助触媒を、プロ触媒組成物が重合リアクターに導入される前にプロ触媒組成物と混合することができる(プレミックス)。別の実施形態において、助触媒が、プロ触媒組成物と独立して重合リアクターに加えられる。重合リアクターへの助触媒の独立した導入をプロ触媒組成物の供給と同時に行うことができ、又は、プロ触媒組成物の供給と実質的に同時に行うことができる。
【0087】
1つの実施形態において、本発明の方法は、M−EEDをプロ触媒組成物と混合すること、又は、そうでない場合には、M−EEDをプロ触媒組成物と一緒にすることを含む。M−EEDを助触媒と錯体形成させることができ、及び/又は、触媒組成物と、プロピレンとの間における接触の前にプロ触媒組成物と混合することができる(プレミックス)。別の実施形態において、M−EED(又はその個々の成分)を重合リアクターに独立して加えることができる。
【0088】
1つの実施形態において、本発明の方法は、0.1〜1.0:1のSCA1:SCA2のモル比を維持することを含む。
【0089】
1つの実施形態において、本発明の方法は気相重合方法であり、水素対プロピレン(「H/C」)のモル比を気相リアクターにおいて0.30(すなわち、0.30:1)未満で維持すること、又は、0.20未満で維持すること、又は、0.18未満で維持すること、又は、0.16未満で維持すること、又は、0.08未満で維持することを含む。大きいメルトフローを、高レベルの水素を使用することによって達成することができるが、0.30を超えるH/Cのモル比を介して製造されるプロピレン系ポリマーは、リアクターの酸化された炭素鋼の存在下でのプロピレンの望まれない水素化反応を加速させ、また、触媒活性を低下させることが見出されている。他方で、本発明の方法を介して形成される生成したプロピレン系ポリマーでは、H/Cのモル比が0.3未満であるので、過度な量の触媒作用残渣が回避される。さらなる実施形態において、本発明の方法は、2009年2月23日に出願された同時係属中の特許出願 (代理人文書番号68345)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるような気相重合方法である。
【0090】
1つの実施形態において、気相重合方法は、水素分圧を約80psi未満に維持すること、又は、約71psi未満に維持すること、又は、約63psi未満に維持することを含む。
【0091】
1つの実施形態において、本発明の方法は、リアクターにおける温度が約100℃を超えるときには重合方法を自己制限することを含む。
【0092】
1つの実施形態において、本発明の方法は、プロピレン系ポリマーをただ1つだけの重合リアクターにおいて形成することを含む。
【0093】
1つの実施形態において、本発明の方法は、少なくとも5ppmのALAを含有し、かつ、MFRが約50g/10分よりも大きいプロピレン系ポリマーを形成することを含む。ALAが少なくとも約5ppmの量で存在し、又は、少なくとも約10ppmの量で存在し、又は、少なくとも約20ppmの量で存在し、又は、少なくとも約30ppmの量で存在し、又は、少なくとも約5ppmから約150ppmまでの量で存在する。さらなる実施形態において、ALAがイソプロピルミリステート(IPM)である。
【0094】
1つの実施形態において、本発明の方法は、約200ppm未満のケイ素を含有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。さらなる実施形態において、200ppm未満のジシクロペンチルジメトキシシランを含有するプロピレン系ポリマー、又は、約1ppm〜約200ppmのジシクロペンチルジメトキシシランを含有するプロピレン系ポリマー、又は、約2ppm〜約100ppmのジシクロペンチルジメトキシシランを含有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。
【0095】
出願人らは、驚くべきことに、また、予想外であったが、混合された外部電子供与体の存在により、自己制限性であり、かつ、大きい剛性及び大きいメルトフローを有するプロピレン系ポリマーを標準的重合条件のもとでただ1つだけの重合リアクターにおいてもたらす触媒組成物が提供されることを発見している。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、ALAが、過度な熱により引き起こされる暴走反応、ポリマーシーティング(sheeting)及び/又はポリマー凝集を防止することによって重合リアクターにおける操作性を改善していることが考えられる。SCA1及びSCA2の提供は、標準的な水素レベルの利用とともに、高剛性(すなわち、約170℃を超えるTMF)/高メルトフロー(すなわち、50g/10分又は60g/10分又は70g/10分又は100g/10分を超えるメルトフロー)のプロピレン系ポリマーの形成を可能にする。
【0096】
具体的には、本発明の方法により、ビスブレーキングを伴うことなく、すなわち、MFRを、以前に記載されたようなリアクター品位の高剛性プロピレン系ポリマーの水素使用限界を超えて増大させるための従来の技術を伴うことなく、大きい剛性及び大きいメルトフローを有するプロピレン系ポリマーが有利に製造される。用語「ビスブレーキング」(又は「クラッキング」)は、本明細書中で使用される場合、ポリマーがより小さいポリマー鎖セグメントに熱的及び/又は化学的に分解することである。ビスブレーキングは典型的には、ポリマー(例えば、ポリプロピレンなど)を、ポリプロピレンをより小さいポリプロピレン鎖セグメントに分解するためにフリーラジカル開始剤(例えば、過酸化物など)の存在下で溶融状態に置くことを含む。
【0097】
ビスブレーキングは多くの副作用を有する:例えば、様々な分解生成物(これらは臭気及び食品不適合性の問題を引き起こすことが多い)の形成、追加された費用、及び、ポリマー剛性における低下など。ビスブレーキングはメルトフローを増大させ、それにもかかわらず、ポリマーの重量平均分子量を低下させる。ビスブレーキングは初期ポリマーの物理的及び化学的な構造を変化させる。例えば、ビスブレーキングを受けたポリプロピレンホモポリマーは、同じMFRを有する、クラッキングを受けていないプロピレンホモポリマーと比較して、物理的特性及び/又は機械的特性における低下(すなわち、より低い引張弾性率、より低い曲げ弾性率)を示す。
【0098】
1つの実施形態において、本発明の方法は、クラッキングを受けていないプロピレン系ポリマーを形成する。「クラッキングを受けていない」ポリマーはビスブレーキング手順にさらされていない。言い換えれば、クラッキングを受けていないポリマーは、熱分解及び/又は化学的分解を受けていないポリマーである。クラッキングを受けていないポリマーは、同じMFRにおいて、ビスブレーキングを受けたポリマーが示すような、分子量に関連づけられる物理的特性及び/又は機械的特性(例えば、曲げ弾性率及び/又は引張弾性率など)における低下を示さない。加えて、クラッキングを受けていないポリマーは、ビスブレーキングを受けたポリマーで見出されるような、(臭気及び食品不適合性の問題を引き起こすことが多い)分解生成物が見出されない。
【0099】
1つの実施形態において、本発明の方法は、下記の特性の1つ又はそれ以上を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む:(i)クラッキングを受けていないプロピレンホモポリマー、(ii)50g/10分を超えるMFR、又は、60g/10分を超えるMFR、又は、70g/10分を超えるMFR、又は、100g/10分を超えるMFR、(iii)4wt%未満のキシレン可溶分含有量、又は、3wt%未満のキシレン可溶分含有量、又は、約0.1wt%〜2.0wt%未満のキシレン可溶分含有量、(iv)約165℃を超えるTMF、又は、170℃を超えるTMF、(v)少なくとも約5ppm〜約150ppmのALA含有量、(vi)3000ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量(「オリゴマー」はC12−C21化合物である)、又は、2500ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量、又は、約500ppm〜約3000ppmのリアクター後オリゴマー含有量、及び/又は、(vii)ただ1つだけの剛性促進組成物SCA(及び場合によりALA)を含有する触媒組成物によって類似の重合条件のもとで形成されるプロピン系ポリマーの対応するオリゴマー含有量よりも約10%少ない、又は、約20%少ない、又は、約30%少ないリアクター後オリゴマー含有量。用語「リアクター後オリゴマー含有量」は、本明細書中で使用される場合、重合リアクターから出た直後における生成したプロピレン系ポリマーのオリゴマー含有量である。言い換えれば、「リアクター後オリゴマー含有量」は、何らかの重合後の洗浄手順、加熱手順及び/又は精製手順の前におけるオリゴマー含有量である。
【0100】
本発明の重合方法は、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0101】
1つの実施形態において、プロピレン系ポリマーが提供される。本発明のプロピレン系ポリマーは少なくとも5ppmの活性制限剤を含む。本発明のプロピレン系ポリマーは、約50g/10分を超えるメルトフローレートを有する。ALAが、少なくとも5ppmの量で、又は、少なくとも10ppmの量で、又は、少なくとも20ppmの量で、又は、少なくとも30ppmの量で、又は、少なくとも5ppm〜約150ppmの量で存在し得る。さらなる実施形態において、ALAがイソプロピルミリステート(IPM)である。
【0102】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーは、60g/10分を超えるMFRを有し、又は、70g/10分を超えるMFRを有し、又は、80g/10分を超えるMFRを有し、又は、100g/10分を超えるMFRを有し、又は、50g/10分を超えるMFRから、約1000g/10分までのMFRを有する。
【0103】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーはクラッキングを受けていない。
【0104】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーはプロピレンホモポリマーである。
【0105】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーは、約200ppm未満のケイ素を含み、又は、約1ppm〜約200ppmのケイ素を含み、又は、約2ppm〜約100ppmのケイ素を含む。さらなる実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーは約1ppm〜約200ppmのジシクロペンチルジメトキシシランを含む。
【0106】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーは、下記から選択される特性を含む:(i)約4wt%未満のキシレン可溶分含有量、又は、約3wt%未満のキシレン可溶分含有量、又は、約0.1wt%〜約2.0wt%未満のキシレン可溶分含有量、(ii)約165℃を超えるTMF、又は、約170℃を超えるTMF、(iii)約3000ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量、又は、約2500ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量、又は、約500ppm〜約3000ppmのリアクター後オリゴマー含有量、及び、(iv)(i)〜(iii)の任意の組合せ。
【0107】
1つの実施形態において、本発明のプロピレン系ポリマーは毒性が低いか、若しくは、毒性がなく、及び/又は、分解生成物が少ないか、若しくは、分解生成物がなく、及び/又は、不快臭が少ないか、若しくは、不快臭がない。
【0108】
本発明のプロピレン系ポリマーは、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0109】
定義
【0110】
本明細書中での元素周期表に対するすべての参照は、CRC Press,Inc.が2003年に発行し、同社が著作権を有する元素周期表を参照するものとする。また、族に対する参照はいずれも、族の番号表記のためのIUPACシステムを使用してこの元素周期表に反映される族を参照するものとする。反することが述べられる場合、又は、文脈から暗黙的である場合、又は、当分野において慣例的である場合を除き、すべての部及びパーセントは重量に基づく。米国特許実務の目的のために、本明細書中で参照される何らかの特許、特許出願又は刊行物の内容が、特に、合成技術、定義(本明細書中に示されるどのような定義とも矛盾しない程度に)、及び、当分野における一般的知識に関しては、本明細書によりそれらの全体において参照によって組み込まれる(又は、それらの同等な米国対応物が参照によって同様に組み込まれる)。
【0111】
用語「含む」及びその派生形は、何らかのさらなる成分、工程又は手順が本明細書中に開示されているか否かにかかわらず、何らかのさらなる成分、工程又は手順の存在を除外することが意図されない。何らかの疑念を避けるために、用語「含む」の使用により本明細書中で主張されるすべての組成物は、反することが述べられない限り、ポリマーであろうとも、又は、そうでなくとも、何らかのさらなる添加物、補助物又は化合物を含むことができる。対照的に、用語「から本質的になる」は、何らかのその後の列挙の範囲から、操作性に不可欠でないものを除いて、何らかの他の成分、工程又は手順を除外する。用語「からなる」は、具体的に記述又は列挙されていない何らかの成分、工程又は手順を除外する。用語「又は(若しくは、或いは)」は、別途述べられない限り、列挙された要素を個々に参照し、同様にまた、任意の組合せで参照する。
【0112】
本明細書中に列記される数値範囲はどれも、少なくとも2単位の隔たりが、何らかの下方値と、何らかの上方値との間に存在するならば、1単位の刻みで、下方値から上方値までのすべての値を含む。一例として、ある成分の量、或いは、組成的特性又は物理的特性(例えば、ブレンド配合物成分の量、軟化温度、メルトインデックスなど)の値が1〜100の間であることが述べられるならば、すべての個々の値(例えば、1、2、3など)及びすべての部分範囲(例えば、1〜20、55〜70、197〜100など)が本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満である値については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されることの例にすぎず、列挙される最低値及び最高値の間における数値のすべての可能な組合せが本明細書において明示的に述べられると見なされなければならない。言い換えれば、本明細書中に列記される数値範囲はどれも、述べられた範囲に含まれるどのような値又は部分範囲も包含する。様々な数値範囲が、本明細書中で議論されるように、メルトインデックス、メルトフローレート及び他の特性に関して列記されている。
【0113】
用語「ブレンド配合物」又は用語「ポリマーブレンド配合物」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上のポリマーのブレンド配合物である。そのようなブレンド配合物は、(分子レベルで相分離しない)混和性を有する場合があり、又は、混和性を有しない場合がある。そのようなブレンド配合物は、相分離する場合があり、又は、相分離しない場合がある。そのようなブレンド配合物は、透過型電子顕微鏡観察、光散乱、X線散乱、及び、当分野において公知である他の方法から求められるような1つ又はそれ以上のドメイン形態を含有する場合があり、又は、ドメイン形態が含有しない場合がある。
【0114】
用語「組成物」には、本明細書中で使用される場合、組成物を構成する材料、並びに、組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物が含まれる。
【0115】
用語「ポリマー」は、同じタイプ又は異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー及びインターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つのタイプのモノマー又はコモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。インターポリマーには、コポリマー(これは通常、2つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)、ターポリマー(これは通常、3つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)、及び、テトラポリマー(これは通常、4つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
用語「インターポリマー」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製ポリマーを示す。従って、総称用語であるインターポリマーには、2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを示すために通常的に用いられるコポリマー、及び、3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0117】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーの総重量に基づいて過半重量パーセントのオレフィン(例えば、エチレン又はプロピレン)を重合された形態で含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの限定されない例には、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0118】
用語「エチレン系ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、(重合可能なモノマーの総重量に基づいて)過半重量パーセントの重合されたエチレンモノマーを含み、かつ、場合により、少なくとも1つの重合されたコモノマーを含み得るポリマーを示す。
【0119】
用語「プロピレン系ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、(重合可能なモノマーの総量に基づいて)過半重量パーセントの重合されたプロピレンモノマーを含み、かつ、場合により、少なくとも1つの重合されたコモノマーを含み得るポリマーを示す。
【0120】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合、分岐又は非分岐である飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を示す。好適なアルキル基の限定されない例には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(又はアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(又は2−メチルプロピル)などが含まれる。アルキルは1個及び20個の炭素原子を有する。
【0121】
用語「置換(された)アルキル」は、本明細書中で使用される場合、アルキルのいずれかの炭素に結合する1つ又はそれ以上の水素原子が別の基(例えば、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ及びそれらの組合せなど)によって置換される、ちょうど記載されたようなアルキルを示す。好適な置換アルキルには、例えば、ベンジル及びトリフルオロメチルなどが含まれる。
【0122】
用語「アリール」は、本明細書中で使用される場合、ただ1つだけの芳香族環であり得る芳香族置換基、或いは、融合されて一緒になるか、又は、共有結合により連結されるか、又は、共通の基(例えば、メチレン成分又はエチレン成分など)に連結される多数の芳香族環であり得る芳香族置換基を示す。そのような芳香族環には、中でも、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びビフェニルが含まれ得る。アリールは1個及び20個の炭素原子を有する。
【0123】
試験方法
【0124】
曲げ弾性率が、ASTM D790−00に従って求められる。
【0125】
メルトフローレート(MFR)が、プロピレン系ポリマーについて、2.16kgの重りを用いた230℃でのASTM D1238−01試験法に従って測定される。
【0126】
キシレン可溶分(XS)が、米国特許第5,539,309号に記載されるようなH NMR法を使用して測定される(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0127】
最終的融点(TMF)は、サンプルにおける最も完全な結晶を融解するための温度であり、アイソタクチシティー及び固有的なポリマー結晶性についての尺度と見なされる。試験が、TA Q100示差走査熱量計を使用して行われる。サンプルが80℃/分の割合で0℃から240℃まで加熱され、同じ割合で0℃に冷却され、その後、再び同じ割合で150℃にまで加熱され、150℃で5分間保たれ、その後、1.25℃/分で150℃から180℃に加熱される。TMFが、加熱曲線の終点でのベースラインの開始を計算することによってこの最後のサイクルから求められる。
【0128】
試験手順:
【0129】
(1)装置を、高純度インジウムを標準物として用いて較正する。
【0130】
(2)装置のヘッド/セルを50ml/分の一定流速の窒素により絶え間なくパージする。
【0131】
(3)サンプル調製:
1.5gの粉末サンプルを、30−G302H−18−CX Wabash Compression Molder(30トン)を使用して圧縮成形する:(a)混合物を接触させて230℃で2分間加熱する;(b)サンプルを、20トンの圧力により1分間、同じ温度で圧縮する;(c)サンプルを20トンの圧力とともに45°Fに冷却し、2分間保つ;(d)サンプルを均質にするために、板状試験片をほぼ同じサイズの4つに切断し、それらを積み重ね、段階(a)〜段階(c)を繰り返す。
【0132】
(4)サンプル板状試験片からの1片のサンプル(好ましくは5mg〜8mgの間)を重量測定し、標準的なアルミニウム製サンプル皿において密封する。サンプルを含有する密封された皿を装置のヘッド/セルのサンプル側に置き、空の密封された皿を参照側に置く。自動サンプラーを使用するならば、数個の異なるサンプル試料を量り取り、装置を連続のために設定する。
【0133】
(5)測定:
(i)データ記憶:オフ
(ii)温度勾配 240.00℃まで80.00℃/分
(iii)等温 1.00分間
(iv)温度勾配 0.00℃まで80.00℃/分
(v)等温 1.00分間
(vi)温度勾配 150.00℃まで80.00℃/分
(vii)等温 5.00分間
(viii)データ記憶:オン
(ix)温度勾配 180.00℃まで1.25℃/分
(x)方法の終了
【0134】
(6)計算:TMFを2つの線の切片によって求める。1つの線を高温のベースラインから引く。別の線を高温側の曲線の終点に近い曲線の片寄り(deflection)点から引く。
【0135】
オリゴマー含有量試験方法:オリゴマー含有量が、ポリマーサンプルを、n−ヘキサデカンを内部標準物として含有するクロロホルム溶液において一晩抽出することによって測定される。抽出液のアリコートがメタノールとともに振とうされ、その後、何らかの沈殿した高分子量ポリプロピレン及び固体粒子を除くためにろ過される。ろ過された液体が、低温オンカラム注入を使用してフューズドシリカのキャピラリークロマトグラフィーカラムに注入される。抽出された成分の相対的な量を、抽出されるポリマーの重量に基づいて計算する。
【0136】
限定によってではなく、例として、次に、本開示の様々な実施例が示される。
【0137】
実施例
【0138】
実施例1
【0139】
(1)プロ触媒:
【0140】
A.プロ触媒V10Bは、2.52wt%のTi及び10.34wt%のジ−イソブチルフタラート(DiBP)を含有する商用のSHAC(商標)320触媒である。
【0141】
B.プロ触媒1910−29−2を、2008年12月31日出願の米国仮特許出願番号61/141,902号における触媒4949−25−1のための手順に従って調製する(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。プロ触媒1910−29−2は3.61wt%のTi及び14.85wt%の3−メチル−5−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアートを含有する。
【0142】
(2)外部電子供与体成分:
592420:(トリエトキシシリル)シクロヘキサン
BPIQ−ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン
Catepe:1−エトキシ−2−n−ペントキシベンゼン
D(又はD供与体):ジシクロペンチルジメトキシシラン
DAB−5:1−エトキシ−2−(6−(2−エトキシフェノキシ)ヘキシルオキシ)ベンゼン
DiBDES:ジイソブチルジエトキシシラン
DiPDMS−ジイソプロピルジメトキシシラン
DMDMS−ジメチルジメトキシシラン
DnBDMS:ジ−n−ブチル−ジメトキシシラン
IPM:イソプロピルミリステート
MChDES:メチルシクロヘキシルジエトキシシラン
MChDMS−メチルシクロヘキシルジメトキシシラン
PEEB−エチルp−エトキシベンゾアート
PTES−n−プロピルトリエトキシシラン
PTES:n−プロピルトリエトキシシラン
S−191−POE(15)ココ脂肪酸エステル
SIB0971.0:ベンジルトリエトキシシラン
SIB1928.0:ブテニルトリエトキシシラン
TEOS:テトラエトキシシラン
【0143】
(3)重合:
【0144】
A.液相重合を1ガロンのオートクレーブで液体プロピレンにおいて行う。条件調節の後、リアクターに1375gのプロピレン及び目標量の水素を装入し、リアクターを62℃にする。外部電子供与体成分を、(下記のデータ表に示されるように)イソオクタンにおける0.27Mトリエチルアルミニウム溶液、及び、鉱油における5.0wt%の触媒スラリーに加え、そして、重合を開始させるためにリアクターに注入される前に、周囲温度で20分間、予備混合する。予備混合された触媒成分を、高圧触媒注入ポンプを使用してイソオクタンとともにリアクターに流し込む。発熱後、温度を67℃に制御する。総重合時間が1時間である。
【0145】
キシレン可溶分(XS)、オリゴマー含有量及びTMFを含めて、様々なポリマー特性がメルトフロー依存的である。D供与体をSCAとして使用するプロ触媒V10Bを、ベースラインとして使用する。結果が表2に示される。表2におけるデータを使用して、標準曲線(図1及び図2)を作製して、M−EEDを有する触媒組成物により製造されるポリマーと比較するための「標準」値を計算するための式を作製する。
【0146】
【表2】

【0147】
【表3】

【0148】
【表4】

【0149】
【表5】

【0150】
【表6】

【0151】
【表7】

【0152】
実施例2
【0153】
(1)プロ触媒:商用のSHAC(商標)320触媒(2.59%のTi)及びBiBPを使用する。触媒スラリーをトルエンにおいて0.247mg/mlで調製する。すべてのSCA及びALAを、PPRへの注入の前にトルエンに溶解されるS−191を除いて、Isopar E(商標)において0.005Mに希釈する。TEAlを、Isopar E(商標)において調製し、0.02M溶液又は0.1M溶液のどちらかとして使用する。
【0154】
(2)重合:パージされた並列重合リアクター(PRR)を50℃に加熱する。TEAl及びIsopar E(商標)メークアップ溶媒をそれぞれのリアクターに加え、その後、Hを5psigの安定化した圧力に加えた。リアクターを指定温度(67℃、100℃又は115℃)に加熱する。プロピレンを100psigに加え、10分間にわたって安定化させる。それぞれのリアクターに、SCA、又は、SCA1、SCA2&ALAの混合物、及び、500ulのIsopar E(商標)チェーサーを加え、その後直ちに、触媒(275ul)及び500ulのIsopar E(商標)チェーサーを加える。反応を、60分後に、又は、110の最大相対転化率が達成されたとき、COにより停止させる。
【0155】
(3)計算:様々な温度でのPPRにおけるIsopar E(商標)中のプロピレンの濃度を計算する。下記の表8には、正規化活性比が示され、本発明の触媒組成物の自己制限性が例示される。DMDMS/MChDMSの50/50については、67℃における活性に対する、100℃における正規化触媒活性の比率(A/A67)が、43%である(表8)。DMDMS/MChDMSの比率を1/1で保ち、一方で、供与体混合物の95%をPEEBにより置き換えることによって、DMDMS/MChDMS/PEEBの2.5/2.5/95の系では、100℃における比率A/A67が21%であることが示された。このことは、この触媒系が、PEEBが添加された後の67℃における活性と比較して、著しくより低い活性を有することを意味する。すなわち、触媒がより「自己制限」的である。同じ傾向がまた、115℃の活性についても正しい。
【0156】
本発明の触媒組成物の自己制限性がまた、ALA(例えば、PEEBなど)の存在下において、アルキルアルコキシシラン(例えば、DiPDMS/TEOS、DCPDMS/TEOS及びDCPDMS/MChDMSなど)から構成される他のSCA1/SCA2/ALA系について認められる。PEEBがポリ(アルキレングリコール)エステル化合物(例えば、S−191など)により置き換えられるとき、Al/M−EEDのモル比がより大きい場合でさえ、自己制限効果が大きい(表8)。同様な結果が、ALAがイソプロピルミリステート(IPM)であるときに認められる。
【0157】
【表8−1】

【表8−2】

【0158】
本明細書中に開示されるようなM−EEDを含有する触媒組成物は、多数のSCAの利点を同時に維持しながら、自己制限性を有する系である。メルトフロー促進組成物(例えば、SCA2など)の提供は、生成したポリマーのMFRを増大させる。M−EEDを伴う触媒組成物は、剛性が、剛性促進組成物(例えば、ジシクロペンチルジメトキシシランなど)を唯一の外部電子供与体として有する触媒組成物から生じるポリマー剛性と実質的に同じであるか、又は、同じであるポリマーをもたらす。剛性促進組成物(例えば、SCA1など)の提供は、表2〜表7におけるTMF値によって例示されるような大きい剛性を有するポリマーをもたらす。
【0159】
本発明の触媒組成物を用いて製造されるポリマーについての総オリゴマー含有量が、剛性促進組成物(例えば、ジシクロペンチルジメトキシシランなど)が唯一の外部供与体として使用されるときのオリゴマー含有量と比較して、同じメルトフローにおいて、著しく低下する。
【0160】
本発明のポリマーはビスブレーキングを受けておらず、かつ、メルトフローが大きく、剛性が大きく、同様にまた、オリゴマー含有量が低く、毒性が低いか、若しくは、毒性がなく、及び/又は、分解生成物が少ないか、若しくは、分解生成物がない。
【0161】
本発明は、本明細書中に含まれる様々な実施形態及び例示に限定されず、下記の特許請求の範囲に含まれるように、実施形態の一部を含むそのような実施形態の改変された形態、及び、種々の実施形態の構成要素の組合せを含むことが特に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロ触媒組成物、
助触媒、及び
活性制限剤(ALA)と、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)とを含み、かつ、SCA1:SCA2モル比が0.1〜1.0:1である混合された外部電子供与体(M−EED)
を含む触媒組成物。
【請求項2】
前記プロ触媒組成物が、二座化合物を含む内部電子供与体を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記SCA1が、ジメトキシシラン系化合物、少なくとも1つの第二級アルキル基を有するジメトキシシラン系化合物、第二級アミノ基がケイ素原子に直接に結合するジメトキシシラン系化合物、及び、それらの組合せからなる群より選択される成分を含む、請求項1から2のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項4】
SCA2が、ジエトキシシラン系化合物、トリエトキシシラン系化合物、テトラエトキシシラン系化合物、トリメトキシシラン系化合物、ジエーテル、ジアルコキシベンゼン、2つの線状アルキル基を含有するジメトキシシラン系化合物、2つのアルケニル基を含有するジメトキシシラン系化合物、及び、それらの組合せからなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記ALAが、芳香族エステル又はその誘導体、脂肪族エステル又はその誘導体、ジエーテル、ポリ(アルキレングリコール)エステル、及び、それらの組合せからなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
アルミニウム含有助触媒を含み、かつ、Al対M−EEDのモル比が約6.0未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
総SCA対ALAのモル比が1.0未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
自己制限(self-limiting)性の触媒組成物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
SCA1がジシクロペンチルジメトキシシランを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
SCA2が、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−イソブチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジ−n−ブチル−ジメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ブタ−3−エニルトリエトキシシラン、1−(トリエトキシシリル)−2−ペンテン、(トリエトキシシリル)シクロヘキサン及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記ALAがイソプロピルミリステートを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
プロピレン及び必要な場合には少なくとも1つの他のオレフィンを、重合条件下、重合リアクターにおいて触媒組成物と接触させることを含み、
前記触媒組成物は、プロ触媒、助触媒、及び、第1の選択性制御剤(SCA1)と、第2の選択性制御剤(SCA2)と、活性制限剤(ALA)とを含む混合された外部電子供与体(M−EED)を含むことを特徴とし、
及び
2.16kgの重りを用いた230℃でのASTM D1238−01に従って測定されるとき、メルトフローレートが少なくとも50g/10分であるプロピレン系ポリマーが形成されること
を含む重合方法。
【請求項13】
前記重合リアクターにおける温度が約100℃を超えるときには重合を自己制限することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも約5ppmのALAを含むプロピレン系ポリマーを形成することを含む、請求項12から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
クラッキングを受けていないプロピレン系ポリマーを形成することを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも約5ppmの活性制限剤を含み、かつ、ASTM D1238−01(230℃、2.16kg)に従って測定されるとき、メルトフローレートが約50g/10分を超えるプロピレン系ポリマー。
【請求項17】
クラッキングを受けていない、請求項16に記載のプロピレン系ポリマー。
【請求項18】
プロピレンホモポリマーである、請求項16から17のいずれか一項に記載のプロピレン系ポリマー。
【請求項19】
約4wt%未満のキシレン可溶分含有量、約100ppm未満のケイ素含有量、約3000ppm未満のリアクター後オリゴマー含有量、約165℃を超えるTMF、及び、それらの組合せからなる群より選択される特性を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載のプロピレン系ポリマー。
【請求項20】
前記メルトフローレートが約100g/10分を超える、請求項16から19のいずれか一項に記載のプロピレン系ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−500319(P2012−500319A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523831(P2011−523831)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/034875
【国際公開番号】WO2010/021762
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】