説明

混合システム

【課題】吹付材料の如何を問わず、混和材の混合が均一に行われ、吹付材料圧送系統の脈動を防止でき、作業者の技量によることなく良好な仕上り面が得られ、仕上り面が短時間で固結する吹付材料の混合システム及び混合方法の提供。
【解決手段】吹付材料圧送系統Lmと、エア供給系統Laと、混和材供給系統Lcと、吹付材料とエアと混和材との混合物を噴射する噴射ノズル10と、吹付材料圧送系統Lmとエア供給系統Laとが合流するエア添加装置6と、吹付材料とエアとの混合流に混和材を添加する混和材添加装置7とを備え、エア添加装置6では、高圧エアがエア添加装置6の流路を螺旋状に旋回する旋回流を形成する様に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面に吹付材料を吹付ける吹付工法を実施するに際して、吹付材料と混和材とを均等に混合して、均質で安定した吹付材料を安全に法面に吹付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
吹付材料を法面に吹付ける技術としては、モルタルガンから高圧エアにより当該吹付材料をホース内に圧送し、このホースの先端のノズルから法面に吹付ける技術が一般的である。ここで、係る従来技術では、圧送距離が長くなると、作業性及び品質面でこの方法が採用できない場合がある。
これに対して、コンクリートポンプによる圧送途中でエアを吹き込む「ポンプ併用式」の吹付工法が提案されている(特許文献1参照)。
この「ポンプ併用式」の吹付工法では、ポンプ圧送性の低下を避けるため、急結剤や団粒剤等の混和材は材料混合工程では添加せず、圧送途中のホース内又は先端のノズルで吹付材料に添加混合するのが一般的である。そして、混和材を吹付材料とは別系統でノズルまで圧送し、ノズルにて添加混合する技術が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、混和材を均質に混合させるためにはノズル部分が長大となり、さらに混和材用のホース重量が加算されるため、法面に材料を吹付ける際、ロープ等で法面にぶら下がっている作業者(ノズルマン)への負荷が大きくなり過ぎてしまうという問題を有している。
【0003】
その他の従来技術として、図9に示す混合システムは、吹付材料Mを圧縮エアで搬送するマテリアルホースHmと、急結材を圧縮エアで搬送する急結材搬送ホースHcとを有している。そして、マテリアルホースHmの先端に吹付材噴射ノズルNmが設けられ、当該吹付材噴射ノズルNmに急結材搬送ホースHcが接続されている。
吹付工法の施工に際しては、急結材搬送ホースHcの先端に設けたノズルNcから噴射した急結材Cを、吹付材料噴射ノズルNmから噴射した吹付材料Mに混合している。そのため、ホースHm内で吹付材料が硬化してしまう恐れがない。
しかし、図9で示す混合システムでは、急結材Cが吹付材料Mに均一に混合しないという問題を有している。
また、作業者が、併設した二つのホースHm、Hcを同時に抱えて移動することは困難である。
【0004】
図10で示す混合システムでは、ポンプで吹付材料Mを圧送するマテリアルホースHmの先端には先端ノズルNmが設けられている。そして、先端ノズルNmから長さLだけ上流側(図10では右側)の位置で管Yが合流しており、マテリアルホースHm内の吹付材料Mと、Y字管Yを介して供給された急結材Cとが混合している。
【0005】
このシステムでは、Y字管Yを定置させ、かつ先端ノズルNmからY字管Yまでの区間Lの長さを調整することにより、Y字管Yから上流側(図10では右側)の重量をノズルマンに作用させることなく、ノズルマンが作業することを可能にしている。
しかし、管YとホースHmとの合流点で吹付材料Mが急結材Cと混合するため、当該合流点〜ノズルNmの領域(ノズルNmの手前の領域)で、混合した材料が硬化する恐れがある。特に、管YとホースHmとの合流点で吹付材Mが硬化する恐れがある。
【0006】
係る硬化が生じた場合、マテリアルホースHm内を流れる吹付材料Mは硬化した箇所でホースHmを閉塞してしまう。そして、その様な閉塞が生じた場合には、ホースHmを切開しなければならない。
また、完全な閉塞に至る以前の段階で、マテリアルホースHm内で、吹付材料のみが存在する領域が断続的に発生し、いわゆる「脈動」を生じ、この脈動によって吹付け面にムラが生じてしまう。さらに、この脈動は時としてホースを把持して作業を進める作業者に危険をもたらす場合もある。
【特許文献1】特開平9‐296453号公報
【特許文献2】特開平11−247196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、吹付材料と添加剤とを均一に混合することが出来て、吹付材料圧送系統における脈動を防止することができ、導入コストが安価であり、作業者(いわゆる「ノズルマン」)が熟練工ではなくても安全に良好な仕上り面が得られる吹付材料の混合システム及び混合方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の混合システムは、例えば、吹付工法で用いられる吹付材料(M)と混和材(C)とを混合するシステムにおいて、吹付材料(M)を圧送する吹付材料圧送系統(Lm)と、高圧エア(A)を供給するエア供給系統(La)と、混和材(C)をエア搬送する混和材供給系統(Lc)と、吹付材料(M)とエア(A)と混和材(C)との混合物を噴射する噴射ノズル(10)と、吹付材料圧送系統(Lm)とエア供給系統(La)とが合流するエア添加装置(6)と、エア添加装置(6)の下流側(噴射ノズル10側)に設けられ吹付材料(M)とエア(A)との混合流に混和材(C)を添加する混和材添加装置(7)とを備え、エア添加装置(6)では、エア供給系統(La)が吹付材料圧送系統(Lm)に対して傾斜しており、高圧エア(A)がエア添加装置(6)の流路(6f)を螺旋状に旋回する旋回流(6af)を形成する様に構成されており、混和材添加装置(7)は流路(7f)内に混和材が噴射される様に混和材供給系統(Lc)が接続されていることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
ここで、混和材添加装置(7)は、エア添加装置(6)の流路(6f)と垂直な方向に混和材が噴射される様に構成されているのが好ましい(請求項2)。
そして、混和材添加装置(7)の流路(7f)内に混和材を噴射する機構は混和材添加装置(7)の流路(7f)を構成する管壁に穿孔された貫通孔(72)であるのが好ましい。
さらに、エア添加装置(6)の流路(6f)と垂直な方向に噴射された混和材が、カーテン状に噴射されるのが好ましい。
【0010】
本発明の実施に際して、高圧エア(A)を供給するエア供給系統(La)と、混和材(C)をエア搬送する混和材供給系統(Lc)とは同一の高圧エア供給源(2)に接続されているのが好ましい(請求項3)。
【0011】
そして本発明の混合方法は、上述した混合システム(請求項1の混合システム)を用いて、例えば、吹付工法で用いられる吹付材料(M)と混和材(C)とを混合する混合方法において、エア添加装置(6)で吹付材料圧送系統(Lm)を圧送される吹付材料(M)とエア供給系統(La)を流れる高圧エア(A)とを合流し、エア添加装置(6)の流路(6f)を螺旋状に旋回する高圧エア(A)の旋回流(6af)により吹付材料(M)を小片ずつ削ぎ取る工程(図3のS2)と、混和材添加装置(7)で混和材供給系統(Lc)から供給される混和材(C)を流路(7f)内に噴射する工程(図3のS3)と、高圧エア(A)により削ぎ取られた吹付材料の小片(Mp)が、噴射された混和材(C)を通過する際に吹付材料の小片(Mp)の表面に混和材(C)が塗布される工程(図3のS4)とを有していることを特徴としている(請求項4)。
ここで、混和材添加装置(7)で噴射される混和材(C)は、エア添加装置(6)の流路(6f)と垂直な方向に噴射されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、高圧エア(A)がエア添加装置(6)の流路(6f)を螺旋状に旋回する旋回流(6af)を形成して、吹付材料圧送系統(Lm)から圧送された吹付材料(M)を、下流側(噴射ノズル10側)の半径方向外方から小片ずつ削ぎ取る。
そして、小片ずつ削ぎ取られた吹付材料(Mp)は、高圧エア(A)で混和材添加装置(7)へエア搬送され、混和材添加装置(7)では、混和材供給系統(Lc)から供給される混和材(C)が流路(7f)内(例えば、流路と垂直な方向:請求項2)に噴射されているので、混和材(C)が噴射されている個所を吹付材料の小片(Mp)が通過することにより、通過した吹付材料の小片(Mp)の表面に混和材(C)が塗布される。
【0013】
混和材(C)が吹付材料の小片(Mp)の表面に塗布されることにより、吹付材料の小片(Mp)同士は接着しなくなり、小片同士が接着して大きな塊になってしまうことが防止される。そして、表面に混和材(C)が塗布された吹付材料の小片(Mp)は、多数の小片に分離した状態を維持して噴射ノズル(10)までエア搬送され、噴射ノズル(10)から噴射される。
そのため、吹付材料(M)と混和材(C)とが混合された個所から噴射ノズル(10)に至る領域内で、吹付材料(M)が硬化してしまう恐れがない。そして、吹付材料(M)と混和材(C)とが混合された個所から噴射ノズル(10)までの距離をどの様に設定しても、表面に混和材(C)が塗布された吹付材料の多数の小片(Mp)は、相互に分離した状態を維持して、流路内で大きな塊(Md)とエア溜まりに分離してしまうことがない。
そのため、噴射ノズル(10)を含む管系の脈動の発生を抑制できる。
【0014】
さらに、混和材(C)が噴射されている個所を吹付材料の小片(Mp)が通過することにより、吹付材料の小片(Mp)の表面全体に混和材(C)が塗布されるので、吹付材料(M)への混和材(C)の添加量が吹付材料の小片(Mp)の表面積に対応して均一となる。そして、混和材(C)が吹付材料(M)へ均一に添加されることにより、混和材(C)の消費量が減少する。
【0015】
それに加えて、吹付材料(M)と混和材(C)とを混和材添加装置(7)で混合した後は、噴射ノズル(10)までの距離は任意に設定できるので、法面で作業している作業者(ノズルマン)が噴射ノズル(10)を手で把持しても、混和材添加装置(7)の重量が負担にならず、作業者が吹付工法を実施するべき施工現場(例えば法面)を移動して、吹付材料(M)を吹付ける作業を容易に行なうことが出来る。
また、上述したように噴射ノズル(10)を含む管系の脈動の発生を抑制できるので、当該脈動により作業者(ノズルマン)が噴射ノズル(10)を手で把持するのが妨げられてしまうことが無く、吹付作業が容易になる。そのため、熟練工でなくても、高精度の仕上げを行なうことが出来る。
さらに本発明は、流路(7f)内に混和材が噴射される様に混和材添加装置(7)を設ければよいので、導入コストが極めて低くて済む。
【0016】
ここで、本発明において、混和材添加装置(7)の流路(7f)内に向けて混和材(C)が噴射されるためには、混和材添加装置(7)の流路(7f)内の圧力よりも、混和材供給系統(Lc)の圧力が大きい必要がある。
ここで、エア添加装置(6)で高圧エア(A)を供給するに際して、エア添加装置(6)の流路(6f)を螺旋状に旋回する高圧エアの旋回流(6af)は、吹付材料(M)と高圧エア(A)とが流れる配管(61)の内壁面(61i)と圧送されている吹付材料(M)の外表面(Ms)とにより包囲された断面円環形状の流路(6a)を流れる。そして、断面円環形状の該流路(6a)は高圧エアが噴射される領域から下流側(噴射ノズル10側)に向かうに連れて断面積が大きくなり、高圧エアの速度及び圧力が減少する。
そのため、例えば高圧エアを供給するエア供給系統(La)と、混和材(C)をエア搬送する混和材供給系統(Lc)とは同一の高圧エア供給源(2)に接続されていたとしても、混和材添加装置(7)の流路(7f)内に向けて、例えば流路(7f)とは垂直な方向に混和材(C)を噴射することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、吹付材料(例えば、モルタル、緑化基盤材、土質材料等)と混和材(例えば急結材、急硬材、スランプキリング材、団粒材等)とを混合する混合システムは、全体が符号100で示されている。係るシステム100は、吹付材圧送ポンプ1、エアコンプレッサ2、混和材圧送ポンプ3を備えている。
【0018】
それに加えて混合システム100は、吹付材料圧送系統Lm、エア供給系統La、混和材供給系統Lc、エア分配装置4、混和材とエアとを合流する合流管5、エア添加装置6、混和材添加装置7及び混合流体搬送ホースLxを備えており、エア添加装置6、混和材添加装置7、混合流体搬送ホースLxは1体に連結され、混合流体搬送ホースLxの先端には混合流体噴射ノズル10が接続されている。
図1において、混和材添加装置7において、エア添加装置6から送られた吹付材料に混和材を噴霧混合し、混合流体搬送ホースLxに向かって、混和材を混合した吹付材料をエア圧送している。そして、混和材添加装置7は、合流管73、テーパー管74、アダプタ75から構成されている。
ここで、エア添加装置6及び混和材添加装置7の合流管73では、圧送された吹付材料に高圧エアを添加し、さらに混和材を添加するため、大径に構成されている。そして、混合流体搬送ホースLxは、エア混合流体の圧送性及び法面でのノズルマンの作業性を考慮し、小径に構成されている。そのため、混和材添加装置7では、テーパー管74により大径の部分と小径の部分との径寸法の差異を調整し、さらにアダプタ75を介して、混合流体搬送ホースLxと接続している。
【0019】
吹付材料圧送系統Lmは、吹付材料圧送ポンプ1の吐出口1oとエア添加装置6の吸入口6iとを接続している。
吹付材料圧送ポンプ1から吐出された吹付材料は、吹付材料圧送系統Lmを経由してエア添加装置6に圧送される。
【0020】
エア供給系統Laは、ラインLa1、La2、La3、La4、La5、エア分配装置4、混和材とエアとの合流管5から構成されている。
エア分配装置4は、ラインLa1に接続している吸入口4iと、4つの排出口とを有している。4つの排出口の内、3つの排出口は、開閉弁V41、V42、V43を介して、ラインLa2〜La4が接続されている。残る1つの排出口はプラグPで閉塞されている。
混和材とエアとの合流管5は、2つの流入口51、52と排出口53を有している。流入口51は開閉弁V51を介してラインLa4と接続しており、流入口52は開閉弁V52を介して混和材供給系統Lc(後述)と接続している。
【0021】
ラインLa1は、エアコンプレッサ2とエア分配装置4の吸入口4iを接続している。
ラインLa2は、エア分配装置4の吐出口における開閉弁V41と、後述するエア添加装置6の空気流入部62における一方の開閉弁V62を接続している。
ラインLa3は、エア分配装置4の吐出口における開閉弁V42と、エア添加装置6の空気流入部62における他方の開閉弁V62を接続している。
【0022】
ラインLa4は、エア分配装置4の排出口における開閉弁V43と、混和材とエアとの合流管5の流入口51に介装された開閉弁V51を接続している。
ラインLa5は、混和材とエアとの合流管5の排出口53と、混和材添加装置7の混和材流入部71に介装された開閉弁V7を接続している。
【0023】
混和材供給系統Lcは、混和材圧送ポンプ3の吐出口3oと、混和材とエアとの合流管5の流入口52における開閉弁V52を接続している。
混和材とエアとの合流管5では、コンプレッサ2からエア分配装置4を介して供給される高圧エアと、混和材圧送ポンプ3から供給される混和材とが合流する。そして、混和材はラインLa5内を高圧エアによって連行され、混和材添加装置7に供給される。
図1において、符号ESは吹付け作業が実施される法面を示し、符号Nは吹付け作業を行なう作業者(ノズルマン)を示し、符号Roは作業者Nを法面で支えるための親綱(ロープ)を示している。
【0024】
エア添加装置6および混和材添加装置7の詳細について、図2〜図5を参照して説明する。
図2は、図1におけるエア添加装置6から混合流体搬送ホースLxまでを示している。図2において、白抜きの矢印Mは吹付材料を、矢印Aは供給される高圧エアを、矢印Cは混和材、より詳細には高圧エアで搬送される混和材を示している。
【0025】
図3は、エア添加装置6及び混和材添加装置7を示している。
そして図4では、エア添加装置6において、吹付材料Mの先端部(図3、図4の右端部)が、空気流入部62から噴射されるエアジェットJaによって細かく削り取られる状態が詳細に示されている。
図3及び図4において、エア添加装置6は、吹付材料Mが圧送される大径部61と、1対の空気流入部62を備えている。また、1対の空気流入部62の各々において、流入側(空気供給源側:矢印Aが示されている側)端部には、開閉弁V62が介装されている。
1対の空気流入部62は、大径部61に対して傾斜して配置されている。そして、空気流入部62の先端は、大径部61の中心軸には向かっていない。空気流入部62の先端は、そこから噴射されるエアジェットJaが、大径部61の内壁面に沿って螺旋状を描いて流れる様に、大径部61の中心軸に対してオフセットして配置されている。その結果、空気流入部62の先端から噴射されるエアジェットJaは、大径部61の内壁面に沿って螺旋状を描いて流れる旋回流6afとなる。
【0026】
エア添加装置6において、塊となって大径部61を直進する吹付材料Mの先端側(図3、図4では右端側)は、1対の空気流入部62から噴射された高圧エアジェットJa及び/又は螺旋状に旋回する高圧エアの旋回流6afによって、細片が削ぎ取られて概略テーパー状に変形する。
高圧エアジェットJaにより削ぎ取られた吹付材料Mの細片Mp(細かく削ぎ取られた吹付材料)は、細片状となって分散して高圧エアジェットJaに連行されて、混和材添加装置7に向かう。
図3及び図4において、符号Msは、高圧エアジェットJaにより細片が削ぎ取られた吹付け材料Mにおいて、テーパー状に削ぎ落とされた部分を示している。
上述したように、エア添加装置6において、吹付材料Mの先端部(右端部)が、空気流入部62から噴射されるエアジェットJaによって細かく削り取られる状態は、図4で詳細に示されている。
【0027】
ところで、図3、図4で示す様に削ぎ取られた吹付材料の細片Mpは、そのままの状態でエア圧送すると、吹付材料の細片Mp同士が接着し易い傾向がある。したがって、混合流体搬送ホースLx内を搬送されている間に(図6、図7参照)、図7で示すように、吹付材料の細片Mp同士が接着(接合)し、大きな塊Mdとなって、混合流体搬送ホースLx内の流路が、空気のみ存在する領域と、吹付材料の細片Mpの塊Mdのみが存在する領域とに、断続的に分離してしまう恐れがある(いわゆる「脈動」が発生した状態)。
【0028】
エア添加装置6、混和材添加装置7、混合流体搬送ホースLxにおける流路の内部が、空気のみ存在する領域と、吹付材料の細片Mpの塊Mdのみが存在する領域とに断続的に分離することによって、流路の閉塞や「脈動」が発生することを防止するため、図示の実施形態では、高圧エアにより削ぎ取られて小片となって分散状態となった吹付材料の細片Mpの表面に混和材のコーティングを形成することにより、互いに接着してしまうことを抑制している。
【0029】
図8は、吹付材料の細片Mpの表面に混和材のコーティングを形成する装置を模式的に示している。
図8において、吹付材料Mは圧送ポンプにより、噴射ノズル10へと圧送される過程(図8において、左から右へ圧送される過程)で、空気流入管62で添加された前記エアジェットJa及び/又は螺旋流6afにより、細片MPとなっている(細片MPとなる様に削ぎ取られている)。そして、空気流入管62の後方(図8の右方)には、混和材の噴霧カーテンJc(図8では点線で示されている)が流路断面を覆う様に形成されている。
吹付材料の細片Mpが噴霧カーテンJcを通過する際に、吹付材料の細片Mpの表面全体に亘って混和材の被覆が形成される。吹付材料の細片Mpの表面全体に混和材の被覆が形成されることにより、小片に分散した吹付材料Mp同士が接着することが抑制され、エア添加装置6、混和材添加装置7、混合流体搬送ホースLxにおける流路を閉塞してしまう様な大きな塊Md(図7参照)が生じることが防止され、以って、いわゆる「脈動」の発生も防止される。
【0030】
図1において、法面で作業するノズルマンの負担を軽減するため、エア添加装置6及び混和材混合装置7の重量が直接ノズルマンに負荷されない様に、例えば法面の小段や法尻にエア添加装置6及び混和材混合装置7を安定させた状態で設置し、ここから混合流体搬送ホースLxで混合流体噴射ノズル10まで接続している。ここで、混合流体中の吹付材料の細片Mpが大きな塊Mdとなって流路を閉塞する恐れがあると、混合流体搬送ホースLxの長さを任意に設定することが出来なくなり、ノズルマンへの負荷を低減することが出来なくなる。
本発明では、分散状態となった吹付材料の細片Mpの表面に混和材がコーティングされており、吹付材料の細片Mpが互いに接着して大きな塊Mdとなってしまうことを抑制しているので、当該大きな塊Mdにより流路が閉塞されてしまうことがなくなり、混合流体搬送ホースLxの長さを任意に設定できる。
【0031】
図5は、図8で模式的に示した混和材添加装置7の詳細を示している。図5では、吹付材料の多数の細片Mpは、包括的に矢印Mpで表現されている。
図5において、混和材添加装置7の流路7fの管壁には、流路7fに直交するように混和材流入部71が取り付けられている。流路7fの管壁において、混和材流入部71が取り付けられた領域の中心には貫通孔72が穿孔され、貫通孔72を介して混和材が流路7f内に噴射される。
【0032】
混和材流入部71において、貫通孔72とは反対側の端部には、開閉弁V7が介装されている。この開閉弁V7は、混合システム100が停止している場合に閉鎖される。
なお、開閉弁V7に代えて図示しない流量調節弁を設け、吹付材料の特性により、混和材の吸入流量を調節可能にすることも可能である。
【0033】
貫通孔72から高圧エアと共に噴射される混和材Cは、流路7f断面を覆うように、高圧ジェットのカーテンJcを形成する。そして、吹付材料の細片Mpが高圧ジェットのカーテンJcを通過する際に、多数の吹付材料の細片Mpの各々における表面全面に混和材Cが塗布され、混和材Cの被覆層が形成され、吹付材料の細片Mp同士の接着を抑制或いは防止する。
【0034】
ここで、エア添加装置6の空気流入部62から噴射された高圧エアジェットJa及び/又は旋回流6afによって細片となった吹付材料Mpに、接着した大きな塊Mdとなる前に混和材Cの被覆層を形成するに際して、空気流入部62から混和材流入部71の貫通孔72までの距離は、200cm以内に制限される。
ところで、混和材添加装置7の流路7f内に向けて混和材C(カーテンJc)を噴射するためには、混和材添加装置7の流路7f内の圧力よりも、混和材供給系統Lcの圧力が大きい必要があり、そのためには、圧力調整用の調整弁の設置、あるいは複数のエアコンプレッサが必要となる。
【0035】
本発明では、エア添加装置6において、噴射されたエアジェットJaはエア添加装置6の流路6fを螺旋状に旋回する旋回流6afとなる。旋回流6afは、吹付材料Mと高圧エアAとが流れる配管61の内壁面61iと、吹付材料Mの外表面Msとにより包囲された断面円環形状の流路6aを流れる。そして、断面円環形状の流路6aは、エアジェットJaが噴射された直後の領域では断面積が最も小さく、そこから下流側(噴射ノズル10側)に向かうに連れて断面積が増加する。そのため、旋回流6afの速度は下流側(噴射ノズル10側)に向かうに連れて減速され、その圧力も下流側(噴射ノズル10側)に向かうに連れて低下する。
【0036】
ここで、本発明では、混和材Cを噴射する個所である混和材流入部71の貫通孔72は、エアジェットJaが噴射された直後の領域(空気流入部62)よりも下流側(噴射ノズル10側)にあるので、空気流入部62から混和材流入部71の貫通孔72までをしかるべき距離とすることにより、貫通孔72で混和材を噴射できるように、旋回流6afを構成する高圧エアの圧力を低下させることができる。この距離は、発明者が行った実験によると50cm以上が必要である。
そして、上述の構成によれば、例えば高圧エアを供給するエア供給系統Laと、混和材Cをエア搬送する混和材供給系統Lcとが同一のエアコンプレッサ2から等量のエアを供給されていても、混和材添加装置7の流路7f内に向けて(例えば流路7fとは垂直な方向に)混和材Cを噴射する個所では、旋回流6afを構成する高圧エアの圧力は低下しているので、混和材C(カーテンJc)を噴射することが可能となる。
【0037】
図3において、図示の実施形態の混合システム100を用いて、例えば、吹付工法で用いられる吹付材料Mと混和材Cとを混合する混合方法は、大別して以下の3つの工程を有している。
(1) 吹付材料圧送系統Lmから圧送される吹付材料Mと、エア供給系統Laを流れる高圧エアAとをエア添加装置6において合流し、エア添加装置6の流路6f内に噴射される高圧エアAのエアジェットJa及び/又は旋回流6afにより、圧送された吹付材料Mを、多数の細片Mpに削ぎ取る工程(図3のステップS2)。
(2) 混和材供給系統Lcから供給される混和材Cを、混和材添加装置7において、流路7f内にエアカーテン状に噴射する工程(図3のS3)。
(3) エアジェットJa及び/又は旋回流6afにより削ぎ取られた吹付材料の小片Mpが、エアカーテン状に噴射された混和材Cを通過する際に、吹付材料の小片Mpの表面に混和材Cが塗布される工程(図3のステップS4)。
なお、図3において、ステップS1は吹付材料Mをエア添加装置6へ搬送する工程を示し、ステップS5は表面に混和材Cが塗布された吹付材料の小片Mpが図示しないノズル10側に搬送される工程を示している。
【0038】
図示の実施形態に係る混合システム100によれば、エア添加装置6において、吹付材料圧送系統Lmから圧送された吹付材料Mから、高圧エアAのエアジェットJa及び/又は旋回流6afにより、多数の小片或いは細片Mpが削ぎ取られて下流側(噴射ノズル10側)に連行される。
吹付材料の細片Mpは、混和材添加装置7において、流路7f内にカーテン状に噴射される混和材Cを通過する際に、表面全体に混和材Cが塗布される。
【0039】
混和材Cが吹付材料の細片Mpの表面に塗布されることにより、吹付材料の細片Mp同士は接着しなくなり、小片Mp同士が接着して大きな塊に成長することが防止できる。
そのため、吹付材料Mと混和材Cとが混合された個所から噴射ノズル10までの距離をどの様に設定しても、吹付材料は適正にエア搬送され、噴射ノズル10から噴射される。
【0040】
そして、表面に混和材Cが塗布された吹付材料の小片Mpは、相互に分離した状態を維持し、塊に成長することが防止されるので、エア添加装置6及び混和材添加装置7から噴射ノズル10に至る流路内で滞留し、或いは、当該流路を閉塞してしまう様な大きな塊Mdを形成することもなく、当該流路内で「脈動」を生じてしまうことがない。
すなわち、図示の実施形態では、吹付材料Mと混和材Cとが混合された個所から噴射ノズル10に至る流路内で、吹付材料Mが硬化する恐れがなく、管系の脈動の発生を抑制できる。
【0041】
さらに、混和材Cが噴射されている個所を吹付材料の小片Mpが通過することにより、吹付材料の小片Mpの表面全体に混和材Cが均一に塗布されるので、吹付材料Mへの混和材Cの添加量も一定となり、必要以上の混和材が吹付材料M(Mp)に供給されてしまうことがなくなる。その結果、混和材Cの消費量が減少する。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記載ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図。
【図2】図1における部分構成図。
【図3】実施形態で用いられるエア添加装置及び混和材添加装置を示す模式断面図。
【図4】図3におけるエア添加装置内での作動を詳細に説明する模式断面図。
【図5】実施形態で用いられる混和材添加装置を示す模式断面図。
【図6】実施形態で用いられるエア添加装置で吹付材料の細片が削り取られる状態を示す説明図。
【図7】図6で示す様に細片ずつ削ぎ取られた吹付材料同士が、従来技術において、再び接着し合う状態を示す説明図。
【図8】実施形態において、カーテン状の混和材を吹付材料の細片が通過し、その下流側では吹付材料同士が接着していない状態を示した説明図。
【図9】従来技術の吹付材料噴射装置周辺の構成を説明する部分側面図。
【図10】図9とは異なる従来技術の吹付材料噴射装置周辺の構成を説明する部分側面図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・吹付材料圧送ポンプ
2・・・高圧エア供給源/エアコンプレッサ
3・・・混和材圧送ポンプ
4・・・高圧エア分配装置
5・・・混和材とエアとの合流管(混合管)
6・・・エア添加装置
7・・・混和材添加装置
72・・・貫通孔
73・・・合流管
74・・・テーパー管
75・・・アダプタ
10・・・ノズル
La・・・エア供給系統
Lc・・・混和材供給系統
Lm・・・吹付材圧送系統
100・・・混合システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付材料(M)を圧送する吹付材料圧送系統(Lm)と、高圧エア(A)を供給するエア供給系統(La)と、混和材(C)をエア搬送する混和材供給系統(Lc)と、吹付材料(M)とエア(A)と混和材(C)との混合物を噴射する噴射ノズル(10)と、吹付材料圧送系統(Lm)とエア供給系統(La)とが合流するエア添加装置(6)と、エア添加装置(6)の下流側に設けられ吹付材料(M)とエア(A)との混合流に混和材(C)を添加する混和材添加装置(7)とを備え、エア添加装置(6)では、エア供給系統(La)が吹付材料圧送系統(Lm)に対して傾斜しており、高圧エア(A)がエア添加装置(6)の流路(6f)を螺旋状に旋回する旋回流(6af)を形成する様に構成されており、混和材添加装置(7)は流路(7f)内に混和材が噴射される様に混和材供給系統(Lc)が接続されていることを特徴とする混合システム。
【請求項2】
混和材添加装置(7)は、エア添加装置(6)の流路(6f)と垂直な方向に混和材が噴射される様に構成されている請求項1の混合システム。
【請求項3】
本発明に実施に際して、高圧エア(A)を供給するエア供給系統(La)と、混和材(C)をエア搬送する混和材供給系統(Lc)とは同一の高圧エア供給源(2)に接続されている請求項1、2の何れかの混合システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項の混合システムを使用する混合方法において、エア添加装置(6)で吹付材料圧送系統(Lm)を圧送される吹付材料(M)とエア供給系統(La)を流れる高圧エア(A)とを合流し、エア添加装置(6)の流路(6f)を螺旋状に旋回する高圧エア(A)の旋回流(6af)により吹付材料(M)を小片ずつ削ぎ取る工程と、混和材添加装置(7)で混和材供給系統(Lc)から供給される混和材(C)を流路(7f)内に噴射する工程と、高圧エア(A)により削ぎ取られた吹付材料の小片(Mp)が噴射された混和材(C)を通過する際に吹付材料の小片(Mp)の表面に混和材(C)が塗布される工程とを有していることを特徴とする混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−75855(P2010−75855A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247653(P2008−247653)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】