説明

混合器及びこれを用いた燃料製造装置

【課題】燃料油、水及び乳化剤の混合液を効率良くエマルジョン化させることができ、エマルジョン状態が長時間保たれるエマルジョン燃料を製造できる技術を提供する。
【解決手段】混合器20は、片端部に入液口21を有し、他端部に出液口22を有する円筒状の本体部23と、本体部23内に当該本体部23の軸心23c方向の支軸24を中心に回転自在に配置されたプロペラ状の撹拌部材25と、撹拌部材25より出液口22側の本体部23の内周面23aから軸心23cに向かって突出状に設けられた複数の突起部材26と、を備えている。本体部23の両端部寄りの部分には、それぞれ入液口21、出液口22に向かって連続的に縮径した漏斗形状部23s,23tが設けられている。また、撹拌部材25より上流側(入液口21側)の本体部23内周面及び撹拌部材25より下流側(出液口22側)の本体部23内周面に螺旋状の凸条部28が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油、水及び界面活性剤を原料としてエマルジョン燃料を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料油、水及び界面活性剤からエマルジョン燃料を製造する技術については、従来、数多くの開発、提案が行われているが、本発明に関連する混合撹拌技術として、例えば、特許文献1〜4記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、平滑な円筒状の内周面を有すると共に内外方向に貫通する複数のスリットが形成された外側ロータ及び内側ロータが互いに入れ子状態でケース内に配置され、ケース外に配置されたモータで外側ロータ及び内側ロータを互いに逆回転させることにより、ケース内に導入した液体を乳化させてエマルジョン燃料を製造する装置が記載されている。特許文献2には、螺旋帯の回転体が挿設された長尺筒状容器と、回転体を回転させるモータと、を備え、長尺筒状容器内へ導入した液体を回転体で撹拌して乳化させる装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、水と乳化剤と炭化水素系燃料の混合物をスタティックミキサ内に通過させることによってエマルジョン燃料を製造する技術が記載されている。特許文献4には、円筒状の空間内に複数のロータと、複数のノズルと、が交互に配置された構造を有する液体撹拌装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−642号公報
【特許文献2】特開2007−152214号公報
【特許文献3】特開2006−188616号公報
【特許文献4】特開2001−348581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「乳化及び粉砕装置」及び特許文献2に記載された「乳化物製造装置」を使用することにより所定性能を有するエマルジョン燃料を製造することはできるが、これらの装置は、原料となる混合液を循環流動させるポンプを駆動するモータのほかに、それぞれの装置を作動させるためのモータが必要である。このため、複数の動力源を必要とするだけでなく、これらの動力源を制御するシステムも必要となり、構造が複雑化する。
【0007】
一方、特許文献3記載のスタティックミキサ及び特許文献4記載の液体撹拌装置は、それぞれの装置を作動させるためのモータなどは不要であるが、撹拌能力が不十分であるため、原料となる混合液をエマルジョン化させるのに長時間を要することがある。また、これらの装置で製造されたエマルジョン燃料は、時間の経過に伴い、水と油成分とが徐々に分離していくことがあるため、製造直後のエマルジョン状態を長期間保つことが困難である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、燃料油、水及び乳化剤の混合液を効率良くエマルジョン化させることができ、エマルジョン状態が長時間保たれるエマルジョン燃料を製造することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の混合器は、入液口と出液口とを有する筒状の本体部と、前記本体部内に当該本体部の軸心方向の支軸を中心に回転自在に配置されたプロペラ状の撹拌部材と、前記撹拌部材より前記出液口側の前記本体部内周面から前記軸心に向かって突出状に設けられた複数の突起部材と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、入液口から本体部内へ流入する液体は、当該液体の運動エネルギで回転するプロペラ状の撹拌部材により撹拌、剪断、分散されながら本体部内を出液口に向かって流動し、撹拌部材より下流に位置する複数の突起部材との衝突により、さらに撹拌、分散された後、出液口から流出する。従って、燃料油、水及び乳化剤の混合液を入液口から本体部内へ送り込めば、前述した撹拌部材及び突起部材との衝突により、混合液の各成分が撹拌、剪断、分散される結果、混合液を効率良くエマルジョン化させることができる。
【0011】
ここで、前記本体部の両端寄りの部分に、それぞれ前記入液口、前記出液口に向かって縮径した漏斗形状部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、入液口から送り込まれた液体は、流動方向に沿って拡径した状態にある漏斗形状部内に流入することにより、液体内に乱流が生じるので、撹拌、混合作用が高まり、エマルジョン化の促進に有効となる。また、本体部内を出液口に向かって流動する液体は、当該出液口に向かって縮径した漏斗形状部内を通過することによって流動方向が収束された状態で出液口から流出するので、液体の流動効率を悪化させることはない。
【0012】
また、前記撹拌部材より上流に位置する前記本体部内面に前記軸心を中心線とする螺旋状の凸条部若しくは凹溝部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、入液口から流入した液体は、螺旋状の凸条部若しくは凹溝部に沿って流動することによって螺旋流となるので、撹拌、混合作用が高まり、エマルジョン化の促進に有効となる。
【0013】
さらに、前記本体部の周壁の一部に透光部を設けることもできる。このような構成とすれば、本体部内を流動する液体の状態を外部から目視確認することができるため、本体部内の状況を正確に把握することができる。また、前記透光部から本体部内を流動する液体に向かって光線や電磁波などを照射することも可能となる。
【0014】
次に、本発明の燃料製造装置は、燃料油、水及び乳化剤の混合液を収容する貯留槽と、前記貯留槽内の前記混合液を循環させる循環流路と、を備え、請求項1〜4の何れかに記載の混合器を、当該混合器の入液口を前記循環流路の上流側に向けた状態で前記循環流路に直列に連通させたことを特徴とする。
【0015】
このような構成とすれば、貯留槽内に収容された前記混合液が前記循環流路を循環する度に前記混合器内を通過し、その内部における撹拌、剪断、分散作用により、エマルジョン化が急速に進行するので、燃料油、水及び乳化剤の混合液を効率良くエマルジョン燃料へ変化させることができ、完成したエマルジョン燃料においては、油水の分離が発生せず、エマルジョン状態を長時間保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、燃料油、水及び乳化剤の混合液を効率良くエマルジョン化させることができ、エマルジョン状態が長時間保たれるエマルジョン燃料を製造することのできる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態である燃料製造装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す燃料製造装置を構成する混合器を示す外観図である。
【図3】図2に示す混合器の断面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】図3におけるB−B線断面図である。
【図6】図3におけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本実施形態の燃料製造装置10は、燃料油F、水W及び乳化剤Eの混合液Mを収容する貯留槽11と、貯留槽11内の混合液Mを循環させる循環流路12及びポンプP1と、を備え、請求項1〜4の何れかに記載の混合器20を、混合器20の入液口21を循環流路12の上流側に向け、出液口22を循環流路12の下流側に向けた状態で循環流路12に直列に連通されている。また、貯留槽11の周囲には、燃料油Fを貯留する油タンク13と、乳化剤Eを貯留する薬剤タンク14と、燃料油F及び乳化剤Eをそれぞれ貯留槽11へ送給するポンプP2,P3と、給水設備(図示せず)から貯留槽11へ水Wを送給するための給水配管15と、が設けられている。入液口21及び出液口22の外周には、循環流路12を構成する配管(図示せず)と連結するための雄ネジ部21m,22mがそれぞれ形成されている。
【0019】
図2,図3に示すように、混合器20は、片端部に入液口21を有し、他端部に出液口22を有する円筒状の本体部23と、本体部23内に当該本体部23の軸心23c方向の支軸24を中心に回転自在に配置されたプロペラ状の撹拌部材25と、撹拌部材25より出液口22側の本体部23の内周面23aから軸心23cに向かって突出状に設けられた複数の突起部材26と、を備えている。また、本体部23の周壁23wの一部には透光部29が設けられている。図4に示すように、軸心23c(図3参照)と直交する状態で本体部23内に配置された十字状の支持部材27の中心に支軸24が固定され、図3に示すように、撹拌部材25を回転自在に保持するためのストッパ24sが、支軸24の出液口22側先端に固着されている。
【0020】
図5に示すように、撹拌部材25は、支軸24に回転自在に取り付けられたハブ25bと、その外周に90度間隔で形成された4枚の羽根25aと、を備えている。図6に示すように、撹拌部材25よりも出液口22側の本体部23の内周面23aには、軸心23c方向に等間隔で直列配置された4本の突起部材26の列が、軸心23cを中心に90度間隔で4列設けられている。突起部材26はいずれも円柱状であり、その長さは本体部23の内径の半分未満であるため、図6に示すように、突起部材26先端側の軸心23c近傍には、軸心23cと同軸上に、突起部材26の存在しない領域Sが形成されている。
【0021】
図2,図3に示すように、本体部23の両端部寄りの部分には、それぞれ入液口21、出液口22に向かって連続的に縮径した漏斗形状部23s,23tが設けられている。また、撹拌部材25より上流側(入液口21側)の本体部23内周面及び撹拌部材25より下流側(出液口22側)の本体部23内周面に、それぞれ軸心23cを中心線とする螺旋状の凸条部28が形成されている。凸条部28は、本体部23の軸心23cの回りを1回転する長さ(1ピッチ分の長さ)となっている。
【0022】
図1に示す燃料製造装置10において、燃料油F、水W及び乳化剤Eの混合液Mが貯留槽11内に収容された状態でポンプP1を作動させると、貯留槽11内の混合液Mは、貯留槽11底部に連結された循環流路上流部12aへ吸い込まれ、ポンプP1及び混合器20を経由して、貯留槽11上部に連結された循環流路下流部12bを通って再び貯留槽11内へ流れ込む。このような混合液Mの循環流動はポンプP1が作動している間は連続される。
【0023】
混合液Mが循環経路Mを循環流動しているとき、図3に示す混合器20の入液口21から本体部23内へ流入した混合液Mは、当該混合液Mの運動エネルギで回転するプロペラ状の撹拌部材25により撹拌、剪断、分散されながら本体部23内を出液口22に向かって流動していき、撹拌部材25より下流に位置する複数の突起部材26との衝突により、さらに撹拌、分散された後、出液口22から循環経路12(図1参照)へ流れ出す。このように、入液口21から本体部23内へ流入した混合液Mは、前述した撹拌部材25及び突起部材26と何度も激しく衝突することにより、混合液Mの各成分が撹拌、剪断、分散されるため、混合液Mを効率良くエマルジョン化させることができる。
【0024】
図3に示すように、入液口21から送り込まれた混合液Mが、流動方向に沿って拡径した状態にある漏斗形状部23s内に流入することにより、混合液M内に乱流が生じ、撹拌、混合作用が高まるため、エマルジョン化の促進に有効となる。また、本体部23内を出液口22に向かって流動する混合液Mは、当該出液口22に向かって縮径した漏斗形状部23t内を通過することによって流動方向が収束された状態で出液口22から流出するので、混合液Mの流動効率が悪化することもない。
【0025】
また、撹拌部材25の上流側の本体部23の内周面23aに螺旋状の凸条部28があることにより、入液口21から流入した混合液Mは凸条部28に沿って流動することで螺旋流となるので、撹拌、混合作用が高まり、エマルジョン化の促進に有効である。なお、凸条部28の代わりに凹溝部(図示せず)を形成した場合も同様の螺旋流を発生させることができる。
【0026】
このように、貯留槽11内に収容された混合液Mが循環流路12を循環する度に混合器20内を通過することにより、その内部で生じる撹拌、剪断、分散作用で混合液Mのエマルジョン化が急速に進行するので、混合液Mを効率良くエマルジョン燃料に変化させることができ、完成したエマルジョン燃料においては、エマルジョン状態を長時間保つことができる。
【0027】
さらに、図2に示すように、混合器20においては、本体部23の周壁23wの一部に透光部29が設けられているため、本体部23内を流動する混合液Mの状態を外部から目視確認することにより、本体部23内の状況を正確に把握することができる。また、透光部29から本体部23内を流動する混合液Mに向かって、エマルジョン化反応をさらに促進する光線や電磁波などを照射することもできる。
【0028】
図1に示す燃料製造装置10において、例えば、燃料油F(重油)と水Wとを約3:1(体積比)で混合したものに対し、乳化剤(1〜2体積%)を添加して形成した混合液M100リットルを貯留槽11内に収容した後、ポンプP1を作動させて混合液Mを連続的に循環流動させたところ、約10〜20分程度経過した時点でほぼ完全にエマルジョン化することができた。また、完成したエマルジョン燃料は長期間(約60日〜90日程度)放置しても、油水が分離することなくエマルジョン状態を保つことができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の混合器及び燃料製造装置は、燃料油、水及び乳化剤の混合液をエマルジョン化してボイラーなどの燃料を製造する分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 燃料製造装置
11 貯留槽
12 循環流路
12a 循環流路上流部
12b 循環流路下流部
13 油タンク
14 薬剤タンク
15 給水配管
20 混合器
21 入液口
22 出液口
21m,22m 雄ネジ部
23 本体部
23a 内周面
23c 軸心
23s,23t 漏斗形状部
23w 周壁
24 支軸
24s ストッパ
25 撹拌部材
25a 羽根
25b ハブ
26 突起部材
27 支持部材
28 凸条部
29 透光部
E 乳化剤
F 燃料油
P1,P2,P3 ポンプ
S 領域
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入液口及び出液口を有する筒状の本体部と、前記本体部内に当該本体部の軸心方向の支軸を中心に回転自在に配置されたプロペラ状の撹拌部材と、前記撹拌部材より前記出液口側の前記本体部内周面から前記軸心に向かって突出状に設けられた複数の突起部材と、を備えたことを特徴とする混合器。
【請求項2】
前記本体部の両端寄りの部分に、それぞれ前記入液口、前記出液口に向かって縮径した漏斗形状部を設けたことを特徴とする請求項1記載の混合器。
【請求項3】
前記撹拌部材より上流に位置する前記本体部内面に前記軸心を中心線とする螺旋状の凸条部若しくは凹溝部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の混合器。
【請求項4】
前記本体部の周壁の一部に透光部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の混合器。
【請求項5】
燃料油、水及び乳化剤の混合液を収容する貯留槽と、前記貯留槽内の前記混合液を循環させる循環流路と、を備え、請求項1〜4の何れかに記載の混合器を、当該混合器の入液口を前記循環流路の上流側に向けた状態で前記循環流路に直列に連通させたことを特徴とする燃料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−50884(P2011−50884A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203023(P2009−203023)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(509247951)
【出願人】(509247940)
【出願人】(509247939)
【Fターム(参考)】