説明

混和蒸留酒の製造方法

【課題】香味の付与された混和蒸留酒の製造方法を提供すること。
【解決手段】混和蒸留酒に、単式蒸留原酒の製造過程でアルコール含有物から通常除去されるパルミチン酸エチル、リノレン酸エチル、オレイン酸エチルおよびステアリン酸エチルからなる群から選択される成分を回収し、回収された油性成分をアルコール含有溶液に溶解させた後に蒸留酒に添加する工程を含むことにより、香りや旨味が増強された混和蒸留酒を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単式蒸留酒と連続式蒸留酒を混和した混和蒸留酒の製造方法に関する。詳しくは、高級脂肪酸エステルを含有する油性成分を添加する工程を含む混和蒸留酒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留酒は醸造酒を蒸留することにより製造され、単式(回分式)蒸留器で造られる単式蒸留酒と、連続式蒸留器で造られる連続式蒸留酒に大きく分けられる。
単式蒸留酒は、連続式蒸留酒に比べて原料由来の香味を有している(非特許文献1)。単式蒸留酒は、パルミチン酸エチル、リノール酸エチルなどの高級脂肪酸エステルを含んでいるため、その味わいに濃醇さが付与されている。しかし、これら高級脂肪酸エステルの含有量が多過ぎると浮上して空気酸化され、さらに分解して油様の異臭を発生するという問題を有している。また気温が低下すると溶解度が低下するため、オリとなって析出し、商品価値が著しく低下することが知られている。そのため、広く普及している単式蒸留酒は、濾過等の処理をして上記成分を除去した後に出荷されている(非特許文献2)。
【0003】
また、冷却することで油性物質を析出させて除去する技術や(特許文献1)、高級脂肪酸エステルを超音波で分散させて濁った状態を安定化させることにより、焼酎中の香味成分である高級脂肪酸エステルを高濃度で含有する単式蒸留焼酎の製造方法が報告されている(特許文献2および3)。
【0004】
一方、連続式蒸留酒は、多段の蒸留により大部分の不純物は除かれるため、得られる蒸留酒はほぼ純粋なエタノール溶液となり、単式蒸留酒に含まれる香り成分や呈味成分はほとんど含まれていない。そのため、アルコールの刺激感が強く、味わいが少ないという問題がある。この問題に対処するため、連続式蒸留酒に単式蒸留酒を混和して味わいを付与した混和蒸留酒とすることで、コクを求める消費者の要望を満たすものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−127841号公報
【特許文献2】特開平3−108473号公報
【特許文献3】特開平11−196851号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】絵とき蒸留技術基礎のきそ 大江修造著
【非特許文献2】本格焼酎製造技術 (財)日本醸造協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、連続式蒸留酒を単式蒸留酒と混和することにより香味が付与された混和蒸留酒が提供されているが、蒸留酒の香味を高める目的で単式蒸留酒の混合比率を高めると、連続式蒸留酒の有するキレが失われてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みて、混和蒸留酒の製造方法であって、優れた香味を有し、連続式蒸留酒由来のキレを有し、かつアルコールの刺激感もなく、その上、狙いとする酒質の製品を効率的に製造することができる混和蒸留酒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、単式蒸留酒から高級脂肪酸エステルを含有する油性成分を分離・回収し、それを混和蒸留酒に添加することにより、味わいとまろやかさが増した混和蒸留酒を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、限定的ではないが以下を含むものである。
[1]混和蒸留酒の製造方法であって、
アルコール含有物から油性成分を回収する工程、および
回収された油性成分を混和蒸留酒に添加する工程、
を含む、前記製造方法。
[2]油性成分が、パルミチン酸エチル、リノレン酸エチル、オレイン酸エチルおよびステアリン酸エチルからなる群から選択される成分の少なくとも1つを含む、[1]記載の製造方法。
[3]油性成分の添加工程において、回収された油性成分をアルコール含有溶液に溶解させた後に混和蒸留酒に添加する、[1]または[2]記載の製造方法。
[4]回収工程が、遠心分離、濾過または静置分離により前記油性成分を分離させる工程を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]アルコール含有物が、単式蒸留酒の蒸留工程後に得られる蒸留液または残留液である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]アルコール含有物の原料が、米、麦、サツマイモ、そば、ジャガイモ、とうもろこし、あわ、ひえ、きびおよびこうりゃんからなる群から選択される穀類;ナツメヤシ、ブドウ、デーツおよびアガベからなる群から選択される果実;砂糖、糖蜜、蜂蜜および果糖からなる群から選択される含糖質物;およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]混和蒸留酒が、焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ、アクアビット、アラック、アルヒ、スピリタス、オコレハオ、カシャッサ、コルン、シュナップス、ソジュ、パイチュウ、マオタイ酒、コニャック、アルマニャック、カルヴァドス、グラッパ、シンガニ、ピスコ、メスカル、テキーラまたはラクである、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により、連続式蒸留酒に特徴的なピリピリとした刺激感が減少し、単式蒸留酒のように香り高く、まろやかさや重厚感が付与された混和蒸留酒を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の通り、本発明は、混和蒸留酒の製造方法に関する。
本発明の混和蒸留酒の製造方法は、アルコール含有物から油性成分を回収する工程、および回収された油性成分を蒸留酒に添加する工程を含む。本発明の製造方法により製造される混和蒸留酒は、連続式蒸留酒に特徴的なピリピリとした刺激感が減少し、単式蒸留酒のように香り高く、まろやかさや重厚感が付与される。
【0013】
以下に本発明の混和蒸留酒の各製造工程について説明する。
i)「回収工程」
油性成分の「回収工程」は、油性成分を含有するアルコール含有物から油性成分を分離・回収する工程である。
【0014】
使用する「アルコール含有物」は、蒸留酒の製造過程で得られるアルコール含有液であれば特に限定されないが、例えば、単式蒸留酒の蒸留工程後に得られる蒸留液や残留液を用いる。また、アルコール含有物の一次原料(糖質としての原料)としては、米、麦、サツマイモ、そば、ジャガイモ、とうもろこし、あわ、ひえ、きび、こうりゃんなどの穀類、ナツメヤシ、ブドウ、デーツ、アガベなどの果実、砂糖、糖蜜、蜂蜜、果糖などの含糖質物などが挙げられるがこの限りでない。
【0015】
アルコール含有物からの油性成分の回収は、例えばすくい取り法や濾過法により行うことができる。具体的には、単式蒸留酒製造工程で濾過工程により分離された油性成分を回収する方法、貯蔵中に浮上もしくは沈殿して分離された油性成分を回収する方法などが挙げられる。ここで、回収前に油性成分を蒸留液と分離させる方法としては、静置させて重力差により分離する方法があるが、加圧浮上分離法または自然浮上分離法等を採用してもよく、冷却等により油性成分をさらに分離させた後に回収することもできる。
【0016】
あるいは単式蒸留の蒸留条件を適宜設定することで油性成分を豊富に含む蒸留液を調製し、蒸留液から油性成分を分離することなく使用することもできる。この場合、本発明でいうアルコール含有物から回収された油性成分とは、蒸留液そのものを意味する。
【0017】
また、油性成分は単式蒸留後の蒸留液から上記の方法により得られたものでも良いが、蒸留時の条件を適宜設定することによって高級脂肪酸エステルの多くが残留するような蒸留を行った後、残留液から高級脂肪酸エステルを分離することもできる。
【0018】
回収された油性成分には、パルミチン酸エチル、リノレン酸エチル、オレイン酸エチルおよびステアリン酸エチルなどの高級脂肪酸エステルが含まれる。それら高級脂肪酸エステルの含有量は特に制限されないが、これらの成分の合計含有量は、油性成分中10重量%以上であり、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。また、パルミチン酸エチルは必ずしも含まれている必要はないが、典型的な含有量は油性成分中1重量%以上であり、5重量%以上が好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。
【0019】
回収した油性成分は、そのまま添加用に使用することもできるが、さらに遠心分離、濾過、静置分離などの方法により高級脂肪酸エステルの濃度を高めることで、より少量の使用で香味付与効果が発揮される。
【0020】
アルコール含有物からの油性成分の回収工程は、油性成分中に含まれる成分の酸化を予防するため、窒素雰囲気下などの酸素濃度の低い条件で行うのが好ましい。
ii)「添加工程」
本発明方法における「添加工程」は、回収工程で得られた油性成分を混和蒸留酒に添加する工程である。
【0021】
アルコール含有物から回収された油性成分はそのまま蒸留酒に添加することができるし、アルコール含有溶液などで希釈した後に添加してもよい。高級脂肪酸エステルの溶解度を高めるために、超音波処理、加熱処理などを適宜行ってもよい。
【0022】
例えば、回収した油性成分をアルコール含有溶液、例えば原料アルコールや連続式蒸留酒で完全に溶解させ、溶解液の分析を行うことによって成分の特定や成分量を把握し、混和蒸留酒に最終的に含まれる高級脂肪酸エステルが適量となるように添加することもできる。
【0023】
油性成分の添加量は、混和蒸留酒中の高級脂肪酸エステルの含有量が、0.01ppm以上、好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは1.0ppm以上となるように添加する。また、パルミチン酸エチルの濃度が0.003ppm以上、好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上となるように添加する。
【0024】
また、油性成分の添加による混和蒸留酒中の高級脂肪酸エステルの含有量は、蒸留酒の酒類、原料によって適宜調節することができ、例えば、麦焼酎では0.1ppm以上、好ましくは0.3ppm以上、さらに好ましくは1.0ppm以上であり、芋焼酎では1.0ppm以上、好ましくは2.0ppm以上、さらに好ましくは5.0ppm以上である。さらに、パルミチン酸エチルに着目すると、麦焼酎では0.04ppm以上、好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上、芋焼酎では0.3ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1.0ppm以上である。
【0025】
ここで、混和蒸留酒に含まれる高級脂肪酸エステルの分析は、当業者に知られた方法、例えば香味成分を抽出後にガスクロマトグラフ測定を行うことにより、定性・定量分析を行うことができる。
iii)「混和蒸留酒」
本明細書において「混和蒸留酒」とは、単式蒸留酒と連続式蒸留酒が混合されたものをいい、単式蒸留酒、連続式蒸留酒ともにそれぞれ1種類ずつを混和することができる。また、1種類の単式蒸留酒と複数の連続式蒸留酒を混和することもできるし、その逆も可能である。さらには、複数の単式蒸留酒と複数の連続式蒸留酒を混和することもできる。混合割合も任意に選択することができる。尚、焼酎の混和酒の場合、連続式蒸留酒である甲類焼酎と単式蒸留酒である乙類焼酎を混和した混和蒸留酒は、乙類を50%以上95%未満混和したものを「乙甲混和焼酎」、乙類を5%以上50%未満混和したものを「甲乙混和焼酎」という。
【0026】
ここで、単式蒸留は一般的に処理能力が低いのに対し、連続式蒸留は大量の処理に適していることから、連続式蒸留酒の混合割合を高めることができれば混和蒸留酒を効率的に製造できる。その点、本発明の製造方法では、高級脂肪酸エステルにより香味が付与されるため、単式蒸留酒の混合割合を低く抑えることが可能であり、狙いとする酒質の製品を効率的に製造することができる。
【0027】
また、本明細書における「混和蒸留酒」の例としては、焼酎(泡盛)、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ(ジン、ウォッカ、ラムなど)、アクアビット、アラック、アルヒ、スピリタス、オコレハオ、カシャッサ、コルン、シュナップス、ソジュ、パイチュウ、マオタイ酒、コニャック、アルマニャック、カルヴァドス、グラッパ、シンガニ、ピスコ、メスカル、テキーラ、ラクなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
得られる混和蒸留酒には、上記香味成分のほか、蒸留酒に一般的に添加できる公知の成分を添加してもよく、例えば、香料、甘味料、色素、保存料などの添加物や、果汁などを含んだ公知の香味成分を別途添加することもできる。
【0029】
上記製造方法により得られる混和蒸留酒は、高級脂肪酸エステルを含有することにより、連続式蒸留酒に特徴的なピリピリとした刺激感が減少し、単式蒸留酒のように香り高く、まろやかさや重厚感が付与されるという優れた効果を有する。
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
<実施例1> 単式蒸留酒の製造
油性成分を回収するため、麦焼酎、芋焼酎の製造を定法に従って行った。すなわち、蒸麦200kgに黒麹菌の種麹200gを添加し、製麹機によって麦麹を製造した後、汲水240Lと混和した後に酒母1Lを添加して発酵させ、一次もろみを製造した。つづいて、掛け原料として蒸した麦400kgを添加したのち、汲水600Lを添加し、20度で8日間発酵させて二次もろみを得た。得られたもろみを単式蒸留し、麦焼酎500Lを得た。
【0032】
また、蒸米200kgに黒麹菌の種麹200gを添加し、製麹機によって米麹を製造した後、汲水240Lと混和した後に酒母1Lを添加して発酵させ、一次もろみを製造した。つづいて、掛け原料として蒸した芋(サツマイモ)1000kgを添加したのち、汲水760Lを添加し、35度で10日間発酵させて二次もろみを得た。得られたもろみを単式蒸留し、芋焼酎700Lを得た。
<実施例2> 油性成分の回収・分析
実施例1で得られた麦焼酎、芋焼酎を密閉容器にて30日間室温保管したところ、液表面に油性成分が分離浮上した。これをひしゃくですくいとった後容器中で静置し、分離した焼酎部分をスポイトで除去して油性成分10mlを回収した。
【0033】
メスシリンダーにて容量を測定した後、油性成分1mlに9倍容量の95%エタノール(原料アルコール)を添加して完全に溶解させた。その後、順次10倍希釈系列を作成し、1万倍に希釈したものをガスクロマトグラフィーで測定し、高級脂肪酸エステルの定量を行った結果を表1に示す。
【0034】
なお、ガスクロマトグラフィーの分析条件は下記のとおりである。
使用機器:アジレント・テクノロジー社 GC:6890N
使用カラム:HP−ULTRA2(J&W社製) 内径0.32mm、長さ50m、膜厚0.52μm
キャリアガス:ヘリウムガス
流速:3.2ml/min
注入口温度:250℃
カラム温度:40℃(9分間保持)〜230℃(10分間保持)、昇温速度10℃/min
注入方法:スプリット法(スプリット比15:1)
注入量:2.0μL
検出器:FID
検出温度:260℃
【0035】
【表1】

【0036】
このように、油性成分中にはパルミチン酸エチルが非常に多く含まれていることが分かった。
<実施例3> 市販酒の分析
焼酎においては、旧甲類焼酎の味わいの少なさを改善するために旧乙類焼酎と混和した甲乙混和酒などが提供されている。そこで、市販甲乙混和酒の高級脂肪酸エステル濃度を測定し、パルミチン酸エチルなどによって味わいが付与されているかを確認した。市販酒は店頭にて各社製品を無作為にサンプリングした(いずれもアルコール度25%)。
【0037】
甲乙混和麦焼酎の測定結果を表2に、甲乙混和芋焼酎の測定結果を表3に示す。油性成分の分析は、実施例2の方法に従って行った。
その結果、全く意外なことに市販の甲乙混和焼酎ではパルミチン酸エチルをはじめとする高級脂肪酸は検出されなかった。その原因として、混和に使用する旧乙類焼酎は、混和前の段階ですでに高級脂肪酸エステルが分離または濾過されるなどしてほとんど除去されていることが考えられる。
【0038】
一般的に甲乙混和焼酎では香りだけでなく味わいも付与されているが、その味わいは高級脂肪酸エステル以外の成分によるものである可能性が高いことが分かった。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
<実施例4> 油性成分の官能閾値測定
麦焼酎、芋焼酎それぞれから得られた油性成分を、それぞれ甲乙混和麦焼酎(旧乙類焼酎15%、高級脂肪酸エステル非検出、アルコール度25%)、甲乙混和芋焼酎(旧乙類焼酎16%、高級脂肪酸エステル非検出、アルコール度25%)に0.01ppm〜1ppm添加したサンプルを作成し、三点識別法により官能閾値の測定を行った。具体的には、それぞれから得られた油性成分を0.01、0.05、0.1、0.25、0.5、1ppm添加したサンプルを作成し、官能評価に供した。
【0042】
混和蒸留酒の官能評価は、7名の専門パネラーにより、まろやかさを指標に、次の3点法で行った。
1点:強く識別できる;
2点:識別できる;
3点:ほとんど識別できない。
【0043】
その結果、麦焼酎では油性成分をサンプル中の最終濃度が0.1ppmとなるように添加すると識別可能であり、芋焼酎では1ppmとなるように添加すると識別可能であった。油性成分に含まれる高級脂肪酸エステルのうち、最も多く含まれているパルミチン酸エチルに着目すると、パルミチン酸エチルとして麦焼酎では0.048ppm、芋焼酎では0.37ppm存在すると官能的に影響を与えることが示唆された。
<実施例5> 甲乙混和麦焼酎における添加試験
実施例2で得られた油性成分を95%エタノール(原料アルコール)で1000倍希釈したものを、さらに甲乙混和麦焼酎で希釈したものを添加用に用いた。油性成分の添加量を変えたサンプルを作成し、高級脂肪酸エステル濃度を測定した結果を表4に、官能評価試験を行った結果を表5に示す。
【0044】
混和蒸留酒の官能評価は、7名の専門パネラーにより、次の5点法で行った。1点:非常に優れている;
2点:優れている;
3点:良い;
4点:やや劣る;
5点:劣る。
【0045】
パネラーの点数を平均し、平均点が3以下のものを好適、2.5以下のものを特に好適であると判定した。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
<実施例6> 甲乙混和芋焼酎における添加試験
実施例5と同様にしてサンプルを作成し、高級脂肪酸エステル濃度を測定した結果を表6に、官能評価試験を行った結果を表7に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の方法によれば、優れた香味を有し、連続式蒸留酒由来のキレを有し、かつアルコールの刺激感もなく、その上狙いとする酒質の混和蒸留酒を効率的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混和蒸留酒の製造方法であって、
アルコール含有物から油性成分を回収する工程、および
回収された油性成分を混和蒸留酒に添加する工程、
を含む、前記製造方法。
【請求項2】
油性成分が、パルミチン酸エチル、リノレン酸エチル、オレイン酸エチルおよびステアリン酸エチルからなる群から選択される成分の少なくとも1つを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
油性成分の添加工程において、回収された油性成分をアルコール含有溶液に溶解させた後に蒸留酒に添加する、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
回収工程が、遠心分離、濾過または静置分離により前記油性成分を分離させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
アルコール含有物が、単式蒸留酒の蒸留工程後に得られる蒸留液または残留液である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
アルコール含有物の原料が、米、麦、サツマイモ、そば、ジャガイモ、とうもろこし、あわ、ひえ、きびおよびこうりゃんからなる群から選択される穀類;ナツメヤシ、ブドウ、デーツおよびアガベからなる群から選択される果実;砂糖、糖蜜、蜂蜜および果糖からなる群から選択される含糖質物;およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
混和蒸留酒が、焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ、アクアビット、アラック、アルヒ、スピリタス、オコレハオ、カシャッサ、コルン、シュナップス、ソジュ、パイチュウ、マオタイ酒、コニャック、アルマニャック、カルヴァドス、グラッパ、シンガニ、ピスコ、メスカル、テキーラまたはラクである、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。