説明

混練機

【課題】混練物を入れるケーシング1と、同ケーシング1内の混練室2で回転する混練用ロータ3とを有する混練機において、上記ケーシング1とロータ3端面との隙間に混練物が侵入しても、上記ケーシング1とダストシール22との隙間A5にまで混練物が到達することを防止して、混練機外部への混練物の漏洩を防止できる混練機を提供する。
【解決手段】上記ロータ3の軸にフィン16付きのスリーブ15を取り付け、同スリーブ15と相対する上記ケーシング1の内面に快削部材17を取り付けるか、或は上記ケーシング1の内面にフィン16付きのスリーブ15を取り付け、同スリーブ15と相対する上記ロータ3の軸に快削部材17を取り付けたことにより、混練物が侵入しようとする隙間A5がほぼ0になり、それ以上の混練機外部側への漏洩を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム、プラスチック等の混練に使用する混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な混練機の断面図を図3に示す。
図3において、1は混練機のケーシング、2は同ケーシング1およびフローティングウェイト25、ドロップドア26とによって密閉される混練室、3は混練用のロータ、4は同ロータ3の軸である。2本のロータ3は混練室2内に互いに平行に配設されており、ロータ軸4の端部に設置された図示しない駆動装置(モータ、動力伝達用歯車等)により、互いに異なる方向に回転する。
また、ロータ3には一部が半径方向に突出した突出部5が形成されており、混練室2の内壁は上記突出部5の回転時の軌跡に対応する曲面形状になっている。
【0003】
本混練機では、昇降可能なフローティングウェイト25が上昇した状態(図3の二点鎖線)で、ゴム、プラスチック等の原料および薬品等の添加物(以後、単に混練物と称す)をホッパ27の投入口28から混練室2内に投入し、フローティングウェイト25が下降して混練物を加圧する。
その状態にてロータ3を回転させ、ロータ3の間に混練物を噛み込むことによって、混練作業が行なわれる。
そして、混練が終了すると混練物はケーシング1下部のドロップドア26を開放することにより外部に排出される。
【0004】
本混練機においては、ロータ軸4が混練室2を貫通するように配置されているため、加圧状態で混練される混練物が混練室2の端部から外部へ漏洩しないよう、ロータ軸4やロータ3の端面に漏洩防止手段を設ける必要がある。
したがって、従来の装置では、例えば図4の混練機端部の概略構造図に示すようなダストシール22を用いて密封している。同ダストシール22はバネ24のバネ力により押え金23を介して、常にロータ3の端面に押し付けられているから、ラビリンス等他の漏洩防止手段と比べて非常に効果的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転を伴うロータ3の端面と固定のケーシング1との間には寸法精度の問題等から隙間B(0.5〜1.0mm程度)が不可欠であり、隙間Bに混練物が侵入することが考えられる。
さらに、ケーシング1とダストシール22との隙間Aにまで混練物が達してしまうと、ダストシール22とケーシング1とが固着してしまうため、バネ24により力を加えても、ダストシール22がロータ3の端面に十分接触しなくなるという不具合が生じる。
その結果、ロータ3の端面とダストシール22との間に生じる隙間から混練物が漏洩してしまう。
【0006】
したがって本発明の目的はケーシング1とロータ3との隙間Bに混練物が侵入しても、ケーシング1とダストシール22との隙間Aにまで混練物が到達することを防止して、混練機外部への混練物の漏洩を防止できる混練機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するため、以下のような手段を提供するものである。
混練物を入れるケーシングと、同ケーシング内の混練室で回転する混練用ロータとを有する混練機において、
(1)上記ロータの軸にフィン付きのスリーブを取り付け、同スリーブと相対する上記ケーシングの内面に快削部材を取り付けるか、或は上記ケーシングの内面にフィン付きのスリーブを取り付け、同スリーブと相対する上記ロータの軸に快削部材を取り付けたことを特徴とする混練機。
(2)上記フィン付きのスリーブのフィンを螺旋状に形成したことを特徴とする上記(1)に記載の混練機。
【発明の効果】
【0008】
本願の請求項1に記載された発明によると、ロータの軸にフィン付きのスリーブを取り付け、同スリーブと相対する上記ケーシングの内面に快削部材を取り付けるか、或は上記ケーシングの内面にフィン付きのスリーブを取り付け、同スリーブと相対する上記ロータの軸に快削部材を取り付けたことにより、混練物が侵入しようとする隙間がほぼ0になり、それ以上の混練機外部側への漏洩を防止することができる。
【0009】
本願の請求項2に記載された発明によると、スリーブのフィンを螺旋状に形成したことにより、混練物がスリーブと快削部材との隙間に入ったとしても、ロータの回転と共に混練室側に戻されるから、それ以上の混練機外部側への漏洩を防止することができる。
【0010】
以上のように、本願の請求項1又は請求項2に記載された発明によると、ダストシールの部分にまで混練物が侵入するのを防止できるから、混練物が混練機外部へ漏洩するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る混練機を、図1及び図2に基づき説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の第1の実施の形態を、図1により説明する。
図1において、1は混練機のケーシング、2は混練室、3は混練用のロータ、4は同ロータ3の軸、21はロータ3の回転方向、22はダストシール、23は押え金、24はバネ、そして15は同ロータ軸4に取り付けられた円板状のスリーブ、16は同スリーブ15の外周面に付設されたフィン、17は同スリーブ15と相対する上記ケーシング1の内面に取り付けられた円環状の快削部材である。
なお、図1では省略されているが、その他の構成は図3に示す従来例と同様であり、従来例と同様の混練作業が行なわれる。
【0013】
図1に示すフィン16と快削部材17とは、組立時においては隙間がない状態、すなわち両者は接触した状態で形成されている。
したがって、混練物が例えば硬質のゴムであって混練作業中にロータ3およびロータ軸4が半径方向に撓んだとしても、フィン16が快削部材17を削り取りながら回転することで、摩擦による動力損失を最低限に抑え、かつ両者の隙間を最小に保つことができる。
【0014】
よって、図1に示すフィン16付きのスリーブ15と快削部材17とによれば、混練作業に伴なってロータ3の端面とケーシング1との隙間に混練物が侵入しても、混練物はフィン16によってせき止められるから、ケーシング1とダストシール22との隙間A5にまで混練物が侵入するのを防止することができる。
【0015】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る混練機では、ロータ軸4にフィン16が付いたスリーブ15を取り付け、ケーシング1に快削部材17を取り付けたが、ケーシング1側にフィンが付いたスリーブ15を取り付け、ロータ軸4側に快削部材を取り付けても良い。
また、快削部材の材質は例えば銅合金やアルミ合金、ニッケル合金が使用されるが、混練物と混ざっても問題がない樹脂等で製作すればより良い。
【実施例2】
【0016】
次に本発明の第2の実施の形態を、図2により説明する。
図2において、1は混練機のケーシング、2は混練室、3は混練用のロータ、4は同ロータ3の軸、21はロータ3の回転方向、22はダストシール、23は押え金、24はバネ、そして18は同ロータ軸4に取り付けられた円板状のスリーブ、19は同スリーブ18の外周面に付設された螺旋状のフィン、20は同スリーブ18と相対する上記ケーシング1の内面に取り付けられた円環状の快削部材である。
なお、図2では省略されているが、その他の構成は図3に示す従来例と同様であり、従来例と同様の混練作業が行なわれる。
【0017】
図2に示す螺旋状のフィン19と快削部材20とは、組立時においては隙間がない状態、すなわち両者は接触した状態で形成されている。
したがって、混練物が例えば硬質のゴムであって混練作業中にロータ3およびロータ軸4が半径方向に撓んだとしても、螺旋状のフィン19が快削部材20を削り取りながら回転することで摩擦による動力損失を最低限に抑え、かつ両者の隙間を最小に保つことができる。
また、螺旋状のフィン19はロータ軸4の端面方向に対して左上がりに形成されているから、混練物がスリーブ18と快削部材20との隙間に入ったとしても、ロータの回転と共に混練室側に戻されるから、ケーシング1とダストシール22との隙間A6にまで混練物が侵入するのを防止することができる。
【0018】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る混練機では、ロータ軸4に螺旋状のフィン19が付いたスリーブ18を取り付け、ケーシング1側に快削部材20を取り付けたが、ケーシング1にフィンが付いたスリーブ18を取り付け、ロータ軸4側に快削部材を取り付けても良い。
また、快削部材の材質は例えば銅合金やアルミ合金、ニッケル合金が使用されるが、混練物と混ざっても問題がない樹脂等で製作すればより良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る混練機端部の概略構造図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る混練機端部の概略構造図である。
【図3】従来の一般的な混練機の断面図である。
【図4】従来の混練機端部の概略構造図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ケーシング
2 混練室
3 ロータ
4 ロータ軸
15 スリーブ
16 フィン
17 快削部材
18 スリーブ
19 螺旋状フィン
20 快削部材
21 回転方向
22 ダストシール
23 押え金
24 バネ
25 フローティングウェイト
26 ドロップドア
27 ホッパ
28 投入口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練物を入れるケーシングと、同ケーシング内の混練室で回転する混練用ロータとを有する混練機において、上記ロータの軸にフィン付きのスリーブを取り付け、同スリーブと相対する上記ケーシングの内面に快削部材を取り付けるか、或は上記ケーシングの内面にフィン付きのスリーブを取り付け、同スリーブと相対する上記ロータの軸に快削部材を取り付けたことを特徴とする混練機。
【請求項2】
上記フィン付きのスリーブのフィンを螺旋状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の混練機。








































【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−230250(P2008−230250A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108801(P2008−108801)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【分割の表示】特願2000−205958(P2000−205958)の分割
【原出願日】平成12年7月7日(2000.7.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】