説明

混練物生成ユニット

【課題】セメント系粉体原料を用いて混練物を製造する施工現場にて生じる廃棄物を、環境に大きな影響を及ぼすことなく、容易に、かつ低コストで処理可能な混練物生成ユニットを提供すること。
【解決手段】粉体原料と液体原料とを混練して混練物を生成するミキサポンプ2と、少なくともこの混練物の残材を固体成分と液体成分とに分離する分離装置7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントスラリーなどの混練物を生成するための混練物生成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、セメント系などの粉体原料を用いてセメントスラリーなどの混練物を生成する方法としては、粉体原料を専用車両によって施工現場まで運搬し、その施工現場にてこの粉体原料を水などの液体原料と混練して混練物の生成を行う方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法では、粉体原料を施工現場まで運搬するための専用車両として、粉体原料を収容するセメント粉体輸送用ドラムを搭載したセメント混練物生成用トラックが用いられる。
【特許文献1】特開平5−208412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、セメント系の粉体原料を用いた場合など、比較的短時間で硬化するような混練物の場合には、混練物を生成する混練装置内など、混練物の生成、収容および移送などに係る箇所を、施工現場にて、施工後速やかに洗浄し、このような箇所に残存する混練物を洗い落とす必要が生じる。このように、洗浄により洗い落とされた混練物や洗浄水(以下、単に廃棄物という)は、ドラム缶などの収容器に収容され、廃棄物管理体制の整った施設まで運搬されて、そこで廃棄処理される。しかし、このような場合には、廃棄物を収容するための収容器が多数必要になるとともに、さらに、このような収容器を施工現場まで多数持ち運ばなければならないため、多くの労力やコストが必要となる。特に、多量の廃棄物が生じるような場合であって、1日のうちに複数の現場を巡回しなければならないような場合には、作業者は、この多量の廃棄物を収容するための収容器を多数持ち運びながら複数の施工現場を巡回しなければならない。このため、さらに多くの労力やコストが必要となる。
【0004】
そこで、本発明の課題は、セメント系粉体原料を用いて混練物を製造する施工現場にて生じる廃棄物を、環境に大きな影響を及ぼすことなく、容易に、かつ低コストで処理可能な混練物生成ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の混練物生成ユニットは、粉体原料と液体原料とを混練して混練物を生成するミキサ装置と、少なくとも前記混練物の残材を固体成分と液体成分とに分離する分離装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、作業者は、ミキサ装置と分離装置とを一つのまとまったユニットとして同一の施工現場に持ち込んで利用できることとなる。このため、余った混練物や使用後のミキサ装置内の洗浄により洗い落とされた混練物などの残材や洗浄水を含む廃棄物を分離装置を用いて固体成分と液体成分とに分離する、という作業を、施工現場にて容易かつ確実に行うことが可能となる。これにより、この分離後の固体成分のみを持ち帰って廃棄物管理体制の整った施設にて廃棄可能となり、さらに、分離後の液体成分については、例えばpH値調整処理などを施して施工現場の周囲の環境に対して大きな影響を与えることがないようにした後にこの施工現場にて直接廃棄可能となる。この場合、従来のように廃棄物をそのままドラム缶などの収容器に収容して持ち帰る必要がなく、廃棄物のうちの固体成分のみを収容器に収容して持ち帰ることで足りることとなる。これにより、廃棄物を収容する収容器の本数が少なくて済むため、廃棄物を収容器に収容する際に要する労力、そして、この収容器を施工現場から持ち帰るのに要するコストが削減可能となる。さらに、廃棄物のうち液体成分については、pH値調整などの簡単な処理を施した後に施工現場にて廃棄できるので、環境に大きな影響を与えずに済む。
【0007】
また、本発明では、上記ミキサ装置と上記分離装置とを搭載する基台をさらに備えるのが好ましい。ミキサ装置と分離装置とがともに同じ基台に搭載されて全体として一つのまとまったユニットを構成するため、ミキサ装置と分離装置とが容易に移動可能となる。例えば、この基台がクレーンなどによってトラックに積載されるような場合や、この基台自体がトラックの荷台となっているような場合には、このトラックを走行させることによって所望とする目的地までミキサ装置と分離装置とを容易に移動させることが可能となる。
【0008】
また、本発明では、上記粉体原料を上記ミキサ装置に供給する粉体原料供給装置と、少なくとも上記粉体原料を含む粉塵を集塵する集塵装置と、をさらに備え、上記粉体原料供給装置と上記集塵装置とは共に上記基台に搭載されているのが好ましい。これによれば、ミキサ装置、分離装置、粉体原料供給装置および集塵装置が共に同じ基台に搭載されて全体として一つのまとまったユニットを構成するため、特に、ミキサ装置は、施工現場にて粉体原料供給装置から粉体原料の供給を容易に受けることが可能となる。この際、粉体原料が現場周囲の空気中に飛散して粉塵となり、この粉塵が現場周囲の環境に少なからぬ影響を及ぼす場合が生じ得る。この点、本発明では、粉塵を集塵する集塵装置が施工現場で利用できるので、作業者は、粉体原料がミキサ装置に供給される際などに現場周辺に生じる粉塵を、集塵装置を用いて容易かつ十分に吸引可能となり、施工の際に環境が受ける影響がさらに緩和可能となる。
【0009】
また、本発明では、上記ミキサ装置は、軸部材の外周面に複数の羽根が形成されたものであって、この軸部材が所定方向に回転することにより、上記粉体原料と上記液体原料とを混練しながら上記軸部材の基端側から終端側に向けて上記混練物を移送する混練スクリューが設けられた混練装置を有し、この混練スクリューは、上記複数の羽根が、上記軸部材の前記終端側に向けて上記混練物を送る送り羽根と、上記軸部材の前記基端側に向けて上記混練物を戻す戻し羽根と、を含み、上記複数の羽根に占める上記戻し羽根の割合が少なくとも50%であるのが好ましい。この混練スクリューでは、軸部材の基端側に向けて混練物を戻す戻し羽根が、軸部材の終端側に向けて混練物を送る送り羽根と同数か、或いは、それよりも多く形成されている。このため、粉体原料と液体原料とを十分に混練することができ、不十分な混練状態で吐出される混練物が減少する。これにより、混練物にダマ(凝集塊)が形成されたり、硬化表面に気泡や凹凸が形成されるなどの現象が発生しにくくなって、混練物の性状向上が図られる。
【0010】
また、上記粉体原料が、アルミナセメント、ポルトランドセメントおよび石膏のうち少なくとも一成分を含む水硬性成分と、混和剤と、を含む水硬性組成物であるのが好ましい。本発明の混練物生成ユニットは、上述の組成内容を有する水硬性組成物を混練する場合において、特に有効である。ここで「混和剤」とは、細骨材、減水剤、増粘剤、凝結調整剤および消泡剤のうちの一または複数の成分を含んだものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セメント系粉体原料を用いて混練物を製造する施工現場にて生じる廃棄物を、環境に大きな影響を及ぼすことなく、容易に、かつ低コストで処理可能な混練物生成ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る混練物生成ユニット1について説明する。なお、以下の図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0013】
ここで、図1は本実施形態に係る混練物生成ユニットの構成を示す図であり、図2は本実施形態に係るミキサポンプの断面構成を示す図である。そして、図3は本実施形態に係るミキサスクリューの全体構成を示す図であり、図4は本実施形態に係るミキサスクリューの羽根を説明するための平面図であり、図5は本実施形態に係るミキサスクリューの羽根を説明するための断面図である。
【0014】
図1に示すように、混練物生成ユニット1は、ミキサポンプ(ミキサ装置)2、クレーン3、フレコン4、粉体原料供給装置5、液体原料供給装置6、分離装置7、集塵装置8、積算流量計9および発電機10などが荷台(基台)11に搭載されている。ここで、図1においては、荷台11は、大型トラックなどの運搬車両11aに搭載されている。
【0015】
ミキサポンプ2は、ホッパー2a、混練装置2b、リザーバ2c、スネークポンプ2d、移送パイプ2eおよび操作盤2fを有し、例えばアルミナセメント、ポルトランドセメントおよび石膏などの水硬性成分と混和剤とからなる粉体原料と、水などの液体原料とを混練して混練物を生成する。また、ミキサポンプ2は、後述する液体原料供給ポンプ6c、液体原料調整バルブ6dおよび流量メータ6eなどを有するものを用いることができる。
【0016】
ここで、図2を参照してミキサポンプ2の詳細について説明する。ホッパー2aは、粉体原料供給装置5から供給される粉体原料を混練装置2b側に供給する。このホッパー2aは、図示のように、広口の投入口21がホッパー2aの本体上部に形成されているとともに、隣接する混練装置2bと連通する開口部をこの本体下部側壁に有する。そして、ホッパー2aの本体内下部にはホッパースクリュー22が略水平に設けられ、ホッパー2aの外部に設置されたモータ23によって回転駆動される。この場合、モータ23による回転駆動力は動力伝達ベルト24を介してホッパースクリュー22側に伝達される。ここで、モータ23は油圧式または電動式のものが用いられる。
【0017】
ホッパースクリュー22は、螺旋状の羽根が外周面に巻き付くように形成されている。ここで、投入口21に投入される粉体原料は、ホッパースクリュー22の回転運動によって混練装置2bに移送される。
【0018】
混練装置2bは、混練室25とミキサスクリュー(混練スクリュー)26とを有する。混練室25は、筒状(中空の円柱状)を成し、長手方向が略水平となるように設置されている。混練室25は、長手方向における二つの端部のうち、一方の端部にはホッパー2a内の下部に連通する開口部が設けられ、他の端部近傍には吐出部28に連通する開口部が設けられている。そして、混練室25の内部には長手方向に沿ってミキサスクリュー26が設置されている。このような混練装置2bは、ミキサスクリュー26の回転によってホッパー2aから移送された粉体原料を液体原料とともに混練室25内で混練する。ここで、混練室25の側壁でホッパー2a側に位置する所定箇所には移送パイプ6bに連通する給水口27が形成されており、この移送パイプ6bと給水口27とを介して液体原料タンク6aから混練室25内に液体原料が供給される。
【0019】
また、吐出部28は、混練室25とリザーバ2cとを連通し、混練室25内で混練された混練物をリザーバ2cに吐出するためのものである。また、ミキサスクリュー26は、ホッパー2aのホッパースクリュー22と一体形成されており(或いは、連結固定されている)、ホッパースクリュー22とともに、モータ23によって回転駆動される。
【0020】
ミキサスクリュー26は、図3に示すように、軸部材26aと、この軸部材26aの外周面に形成された複数の羽根を有する。軸部材26aの基端から終端までの長さは混練室25の長さ程度であり、この間に複数の羽根が、軸の長さ1m当たり10枚以上の密度で形成されている。この羽根は、混練室25内の混練物を軸部材26aの基端側(ホッパー2aの設置側)に逆流させるための複数の戻し羽根26b(図3においては26枚)と、この混練物を軸部材26aの終端側(吐出部28の設置側)に送るための複数の送り羽根26c(図3においては6枚)とを含む。
【0021】
戻し羽根26bと送り羽根26cとは、図4に示すように、軸部材26aの外周面と羽根との接合部(線状をなす接合部)に沿った方向B1,B2が、それぞれ、軸部材26aの軸に対して互いに略45度反対向きに傾いて軸部材26aに交差するように立設されている。これにより、軸部材26aが図中符号Rの向きに回転すると、混練物は、戻し羽根26bによって軸部材26aの基端側に移送され、送り羽根26cによって軸部材26aの終端側に送られることとなる。ここで、軸と方向B1とがなす角度θ1と、軸と方向B2とがなす角度θ2とは、上述の45度に限らず、20度〜70度の範囲内にあればよい。
【0022】
また、図3に示すように、ミキサスクリュー26には複数(図3においては6枚)の掻き出し用板部材26dが設けられている。この掻き出し用板部材26dは、軸部材26aの回転によって混練物を混練室25の内壁から掻き出すためのものであり、互いに並列に軸部材26aの外周面に立設された複数の羽根(戻し羽根26bまたは送り羽根26c)に支えられるようにして各羽根に接合されている。そして、この掻き出し用板部材26dは、図5に示すように、軸部材26aの軸方向から見て、軸部材26aの外周方向に互いに略120度離隔して設けられている。
【0023】
次に、ミキサスクリュー26が有する各羽根の形成位置について詳細に説明する。ここでは、羽根の形成位置を、軸部材26aの基端側から終端側に向かう方向(以下、軸方向という)に沿って、軸部材26aの基端から終端までの間を領域A1〜A10に分けて順次説明していく。まず、最も基端側に位置する領域A1には、3枚の送り羽根26cが、軸上の同一地点にあって周方向に略120度間隔で相互に離隔して形成されている。
【0024】
軸方向に向かって領域A1の隣に位置する領域A2には、2枚の戻し羽根26bが、軸上の同一地点にあって周方向に略180度間隔で相互に離隔して形成されている。軸方向に向かって領域A2の隣に位置する領域A3には、6枚の戻し羽根26bが軸部材26aの外周面にて、ほぼ螺旋状に相互に離隔して形成されている。
【0025】
軸方向に向かって領域A3の隣に位置する領域A4には、3枚の戻し羽根26bが、軸上の同一地点にあって周方向に略120度間隔で相互に離隔して形成されている。軸方向に向かって領域A4の隣には、羽根が形成されていない領域A5が位置する。そして、軸方向に向かって領域A5の隣に位置する領域A6には、6枚の戻し羽根26bが2枚1組となって、軸部材26aの外周面にて、ほぼ螺旋状に相互に離隔して形成されている。そして、各組に含まれる2枚の戻し羽根26bには、1枚の掻き出し用板部材26dがそれぞれ接合されている。
【0026】
軸方向に向かって領域A6の隣に位置する領域A7には、3枚の戻し羽根26bが上記した領域A4の場合と同様に形成されている。軸方向に向かって領域A7の隣に位置する領域A8には、6枚の戻し羽根26bと3枚の掻き出し用板部材26dとが上記した領域A6の場合と同様に形成されている。
【0027】
軸方向に向かって領域A8の隣に位置する領域A9には、3枚の送り羽根26cが上記した領域A1の場合と同様に形成されている。そして、軸方向に向かって領域A9の隣には羽根が形成されていない領域A10が位置する。
【0028】
なお、全羽根に占める戻し羽根26bの割合は50%を下限とするのが好ましいが、この下限は、60%がより好ましく、70%が特に好ましい。そして、この戻し羽根26bの占める割合の上限は95%が好ましいが、100%であってもよい。さらに、ミキサスクリュー10は、軸部材10aの軸方向の長さ1m当たりの羽根の枚数は10枚以上が好ましく、20枚以上がより好ましく、さらに、30枚以上が特に好ましい。ここで、図3に示すミキサスクリュー26は、上述したように、軸部材10aの軸方向の長さ1m当たりの羽根の枚数が10枚以上であり、戻し羽根26bと送り羽根26cとの合計枚数が32枚であり、羽根全体に占める戻し羽根26bの割合が81%程度となっている。このため、戻し羽根26bの全羽根に占める割合が50%以上と高く、さらに、軸部材10aの軸方向の長さ1m当たりの羽根の枚数が10枚以上と高いため、粉体原料と液体原料とを十分に混練することができ、不十分な混練状態のまま混練装置2bから吐出部28を介して吐出されるような混練物が減少することとなる。
【0029】
また、ミキサスクリュー26の回転数は、300rpm以上とするが、400rpmが好ましく、500rpm以上がより好ましく、さらに、600rpm以上が特に好ましい。このように、ミキサスクリュー26の回転数が300rpm以上と高いため、混練物に対する混練がより十分に行われる。なお、従来のミキサスクリューを高速回転させた場合には混練物の吐出量も増加することとなり、不十分な混練状態のまま混練物が吐出されるような場合が生じるが、ミキサスクリュー26は、戻し羽根26bの全羽根に占める割合が50%と高いため、高速回転させても混練物の吐出量を十分に抑制することが可能となる。このため、ミキサスクリュー26を高速回転させつつも、十分に時間をかけた混練が可能となる。ここで、このミキサスクリュー26の回転数は、操作者が後述の操作盤2fを操作することにより、所望の値に設定することが可能である。
【0030】
ここで、図2に戻って説明する。リザーバ2cは、吐出部28を介して混練装置2bから吐出された混練物を一旦収容するためのものである。このように混練物がリザーバ2cにて一旦収容されるので、スネークポンプ2dによってリザーバ2cから所望とする割合(吐出量)で混練物を外部に吐出可能となる。
【0031】
このリザーバ2cは、本体内上部に広口の拡開部29が形成され、さらに、本体内下部にはスターラースクリュー30と移送スクリュー31とが略水平に設けられている。スターラースクリュー30と移送スクリュー31とは何れも、リザーバ2cの本体内下部において、互いに対向する二つの側壁のほぼ一方から他方に至る長さを有する。そして、スターラースクリュー30はモータ32によって回転駆動され、移送スクリュー31はモータ33によって回転駆動される。モータ33による回転駆動力は、動力伝達ベルト34を介して移送スクリュー31側に伝達される。ここで、モータ32,33は油圧式または電動式のものが用いられる。
【0032】
リザーバ2cの下部側壁には隣接するスネークポンプ2dに連通する開口部が形成されている。この開口部を介して、リザーバ2c内の移送スクリュー31と、スネークポンプ2d内の図示しないスクリューとが一体的に連結(形成)されている。このため、スネークポンプ2d内のスクリューは、移送スクリュー31の回転に伴って回転する。このようにスネークポンプ2d内のスクリューが回転することによってリザーバ2c内の混練物が移送パイプ2eを介して外部に吐出される。
【0033】
上記のような構成のミキサポンプ2では、ホッパー2aに投入された粉体原料が、ホッパースクリュー22の回転により混練装置2bに移送される。そして、混練装置2bでは、ミキサスクリュー26の回転により、ホッパー2aから移送された粉体原料が給水口27を介して供給された液体原料と混練され、所望の性状を有する混練物が生成される。混練装置2bによって生成された混練物は、吐出部28を介してリザーバ2cに吐出され、ここで、スターラースクリュー30の回転により攪拌されながら一旦収容される。攪拌された混練物は、移送スクリュー31の回転によってスネークポンプ2dに移送され、さらに、スネークポンプ2dから移送パイプ2eを介して外部に吐出される。
【0034】
操作盤2fは、ホッパー2a、混練装置2bおよびリザーバ2cの各々に設置された上記のホッパースクリュー22、ミキサスクリュー26、スターラースクリュー30および移送スクリュー31の各回転駆動を作業者が操作するための各種操作レバーや各種操作スイッチなどを有する。
【0035】
ここで、図1に戻って説明する。クレーン3は、荷台11(或いは運搬車両11a)に設置され、略棒状のクレーンアーム3aと、このクレーンアーム3aの先端部付近に取り付けられたクレーンフック3bとを有する。クレーンフック3bには、粉体原料供給装置5に粉体原料を供給するためフレコン(フレキシブルコンテナバッグ)4が釣支れている。このフレコン4には粉体原料が収容され、この粉体原料はフレコン4の本体底面に設けられた放出口41から放出される。クレーンアーム3aとクレーンフック3bとは位置調整が可能となっており、この位置調整によりフレコン4の位置調整が行われる。また、現場にて粉体原料の追加が必要な場合、クレーンは、粉体原料の運搬車や他の車両などに設けられたものを用いることができる。
【0036】
粉体原料供給装置5は、粉体原料をミキサポンプ2に自動供給するためのものであり、粉体原料を収容する粉体原料タンク5aと、この粉体原料タンク5a内の粉体原料をホッパー2a側に移送するためのスクリューコンベア5bとを有する。粉体原料タンク5aは、例えば1.5m程度の粉体原料を収容可能な容量を有する。粉体原料タンク5aの本体底面には、粉体原料をスクリューコンベア5b側に放出するための放出口51が形成され、粉体原料タンク5aの本体上部には粉体原料の補充供給を受けるための開口部53が形成されている。
【0037】
この粉体原料供給装置5に対する粉体原料の補充供給は、フレコン4や図示しないジェットパック車などによって行われる。フレコン4を用いて粉体原料を補充供給する場合、クレーンアーム3aとクレーンフック3bとに対する位置調整が行われ、フレコン4の放出口41が粉体原料タンク5aの開口部53の位置にくるようフレコン4の位置が調整される。これにより、フレコン4の放出口41から放出される粉体原料が粉体原料タンク5aの開口部53内に(すなわち、粉体原料タンク5aの内部に)確実に到達可能となる。
【0038】
スクリューコンベア5bは、粉体原料タンク5a内の粉体原料をホッパー2a側に移送するためのものであり、一端が粉体原料タンク5aの本体底面に形成された放出口51の直下に位置してこの放出口51から落下する粉体原料を確実に受け止められるようになっており、他端には粉体原料を放出するための放出口52が形成されている。そして、この放出口52はホッパー2aの投入口21付近に位置している。このスクリューコンベア5bでは、粉体原料タンク5aの放出口51から放出された粉体原料が放出口52まで移送され、そして、この放出口52からホッパー2aに放出される。
【0039】
液体原料供給装置6は、液体原料を収容する液体原料タンク6aと、この液体原料タンク6aに収容された液体原料を混練装置2bに移送するための移送パイプ6bと、ミキサポンプ2に収容されている液体原料を汲み上げる液体原料供給ポンプ6cと、混練装置2b内に供給する液体原料の供給量を調整する液体原料調整バルブ6dと、流量メータ6eとを有する。ここで、液体原料タンク6aは、例えば少なくとも300リットル程度の液体原料を収容可能な容量を有する。液体原料の調整は、操作者が、流量メータ6eを目視で確認しながら液体原料調整バルブ6dをバルブ操作することによって行う。流量メータ6eおよび液体原料調整バルブ6dは、操作盤2fの近辺に配置されるが、特に、操作しやすく、そして見やすい場所に配置されるのが好ましい。
【0040】
分離装置7は、施工後に残った残材としての混練物(ホッパー2aの洗浄により洗い落とされた混練物を含む)や洗浄水などを含んだ廃棄物を固体成分と液体成分とに分離するためのものである。分離装置7は、遠心分離機やろ過機などが用いられる。
【0041】
ここで、分離装置7として用いられる遠心分離機は、廃棄物を、遠心力を用いて固体成分と液体成分とに分離する。また、廃棄物に凝集剤や沈降促進剤などを添加したものを、遠心力若しくは重力を用いて固体成分と液体成分とに分離するものであってもよい。この遠心分離機では、廃棄物は回転可能な図示しない容器内に収容され、この容器が高速回転される。この高速回転により、容器内の廃棄物に遠心力が作用して液体成分のみが容器の外に排出され、固体成分は容器内に残留する。そしてこの容器の外に排出された液体成分は、さらに図示しないフィルタを介して遠心分離機の外に排出される。一方、分離装置7として用いられるろ過機は、ろ過処理によって廃棄物を固形成分と液体成分とに分離するものである。このろ過機では、廃棄物は図示しないろ過袋の中に収容されてろ過処理される。そして液体成分は、このろ過処理によってろ過袋の外部に排出され、固体成分のみがこのろ過袋の中に残留することとなる。
【0042】
なお、遠心分離機やろ過機の何れを用いた場合であっても、分離後の液体成分は、環境に影響が大きく及ばない程度の略中性のpH値に調整され、このpH値の調整の後に施工現場の側溝などに排出される。
【0043】
集塵装置8は、粉体原料が、フレコン4やジェットパック車などにより粉体原料タンク5aに供給される際や、スクリューコンベア5bの放出口52からホッパー2a側に放出される際などに生じる粉体原料による粉塵を集塵するためのものであり、この粉塵が周囲に飛散するのを防止する。集塵装置8は、バキューム装置である集塵機本体8aと、この集塵機本体8aが遠隔の粉塵を集塵できるようにするための集塵ノズル8bとを有する。集塵ノズル8bの先端部には吸引口8cが形成され、この吸引口8cを介して吸引された粉塵が集塵機本体8a内に収容される。なお、集塵ノズル8bは二股に分かれており、各先端部には二つの吸引口8cが各々形成されている。そして、この二つの吸引口8cの各々は、ホッパー2aの投入口21の周辺と粉体原料タンク5aの開口部53の周辺とにそれぞれ配置される。
【0044】
積算流量計9は、移送パイプ2eを介してミキサポンプ2から吐出される混練物の流量の累計を計測するためのものであり、計測後の混練物は、移送パイプ2eから吐出される混練物の流量とほぼ同じ流量を保ちながら移送パイプ9aを介して外部に吐出される。積算流量計9は、作業者によって指定された計測開始時から計測終了時までの間にミキサポンプ2から吐出された混練物の全量(流量の累計)を計測し、その計測結果を内部メモリに格納したり、ディスプレイに表示したりする。この積算流量計9を用いれば、例えば、施工現場毎に混練物をどれだけ使用したか、などが明確となり、粉体原料などの管理が正確かつ容易に行えることとなる。
【0045】
発電機10は、上記したミキサポンプ2、粉体原料供給装置5、分離装置7、集塵装置8および積算流量計9など、電力によって駆動する装置などに対し、必要な電力を供給するためのものであり、施工現場にて電源が確保できない場合に特に有効である。
【0046】
荷台11は、上記したミキサポンプ2、粉体原料供給装置5、液体原料タンク6a、分離装置7、集塵装置8、積算流量計9および発電機10が搭載されている。これにより、ミキサポンプ2、粉体原料供給装置5、液体原料タンク6a、分離装置7、集塵装置8、積算流量計9および発電機10をまとめて同時に移動可能となるため、それぞれ個別に移動させる場合に比して移動に要する労力やコストの削減化が図られる。
【0047】
上記説明した混練物生成ユニット1の構成によれば、混練物生成ユニット1は、施工現場まで容易に移動可能であり、さらに、各施工現場では混練物がミキサポンプ2によって容易に生成可能となっている。さらに、各施工現場で生じる廃棄物は分離装置7によって固体成分と液体成分とに分離可能となっている。そして、この分離後の固体成分は、施工現場における廃棄物管理体制の有無や程度によらず、ドラム缶などの収容器に収容されて持ち帰り可能となっており、液体成分については、施工現場周囲の環境に大きな影響を与えないように処理(pH値の調整など)された後にこの施工現場にて直接排出可能となっている。
【0048】
このため、従来のように、廃棄物をそのまま持ち帰らなければならないような場合に比べて、持ち帰る廃棄物の容積や重量が、施工現場にて排出される液体成分の容積や重量の分だけ削減可能となる。そして、分離後の固体成分を収容するための収容器の数が少なくて済むため、持ち帰りの際の運搬が容易となり、この運搬に要する労力やコストが削減される。これに伴って、1日に複数の施工現場を巡回するような場合にも十分対応できる。さらに、分離後の固体成分は持ち帰って廃棄物管理体制の整った施設にて廃棄され、分離後の液体成分はpH値調整の後に施工現場にて直接排出されるため、周囲環境に大きな影響を及ぼさずに済む。
【0049】
なお、本発明は、上記説明した混練物生成ユニット1の構成や動作に限らず、詳細構成や詳細動作については本発明の内容を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、フレコン4を釣支するためのクレーンとしては、荷台11に設けられたクレーン3に限らず、荷台11以外の他の車両に設けられたクレーンや、固定設置型のクレーンなどであってもよい。
【0050】
また、混練物生成ユニット1は、ミキサポンプ2および分離装置7のみを含むものであってもよい。このような構成の場合、ミキサポンプ2および分離装置7が一つのまとまったユニットとして、例えば、トラックの荷台だけでなく、船や航空機、或いは列車などの、種々の移動手段に対し容易に搭載可能となる。このような構成であっても、混練物生成ユニット1が施工現場まで容易に移動可能であり、さらに、施工現場にて、分離装置7により廃棄物を固体成分と液体成分とに分離可能であって、この分離後の固体成分と液体成分とは上述のような周囲環境に大きな影響を及ぼさないような仕方で廃棄可能となる。また、混練物生成ユニット1は、ミキサポンプ2および分離装置7に加え、さらに粉体原料供給装置5および集塵装置8を含むものであってもよく、このような構成であっても、ミキサポンプ2、分離装置7、粉体原料供給装置5および集塵装置8が上述のように種々の移動手段に対して容易に搭載可能となる。この場合においても、施工現場にて、廃棄物が分離装置7により固体成分と液体成分とに分離可能であって、分離後の固体成分と液体成分とは上述のような周囲環境に大きな影響を及ぼさないような仕方で廃棄可能となる。さらに、施工現場で生じる粉体原料による粉塵が集塵装置8によって十分に集塵可能となるため、周囲環境に及ぼす影響がより低減化される。
【0051】
また、混練物生成ユニット1で生成される混練物は、アルミナセメント、ポルトランドセメントおよび石膏などの水硬性成分からなるセルフレベリング材を粉体原料に用いて得られるようなものであってもよい。特に、硬化の速いセメント系粉体原料を用いた場合には、混練物が早期に硬化するため、施工現場にて施工後速やかにミキサポンプ2内の洗浄を行わなければならない。このため、洗浄によって洗い落とされた混練物や洗浄水などを含んだ廃棄物が施工現場で生じるので、本実施形態に係る混練物生成ユニット1はこのような硬化の速いセメント系粉体原料、例えば、アルミナセメント、ポルトランドセメントおよび石膏などを含むセルフレベリング材を用いた場合には特に有効となる。また、セルフレベリング材は、戸建の施工物件などに多用されるため、1日に巡回する施工現場が多数となる場合が多く、このような点においても本実施形態に係る混練物生成ユニット1は、セルフレベリング材を用いた場合には特に有効となる。
【0052】
また、混練物生成ユニット1で生成される混練物は、セメント系の粉体原料によって得られるものであってもよいし、石膏系など、セメント系でない粉体原料によって得られるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る混練物生成ユニットの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るミキサポンプの断面構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係るミキサスクリューの全体構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係るミキサスクリューの羽根を説明するための平面図である。
【図5】本実施形態に係るミキサスクリューの羽根を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1…混練物生成ユニット、2…ミキサポンプ、2a…ホッパー、2b…混練装置、2c…リザーバ、2d…スネークポンプ、2e…移送パイプ、2f…操作盤、21…投入口、22…ホッパースクリュー、23,32,33…モータ、24,34…動力伝達ベルト、25…混練室、26…ミキサスクリュー、27…給水口、28…吐出部、29…拡開部、30…スターラースクリュー、31…移送スクリュー、3…クレーン、3a…クレーンアーム、3b…クレーンフック、4…フレコン、41,51,52…放出口、5…粉体原料供給装置、5a…粉体原料タンク、5b…スクリューコンベア、6…液体原料供給装置、6a…液体原料タンク、6b…移送パイプ、6c…液体原料供給ポンプ、6d…液体原料調整バルブ、6e…流量メータ、7…分離装置、8…集塵装置、8a…集塵機本体、8b…集塵ノズル、8c…吸引口、9…積算流量計、9a…移送パイプ、10…発電機、11…荷台、11a…運搬車両、53…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料と液体原料とを混練して混練物を生成するミキサ装置と、
少なくとも前記混練物の残材を固体成分と液体成分とに分離する分離装置と、
を備える、ことを特徴とする混練物生成ユニット。
【請求項2】
前記ミキサ装置と前記分離装置とを搭載する基台をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の混練物生成ユニット。
【請求項3】
前記粉体原料を前記ミキサ装置に供給する粉体原料供給装置と、
少なくとも前記粉体原料を含む粉塵を集塵する集塵装置と、
をさらに備え、
前記粉体原料供給装置と前記集塵装置とは共に前記基台に搭載されている、ことを特徴とする請求項2に記載の混練物生成ユニット。
【請求項4】
前記ミキサ装置は、軸部材の外周面に複数の羽根が形成されたものであって、該軸部材が所定方向に回転することにより、前記粉体原料と前記液体原料とを混練しながら前記軸部材の基端側から終端側に向けて前記混練物を移送する混練スクリューが設けられた混練装置を有し、
前記混練スクリューは、前記複数の羽根が、前記軸部材の前記終端側に向けて前記混練物を送る送り羽根と、前記軸部材の前記基端側に向けて前記混練物を戻す戻し羽根と、を含み、前記複数の羽根に占める前記戻し羽根の割合が少なくとも50%である、ことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の混練物生成ユニット。
【請求項5】
前記粉体原料が、アルミナセメント、ポルトランドセメントおよび石膏のうち少なくとも一成分を含む水硬性成分と、混和剤と、を含む水硬性組成物である、ことを特徴とする請求項1〜4に記載の混練物生成ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−110809(P2006−110809A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299262(P2004−299262)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジェットパック
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】