説明

混銑車における耐火物の残厚測定方法

【課題】混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を非常に簡単に測定することができる。
【解決手段】測定範囲X内の任意の箇所に第1穿孔15を形成する。第1穿孔15の軸線に対して±6°を超えない範囲で第1穿孔15から径方向に離れた別の箇所に第2穿孔16を形成する。第1穿孔15から径方向とは直行する方向に離れた別の箇所に第3穿孔17を形成する。第2穿孔16から径方向とは直行する方向に離れ且つ第3穿孔17の移動量に合わせた別の箇所に第4穿孔18を形成する。第1穿孔15〜第4穿孔18のそれぞれに棒部材10a〜10dを差し込む。第1棒部材10aと第2棒部材10bとに第1治具11aを設置する。第3棒部材10cと第4棒部材10dとに第2治具11bを設置する。第1治具11aと第2治具11bとを連結材12で結ぶ。連結材12から耐火物9までの距離を測定して、測定範囲X内の耐火物9の残厚を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を測定する混銑車における耐火物の残厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混銑車は、高炉から出銑した溶銑を転炉などの一次精錬処理等に搬送するのに用いられているのが一般的である。この混銑車の内部には、固体耐火物が施工されいて、混銑車を使用する度に固体耐火物の溶損が進むことになる。耐火物の溶損が進むと、漏銑などにつながることから内部に施工した耐火物は定期的に補修を行っている。
耐火物の補修等を行うにあたっては、耐火物を初期に施工してから耐火物の溶損がどれだけ進んでいるか、即ち、耐火物の残厚がどの程度であるかを知る必要があることから、混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を測定する方法が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、混銑車の鏡板耐火ライニング層のほぼ中央部に前記ライニング層構成単位煉瓦より露出面積比の大きい芯出煉瓦を設けている。その上で、この芯出煉瓦の中心点をミズ糸等で結んで基準線を構成し、この基準線を基に摩耗状況を計測している。
特許文献2では、中央に透孔を有する円板の一面に該円板の中心に対して任意の角をなして二つの伸縮可能な保持具を固設し、他面に円板中心を通る分度線に沿って測定尺保持部材を固設して、混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−103010号公報
【特許文献2】実開昭49−144251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、芯出煉瓦同士をミズ糸で結ぶことによって混銑車の中心(基準線)から溶損した耐火物の距離を求めることができるとしているが、この測定値から耐火物の残厚を求めるには、基準線からみた耐火物の初期プロフィールを考慮しなければならず、残厚の計算が非常に煩雑なものとなる。また、特許文献1では、基準線から耐火物までの距離が長く、しかも、混銑車の一端から他端まで非常に長い糸を張る方法である故、基準線の懸垂量が大きなものとなり測定誤差が大きくなり易い。同様に、引用文献2でも混銑車の中心を基準としているため、特許文献1と同様に残厚の計算が非常に大変で誤差が大きくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を非常に簡単に測定することができる混銑車における耐火物の残厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的手段は、径が徐々に小さくなる絞り部を有する混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を測定する方法であって、下記の(1)〜(8)の工程を行って前記絞り部に施工した耐火物の残厚を測定する点にある。
(1)絞り部の耐火物において残厚を測定する測定範囲を設定する。
(2)設定した測定範囲内の任意の箇所において、耐火物をボーリングして第1穿孔を形成する。
(3)形成された第1穿孔の軸線に対して±6°を超えない範囲で第1穿孔から径方向に離れた別の箇所でボーリングを行って第2穿孔を形成する。
(4)第1穿孔から径方向とは直行する方向に離れた別の箇所でボーリングを行って第3穿孔を形成すると共に、第2穿孔から径方向とは直行する方向に離れ且つ第3穿孔の移動量に合わせた別の箇所でボーリングを行って第4穿孔を形成する。
(5)第1穿孔〜第4穿孔のそれぞれに、耐火物の初期厚みを超える長さの棒部材を差し込んで各棒部材を設置する。
(6)第1穿孔に差し込んだ第1棒部材と第2穿孔に差し込んだ第2棒部材とに掛け渡すように耐火物の初期プロフィールを有する第1治具を設置すると共に、第3穿孔に差し込んだ第3棒部材と第4穿孔に差し込んだ第4棒部材とに掛け渡すように耐火物の初期プロフィールを有する第2治具を設置する。
(7)第1治具と第2治具とを連結材で結ぶ。
(8)連結材から耐火物までの距離を測定して、前記測定範囲内の耐火物の残厚を求める。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を非常に簡単に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】混銑車の全体図である。
【図2】混銑車の内部において耐火物の残厚を測定するために、棒部材、治具、連結材を設置した設置図である。
【図3】耐火物の残厚測定方法における工程を示した工程図である。
【図4】棒部材、治具、連結材を設置する手順を示した図である。
【図5】(a)棒部材を示したものであり、(b)治具を示したものであり、(c)治具の変形例を示したものである。
【図6】棒部材に治具を差し込んだ状態での拡大詳細図である。
【図7】(a)混銑車に施工した耐火物の展開図であり、(b)耐火物の溶損状態を示した図である。
【図8】第1穿孔と第2穿孔との位置関係を示した図である。
【図9】第1穿孔の軸線と第2穿孔の軸線とのなす角の範囲を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の混銑車における耐火物の残厚測定方法について説明する。
図1に示すように、混銑車1は、例えば、高炉から出銑した溶銑を転炉などの一次精錬処理場に搬送するものである。この混銑車1は、溶銑を一時的に貯留するための容器2と、この容器2を搬送するための搬送装置3とを備えている。なお、説明の便利上、混銑車1が進む方向を前後方向という。
【0011】
混銑車1の容器2は、前後両側が塞がった円筒状に構成されたもので、略一定の半径となる中央部5と、この中央部5から前後方向にいくにしたがって徐々(連続的)に半径が小さくなる絞り部6とを備えている。容器2の中央部5には開口部7が設けられ、開口部7を介して外部から内部に溶銑が装入されるようになっている。
中央部5及び絞り部6は、外側を構成する鉄皮8と、鉄皮8内側に施工された耐火物9とにより構成されている。言い換えれば、混銑車1の容器2は、鉄皮8と、鉄皮8の内側に施工した耐火物9により構成されている。搬送装置3は、線路(軌道)に沿って移動する台車により構成されている。
【0012】
このような混銑車1では、高炉にて製溶された溶銑を容器2内に受銑し、搬送装置3によって転炉工程に移動して、容器2内の溶銑を取鍋などに払い出しを行う。なお、溶銑を受銑してから溶銑を払い出す間に、混銑車1を用いて溶銑の予備処理(脱珪処理、脱硫処理、脱りん処理)を行っても良い。例えば、溶銑の脱りん処理を行うにあたっては、容器2の開口部7に、溶銑に気体酸素を吹くための吹付けランスを挿入すると共に、精錬剤等を溶銑に吹き込むための吹込みランスを挿入し、吹付けランスを用いて溶銑に向けて気体酸素を吹き込むと共に、溶銑に向けて吹込みランスを用いてCaOや固体酸素を含む精錬剤を吹き込むことによって処理を行う。
【0013】
混銑車1を繰り返し使用すると、内部に施工した耐火物9が溶損するため、混銑車1を所定回数使用した後は、溶損した耐火物9の修復や差し替えを行うのが一般的である。混銑車1内の耐火物9の修復や差し替えを行うには、容器2の温度を常温まで低下させ、容器2内(炉内ということがある)の付着物を除去した後に補修や差し替えを行う。特に、耐火物9の補修を行うにあたっては、耐火物9を施工してからどれだけ溶損が進んでいるかを知るために耐火物9の残厚を測定する必要がある。
【0014】
なお、混銑車1に施工した耐火物9は、ASC煉瓦、例えば、Al=72〜80質量%、SiC=4〜8質量%、C=14質量%である。混銑車1は、300tの溶銑を搬送するクラスのものである。
図2に示すように、本発明に係る混銑車における耐火物の残厚測定方法では、まず、混銑車1内の耐火物9にボーリングにより孔(穿孔)を複数箇所開け、穿孔に棒部材10を差し込む。そして、棒部材10に耐火物9の初期プロフィールを有する複数の治具11(第1治具11a、第2治具11b)をそれぞれ離れた箇所に取り付ける。離れた治具11をワイヤなどの連結材12で結び、連結材12と耐火物9との間の距離を測ることによって、耐火物9の残厚を測定することとしている。
【0015】
以下、混銑車における耐火物の残厚測定方法について詳しく説明する。
図3は、混銑車1における耐火物9の残厚方法の工程を示したものである。
図4は、治具等の設置工程を模式的に示したものである。
本発明では、図3、4及び下記に示すように、工程(1)〜(8)の工程を行って絞り部6に施工した耐火物9の残厚を測定することとしている。
【0016】
まず工程(1)では、絞り部6の耐火物9において残厚を測定する測定範囲Xを設定する(範囲設定工程)。
混銑車1の内部において、中央部5は半径が一定となっていることから、構造上、炉外から耐火物9の残厚を容易に測定することが可能である。一方、混銑車1の内部において、絞り部6は徐々に径が小さくなる部分であり、前後方向の断面を見たとき、鉄皮8や耐火物9の輪郭線は変化していることから、外部から耐火物9の残厚を測定することは難しい部分である。
【0017】
即ち、混銑車1において前後方向の輪郭線において輪郭線の変化に着目すると、その曲率半径が0より大きく変化している絞り部6のような部分は、耐火物9の残厚測定が外部からでは難しい。そのため、本発明では、絞り部6の耐火物9の残厚を測定するに際して、後述するような工程(2)〜工程(8)を行うこととしている。
図7(a)は、混銑車1内に施工した耐火物9の展開図を示したものである。
【0018】
図7(a)に示すように、長方形となっている部分DE1が、中央部5に施工した耐火物9を展開したものであり、扇形となっている部分DE2が絞り部6に施工した耐火物9の展開したものである。なお、図中の東西南北は方向を示したものであって、上述した前後方向は東西方向と同じであり、南北方向は前後方向に直行する方向である。
図7(b)は、混銑車1に施工した耐火物9の溶損箇所と溶損速度との関係を示したもので、溶損箇所は、図7(a)に示した記号A〜Hに対応している。記号A及び記号Bは絞り部6の底部に対応した箇所であり、記号C〜記号Fは絞り部6の上部(横芯上部ということがある)に対応した箇所であり、絞り部6の底部と上部との間であって下部側に対応した箇所(横芯下部ということがある)である。
【0019】
図7(b)に示すように、横芯下部の耐火物9は、底部や横芯上部の耐火物9よりも溶損速度が大きく他の部分に比べ比較的、溶損し易い箇所である。例えば、範囲設定工程では、横芯下部に対応する耐火物9の残厚を測定することに決定し、展開図に示す如く横芯下部の耐火物9の残厚が測定できるように、点線で囲まれた部分を測定範囲Xとする。
詳しくは、6迫目の耐火物列(最先端部の耐火物9から中央部5側へ6番目に位置する耐火物9の列)と、20迫目の耐火物列(最先端部の耐火物9から中央部5側へ20番目に位置する耐火物9の列)との間の耐火物9であって、横芯下部に対応する耐火物9がある範囲を測定範囲Xとする。この場合、展開図で測定範囲Xを見ると台形となる。なお、残厚の測定範囲Xの設定は、混銑車1の使用後において耐火物9の溶損状況を考慮し、横芯下部だけでなく底部や横芯上部の残厚を測定してもよい。言い換えれば、本発明の混銑車における耐火物の残厚測定方法は、底部や横芯上部の残厚測定にも適用可能である。
【0020】
以上述べた如く、残厚を測定する測定範囲Xを設定した後は、測定範囲X内において工程(2)を実施する。
工程(2)では、設定した測定範囲X内の任意の箇所において、耐火物9をボーリングして第1穿孔15を形成する。
図4(a)に示すように、工程(1)で設定した測定範囲Xの中で任意に孔を開ける箇所を選び、ボーリング器具(例えば、製品名:HILTIDDEC−1ドリル)を用いて耐火物9にボーリングを行い第1穿孔15を形成する。
【0021】
例えば、6迫目の耐火物列において当該耐火物列の任意の箇所に第1穿孔15を開ける。ここで、ボーリングの深さは、棒部材10を安定して差し込みができ、且つ、差し込んだ棒部材10及び治具11(第1治具11a)によって耐火物9の初期厚みが得られるように適宜設定される。即ち、第1穿孔15に棒部材10を差し込んで、後述する治具11(第1治具11a)を棒部材10に取り付けたときに、第1治具11aの下側(治具11の稜線部20)が耐火物9の初期プロファイルと一致するように、ボーリングの深さが設定される。とはいえ、鉄皮8に到達するまでボーリングをしたりすることは好ましくない。複数の耐火物9が重ね合わせて施工されている場合には、1つ下の耐火物9に到達するまでボーリングを行うと棒部材の安定を図れる。
【0022】
なお、ボーリングでの孔の大きさは、棒部材10を差し込んだときに安定して固定することができる大きさであればよく、例えば、外径と同じ大きさであることが好ましい。
次に工程(3)では、第1穿孔15の軸線に対して±6°を超えない範囲で第1穿孔15から径方向に離れた別の箇所でボーリングを行って第2穿孔16を形成する。
図8に示すように、第1穿孔15から径方向に離れた別の箇所に第2穿孔16を形成する場合、第1穿孔15の軸線(中心)と第2穿孔16の軸線(中心)とを結ぶ線と、第1穿孔15から周方向に垂直な垂直線とのなす角度θが±6°未満となるように、第2穿孔16を開ける。言い換えれば、第2穿孔16を開ける場合、当該第2穿孔16が第1穿孔15から前後方向に大きく離れないように、なす角度θの絶対値が6°以内となるようにしている。
【0023】
ここで、第1穿孔15と第2穿孔16とが大きく前後方向に離れてしまうと、治具11(第1治具11a)を使用して耐火物9の残厚を測定したときに大きな誤差が生じてしまうことになることから、上述したように第2穿孔16を形成するときは、第1穿孔15から前後方向に出来る限り離れないようにすることが必要である。
第1穿孔15を開けた部分の耐火物9の径方向におけるプロフィールを円形状として考え、当該円形が第1穿孔15の中心から前後方向に所定角度ずれて楕円状に変化したときを考える。即ち、円形の輪郭線の長さと楕円形の輪郭線の長さとの誤差を角度と関連付けて整理すると、図9に示すものとなる。図9に示すように、第1穿孔15からのずれ角度θが±6°であるときは誤差がない。そのことから、第1穿孔15の軸線に対して±6°を超えない範囲で第2穿孔16を形成することとしている。
【0024】
なお、後述するように治具11の稜線部の長さ(測定範囲Xにおける径方向の長さ)が、絞り部6の円周全体の1/6(角度で示すと60°)以上、円周全体の1/4(角度で示すと90°以下にしている。これにより、出来るだけ大きくて治具11が開口部7から出し入れ可能で且つオペレータによって扱い易いものとしている。
工程(4)では、第1穿孔15から径方向とは直行する方向(前後方向)に離れた別の箇所でボーリングを行って第3穿孔17を形成する。また、工程(4)では、第2穿孔16から径方向とは直行する方向(前後方向)に離れ且つ第3穿孔17の移動量に合わせた別の箇所でボーリングを行って第4穿孔18を形成する。
【0025】
具体的には、図4(b)に示すように、第1穿孔15から中央部5に向けて前後方向に所定距離離れた位置である20迫目の耐火物列上に第3穿孔17を開ける。また、第2穿孔16から中央部5に向けて前後方向に所定距離離れた位置である20迫目の耐火物列上に第4穿孔18を開ける。
即ち、工程(4)では、第1穿孔15から第3穿孔17までの前後方向の距離と、第2穿孔16から第4穿孔18までの前後方向の距離とが同じとなるように、第3穿孔17を開けると共に第4穿孔18も開ける。さらに言い換えれば、工程(4)では、第1穿孔15と第2穿孔16とを前後方向に平行移動させた箇所に、第3穿孔17及び第4穿孔18を設けることとしている。つまり、最初にボーリングした第1穿孔15と第2穿孔16とを結ぶ仮想線と、第3穿孔17と第4穿孔18とを結ぶ仮想線とが略平行となるように孔を開ける。
【0026】
なお、第3穿孔17及び第4穿孔を形成する場合であっても、工程(3)と同様に、第3穿孔17と第4穿孔18とのなす角θが6°以内となるようにすることが好ましい。
また、第1穿孔15〜第4穿孔18を形成するに際して、ボーリングを行う際は、出来る限り、穿孔後の軸線が鉄皮5と直角となるように真っ直ぐ孔を開けることが好ましい。
工程(5)にて、第1穿孔15〜第4穿孔18のそれぞれに、耐火物9の初期厚みを超える長さの棒部材10(10a〜10d)を差し込んで各棒部材10を設置する(図4(c))。
【0027】
図5(a)に示すように、各棒部材10は、板状の治具11を差し込んで固定するものである。各棒部材10は、例えば、丸棒とされて上端部から中途部に至る範囲に治具11を挟み込んで固定する固定部23(切り込み溝部)が形成されている。図6に示すように、棒部材10が耐火物9の初期厚みよりも短いと治具11を差し込むことができないため、当該棒部材10の長さLは、初期厚みを超える長さとされている。棒部材10は、例えば、JIS規格G3452に規定されているステンレス製であり、本実施形態では直径が20mm、長さが600mm、溝部の深さが300mmのものである。
【0028】
工程(6)では、第1穿孔15に差し込んだ第1棒部材10aと第2穿孔16に差し込んだ第2棒部材10bとに掛け渡すように耐火物9の初期プロフィールを有する第1治具11aを設置する(図4(d))。
図5(b)に示すように、第1治具11aは、第1棒部材10aと第2棒部材10bとを介して絞り部6内に設置したときに、耐火物9を初期施工したときの径方向に沿うプロフィール(初期プロフィール)を表すためのものである。詳しくは、第1治具11aは金属製の板材により形成され、その下縁部に稜線部20が設けられている。この稜線部20は、耐火物9を初期施工したときのプロフィール(初期プロフィール)と同じとなるように円弧状に形成されたもので、例えば、6迫目の耐火物列にて形成される初期プロフィールと同じ形状となっている。
【0029】
そのため、図2、4、6に示すように、第1治具11aの稜線部20側を第1棒部材10aに差し込むと共に、第2棒部材10bに差し込み、第1治具11aを第1棒部材10aと第2棒部材10bとで固定すると、第1治具11aの稜線部20が耐火物9を初期施工したときの径方向に沿うプロフィールと同じとなる。例えば、第1治具11aは、JIS規格SS400の鋼板で厚みが3mm、中心から95mmとなる円弧状の稜線部20を有するものとしてもよい。
【0030】
同様に、第3穿孔17に差し込んだ第3棒部材10cと第3穿孔17に差し込んだ第4棒部材10dとに掛け渡すように耐火物9の初期プロフィールを有する第2治具11bを設置する(図4(d))。
図5(b)に示すように、第2治具11bは、第3棒部材10cと第4棒部材10dとを介して絞り部6内に設置したときに、耐火物9を初期施工したときの径方向に沿うプロフィール(初期プロフィール)を表すためのものである。詳しくは、第2治具11bは金属製の板材により形成され、その縁部に稜線部20が設けられている。この稜線部20は、耐火物9を初期施工したときのプロフィール(初期プロフィール)と同じとなるように円弧状に形成されたもので、例えば、20迫目の耐火物列にて形成される初期プロフィールと同じ形状となっている。
【0031】
そのため、図2、4、6に示すように、第2治具11bの稜線部20側を第3棒部材10cに差し込むと共に第4棒部材10dに差し込み、第2治具11bを固定すると、第2治具11bの稜線部20が耐火物9を初期施工したときのプロフィールと同じとなる。例えば、第2治具11bは、JIS規格SS400の鋼板で、本実施形態の場合、厚みが3mm、中心から148mmとなる円弧状の稜線部20を有するものとしてもよい。第2治具11bの稜線部20の形状と第1治具11aの稜線部20の形状とは相似している。
【0032】
なお、第1治具11a及び第2治具11bは、初期プロフィールと同じとなる稜線部20を有するものであれば、どのような形であってもよく、図5(c)に示すような円弧状であっても扇形であってもよい。
その後、工程(7)に進み、第1治具11aと第2治具11bとを連結材12で結ぶ。
図5(b)に示すように、第1治具11aや第2治具11bの稜線部20(下端部)には、ワイヤなどを取り付ける取付部21が形成されている。この取付部21は、稜線部20に沿うように所定の間隔で開けられた取付孔により構成されている。
【0033】
詳しくは、第1治具11aの稜線部20において、当該稜線部20を円弧方向(周方向)に複数分割した位置にそれぞれ第1取付孔21a〜第5取付孔21eが形成され、第1取付孔21a〜第5取付孔21eに連結材12を通して連結材12の一方を取り付けることができるよになっている。同様に、第2治具11bの稜線部20において、当該稜線部20を円弧方向(周方向)に複数分割した位置に第1取付孔21a〜第5取付孔21eが形成され、第1取付孔21a〜第5取付孔21eに連結材12を通して連結材12の他方を取り付けることができるよになっている。
【0034】
工程(7)では、第1治具11aの第1取付孔21aに連結材12の一方を通して結び付け、第2治具11bの第1取付孔21aに連結材12の他方と通して結び付ける(図4(e))。
同様に、第1治具11aの第2取付孔21b〜第5取付孔21eに連結材12の一方を通して結び付けると共に、第2治具11bの第2取付孔21b〜第5取付孔21eに連結材12の他方を通して結び付ける(図4(e))。
【0035】
連結材12によって第1治具11aと第2治具11bとを結ぶときは、各連結材12が第1治具11aと第2治具11bとの間で交差しないように、それぞれ対応した各取付孔21a〜21eに連結材12を結び付ける。なお、取付部21は、連結材12を取り付けることができれば孔で形成されていなくてもよく、例えば、取付部21に引っ掛ける部分を設けて引っ掛け部分に連結材12を引っ掛けるようにしてもよいし、その他の方法によって連結材12を取付部21に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
また、第1治具11aと第2治具11bとの間をワイヤなどの連結材12にて結ぶ場合は、弛み(懸垂)が生じないように可能な範囲で引っ張るようにすることが必要である。例えば、連結材12を線径が0.5mmとなるワイヤとし、張力が10N、第1治具11aと第2治具11bとの間が4mである場合は、ワイヤの懸垂量は1.6mm程度であり、精度良く耐火物9の残厚を測定することができる。なお、ワイヤは形状、材質は限定されず、ステンレス製の直径が3mmであるものをものを用いても良いし、他の部材を用いてもよい。
【0037】
その後、工程(8)において、連結材12から耐火物9までの距離を測定して、測定範囲X内の耐火物9の残厚を求める。
図2に示すように、連結材12と耐火物9との間の距離をメジャー等の測定器25によって測定する。即ち、第1治具11aと第2治具11bとの間で結び付けた各連結材12の毎に、当該連結材12の任意の位置で当該連結材12と耐火物9との間を測定器25によって図る。そして、測定した距離を耐火物9の溶損した厚(溶損量)とし、溶損量から処理の厚みを引くことによって残厚を測定することができる。
【0038】
本発明によれば、工程(1)〜(8)を行うことによって、棒部材10、治具11(第1治具11a、第2治具11b)、連結材12とを用いて簡単に耐火物9の残厚を測定することができる。特に、初期プロフィールを有する第1治具11aと初期プロフィールを有する第2治具11bとを連結材12を結んでいるため、第1治具11aや第2治具11bから離れた場所でも連結材12自体が初期プロフィールを模したものとなる。
【0039】
そのため、連結材12と耐火物9との距離(測定値)から耐火物9の初期厚みを引くことによって簡単に残厚を計算することができる。しかも、測定の基準位置(連結材12)と溶損した耐火物9との距離が短いことから、精度良く残厚を測定することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。連結材12として棒材を用いても角材(角棒)を用いても良い。連結材12としてワイヤなどの線材を用いる場合は、少なくとも2N/m以上の張力で引っ張ることが好ましい。また、上述した実施形態では、絞り部6において、第1穿孔15と第2穿孔16とを結ぶ仮想線を平行移動して、平行移動した仮想線と一致する位置に第3穿孔17及び第4穿孔を開けることとしているが、仮想線を平行移動する箇所は少なくとも1カ所以上であればよく、仮想線を複数箇所に平行移動して、それぞれの箇所に第1穿孔15及び第2穿孔16と同じような孔を多数設けてもよい。この場合は、孔数に応じて棒部材10を用意すると共に治具11も複数し、工程(5)〜工程(7)を行えばよい。つまり、第1治具11aと第2治具11bとの間に、複数の棒材10と、その棒材10に差し込まれた他の治具11とを配置して、各治具11を連結材12で連結してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 混銑車
2 容器
3 搬送装置
5 中央部
6 絞り部
7 開口部
8 鉄皮
9 耐火物
10 棒部材
11 治具
11a 第1治具
11b 第2治具
12 連結材
15 第1穿孔
16 第2穿孔
17 第3穿孔
18 第4穿孔
20 稜線部
21 取付部
23 固定部
25 測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径が徐々に小さくなる絞り部を有する混銑車の内部に施工した耐火物の残厚を測定する方法であって、
下記の(1)〜(8)の工程を行って前記絞り部に施工した耐火物の残厚を測定することを特徴とする混銑車における耐火物の残厚測定方法。
(1)絞り部の耐火物において残厚を測定する測定範囲を設定する。
(2)設定した測定範囲内の任意の箇所において、耐火物をボーリングして第1穿孔を形成する。
(3)形成された第1穿孔の軸線に対して±6°を超えない範囲で第1穿孔から径方向に離れた別の箇所でボーリングを行って第2穿孔を形成する。
(4)第1穿孔から径方向とは直行する方向に離れた別の箇所でボーリングを行って第3穿孔を形成すると共に、第2穿孔から径方向とは直行する方向に離れ且つ第3穿孔の移動量に合わせた別の箇所でボーリングを行って第4穿孔を形成する。
(5)第1穿孔〜第4穿孔のそれぞれに、耐火物の初期厚みを超える長さの棒部材を差し込んで各棒部材を設置する。
(6)第1穿孔に差し込んだ第1棒部材と第2穿孔に差し込んだ第2棒部材とに掛け渡すように耐火物の初期プロフィールを有する第1治具を設置すると共に、第3穿孔に差し込んだ第3棒部材と第4穿孔に差し込んだ第4棒部材とに掛け渡すように耐火物の初期プロフィールを有する第2治具を設置する。
(7)第1治具と第2治具とを連結材で結ぶ。
(8)連結材から耐火物までの距離を測定して、前記測定範囲内の耐火物の残厚を求める。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−184448(P2012−184448A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46245(P2011−46245)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】