混銑車の運行方法
【課題】混銑車を転倒させることなく安定して溶銑の払い出しを確実に行うことができると共に、混銑車による溶銑の搬送及び生産性を向上させることができるようにする。
【解決手段】混銑車1の運行を行うに際して、溶銑の払出時に電動機5の電流値を測定し、測定した電流値が脱りん処理の中止とする中止基準値以上であるか否かを判断し、電流値が中止基準値未満であれば、高炉2にて溶銑を受銑した後、脱りん処理を行う。電流値が中止基準以上であれば、高炉2にて溶銑後、脱りん処理を行わず、容器12を傾動して付着物Sの溶解を行う。付着物Sの溶解後、溶銑の払出時に再び電動機5の電流値を測定し、電流値が脱りん処理の中止解除とする解除基準値以下であるか否かを判断する。電流値が解除基準値以下であれば、以降の運行で脱りん処理を行い、電流値が解除基準値を超えていれば、再び付着物Sの溶解を行う。
【解決手段】混銑車1の運行を行うに際して、溶銑の払出時に電動機5の電流値を測定し、測定した電流値が脱りん処理の中止とする中止基準値以上であるか否かを判断し、電流値が中止基準値未満であれば、高炉2にて溶銑を受銑した後、脱りん処理を行う。電流値が中止基準以上であれば、高炉2にて溶銑後、脱りん処理を行わず、容器12を傾動して付着物Sの溶解を行う。付着物Sの溶解後、溶銑の払出時に再び電動機5の電流値を測定し、電流値が脱りん処理の中止解除とする解除基準値以下であるか否かを判断する。電流値が解除基準値以下であれば、以降の運行で脱りん処理を行い、電流値が解除基準値を超えていれば、再び付着物Sの溶解を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑が装入される容器とこの容器を傾動させるための電動機とを備えた混銑車の運行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、混銑車(トピードカー)は、高炉から出銑した溶銑を容器で受銑して転炉などが設置された製鋼工場に運搬するために用いられている。混銑車を繰り返し使用すると、混銑車の容器内に付着した付着物が増加する。
多量の付着物が付着した状態で製鋼工場にて容器内の溶銑の払い出しを行うと、容器を払い出しのために傾動したときに付着物の影響によってバランスを崩し混銑車が転倒してしまう原因となる。そのため、付着物の影響による混銑車の転倒防止を行う様々な技術が考えられている。
【0003】
特許文献1では、 耐火物容器内の溶鉄を払出し耐火物容器内に付着したスラグと地金とを除去する方法において、予めコークスを容器底部のスラグと地金の混合物の上に装入し、上吹ランスから酸素を前記混合物に向けて吹き込むこととし、この処理によって、混銑車の容器の内部に付着した付着物を除去している。
特許文献2では、耐火物容器内の溶鉄を払出し耐火物容器内に付着したスラグと地金とを除去する方法において、予めコークスを容器底部のスラグと地金の混合物の上に装入し、上吹ランスから酸素を前記混合物に向けて吹き込み、かつインジェクションランスから酸素を耐火物容器内上部に付着しているスラグと地金の混合物に向けて吹き込むこととし、付着物の除去処理を遂行している。
【0004】
一方、混銑車の容器の内部に付着した付着物を除去する技術ではないが、特許文献3には、転炉において付着物を除去する技術が開示されている。
特許文献3では、上吹き用ランスを備えた酸素底吹き転炉の炉壁の付着地金を、炉体を垂直状態にして上吹き用ランスから酸素を供給して溶解すると共に、さらに転炉炉体を垂直状態から前後に傾動させて付着地金を除去することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2575076号公報
【特許文献2】特許第2575075号公報
【特許文献3】特開平04−052208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献3には、容器に付着した付着物を除去するという技術が開示されているものの、付着物の除去作業と混銑車の運行とをどのようにスケジューリングして行うかという混銑車の運行全体については詳細に述べられていない。そのため、これらの技術を用いたとしても、付着物の除去を行いながら混銑車の運行の効率を向上させることはできないのが実情である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、混銑車から安定して溶銑の払い出しを行うことができると共に、混銑車の稼働効率を向上させることができる混銑車の運行方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、溶銑を一時的に貯留するための容器と前記容器を傾動させるための電動機とを備えた混銑車の運行方法において、前記混銑車は、下記の(1)〜(10)の工程にて運行されることを特徴とする。
(1)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(2)混銑車内で脱りん処理を行う。
(3)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(4)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(5)測定した電流値が、脱りん処理の中止を判断するための「中止基準値」以上であるか否かを調べ、電流値が「中止基準値」未満であれば工程(1)へ戻り、電流値が「中止基準値」以上であれば「脱りん処理の中止指定」に設定して、工程(6)へ進む。
(6)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(7)工程(5)での「脱りん処理の中止指定」に基づき、脱りん処理を行わず、容器を傾動して付着物の溶解を行う。
(8)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(9)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(10)工程(9)で測定した電流値が「脱りん処理の中止指定」を解除するための「解除基準値」以下であるか否かを調べ、電流値が「解除基準値」以下であれば工程(1)へ戻り、電流値が「解除基準値」を超えていれば、工程(6)に戻る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混銑車から安定して溶銑の払い出しを行うことができると共に、混銑車の稼働効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】脱りん処理時での混銑車の全体断面図であって、(a)混銑車の正面断面図、(b)混銑車の側面断面図である。
【図2】混銑車の運行例を示す図である。
【図3】混銑車の運行の工程を示すフローチャートである。
【図4】混銑車の容器の傾動角度と電動機の電流値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図5】脱りん処理1回あたりにおける電動機の電流値の増減傾向を示した図である。
【図6】前払出時の電流値が32Aの場合における後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図7】前払出時の電流値が33Aの場合における後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図8】容器を傾動させて付着物を溶銑除去する状態を示す図である。
【図9】混銑車の容器の傾動角度と電動機の電流値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図10】脱りん処理の中止後において前払出時の電流値が30Aの場合の後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図11】脱りん処理の中止後において前払出時の電流値が29Aの場合の後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図12】実施例1において、受銑回数と電流値との関係に各処理をプロットした図である。
【図13】比較例1において、受銑回数と電流値との関係に各処理をプロットした図である。
【図14】比較例2において、受銑回数と電流値との関係に各処理をプロットした図である。
【図15】式(1)〜式(11)に示した各変数をまとめた図である。
【図16】傾動角度と電流値との関係に溶銑重量をプロットした計算図である。
【図17】混銑車に作用する傾動トルクを説明する図である。
【図18】混銑車に作用する傾動トルクが最大となる条件下で傾動角度と電流値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図19】転倒角度と転倒評価値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図20】図19の拡大図である。
【図21】電動機の電流値と傾動角度との関係に転倒領域を付加した図である。
【図22】図21の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、混銑車1は、一般的に、高炉2から出銑した溶銑を転炉などが設置された製鋼工場3に搬送するために用いられるものである。
この混銑車1は、溶銑を一時的に貯留するための容器12を備えている。この容器12は樽形であって、内径が一定の中央部12Aと、水平方向(長手方向)にいくにしたがって中央部(胴部)12Aから徐々に内径が小さくなる絞り部12Bとを備えたものであり、水平方向を向く回動軸4(傾動軸)回りに回動可能となっている。
【0012】
これら中央部12A及び絞り部12Bは、主に外側を構成する鉄皮12aと、この鉄皮12aの内側に施工された耐火物12bとから構成されている。中央部12Aには、溶銑を装入するための開口部9が形成されている。この開口部9は通常は上方を向いているが、傾動軸4回りに容器12を旋回し傾動させることで装入口9を側下方に向け、装入された溶銑を外部に払い出すことが可能となっている。
【0013】
混銑車1は、動力を発生する電動機5を備えていると共に、容器12及び電動機5等を搭載して軌道上(レール上)を移動する搬送装置6を備えている。電動機5は、搬送装置6の上部に架台13を介して固定されている。そして、絞り部12Bの両端部に設けられた傾動軸4は、減速機等を介して電動機5に連結され、電動機5の動力によって傾動軸4が回動し、容器12が傾動軸4回りに回動(傾動)するようになっている。
【0014】
図2に示すように、このような混銑車1では、まず、容器12内が空となっている状態で高炉2へ移動し、高炉2にて容器12内に溶銑を受銑した後、溶銑予備処理設備7に移動して容器12内の溶銑に対して脱硫処理や脱りん処理などの予備処理を行う。
その後、製鋼工場3に移動し、容器12を傾動軸4回りに傾動することによって予備処理後の溶銑を溶銑鍋8に払い出し、溶銑の払い出し後は、再び、溶銑を受銑するために高炉2へ移動する。
【0015】
このように高炉2〜製鋼工場3にて混銑車1を移動させる運行を繰り返すと、容器12内に付着する地金などの付着物Sが次第に増加する。容器12内の付着物Sの量が多大となった場合には、容器12を傾動して溶銑鍋8に払い出す際に、混銑車1がバランスを崩して転倒する虞がある。
そこで、本発明では、混銑車1が転倒する危険性が無く、混銑車1の運行をスムーズに行うことができるように、下記に示す工程(1)〜(10)によって混銑車1を運行することとしている。
【0016】
以下、本発明の運行方法を図3を用いて詳しく説明する。
図3に示すように、工程(1)では、高炉2から出銑した溶銑を受銑する。
詳しくは、まず、容器12内の耐火物12bを張り替えて修理が終了した混銑車1や後述するように容器12に付着した付着物Sの付着量が少ない混銑車1を、高炉2(高炉設備)に移動する。そして、高炉2から出銑した溶銑を、容器12に設けた開口部9を介して容器12内に装入する。混銑車1が受銑する溶銑は、高炉鋳床にて予め脱珪処理を行ったものであってもよく、脱珪処理を行っていない溶銑であってもよい。
【0017】
工程(2)では、混銑車1内で脱りん処理を行う。
詳しくは、工程(1)で行った溶銑の受銑が終了すると、混銑車1を溶銑予備処理設備7に移動させる。図1、図2に示すように、溶銑予備処理設備7にて、混銑車1の開口部9に気体酸素を溶銑に吹くための吹付けランス10を挿入すると共に、CaOや固体酸素(FeO、Fe2O3)を含む精錬剤を溶銑に吹き込むための吹込みランス11を挿入する。吹付けランス10を用いて溶銑に向けて気体酸素を吹き込むと共に、溶銑に向けて吹込みランス11を用いて吹き込むことによって溶銑の脱りん処理を行う。なお、この脱りん処理は、当業者の常法通りの方法である。
【0018】
このように、混銑車1の容器12内で脱りん処理を行うことによって、製鋼工場3の転炉にて精錬した際の副原料の減少やスラグ発生量を抑えることができ、歩留や製造コストも下げることができる。特に、りん濃度[P]が低い鋼種(低りん鋼)を製造する場合に
あっては、確実にりん濃度[P]を製品規格にすることができる。
工程(2)では、溶銑予備処理設備7において脱りん処理を行うこととしているが、溶銑予備処理設備7にて脱りん処理とは別に溶銑の脱硫処理を行うか否かを判断してもよい(工程(2)−1)。
【0019】
工程(2)−1では、溶銑予備処理設備7の段階で脱硫処理を行うことが必要な場合や製品仕様によって脱硫を行うことが必要な場合は、脱硫処理が必要と判断し(工程(2)−1、yes)とし、工程(2)−2に進み、混銑車1の容器12内で脱硫処理を行う。
なお、上述したように脱りん処理後に脱硫処理を行ってもよいが、脱りん処理と脱硫処理とを同時に行っても良いし、脱硫処理後に脱りん処理を行っても良い。また、脱硫処理は、混銑車1の容器12内で行うのに限定されず、例えば、混銑車1内の溶銑を溶銑鍋8に移し替えて、溶銑鍋8内で脱硫処理を行っても良い。脱りん処理に加えて脱硫処理を行うと、S偏析を防止することができ、製品の品質を向上させることができる。
【0020】
次ぎに、工程(3)では容器12を傾動して溶銑を溶銑鍋8に払い出す。
詳しくは、脱りん処理や脱硫処理の終了後、混銑車1を溶銑予備処理設備7から製鋼工場3に移動させる。そして、製鋼工場3において溶銑を払い出す払い出し場(払い出しステーション)にて、混銑車1の容器12を傾動して開口部9から溶銑を出して、払い出しステーションに設置した溶銑鍋8に溶銑を払い出す。
【0021】
すなわち、工程(1)〜工程(3)に示すように、混銑車1は、高炉2から出銑した溶銑を溶銑予備処理設備7を経て製鋼工場3に運搬するようになっているが、このような工程を繰り返し行うと容器12内に付着する付着物Sが次第に増加することになる。
例えば、脱りん処理ではフォーミングや溶銑のスプラッシュ等が発生しやすい状況下であるため付着物Sは容器12内の上部に付着し易い。混銑車1の容器12に多量の付着物Sが付着した状態で溶銑の払い出しを行うと、溶銑の払い出しの際に混銑車1の重心がずれたり、払い出す溶銑が付着物Sによって堰止められるという現象が発生する。
【0022】
特に、溶銑の払い出し時に混銑車1に過大なモーメントがかかり、転倒モーメントを超えてしまうような場合は、混銑車1がバランスを崩して転倒してしまうという虞もある。仮に混銑車1が転倒した場合は、軌道上に容器12内の溶銑が流れて漏銑し、漏銑の除去作業のために長時間の操業停止をしなければならない可能性がある。また、一度転倒してしまった混銑車1を元の位置に戻すことも大変であり、復旧するのに長時間かかってしまう。
【0023】
このように、溶銑の払い出し時に付着量の増加に伴う様々な問題が発生してしまうと操業を長時間に亘り、一時的に中止しなければならない。
そこで、一つ前の溶銑の払い出し時(前払出時)、即ち、前運行の終了時点で、続けて次運行を工程(1)〜工程(3)と同じように行っても、次運行の溶銑の払い出し時(後払出)に、問題なく溶銑の払い出しが問題なく行えるか否かを知ることができれば、上述した事態を回避することができる。なお、説明の便宜上、前運行時における溶銑の払い出を「前払出」といい、次運行時における溶銑の払出を「後払出」ということがある。
【0024】
具体的には、前払出時に予め電動機5の電流値を測定しておき、前払出時において電流値が大きい場合、付着物Sの付着量が増加していると判断し、次運行にて工程(1)〜工程(3)と同じように処理を行うと、次運行での払出が難しいと判断する。
従来の技術では、前払出時に電動機5の電流値を測定していたものの、電流値がどの値になれば上述した事態が発生するか否かの明確な指標がなかったため、電流値を測定することによって付着物Sの増加傾向を見るだけであった。そして、例えば、電流値によって付着物Sが増加傾向であると判断した場合には、以降の混銑車1の運行にて脱りん処理を全く行わず、出来るだけ付着物Sが増加しないような処理を行ったり、或いは、混銑車1を繰り返し使用ができるのにも関わらず、混銑車1の運行を停止して混銑車1を付着物Sを除去する修理工場へと移動させていた。
【0025】
一方、本発明では、溶銑の払い出を行う度に電流値を測定し、測定した電流値が基準値に達しているか否かによって運行を変更することとしている。
具体的には、まず、工程(4)にて、溶銑を溶銑鍋8に払い出した際(前払出時)の電
動機5の電流値を測定しする。
その後、工程(5)にて、測定した電流値が、脱りん処理の中止を判断するための「中止基準値」以上であるか否かを調べる。なお、中止基準値に達しているか否かを判断するための電流値(溶銑の払い出し際の電流値)とは、溶銑の払い出し際の最も大きかった電流値のことである。つまり、容器12を傾動させて溶銑の払い出しを開始してから終了するまでの一連の工程の中で、最も高かった電流値を工程(4)での電流値としている。
【0026】
工程(5)の中止基準値とは、仮に次の運行を行っても(高炉2等で溶銑を受銑して脱りん処理を行っても)、次の運行で溶銑の払い出しが行えるか否かのしきい値となるものであって、過去の操業実績等から求められるものである。
以下、中止基準値について詳しく説明する。
図4は混銑車1の容器12の傾動角度と電動機5の電流値との関係に混銑車1の重量を関連付け(プロット)したものである。図4に示す曲線Lで囲まれる範囲は、混銑車1の転倒の虞がある領域(転倒領域)であって、容器12を傾動したときに混銑車1がバランスを崩してしまう領域である。図4に示すように、安全率を鑑みた上で電動機5の電流値が35A以下であれば、容器12の傾動角度が如何様な値をとっても混銑車1は転倒することがない。
【0027】
図5は、1回の運行(高炉2にて溶銑を受銑→脱りん処理等→製鋼工場3での溶銑の払い出し)を行った場合での電流値の増減傾向を示したものである。縦軸は、全数を1.0として、全数に対する頻度(比率)を表したものである。
詳しくは、図5は、製鋼工場3にて溶銑を一度払い出した後、混銑車1を高炉2に移動し、高炉2にて混銑車1の容器12に溶銑を受銑し、受銑した溶銑に対して溶銑予備処理設備7にて脱りん処理を行い、脱りん処理を行った後に溶銑を製鋼工場3にて払い出しを行ったときの払い出し前後の電流値の差をまとめたものである。図5に示すように、1回の運行において、払い出し時の電流値の差(電流最大増加量ΔA)は3Aである。
【0028】
したがって、混銑車1は転倒しない電動機5の電流値(非転倒電流)は35A以下であるから、図6に示すように、前払出時の電流値が非転倒電流値(35A)から電流最大増加量(3A)を引いた32A以下であれば、次運行にて脱りん処理を行っても混銑車1が転倒することはない。一方で、図7に示すように、前払出時の電流値が32Aよりも大きい33Aであれば、後払出時に混銑車1が転倒する可能性がある。即ち、工程(5)の中止基準値は33Aである。
【0029】
そして、工程(5)でNo,すなわち工程(5)において電流値が中止基準値(33A)未満であれば、次運行でも脱りん処理が行えると判断して、工程(1)へ戻り、工程(1)〜工程(3)の処理を続ける。
工程(5)でYes,すなわち電流値が中止基準値(33A)以上であれば、次運行では脱りん処理を行うと混銑車1が転倒してしまう虞があると判断し、「脱りん処理の中止指定」に設定して、工程(1)〜工程(3)とは別の処理を行うために、次の工程(6)へ進む。
【0030】
工程(6)では、混銑車1を高炉2に移動し、空になった容器12内に高炉2から出銑した溶銑を受銑する。工程(6)は、上述した工程(1)と同じである。なお、工程(1)でも工程(6)であっても、一度、溶銑を受銑したことがある場合には、容器12内に残留したスラグ(脱りんスラグ、脱硫スラグなど)を排滓棟などにて排滓した後に、混銑車1を高炉2に移動させていもよい。
【0031】
そして、工程(6)が終了すると、工程(7)では、「脱りん処理の中止指定」に基づき、脱りん処理を行わず、容器12を傾動して付着物Sの溶解を行う。
具体的には、工程(7)では、混銑車1の容器12内、特に、容器12の上部(スラグライン)に付着した付着物Sを溶解除去させるために、図8に示すように、混銑車1(容器12)を傾動させることによって上部に付着した付着物Sを溶銑に浸漬させ、付着物Sを溶銑に溶解する。ここで、付着物Sを減少させるために付着物Sを浸漬させた状態で60分程度傾動を保持することが好ましい。付着物Sの浸漬時間を長くすればするほど付着物Sの減少が期待できるが、余りにも浸漬時間を長くすると、溶銑に浮くスラグ(高炉2
スラグなど)が固まってしまう虞があるため、浸漬時間は120分未満が望ましい。工程(7)における容器12の傾動は、屋外で行っても良いが、容器12を傾動させた際に粉塵やキャッシュグラファイトが舞い上がる可能性があるため、集塵装置を備えた屋内で行うことが望ましい。
【0032】
なお、付着物Sを除去するために、混銑車1を修理に出して付着物Sを除去する手段もあるが、この場合は、計画していた寿命よりも早く混銑車1を修理に出すことになるため、操業効率の低下や耐火物のコストアップにつながるため好ましくない。
この工程(7)では、付着物Sの溶解除去を行っているが、溶解除去後に脱硫処理を行うか否かを判断し(工程(7)−1)、脱硫処理を行う場合は、混銑車1を溶銑予備処理設備7に移動し、脱硫処理を行っても良い(工程(7)−2)。
【0033】
脱硫処理にて発生する脱硫スラグの量は、脱りん処理に発生する脱りんスラグの量に比べて少なく、加えて、脱硫処理後の溶銑温度は脱りん処理後の溶銑温度よりも高いことがあり、脱硫スラグが容器12内に固着することがほとんど無い。それ故、脱硫処理を経たとしても、溶銑の払い出し時に混銑車1が転倒してしまうといった状況が生じる可能性はほとんど無い。つまり、工程(7)を経た後は、図9の如く、溶銑重量が少なくても多くても払い出し時の電流値が35A以下となるため、脱硫処理によって混銑車1が転倒することはない。なお、工程(7)−2における脱硫処理の方法は、工程(2)−2で示した方法と同じであるため、説明を省略する。
【0034】
次ぎに、工程(8)では、容器12を傾動して溶銑を溶銑鍋8に払い出す。工程(8)における溶銑の払い出の方法は、工程(3)と同じであるため、詳細な説明を省略する。
工程(9)では、工程(4)と同様に、溶銑を溶銑鍋8に払い出した時の電動機5の電流値(払い出し時の最大の電流値)を測定する。
次ぎに、工程(10)では、工程(9)で測定した電流値が「脱りん処理の中止指定」を解除可能な「解除基準値」以下であるか否かを調べ、電流値が解除基準値以下であれば工程(1)へ戻り、電流値が解除基準値を超えていれば、工程(6)に戻る。
【0035】
例えば、図10に示すように、工程(9)において払出時での電流値が30Aであったとし、仮に次運行にて脱りん処理を行った場合、払い出し時の電流値が中止基準値(33A)を超えてしまう可能性がある。一方、図11に示すように、工程(9)において払出時での電流値が29Aであったとし、仮に次運行にて脱りん処理を行った場合、払い出し時の電流値は中止基準(33A)を超える可能性が無いから、脱りん処理を連続的に行えるよう解除基準値は29Aとしている。
【0036】
なお、解除基準値を30A〜32Aとした場合、溶銑の払出時に電流値が35Aを超えないため、混銑車1が転倒することはなく問題とはならない。しかしながら、解除基準値を30A〜32Aとしてしまうと、脱りん処理の実施後に行う溶銑の払出時において電流値が32Aを超え、再びすぐに脱りん処理の中止となる可能性ある。つまり、脱りん処理の解除後に脱りん処理を1回しか実施できないことがある。そのため、脱りん処理を一旦中止した後は、少なくとも2回以上連続的に脱りん処理を行った方が、混銑車1の運行も複雑にならないことから、解除基準値は連続的に脱りん処理が行うことができる値とすることが好ましい。
【0037】
工程(10)において電流値が解除基準値(29A)超であれば、次運行にて脱りん処理は行えないため、工程(6)に戻り、再び、溶銑を受銑した後、工程(7)にて容器12を傾動して付着物Sの溶解除去を行う。工程(6)〜工程(10)に示すように、払出時の電流値が29A以下になるまで、付着物Sの溶解除去を繰り返し行う。
一方で、工程(10)において電流値が解除基準値(29A)以下になっていれば、工程(1)に戻り、溶銑を受銑した後、脱りん処理などを行って溶銑を製鋼工場3に搬送する。
【0038】
なお、図3に示すように、工程(6)から工程(10)までの処理において、「脱りん処理の中止指定」後、工程(6)にて溶銑を受銑した後、容器を傾動して付着物の溶解をする工程(7)を必ず行うとしているが、この工程(7)は毎回する必要はなく、工程(10)にて払出時の電流値が解除基準値(29A)以下となる間に、数回、工程(7)を
行うこととしてもよい。例えば、工程(6)にて溶銑を10回受銑したうち、工程(7)を半分である5回行ってもよいし、工程(7)を9回行っても良い。即ち、払出時の電流値が解除基準値(29A)以下なるまでの間に、少なくとも1回以上工程(7)を行えばよい。
【0039】
また、上述した工程では、溶銑の払出後に高炉2に移動して溶銑を受銑することとしているが、溶銑の払出後において混銑車1の修理が必要になると、混銑車1を高炉2には移動させず、工程(10)の次ぎに工程(11)に移り、修理工場等に移動させる。混銑車1を修理に出すタイミングは特に限定されないが、予め混銑車1の予定運行回数(予定使用回数)を定めておき、混銑車1が予定運行回数に達したときに混銑車1の修理を行っても良いし、容器12内に施工した耐火物12bの残厚を測定して残厚が所定以下となったときに混銑車1の修理を行っても良いし、耐火物12bの溶損速度等から混銑車1の寿命(使用出来る長さ)を求め、混銑車1が寿命となったときに修理に出してもよい。混銑車1の修理では、例えば、容器12内に施工した耐火物12bの張り替え等を行う。
【0040】
表1は、混銑車1の運行を行った実施条件をまとめたものである。当然の如く、表1は一例であるため、実施条件は表1に示したものに限定されない。
【0041】
【表1】
【0042】
混銑車1の容器12内に施工した耐火物12bは、ASC煉瓦を使用した。混銑車1に受銑した溶銑量(溶銑重量)は150〜350tonとした。容器12を傾動する電動機5(傾動用電動機5)、電流を測定するための電流計は表1に示すものを使用した。脱りん処理では、生石灰や酸化鉄を含む精錬剤、酸素ガス(気体酸素)を使用した。脱硫処理では、脱硫剤(CaO系の脱硫剤、CaC2系、Mg系の脱硫剤、Alを混合させた脱硫剤など)として様々なものを用いているが特に限定されない。溶銑を払い出す際の温度は、1250℃以上とした。溶銑温度が低くなると容器12内の溶銑が凝固し、容器12を傾動する際に電流値が高くなる可能性があり混銑車1の転倒の虞があるため、上述したように、払い出す際の温度は、溶銑の凝固が発生しない1250℃以上とした。
【0043】
図12は、表1に示す実施条件を基に、工程(1)〜工程(10)までを繰り返し行った実施例をまとめたものである。
図12に示すように、実施例では、受銑回数(運行回数)が50回の時点で、払出時の電流値が中止基準値を超えたが、51回の次運行にて脱りん処理を一時的に中止し、付着物Sの溶解除去を行うと共に脱硫処理を行ったので、運行回数が55回のときに払出時の電流値を解除基準値(29A)以下にすることができた。そして、56回以降の運行では脱りん処理を運行終了の85回まで続けて行うことができた。
【0044】
一方、図13の比較例1では、実施例と同様に運行回数が50回の時点で払出時の電流値が中止基準値を超えた後、本発明のような工程(6)〜工程(10)を行わなかったために、51回以降の運行では全く脱りん処理を行うことができなかった。
また、図14の比較例2では、払出時の電流値が中止基準値を超えた後、脱りん処理を中止し、途中の段階で混銑車1を修理に出したので、混銑車1を運行終了の85回まで使用することができなかった。
【0045】
以上のように、本発明に示したように、工程(1)〜工程(10)までを繰り返し行うことによって、混銑車から安定して溶銑の払い出しを行うことができると共に、混銑車の運行効率を向上させることができる。
[混銑車の転倒を防ぐための電流値について]
ところで、上述した実施形態においては、払出時の電流値が35A以下であると混銑車1が転倒しないことを前提に話を進めてきた。
【0046】
この非転倒電流=35A、ならびに中止基準値=33A、解除基準値=29Aは、本願発明者らが鋭意研究の末、知見した事項であり、以下、その知見事項に関して述べることにする。
まず、図17に示す如く、容器12を傾動したときの傾転軸(傾動軸)に加わる傾動軸トルクをTrとし、傾転軸(傾動角度)をθとする。このとき、傾動軸トルクTrと傾動角度θの関係は式(1)となる。変数は図15に示す通りである。式(1)の変数は、例えば、W2=140ton、l2=0.08m、D=0.85m、μ=0.3である。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、容器12を傾動すると、傾動に伴い溶銑は動くため、l1=0とすると、式(1)は式(2)となる。
【0049】
【数2】
【0050】
一方、電動機5と容器12との間に減速機があるとし、電動機5の軸にかかるトルクをTm、減速機の機械効率をη(η=0.75)、減速比をε(ε=1150rpm/0.15rpm)とすると、電動機5のトルクTmと、トルクTrとの関係は、式(3)となる。なお、電動機5の回転数は1150rpm、傾動回転数は0.15rpmとした。
【0051】
【数3】
【0052】
また、電動機5の全負荷トルクをTaとすると、式(4)となる。電動機5の出力は、15kw(定格30A)を用いた。PIMは電動機5の出力、Nは電動機5の回転数である。
【0053】
【数4】
【0054】
さて、機械などが一定時間になす仕事量を動力P(W)とすると、トルクT(N・m)を受けながら角速度ω(rad/sec)で回転している軸の場合、1秒間(1sec間)の仕事量P(動力)は、P=T×ωとなる。つまり、動力P(W)と、トルクTと、角速度ωとの関係は、式(5a)となる。1kgf=9.807Nのため、式(5a)は式(5b)となり、式(5c)にまとめられる。
【0055】
【数5】
【0056】
ここで、容器12を傾動させたときの電流値は、式(6)に示すことができ、上述した各式を用いると、電流値は式(7)に示すことができる。式(7)に基づいて傾動角度と電流値と関係に溶銑重量を関連付けすると、これら傾動角度、電流値、溶銑重量との関係は図16となる。
図16に示すように、傾動角度が増加するにつれて、払出時の電流値が増加することが分かる。
【0057】
さて、容器12を傾動したときの傾動トルクが最大になる場合を考えると、図17に示すように、内部の溶銑が塊り、傾動による移動が無いと考えたときの場合であり、傾動トルクWl×l1×sinθとなる。ここで、式(1)により傾動トルクTrを求めると、式(8)となる。式(8)に示す傾動トルクTrは、容器12を傾動させたときに内部の溶銑が固まったこととし、傾動による溶銑の重心移動がないと考えたときのもの、つまり、最大傾動トルクを示したものである。
【0058】
【数6】
【0059】
溶銑重量W1と傾動軸から溶銑の重心までの距離l1との関係を求めると、表2に示すものとなる。
【0060】
【表2】
【0061】
表2を用いて、電流値についてまとめると、式(9)となる。式(9)に基づいて傾動角度と電流値と関係に溶銑重量を関連付け(プロット)すると、傾動トルクが最大になったときの傾動角度、電流値、溶銑重量との関係は図18となる。
【0062】
【数7】
【0063】
転倒モーメントをMt、転倒と逆周りの安定モーメントをMsとすると、転倒モーメントMt及び安定モーメントMsの一般式は式(10)、式(11)となる。ここで、容器12を傾動したときは、溶銑の重心が動くため、l1=0とすると、式(10)、式(11)は、式(10a)、式(11b)となる。
変数の具体的な数値は、例えば、W3=10ton、W4=15ton、l3=0.984mである。
【0064】
【数8】
【0065】
ここで、転倒評価値F=Mt−Msとすると、F>0の場合は、転倒モーメントMtが安定モーメントMsを超えるため混銑車1は転倒する。一方、F<0の場合は、安定モーメントMsが転倒モーメントMtよりも大きいため、混銑車1は転倒しない。
さて、容器12の傾動角度と、転倒中心から混銑車1の中心までの距離lとの関係は、表3に示すことができる。
【0066】
【表3】
【0067】
表3は、容器12の傾動角度が変化すると、容器12を搭載した搬送装置6(台車)が傾き、混銑車1の重心が外側にずれ、その結果、転倒中心から混銑車1の中心までの距離(転倒中心距離)lが変化することから、シュミュレーション等により求めたものである。なお、上述した各式の変数(W1、W2、W3、W4、l1、l2、l3、l、D、μ等)は、混銑車の大きさによって変わることから、上述した数値に限定されない。
【0068】
式(10a)、式(11a)及び表3に基づいて、転倒角度と転倒評価値との関係に溶銑重量を関連付けすると、図19に示すものとなる。図19に示したように、転倒評価値F>0となる領域では、混銑車1は転倒してしまうことになる。例えば、図20に示すように、図19を拡大してみると、溶銑重量が42ton以上となる場合には、F>0となるため混銑車1が転倒する可能性があり、溶銑重量が42ton未満となる場合には、F<0であるため混銑車1の転倒が発生しない。
【0069】
このように、各転倒角度において転倒可能性がある場合(F<0)と、転倒可能性が無い場合(F>0)にケース分けができたため、転倒評価値Fを電流値に置き換え、傾動角度と電流値との関係に転倒領域を示すと、図21のようになる。
図21に示すように、容器12を傾動したときにおいて、電流値と傾動角度との関係が転倒領域にあるときは、混銑車1は転倒してしまうことになる。図21及び図22に示すように,傾動時における電流値が35A以下であるときは、傾動角度がどのような角度であっても、転倒領域に入ることが無いため、混銑車1の転倒を確実に防止することができる。
【0070】
以上、まとめると、工程(4)及び工程(5)に示すように、混銑車1内の溶銑を溶銑鍋8等に払い出す際の電流値から脱りん処理を中止にする判断をすることができる。脱りん処理を行ったときの電流値の増加は、最大で3Aであるため、前払出時の電流値が32A以下の場合は、次運行時に脱りん処理を実施したとしても、後払出時の電流値は35A以下となるため、混銑車1が転倒することはない。一方で、前払出時の電流値が33A以上の場合は、次運行での脱りん処理を中止するため、この場合であっても、後払出時に混銑車1が転倒することもない。
【0071】
脱硫処理は、脱りん処理と比較して、スラグ発生量が少なく、酸素を吹き付ける等を実施しないため、混銑車1の上部への付着はほとんど無く、脱硫処理後は温度が高いなどなどの影響もあり、脱りんスラグが溶銑表面で固着することによって電流値を上昇させてしまうようなことはない。つまり、脱硫処理を実施しても電流値が転倒する危険値を超える(35Aを超える)ことは無いため、電流値が33Aとなって脱りん処理を中止した次運行において、工程(7−1)や工程(7−2)に示すように脱硫処理を行ってもよい。
【0072】
加えて、高炉2から受銑した溶銑を脱りん処理、脱硫処理を実施しないで、溶銑鍋8に払い出す際も、電流値が上昇することは無いため、脱りん処理、脱硫処理を実施しない溶銑を溶銑鍋8に排出してもよい。
工程(7)に示すように、脱りん処理を中止にした混銑車1は、溶銑が浸漬するように容器12を傾転する工程を追加していることから、容器12内に付着した付着物Sの付着量を減少させることができる。その結果、以降の運行において、再び脱りん処理を行うことができる。
【0073】
工程(10)では、解除基準値を29A以下としているため、脱りん処理の実施後に行う溶銑の払出時において、電流値が32Aを超えることは無い。このため、脱りん処理の中止の解除後、継続して脱りん処理を実施することができ、生産性を向上させることができる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0074】
1 混銑車
2 高炉
3 製鋼工場
4 傾動軸
5 電動機
6 搬送装置
7 溶銑予備処理設備
8 溶銑鍋
9 開口部
10 吹付けランス
11 吹込みランス
12 容器
13 架台(傾動架台)
S 付着物
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑が装入される容器とこの容器を傾動させるための電動機とを備えた混銑車の運行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、混銑車(トピードカー)は、高炉から出銑した溶銑を容器で受銑して転炉などが設置された製鋼工場に運搬するために用いられている。混銑車を繰り返し使用すると、混銑車の容器内に付着した付着物が増加する。
多量の付着物が付着した状態で製鋼工場にて容器内の溶銑の払い出しを行うと、容器を払い出しのために傾動したときに付着物の影響によってバランスを崩し混銑車が転倒してしまう原因となる。そのため、付着物の影響による混銑車の転倒防止を行う様々な技術が考えられている。
【0003】
特許文献1では、 耐火物容器内の溶鉄を払出し耐火物容器内に付着したスラグと地金とを除去する方法において、予めコークスを容器底部のスラグと地金の混合物の上に装入し、上吹ランスから酸素を前記混合物に向けて吹き込むこととし、この処理によって、混銑車の容器の内部に付着した付着物を除去している。
特許文献2では、耐火物容器内の溶鉄を払出し耐火物容器内に付着したスラグと地金とを除去する方法において、予めコークスを容器底部のスラグと地金の混合物の上に装入し、上吹ランスから酸素を前記混合物に向けて吹き込み、かつインジェクションランスから酸素を耐火物容器内上部に付着しているスラグと地金の混合物に向けて吹き込むこととし、付着物の除去処理を遂行している。
【0004】
一方、混銑車の容器の内部に付着した付着物を除去する技術ではないが、特許文献3には、転炉において付着物を除去する技術が開示されている。
特許文献3では、上吹き用ランスを備えた酸素底吹き転炉の炉壁の付着地金を、炉体を垂直状態にして上吹き用ランスから酸素を供給して溶解すると共に、さらに転炉炉体を垂直状態から前後に傾動させて付着地金を除去することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2575076号公報
【特許文献2】特許第2575075号公報
【特許文献3】特開平04−052208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献3には、容器に付着した付着物を除去するという技術が開示されているものの、付着物の除去作業と混銑車の運行とをどのようにスケジューリングして行うかという混銑車の運行全体については詳細に述べられていない。そのため、これらの技術を用いたとしても、付着物の除去を行いながら混銑車の運行の効率を向上させることはできないのが実情である。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、混銑車から安定して溶銑の払い出しを行うことができると共に、混銑車の稼働効率を向上させることができる混銑車の運行方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、溶銑を一時的に貯留するための容器と前記容器を傾動させるための電動機とを備えた混銑車の運行方法において、前記混銑車は、下記の(1)〜(10)の工程にて運行されることを特徴とする。
(1)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(2)混銑車内で脱りん処理を行う。
(3)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(4)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(5)測定した電流値が、脱りん処理の中止を判断するための「中止基準値」以上であるか否かを調べ、電流値が「中止基準値」未満であれば工程(1)へ戻り、電流値が「中止基準値」以上であれば「脱りん処理の中止指定」に設定して、工程(6)へ進む。
(6)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(7)工程(5)での「脱りん処理の中止指定」に基づき、脱りん処理を行わず、容器を傾動して付着物の溶解を行う。
(8)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(9)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(10)工程(9)で測定した電流値が「脱りん処理の中止指定」を解除するための「解除基準値」以下であるか否かを調べ、電流値が「解除基準値」以下であれば工程(1)へ戻り、電流値が「解除基準値」を超えていれば、工程(6)に戻る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混銑車から安定して溶銑の払い出しを行うことができると共に、混銑車の稼働効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】脱りん処理時での混銑車の全体断面図であって、(a)混銑車の正面断面図、(b)混銑車の側面断面図である。
【図2】混銑車の運行例を示す図である。
【図3】混銑車の運行の工程を示すフローチャートである。
【図4】混銑車の容器の傾動角度と電動機の電流値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図5】脱りん処理1回あたりにおける電動機の電流値の増減傾向を示した図である。
【図6】前払出時の電流値が32Aの場合における後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図7】前払出時の電流値が33Aの場合における後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図8】容器を傾動させて付着物を溶銑除去する状態を示す図である。
【図9】混銑車の容器の傾動角度と電動機の電流値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図10】脱りん処理の中止後において前払出時の電流値が30Aの場合の後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図11】脱りん処理の中止後において前払出時の電流値が29Aの場合の後払出時の電流値の見込み分布図である。
【図12】実施例1において、受銑回数と電流値との関係に各処理をプロットした図である。
【図13】比較例1において、受銑回数と電流値との関係に各処理をプロットした図である。
【図14】比較例2において、受銑回数と電流値との関係に各処理をプロットした図である。
【図15】式(1)〜式(11)に示した各変数をまとめた図である。
【図16】傾動角度と電流値との関係に溶銑重量をプロットした計算図である。
【図17】混銑車に作用する傾動トルクを説明する図である。
【図18】混銑車に作用する傾動トルクが最大となる条件下で傾動角度と電流値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図19】転倒角度と転倒評価値との関係を混銑車の重量をパラメータとして示した図である。
【図20】図19の拡大図である。
【図21】電動機の電流値と傾動角度との関係に転倒領域を付加した図である。
【図22】図21の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、混銑車1は、一般的に、高炉2から出銑した溶銑を転炉などが設置された製鋼工場3に搬送するために用いられるものである。
この混銑車1は、溶銑を一時的に貯留するための容器12を備えている。この容器12は樽形であって、内径が一定の中央部12Aと、水平方向(長手方向)にいくにしたがって中央部(胴部)12Aから徐々に内径が小さくなる絞り部12Bとを備えたものであり、水平方向を向く回動軸4(傾動軸)回りに回動可能となっている。
【0012】
これら中央部12A及び絞り部12Bは、主に外側を構成する鉄皮12aと、この鉄皮12aの内側に施工された耐火物12bとから構成されている。中央部12Aには、溶銑を装入するための開口部9が形成されている。この開口部9は通常は上方を向いているが、傾動軸4回りに容器12を旋回し傾動させることで装入口9を側下方に向け、装入された溶銑を外部に払い出すことが可能となっている。
【0013】
混銑車1は、動力を発生する電動機5を備えていると共に、容器12及び電動機5等を搭載して軌道上(レール上)を移動する搬送装置6を備えている。電動機5は、搬送装置6の上部に架台13を介して固定されている。そして、絞り部12Bの両端部に設けられた傾動軸4は、減速機等を介して電動機5に連結され、電動機5の動力によって傾動軸4が回動し、容器12が傾動軸4回りに回動(傾動)するようになっている。
【0014】
図2に示すように、このような混銑車1では、まず、容器12内が空となっている状態で高炉2へ移動し、高炉2にて容器12内に溶銑を受銑した後、溶銑予備処理設備7に移動して容器12内の溶銑に対して脱硫処理や脱りん処理などの予備処理を行う。
その後、製鋼工場3に移動し、容器12を傾動軸4回りに傾動することによって予備処理後の溶銑を溶銑鍋8に払い出し、溶銑の払い出し後は、再び、溶銑を受銑するために高炉2へ移動する。
【0015】
このように高炉2〜製鋼工場3にて混銑車1を移動させる運行を繰り返すと、容器12内に付着する地金などの付着物Sが次第に増加する。容器12内の付着物Sの量が多大となった場合には、容器12を傾動して溶銑鍋8に払い出す際に、混銑車1がバランスを崩して転倒する虞がある。
そこで、本発明では、混銑車1が転倒する危険性が無く、混銑車1の運行をスムーズに行うことができるように、下記に示す工程(1)〜(10)によって混銑車1を運行することとしている。
【0016】
以下、本発明の運行方法を図3を用いて詳しく説明する。
図3に示すように、工程(1)では、高炉2から出銑した溶銑を受銑する。
詳しくは、まず、容器12内の耐火物12bを張り替えて修理が終了した混銑車1や後述するように容器12に付着した付着物Sの付着量が少ない混銑車1を、高炉2(高炉設備)に移動する。そして、高炉2から出銑した溶銑を、容器12に設けた開口部9を介して容器12内に装入する。混銑車1が受銑する溶銑は、高炉鋳床にて予め脱珪処理を行ったものであってもよく、脱珪処理を行っていない溶銑であってもよい。
【0017】
工程(2)では、混銑車1内で脱りん処理を行う。
詳しくは、工程(1)で行った溶銑の受銑が終了すると、混銑車1を溶銑予備処理設備7に移動させる。図1、図2に示すように、溶銑予備処理設備7にて、混銑車1の開口部9に気体酸素を溶銑に吹くための吹付けランス10を挿入すると共に、CaOや固体酸素(FeO、Fe2O3)を含む精錬剤を溶銑に吹き込むための吹込みランス11を挿入する。吹付けランス10を用いて溶銑に向けて気体酸素を吹き込むと共に、溶銑に向けて吹込みランス11を用いて吹き込むことによって溶銑の脱りん処理を行う。なお、この脱りん処理は、当業者の常法通りの方法である。
【0018】
このように、混銑車1の容器12内で脱りん処理を行うことによって、製鋼工場3の転炉にて精錬した際の副原料の減少やスラグ発生量を抑えることができ、歩留や製造コストも下げることができる。特に、りん濃度[P]が低い鋼種(低りん鋼)を製造する場合に
あっては、確実にりん濃度[P]を製品規格にすることができる。
工程(2)では、溶銑予備処理設備7において脱りん処理を行うこととしているが、溶銑予備処理設備7にて脱りん処理とは別に溶銑の脱硫処理を行うか否かを判断してもよい(工程(2)−1)。
【0019】
工程(2)−1では、溶銑予備処理設備7の段階で脱硫処理を行うことが必要な場合や製品仕様によって脱硫を行うことが必要な場合は、脱硫処理が必要と判断し(工程(2)−1、yes)とし、工程(2)−2に進み、混銑車1の容器12内で脱硫処理を行う。
なお、上述したように脱りん処理後に脱硫処理を行ってもよいが、脱りん処理と脱硫処理とを同時に行っても良いし、脱硫処理後に脱りん処理を行っても良い。また、脱硫処理は、混銑車1の容器12内で行うのに限定されず、例えば、混銑車1内の溶銑を溶銑鍋8に移し替えて、溶銑鍋8内で脱硫処理を行っても良い。脱りん処理に加えて脱硫処理を行うと、S偏析を防止することができ、製品の品質を向上させることができる。
【0020】
次ぎに、工程(3)では容器12を傾動して溶銑を溶銑鍋8に払い出す。
詳しくは、脱りん処理や脱硫処理の終了後、混銑車1を溶銑予備処理設備7から製鋼工場3に移動させる。そして、製鋼工場3において溶銑を払い出す払い出し場(払い出しステーション)にて、混銑車1の容器12を傾動して開口部9から溶銑を出して、払い出しステーションに設置した溶銑鍋8に溶銑を払い出す。
【0021】
すなわち、工程(1)〜工程(3)に示すように、混銑車1は、高炉2から出銑した溶銑を溶銑予備処理設備7を経て製鋼工場3に運搬するようになっているが、このような工程を繰り返し行うと容器12内に付着する付着物Sが次第に増加することになる。
例えば、脱りん処理ではフォーミングや溶銑のスプラッシュ等が発生しやすい状況下であるため付着物Sは容器12内の上部に付着し易い。混銑車1の容器12に多量の付着物Sが付着した状態で溶銑の払い出しを行うと、溶銑の払い出しの際に混銑車1の重心がずれたり、払い出す溶銑が付着物Sによって堰止められるという現象が発生する。
【0022】
特に、溶銑の払い出し時に混銑車1に過大なモーメントがかかり、転倒モーメントを超えてしまうような場合は、混銑車1がバランスを崩して転倒してしまうという虞もある。仮に混銑車1が転倒した場合は、軌道上に容器12内の溶銑が流れて漏銑し、漏銑の除去作業のために長時間の操業停止をしなければならない可能性がある。また、一度転倒してしまった混銑車1を元の位置に戻すことも大変であり、復旧するのに長時間かかってしまう。
【0023】
このように、溶銑の払い出し時に付着量の増加に伴う様々な問題が発生してしまうと操業を長時間に亘り、一時的に中止しなければならない。
そこで、一つ前の溶銑の払い出し時(前払出時)、即ち、前運行の終了時点で、続けて次運行を工程(1)〜工程(3)と同じように行っても、次運行の溶銑の払い出し時(後払出)に、問題なく溶銑の払い出しが問題なく行えるか否かを知ることができれば、上述した事態を回避することができる。なお、説明の便宜上、前運行時における溶銑の払い出を「前払出」といい、次運行時における溶銑の払出を「後払出」ということがある。
【0024】
具体的には、前払出時に予め電動機5の電流値を測定しておき、前払出時において電流値が大きい場合、付着物Sの付着量が増加していると判断し、次運行にて工程(1)〜工程(3)と同じように処理を行うと、次運行での払出が難しいと判断する。
従来の技術では、前払出時に電動機5の電流値を測定していたものの、電流値がどの値になれば上述した事態が発生するか否かの明確な指標がなかったため、電流値を測定することによって付着物Sの増加傾向を見るだけであった。そして、例えば、電流値によって付着物Sが増加傾向であると判断した場合には、以降の混銑車1の運行にて脱りん処理を全く行わず、出来るだけ付着物Sが増加しないような処理を行ったり、或いは、混銑車1を繰り返し使用ができるのにも関わらず、混銑車1の運行を停止して混銑車1を付着物Sを除去する修理工場へと移動させていた。
【0025】
一方、本発明では、溶銑の払い出を行う度に電流値を測定し、測定した電流値が基準値に達しているか否かによって運行を変更することとしている。
具体的には、まず、工程(4)にて、溶銑を溶銑鍋8に払い出した際(前払出時)の電
動機5の電流値を測定しする。
その後、工程(5)にて、測定した電流値が、脱りん処理の中止を判断するための「中止基準値」以上であるか否かを調べる。なお、中止基準値に達しているか否かを判断するための電流値(溶銑の払い出し際の電流値)とは、溶銑の払い出し際の最も大きかった電流値のことである。つまり、容器12を傾動させて溶銑の払い出しを開始してから終了するまでの一連の工程の中で、最も高かった電流値を工程(4)での電流値としている。
【0026】
工程(5)の中止基準値とは、仮に次の運行を行っても(高炉2等で溶銑を受銑して脱りん処理を行っても)、次の運行で溶銑の払い出しが行えるか否かのしきい値となるものであって、過去の操業実績等から求められるものである。
以下、中止基準値について詳しく説明する。
図4は混銑車1の容器12の傾動角度と電動機5の電流値との関係に混銑車1の重量を関連付け(プロット)したものである。図4に示す曲線Lで囲まれる範囲は、混銑車1の転倒の虞がある領域(転倒領域)であって、容器12を傾動したときに混銑車1がバランスを崩してしまう領域である。図4に示すように、安全率を鑑みた上で電動機5の電流値が35A以下であれば、容器12の傾動角度が如何様な値をとっても混銑車1は転倒することがない。
【0027】
図5は、1回の運行(高炉2にて溶銑を受銑→脱りん処理等→製鋼工場3での溶銑の払い出し)を行った場合での電流値の増減傾向を示したものである。縦軸は、全数を1.0として、全数に対する頻度(比率)を表したものである。
詳しくは、図5は、製鋼工場3にて溶銑を一度払い出した後、混銑車1を高炉2に移動し、高炉2にて混銑車1の容器12に溶銑を受銑し、受銑した溶銑に対して溶銑予備処理設備7にて脱りん処理を行い、脱りん処理を行った後に溶銑を製鋼工場3にて払い出しを行ったときの払い出し前後の電流値の差をまとめたものである。図5に示すように、1回の運行において、払い出し時の電流値の差(電流最大増加量ΔA)は3Aである。
【0028】
したがって、混銑車1は転倒しない電動機5の電流値(非転倒電流)は35A以下であるから、図6に示すように、前払出時の電流値が非転倒電流値(35A)から電流最大増加量(3A)を引いた32A以下であれば、次運行にて脱りん処理を行っても混銑車1が転倒することはない。一方で、図7に示すように、前払出時の電流値が32Aよりも大きい33Aであれば、後払出時に混銑車1が転倒する可能性がある。即ち、工程(5)の中止基準値は33Aである。
【0029】
そして、工程(5)でNo,すなわち工程(5)において電流値が中止基準値(33A)未満であれば、次運行でも脱りん処理が行えると判断して、工程(1)へ戻り、工程(1)〜工程(3)の処理を続ける。
工程(5)でYes,すなわち電流値が中止基準値(33A)以上であれば、次運行では脱りん処理を行うと混銑車1が転倒してしまう虞があると判断し、「脱りん処理の中止指定」に設定して、工程(1)〜工程(3)とは別の処理を行うために、次の工程(6)へ進む。
【0030】
工程(6)では、混銑車1を高炉2に移動し、空になった容器12内に高炉2から出銑した溶銑を受銑する。工程(6)は、上述した工程(1)と同じである。なお、工程(1)でも工程(6)であっても、一度、溶銑を受銑したことがある場合には、容器12内に残留したスラグ(脱りんスラグ、脱硫スラグなど)を排滓棟などにて排滓した後に、混銑車1を高炉2に移動させていもよい。
【0031】
そして、工程(6)が終了すると、工程(7)では、「脱りん処理の中止指定」に基づき、脱りん処理を行わず、容器12を傾動して付着物Sの溶解を行う。
具体的には、工程(7)では、混銑車1の容器12内、特に、容器12の上部(スラグライン)に付着した付着物Sを溶解除去させるために、図8に示すように、混銑車1(容器12)を傾動させることによって上部に付着した付着物Sを溶銑に浸漬させ、付着物Sを溶銑に溶解する。ここで、付着物Sを減少させるために付着物Sを浸漬させた状態で60分程度傾動を保持することが好ましい。付着物Sの浸漬時間を長くすればするほど付着物Sの減少が期待できるが、余りにも浸漬時間を長くすると、溶銑に浮くスラグ(高炉2
スラグなど)が固まってしまう虞があるため、浸漬時間は120分未満が望ましい。工程(7)における容器12の傾動は、屋外で行っても良いが、容器12を傾動させた際に粉塵やキャッシュグラファイトが舞い上がる可能性があるため、集塵装置を備えた屋内で行うことが望ましい。
【0032】
なお、付着物Sを除去するために、混銑車1を修理に出して付着物Sを除去する手段もあるが、この場合は、計画していた寿命よりも早く混銑車1を修理に出すことになるため、操業効率の低下や耐火物のコストアップにつながるため好ましくない。
この工程(7)では、付着物Sの溶解除去を行っているが、溶解除去後に脱硫処理を行うか否かを判断し(工程(7)−1)、脱硫処理を行う場合は、混銑車1を溶銑予備処理設備7に移動し、脱硫処理を行っても良い(工程(7)−2)。
【0033】
脱硫処理にて発生する脱硫スラグの量は、脱りん処理に発生する脱りんスラグの量に比べて少なく、加えて、脱硫処理後の溶銑温度は脱りん処理後の溶銑温度よりも高いことがあり、脱硫スラグが容器12内に固着することがほとんど無い。それ故、脱硫処理を経たとしても、溶銑の払い出し時に混銑車1が転倒してしまうといった状況が生じる可能性はほとんど無い。つまり、工程(7)を経た後は、図9の如く、溶銑重量が少なくても多くても払い出し時の電流値が35A以下となるため、脱硫処理によって混銑車1が転倒することはない。なお、工程(7)−2における脱硫処理の方法は、工程(2)−2で示した方法と同じであるため、説明を省略する。
【0034】
次ぎに、工程(8)では、容器12を傾動して溶銑を溶銑鍋8に払い出す。工程(8)における溶銑の払い出の方法は、工程(3)と同じであるため、詳細な説明を省略する。
工程(9)では、工程(4)と同様に、溶銑を溶銑鍋8に払い出した時の電動機5の電流値(払い出し時の最大の電流値)を測定する。
次ぎに、工程(10)では、工程(9)で測定した電流値が「脱りん処理の中止指定」を解除可能な「解除基準値」以下であるか否かを調べ、電流値が解除基準値以下であれば工程(1)へ戻り、電流値が解除基準値を超えていれば、工程(6)に戻る。
【0035】
例えば、図10に示すように、工程(9)において払出時での電流値が30Aであったとし、仮に次運行にて脱りん処理を行った場合、払い出し時の電流値が中止基準値(33A)を超えてしまう可能性がある。一方、図11に示すように、工程(9)において払出時での電流値が29Aであったとし、仮に次運行にて脱りん処理を行った場合、払い出し時の電流値は中止基準(33A)を超える可能性が無いから、脱りん処理を連続的に行えるよう解除基準値は29Aとしている。
【0036】
なお、解除基準値を30A〜32Aとした場合、溶銑の払出時に電流値が35Aを超えないため、混銑車1が転倒することはなく問題とはならない。しかしながら、解除基準値を30A〜32Aとしてしまうと、脱りん処理の実施後に行う溶銑の払出時において電流値が32Aを超え、再びすぐに脱りん処理の中止となる可能性ある。つまり、脱りん処理の解除後に脱りん処理を1回しか実施できないことがある。そのため、脱りん処理を一旦中止した後は、少なくとも2回以上連続的に脱りん処理を行った方が、混銑車1の運行も複雑にならないことから、解除基準値は連続的に脱りん処理が行うことができる値とすることが好ましい。
【0037】
工程(10)において電流値が解除基準値(29A)超であれば、次運行にて脱りん処理は行えないため、工程(6)に戻り、再び、溶銑を受銑した後、工程(7)にて容器12を傾動して付着物Sの溶解除去を行う。工程(6)〜工程(10)に示すように、払出時の電流値が29A以下になるまで、付着物Sの溶解除去を繰り返し行う。
一方で、工程(10)において電流値が解除基準値(29A)以下になっていれば、工程(1)に戻り、溶銑を受銑した後、脱りん処理などを行って溶銑を製鋼工場3に搬送する。
【0038】
なお、図3に示すように、工程(6)から工程(10)までの処理において、「脱りん処理の中止指定」後、工程(6)にて溶銑を受銑した後、容器を傾動して付着物の溶解をする工程(7)を必ず行うとしているが、この工程(7)は毎回する必要はなく、工程(10)にて払出時の電流値が解除基準値(29A)以下となる間に、数回、工程(7)を
行うこととしてもよい。例えば、工程(6)にて溶銑を10回受銑したうち、工程(7)を半分である5回行ってもよいし、工程(7)を9回行っても良い。即ち、払出時の電流値が解除基準値(29A)以下なるまでの間に、少なくとも1回以上工程(7)を行えばよい。
【0039】
また、上述した工程では、溶銑の払出後に高炉2に移動して溶銑を受銑することとしているが、溶銑の払出後において混銑車1の修理が必要になると、混銑車1を高炉2には移動させず、工程(10)の次ぎに工程(11)に移り、修理工場等に移動させる。混銑車1を修理に出すタイミングは特に限定されないが、予め混銑車1の予定運行回数(予定使用回数)を定めておき、混銑車1が予定運行回数に達したときに混銑車1の修理を行っても良いし、容器12内に施工した耐火物12bの残厚を測定して残厚が所定以下となったときに混銑車1の修理を行っても良いし、耐火物12bの溶損速度等から混銑車1の寿命(使用出来る長さ)を求め、混銑車1が寿命となったときに修理に出してもよい。混銑車1の修理では、例えば、容器12内に施工した耐火物12bの張り替え等を行う。
【0040】
表1は、混銑車1の運行を行った実施条件をまとめたものである。当然の如く、表1は一例であるため、実施条件は表1に示したものに限定されない。
【0041】
【表1】
【0042】
混銑車1の容器12内に施工した耐火物12bは、ASC煉瓦を使用した。混銑車1に受銑した溶銑量(溶銑重量)は150〜350tonとした。容器12を傾動する電動機5(傾動用電動機5)、電流を測定するための電流計は表1に示すものを使用した。脱りん処理では、生石灰や酸化鉄を含む精錬剤、酸素ガス(気体酸素)を使用した。脱硫処理では、脱硫剤(CaO系の脱硫剤、CaC2系、Mg系の脱硫剤、Alを混合させた脱硫剤など)として様々なものを用いているが特に限定されない。溶銑を払い出す際の温度は、1250℃以上とした。溶銑温度が低くなると容器12内の溶銑が凝固し、容器12を傾動する際に電流値が高くなる可能性があり混銑車1の転倒の虞があるため、上述したように、払い出す際の温度は、溶銑の凝固が発生しない1250℃以上とした。
【0043】
図12は、表1に示す実施条件を基に、工程(1)〜工程(10)までを繰り返し行った実施例をまとめたものである。
図12に示すように、実施例では、受銑回数(運行回数)が50回の時点で、払出時の電流値が中止基準値を超えたが、51回の次運行にて脱りん処理を一時的に中止し、付着物Sの溶解除去を行うと共に脱硫処理を行ったので、運行回数が55回のときに払出時の電流値を解除基準値(29A)以下にすることができた。そして、56回以降の運行では脱りん処理を運行終了の85回まで続けて行うことができた。
【0044】
一方、図13の比較例1では、実施例と同様に運行回数が50回の時点で払出時の電流値が中止基準値を超えた後、本発明のような工程(6)〜工程(10)を行わなかったために、51回以降の運行では全く脱りん処理を行うことができなかった。
また、図14の比較例2では、払出時の電流値が中止基準値を超えた後、脱りん処理を中止し、途中の段階で混銑車1を修理に出したので、混銑車1を運行終了の85回まで使用することができなかった。
【0045】
以上のように、本発明に示したように、工程(1)〜工程(10)までを繰り返し行うことによって、混銑車から安定して溶銑の払い出しを行うことができると共に、混銑車の運行効率を向上させることができる。
[混銑車の転倒を防ぐための電流値について]
ところで、上述した実施形態においては、払出時の電流値が35A以下であると混銑車1が転倒しないことを前提に話を進めてきた。
【0046】
この非転倒電流=35A、ならびに中止基準値=33A、解除基準値=29Aは、本願発明者らが鋭意研究の末、知見した事項であり、以下、その知見事項に関して述べることにする。
まず、図17に示す如く、容器12を傾動したときの傾転軸(傾動軸)に加わる傾動軸トルクをTrとし、傾転軸(傾動角度)をθとする。このとき、傾動軸トルクTrと傾動角度θの関係は式(1)となる。変数は図15に示す通りである。式(1)の変数は、例えば、W2=140ton、l2=0.08m、D=0.85m、μ=0.3である。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、容器12を傾動すると、傾動に伴い溶銑は動くため、l1=0とすると、式(1)は式(2)となる。
【0049】
【数2】
【0050】
一方、電動機5と容器12との間に減速機があるとし、電動機5の軸にかかるトルクをTm、減速機の機械効率をη(η=0.75)、減速比をε(ε=1150rpm/0.15rpm)とすると、電動機5のトルクTmと、トルクTrとの関係は、式(3)となる。なお、電動機5の回転数は1150rpm、傾動回転数は0.15rpmとした。
【0051】
【数3】
【0052】
また、電動機5の全負荷トルクをTaとすると、式(4)となる。電動機5の出力は、15kw(定格30A)を用いた。PIMは電動機5の出力、Nは電動機5の回転数である。
【0053】
【数4】
【0054】
さて、機械などが一定時間になす仕事量を動力P(W)とすると、トルクT(N・m)を受けながら角速度ω(rad/sec)で回転している軸の場合、1秒間(1sec間)の仕事量P(動力)は、P=T×ωとなる。つまり、動力P(W)と、トルクTと、角速度ωとの関係は、式(5a)となる。1kgf=9.807Nのため、式(5a)は式(5b)となり、式(5c)にまとめられる。
【0055】
【数5】
【0056】
ここで、容器12を傾動させたときの電流値は、式(6)に示すことができ、上述した各式を用いると、電流値は式(7)に示すことができる。式(7)に基づいて傾動角度と電流値と関係に溶銑重量を関連付けすると、これら傾動角度、電流値、溶銑重量との関係は図16となる。
図16に示すように、傾動角度が増加するにつれて、払出時の電流値が増加することが分かる。
【0057】
さて、容器12を傾動したときの傾動トルクが最大になる場合を考えると、図17に示すように、内部の溶銑が塊り、傾動による移動が無いと考えたときの場合であり、傾動トルクWl×l1×sinθとなる。ここで、式(1)により傾動トルクTrを求めると、式(8)となる。式(8)に示す傾動トルクTrは、容器12を傾動させたときに内部の溶銑が固まったこととし、傾動による溶銑の重心移動がないと考えたときのもの、つまり、最大傾動トルクを示したものである。
【0058】
【数6】
【0059】
溶銑重量W1と傾動軸から溶銑の重心までの距離l1との関係を求めると、表2に示すものとなる。
【0060】
【表2】
【0061】
表2を用いて、電流値についてまとめると、式(9)となる。式(9)に基づいて傾動角度と電流値と関係に溶銑重量を関連付け(プロット)すると、傾動トルクが最大になったときの傾動角度、電流値、溶銑重量との関係は図18となる。
【0062】
【数7】
【0063】
転倒モーメントをMt、転倒と逆周りの安定モーメントをMsとすると、転倒モーメントMt及び安定モーメントMsの一般式は式(10)、式(11)となる。ここで、容器12を傾動したときは、溶銑の重心が動くため、l1=0とすると、式(10)、式(11)は、式(10a)、式(11b)となる。
変数の具体的な数値は、例えば、W3=10ton、W4=15ton、l3=0.984mである。
【0064】
【数8】
【0065】
ここで、転倒評価値F=Mt−Msとすると、F>0の場合は、転倒モーメントMtが安定モーメントMsを超えるため混銑車1は転倒する。一方、F<0の場合は、安定モーメントMsが転倒モーメントMtよりも大きいため、混銑車1は転倒しない。
さて、容器12の傾動角度と、転倒中心から混銑車1の中心までの距離lとの関係は、表3に示すことができる。
【0066】
【表3】
【0067】
表3は、容器12の傾動角度が変化すると、容器12を搭載した搬送装置6(台車)が傾き、混銑車1の重心が外側にずれ、その結果、転倒中心から混銑車1の中心までの距離(転倒中心距離)lが変化することから、シュミュレーション等により求めたものである。なお、上述した各式の変数(W1、W2、W3、W4、l1、l2、l3、l、D、μ等)は、混銑車の大きさによって変わることから、上述した数値に限定されない。
【0068】
式(10a)、式(11a)及び表3に基づいて、転倒角度と転倒評価値との関係に溶銑重量を関連付けすると、図19に示すものとなる。図19に示したように、転倒評価値F>0となる領域では、混銑車1は転倒してしまうことになる。例えば、図20に示すように、図19を拡大してみると、溶銑重量が42ton以上となる場合には、F>0となるため混銑車1が転倒する可能性があり、溶銑重量が42ton未満となる場合には、F<0であるため混銑車1の転倒が発生しない。
【0069】
このように、各転倒角度において転倒可能性がある場合(F<0)と、転倒可能性が無い場合(F>0)にケース分けができたため、転倒評価値Fを電流値に置き換え、傾動角度と電流値との関係に転倒領域を示すと、図21のようになる。
図21に示すように、容器12を傾動したときにおいて、電流値と傾動角度との関係が転倒領域にあるときは、混銑車1は転倒してしまうことになる。図21及び図22に示すように,傾動時における電流値が35A以下であるときは、傾動角度がどのような角度であっても、転倒領域に入ることが無いため、混銑車1の転倒を確実に防止することができる。
【0070】
以上、まとめると、工程(4)及び工程(5)に示すように、混銑車1内の溶銑を溶銑鍋8等に払い出す際の電流値から脱りん処理を中止にする判断をすることができる。脱りん処理を行ったときの電流値の増加は、最大で3Aであるため、前払出時の電流値が32A以下の場合は、次運行時に脱りん処理を実施したとしても、後払出時の電流値は35A以下となるため、混銑車1が転倒することはない。一方で、前払出時の電流値が33A以上の場合は、次運行での脱りん処理を中止するため、この場合であっても、後払出時に混銑車1が転倒することもない。
【0071】
脱硫処理は、脱りん処理と比較して、スラグ発生量が少なく、酸素を吹き付ける等を実施しないため、混銑車1の上部への付着はほとんど無く、脱硫処理後は温度が高いなどなどの影響もあり、脱りんスラグが溶銑表面で固着することによって電流値を上昇させてしまうようなことはない。つまり、脱硫処理を実施しても電流値が転倒する危険値を超える(35Aを超える)ことは無いため、電流値が33Aとなって脱りん処理を中止した次運行において、工程(7−1)や工程(7−2)に示すように脱硫処理を行ってもよい。
【0072】
加えて、高炉2から受銑した溶銑を脱りん処理、脱硫処理を実施しないで、溶銑鍋8に払い出す際も、電流値が上昇することは無いため、脱りん処理、脱硫処理を実施しない溶銑を溶銑鍋8に排出してもよい。
工程(7)に示すように、脱りん処理を中止にした混銑車1は、溶銑が浸漬するように容器12を傾転する工程を追加していることから、容器12内に付着した付着物Sの付着量を減少させることができる。その結果、以降の運行において、再び脱りん処理を行うことができる。
【0073】
工程(10)では、解除基準値を29A以下としているため、脱りん処理の実施後に行う溶銑の払出時において、電流値が32Aを超えることは無い。このため、脱りん処理の中止の解除後、継続して脱りん処理を実施することができ、生産性を向上させることができる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0074】
1 混銑車
2 高炉
3 製鋼工場
4 傾動軸
5 電動機
6 搬送装置
7 溶銑予備処理設備
8 溶銑鍋
9 開口部
10 吹付けランス
11 吹込みランス
12 容器
13 架台(傾動架台)
S 付着物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶銑を一時的に貯留するための容器と前記容器を傾動させるための電動機とを備えた混銑車の運行方法において、
前記混銑車は、下記の(1)〜(10)の工程にて運行されることを特徴とする混銑車の運行方法。
(1)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(2)混銑車内で脱りん処理を行う。
(3)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(4)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(5)測定した電流値が、脱りん処理の中止を判断するための「中止基準値」以上であるか否かを調べ、電流値が「中止基準値」未満であれば工程(1)へ戻り、電流値が「中止基準値」以上であれば「脱りん処理の中止指定」に設定して、工程(6)へ進む。
(6)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(7)工程(5)での「脱りん処理の中止指定」に基づき、脱りん処理を行わず、容器を傾動して付着物の溶解を行う。
(8)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(9)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(10)工程(9)で測定した電流値が「脱りん処理の中止指定」を解除するための「解除基準値」以下であるか否かを調べ、電流値が「解除基準値」以下であれば工程(1)へ戻り、電流値が「解除基準値」を超えていれば、工程(6)に戻る。
【請求項1】
溶銑を一時的に貯留するための容器と前記容器を傾動させるための電動機とを備えた混銑車の運行方法において、
前記混銑車は、下記の(1)〜(10)の工程にて運行されることを特徴とする混銑車の運行方法。
(1)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(2)混銑車内で脱りん処理を行う。
(3)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(4)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(5)測定した電流値が、脱りん処理の中止を判断するための「中止基準値」以上であるか否かを調べ、電流値が「中止基準値」未満であれば工程(1)へ戻り、電流値が「中止基準値」以上であれば「脱りん処理の中止指定」に設定して、工程(6)へ進む。
(6)高炉から出銑した溶銑を受銑する。
(7)工程(5)での「脱りん処理の中止指定」に基づき、脱りん処理を行わず、容器を傾動して付着物の溶解を行う。
(8)容器を傾動して溶銑を溶銑鍋に払い出す。
(9)溶銑を溶銑鍋に払い出した時の電動機の電流値を測定する。
(10)工程(9)で測定した電流値が「脱りん処理の中止指定」を解除するための「解除基準値」以下であるか否かを調べ、電流値が「解除基準値」以下であれば工程(1)へ戻り、電流値が「解除基準値」を超えていれば、工程(6)に戻る。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−201888(P2012−201888A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64348(P2011−64348)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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