説明

清涼化合物

製品へ清涼効果を与える方法であって、式I


式中、mは、0〜2の数であり、X、YおよびZは、H、ハロゲン、OH、Me、Et、
MeOおよびEtOからなる群より独立して選択され、R、RおよびRは、ともに
少なくとも6個の炭素原子を含み、以下のように選択される、
(a)(i)Rは、H、Me、Et、イソプロピルおよびC〜Cの分枝鎖アルキル
からなる群より選択される、ならびに
(ii)RおよびRは、Me、Et、イソプロピルおよびCの分枝鎖アルキルから
なる群より独立して選択される、または
(b)いずれか2つまたは全てのR、RおよびRは、一緒になって最大10個の炭
素原子を有する単環式、二環式または三環式の基を形成する、
で表される化合物の少なくとも1つを、製品へ取り込むことを含む、前記方法。当該化合
物は、皮膚に適用される、または経口摂取される組成物、例えば、歯磨き剤、うがい薬、
食料品、飲料品、菓子類、タバコ製品、スキンクリームおよび軟膏に、十分な清涼効果を
与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼化合物(cooling compounds)に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼化合物、即ち、身体の皮膚または粘膜へ清涼感(cooling sensation)を与える化
学物質は、当該技術分野で周知であり、食料品、タバコ製品、飲料、歯磨き剤、うがい薬
およびトイレタリー製品などの、種々の製品において広く使用されている。
【0003】
大きな成功を享受している清涼化合物の1つの部類は、N置換p−メンタンカルボキサ
ミド類からなる。これらの化合物の例は、例えば、英国特許GB1,351,761-2及び米国特許U
S4,150,052中に記載されている。
【発明の開示】
【0004】
現在、そのような化合物の特定の選ばれたものが、驚くほど強く、また長期持続もする
清涼効果(cooling effect)を示すことが、見出された。したがって、清涼効果を製品に
提供する方法であって、式I
【化1】

式中、mは、0〜2の数であり、X、YおよびZは、H、ハロゲン、OH、Me、Et、
MeOおよびEtOからなる群より独立して選択され、R、RおよびRは、ともに
少なくとも6個の炭素原子を含み、以下のように選択される、
(a)(i)Rは、H、Me、Et、イソプロピルおよびC〜Cの分枝鎖アルキル
からなる群より選択される、ならびに
(ii)RおよびRは、Me、Et、イソプロピルおよびCの分枝鎖アルキルから
なる群より独立して選択される、または
(b)いずれか2つまたは全てのR、RおよびRは、一緒になって最大10個の炭
素原子を有する単環式、二環式または三環式の基を形成する、
で表される化合物の少なくとも1つを、製品へ取り込むことを含む、前記方法を提供する

Meは、メチル基として定義され、Etは、エチル基として定義される。
上記(b)に記載される環式基の例は、3−パラ−メンチル、ボルニルおよびアダマン
チルを含む。
【0005】
式(I)で表される化合物は、1または2以上のキラル中心を含んでもよく、それ自体
が立体異性体の混合物として存在してもよく、それらを異性体的に純粋な形態として分割
してもよい。立体異性体の分割は、これらの物質の製造および精製に複雑性を加え、そし
てそのため、単純な経済的理由により、それらの立体異性体の混合物としての化合物を使
用することが好まれる。しかし、個々の立体異性体を製造することを望むならば、これは
、当該技術分野において知られている方法、例えば分取HPLCおよびGC、または立体
選択的合成に従って達成される。
【0006】
いくつかの態様では、化合物は、X、YおよびZが、H、OH、MeまたはMeOであ
る化合物である。ある態様では、化合物は、mが、2であり、X、YおよびZが、Hまた
はMeであり、R、RおよびRが、表1から選ばれる。
【表1】

特に効果的な化合物は、Rが、Hであり、RおよびRが、一緒になって3−p−
メンチル環を形成する化合物である。
【0007】
効果的な化合物の例は、(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチル−N−
(ピリジンアルキル)シクロヘキサンカルボキサミド、および(2S,5R)−2−イソ
プロピル−5−メチル−N−(ピリジンアルキル)シクロヘキサンカルボキサミドである
。これらの格別な例は、(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチル−N−(
2−(ピリジン−4−イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド、および(2S,5
R)−2−イソプロピル−5−メチル−N−(2−(ピリジン−4−イル)エチル)シク
ロヘキサンカルボキサミドである。
【0008】
ある化合物は、新規である。したがって、前記の式Iにより表され、式中、m=2であ
り、X、Y、Z、R、RおよびRは、前記において与えられた意味を有し、但しR
およびRが、パラ−メンチル環を形成する場合、R、X、YおよびZの少なくとも
1つが、H以外の基であることを条件とする、化合物が提供される。
【0009】
また、前記の式I、式中X、Y、Z、RはHであり、R、Rは、前記において与
えられた意味を有する、による化合物が提供される。
ある態様では、Rは、水素であり、RおよびRは、独立してMe、EtおよびC
〜Cの分枝鎖アルキルからなる群より選択され、またはR、RおよびRは、一
緒になって最大10個の炭素原子を有する単環式、二環式または三環式の基を形成する。
【0010】
かかる化合物は、当該技術分野で認識されている方法により、簡単に製造および単離さ
れてもよい。
それらの化合物は、それらの驚くほど高い清涼効果(類似の既知の化合物よりも最大1
00倍高い)、および清涼効果の持続性(longevity)により、先行技術の類似の化合物
から区別される。これらの化合物はまた、ミントオイルのような油性溶媒、および清涼飲
料のような酸性水溶液への高い溶解性を有する。これらの特徴は、清涼化合物の使用を、
広範な種々の製品へ拡大する。
【0011】
かかる化合物を、清涼感を与えるために、口腔や皮膚へ適用される製品へ使用してもよ
い。「適用」は、例えば、経口摂取、またはタバコ製品の場合には吸入など、接触させる
任意の形態を意味する。皮膚への適用の場合には、例えば、クリームもしくは軟膏、また
は噴霧可能な組成物中に化合物を含ませることによってでもよい。したがって、前記の化
合物を含む製品を適用することにより、口腔または皮膚へ清涼効果を与える方法を提供す
る。
【0012】
かかる化合物を使用してもよい製品の範囲は非常に広く、ほんの一例として、練り歯磨
き剤および歯磨き用ゲルのような歯磨き剤、うがい薬、食料品、飲料品、菓子類、タバコ
製品、スキンクリームおよび軟膏類、化粧品および医薬品の両方などが挙げられる。
【0013】
かかる化合物は、単独または当該技術分野において既知の他の清涼化合物と組み合わせ
て使用してもよく、例としては、メントール、メントン、イソプレゴール、N−エチルp
‐メンタンカルボキサミド(WS−3)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブ
タンアミド(WS−23)、乳酸メンチル(Frescolat(登録商標)ML)、メントングリセ
リンアセタール(Frescolat(登録商標)MGA)、コハク酸モノ−メンチル(Physcool(登録
商標))、グルタル酸モノ−メンチル、O−メンチルグリセリン(CoolAct(登録商標)10)
、メンチル−N,N−ジメチルスクシンアメート、および2−sec−ブチルシクロヘキ
サノン(Freskomenthe(登録商標))などが挙げられる。
ここで、いくつかの態様を、以下の非限定的な例を用いて、さらに説明する。
【0014】
例1
N−(4−ピリジニル)p−メンタンカルボキサミド[(1R,2S,5R)−2−イソ
プロピル−5−メチル−N−(2−(ピリジン−4−イル)エチル)シクロヘキサンカル
ボキサミド]の製造
4.7g(50mmol)のピリジン−4−イルアミン、4.04mLのピリジンおよ
び100mLのMtBEを、フラスコに加えた。この混合物に、10gの塩化p−メンタ
ンカルボキシルを、5分以上かけて滴下添加した。反応混合物を、24時間撹拌した。反
応混合物に50mLの水を加え、混合物を分離した。有機層を、50mLの水および50
mLの塩水で洗浄した。有機層を、MgSOで乾燥した。溶媒を真空で蒸発させ、粗生
成物を得て、これをヘキサンから再結晶して、以下のスペクトル特性を有する、6.2g
の所望の生成物を得た:
MS: 260 ([M+●]), 217, 149, 121, 95
1H NMR (300 MHz; CDCl3) δ: 8.49 (d, 2H), 7.77 (s, 1H), 7.52 (d, 2H), 2.22 (td,
1H), 1.9 (broad d, 2H), 1.85 -1.57 (m, 3H), 1.44 -1.22 (m, 2H), 1.16- 0.99 (m, 2
H), 0.94 (d, 3H), 0.91 (d, 3H), 0.81 (d, 3H)
13C NMR (75 MHz; CDCl3) δ: 175.4, 150.5, 145.0, 113.4, 50.7, 44.3, 39.25, 34.3,
32.1, 28.7, 23.7, 22.1, 21.2, 16.1
【0015】
例2
N−(2−ピリジン−2−イルエチル)p−メンタンカルボキサミド[(1R,2S,5
R)−2−イソプロピル−5−メチル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)シク
ロヘキサンカルボキサミド]の製造
例1に記載された製法と同様の製法により、以下のスペクトル特性を有する所望の生成
物を得た:
MS: 288 ([M+●]), 273, 245, 149, 121, 95
1H NMR (300 MHz; DMSO) δ: 8.53 (d, 1H), 7.62 (td, 1H), 7.16 (m, 2H), 6.43 (s, 1
H), 3.67 (nontuplet, 2H), 3.00 (t, 2H), 1.95 (td, 1H), 1.84-1.53 (m, 4H), 1.47 (
broad t, 1H), 1.4-1.1 (m, 2H), 0.87 (d, 3H), 0.84 (d, 3H), 0.66 (d, 3H)
13C NMR (75 MHz; DMSO) δ: 175.8, 159.7, 148.9, 136.7, 123.6, 121.55, 49.8, 44.3
, 39.4, 38.35, 36.9, 34.6, 32.3, 28.55, 23.9, 22.3, 21.3, 15.95
【0016】
例3
2−イソプロピル−2,3−ジメチル−N−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)ブタ
ンアミドの製造
塩化2−イソプロピル−2,3−ジメチルブタノイルを使用した、例1に記載された製
法と同様の製法により、以下のスペクトル特性を有する所望の生成物を得た:
MS: 262 ([M+]), 220, 205, 149, 121, 106, 93
1H NMR (300 MHz; CDCl3) 8.53 (d, 1H), 7.63 (t, 1H), 7.16 (m, 2H), 6.69 (s, 1H),
3.67 (dd, 2H), 2.99 (t, 2H), 1.96 (m, 2H), 0.96 (s, 3H), 0.85 (d, 6H), 0.79 (d,
6H)
13C (75MHz; CDCL3) 175.6, 160.0, 149.1, 136.6, 123.4, 121.5, 51.4, 38.4, 36.9, 3
2.6, 18.1, 17.4, 14.1
【0017】
例4
清涼効果の評価
被験者の小集団に、種々の清涼化合物の水溶液の味見と、2ppmにおけるメントール
溶液の清涼強度と比較し、同等またはわずかに強い清涼強度(cooling intensity)を有
する溶液を指し示すように依頼した。同一の被験者に、選択された濃度におけるそれらの
溶液の味見と、口中に清涼感が感じられなくなるまで、一定時間ごとに清涼強度を記録す
ることを依頼した。結果を、表2に示す。
【0018】
【表2】

表2より、式Iで表される化合物は、基準の清涼化合物であるメントールよりも、最大
100倍強く、かつ持続することが理解できる。式Iで表される化合物はまた、従来の最
良の清涼化合物であるWS−3よりもはるかに強い。
【0019】
2番目の実験において、同一の被験者に、種々の濃度を有する種々の化合物の水溶液の
味見と、2ppmにおけるメントール溶液の清涼強度と比較して、同等またはわずかに強
い清涼強度を有する溶液を指し示すよう依頼した。これは、「等強度濃度(isointensive
concentration)」である。結果を、表3に示す。
【表3】

表2および3より、種々の鎖長および置換パターンを有する式Iで表される化合物の全
てが、基準の清涼化合物であるメントールおよびWS−3よりも、低い水準の使用量を有
することが理解できる。
【0020】
例5
うがい薬における適用
【表4】

全ての成分を混合した。得られた溶液の30mLを口に入れ、グチュグチュし、うがい
をして吐き出した。冷涼感(icy-cool sensation)が、口内ならびに唇のあらゆる領域で感
じられた。
【0021】
例6
練り歯磨き剤における適用
【表5】

かかる化学物質を、歯磨き用ゲル中で混合し、一片の歯磨き用ゲルを歯磨き用ブラシ上
にのせ、被験者の歯を磨いた。口を水ですすぎ、水を吐き出した。強い清涼感が、被験者
の口内のあらゆる領域で感じられた。
【0022】
例7
飲料品における適用
1.5mgの例2の化合物を、355mL(12オンス)の缶入り清涼レモン/ライム
ソーダに溶解した。被験者は、喉にしゃく熱感を感じることなく、口中に快い遅延性の清
涼感を体験した。不快な後味は、認められなかった。
【0023】
本発明は、前述の詳細な説明および例を通じて詳細に述べられているが、これらの例は
、例示のみを目的とし、当業者は、変形および修飾を、本発明の思想および範囲から逸脱
することなく為し得ることを理解する。前述の具体例は、置換のみならず組み合わせもで
きることを、理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品へ清涼効果を与える方法であって、式I
【化1】

式中、mは、0〜2の数であり、X、YおよびZは、H、ハロゲン、OH、Me、Et、
MeOおよびEtOからなる群より独立して選択され、R、RおよびRは、ともに
少なくとも6個の炭素原子を含み、以下のように選択される、
(a)(i)Rは、H、Me、Et、イソプロピルおよびC〜Cの分枝鎖アルキル
からなる群より選択される、ならびに
(ii)RおよびRは、Me、Et、イソプロピルおよびCの分岐鎖アルキルから
なる群より独立して選択される、または
(b)いずれか2つまたは全てのR、RおよびRは、一緒になって最大10個の炭
素原子を有する単環式、二環式または三環式の基を形成する、
で表される化合物の少なくとも1つを、製品へ取り込むことを含む、前記方法。
【請求項2】
X、YおよびZが、H、OH、MeおよびOMeから独立して選択される、請求項1に
記載の方法。
【請求項3】
mが、2であり、X、YおよびZが、HおよびMeから独立して選択され、R、R
およびRが、以下の表に従い選択される、請求項1に記載の方法。
【表1】

【請求項4】
が、Hであり、RおよびRが、一緒になって3−p−メンチル環を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
皮膚への適用または経口摂取に適合した製品であって、式I
【化2】

式中、mは、0〜2の数であり、X、YおよびZは、H、ハロゲン、OH、Me、Et、
MeOおよびEtOからなる群より独立して選択され、R、RおよびRは、ともに
少なくとも6個の炭素原子を含み、以下のように選択される、
(a)(i)Rは、H、Me、Et、イソプロピルおよびC〜Cの分枝鎖アルキル
からなる群より選択される、ならびに
(ii)RおよびRは、Me、Et、イソプロピルおよびCの分枝鎖アルキルから
なる群より独立して選択される、または
(b)いずれか2つまたは全てのR、RおよびRは、一緒になって最大10個の炭
素原子を有する単環式、二環式または三環式の基を形成する、
で表される化合物を少なくとも1つ含む、前記製品。
【請求項6】
式Iで表される化合物:
【化3】

式中、mは、2であり、X、YおよびZは、H、ハロゲン、OH、Me、Et、MeOお
よびEtOからなる群より独立して選択され、R、RおよびRは、ともに少なくと
も6個の炭素原子を含み、以下のように選択される、
(a)(i)Rは、H、Me、Et、イソプロピルおよびC〜Cの分枝鎖アルキル
からなる群より選択される、ならびに
(ii)RおよびRは、Me、Et、イソプロピルおよびCの分枝鎖アルキルから
なる群より独立して選択される、または
(b)いずれか2つまたは全てのR、RおよびRは、一緒になって最大10個の炭
素原子を有する単環式、二環式または三環式の基を形成する、
ただし、RおよびRが、パラ−メンチル環を形成する場合に、R、X、YおよびZ
の少なくとも1つが、H以外の基であることを条件とする。

【公表番号】特表2009−507778(P2009−507778A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526348(P2008−526348)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000427
【国際公開番号】WO2007/019719
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】