説明

減圧弁

【課題】ダイヤフラムが破損する前にダイヤフラムの劣化を知らせ、ダイヤフラム破損に起因する漏水の発生を防止できる減圧弁を提供する。
【解決手段】本実施形態の減圧弁20は、一次通路11、弁座14及び二次通路12を有する弁本体1と、二次側流体圧力と調節バネのバネ荷重とを対抗作用させたダイヤフラム3と、ダイヤフラム3の変位に応じて弁座14に対する開閉動作を行う弁体2と、弁本体1の上面にダイヤフラム3の周縁部を挟んで固定されたバネケース4と、調節バネ5の上端を上下移動可能に支持するためバネケース4の頂部に移動可能に螺装された調節ネジ6と、調節バネ6とダイヤフラム3上面との間に挟持されたバネ受け9と、を備え、バネ受け9の鍔部9aで調節バネ6の下端を支持している。バネ受け9の鍔部9aの経年劣化に対する耐久性はダイヤフラム3の経年劣化に対する耐久性よりも低く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側流体圧力を検知するダイヤフラムに連動して弁体が開閉動作を行なう減圧弁に関するものであり、例えば、電気温水器等の給湯器や湯沸器の貯湯槽へ向かう水道水の減圧に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来技術として、例えば、特許文献1記載の「減圧弁」がある。特許文献1記載の「減圧弁」について、図7を参照しながら説明する。図7は前記「減圧弁」の構造を示す垂直断面図である。
【0003】
図7に示すように、減圧弁10を構成する弁本体1には、給水源に繋がる一次通路11と、給水先に繋がる二次通路12とが形成され、一次通路11と二次通路12とは隔壁13によって仕切られている。隔壁13には、一次通路11と二次通路12とを繋ぐ通水孔16が形成され、通水孔16の二次通路12側に弁座14が形成されている。
【0004】
弁座14を開閉する弁体2は弁棒15によってダイヤフラム3と連結固定されている。ダイヤフラム3の周縁は弁本体1とバネケース4とによって挟持された状態で固定されている。バネケース4の内部には調節バネ5が収納され、この調節バネ5の上端部、下端部はそれぞれ調節ネジ6、ダイヤフラム3に当接している。調節ネジ6は、バネケース4の上部に移動可能に螺装されているため、調節ネジ6を回して上下移動させることにより、調節バネ5がダイヤフラム3を押し下げる付勢力を調整することができる。
【0005】
一次流路11から流入した水はストレーナ7を通り、逆止弁8を押し上げ、隔壁13に設けられた弁座14に達する。弁座14の二次側には弁体2が配置され、この弁体2は調節バネ5の付勢力により下方向(弁座14から離れる方向)に付勢されているため、調整バネ5の付勢力に基いて通水時における弁座14と弁体2との隙間が変わることにより、二次通路12から流出する給水圧が設定圧となるように作動する。
【0006】
具体的には、給水圧が設定圧よりも高い時に二次側を止水した場合、ダイヤフラム3が水圧によって上方に押圧移動され、弁体2が弁座14に近接するように移動して弁体2と弁座14との隙間が狭くなり、二次側の圧力が設定圧に保持される。この設定圧は、調節ネジ6を回すことによって調節することができる。
【0007】
また、給水圧が設定圧よりも高い時に二次側を止水した後、二次側を通水した場合、ダイヤフラム3を押上げる圧力が下がり、弁体2が弁座14より離れ、二次側の必要流量に応じた弁開口ストローク、すなわち通水断面積を確保した状態で安定する。
【0008】
【特許文献1】特開2002−244742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7に示す減圧弁10を長期間にわたって使用すると、ダイヤフラム3は上下方向の変形を繰り返すため、材質が劣化して破損する可能性を否定できない。万一、ダイヤフラム3が破損した場合、二次側の水がバネケース4内に流れ込み、その後、バネケース4外に流れ出して漏水が発生する可能性がある。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ダイヤフラムが破損する前にダイヤフラムの劣化を知らせ、ダイヤフラム破損に起因する漏水の発生を防止できる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る減圧弁は、一次通路、弁座及び二次通路を有する弁本体と、
二次側流体圧力と調節バネのバネ荷重とを対抗作用させたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの変位に応じて前記弁座に対する開閉動作を行う弁体と、
前記弁本体の上面に前記ダイヤフラムの周縁部を挟んで固定されたバネケースと、
前記バネケースの頂部に移動可能に螺装され、前記調節バネの一端を上下移動可能に支持した調節ネジと、を備えた減圧弁であって、
前記ダイヤフラムと当接した位置から所定の空隙を隔てた位置に鍔部を有するバネ受けを設け、前記バネ受けの前記鍔部で前記調節バネの他端を支持したことを特徴とする。
【0012】
このように、ダイヤフラムから所定の空隙を隔てた位置に形成された鍔部で調整バネの他端を支持したことにより、長期間にわたる減圧弁の作動に伴い、ダイヤフラム、調節バネ、調節バネの支持部あるいは弁体といった可動部材に経年劣化が生じて鍔部が破損すると、調節バネはダイヤフラムに向かって伸長すると共に、調節バネの付勢力は弱くなるため、設定圧が下がった状態と等しくなり、弁体と弁座との隙間が小さくなる。その結果、二次通路からの流出水量が大幅に減少するため、使用者は減圧弁の異常に気付くこととなり、減圧弁の交換により対処することができる。従って、この鍔部の経年劣化に対する耐久性をダイヤフラムの経年劣化に対する耐久性よりも低く設定しておけば、ダイヤフラムの劣化に伴う漏水の発生を防ぐことができる。
【0013】
ここで、前記バネ受けは、前記ダイヤフラムと当接する前記調節バネの内径よりもその外径が小さい筒部と、前記筒部から周方向に突出した前記鍔部とから構成されていることが望ましい。
【0014】
このような構成とすれば、バネ受けを構成する主体である筒部は調節バネの内径よりもその外径が小さいのでコンパクトであり、しかも、鍔部の内周と筒部との連結部分の機械的強度を脆弱に設定としておけば、ダイヤフラムの経年劣化による漏水発生前に、容易に鍔部を破損させることができるため、ダイヤフラム破損に起因する漏水発生の防止に有効である。
【0015】
一方、前記バネ受けの前記ダイヤフラムとの当接位置には、前記調節バネの外径より大きなフランジ部が形成されていることが望ましい。このような構成とすれば、バネ受けは調節バネの外径より大きなフランジ部によってダイヤフラムと当接した状態となるため、バネ受けを安定的にダイヤフラムに当接させることができる。また、バネ受けの鍔部が破損したときに、フランジ部の存在により、調節バネが直接ダイヤフラムに当たるのを回避することができるため、ダイヤフラムの破損を防止することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイヤフラムが破損する前にダイヤフラムの劣化を知らせ、ダイヤフラム破損に起因する漏水の発生を防止できる減圧弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である減圧弁を示す垂直断面図、図2は図1に示す減圧弁を構成するバネ受けを示す斜視図、図3は図2に示す減圧弁の斜視図、図4は経年劣化によるバネ受けの破損過程を示す図、図5は図1に示す減圧弁のバネ受けが破損した状態を示す垂直断面図である。なお、図1〜図5において、図7と同じ符号を付している部分は従来の減圧弁10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の減圧弁20は、一次通路11、弁座14及び二次通路12を有する弁本体1と、二次側流体圧力と調節バネのバネ荷重とを対抗作用させたダイヤフラム3と、ダイヤフラム3の変位に応じて弁座14に対する開閉動作を行う弁体2と、弁本体1の上面にダイヤフラム3の周縁部を挟んで固定されたバネケース4と、調節バネ5の上端を上下移動可能に支持するためバネケース4の頂部に移動可能に螺装された調節ネジ6と、調節バネ6とダイヤフラム3上面との間に挟持されたバネ受け9と、を備えている。
【0019】
図2,図3に示すように、バネ受け9は、円筒状の筒部9bと、筒部9bの上端よりやや下方位置から周方向に突出した円板状の鍔部9aと、から構成され、筒部9bの下端は開放され、鍔部9aから突出する筒部9bの上端は蓋部9cによって閉塞されている。バネ受け9の筒部9bの外径9dは、調節バネ5の内径よりも小さく、鍔部9aの外径9Dは調節バネの外径より大きく形成されている。
【0020】
図1に示すように、バネ受け9は、調節バネ6とダイヤフラム3上面との間において調節バネ5及び弁棒15と同軸上に配置されている。ダイヤフラム3と当接した位置から所定の空隙を隔てた位置に存在する鍔部9aによって調節バネ5の下端が支持されている。また、バネ受け9の鍔部9aの経年劣化に対する耐久性はダイヤフラム3の経年劣化に対する耐久性よりも低く設定されている。即ち、図2,図3に示すように、バネ受け9の鍔部9aの内周と筒部9bとの連結部分9eの機械的強度がダイヤフラム3の機械的強度より脆弱に設定されている。
【0021】
具体的には、バネ受け9の鍔部9aと筒部9bとの連結部分9e厚みの大小によって機械的強度を調整する場合、バネ受け9の鍔部9aと筒部9bとを別々に成型して接着・溶着により筒部9bに固定しておく場合、その接着力や溶着力を変更して機械的強度を調整する場合、バネ受け9の鍔部9aと筒部9bとを別々に成型して、鍔部9aを筒部9bの外周に突出させた突起(図示せず)に係合支持する場合、その突起の機械的強度を変更して機械的強度を調整する場合などが考えられる。
【0022】
なお、連結部分9eの機械的強度を調整する上においては、ダイヤフラム3の繰り返し変形に伴う機械的強度の劣化を考慮するだけでなく、ダイヤフラム3が水に接していることも考慮して、接水により、バネ受け9よりもダイヤフラム3の機械的強度の経年劣化の方が促進されることも予測した設定にすることが好ましい。
【0023】
ここで、図1及び図4に基づいて、経年劣化によるバネ受けの破損過程について説明する。減圧弁20の使用期間が比較的短く、ダイヤフラム3などの可動部材に経年劣化が生じていないうちは、図1及び図4(a)に示すように、バネ受け9は元の形状を保持するので、調節バネ5は収縮した状態(長さL1の状態)に維持される。従って、調節バネ5は比較的大きな付勢力によりダイヤフラム3を下方へ押圧している。
【0024】
前述したように、バネ受け9の鍔部9aの経年劣化に対する耐久性はダイヤフラム3の経年劣化に対する耐久性よりも低く設定されているため、長期間にわたる減圧弁20の作動に伴い、ダイヤフラム3などの可動部材に経年劣化が生じ始めると、図4(b)に示すように、ダイヤフラム3が破損する前に、バネ受け9の鍔部9aが破損する。具体的には、鍔部9aと筒部9bとの連結部分9eが破断して、鍔部9aが筒部9bから外れて保持力を失うため、図4(c)及び図5に示すように、調節バネ5はダイヤフラム3に向かって伸長し、長さL2の状態となる。
【0025】
バネ受け9の破損により調節バネ5が長さL1から長さL12に伸長すると、ダイヤフラム3に対する調節バネ5の付勢力は弱くなるため、設定圧が下がった状態と等しくなり、図5に示すように、弁体2と弁座14との隙間が小さくなる。これにより、二次通路12からの流出水量が著しく減少するため、使用者は減圧弁20の異常に気付くこととなり、ダイヤフラム3が破損する前に、減圧弁20の交換により対処することができる。このため、ダイヤフラム3の劣化に伴う漏水の発生を防ぐことができる。
【0026】
次に、図6に基づいて、バネ受けに関するその他の実施の形態について説明する。図6はその他の実施の形態であるバネ受けを示す斜視図である。なお、図6において図2,図3と同じ符号を付している部分はバネ受け9の構成部分と同じ形状、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0027】
図6に示すバネ受け19においては、当該バネ受け19がダイヤフラム3(図1参照)と当接する位置に、調節バネ5の外径より大きなフランジ部19fが形成されている。このような構成とすれば、ダイヤフラム3などの可動部材の経年劣化が生じていない状況の下では、バネ受け19は調節バネ5の外径より大きなフランジ部19fによってダイヤフラム3と当接した状態となるため、バネ受け19を安定的にダイヤフラム3に当接させることができる。
【0028】
一方、経年劣化によりバネ受け19の鍔部9aが破損したときは、フランジ部19fが存在することにより、調節バネ5が直接ダイヤフラム3に当たるのを回避することができるため、調節バネ5の弾性力によるダイヤフラム3の破損を防止することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の減圧弁は、電気温水器などの各種給湯器具や湯沸器の貯湯槽へ向かう水道水の減圧器具として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態である減圧弁を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す減圧弁を構成するバネ受けの外形を示す斜視図である。
【図3】図2に示すバネ受けの外形及び内部構造を示す斜視図である。
【図4】経年劣化によるバネ受けの破損過程を示す図である。
【図5】図1に示す減圧弁のバネ受けが破損した状態を示す垂直断面図である。
【図6】バネ受けに関するその他の実施の形態を示す斜視図である。
【図7】従来の減圧弁を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 弁本体
2 弁体
3 ダイヤフラム
4 ケース
5 調節バネ
6 調節ネジ
7 ストレーナ
8 逆止弁
9,19 バネ受け
9a 鍔部
9b 筒部
9c 蓋部
9d,9D 外径
9e 連結部分
10,20 減圧弁
11 一次通路
12 二次通路
13 隔壁
14 弁座
15 弁棒
L1,L2 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次通路、弁座及び二次通路を有する弁本体と、
二次側流体圧力と調節バネのバネ荷重とを対抗作用させたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの変位に応じて前記弁座に対する開閉動作を行う弁体と、
前記弁本体の上面に前記ダイヤフラムの周縁部を挟んで固定されたバネケースと、
前記調節バネの一端を上下移動可能に支持するため前記バネケースの頂部に移動可能に螺装された調節ネジと、を備えた減圧弁であって、
前記ダイヤフラムと当接した位置から所定の空隙を隔てた位置に鍔部が形成されたバネ受けを設け、このバネ受けの前記鍔部で前記調節バネの他端を支持したことを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
前記バネ受けは、前記ダイヤフラムと当接する前記調節バネの内径よりもその外径が小さい筒部と、前記筒部から周方向に突出した前記鍔部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の減圧弁。
【請求項3】
前記バネ受けの前記ダイヤフラムとの当接位置には、前記調節バネの外径より大きなフランジ部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−86316(P2010−86316A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255258(P2008−255258)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】