減速機およびその製造方法
【課題】ウォーム軸とウォームホイールとを組み付けるときに、ウォーム軸の歯やウォームホイールの歯にキズや変形が生じないようにすること。
【解決手段】減速機10は、ウォーム軸16と、ウォームホイール17と、ウォーム軸収容孔39を区画する第1のハウジング36と、ウォームホイール収容孔38を区画する第2のハウジング37とを備える。ウォーム軸16の第2の支軸28に軸受が装着されていない当該ウォーム軸16のウォーム歯形成部26の一部を逃げ空間46に変位させた状態で、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触が解除されるようにしてある。
【解決手段】減速機10は、ウォーム軸16と、ウォームホイール17と、ウォーム軸収容孔39を区画する第1のハウジング36と、ウォームホイール収容孔38を区画する第2のハウジング37とを備える。ウォーム軸16の第2の支軸28に軸受が装着されていない当該ウォーム軸16のウォーム歯形成部26の一部を逃げ空間46に変位させた状態で、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触が解除されるようにしてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーム軸およびウォームホイールをギヤハウジングに収容したウォーム減速機が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−20724号公報
【特許文献2】特開平9−49552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のウォーム軸とウォームホイールとを互いに組み付ける方法としては、例えば特許文献2に記載されているように、ウォームホイールをギヤハウジングに収容しておき、このウォームホイールの外周の接線方向に沿ってウォーム軸を真っ直ぐに(一直線に)移動させて、両者を噛み合わせる。
ところで、ウォーム軸とウォームホイールとを互いに噛み合わせる際に、両者を滑らかに接触させて、ウォーム軸およびウォームホイールの双方にキズや変形等を生じないようにすることが要請されている。
【0005】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、組み付けの際にウォーム軸やウォームホイールにキズや変形が生じることを確実に防止できる減速機およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ウォーム軸収容孔(39)を区画する筒状をなす第1のハウジング(36)と、ウォームホイール収容孔(38)を区画する筒状をなし、第1のハウジング(36)と交差状に連なる第2のハウジング(37)と、上記ウォーム軸収容孔(39)に収容されたウォーム軸(16)と、上記ウォームホール収容孔(38)に収容され、上記ウォーム軸(16)に噛み合うウォームホイール(17)と、を備え、上記ウォーム軸(16)は、ウォーム軸(16)を駆動する電動モータ(11)と相対的に近い第1の端部(31)と、第1の端部(31)の反対側に配置される第2の端部(28)と、を含み、上記ウォーム軸収容孔(39)は、ウォーム軸(16)のウォーム歯形成部(26)を挟んでウォームホイール(17)と対向する逃げ空間(46;46A)を含み、上記第2の端部(28)に軸受(33)が装着されていないウォーム軸(16)のウォーム歯形成部(26)の一部を逃げ空間(46;46A)に変位させた状態で、ウォーム軸(16)とウォームホイール(17)との接触が解除されるようにしてあり、上記第1のハウジング(36)において軸方向に関する上記逃げ空間(46;46A)の一端には、段部(48)が形成されていて、上記ウォーム軸(16)における上記第2の端部(28)側には、段部(30)が形成されていて、上記第2の端部に軸受(33)が装着されていないウォーム軸のウォーム歯形成部(26)の一部を逃げ空間に変位させた状態で、上記第1のハウジングの段部(48)と上記ウォーム軸の段部(30)とが当接するようになっていることを特徴とする減速機(10)を提供するものである(請求項1)。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
本発明によれば、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入する際に、ウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に配置することにより、ウォームホイールとの接触を避けてウォーム軸を挿入できる。また、ウォーム歯形成部の一部が逃げ空間に配置されたウォーム軸をウォームホイール側に変位させることで、ウォーム軸とウォームホイールとを噛み合わせることができる。その結果、ウォーム軸とウォームホイールとを組み合わせるときに、ウォーム軸の歯部とウォームホイールの歯形成部とが強く接触することを防止でき、ウォーム軸およびウォームホイールの双方について、キズや変形が生じることを確実に防止できる。
【0008】
また、本発明において、上記ウォーム軸収容孔(39)は、ウォーム軸(16)の第2の端部(28)を支持する軸受(33)を保持するための軸受保持孔(35;35C)を含み、第1のハウジング(36)の端部(36b)に、上記軸受(33)を軸受保持孔(35;35C)へ挿通可能な軸受挿通孔(45)が形成され、上記第1のハウジング(36)に上記軸受挿通孔(45)を覆う蓋部材(44)が取り付けられている場合がある(請求項2)。この場合、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に収容した後に、軸受を第2の端部に取り付けることができる。また、軸受挿通孔を蓋部材で閉塞でき、軸受保持孔に異物が侵入することを防止できる。
【0009】
また、本発明において、上記ウォーム軸収容孔(39)は、ウォーム軸(16)の第2の端部(28)を支持する軸受(33)を保持するための軸受保持孔(35;35C)を含み、上記軸受保持孔(35;35C)は、上記軸受(33)を当該軸受(33)の径方向移動を規制する状態で保持する場合がある(請求項3)。この場合、軸受を第1のハウジングで確実に保持できる。
【0010】
また、上記減速機(10)の製造方法において、上記第2のハウジング(37)のウォームホイール収容孔(38)にウォームホイール(17)を収容した後、軸受(33)が装着されていない第2の端部(28)側からウォーム軸(16)を第1のハウジング(36)のウォーム軸収容孔(39)に挿入する場合がある(請求項4)。
この場合、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入する際に、ウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に配置することにより、ウォームホイールとの接触を避けてウォーム軸を挿入できる。また、ウォーム歯形成部の一部が逃げ空間に配置されたウォーム軸をウォームホイール側に変位させることで、ウォーム軸とウォームホイールとを噛み合わせることができる。その結果、ウォーム軸とウォームホイールとを組み合わせるときに、ウォーム軸の歯部とウォームホイールの歯部とが強く接触することを防止でき、ウォーム軸およびウォームホイールの双方について、キズや変形が生じることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態の減速機を備える電動式動力舵取装置の概略断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2の要部の拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】減速機の製造について説明するための要部の断面図であり、(A)は、ウォームホイールがウォームホイール収容孔に収容される前の状態を示しており、(B)は、ウォームホイールがウォームホイール収容孔に収容された状態を示している。
【図6】ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入する前の状態を示す断面図である。
【図7】ウォーム軸の歯形成部の一部が逃げ空間に挿入された状態を示す断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】ウォーム軸の一部が、逃げ空間から歯形成部収容孔に変位した状態を示す断面図である。
【図10】ウォーム軸の第2の支軸が第5の軸受保持孔に挿入された状態を示す断面図である。
【図11】電動モータをギヤハウジングに取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図12】本発明の別の実施の形態の要部の断面図である。
【図13】図12の減速機の製造について説明するための断面図であり、(A)は、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入し始めた状態を示しており、(B)は、ウォーム軸の歯形成部の一部が逃げ空間に挿入された状態を示しており、(C)は、ウォーム軸がウォームホイールに噛み合った状態を示している。
【図14】(A)は、本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図であり、(B)は、図14(A)のXIVB−XIVB線に沿う断面図である。
【図15】図14(A)の減速機の製造について説明するための断面図であり、(A)は、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入し始めた状態を示しており、(B)は、ウォーム軸の歯形成部の一部が逃げ空間に挿入された状態を示しており、(C)は、ウォーム軸がウォームホイールに噛み合った状態を示している。
【図16】本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
【図17】本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
【図18】本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の減速機を備える電動式動力舵取装置の概略断面図である。図1を参照して、本電動式動力舵取装置(以下では単に動力舵取装置ともいう)では、ステアリングホイール1が連結されている入力軸としての第1の操舵軸2と、ラックアンドピニオン機構等の舵取り機構(図示せず)に連結されている出力軸としての第2の操舵軸3とが、トーションバー4を介して同軸的に連結されている。
【0013】
第1および第2の操舵軸2,3を支持するハウジング5は、例えばアルミニウム合金からなり、車体(図示せず)に取り付けられている。ハウジング5は、互いに嵌め合わされるセンサハウジング6とギヤハウジング7とを含んでいる。
具体的には、ギヤハウジング7は、全体が単一の材料を用いて一体に形成されて筒状をなしており、その上端の環状縁部7aが、センサハウジング6の下端外周の環状段部6aに嵌め合わされている。
【0014】
ギヤハウジング7はウォームギヤ機構8を収容し、センサハウジング6はトルクセンサ9を収容している。ギヤハウジング7にウォームギヤ機構8を収容することで減速機10が構成されている。
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図1および図2を参照して、操舵補助力を発生するための電動モータ11が設けられている。電動モータ11のハウジング12は、ギヤハウジング7の環状フランジ13に図示しないボルト等を用いて固定されている。
【0015】
ウォームギヤ機構8は、電動モータ11の出力を減速して第2の操舵軸3に伝達するものであり、電動モータ11の出力軸14にスプライン継手等の継手15を介して連結されるウォーム軸16と、このウォーム軸16と噛み合い、且つ、第2の操舵軸3の軸方向中間部に一体回転可能で且つ軸方向移動を規制されたウォームホイール17とを備える。
ウォームホイール17は、第2の操舵軸3に一体回転可能に結合される環状の芯金17aと、芯金17aの周囲を取り囲んで外周面に歯形成部18を形成する合成樹脂部材17bとを備えている。芯金17aは、例えば合成樹脂部材17bの樹脂形成時に金型内にインサートされるものである。ウォームホイール17の歯形成部18の歯は、例えば、鼓形形状をなすはすばとされている。
【0016】
ギヤハウジング7内において、ウォーム軸16およびウォームホイール17の噛み合い領域Aに潤滑剤が充填されている。すなわち、潤滑剤は、噛み合い領域Aのみに充填しても良いし、噛み合い領域Aとウォーム軸16の周縁全体に充填しても良いし、ギヤハウジング7内全体に充填しても良い。
図1を参照して、第2の操舵軸3は、ウォームホイール17をその軸方向の上下に挟んで配置される第1および第2の軸受19,20により回転自在に支持されている。
【0017】
第1の軸受19の外輪19aは、センサハウジング6の第1の軸受保持孔21に嵌め入れられて保持されている。一方、第1の軸受19の内輪19bは、第2の操舵軸3に締まりばめにより嵌め合わされている。
第2の軸受20の外輪20aは、ギヤハウジング7の第2の軸受保持孔22に嵌め入れられて保持されている。第2の軸受20の外輪20aの下端面は、環状の段部23に当接し、ギヤハウジング7に対する軸方向下方への移動が規制されている。
【0018】
第2の軸受20の内輪20bは、第2の操舵軸3に一体回転可能で且つ軸方向相対移動を規制されて取り付けられている。
第1の操舵軸2の上部は、例えば針状ころ軸受からなる第3の軸受24を介して、センサハウジング6の第3の軸受保持孔25に回転自在に支持されている。
図2を参照して、ウォーム軸16は、歯形成部26(ウォーム歯形成部)と、歯形成部26の一対の端部のそれぞれから延設される第1および第2の支軸27,28とを含んでいる。歯形成部26は、例えば、1条または複数条の雄ねじを含んでいる。第2の支軸28は、ウォーム軸16の第2の端部として設けられている。歯形成部26の一対の端部のそれぞれに、環状の段部29,30が形成されている。
【0019】
ウォーム軸16の第1の支軸27から、第1の端部としてのスプライン軸31が延設されており、このスプライン軸31は、第2の支軸28と反対側に配置されている。スプライン軸31に、前述の継手15を介して電動モータ11の出力軸14が駆動連結されている。スプライン軸31は、電動モータ11に相対的に近く、第2の支軸28は、電動モータ11に相対的に遠い。
【0020】
ウォーム軸16は、ギヤハウジング7に保持される第4および第5の軸受32,33のそれぞれに回転自在に支持されている。第4および第5の軸受32,33は、例えば転がり軸受としての玉軸受からなる。
第4および第5の軸受32,33の内輪32b,33bは、ウォーム軸16の対応する第1および第2の支軸27,28にそれぞれ嵌合されている。また、第4および第5の軸受32,33の外輪32a,33aは、ギヤハウジング7の対応する第4および第5の軸受保持孔34,35にそれぞれ保持されている。
【0021】
ギヤハウジング7は、単一の材料を用いて一体に形成された筒状の第1のハウジング36および筒状の第2のハウジング37を含んでいる。第1および第2のハウジング36,37は、互いに交差状に連なっている。第2のハウジング37は、ウォームホイール17を収容するウォームホイール収容孔38を区画しており、図1に示すように、ウォームホイール17の軸方向の一方側が開放されている。
【0022】
図3は、図2の要部の拡大図である。図3を参照して、第1のハウジング36は、ウォーム軸16を収容するウォーム軸収容孔39を区画している。このウォーム軸収容孔39は、第1のハウジング36の内周面40によって形成されている。
ウォーム軸収容孔39は、上記第4の軸受保持孔34と、上記第5の軸受保持孔35とを含んでいる。
【0023】
第4の軸受保持孔34は、挿入口41を含んでいる。挿入口41は、ウォーム軸16を第1のハウジング36内に挿入するために形成されており、第1のハウジング36の一端部36aに配置されている。第4の軸受保持孔34および第5の軸受保持孔35は、それぞれ、断面円形形状をなしており、対応する第4の軸受32および第5の軸受33を、当該第4の軸受32および第5の軸受33の径方向移動を規制する状態で保持している。
【0024】
第4および第5の軸受32,33には、付勢部材としての弾性部材42を用いて予圧が付与されている。具体的には、第4の軸受32の外輪32aは、第4の軸受保持孔34に圧入固定されている。第4の軸受32の内輪32bは、ウォーム軸16の一方の段部29と、第1の支軸27にねじ止めされた環状部材43とに挟まれて、ウォーム軸16に対する軸方向移動が規制されている。
【0025】
第5の軸受33の内輪33bは、ウォーム軸16の他方の段部30に当接して第4の軸受32側への移動が規制されている。第5の軸受33の外輪33aは、第5の軸受保持孔35にすきまばめにより保持されており、当該第5の軸受保持孔35に対して軸方向に相対移動可能である。
第5の軸受33の外輪33aには、皿ばね等からなる上記弾性部材42の一端が当接している。弾性部材42の他端は、蓋部材44の一側面に受けられている。
【0026】
上記の構成により、弾性部材42の付勢力が、第5の軸受33の外輪33aおよび内輪33bを介してウォーム軸16に伝わり、さらに第4の軸受32の内輪33bおよび外輪33aに伝わる。
蓋部材44は、第1のハウジング36の他端部36bに形成された軸受挿通孔45に、例えばねじ結合により取り付けられている。蓋部材44は、軸受挿通孔45を覆う。軸受挿通孔45は、第5の軸受33を第5の軸受保持孔35へ挿通するためのものである。
【0027】
本実施の形態の特徴の1つは、ウォーム軸収容孔39に、ウォーム軸16の歯形成部26を挟んでウォームホイール17と対向する逃げ空間46を設けている点にある。これにより、第5の軸受33が装着されていないときのウォーム軸16の歯形成部26の少なくとも一部を逃げ空間46に変位させた状態で、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触が解除されるようになっている。
【0028】
図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。図3および図4を参照して、ウォーム軸収容孔39は、ウォーム軸16の歯形成部26を収容する歯形成部収容孔47と、歯形成部収容孔47に連なる上記逃げ空間46と、を含んでいる。
ウォーム軸収容孔39の、歯形成部収容孔47および逃げ凹部46を含む部分の断面(図3における断面)は、略ひょうたん形形状をなしている。
【0029】
歯形成部収容孔47は、第4の軸受保持孔34および第5の軸受保持孔35の双方に連通している。この歯形成部収容孔47は、ウォーム軸16と相似形をなす円形形状に区画されており、第4および第5の軸受32,33が装着されたウォーム軸16と同心に形成されている。
歯形成部収容孔47の周面とウォーム軸16の歯形成部26との隙間は可及的に狭くされ、噛み合い領域Aのグリースがこの隙間に入ってくることを抑制している。ギヤハウジング7内に充填するグリースの量を低減でき、コストを低減できる。
【0030】
第4の軸受保持孔34の軸方向に関して、逃げ空間46は、第4の軸受保持孔34から少なくとも噛み合い領域Aまで延びている。この逃げ空間46は、第1のハウジング36の内周面40のうち、ウォーム軸16の歯形成部26を挟んでウォームホイール17とは対向する部分(噛み合い領域Aとは対向する部分)を窪ませて形成されている。逃げ空間46の内周面40aの曲率半径d1は、ウォーム軸16の外径d2以上(d1≧d2)とされている。
【0031】
逃げ空間46の周面の中心46aは、歯形成部収容孔47の周面の中心47aに対して所定の偏心量Bだけ偏心している。噛み合い領域Aを通るウォームホイール17の径方向R1に関して、偏心量Bは、ウォーム軸16の歯形成部26が、ウォームホイール17に重ならないようにするためにウォーム軸16を径方向R1の一方に動かすことを許容する程度の値とされており、例えば数mm程度に設定されている。
【0032】
第4の軸受保持孔34の軸方向S1に沿ってみたときにおいて、ウォーム軸収容孔39の、歯形成部収容孔47および逃げ空間46を含む部分の断面は、第4の軸受保持孔34の断面よりも小さくされているとともに、第5の軸受保持孔35の断面よりも小さくされている。
軸方向S1に関する逃げ空間46の一端には、軸方向S1に直交する段部48が形成されている。
【0033】
上記減速機10の組み立ては、以下のように行われる。すなわち、まず、図5(A)に示すように、単品のギヤハウジング7と、ウォームホイール17を組み込んだウォームホイールアセンブリ49とを用意する。ウォームホイールアセンブリ49は、ウォームホイール17が第2の操舵軸3に保持され、且つ第2の操舵軸3に第1および第2の軸受19,20が取り付けられたものである。
【0034】
このウォームホイールアセンブリ49を、第2の操舵軸3の軸方向に沿って移動し、図5(B)に示すように、ウォームホイール17を、ギヤハウジング7の第2のハウジング37のウォームホイール収容孔38に収容する。
次に、図6に示すように、ウォームアセンブリ50を用意する。ウォームアセンブリ50は、ウォーム軸16の第1の支軸27に第4の軸受32の内輪32bが外嵌され、この第4の軸受32の内輪32bを、ウォーム軸16の段部29とウォーム軸16にねじ止めされた環状部材43とで挟持したものである。
【0035】
ウォームアセンブリ50を、軸方向S1に平行な方向に移動することにより、このウォームアセンブリ50を第1のハウジング36の挿入口41を介して、ウォーム軸収容孔39に挿入する。このとき、ウォーム軸16は、図7および図8に示すように、軸受が装着されていない第2の支軸28が挿入の先を向くように真っ直ぐに挿入され、一部が逃げ空間46に配置される。
【0036】
一部が逃げ空間46に配置されたウォーム軸16の軸線L1は、第4の軸受保持孔34の軸線L2に対して径方向R1に所定量ずれている。これにより、ウォーム軸16は、ウォームホイール17と接触することなく、ウォーム軸収容孔39に挿入される。
ウォームホイール17の径方向R1に関して、ウォーム軸16の歯形成部26がウォームホイール17の歯形成部18に対向する状態まで、ウォーム軸16がウォーム軸収容孔39に挿入されると、ウォーム軸16の段部30が、ギヤハウジング7の段部48に到達する。これらの段部30,48が当接することにより、逃げ空間46を用いたウォーム軸16の挿入が完了したことを確認できる。
【0037】
次に、図9に示すように、径方向R1に関してウォーム軸16をウォームホイール17側に移動して、ウォーム軸16の歯形成部26とウォームホイール17の歯形成部18とを互いに噛み合わせる。そうすると、ウォーム軸16の軸線L1が、第4の軸受保持孔34の軸線L2と重なる。
次に、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせた状態で、図10に示すように、ウォーム軸16を軸方向S1に沿ってウォーム軸収容孔39にさらに真っ直ぐに挿入し、第4の軸受32の外輪32aを、第4の軸受保持孔34に圧入する。そうすると、第2の支軸28は、第5の軸受保持孔35に達し、第5の軸受保持孔35に配置される。
【0038】
第2の支軸28が第5の軸受保持孔35に配置された状態で、第2の支軸28と第5の軸受保持孔35との間に第5の軸受33を介装し、その後、軸受挿通孔45に弾性部材42を挿入し、次いで、蓋部材44を軸受挿通孔45にねじ止めする。
これにより、図11に示すように、弾性部材42によって第4および第5の軸受32,33に予圧が付与される。蓋部材44を軸受挿通孔45にねじ止めした後は、第1のハウジング36にウォーム軸16が収容された状態で、電動モータ11の出力軸14を、継手15を介してウォーム軸16のスプライン軸31に連結する。これとともに、電動モータ11のハウジング12を、ギヤハウジング7の環状フランジ13に図示しないねじ等を用いて固定する。これにより、減速機10が完成する。
【0039】
本実施の形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。すなわち、ウォーム軸16をウォーム軸収容孔39に挿入する際に、ウォーム歯形成部26の一部を逃げ空間46に配置することにより、ウォームホイール17との接触を避けてウォーム軸16を挿入できる。
また、ウォーム歯形成部26の一部が逃げ空間46に配置されたウォーム軸16を、径方向R1に沿ってウォームホイール17側に変位させることで、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせることができる。その結果、ウォーム軸16とウォームホイール17とを組み合わせるときに、ウォーム軸16の歯形成部26とウォームホイール17の歯形成部18とが強く接触することを防止でき、ウォーム軸16およびウォームホイール17の双方について、キズや変形が生じることを確実に防止できる。
【0040】
また、第1のハウジング36の他端部36bに、第5の軸受33を第5の軸受保持孔35へ挿通可能な軸受挿通孔45が形成されている。これにより、ウォーム軸16をウォーム軸収容孔39に収容した後に、第5の軸受33を第2の支軸28に取り付けることができる。また、軸受挿通孔45を蓋部材44で閉塞でき、第5の軸受保持孔35に異物が侵入することを防止できる。
【0041】
さらに、ウォーム軸収容孔39の、逃げ空間46を含む部分の断面が、ひょうたん形形状をなしている。これにより、逃げ空間46を可及的に小さくでき、ウォーム軸収容孔39を小さくできる。ウォーム軸収容孔39にグリースを充填するときに充填に必要なグリースの量を少なくできる。これにより、コストを低減できる。
また、第5の軸受保持孔35は、第5の軸受33を、当該第5の軸受33の径方向移動を規制する状態で保持している。これにより、第5の軸受33を第1のハウジング36で確実に保持できる。
【0042】
さらに、例えば、ギヤハウジングにウォーム軸を先に収容し、次いでウォームホイールをギヤハウジングに収容する場合には、ウォームホイールをその軸方向に移動してギヤハウジングに収容する際に、鼓形形状をなすウォームホイールの歯部がウォーム軸の歯部に強く接触してしまい、ウォームホイールの歯部の歯面にキズや変形が生じるおそれがある。
【0043】
一方、本実施の形態では、ウォーム軸16の歯形成部26をウォームホイール17の径方向R1に沿って移動させてウォームホイール17に噛み合わせている。これにより、ウォームホイール17の歯形成部18にウォームホイール17の歯形成部26が強く接触することを防止でき、これらの歯形成部18,26の双方について、キズや変形が生じることを防止できる。
【0044】
また、ウォーム軸16とウォームホイール17とを無理なく噛合させることができる結果、ウォームホイール17の歯形成部18の歯厚を増すことができ、ウォームホイール17の強度をより増すことができる。
また、ウォームホイール17をギヤハウジング7に先に組み付けることにより、ウォームホイール17の軸線と、ギヤハウジング7のウォーム軸収容孔39の軸線との距離(芯間距離)を測定でき、公差内で寸法の異なる複数のウォーム軸から、先に組みつけられたウォームホイール17に最適なウォーム軸を選択できる。
【0045】
本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、図12に示すように、逃げ空間46Aが、第4の軸受保持孔34および第5の軸受保持孔35の双方に連通するようにしてもよい。
この場合において、ウォーム軸16を第1のハウジング36に挿入するときは、図13(A)に示すように、径方向R1に関して、軸受が取り付けられていないウォーム軸16の軸線L1を第4の軸受保持孔34の軸線L2から偏心させた状態で、このウォーム軸16を第1のハウジング36のウォーム軸収容孔39に挿入する。
【0046】
これにより、図13(B)に示すように、ウォーム軸16の一部を逃げ空間46Aに配置し、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触を避けた状態で、ウォーム軸16の第2の支軸28を第5の軸受保持孔35に挿通する。
その後、図13(C)に示すように、ウォーム軸16を径方向R1に沿ってウォームホイール17側に移動させて、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせる。ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせた状態で、第5の軸受33を、第5の軸受保持孔35と第2の支軸28との間に介装する。さらに、弾性部材42および蓋部材44を軸受挿通孔45に挿通し、蓋部材44を第1のハウジング36にねじ止めする。次いで、第4の軸受32を第4の軸受保持孔34と第1の支軸27との間に介装する。その後、環状部材43を第1の支軸27にねじ止めすることにより、第4の軸受32のウォーム軸16に対する軸方向移動を規制する。
【0047】
図12に示す実施の形態の第4の軸受保持孔34に代えて、図14(A)および図14(B)に示す第4の軸受保持孔34を形成してもよい。この実施の形態が図12に示す実施の形態と異なるのは、第4の軸受保持孔34が、第4の軸受32をその径方向に動くことを許容している点にある。
第4の軸受保持孔34は、軸方向S1に沿って見たときに、ウォームホイール17の径方向R1に相対的に長い長孔形状をなしている。
【0048】
ウォーム軸16を第1のハウジング36に挿入するときは、図15(A)に示すように、ウォームアセンブリ50のウォーム軸16の歯形成部26の一部が逃げ空間46Aに対向するように、このウォームアセンブリ50を配置した状態で、ウォーム軸16を第1のハウジング36のウォーム軸収容孔39に挿入する。
これにより、図15(B)に示すように、ウォーム軸16の歯形成部26の一部が逃げ空間46Aに配置され、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触を避けた状態で、ウォーム軸16の第2の支軸28が第5の軸受保持孔35に挿通される。また、第4の軸受32が第4の軸受保持孔34に挿入される。
【0049】
その後、図15(C)に示すように、ウォーム軸16を径方向R1に沿ってウォームホイール17側に移動させて、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせる。ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせた状態で、第5の軸受33を、第5の軸受保持孔35と第2の支軸28との間に介装する。また、弾性部材42および蓋部材44を軸受挿通孔45に挿通し、蓋部材44を第1のハウジング36にねじ止めする。
【0050】
各上記実施の形態において、ウォーム軸収容孔39の、逃げ空間を含む部分の断面が、図16に示すような卵形形状をなしていてもよいし、図17に示すような楕円形形状をなしていてもよい。
また、図18に示すように、ウォーム軸16の第2の支軸28をウォームホイール17側に偏倚するための偏倚機構51を設けてもよい。偏倚機構51は、第5の軸受保持孔35Cに連なる貫通孔52に螺合されるねじ部材53と、ねじ部材53と第5の軸受33の外輪33aとの間に介在する付勢部材としての弾性部材54と、を含んでいる。
【0051】
弾性部材54は、例えばコイルばね等のばね部材を含み、第5の軸受33を介して第2の支軸28をウォームホイール17側へ付勢している。第5の軸受保持孔35Cは、ウォームホイール17側に延びる長孔形状に形成されており、第5の軸受33がウォームホイール17側へ移動できるようになっている。ねじ部材53は、ロックナット55によって第1のハウジング36に固定されている。
【0052】
また、予圧負荷用の付勢部材42として、コイルばね等の他のばね部材を用いてもよい。さらに、ウォームホイール17の歯形成部18を鉄で形成してもよい。この場合、ウォームギヤ機構8によって、より大きなトルクを伝達することができる。
また、本発明の減速機を、動力舵取り装置以外の他の減速機を備える装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…減速機、11…電動モータ、16…ウォーム軸、17…ウォームホイール、26…(ウォーム軸の)歯形成部、28…第2の支軸(第2の端部)、33…第5の軸受(軸受)、31…スプライン軸(第1の端部)、35;35C…第5の軸受保持孔(軸受保持孔)、36…第1のハウジング、36b…(第1のハウジングの)他端部(端部)、37…第2のハウジング、38…ウォームホイール収容孔、39…ウォーム軸収容孔、44…蓋部材、45…軸受挿通孔、46,46A…逃げ空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーム軸およびウォームホイールをギヤハウジングに収容したウォーム減速機が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−20724号公報
【特許文献2】特開平9−49552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のウォーム軸とウォームホイールとを互いに組み付ける方法としては、例えば特許文献2に記載されているように、ウォームホイールをギヤハウジングに収容しておき、このウォームホイールの外周の接線方向に沿ってウォーム軸を真っ直ぐに(一直線に)移動させて、両者を噛み合わせる。
ところで、ウォーム軸とウォームホイールとを互いに噛み合わせる際に、両者を滑らかに接触させて、ウォーム軸およびウォームホイールの双方にキズや変形等を生じないようにすることが要請されている。
【0005】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、組み付けの際にウォーム軸やウォームホイールにキズや変形が生じることを確実に防止できる減速機およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ウォーム軸収容孔(39)を区画する筒状をなす第1のハウジング(36)と、ウォームホイール収容孔(38)を区画する筒状をなし、第1のハウジング(36)と交差状に連なる第2のハウジング(37)と、上記ウォーム軸収容孔(39)に収容されたウォーム軸(16)と、上記ウォームホール収容孔(38)に収容され、上記ウォーム軸(16)に噛み合うウォームホイール(17)と、を備え、上記ウォーム軸(16)は、ウォーム軸(16)を駆動する電動モータ(11)と相対的に近い第1の端部(31)と、第1の端部(31)の反対側に配置される第2の端部(28)と、を含み、上記ウォーム軸収容孔(39)は、ウォーム軸(16)のウォーム歯形成部(26)を挟んでウォームホイール(17)と対向する逃げ空間(46;46A)を含み、上記第2の端部(28)に軸受(33)が装着されていないウォーム軸(16)のウォーム歯形成部(26)の一部を逃げ空間(46;46A)に変位させた状態で、ウォーム軸(16)とウォームホイール(17)との接触が解除されるようにしてあり、上記第1のハウジング(36)において軸方向に関する上記逃げ空間(46;46A)の一端には、段部(48)が形成されていて、上記ウォーム軸(16)における上記第2の端部(28)側には、段部(30)が形成されていて、上記第2の端部に軸受(33)が装着されていないウォーム軸のウォーム歯形成部(26)の一部を逃げ空間に変位させた状態で、上記第1のハウジングの段部(48)と上記ウォーム軸の段部(30)とが当接するようになっていることを特徴とする減速機(10)を提供するものである(請求項1)。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
本発明によれば、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入する際に、ウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に配置することにより、ウォームホイールとの接触を避けてウォーム軸を挿入できる。また、ウォーム歯形成部の一部が逃げ空間に配置されたウォーム軸をウォームホイール側に変位させることで、ウォーム軸とウォームホイールとを噛み合わせることができる。その結果、ウォーム軸とウォームホイールとを組み合わせるときに、ウォーム軸の歯部とウォームホイールの歯形成部とが強く接触することを防止でき、ウォーム軸およびウォームホイールの双方について、キズや変形が生じることを確実に防止できる。
【0008】
また、本発明において、上記ウォーム軸収容孔(39)は、ウォーム軸(16)の第2の端部(28)を支持する軸受(33)を保持するための軸受保持孔(35;35C)を含み、第1のハウジング(36)の端部(36b)に、上記軸受(33)を軸受保持孔(35;35C)へ挿通可能な軸受挿通孔(45)が形成され、上記第1のハウジング(36)に上記軸受挿通孔(45)を覆う蓋部材(44)が取り付けられている場合がある(請求項2)。この場合、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に収容した後に、軸受を第2の端部に取り付けることができる。また、軸受挿通孔を蓋部材で閉塞でき、軸受保持孔に異物が侵入することを防止できる。
【0009】
また、本発明において、上記ウォーム軸収容孔(39)は、ウォーム軸(16)の第2の端部(28)を支持する軸受(33)を保持するための軸受保持孔(35;35C)を含み、上記軸受保持孔(35;35C)は、上記軸受(33)を当該軸受(33)の径方向移動を規制する状態で保持する場合がある(請求項3)。この場合、軸受を第1のハウジングで確実に保持できる。
【0010】
また、上記減速機(10)の製造方法において、上記第2のハウジング(37)のウォームホイール収容孔(38)にウォームホイール(17)を収容した後、軸受(33)が装着されていない第2の端部(28)側からウォーム軸(16)を第1のハウジング(36)のウォーム軸収容孔(39)に挿入する場合がある(請求項4)。
この場合、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入する際に、ウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に配置することにより、ウォームホイールとの接触を避けてウォーム軸を挿入できる。また、ウォーム歯形成部の一部が逃げ空間に配置されたウォーム軸をウォームホイール側に変位させることで、ウォーム軸とウォームホイールとを噛み合わせることができる。その結果、ウォーム軸とウォームホイールとを組み合わせるときに、ウォーム軸の歯部とウォームホイールの歯部とが強く接触することを防止でき、ウォーム軸およびウォームホイールの双方について、キズや変形が生じることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態の減速機を備える電動式動力舵取装置の概略断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2の要部の拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】減速機の製造について説明するための要部の断面図であり、(A)は、ウォームホイールがウォームホイール収容孔に収容される前の状態を示しており、(B)は、ウォームホイールがウォームホイール収容孔に収容された状態を示している。
【図6】ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入する前の状態を示す断面図である。
【図7】ウォーム軸の歯形成部の一部が逃げ空間に挿入された状態を示す断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】ウォーム軸の一部が、逃げ空間から歯形成部収容孔に変位した状態を示す断面図である。
【図10】ウォーム軸の第2の支軸が第5の軸受保持孔に挿入された状態を示す断面図である。
【図11】電動モータをギヤハウジングに取り付ける前の状態を示す断面図である。
【図12】本発明の別の実施の形態の要部の断面図である。
【図13】図12の減速機の製造について説明するための断面図であり、(A)は、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入し始めた状態を示しており、(B)は、ウォーム軸の歯形成部の一部が逃げ空間に挿入された状態を示しており、(C)は、ウォーム軸がウォームホイールに噛み合った状態を示している。
【図14】(A)は、本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図であり、(B)は、図14(A)のXIVB−XIVB線に沿う断面図である。
【図15】図14(A)の減速機の製造について説明するための断面図であり、(A)は、ウォーム軸をウォーム軸収容孔に挿入し始めた状態を示しており、(B)は、ウォーム軸の歯形成部の一部が逃げ空間に挿入された状態を示しており、(C)は、ウォーム軸がウォームホイールに噛み合った状態を示している。
【図16】本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
【図17】本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
【図18】本発明のさらに別の実施の形態の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の減速機を備える電動式動力舵取装置の概略断面図である。図1を参照して、本電動式動力舵取装置(以下では単に動力舵取装置ともいう)では、ステアリングホイール1が連結されている入力軸としての第1の操舵軸2と、ラックアンドピニオン機構等の舵取り機構(図示せず)に連結されている出力軸としての第2の操舵軸3とが、トーションバー4を介して同軸的に連結されている。
【0013】
第1および第2の操舵軸2,3を支持するハウジング5は、例えばアルミニウム合金からなり、車体(図示せず)に取り付けられている。ハウジング5は、互いに嵌め合わされるセンサハウジング6とギヤハウジング7とを含んでいる。
具体的には、ギヤハウジング7は、全体が単一の材料を用いて一体に形成されて筒状をなしており、その上端の環状縁部7aが、センサハウジング6の下端外周の環状段部6aに嵌め合わされている。
【0014】
ギヤハウジング7はウォームギヤ機構8を収容し、センサハウジング6はトルクセンサ9を収容している。ギヤハウジング7にウォームギヤ機構8を収容することで減速機10が構成されている。
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図1および図2を参照して、操舵補助力を発生するための電動モータ11が設けられている。電動モータ11のハウジング12は、ギヤハウジング7の環状フランジ13に図示しないボルト等を用いて固定されている。
【0015】
ウォームギヤ機構8は、電動モータ11の出力を減速して第2の操舵軸3に伝達するものであり、電動モータ11の出力軸14にスプライン継手等の継手15を介して連結されるウォーム軸16と、このウォーム軸16と噛み合い、且つ、第2の操舵軸3の軸方向中間部に一体回転可能で且つ軸方向移動を規制されたウォームホイール17とを備える。
ウォームホイール17は、第2の操舵軸3に一体回転可能に結合される環状の芯金17aと、芯金17aの周囲を取り囲んで外周面に歯形成部18を形成する合成樹脂部材17bとを備えている。芯金17aは、例えば合成樹脂部材17bの樹脂形成時に金型内にインサートされるものである。ウォームホイール17の歯形成部18の歯は、例えば、鼓形形状をなすはすばとされている。
【0016】
ギヤハウジング7内において、ウォーム軸16およびウォームホイール17の噛み合い領域Aに潤滑剤が充填されている。すなわち、潤滑剤は、噛み合い領域Aのみに充填しても良いし、噛み合い領域Aとウォーム軸16の周縁全体に充填しても良いし、ギヤハウジング7内全体に充填しても良い。
図1を参照して、第2の操舵軸3は、ウォームホイール17をその軸方向の上下に挟んで配置される第1および第2の軸受19,20により回転自在に支持されている。
【0017】
第1の軸受19の外輪19aは、センサハウジング6の第1の軸受保持孔21に嵌め入れられて保持されている。一方、第1の軸受19の内輪19bは、第2の操舵軸3に締まりばめにより嵌め合わされている。
第2の軸受20の外輪20aは、ギヤハウジング7の第2の軸受保持孔22に嵌め入れられて保持されている。第2の軸受20の外輪20aの下端面は、環状の段部23に当接し、ギヤハウジング7に対する軸方向下方への移動が規制されている。
【0018】
第2の軸受20の内輪20bは、第2の操舵軸3に一体回転可能で且つ軸方向相対移動を規制されて取り付けられている。
第1の操舵軸2の上部は、例えば針状ころ軸受からなる第3の軸受24を介して、センサハウジング6の第3の軸受保持孔25に回転自在に支持されている。
図2を参照して、ウォーム軸16は、歯形成部26(ウォーム歯形成部)と、歯形成部26の一対の端部のそれぞれから延設される第1および第2の支軸27,28とを含んでいる。歯形成部26は、例えば、1条または複数条の雄ねじを含んでいる。第2の支軸28は、ウォーム軸16の第2の端部として設けられている。歯形成部26の一対の端部のそれぞれに、環状の段部29,30が形成されている。
【0019】
ウォーム軸16の第1の支軸27から、第1の端部としてのスプライン軸31が延設されており、このスプライン軸31は、第2の支軸28と反対側に配置されている。スプライン軸31に、前述の継手15を介して電動モータ11の出力軸14が駆動連結されている。スプライン軸31は、電動モータ11に相対的に近く、第2の支軸28は、電動モータ11に相対的に遠い。
【0020】
ウォーム軸16は、ギヤハウジング7に保持される第4および第5の軸受32,33のそれぞれに回転自在に支持されている。第4および第5の軸受32,33は、例えば転がり軸受としての玉軸受からなる。
第4および第5の軸受32,33の内輪32b,33bは、ウォーム軸16の対応する第1および第2の支軸27,28にそれぞれ嵌合されている。また、第4および第5の軸受32,33の外輪32a,33aは、ギヤハウジング7の対応する第4および第5の軸受保持孔34,35にそれぞれ保持されている。
【0021】
ギヤハウジング7は、単一の材料を用いて一体に形成された筒状の第1のハウジング36および筒状の第2のハウジング37を含んでいる。第1および第2のハウジング36,37は、互いに交差状に連なっている。第2のハウジング37は、ウォームホイール17を収容するウォームホイール収容孔38を区画しており、図1に示すように、ウォームホイール17の軸方向の一方側が開放されている。
【0022】
図3は、図2の要部の拡大図である。図3を参照して、第1のハウジング36は、ウォーム軸16を収容するウォーム軸収容孔39を区画している。このウォーム軸収容孔39は、第1のハウジング36の内周面40によって形成されている。
ウォーム軸収容孔39は、上記第4の軸受保持孔34と、上記第5の軸受保持孔35とを含んでいる。
【0023】
第4の軸受保持孔34は、挿入口41を含んでいる。挿入口41は、ウォーム軸16を第1のハウジング36内に挿入するために形成されており、第1のハウジング36の一端部36aに配置されている。第4の軸受保持孔34および第5の軸受保持孔35は、それぞれ、断面円形形状をなしており、対応する第4の軸受32および第5の軸受33を、当該第4の軸受32および第5の軸受33の径方向移動を規制する状態で保持している。
【0024】
第4および第5の軸受32,33には、付勢部材としての弾性部材42を用いて予圧が付与されている。具体的には、第4の軸受32の外輪32aは、第4の軸受保持孔34に圧入固定されている。第4の軸受32の内輪32bは、ウォーム軸16の一方の段部29と、第1の支軸27にねじ止めされた環状部材43とに挟まれて、ウォーム軸16に対する軸方向移動が規制されている。
【0025】
第5の軸受33の内輪33bは、ウォーム軸16の他方の段部30に当接して第4の軸受32側への移動が規制されている。第5の軸受33の外輪33aは、第5の軸受保持孔35にすきまばめにより保持されており、当該第5の軸受保持孔35に対して軸方向に相対移動可能である。
第5の軸受33の外輪33aには、皿ばね等からなる上記弾性部材42の一端が当接している。弾性部材42の他端は、蓋部材44の一側面に受けられている。
【0026】
上記の構成により、弾性部材42の付勢力が、第5の軸受33の外輪33aおよび内輪33bを介してウォーム軸16に伝わり、さらに第4の軸受32の内輪33bおよび外輪33aに伝わる。
蓋部材44は、第1のハウジング36の他端部36bに形成された軸受挿通孔45に、例えばねじ結合により取り付けられている。蓋部材44は、軸受挿通孔45を覆う。軸受挿通孔45は、第5の軸受33を第5の軸受保持孔35へ挿通するためのものである。
【0027】
本実施の形態の特徴の1つは、ウォーム軸収容孔39に、ウォーム軸16の歯形成部26を挟んでウォームホイール17と対向する逃げ空間46を設けている点にある。これにより、第5の軸受33が装着されていないときのウォーム軸16の歯形成部26の少なくとも一部を逃げ空間46に変位させた状態で、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触が解除されるようになっている。
【0028】
図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。図3および図4を参照して、ウォーム軸収容孔39は、ウォーム軸16の歯形成部26を収容する歯形成部収容孔47と、歯形成部収容孔47に連なる上記逃げ空間46と、を含んでいる。
ウォーム軸収容孔39の、歯形成部収容孔47および逃げ凹部46を含む部分の断面(図3における断面)は、略ひょうたん形形状をなしている。
【0029】
歯形成部収容孔47は、第4の軸受保持孔34および第5の軸受保持孔35の双方に連通している。この歯形成部収容孔47は、ウォーム軸16と相似形をなす円形形状に区画されており、第4および第5の軸受32,33が装着されたウォーム軸16と同心に形成されている。
歯形成部収容孔47の周面とウォーム軸16の歯形成部26との隙間は可及的に狭くされ、噛み合い領域Aのグリースがこの隙間に入ってくることを抑制している。ギヤハウジング7内に充填するグリースの量を低減でき、コストを低減できる。
【0030】
第4の軸受保持孔34の軸方向に関して、逃げ空間46は、第4の軸受保持孔34から少なくとも噛み合い領域Aまで延びている。この逃げ空間46は、第1のハウジング36の内周面40のうち、ウォーム軸16の歯形成部26を挟んでウォームホイール17とは対向する部分(噛み合い領域Aとは対向する部分)を窪ませて形成されている。逃げ空間46の内周面40aの曲率半径d1は、ウォーム軸16の外径d2以上(d1≧d2)とされている。
【0031】
逃げ空間46の周面の中心46aは、歯形成部収容孔47の周面の中心47aに対して所定の偏心量Bだけ偏心している。噛み合い領域Aを通るウォームホイール17の径方向R1に関して、偏心量Bは、ウォーム軸16の歯形成部26が、ウォームホイール17に重ならないようにするためにウォーム軸16を径方向R1の一方に動かすことを許容する程度の値とされており、例えば数mm程度に設定されている。
【0032】
第4の軸受保持孔34の軸方向S1に沿ってみたときにおいて、ウォーム軸収容孔39の、歯形成部収容孔47および逃げ空間46を含む部分の断面は、第4の軸受保持孔34の断面よりも小さくされているとともに、第5の軸受保持孔35の断面よりも小さくされている。
軸方向S1に関する逃げ空間46の一端には、軸方向S1に直交する段部48が形成されている。
【0033】
上記減速機10の組み立ては、以下のように行われる。すなわち、まず、図5(A)に示すように、単品のギヤハウジング7と、ウォームホイール17を組み込んだウォームホイールアセンブリ49とを用意する。ウォームホイールアセンブリ49は、ウォームホイール17が第2の操舵軸3に保持され、且つ第2の操舵軸3に第1および第2の軸受19,20が取り付けられたものである。
【0034】
このウォームホイールアセンブリ49を、第2の操舵軸3の軸方向に沿って移動し、図5(B)に示すように、ウォームホイール17を、ギヤハウジング7の第2のハウジング37のウォームホイール収容孔38に収容する。
次に、図6に示すように、ウォームアセンブリ50を用意する。ウォームアセンブリ50は、ウォーム軸16の第1の支軸27に第4の軸受32の内輪32bが外嵌され、この第4の軸受32の内輪32bを、ウォーム軸16の段部29とウォーム軸16にねじ止めされた環状部材43とで挟持したものである。
【0035】
ウォームアセンブリ50を、軸方向S1に平行な方向に移動することにより、このウォームアセンブリ50を第1のハウジング36の挿入口41を介して、ウォーム軸収容孔39に挿入する。このとき、ウォーム軸16は、図7および図8に示すように、軸受が装着されていない第2の支軸28が挿入の先を向くように真っ直ぐに挿入され、一部が逃げ空間46に配置される。
【0036】
一部が逃げ空間46に配置されたウォーム軸16の軸線L1は、第4の軸受保持孔34の軸線L2に対して径方向R1に所定量ずれている。これにより、ウォーム軸16は、ウォームホイール17と接触することなく、ウォーム軸収容孔39に挿入される。
ウォームホイール17の径方向R1に関して、ウォーム軸16の歯形成部26がウォームホイール17の歯形成部18に対向する状態まで、ウォーム軸16がウォーム軸収容孔39に挿入されると、ウォーム軸16の段部30が、ギヤハウジング7の段部48に到達する。これらの段部30,48が当接することにより、逃げ空間46を用いたウォーム軸16の挿入が完了したことを確認できる。
【0037】
次に、図9に示すように、径方向R1に関してウォーム軸16をウォームホイール17側に移動して、ウォーム軸16の歯形成部26とウォームホイール17の歯形成部18とを互いに噛み合わせる。そうすると、ウォーム軸16の軸線L1が、第4の軸受保持孔34の軸線L2と重なる。
次に、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせた状態で、図10に示すように、ウォーム軸16を軸方向S1に沿ってウォーム軸収容孔39にさらに真っ直ぐに挿入し、第4の軸受32の外輪32aを、第4の軸受保持孔34に圧入する。そうすると、第2の支軸28は、第5の軸受保持孔35に達し、第5の軸受保持孔35に配置される。
【0038】
第2の支軸28が第5の軸受保持孔35に配置された状態で、第2の支軸28と第5の軸受保持孔35との間に第5の軸受33を介装し、その後、軸受挿通孔45に弾性部材42を挿入し、次いで、蓋部材44を軸受挿通孔45にねじ止めする。
これにより、図11に示すように、弾性部材42によって第4および第5の軸受32,33に予圧が付与される。蓋部材44を軸受挿通孔45にねじ止めした後は、第1のハウジング36にウォーム軸16が収容された状態で、電動モータ11の出力軸14を、継手15を介してウォーム軸16のスプライン軸31に連結する。これとともに、電動モータ11のハウジング12を、ギヤハウジング7の環状フランジ13に図示しないねじ等を用いて固定する。これにより、減速機10が完成する。
【0039】
本実施の形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。すなわち、ウォーム軸16をウォーム軸収容孔39に挿入する際に、ウォーム歯形成部26の一部を逃げ空間46に配置することにより、ウォームホイール17との接触を避けてウォーム軸16を挿入できる。
また、ウォーム歯形成部26の一部が逃げ空間46に配置されたウォーム軸16を、径方向R1に沿ってウォームホイール17側に変位させることで、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせることができる。その結果、ウォーム軸16とウォームホイール17とを組み合わせるときに、ウォーム軸16の歯形成部26とウォームホイール17の歯形成部18とが強く接触することを防止でき、ウォーム軸16およびウォームホイール17の双方について、キズや変形が生じることを確実に防止できる。
【0040】
また、第1のハウジング36の他端部36bに、第5の軸受33を第5の軸受保持孔35へ挿通可能な軸受挿通孔45が形成されている。これにより、ウォーム軸16をウォーム軸収容孔39に収容した後に、第5の軸受33を第2の支軸28に取り付けることができる。また、軸受挿通孔45を蓋部材44で閉塞でき、第5の軸受保持孔35に異物が侵入することを防止できる。
【0041】
さらに、ウォーム軸収容孔39の、逃げ空間46を含む部分の断面が、ひょうたん形形状をなしている。これにより、逃げ空間46を可及的に小さくでき、ウォーム軸収容孔39を小さくできる。ウォーム軸収容孔39にグリースを充填するときに充填に必要なグリースの量を少なくできる。これにより、コストを低減できる。
また、第5の軸受保持孔35は、第5の軸受33を、当該第5の軸受33の径方向移動を規制する状態で保持している。これにより、第5の軸受33を第1のハウジング36で確実に保持できる。
【0042】
さらに、例えば、ギヤハウジングにウォーム軸を先に収容し、次いでウォームホイールをギヤハウジングに収容する場合には、ウォームホイールをその軸方向に移動してギヤハウジングに収容する際に、鼓形形状をなすウォームホイールの歯部がウォーム軸の歯部に強く接触してしまい、ウォームホイールの歯部の歯面にキズや変形が生じるおそれがある。
【0043】
一方、本実施の形態では、ウォーム軸16の歯形成部26をウォームホイール17の径方向R1に沿って移動させてウォームホイール17に噛み合わせている。これにより、ウォームホイール17の歯形成部18にウォームホイール17の歯形成部26が強く接触することを防止でき、これらの歯形成部18,26の双方について、キズや変形が生じることを防止できる。
【0044】
また、ウォーム軸16とウォームホイール17とを無理なく噛合させることができる結果、ウォームホイール17の歯形成部18の歯厚を増すことができ、ウォームホイール17の強度をより増すことができる。
また、ウォームホイール17をギヤハウジング7に先に組み付けることにより、ウォームホイール17の軸線と、ギヤハウジング7のウォーム軸収容孔39の軸線との距離(芯間距離)を測定でき、公差内で寸法の異なる複数のウォーム軸から、先に組みつけられたウォームホイール17に最適なウォーム軸を選択できる。
【0045】
本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、図12に示すように、逃げ空間46Aが、第4の軸受保持孔34および第5の軸受保持孔35の双方に連通するようにしてもよい。
この場合において、ウォーム軸16を第1のハウジング36に挿入するときは、図13(A)に示すように、径方向R1に関して、軸受が取り付けられていないウォーム軸16の軸線L1を第4の軸受保持孔34の軸線L2から偏心させた状態で、このウォーム軸16を第1のハウジング36のウォーム軸収容孔39に挿入する。
【0046】
これにより、図13(B)に示すように、ウォーム軸16の一部を逃げ空間46Aに配置し、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触を避けた状態で、ウォーム軸16の第2の支軸28を第5の軸受保持孔35に挿通する。
その後、図13(C)に示すように、ウォーム軸16を径方向R1に沿ってウォームホイール17側に移動させて、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせる。ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせた状態で、第5の軸受33を、第5の軸受保持孔35と第2の支軸28との間に介装する。さらに、弾性部材42および蓋部材44を軸受挿通孔45に挿通し、蓋部材44を第1のハウジング36にねじ止めする。次いで、第4の軸受32を第4の軸受保持孔34と第1の支軸27との間に介装する。その後、環状部材43を第1の支軸27にねじ止めすることにより、第4の軸受32のウォーム軸16に対する軸方向移動を規制する。
【0047】
図12に示す実施の形態の第4の軸受保持孔34に代えて、図14(A)および図14(B)に示す第4の軸受保持孔34を形成してもよい。この実施の形態が図12に示す実施の形態と異なるのは、第4の軸受保持孔34が、第4の軸受32をその径方向に動くことを許容している点にある。
第4の軸受保持孔34は、軸方向S1に沿って見たときに、ウォームホイール17の径方向R1に相対的に長い長孔形状をなしている。
【0048】
ウォーム軸16を第1のハウジング36に挿入するときは、図15(A)に示すように、ウォームアセンブリ50のウォーム軸16の歯形成部26の一部が逃げ空間46Aに対向するように、このウォームアセンブリ50を配置した状態で、ウォーム軸16を第1のハウジング36のウォーム軸収容孔39に挿入する。
これにより、図15(B)に示すように、ウォーム軸16の歯形成部26の一部が逃げ空間46Aに配置され、ウォーム軸16とウォームホイール17との接触を避けた状態で、ウォーム軸16の第2の支軸28が第5の軸受保持孔35に挿通される。また、第4の軸受32が第4の軸受保持孔34に挿入される。
【0049】
その後、図15(C)に示すように、ウォーム軸16を径方向R1に沿ってウォームホイール17側に移動させて、ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせる。ウォーム軸16とウォームホイール17とを噛み合わせた状態で、第5の軸受33を、第5の軸受保持孔35と第2の支軸28との間に介装する。また、弾性部材42および蓋部材44を軸受挿通孔45に挿通し、蓋部材44を第1のハウジング36にねじ止めする。
【0050】
各上記実施の形態において、ウォーム軸収容孔39の、逃げ空間を含む部分の断面が、図16に示すような卵形形状をなしていてもよいし、図17に示すような楕円形形状をなしていてもよい。
また、図18に示すように、ウォーム軸16の第2の支軸28をウォームホイール17側に偏倚するための偏倚機構51を設けてもよい。偏倚機構51は、第5の軸受保持孔35Cに連なる貫通孔52に螺合されるねじ部材53と、ねじ部材53と第5の軸受33の外輪33aとの間に介在する付勢部材としての弾性部材54と、を含んでいる。
【0051】
弾性部材54は、例えばコイルばね等のばね部材を含み、第5の軸受33を介して第2の支軸28をウォームホイール17側へ付勢している。第5の軸受保持孔35Cは、ウォームホイール17側に延びる長孔形状に形成されており、第5の軸受33がウォームホイール17側へ移動できるようになっている。ねじ部材53は、ロックナット55によって第1のハウジング36に固定されている。
【0052】
また、予圧負荷用の付勢部材42として、コイルばね等の他のばね部材を用いてもよい。さらに、ウォームホイール17の歯形成部18を鉄で形成してもよい。この場合、ウォームギヤ機構8によって、より大きなトルクを伝達することができる。
また、本発明の減速機を、動力舵取り装置以外の他の減速機を備える装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…減速機、11…電動モータ、16…ウォーム軸、17…ウォームホイール、26…(ウォーム軸の)歯形成部、28…第2の支軸(第2の端部)、33…第5の軸受(軸受)、31…スプライン軸(第1の端部)、35;35C…第5の軸受保持孔(軸受保持孔)、36…第1のハウジング、36b…(第1のハウジングの)他端部(端部)、37…第2のハウジング、38…ウォームホイール収容孔、39…ウォーム軸収容孔、44…蓋部材、45…軸受挿通孔、46,46A…逃げ空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーム軸収容孔を区画する筒状をなす第1のハウジングと、
ウォームホイール収容孔を区画する筒状をなし、第1のハウジングと交差状に連なる第2のハウジングと、
上記ウォーム軸収容孔に収容されたウォーム軸と、
上記ウォームホイール収容孔に収容され、上記ウォーム軸に噛み合うウォームホイールと、を備え、
上記ウォーム軸は、ウォーム軸を駆動する電動モータと相対的に近い第1の端部と、第1の端部の反対側に配置される第2の端部と、を含み、
上記ウォーム軸収容孔は、ウォーム軸のウォーム歯形成部を挟んでウォームホイールと対向する逃げ空間を含み、
上記第2の端部に軸受が装着されていないウォーム軸のウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に変位させた状態で、ウォーム軸とウォームホイールとの接触が解除されるようにしてあり、
上記第1のハウジングにおいて軸方向に関する上記逃げ空間の一端には、段部が形成されていて、
上記ウォーム軸における上記第2の端部側には、段部が形成されていて、
上記第2の端部に軸受が装着されていないウォーム軸のウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に変位させた状態で、上記第1のハウジングの段部と上記ウォーム軸の段部とが当接するようになっていることを特徴とする減速機。
【請求項2】
請求項1において、上記ウォーム軸収容孔は、ウォーム軸の第2の端部を支持する軸受を保持するための軸受保持孔を含み、
第1のハウジングの端部に、上記軸受を軸受保持孔へ挿通可能な軸受挿通孔が形成され、
上記第1のハウジングに上記軸受挿通孔を覆う蓋部材が取り付けられている減速機。
【請求項3】
請求項1または2において、上記ウォーム軸収容孔は、ウォーム軸の第2の端部を支持する軸受を保持するための軸受保持孔を含み、上記軸受保持孔は、上記軸受を当該軸受の径方向移動を規制する状態で保持する減速機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の減速機の製造方法において、
上記第2のハウジングのウォームホイール収容孔にウォームホイールを収容した後、軸受が装着されていない第2の端部側からウォーム軸を第1のハウジングのウォーム軸収容孔に挿入することを特徴とする減速機の製造方法。
【請求項1】
ウォーム軸収容孔を区画する筒状をなす第1のハウジングと、
ウォームホイール収容孔を区画する筒状をなし、第1のハウジングと交差状に連なる第2のハウジングと、
上記ウォーム軸収容孔に収容されたウォーム軸と、
上記ウォームホイール収容孔に収容され、上記ウォーム軸に噛み合うウォームホイールと、を備え、
上記ウォーム軸は、ウォーム軸を駆動する電動モータと相対的に近い第1の端部と、第1の端部の反対側に配置される第2の端部と、を含み、
上記ウォーム軸収容孔は、ウォーム軸のウォーム歯形成部を挟んでウォームホイールと対向する逃げ空間を含み、
上記第2の端部に軸受が装着されていないウォーム軸のウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に変位させた状態で、ウォーム軸とウォームホイールとの接触が解除されるようにしてあり、
上記第1のハウジングにおいて軸方向に関する上記逃げ空間の一端には、段部が形成されていて、
上記ウォーム軸における上記第2の端部側には、段部が形成されていて、
上記第2の端部に軸受が装着されていないウォーム軸のウォーム歯形成部の一部を逃げ空間に変位させた状態で、上記第1のハウジングの段部と上記ウォーム軸の段部とが当接するようになっていることを特徴とする減速機。
【請求項2】
請求項1において、上記ウォーム軸収容孔は、ウォーム軸の第2の端部を支持する軸受を保持するための軸受保持孔を含み、
第1のハウジングの端部に、上記軸受を軸受保持孔へ挿通可能な軸受挿通孔が形成され、
上記第1のハウジングに上記軸受挿通孔を覆う蓋部材が取り付けられている減速機。
【請求項3】
請求項1または2において、上記ウォーム軸収容孔は、ウォーム軸の第2の端部を支持する軸受を保持するための軸受保持孔を含み、上記軸受保持孔は、上記軸受を当該軸受の径方向移動を規制する状態で保持する減速機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の減速機の製造方法において、
上記第2のハウジングのウォームホイール収容孔にウォームホイールを収容した後、軸受が装着されていない第2の端部側からウォーム軸を第1のハウジングのウォーム軸収容孔に挿入することを特徴とする減速機の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−184851(P2012−184851A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149548(P2012−149548)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2007−60387(P2007−60387)の分割
【原出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2007−60387(P2007−60387)の分割
【原出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]